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一兆年の夜 第八十六話 躯伝の空 躯伝、政治に参加する(八)

 四月八十日午前四時十二分十一秒。
 場所は新天神武首都ボルティーニ府中央地区天同躯伝の豪邸。
 齢十三にして二の月と一日目に成る神武人族の少年が出て行く。背負い鞄の中には一の週は保つ程の七種の果物と野菜、計六十頁にも成る手持ち帳簿、雄略包丁五本を無理矢理入れ込む。使い慣れた神武包丁を左腰の縄に引っ掛けて。但し、出て行く前に住み慣れた豪邸に体を向ける。するとそこに躯伝が彼を睨む。
「正伝、立ち入りが認められない土地に仲間を連れて四十八名を死なせ、一名を病院送りにした責任はお前にもある。なのにまだそこから目を背けるのか?」
「親父に何がわかる。俺はあんたと違って新古式神武を立て直す為に戦った。未だ政府が重い腰を上げないから俺が仲間を引き連れて今もあそこで戦い続けると噂される新古式神武の住者を助ける為にな!」
「その話をお前に教えたのは……ギガントルか?」
「ギガントルじゃないよ。ギガントルが来る前にここに尋ねて来た鴨族のおじさんからだよ」
「鴨族……どちらにしてもあの土地へ踏み出す為にはまだまだ新天神武の軍事力では無理だ!」
「やってみなきゃわからないだろうが!」
 と言うかその前にまだお前は過ちを繰り返すのか……あれだけ俺に怒られながらまだ--と躯伝は豪邸内まで響く怒鳴り声で正伝を叱り付ける!
「仲間は自分の意志で俺に賛同し、自分の意志で廃都六影府で命を落としたのだぞ。あいつらの死を意味亡き者にしない為にも俺は……俺自身の力でもう一度あの大地を取り戻す!」
「まさか傭兵団を再び……反省しないというのか!」
「反省する時間があるなら俺はもう一度あの大地を取り戻す。ずっとあんたみたいに家に帰ろうとせずに無為に生きるよりかは生きてると言えるだろうが!」
「お前と言う奴は!」躯伝は背を向ける。「俺が無為だという理由は何処にある?」
「お祖父さんの遺志を継ぐとか散々言っておいてやるのは政に身を投じて何一つ新天神武の重い腰を上げる努力をしない所だよ。そんなに党の方針に只従うだけの生き方が良いのか!」
「もう天同はないのだぞ!」
「それで先代達は納得するのかよ!」
「……」
「俺は違うな。向こうで再び国家神武を取り戻す。それがあの鴨族のおっさんの願いだ!」
「出来るのか、それが?」
「俺は気付いたんだ。如何やって藤原大陸を始めとした喰われた土地を取り戻せるかを……あの失敗は無意味なんかじゃない!」
「……良いだろう」躯伝の意地は折れた。「お前はもう俺の息子じゃない……好きにしろ!」
「じゃあな、親父」そして正伝は背中を向けて旅立つ。「俺が目指すのは喰われた大地で今も抗う者達を解放する事さ!」
 こうして二名は親子の縁を切った……それを見つめるのは齢十一に成ったばかりの躯伝の第二子烈希である。
「お父さん、ひょっとして兄貴を行かせたの?」
「もうあいつは俺の息子じゃない。だからあいつがどんな道を進もうとも俺は何も手助けはしない」
「全く意地っ張りだね」
「……」
 躯伝はこの日、必要なこと以外は一切喋る事はなかった……
(以降、正伝が各地で優秀な生命或は退役したばかりの軍者を集めて傭兵断らしき物を作る噂は聞いたな。それでも俺は今も残る親心に従い、家族が出来たばかりのポ太助にあいつの動向を探るようお願いしたな。もしもあいつの身に何かあった時の保険を掛ける為にな。
 それから二の年より後だったな。確かあれは--)

