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一兆年の夜 第八十六話 躯伝の空 躯伝、政治に参加する(四)

 十月三十七日午後十時二十四分六秒。
 場所は首都ボルティーニ府中央地区。その中で一番大きな豪邸。木造建築で全四階。地下は二階まで。
 そこに住むのはムカムヒ・笹原。彼はもう直ぐ九十七から百三十五名目の子を儲ける。しかも彼の妻が産卵するのは地下二階。そこで百足族の生命は幼少期に過ごし、八の年に地上へと姿を現す。その為、一階から地下二階まではムカムヒ一家が暮らす。
 では残り二階から四階は誰が暮らすのか? 答えは天同一家。駆伝とソーラ六代、それから齢三にして二十五日目に成る正伝と齢二に成ったばかりの烈希れっきの四名。付き者と護衛を除けばそう成る。
 如何して天同一家が住むように成ったのか? 理由はやはりムカムヒからの温かい恩義を受けてである。通勤時間の短縮に繋がるだけでなく、家族と離れ離れに成る事はない。反対していたソーラ六代もこれには納得……する筈だった。
 ところが齢十九にして十一の月と二十三日目に成る雄略人族の少女ソーラ六代は帰って来た躯伝に怒りの表情を見せる。
「遅いね、駆伝」
「仕方ないだろ。視察の時間が長引いて」
「ムカムヒ一家と一緒に暮らせばずっと駆伝と一緒に成れる……そう信じていたのに」
「秘書の仕事は議員よりも大変なんだ。だからさあ--」
 もう言い訳は聞きたくないから--背中を向けて涙を見せないソーラ六代。
 泣く姿もその仕種さえも隠そうとするソーラ六代。だが、躯伝は彼女の表情こそ見えなくとも指先にから順に体を震わす挙動から悲しみに満ちる事を察する。
「済まない、ソーラ。何時も約束を守れなくて御免。こ、今度こそ--」
「それを何回信じました? 十回? 二十回? いいえ、百回目は当の昔に越えました!」
「だよな。俺は正伝の誕生日にも、烈希の誕生日にも全然来れなかった。勿論、ソーラの誕生日にも……ハハハ、何が政治の世界さ。全生命体の希望を目指す余り、身近な者達を悲しませる俺は、何といけない雄なのか!」
「ええ、駆伝は自分達よりも他の者達にばかり気にする。そのせいで守るべき幸せを直ぐに手放してしまう。何時だってそうです。これが天同の雄が背負う宿命なのですか。これが天同の仙者が背負う宿命ですか……だとしたら私は、私は如何すれば良いのでしょう?」
「そんなのは--」
「おやおや、何かの声に釣られて……参上しましたこのボルティーニの雄」そこへ齢二十三にして二十四日目に成る仁徳人族の青年が割り込む。「呼んだか?」
「貴方は誰です? 夫婦の会話に入らないで下さい!」
「えっと……お前はバレルバー・ボルティーニ!」
「バレルバーってあの政治評論家の?」
「いやそれだけじゃない。俺様は経済分野でも新天神武に働きかけるのだがな」
「あのなあ、バレルバー。これは夫婦の話だ。お前の話は二の日より後に聞いてやるからさっさと帰れ……今日は遅い!」
 何だよ、折角面白そうだと思ったのに--と呟き、屈し退くような背中を見せ付けて帰ってゆくバレルバー。
「はあ、もう悲しみ気がなくなったね……躯伝」
「もう遅いし、そろそろ寝ないと十分な睡眠が摂れないぞ」
 いいえ、貴方が眠るその時まで付き合ってあげるわ--とソーラ六代は振り向き、涙を吹っ切るような笑顔で駆伝に飛び込んだ!
(その時のソーラは可愛かったな。余りにも可愛すぎてまさか露店の時間だけじゃなく、蒲団の中でも激しく成るとはな……それから翌の日の朝六の時だったかな? 余りに激しいので俺達は正伝と烈希の泣き声で起こされたな。まさかあの二名に起こされるなんて夢にも思わなかった。普段だったらメランかイタドウヨが起こす筈だったのにその日に限ってあの二名は寝坊するとはな!
 理由が気に成ってその日の実務に集中できなかった事は内緒だ。ムカムヒに怒られた事も含めてな。漸くその日の仕事が終わり、メランとシドウシンに尋ねた。するとあいつらは心配で下りてきて覗き見していたそうだな。全く心配性な二名だから困った話だよ!)

 十月四十四日午後十時零分二秒。
 駆伝の帰りを待ち続けるソーラ六代。そして玄関の扉は開いた。
「お帰り、躯伝」
「唯今、ソーラ……いや」突然、何かを言おうと躊躇い始める躯伝。「えっと、その、何だっただろう?」
「駆伝、はっきり言いなさい!」
「……喜べ、ソーラ!」駆伝は抱き付く。「明くる日は何と休みを貰った!」
「そ、それじゃあ--」
 ああ、誕生日を祝うぞ--ようやく約束の日に家族が揃う時が訪れた!
「良かったわ」嬉し泣きをし、涙を躯伝の左肩に落とすソーラ六代。「あ、濡れた?」
「俺はずっとソーラや正伝、それにれっきに何一つ祝いの日に来れなかった。だからこのくらいの涙で濡れて当然だ!」
 格好付けちゃって--と呆れるソーラ六代。
「良カッタネ、ソーラ」とそこへ齢十八にして十一の月と九日目に成る神武鬼族の少年ヤマビコノシドウシンと共に階段の向こう側より出て来るのは齢二十にして五の月と二十八日目に成るルギアスカンガルー族の女性メランコリーナ・レヴィルビー。「これで一家揃ッテ祝イ事ガ出来るわ」
「その前に二名共」流した涙を拭い、怒りの形相で二名を睨みつけてこう放つソーラ六代。「さっさと寝なさい、明くる日は朝から忙しいよ!」
 二名はそのまま自分達の部屋へと戻っていった。それを見て躯伝は苦い笑顔をする。


(明くる日は予期せぬ事態は起こらなかったのう。それは助かった。何か起こったら家族のみならず、仕事を放り投げだしたとしてわしに悔いが残っただろう。但し、わしはその祝い事を素直に祝えなかったな。余りにも仕事の事が気に成って仕方なかった。そのせいで折角の祝い事でわしはソーラに散々怒られたな。全く約束の日に来られなくとも怒られ、来れたとしても仕事が気に成ってそのせいで対応を誤って結局は怒られる。ソーラには大変な事をさせてしまったな。反省しないとな。
 さて、次からは政治の舞台にわしは本格的に進出する訳だな。ちょうどムカムヒが引退し、その枠にわしが入る事でな。だが--)

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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