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一兆年の夜 第八十七話 躯伝の空 躯伝、最高官に就任する(一)

 ICイマジナリーセンチュリー二百二十一年一月十五日午前四時二分一秒。

 場所は新天神武首都ボルティーニ府中央地区。天同躯伝邸。
 齢十七にして十の月と一日目に成るアデス九官族の少年が二階で眠るある夫婦に向かって飛び込んで来る。彼は嘴で窓を開けるよう計十八回も窓を割らない力で叩いて音を鳴らす。それに気付くのは齢三十二にして十一の月と三日目に成る雄略人族のソーラ六代。既に第九子を身籠り、更には二の分より前に十一の月十七日目に成ると第八子の烈天れつあの朝泣きに叩き起こされて直ぐだったので漸くその少年の所まで駆け付ける。
「何か連絡があるの、キューめい?」
「ハイ、スガワラチホウノホウメンヨリギンガレンゴウノタイグンガセメタテテキタデスウウウウウ!」
 ああ、私ったら……如何して先に躯伝を起こさなかったのよおお--と悔やみつつも左飛び込み蹴りで躯伝の背中を蹴り飛ばして強引に起こしたソーラ六代。
「っててて……背骨が折れたら一章を車椅子生活だぞ、ソーラ」齢三十四にして五の月と十一日目に成る躯伝はその後に朝の挨拶を二名に済ませる。「取り敢えずお早う、二名共……ところでどんな情報だ、キュー明?」
 キュー明はソーラ六代と同様の内容を伝えた。いや、訂正……先程の情報に加えてその戦いは五の時も経たずに防衛軍に依って沈黙させた事と更にはその際に不特定多数より銀色の光が空に向かって飛んでゆくという情報まで伝えた。其れには躯伝の眠気を覚ますには十分過ぎる。
(それは多分、昨日の世界に送ったのだろうな。確か不確定ではあるが、評論家達の一致する見解の一つに銀河連合の銀色の光は過去に飛んでゆき、それから歪みと言う形で報告が為され、それから未来に向けて遥か遠い彼方より大群として巨大な対地攻撃が為されてゆく。
 それに対して俺達は防ぐ手立ては……まだ確立されていない。望遠砲もあるようだが、あれじゃあ雲の上まで届かん。奴等の進撃速度が速まるのは更に高い位置からだ。もっと高度まで飛ばせないと意味がない。
 まあ、その光の数々は一体何を意味するのか? 不特定多数だからな……筆頭官房官の立場で視察出来るかな?)
 そう考えつつも既に躯伝は着替えを始める。それに応じるようにソーラ六代は膨らんだお腹でありながらも俊敏に躯伝の上から下まで着替え終わらせる。
「無理するなよ、ソーラ。そこはメランか、或は天豪てんごう天明てんめいを起こして--」
 まだ二名共幼いのですよ、無茶をさせないで--と背中を右張り手される躯伝。
「ヒットウカンボウカンデスヨ。ソコハフクサイコウカンデアラセル--」
 ガン造はいざという時の為にクレッセラントの補佐を務めないといけないのだよ--と躯伝は二名を信じる。
「ワカリマシタ。ア、デモイマハソコマデイソガナクテイイデスヨ。スデニサイコウカンドノモソノジョウホウヲシッテオリマスノデヨテイドオリニナナノトキカハチノトキマデユッタリト--」
「そんな暇があるか。俺はギガントルの遺志を継ぎ、正伝の奴に良いようにされない為にも働かなくてはいけないのだ!」
「ウヒイイイイ!」
 全く、一度言い出したら止まらないわね--ソーラ六代は躯伝の飽くなき思いを理解し、尚且つその真っ直ぐさに心を配らざる負えない溜息も吐く。
「心配か……でも大丈夫だ。俺はあの子を連れてゆく」
「あの子? 付き者はメランじゃないの?」
「いや、メランにはお前を見て--」
 全く躯伝様ハ如何シテ何時モ私にソーラの面倒ばかり見させる訳--とそこへ齢三十三にして五の月と一日目に成るルギアスカンガルー族の熟女であるメランコリーナ・レヴィルビーが扉を叩く事もせずに現れた。
