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一兆年の夜 第八十七話 躯伝の空 躯伝、最高官に就任する(二)

 一月十八日午後十一時六分十三秒。
 場所は鬼ヶ島西地区港。
 足を踏み入れた躯伝とメランコリーナは思い出す。一の年より前にギガントルや烈正れっせいと共に訪れたあの日を。
「思イ出サレマスネ、躯伝様」
「長居は無用だ。俺達は急いでエピクロス島行きの船に乗るぞ!」
 はい--メランコリーナはお喋りする余裕もない程、事態は拙速を要求するのを肌で感じ取る。
 躯伝とメランコリーナは夜勤担当で齢十九にして八の月と十二日目に成る鬼ヶ島兎族の少年ウサメデ・ドウワンに案内されるように睡眠を摂らずに北東東港へと向かう。深夜帯に成れる二名はまだこの時間帯にて眠気に襲われる事はない。
 問題なのは第二南地区の山を登る十九日午前零時十七分二十八秒……そこでウサメデが案内の途中で前のめりしたまま他の者達に揺さぶられても中々起きなくなった。いや、ウサメデだけではない。躯伝もメランコリーナも原因のわからぬ眠気に襲われる。
(これは……鬼ヶ島は古くから銀河連合の襲撃を受けるとはわかってはいたが。まさか、こんな状況で……俺はこの時間帯に眠る訳にはゆかない!)
 青い目を輝かせて眠気を吹っ飛ばす躯伝。するとウサメデに近付こうとする雑草を捉えて神武包丁を投擲して中心部に的中--流れる筈のない赤黒い液体が銀河連合である事を証明した!
「「はああはああ、コノ雑草ハ……コレハ目晦ましか!」
 何……しまった--躯伝は冬の花の一つである蝶族花に成り済まして蛇族の女性の体内に入る銀河連合を見て遅い対応を嘆く!
 その女性はやがて液状蛇型と化して最寄りで眠り始める亀族の少年を一呑みする。一歩遅かった躯伝は涙を流しながら掴んだ蛇型を縦に裂いた!
「クウウ、何が筆頭官房官だ……目の前の生命を助けられないなんて!」
 だが、蝶族花もまた目晦ましだった--喰われた亀族の少年の左隣で寝始める兎族の老婆に取り付く別の蝶族花が入って行き、瞬く間に液状兎型に変化した!
 それは既に気付くも蛇族の女性と亀族の少年、そして取りついた兎族の老婆の為に命を捨てて倒そうと決めた躯伝に襲い掛かる。ところが、それを受け入れない生命が一名……兎型の噛み付きを左首の太い頸動脈を断裂するかのように引き千切った--その大津波を起こしかねない量を放出しながらもその物の超至近距離から放たれる蹴打によって内部から八つ裂きされるが如き状態と成って朽ちてゆく液状型銀河連合!
 躯伝はその血を浴びて、振り向く。其処には……半身が両前足を広げて躯伝を抱き付こうとしていた!
「メラン……まさか俺に、生きろ、と?」
「はい、躯伝様。貴方ハ、全生、命、体ノ、希ボ、ウ、ナノ、です」それからずっと押し込んであった言葉を告げる。「大、好キ、デス……」
 くう、だから、あれ程、結婚、しろ、と、言った、の、二、い、い、い--躯伝は生まれて初めて自分の半身と離れ離れと成った!


