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一兆年の夜 第八十五話 躯伝の空 躯伝、雄略大陸に着く(二)

 ICイマジナリーセンチュリー二百三十年十月七十六日午後零時五十三分三十一秒。

 話は再開された。話している間に躯伝はあの頃を少しずつだが、思い出す。それはまるでその中に転移し、身すらもその体験を思い出すように。
(そうそう、わしは……僕は揺れる中舟の中で自らも震え始める。恐かったな、あの頃を。恐かったな、待ち構える奇妙な格好をした銀河連合に対して。話を聞く以上に実物は見るだけで--)


 ICイマジナリーセンチュリー二百十五年十月四十五日午前六時五十九分五十九秒。

 場所は雄略大陸南側断崖。唯一外から出入りが可能な崖。
 それを慎重に登る七名。猿族や鼬族は断崖を登るのに適した四本足を持つ。だが、普段から平地での活動に適したカンガルー族は下りる分には支障はないものの、登る際にはその肉体が予想以上に大きな重荷と成る。無論、同じく平地での活動に適する肉体である人族も同じ。一方の鬼族は鬼ヶ島で暮らす為に身に付いた屈強な肉体である為に断崖を登る事に何の問題もない。
(メランが予想以上に疲れている。カンガルー族の肉体が時として山登りに適さないのが原因か……いや、それは違うか)
 尻尾を用いれば突き刺しつつ身体を持ち上げ、次の足場に前足を取る事も可能である。だが、その方法は余程訓練を積んだカンガルーの者でないと却って転落死の恐れもある。理由は尻尾に突き刺す際に振り子の原理で上下する為。しかも重力は頭の上から足下に向かう為、素早く次の足場に前足をやらないとぶら下がる羽目に。特にメランは生前、カンガルー拳法の基本は身に着けても応用の段階に至る前に父マンメリーを亡くした為に使い足としてまだまだ未熟の域……その為、尻尾を駆使した技術が未だ付け焼刃でしかない!
「はあはあ、ゼハアゼハア……こう成ッタラ尻尾を--」
 いや、今はやるな--と躯伝は右手で支えながら左手で止める合図を送る。
「躯伝様乃おっしゃる通りです代。ここは僕達が力を合わせて、登りましょう!」
「躯伝様、ソレニシドウシン」
 躯伝とメランは高さ成人体型六十もある断崖に苦戦しつつも力を合わせて登り続けた。
(一の時……かな、やっと僕達は大地を踏み締める事に成功した)

 午前八時零分五十四秒。
 一見すると断崖の上に待ち構える気配はない。躯伝とメランは登り切った時の疲れで直後の戦闘に参加出来ないと判断して五名の後ろに隠れる。勿論、引っ繰り返って成人体型七十の所にある海に投げ出されないよう慎重に。
(僕とメランは五名に頼るしかないよな。今の僕達に必要なのは軽い休憩だから)
 それから二名が岩陰に隠れてイタトラノら五名を見守る。
「叔父さんは言ってましたっち。空気を読めば……来るっち!」
「出て来ったな……そっれも堂々と!」
「あれが言っい伝えの」
逸れ銀河連合だっね」
「ウウウ、震え牙、止まらない!」
 それは犬型と猿型と雉型の三体。だが、その姿は剥き出した部分を毛皮で覆い隠すかのようだ。毛皮を纏う意味は常に生命を襲い、死なせた後に食べ残した毛の多い皮で自分達の着用する物を仕立て上げる。そういった意味では奴等も立派な銀河連合。故に怒りも込み上げる。
(その衣服を着用する為に死なせた生命の数を考えると……怒り震え始めるさ!)
 それを利用する足はない。躯伝はそう考えた。しかし、イタトラノ達は大きく異なった。
「如何なっち。怒りは時として空気の味を間違う可能性も秘めるっち」
「成程、確かっに。やはり左眼の光が暗っく成ると共に何か見えったのだな」
「そうゆう事で強く成る理由にするのは好きじゃないっち。これは俺が未熟だったから着いた傷だっち」
「二名共お喋っりの時間は」
「終わったぞ」
 三体は犬型、猿型、そして雉型それぞれ左足、中央、右足の方向に分かれて挟み撃ちを敢行する--イタトラノは一瞬の空気で岩陰に伏兵が居ない事を察知すると前後両足でそれを四名に伝える!
(この戦いは十二の分ほど続く。戦いの結果は--)


 ICイマジナリーセンチュリー二百三十年十月七十六日午後一時三十七分八秒。

 躯伝様、お気於確か似--ガンジャーの揺さぶりと甲高い声に意識を現実に戻す躯伝!
「あ、あれ? あ、わしは一体?」
「話乃途中出呆け始めます乃出心配似成って叩き起こしました!」
 そうか、済まない--躯伝は自ら話に集中し過ぎた事を反省した。
 其れから躯伝はキリが良い所に入るとガンジャーが淹れたお茶を啜って意識を繋ぐ事を確約。こうして話は再開された。
(結論から言うと苦戦はしたが、彼らは三体共倒した。傷を受けたのはゴリンラマノとゴリンラマン。二名共三十過ぎる故致し方ない。だが、五名が言うに三体共偵察の為にやって来たと主張する。逸れ銀河連合の偵察員三体掛かりでゴリン兄弟に傷を負わせる強さだとすれば--)


 ICイマジナリーセンチュリー二百十五年十月四十五日午前七時五十一分二十二秒。

 戦闘は終わり、応急処置と一時埋葬及び黙祷を済ませた七名。
「大丈夫?」
「大丈夫でっすが」
「液状型に掛かる心配をっする」
「空気を読む力は生命の体内まで読める訳じゃないっち」
「寧ろ出来たら武を尊敬すっる」
「それよりも今の話は本当なのか、イタトラノ?」
「液状型に関しては俺でも--」
「さっきまでの話じゃなくて倒した三体が偵察目的である話だよ」
 ええっち、本当ですっち--はっきり断言されては躯伝もメランも折角お染まった震えが蘇るだけだった。
「こ、恐イヨ」
「ううう、こ、恐くなんか、ないからな!」
「し、静か似!」シデンドウは数歩下がれば海へ飛び込む方向を背に向こう側より何か砂利が複数落下する男を聞き取る。「何科潜む!」
 まさっか--サルタビロウ五代だけじゃなく、他の五名も身構える!
 するとシデンドウが気付いた方角にある岩陰より人族に良く似た体形をした何かが現れる。全身衣服で包まれ、見えるのは視線のみ。その視線が生命なのか銀河連合なのかを判断するには誰もが正確な視力を持たない。
「僕が代表です」何故踏み出せたのかわからないが……「僕達は武内大陸の港から中舟でここまで渡って来ました」自然と躯伝はそのような行動を採っていた。「そちらが何者かを知りたいのでどうか言葉を発して下さい」
 すると人族の体形をした何かが「え、君がしきかんなの?」と言葉を発した!
(それを聞いた僕の中で雷に打たれるような痺れが来たね……それはそれは実に運命の出会いさ!)

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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