FC2ブログ

一兆年の夜 第八十五話 躯伝の空 躯伝、雄略大陸に着く(六)

 ICイマジナリーセンチュリー二百三十年十月七十六日午後九時三十二分十八秒。

 躯伝は一旦話を止める。既に就寝時間に入った為。ガンジャーにとっては就寝時間は十時なのでまだ大丈夫と訴えるも--
「良くないなあ。北と南に分かれていた事を忘れたわしじゃ。何とか思い出す為にも明日に回してくれい」
「そこまで乃覚悟牙あって乃事です科!」
「そこまでの覚悟があって、じゃ!」
 ……わかりました、躯伝様--納得し、寝袋へと潜る準備を始めるガンジャー。
 躯伝も又、齢七十を越えた肉体という一つ一つの動作が重い中で就寝の準備に入る。そしてガンジャーよりも十ノ分より遅くに眠りに就いた。
(思い出されるな。わしが……僕があれを聞いた瞬間に--)


 ICイマジナリーセンチュリー二百十五年十月四十七日午後十一時四十七分三秒。

 場所は雄略大陸南側有徳地方銀錯銘大刀集落。その中で四番目に大きな建物外にて。
 躯伝はイタトラノが居る方角へと向かおうとした時、耳の穴に何かを入れてしまう。
(……これは、音? 聞こえるのは……何時も気に成るあの灯り!)
 躯伝の両眼は青く輝く--それは自らの身体能力を大きく向上させる謎の輝き
一兆年の神々と交信する時だ。僕は知るしかない。もう黙ってはいられない。ずっと引っ掛かる。ソーラは如何して眠る時間に姿をくらます? 如何してソーラだけ夜に居ない? 他の姉妹に幾ら聞いても全然答えてくれない。集落の秘密だとか何とか言って。明くる日に酋長邸へ入る事が出来るけど、そこまで待てるか……いや待ってられない!)
 躯伝は堪忍出来ずに酋長邸へと登ってゆく。約束を守ると三の日より前に考えていながらも……好奇心に耐え兼ねて!
(確かに聞いた。あの悲鳴は……ソーラだ!)
 躯伝が利いた声……それはソーラの声に近い。初めて出会った時から電撃を走らせる躯伝にとっては無くては成らない存在へと近付きつつある。彼女なしの人生は後にも先にもない。であってそこまで絶たないのに如何して躯伝は考えるのかをこの時はわからない。運命がそう告げるのか? 一兆年の神々がそう告げるのか?
(僕の視界を妨げるように一兆年の神々黒く赤い何かが青白い何かに向かって口のような何かを広げる光景を……居てもたってもいられなあい!)
 躯伝は普段の状態とは思えぬ身体能力で僅か三の分掛けて登り切ると衛兵二名の制止を押し切って引き戸を抉じ開ける。すると中に小型化した望遠砲のような何かを二本肩に装着した百獣型がソーラ六代を追い掛け回す光景を目の当たりにした!
「まさか……ずっとソーラは、集落を、集落を守る為に?」
「来たの、躯伝?」衣服を剥ぎ取られ、哀れもない姿で窓際に背を付けるソーラ六代。「来ちゃ、いけない」
 若造が何勝手にイイに来ておるか--姿を現すは齢五十一にして二日目に成る雄略百足族の老年にして酋長である百刀出むかとうで十八代。
「銀河連合……そうか、酋長はこれと向き合う為にずっと……だとしてもソーラを死なせる訳にはゆかない!」
 包丁を抜き、真っ直ぐ百獣型に向かう躯伝--だが、肩に装着された望遠砲のような何かから放たれる何かを右足のすねと左肩に撃ち込まれて尻餅を付かされた!
「ウグ……この能力でも、届かない、のか!」
「い、いけないよ。この祟り祟りは……だれにもたおせないよ!」
 蛇の足だが、祟りとは南雄略の生命は銀河連合の事をそう呼ぶ。彼らは外と同じように何度も銀河連合を倒し続ける。それでも尚、圧倒的な強さを誇る一部の逸れ銀河連合に屈し、毎の年に必ず若い雌の生命を差し出して難を逃れるしかない。この年ではソーラ六代が鎮めの雌に選ばれ、一の週より前からずっと追い立てられていた。傷一つないのは南雄略の何処かにある不思議の泉で多少の傷を完治した為である。
