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一兆年の夜 第八十七話 躯伝の空 躯伝、最高官に就任する(四)

 一月二十七日午後十時五十八分二十三秒。
 場所はテオディダクトス海。全長成人体型七十もある蒸気船は休まず海を渡る。
 その後方甲板にてミリットはカンガルー拳法の修行を続ける。それはある者からはまるで体内に潜む銀河連合に抗うように見られる。ある者とは次の生命が近付き、ミリットに声を掛ける時から会話が始まる。
「こんな夜中まで修行か……己の厳しいのだな」
「あんたか。安心出来ナイノダヨ、何モカモニ」
「そうだな。ミリットも含めてこれから向かう所はパオ乃の恩師であるダドロギノカモミチがそこへ避難し、それから適応出来ずに想念の海に旅立った地だ」
「適応出来ズニ?」とそこでミリットは足を止める。「それは一体ドンナ病ナノダ?」
「まあそれを説明すると長いので、眠く成りそうなら修行を続けても良いぞ」
 と言いつつ説明を始める躯伝。彼の話を要約すると喰われた大地で暮らし続けると清浄な空気を身体が受け付けなくなる。そうすると無理に適応しようとして重く圧し掛かり、最後は呆気なく果てる。最初に銀河連合への怒りを抱いた者達もそうであるようにいきなり強烈な何かを起こすと心身に良くない影響を及ぼす。その為、最初の内はそれが原因で死ぬ生命が多く見られる。それと同時に長年暮らしていた土地を離れて新たな土地で暮らそうとすると体が受け付けずに短命に終わる生命も見られる。要するに寿命とは一定の間隔が重要と成り、其れが少しでも乱れると生命にとって良くないとされる。だが、それを決定付ける根拠は中々見出せないのも事実。故に科学では如何しようもない事柄には全生命は何も知らないのである。
「確かに言ッタ通リだな。欠伸ガ出ルノデ思ワズ修行ヲ再開シテしまった!」
 説明が上手く行けば誰にでも教えられるのだけど--学ぶのは容易いが教えるのは堅い……どの世界でも通用する真理は斯くも情がない。
(ここで何かあると思ったが……要らぬ心配で良かった。だが、これが後にミリットに少なからぬ影響を与えた事だけを伝えておこう。
 そうして俺達は藤原大陸最北端にやって来た訳だ。ここは先者達が戦い抜き、生と死の果てに奪還した土地だ。現在では菅原地方と名付けられ、ここに帰化する生命が続出する程だ。その理由は住み易い……いや、違う。まだボルティーニを中心とした街並みに比べて空気の清浄度はまだまだだろうし、後は開拓されていない土地が幾つもある。そうゆう所に限って銀河連合は巣を作る。
 さてさて、如何するべきか)

 二十九日午後八時二分十一秒。
 場所は大陸藤原大中臣地方迷宮の洞窟前。
 ここも又、菅原地方と主張する者達も多い中で躯伝達は公式見解でここを大中臣地方として曲げない覚悟である。だが、親子の仲までは覚悟が回らなかった模様。
 そんな躯伝が向かったのがギガントルが十代中盤の時に学んだという鴨下政治塾。現在は当時の政治塾の生徒が塾長、副塾長等々……講師として活動を再開し始めた時期。活動を再開させたのが現塾長を務める齢二十にして八の月と十六日目に成るボルティーニ鳶族の青年畑トビ男。躯伝とトビ男は語り合う。
「ああ、其れの事でーすね。確かにパオ乃の所に俺が届けーた物で間違いなーい……それでパオ乃について俺は知らーないのだが」
「そうか、まだ知らないのだな。あいつはギガントルとシープの所まで報告しに行った」
 くう、あいつの所に誘ーいの手紙を送ーったばかりなのに……畜生--と涙を見せまいと背中を見せて顔を大きく下げるトビ男。
 大体涙を拭ったトビ男は話を続ける。最近ではここを含めて大中臣地方に侵攻する銀河連合。しかも討伐する度に銀の光を上空に飛ばしてゆく。その様子を五度も目撃したトビ男は百の年以上前に起こった観測史上最大の歪みを調べ始める。それに依ってトビ男は銀の光の数と歪みが密接に関係するのではないか、と調査を開始した。だが、それを調べる生命を探すのが一苦労でトビ男自身も今に成って調べ上げる先者達の興味という物に大きく望みを失う気持ちで一杯に成った共躯伝の前で告げる程。ここまで歪み研究に大きな穴があるとしたらそれこそ積み上げてきた事実が引っ繰り返される可能性だって起こり得ない。
「--以上でーす。全く未知なーる領域は危険と隣ーり合わーせであーるが故に俺自身もその膨大な量に圧倒さーれるばかりだよ。今更この時期に調べ始めーるのだからな……特大規模の流れ星が降り注ーいだ後に成れーば積み上ーげた物は全て無ーくなるかも知ーれんのだから……敵わーないな」
「いや、それまでに積み上げた物を保全する良い方法がある!」
「馬か鹿でーすか……礼を失ーしますが。そんな方法があーればとっくに--」
 あるのだよ、俺の祖父天同烈闘れっとうの弟に当たり……俺の名前の由来でもある天同躯央くおうの提示がな--とトビ男に堂々と言って見せる躯伝。
「提示……それは確か俺も知ってまーす。でもあれらは一部を除いてほぼ全てが採算度外視の要求であーり、現実には可能ではなーいと断言さーれておーりますよ」
「いや、一つ訂正するべき事がある」
「はーい? 訂正とはどの部分でーしょうか?」
「いや、この場合は付け加えるだったな……御免」
「早く言ーって下さーい。そろそろ時間も迫ーる上に向こうの親御さんに申ーし訳ありーませんので」
 お前さんも大変だな、家族を持ち始める身って言うのは--というような反応をして更に話を進めようとしない躯伝だった。
「あ、付け加える所だったな……それは当時の遠征成功成らずな真古式神武の財政状況では、な!」
「当時の?」
「つまり新天神武なら可能だ。そう、俺はやってやる……その全てをな!」
 躯伝様……まさか背後に先輩が、いや--トビ男は一瞬だけ躯伝の傍にギガントルを見た!
 そう、躯伝はギガントルの死を経て本格的に始動する。全ては優央がやれなかった事、それからギガントル達が待ち望んでいた三国統一……躯伝はそれを実現するためにここまで来たのであった!
(だが、道程はそう簡単ではない。必ず俺達の前に立ち塞がる奴らが居る……何時も銀河連合は俺が決意を固めようとする時に限って問題を引き起こす!
 今回だって--)

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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