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一兆年の夜 第八十六話 躯伝の空 躯伝、政治に参加する(六)

 午後七時零分十五秒。
 場所は第三北地区。その地区で最も有名にして高級果物料理屋の一階三十名様用客室。
 そこで躯伝達は子供の味覚では食べ続けるのも難しい果物料理を正しい作法に乗っ取り口にしてゆく。
「躯伝様は食事に関しては果叉くたさも棘付き匙も更には小型簡易訪朝も実に見事な使い方を為さってますね」
 何言ってるの、このもの--齢七にして十の月と一日目に成る躯伝の第一子正伝がバレルバーに肩車する!
「コラ、正伝。お客様だぞ。例に失するから止めろ!」
「親父はいいよな、母ちゃんにいつもしんぱいばかりかけて!」
「言われてますな、躯伝様!」
「ああ、ソーラに対して申し訳付かない事は重々承知済みだ……という訳で」そこへメランコリーナが正伝を引き離す。「メラン、尋ねたい事がある!」
「放せ、このかいりきババ--」
「何デショウ、躯伝様?」
「正伝はちゃんと食べ終わったのか?」
 いえ--その返事を聞いて躯伝は少しだけ正伝に小言を呟いたのは紹介するまでもない。
(はあ、俺が子供時代もそんな感じだ……だからって注意しない訳にはゆかない。これだから親は辛いのだ!)
「いい父親に成るのはさぞ大変でしょう?」
「若くして父親に成った俺だからな。しかもソーラを慰める度に抱き合うのだからその分だけ子供が多く成るのは致し方ない」
「成程、それで現在は何名ほど産まれましたか?」
「次で第四子だ。まあ誰が付けるかは決めてないのが現状だ」
「そりゃあ大変だな。それでどれくらいがこれからも名を残すのだろうかなあ?」
 如何ゆう意味だ、バレルバー……内容が見えないぞ--と躯伝は尋ねる。
「それはね、次の通りだよ」
 バレルバーに依ると天同家の生命は跡継ぎ以外は一般生命の婿養子或は嫁養子に成る。特に婿養子が父方で連続する事例は少ない。バレルバーが現時点で調べ上げた所に依ると婿養子で男系の連続性が確認されたのは八弥の系統に於ける色葉家に婿養子に成った天同家の雄だけ。それ以外は全て雌の子だけしか子供が出来ずにそこで連続性は途絶える。これを聞いた躯伝は次のように答える。
「成程な。それは一大事かも知れない。と成ると俺達もそろそろ天同家の血を残す為の何か良い制度を設立する時かも知れないな」
「と言ってもそいつを作るにはやはり三国分領宣言をした七みたいに三つに分けないといけないな……だが、七の時みたいな分け方は今後も通じない。何せ銀河連合はそれを想定して次の方法を打ち出すやも知れない!」
「次の方法とは何だ?」
 さあな--肝心な事だけは応えない当たり、徐々に旧ボルティーニに近付くと躯伝は感じ始める。
(ボルティーニと言う苗字で思い付くのは文献で紹介された物真似する所だろうな。其処をやらない当たり、まだまだ遠いかも知れないが……何故ボルティーニの苗字にしようとしたのかね、先代の旧バルケミンの雄は!)
 尚、その苗字にしようと考えたのはバラリナ・バルケミン……物真似の歴史を研究する雌が初代である。後で気付くのは遥か先の話。
 さて、バレルバーは唐突に次のような話に切り替える。それは--
「ああ、そうそう。俺と同名の先代バレルバーは最高官を辞めた後に書物を残したそうだ。しかもご丁寧に石板を彫って最大五百十二枚も石材を消費してな」
 全く変わり者であるのはバルケミンの頃から全然変わってないな--と溜息を吐く躯伝。
 それに依ると選挙戦略を上手く戦場に生かす事が出来る者は軍者に成っても下々の者の足を引っ張る事がないだろう。だが、政治の世界ではそこに至る者は一名たりとも見た事がない。大概は詩に耽って技術を疎かにしやすい。言葉選びに時間を割いて鍛錬を怠る者が多い。演説屋や選挙屋が技術者の為に成らないのは彼らが詩者へと逃げ込む為。言葉で説明出来る事に逃げ込む為。故に下々の者達は迷い惑う。
 だが、もしも選挙戦略を戦場に置き換える者が居るとすれば即ち、何処へ転がろうとも百戦百勝は約束されるが如し!
「成程……全然わからん」
「つまりだ……鍛錬を怠るな。大体生命というのは先祖のバレルバー曰く一度誰よりも高く成ると最高潮に達したと勘を違え易い。だがな、それはあくまで生涯と同じくほんの一歩にも満たない高さなのだよ。これは知ってるでしょ、躯伝様」
「ああ、俺達はどれだけ進歩したと思っても死んでからそれがたったの一歩にも満たない……という死んだ親父に何度も言われ続けた曖昧且簡単には説明出来ない真理だろうに」
 そこなんだ……だから学問の道は武の道と一緒なのだよ--とバレルバーは断言する。
 その話を出した事の本当の意味を探り始めると躯伝の中で何かが閃く。
(……待てよ。だとしたら俺は初心に帰らないといけないな。何と言う事だ。対立候補に勝つ方法があるじゃないか。如何して俺は其処をすっかり忘れてムカムヒの言う事ばかり聞いて来たのだよ!)
 何かを閃いた躯伝は齢二十九にして二の月と二十四日目に成るボルティーニ栗鼠族の女性リリーエ・リッサールの所まで駆け寄る!
「な、何でしょうんか?」
「リリーエ、食事中か?」
「いえ、もう後は水を飲むるだけでするわ」
「地図を出してくれ!」地図を出させた躯伝は利き指で次のように指示する。「早速だが、明くる日に回る予定地にこれとこれとこれを回るぞ!」
「え、其処は数もまま成らなくんて大して票は--」
 俺は天同家の雄だ……少数を無視して何が全生命体の希望だああ--と言い切る躯伝!
「ですんが、その分だけ遊説時間を削るん事に成りますんが……宜しいでしょうんか?」
「其処はお前の可愛い夫とあの鳩がやってくれるよ……なあ?」
「それは何と言う無茶投げですーか!」
 だから可愛いは余計ですん、躯伝様よお--と恥ずかしがるリリンジは二の年より前に憧れのリリーエと結婚して一名を儲けた……養育は姉のリリーナルと共に行われる模様。
「やるんのですんね。では如何して其方の地域にまで足を運ぶんのですんか……理由を教えて貰えないでしょうんか?」
「それは……死んだら大きな事も小さな事も全てが平等に来たる。それを思い出したからこそ俺は例え少数でも放っておけないと決めたのさ!」
 ま、まあ躯伝様がそうん仰るんなら正しいでしょんうね--と今一納得しかねるリリーエだった。
(余りにも余計な足運びだと誰もが思った俺の判断……ところがこの狙いは功を奏した。何と行く予定だった隣の多数地区の生命が駆け付けて少数も含めて大きな拍手のうねりと化したな。成程、これも選挙戦術なのか。勉強に成ったぞ。その後も少数だろうと行くと決めたら足を運び、こちらも狙い通りと成った。
 そのお蔭で投開票では有力候補の一名だったイタレバよりも千二百票ほど引き離して当選したな。はあ、正直俺の判断は博打その物だな。二度とやらんぞ。
 序に剛力党は如何成ったか……僅か十議席足りずに鶴翼党政権は続行したな。全く真鍋ベア十八は演説が上手過ぎるな。あいつが第八十五代最高官に就任するなんてなあ!)

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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