 十月七十七日午後十一時二分二秒。
 場所は新天神武首都ボルティーニ府中央地区。
 建設中の新たな神武聖堂を眺める生命が二名。齢三十三にして七の月と十日目に成る躯伝と齢三十二にして一の月と一日目に成るソーラ六代。二名はメランコリーナの提案に依り、二名だけでそれを訪れるよう提案される。だが、ここで懸念されるのは十八の日より前の早朝に襲撃した銀河連合だろう。それについては既に提案者である齢三十二にして七の月に成ったばかりのメランコリーナと齢三十一にして二の月と二十八日目に成るヤマビコノシドウシンが物陰より見守る。当然、この二名だけでなくシドウシンの命により二十五名が周りを囲むように配置する。
 さて、躯伝夫妻に支店を集中させよう。二名は次のような会話を嗜む。
「とうとうここまで来たな」
「ええ、もう直ぐね……躯伝」
「ああ……実は」
「如何したの、唐突に?」
「ギガントルの事だがな」
「ええ、彼は貴方に一縷の望みを託したみたいね」
「それだけじゃないのだ。あいつは後二の年の後に立候補するそうだ」
「それは初耳ね。如何してなの?」
「何でも計三十の年までにダドロギノカモミチの果たしたい遺志を達成する為なのだよ」
「ダドロギノカモミチッてギガントルの恩師の?」
「ああ、大陸藤原南側で唯一生きていた住者の内の一名でこの環境に来て直ぐに環境病を発症し、道半ばにして想念の海に旅立った生命だよ。あいつの死を忘れない為にギガントルは四の年より前に俺達の家に来て、俺の秘書に成ったのさ」
 其れであの子は何事にも必死だったのね--思い当たる節に気付いたソーラ六代。
「思えばダドロギノカモミチか……もしかしたら正伝の言うある鴨族のおじさんとは、奴の事だったのかも知れない!」
「正伝ね。いい加減、許してあげたら?」
 それは出来ない相談だ--と意地を張る躯伝だった。
「全く困った二名ね……其れで大人と言えるの?」
「あいつの言う事もわかるぞ……だがな、近道ばかり行くのでは結局は何も変わらない。其れに俺は無為に過ごした覚えはない。こうしてこの神武聖堂を建設する所まで行き届いた。俺だって親父に逝った事を真実にしないなんてのは流石に--」
 とその時、齢十七に成ったばかりのアデス九官族の少臨兵キュー明が真っ直ぐ躯伝の所まで飛んで来た!
「タ、タイヘンデスウウウウ!」
「な、何だ……キュー明!」
「イデエエ……アタタタ!」
 痛いのはこっちだ……嘴からぶつかってえ--と下唇が切れてソーラ六代から渡された手拭いを左手に傷口を抑える躯伝。
「何かあったの、キュー明?」
「ハアハアハア、クデンサマトエピクロストウデワカレタギガントルガ……ギガントルガ!」
「あいつが如何したって?」
「ウウウ、ギガントルガ、ギガントルガ……」
「何、あの子が如何したの?」
 ウウウウ、ヤッパリイエマセエエン--と悲しみの余り、キュー明は応える事が出来なかった。
「……そうか、キュー明」涙を見せまいとキュー明とソーラ六代に背中を向ける躯伝。「報告有難う」
 背中を見てソーラ六代は察した--ギガントルは果たす事なく、想念の海に旅立ったのだと!
(全く早く死んでしまって……全くカラッ佐と良い俺を急がせやがって!
 そんなに俺を急がせたいのか、あいつらは。そんなに俺を新天神武の頂点に立たせたいのか、あいつらは!
 ……わかったよ、わかったよ。もう遠回りの時間はここで止めにしようか!)


 ICイマジナリーセンチュリー二百三十年十月七十九日午後七時四十六分二十一秒。

 躯伝は其処で話を止める。
「え、如何して話を止めるのだい?」
「キリが良いのでなあ。ここまでじゃ、わしが政治に興味を抱き、活動するお話というのは」
「ギガントルさん……ウウウウ!」
「婆さん、泣くなよ!」
 若造乃手拭い端要らん環--とバレイバーの御厚意を撥ね退けるガンジャー。
「さて、そろそろ支度でもしようかのう」
「全部話すまで時間掛かる……って!」
 そこで躯伝は前のめりするように倒れる。二名は直ぐに心肺蘇生法をする。
(グググ、息が、まだ、だ。まだ、わしは、わしは、死ぬ訳には、ゆかん。わしはまだ、こ奴等に、全てを、話しては、おらん、のじゃ!
 まだわしが政治活動してゆくお話を終えたばかり、じゃ。ウグググ、後はギガントルの遺志を継いで最高官に成るお話ここに至るまでのわしと正伝、そして最後の子である蒼天そうてんに後を継がせるお話が、残っておる、というのに!
 持ち堪えろ、よ、わしの、肉よ、お……!)
 そして躯伝の意識は一の週もの間、暗闇を彷徨う……

 ICイマジナリーセンチュリー二百三十年十月七十九日午後八時〇分二秒。

 第八十六話 躯伝の空 躯伝、政治に参加する 完

 第八十七話 躯伝の空 躯伝、最高官に就任する に続く……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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