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一兆年の夜 第十三話 天同生子 継承篇

 ICイマジナリーセンチュリー四十二年四月五十四日午前二時二分一秒。

 場所は国家神武首都四門中央地区中央官邸重要会議室。
 そこにいる誰もが覇気を無くしていた。理由はお日様を表す赤丸模様の旗を背に
座る者がもはや生気が無かった。齢は一の週が過ぎれば三十になろうとしている肩
まで伸びる黒髪で均整のとれた顔付きである。
 けれども--
(私はもう美しくない。壱生を養子にしてからの一の年は幸せだった。その頃までは
美しかった。
 けれども心のどこかで零とリモートを死なせた罪と壱生を勝手に自分の子にした罪
で自ら戒めたわ。それがその後から続く二の年。私達国家神武に暮らす者達に降り
かかったわ!
 私が齢二八だった頃、セミ族が殻を破る季節だわね。マンドロス山の除去作業で
おぞましきモノ達が襲来。国防官真島ベロウ都もこれを倒しに出撃した。結果は軍の
勝利だったけど、真島国防官と陸上官藤原トガ由紀を含む五百以上の兵士が土に
還ったわ。
 同じ年、雪が積もる季節だったわね。国家神武の全ての北門でおぞましきモノ達が
襲来。防衛にあたった兵五十名が食われたわ。幸い本隊が駆けつけたお陰で
おぞましきモノ達は倒せたけど、こんな勝利は空しいわ。
 私が齢二十九になった頃、桜咲く季節だわ。国家神武の南以外全ての門で
おぞましきモノ達が上空から地中まであらゆる手段で襲撃。防衛にあたる者、援軍と
して駆けつける者、そして国民による団結でこれを全て倒した。
 でも、三千名に上る者の命は旅立ったわ。想念の世界へと。その中には国防官
モンデ・メエフィン、上空偵察大臣白石カブ朗、陸上副官上山ブル彦もいたわ。
 戦いは私の予報が正確だったから良いけど、皆を死なせずに予報する事はもう私
には出来ないわ。最愛の劣弟零を死なせたあの頃から。
 もう私には何が残るの? 教えて、誰か!)
 両眼の大きさは変わらず中庸。
 だが、その眼にはもはや当時の強い光は出ない。それに合わせてか、鼻も唇も
弱々しい印象を皆に与えてゆく。
(私はもう国家神武の象徴ではない。今は何も救えないただ一名の生命そのものよ。
 こんな私に何をすればいいの? 何もしない事は象徴たる私の役目。
 けれども、国民を活気づけたり、予報をしたり、任命権を行使するのも私の役目。
 でももうそれらも何の意味を成さないわ。何の--)
「しっかりなさいませぬかだ、生子様だ!」
「! ア、アンジェル?」
 そんな彼女でも励まされる事だけは変わらなかった。齢二十五にして三の月と
三日目になる神武八咫烏族にして官房官を務めるアンジェル・アルティニムムは
父親譲りの現実主義思考で生子と呼ばれる仙者を渇を入れた!
「あなたは何者だなのですだ? 国家神武だの象徴だではありませぬかだ!
 こんな姿だを見て国民だは喜びますかだ! あなたの第一子だである壱生様だが
お喜びだになられますかだ! 答えて下さいだ!」
 アンジェルは必死に生子を奮い立たせようとしたが--
「もういい。何回言われようとも私にはもう何も無い。
 かつては仙者と呼ばれた天同生子は死んだのよ。四の年より前に零を死なせた
その時から」
「で、ですーが、零ー様の後ーを継いだー真島殿ーやメエフィンー殿だーって死んだ
はーずの生子ー様を支ーえたじゃありーませんか!
 今ではー国防官にーなった僕ーは必死でー生子様やあなーた様が御ー守りになら
れーる国民ー、それーに僕のー可愛いー兵士ー達をお守りになーってるのーです
よ! こーんな弱ー々しく、偵察ー以外に能ーのない僕ーにだってー!」
 齢三十一にして十二日目になったばかりのアリスト犬族の中年は気苦労のせいで
両耳の部分が灰色になった体毛を周囲に散らしながらも生子を説き得ようとした!
「ありがとう、ピート。あなたの励ましは聞いたわ。
 けど、もういいのよ。あなた達は私の事はもう無視しても良いわ。もう私は何も
視たくないのよ」
「せ、生ー子様……」
 生子はもはや誰の耳も聞き入れない深刻な状態だ。それは唯一の弟となった同じ
年である国家最高官の言葉も届かない。
「姉上の言うとおりだ。もはや今の姉上には誰の言葉も動かすには至らなくなった。
 こうなってはいつも通り我々独自で勧めるしかない。その後に象徴である姉上の
任命権を行使して貰えばいいではないか」
「嘆かわしっい。私めが強っければ零様やリモート様っを!」
 齢四十一にして四の月と三十日目になるアリスト猿族にして生活安全官である
老年は二名を救えなかった事を嘆いた。
「それは、私も、同じ! このライッダ・来栖は、どう、出来る!
 これも、命の、運びよ」
 齢三十五にして六の月と二日目になるクレイトス飛蝗族にして文部官ライッダは
詩的な事を言った。
「もういいだろ! ここからは私が場を取り仕切るぞ! と言っても私も寂しい限りだ。
もうあいつと喧嘩出来ないとなれば、な。とにかく重要課題から先に出す!
 えっとだな、マンドロス村がようやく生命が住める地になった件についてだが……」
 国家最高官を中心に重要課題について進められてゆく。そえれをただ聞いている
だけしか出来なくなった生子は自らの殻に閉じこもりながらもなお諦めきれない思い
を巡らす。
(マンドロス村……そうだわ! あそこを壱生の故郷にすればいいわ。
 そうすれば壱生も私のように象徴として振る舞わなくて済むわ。
 いいえ、そうじゃないわ。私の魂は死んではいない。
 何故ならまだ希望の眼が残っているもの。我が子のように育てた壱生という希望の
芽を。まだあの子を育てたい。
 でも無理だわ! 私は自らの未来を見たわ! 私は三十に成れば境界の外に旅立
たなくては行けない
! 私は一兆年の神々と共に向かわなければいけないわ。
 だから壱生の面倒を誰に見ないとならないか。乳母のユーミ? いえ彼女では心細
い。他にいるとするなら。そう、いるわ。リムーバにも面倒を見させよう。
 ふふ、私もまだまだ勝手ね。最愛の子にここまでやろうと考えるなんて。
 でもリムーバを付けて大丈夫かな? あの子は恥ずかしがるかもね。
 壱生は雄の子だから)

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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