(レヴィルビー家は彼女の代で途絶えた。わしがあれ程言ってもメランは首を縦に振らなかった。やはりそれがマリエラの代わりがわしだったのか、或はわし以外じゃないと受け入れない程に雌心が成熟してしまったのか。どちらにしてもメランはレヴィルビー家の存続よりもわしと共に居る方が……正確にはメリーナとマリエラが死んだ日にわしと結婚してしまったのかも知れない。わしはそう捉えるべきだったのか、それとも?
 何れにせよ、メランの心よりも寧ろ深刻だったのはわしの方だった。ずっと一緒にいた半身が鬼ヶ島の地で死んだのはわしの中にある心に埋められない物を刻み込むのに十分だ。イタトロウやサルタビト十八代、それに南雄略の数多もの命やカラッ佐にギガントル……突然の出来事で死んでゆく生命は幾らでも見て来たわしでも心に大きな穴が開く事はなかった。これが半身なのか……だとすれば埋められるのは何か?
 それは--)

 ICイマジナリーセンチュリー二百三十年十月八十七日午後一時五分一秒。

 お粥を食べ終えた躯伝は一先ず話を止める。
「え、一体何で埋めたのですか?」
「今のわしはもう新仙者ではない」
 まさか……それ牙代償那乃です科--驚きを隠せないガンジャー。
「如何せこの力はわしを頼らせるばかりじゃ。遅かれ早かれ、使えなくなる日は起こる。その日が来たまでじゃ」
「その日が……そうすると今までみたいに凄まじい強さを引き出せないのではないかね?」
「凄まじい強さは時として周囲を甘やかせる。保護され過ぎた環境は却って種の耐性を甘やかしてしまう。躾と同様に生命は厳しく育つのも大事だぞ」
「確か似そうです袮。強い力だけ出端乗り切れない事弥凄い頭脳牙ある科羅斗いって乗り切れるなんて物端有り得ません物袮。生命端一名出端如何する事模出来ない科羅他乃生命乃力於借りて事於為してゆく乃です」
 そうだ、時代を作るのは強い力でも凄い力でもないのじゃ--そう言いながら躯伝はある事を思い出す。
(とはいえ、そう言ってしまうとお袋の言葉を賛同しない事と成る。いや、そうゆう訳じゃない。お袋はあくまで理論としてその存在を示唆したのであって……ってここまでにしよう。そうゆうのは後で纏めるのが都合が良い!)
「何か悩み事出模ありましょう科?」
「いや大丈夫じゃ。バレイバーを見ていると再び思い出す事があると思ったのじゃ」
「それって大分先じゃないか?」
 全く碌でもない若造じゃ、お前さんは--とバレルバーと同じく細かい詩的をするバレイバーに少し腹を立てる躯伝。
(メランの葬儀を終えてからわしは急いだな。何しろ、代理の者に沿う議してはあいつが怒ると思ってわしは……俺は悩んだからな。何しろ--)


 ICイマジナリーセンチュリー二百二十一年一月二十一日午後六時一分十八秒。

 場所は鬼ヶ島第三南地区。
 仮埋葬地にて暫く遺骨を納め終えた躯伝は代わりとしてやって来た齢二十歳にして六日目に成るタゴラスカンガルー族の青年ミリット・レヴェーロと共に出発……「ちょっと待ッテ欲シイ、天同ノ生命さんさあ」する筈が--如何やら新たにやって来たミリットは少々小難しい生命のようだ。
「何だ、若造?」
「前任者のおばさんハアンタトハ如何ユウ付き合いだった?」
「全く最近の若造はそうゆう所まで細かく聞くのだな」
「そりゃあソウダロウ。何せ、あのおばさんハカンガルー拳法デ誰モ到達シエナカッタ超至近距離カラノ打撃ヲ発明シタノダゾ……其れも内部に浸透するような物を」
「それとこれとは何の因果だ?」
「是非とも聞キタイ。一体どんな秘訣ガアレバアレヲ使えるのだ?」
 俺に聞いても意味がない……俺はカンガルーじゃない--そう言って躯伝は北東東地区を目指して歩を進める。
「オイ、俺ヲ置イテユクンじゃねえよおお!」
 こうして新たな付き者と共に躯伝は再出動した……


(その若造はメランと異なり、兎に角手間が掛かった。あれこれと要求してはわしを困らせたからな。けれどもカンガルー拳法に関しては天性の持ち主でメランをも上回る程じゃ。だからこそ……その若造には!)

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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