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一兆年の夜 第八十五話 躯伝の空 躯伝、雄略大陸に着く(七)

 ICイマジナリーセンチュリー二百三十年十月七十七日午前十時零分十三秒。

 イタトラノの死に至るまでをガンジャーに話した躯伝。その時、彼は咳き込み始める。
「だ、大丈夫です科?」
「いや、まだ全てを話す余裕はある……が」
「牙……何でしょう科?」
「普通ならわしみたいな仙者でも七十以上も生きれば十分じゃ。けれども君のような生命が来た以上は全てを話すまで何とか生命力を保ってみせようぞ!」
「出、出模無理しない出、下さい。自分乃命牙大事です科羅」
 それを聞いて躯伝は何かを思い出す。そう、集落が如何してあのような風習を続けていたのかを。
(他社よりも先に己を何とかする……当り前じゃな。己を大事にしない生命が他者の為に尽力するのは只のお者好しで何の意味もない。寧ろ他者の助けにすら成らない……じゃが、あの時の集落は己を弁えずに他者を助けようと他者を死なせ続ける以外に選択肢がなかったのじゃ。そうだな……僕が--)


 ICイマジナリーセンチュリー二百十五年十月四十八日午後一時四十九分五十一秒。

 場所は酋長邸。
 イタトラノの葬儀を済ませ、事情について約束通り話す現酋長の百刀出。彼に依ると流れ星が落ちた頃よりここだけじゃなく、各集落で行われて来た。其処では抵抗らしい抵抗を試みる集落もあった。だが、抵抗した集落がその後どうなったかを尋ねられると驚くような事実が述べられる。
 実は流れ星が落ちる以前は集落の数は五十八もあった。ところが流れ星が落ちてからは半数の二十九。更には銀河連合に抵抗し続けた結果、ここを含めて僅か八つにまで減少。しかも減少すると同時に雌の子が産まれやすい性質と一夫多妻制に依る地の濃縮化に依る別の効果で既に見合いの組み合わせも大きく限定。追い打ちをかけるのはやはり南雄略に残る銀河連合の存在が北雄略との接触を防いだ事。これらの要因が重なり合わさり、南雄略は徐々に生命の住めない大地と化してゆく。抵抗すればより多くの集落を失う事に繋がり、防衛案として鎮めの雌制度が設けられた。要は形を変えた親善大使制度である。違いはやはり親善大使よりも性別から年齢まで限定されている事。それだけ南に潜む銀河連合は彼らの足や尻尾には負えない存在であろうか!
「わかってエエてるぞ。それエエれでもわしらには如何にイイにも成らないのじゃ!」
「だから私達は多数と生かす為に少数には銀河連合の怒りを鎮めようと思ってしまうのよ」
「ううう、ううううう!」
「銀河連合の怒っりが何だ……俺は、いや俺達はもっと怒っりで満ちているだろうが!」
「じゃがこれしイイしか道がない。仮に君達が居よウウよとも果たしてここをオオを救かのう」
「どうゆう意味ですか、それは?」
「奴等の拠点はアアは集落以上じゃぞ」
「集落以上だって!」
 百刀出は話の続きをする。実は駆伝が生前のイタトラノと共に深夜訓練した方角にある草香幡梭姫川には銀河連合の拠点が三つもある。しかも三つあるだけでなく、三つともそれぞれの役割を担う。
 一つ目は産卵という名の銀河連合の大量生産をする拠点、二つ目が作戦立案及び総指揮を任される前線拠点、最後が情報収集および監視を任される少数精鋭の拠点。これら三つがそれぞれの役割に専念する以上に恐い事はない。
「何か僕たちの想像を絶するような事態に陥ってるよ」
「そうなのよ。私達は事実上、銀河連合の要求に応えるしかないのよ……全てが断えるまで!
「一難を凌っいでも」
「より巨大な一難が訪っれる……か!」
 駆伝達来訪者にとって自分達のした事は結局は更なる脅威を招く事に繋がると……わかっていても認めずにいられない心がそこにある!
(だとしても……僕は認めない。折角ソーラへの想いがわかった僕なのに!
 なのに僕はソーラにより深い悲しみを呼び込むだけだったのか……認められるか!)
「駆伝様、心ヲオ鎮メ--」
 私も手つだう--ソーラ六代はメランと一緒に躯伝の左手を包む……震えを止める為に!
「ソーラ……君は?」
「君に助けられた。だから今度は私が君を助ける番なの……メランにばっかり好きにさせない!」
「ソーラ、ソノ呼ビ方だなんて!」
 駆伝はソーラ六代の優しさから目を瞑り始める。
(もう一度交信出来るか……いや、出来ないだろうな。この眼と同じく僕の、僕までに至る天同の連なる雄の能力は一の日に一度限りだ。ならば……己のもてる能力を活用して、打開策を思い付け、思い付け、思い付けええええ!)
 念じれば浮かび上がる程、都合の良い物は何処にもない。躯伝にはこの時、何も思い付かない。駆伝には……「駆伝様、俺があいつらを全て倒っせば済む!」だが、サルタビロウ五代は思い付いた--それは如何考えても成功しない作戦だった!
「サルタビロウ……何を馬か鹿みたいな事を口にするんだ!」
「そ、そウウじゃ。無茶はお止アアやめじゃ、若いの!」
「そうじゃなくて……俺が命を懸けて産卵拠点を落っとせば、後は補給の断ったれた二拠点なんて楽に出来っるだろうが!」
「出、出模拠点於落として模肝心乃前線基地牙あった羅--」
「其処は……酋長さんに頼っむぜ!」
 そう、残った八集落を一つにして南雄略を救う為の総力戦であった。余りにも勝算が低い戦いをサルタビロウ五代は決断した。これには躯伝もサルタビロウ五代の命だけでは済まないと気付く。
(総力戦の果てに待つのは何だ……だとすればやる事は一つ!)
「な、躯伝様?」
「わしらに何っか?」
「今直ぐ船に乗って……北に応援を寄越してくれ!」
 そう、南雄略だけで戦うにも援軍が必要だと判断した駆伝は僅かな可能性を信じてゴリン兄弟を……「序にソーラを北雄略に連れてってくれ!」折角助けた命が儚く散らない為に駆伝はゴリン兄弟にソーラ六代も頼む!
「え、躯伝……私も躯伝と--」
「良くない。持久戦では少しずつ僕らの内の誰かが死ぬ……だったら君の可能性だって起こり得る!」駆伝はソーラ六代の両肩を強く握り締め……「僕は……君が愛おしい!」次の瞬間、強く抱擁--同時に目を瞑りながらも既に涙を浮かべる躯伝!
 オウム族の返しをするようにソーラ六代も涙を浮かべて目を瞑ると同時に躯伝を抱き締める!
「躯伝様、ソレニソーラ……私には言ウ事ハありません!」メランコリーナは其処で良からぬ事を思う自分に気付き始める。「やはりカンガルー族デハ人族ト結ばれる事はない、デスネ!」
 そして躯伝とソーラは口付けを交わした!
(これは別れの口付けじゃない。安心させる為の口付けだよ。僕は死ぬ為に彼女を安全圏に送るのではない。生きて帰る為に口付けをした。僕は絶対に……死なないという事を示す為に!)
 それから五十五日午前零時一分二十八秒……草香幡梭姫川付近にある銀河連合の拠点が炎上--それ以上は何も語るまい!

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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