「又か、最近は口数が多いぞ!」
「私だって躯伝様ヲ守リタイノデス!」
「あのなあ、メラン。お前は代々のレヴィルビー家の家訓により、天同家を--」
 それでも私は躯伝様の傍でないと、いけないの、です--メランコリーナは躯伝の肩に前両足を乗せて顔を下に背けながら吐露する。
「メラン、お前は……其れだからお前は三十を越えても相手が出来ないのだぞ。それじゃあレヴィルビー家はお前の代で最後に成るぞ。少しは母親に成る--」
「いいえ、メランを行かせて……躯伝」ソーラはお腹の子を庇いながら背中から両腕を回す。「雌の心ってのはこの年に成ると益々、最愛の雄への想いが暴れ回るのよ!」
「カンガルー族だぞ……如何してメランはこうも苦しめられるのか!」と異種族の恋愛が許されないのは銀河連合がやってくる前から続く生命の法であると知りながらも生まれる段階で点検を怠った神々に注文を付ける躯伝。「次からはちゃんと運命に則るように誕生させてくれ、神様!」
「で、デハ--」
 ああ、お前は俺の半身でもあるからな--こうしてメランコリーナの想いは通じ、同行する形と成った。
(それは付き者メランとの最後の動向と成るなんてな……だからあれ程、俺はあいつには母親に成るように勧めたというのに。なのにあいつは俺への思いを断ち切ろうとせずに何時までも付き者として尽力し、付き者として父マンメリーや母メリーナ、そして最初の半身だった姉のマリエラの所に……いや、今はそっちの話ではない。
 それよりも最低限の朝食を済ませた俺達は家を出て、其れからクレッセラントの所まで駆け付けて菅原地方に行く手筈を整えた。あいつは当初、ガン造に行かせるつもりだったな。でも俺はガン造も国民からの支持は高い事と奴の高度な天文学的知識は首都の防衛に十分な役目を果たせる旨を伝える事で無理矢理視察を俺に変えてやったのさ。副最高官がお飾りでは意味がない。お飾りなのは……俺で十分だ。筆頭官房官として誰よりも危ない橋を渡らなくて何が全生命体の希望で居られるか!
 親父はずっと俺の憧れでもあった。その憧れと強さでも頭の良さでもない。親父は真古式神武の国民を担保にして多くの生命の命を救った。己の力量を良く知り、己が如何しようもないと何度も挫けながらも親父は最善の道を進み、全生命体の希望として最後の最高官として輝きを放った。そんな親父だからこそ死ぬまで悔しかっただろうな。それでも俺はそんな親父に勝てないと感じ、ずっと大胆に行けなかった。
 だが、正伝は違った。あいつは天同家とは無関係に全生命体の希望と成るべく今も戦場に居る。そんなあいつを俺はずっと悔しい思いをしていたのかも知れない。ずっと俺は情けない親父として振る舞っていたのかも知れない。そしてギガントルの真っ直ぐさにも俺は悔しい思いをした。天同家でもないのにギガントルは全生命体の希望として役目を果たそうとした。まるで初めての戦いを実行したベアール・真鍋その者ではないか。そんな二名が俺を後押しした。親父の跡を継いで使命を果たせ……あの二名はそう叫んでると俺は解釈する!
 そうだ……親父はさぞ悔しかった。自分にもっと力も頭脳も度胸も良ければ……そんな親父の悔しさを払拭する為に俺は新天神武最後の最高官に成って三十の年を掛けて新天神武を変えてやる!)
 そして躯伝はメランコリーナと共に鬼ヶ島へと向かう……そこで一つの別れを迎えるとも知れずに!

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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