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一兆年の夜 第八十七話 躯伝の空 躯伝、最高官に就任する(六)

 十二月一日午後三時二分十八秒。
 場所は新天神武首都ボルティーニ府中央地区中央官邸。
 その三階第二執務室にて齢三十八にして二十五日目に成る天同躯伝は齢四十一にして十の月と二十六日目に成るルケラオス熊族にして前党首と成ったクレッセラント・グリーズと会話を楽しむ。
「ハッハッハア、そうカア……十名目の子を儲けたのじゃナア!」
「ソーラはまだまだ元気ですよ。あそこまで子供を産もうと決める母も居ないのではないでしょうか!」
「まあそうだろうナア。所で……ジャア、駆伝様?」
「何だい、クレッセラント?」
「この選挙ではどう転んでモォ剛力党の勝利は揺るぎ無い物ジャア。なのに如何して休もうとしないのジャア?」
「俺は全生命体の希望として休む暇もなく仕事し続けないといけない。それに」躯伝は一旦、目を瞑った後に大きく開いてから次のような事を口にする。「今の俺はもう何も出来はしませんからね」
「いや、まだまだ出来るジャァろう……いや、違ったナア」クレッセラントは直ぐに意味を読み取った。「躯伝様の言いたい事トハァ即ち、新仙者の能力はもう持たないという事ジャアな!」
 ああ、己の半身と別れた穴を埋める為に代価を払ったからな--未だそれを繰り返し言い続ける躯伝。
「成程ナア。その分だけあの頃みたいな強さを取り戻すのは難しかロォウに」
「いや、心配ない。強さだけならシドウシンが体現してくれる!」
 全くまだ俺於褒めてえ--堪忍出来ずに隣の部屋から出て来たのは齢三十五にして八の月と一日目に成る神武鬼族の中年であるヤマビコノシドウシン。
「確かにシドウシンはかつて真古式神武で真正なる五式の中で最強と呼ばれシィシレンデンを彷彿とさせる実力者ジャアな。最早叶う生命が探しても中々見つからない訳じゃあ」
「だが、衰え於感じます代。未だお祖父さん乃強さ似届いた斗端思えません那」
「謙遜する事は別に良くない物ではない。寧ろ強さに甘んじる事は逆に宜しくないからな……はあ、親父に似て来たかな?」
「まあまあ、わしら全員が年を摂っタアという証拠じゃないカア!」
 会話している中で正面扉を叩く音が聞こえる。クレッセラントが許可を出すと入って来て挨拶をするのは齢四十四にして四日目に成る仁徳雁族の老年だった。
「ガン造ヨオ、わしは引き継ぎ完了次第は一線から身を引くゾオ」
「ワタシハまだまだ大丈夫デスネ。タダ、ショウショウ首の肉が難く成る程度ですナア」
「まだやる気科、この爺さん端!」
 オマエも後五の年もすれば老者の仲間入りジャワイ--と口にするまだまだ働き盛りのガン造。
「だが、ガン造。お前らみたいな元気過ぎる老者ばかりで固める訳にもゆかない。確かに官房長官はお前で軍務大臣はシドウシンにするが……俺が決める閣僚は出来るだけ若い者達で構成したいのでな。出来るかな、俺達だけで!」
「エンノ下の力持ちを舐めないで下さいナア」
 それから四十三の日より後の日の曜日……結果発表は恒例の四の日まで行われて圧倒的大差を付けて剛力党は再び政権の座に就き、初代以来実に四百四十四の年ぶりに最高官は天同家に舞い戻って来た。
 こうして天同躯伝は念願の最高官として君臨した!
(これはまだ始まりに過ぎない。これから俺はもろもろと実行しなければ成らない。先ずはやはり喰われてしまった土地の奪還だな。真古式神武に貸していた物を取り返す時が訪れた。それについては歴代の最高官が只指を羽を咥えてみていた訳ではない。只、実行するには意志の統一が難しかった……只それだけ。民主主義とは時として意志の統一を阻む良くない癖もある。初代最高官七はそれを読みつつも逆に読めなかった部分もある。けれどもこれからは違う。
 俺が成ったからにはしっかりと働かせて貰うぞ!)

 ICイマジナリーセンチュリー二百二十二年三月五日午前十時二分十八秒。

 場所は新天神武首都ボルティーニ府中央地区中央官邸。
 その三階第一執務室。
 齢三十九にして二十五日目に成った躯伝はすっかり口ひげを生やし始める。おまけに口調も年相応に老いを感じさせるように成る。但し一名称はまだ変わらない。まだまだ働く事を諦めない彼の意思が伝わる。そんな躯伝は最高官の席に座り、只管に用意された紙を読み上げる。時には重点課題は強硬に推し進めてでも実行へと移す。だが、それに反対する生命は居ない……いや、居るには居るが全員が各々に対案を出して修正を加える為に反対らしい反対と呼べないのかも知れない。
 そんな躯伝の元に正面扉を叩く音が聞こえる。許可を出すと部屋に入るなり、挨拶をする。中には居る生命は齢二十三にして五の月と十六日目に成るアデス九官族の青年。
「それで要件は何だ、キュー明?」
「ウウウ、ゼンサイコウカンデアルクレッセラント・グリーズガ……ニノヒヨリマエニ……ウウウ!」
「そうか……クレッセラントは想念の海に旅立ったのじゃな」躯伝はクレッセラントの死を受け止める。「辛い所報告を有難う、キュー明」
「デ、デハイジョウデ」
 キュー明と入れ替わるように齢四十にして七の月と十七日目に成る仁徳人族の老年が入って来た。
「馴れ馴れしいのう。相変わらずそうゆう所は変わらんなあ、バレルバー」
「すっかりじじ臭く……ゴホゴホ!」
 おい、大丈夫か--直ぐに立ち上がり、バレルバーの所まで駆け込む躯伝。
「いやいやい、このくらい軽い症状だよ」右掌にこびり付いた赤い物を隠すかのようにバレルバーは余裕を振る舞う。「俺の事よりも先ずはあんたとあるお話をしにやって来たってな」
「その状態でお話か……一度病院に--」
 いや、見て貰うには手遅れだ--と断言するバレルバーの顔を見て……躯伝は次のように悟る。
(長くはないな。クレッセラントに続いて自らの死期を悟った生命と言うのは見ている俺としては余り良い気分じゃない!)
 一旦、作業の手を止めて客員用の第二執務室へと案内した躯伝。

 午後一時二分七秒。
 場所は第二執務室。第一執務室の隣に設置された客員用の執務室。或は表向きは誰でも立ち寄る事が出来る執務室。其処では齢三十八にして四の月と二十一日目に成るボルティーニ鳩族の老年春加山ポ太助が机に凭れて読書に明け暮れていた。
「あ、また勝手に来たのですーか。だから用がある時は第二執務室に来るようあれ程--」
「今は一刻を争う。取り敢えずお前は第一執務室に移動しろ!」
 わ、わかりました……躯伝ー様--ポ太助は左隣の扉を開いて出て行く。
「済まないな、者払いさせて!」
「全く俺が留守中にも何かやらかしたのう。一体どんな要件じゃあ?」
「まあ話を聞いてくれ。俺はある事を考え付いたんだ。その考え着いた事とはな……何を隠そう」
「だから要件を早く言わんか。俺は気長に待つ程もう若くはないのじゃ!」
 全く喋りだけはじじ臭いと一名称との均衡が良くないぞ--と指摘するバレルバー。
 それからバレルバーは語り出す……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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