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一兆年の夜 第八十七話 躯伝の空 躯伝、最高官に就任する(七)

 三月五日午後四時十一分二十七秒。
 場所は中央官邸三階第二執務室。
 バレルバーが語ったのは新仙者革仙者について。これは躯伝の母史烈のれあが提唱した物でそれを体現するのは今の所躯伝のみ。但し、躯伝は四の年より前にメランの死を機にその能力を失った。故に今では体現した者は誰も居ない。第一子の正伝も能力を発現しない。無論、第二子で頭脳派の烈希も第三子で体力自慢の烈正、第四子で引っ込み思案の天豪も第五子で直ぐに泣いてしまう天明も第六子と第七子で親に迷惑を掛けてばかりの豪伝に豪天も、更には直ぐに物を解体する癖が強い第八子の烈天、食べてばかりの第九子史正のせい、まだ右も左もわからない第十子躯佐くさも発現しない。それだけに万世一系であっても中々発言する者は居ない物である。それが躯伝の発言した新仙者。天同家の生命でないと発現しないとされる。
 さて、そんな新仙者だが問題は革仙者の条件である。これは天同家以外でも或は人族以外でも発現するとされる新仙者以上の能力を発揮すると史烈は主張する。だが、バレルバーはどちらも大差ないと主張するがそれについては次の段落で説明する。今は革仙者の条件についてである。その能力を発現するには銀河連合を体内に取り込まないといけないとバレルバーは主張する。何故取り込むのが条件なのか? バレルバーはそれについてある理論を展開する。それは毒を自らの力に変換する事が出来れば革新へと至る……そうバレルバーは主張する。その毒とは即ち……銀河連合。
 これには躯伝も眉に唾を付けようかと考える程。それくらいに受け入れ難い。それを通してしまえば行き着くのは戦い以前の対話への道へと回帰してしまう。其れでは何の為に先者達は血を流して来たのかわからなくなる。故に躯伝はそれを受け入れる事成らず。
 このように新仙者革仙者の発現方法は紹介された。問題はどちらが優れているのか? 躯伝の母史烈の主張する所に依ると革仙者の方が優れているとされる。だが、バレルバーは違う。最終的にはどちらも大差がない。寧ろ、代を追う毎に洗練される分だけ新仙者の方が一枚上手だと主張する。確かに一時的な身体能力の上昇と誰にでも発現する機会が望める事は魅力的ではあるが、それでも偉大なる血の前では突然変異という物は短期的視野にしか過ぎない。
「--以上が俺の主張した理論だよ……ゲホゴホ!」
「無理をするな。やはり病院に行くべきだと--」
「俺の死に場所は病院の中ではない。俺は……誰の眼にも届かない場所で一生を終えたい」
 バレルバー、お主は--そう断言されたら元も子もない……そう思った駆伝であった。
「有難う。あんたのお蔭で俺はもう良い残す事はない。じゃあ」バレルバーは口元に残る地の跡を拭う事はなく、第二執務室の正面扉より別れを告げる。「それじゃあな」
 ああ--躯伝はバレルバーの背中を見て次のように考えた。
(恐らくあれが俺の見るバレルバーの最後の姿じゃろう。全くあいつは最後までバルケミンの雄として振る舞って……全くどいつもこいつも去ってゆくなあ。俺はこれから孤独に成ってゆくのかのう?)
 躯伝の考えた通り、バレルバーは中央官邸を訪れてから一の週より後に誰の眼にもつかない所にて一生を終えた。その死に顔はまるで何かに満たされたように……
(それから俺は次の選挙を迎えるまでに新たな国家神武の為の準備をしてゆく。それから次の選挙も圧倒的大差を以て勝利して二期目を務める事と成る……大勝から一の年の後にとうとう新たな神武聖堂は完成の日を迎えた。
 そんな日にあいつはこっそりと帰って来たのだったな。その報告に俺は驚きを隠せなかったな。あいつはどの面を下げてソーラの所へと足を運ぶのか!)

 ICイマジナリーセンチュリー二百二十三年三月五日午前十一時七分二十六秒。

 場所は新天神武首都ボルティーニ府中央地区。
 天同躯伝の豪邸はやがてヤマビコノシドウシン一家と笹原家の住処と成る。既に天同一家は一部を除いて総出で新神武聖堂へと住む予定。
 そんな豪邸の正門前に齢二十四にして七の月と四日目に成る神武人族の青年が降り立つ。その姿は十一の年より前と比べて大きく変容する。それに気付いたのか、あるいは偶然用があったのかは定かではない。だが、齢四十一にして六の月と十八日目に成る雄略人族の老婆は扉を開けてその姿に驚く。
「正伝……帰って来たの?」
「お袋……随分と年を摂ったな」
「ええ、それは……ウググ!」
 だ、大丈夫か--正伝はソーラ六代の所まで駆け寄る。
「い、良い……これで、最後の子が、出来た、のね」
「最後の……親父め、まだ子供を作る気か!」
「そうゆう正伝は、右腕を亡くしてまでまだ戦う気なの?」
「当り前だ」右腕だけでなく、左眼を失ってまでも正伝は語る。「喰われた場所ではまだ諦めずに生きる同胞が居る……これくらいが何に成るか!」
「正伝!」右平手打ちをするソーラ六代。「止めなさい……そこまで躯伝に似たのですか!」
「お袋……それは目や腕を失うよりも、痛いぜ!」
「如何してなのですか……もうお前もお父さんですよ!」母の勘で正伝が父親に成っている事を見抜くソーラ六代。「生まれたばかりの子供を悲しませる気ですか!」
「気付かれたか……その通りだ。と言っても勘違いの一つを指摘する」
 おや、当たったのかい……私も少しは賢く成った訳ね--と今まで当たった試しがないと思っていたソーラ六代。
「実は俺……向こうで三名目も儲けた」
「そうかい……と成るとこの子は年下の甥と姪を三名も出来てしまうのだねえ」
「オイオイ……それは如何すれば良いのだよ!」
「全くそうゆう間抜けな所まで躯伝に似たのねえ」
「一緒にするな。親父がどれだけの地位だろうが……お袋や妹達や弟達に迷惑を掛けた事を俺が忘れる訳がない!」
「それはお前さんも同じじゃ。全く母親を心配させおって!」
「はあ」気まずいと感じた正伝は話を変える。「ところで何だか家の中が騒がしいように思えるが」
「ああ……新たな神武聖堂が完成したので私達は引っ越すの」
「そうかい……間に合って良かった。それじゃあ俺はこの辺で--」
「待たんか、正伝」左手を掴んで離さないソーラ六代。「ちょうど旧名の弟や妹達が家に居るから挨拶してから行きなさい!」
 親父が居ないのなら……そうするよ--そこで正伝は自分の子供に名よりも年下がもう二名も居る事に驚いた事は説明するまでもない。
(その話を知ったのが視察し終わって早々に烈希から聞かされたことじゃな。全く正伝も俺と同じ年に子供を作って今では三名目にも成るとはな。とも成ればその子達がこれから俺達が築き上げてゆく新たな国家神武を引っ張るのじゃろうな。
 まあその話は後にして正伝が向こうの家族の所に帰ってから一の月より後の話じゃったな。まさか正伝の部下の一名が首都ボルティーニまで駆け込んで来るとは思わなかったな。
 その話とは次の通りじゃな!)

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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