(全く気付かない。ソーラはずっと無表情でメランに怒る時も僕に起こる時もずっと無表情だからわからなかった。僕は何て馬か鹿なんだ。一兆年の神々と交信する資格なんてない!)
 と言いつつもダレよりも生きたいという思いが強いのか、不思議な姿をした百獣型に依る砲撃に何とか頭部と急所を防ぐ。其れでも徐々に傷が増える。
「いけエエない。このまアアまだと、二名共たアア食べられてしまう。じゃが、わしみたいな古い生命では……勇猛はアアはやれない!」
「もうやめてえええ!」ソーラ六代は泣き叫ぶ……「躯伝をこれ以上きず付けるのはやめてええ!」初めて悲しみの表情を見せながら。「私ならいくらでもきず付けて良いからもうウウウウ!」
 傷付けて良いなんて……言うなあああ--だが、それが如何しても許せない躯伝!
「で、でも、し、死んで、しまうよ。それ、良くない、でしょ?」
「それでも、それでも」各所の出血量はそこまででもないとはいえ、全身傷だらけの躯伝はソーラ六代の身を案じる。「君は、僕と同じくらい、ハアハア……子供、じゃないか!」
「躯伝、躯伝……」
「ウウウ、済まなアアないさ。わしら代々のオオの酋長が」百刀出は涙を流しながら無力さを嘆く。「こんなにイイにも、役にイイに立たず、役にイイに立たないせいで、ウウウウ!」
「ウウウ、恐くて」
「いけない、近付く勇気牙、恐くてえええ!」
 人族と鬼族の衛兵も己の無力さに涙を流す。もっと力があればこんな事に成らなかった。だが、それでも--
「やはりここに居タノデスカ……躯伝様!」
「ここは俺に任せるっち」イタトラノは眼帯を外してメランコリーナを下がらせる。「今なら叔父さんの技がわかる気がするっち!」
「な、眼帯を……まさか--」
「済まないっち、躯伝様っち。如何やら運命は俺に五月蠅いみたいっち!」
 イタトラノが一歩近づく事に百獣型は駆伝の頭部に狙いを定めて躱す行動を採らないようにする。イタトラノはそれに従い、そして……全身三十七ヶ所に百獣型の何かを撃ち込まれる!
「イタトラノおおおお--」
「叫んで、る、場合じゃねええええっちイイイイ!」
 それはイタトラノ最後の叫び--と同時に駆伝への合図であった!
 躯伝の中で三の日もの間、木霊する言葉がある!
 --良いかっち、躯伝様っち。生命ってのは生きてると言えども所詮は一瞬の出来事っち。まっち、産まれてから死ぬまでの間なんざ一瞬だからその一瞬を少しでも輝かせるようにしろっち--
 それは一の日より前にイタトラノが言った些細な一言。だが、それが躯伝にとっては余りにも充実した物として聞こえ……青木瞳は更なる輝きを見せて青き光の炎を肉体に纏わせながら--たった一の秒しかない状態で百獣型を横一文字にした!
「な、これが……僕?」横一文字後に元の状態に戻るも、理解に苦しむ躯伝。「不思議な事が僕の中で……僕は一体何なんだ?」
 だが、そんな疑問よりも先に上着を脱いでソーラ六代の素肌を隠した後にイタトラノの所へ駆け寄る躯伝。だが……時既に遅かった!
「駆伝様……コレハ躯伝様のせいじゃ、ありま、せん、よ、、ようウウウ!」
「私が、私が--」
 ちがよ、誰の、誰の、せい、じゃ、ない、んだ、から、なの、に--そして号泣の嵐に呑まれる躯伝!


(イタトラノ……お前のお蔭でわしは最愛の者を守る事が出来た。だからお前はもう、安心して、眠るが、良いさ)

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
リアルタイムカウンター
現在の閲覧者数:
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR