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一兆年の夜 第十二話 天同生子 激動篇(終)

 天同生子が寝室を訪れた時、一つの新たな生命がこの世に生を受けた!
「ああ、ま、間に合わなかった……」
 同時に二つの生があの世に旅立ってしまった。
 天同零とリモート・天同。その二名の生が。
「も、申しわけありません生子様! 私めがもっと奥様を無理なく出産出来ていればこんなごんな、ううおおああああ!」
 ユーミは天高く聞こえるかのように泣き叫ぶ! 彼女だけでなく、周りの者も二名の死を悲しむ!
 しかし、生子は己自身が泣く事すら認めなかった!
「おぎゃあああ、おぎゃあああ、おぎゃあああ!」
 生子は二名の愛の結晶に近付き、手刀で臍に付いている物を切り落とす!
「生子さばあああ! どどどうなされでゅどでずが!」
 泣いているのかはっきり話せないユーミの言葉に生子は新生児を抱いた!
「決まってるわ。私はこの子を二名の代わりに育てて、育てて……」
 生子はとうとう我慢の限界に達した--両眼から川のように涙が流れてゆく。
「うう、零。ぜろ。ゼロ、ゼロオオオオオオオ!」
 生子の慟哭は中央地区全体に鳴り響く!
「ゼロ、りもーと……ワタシハ、ワタシハド、ウスレバイイノ!
 ドウすればいいのおおおお!」
 彼女の言葉は片言から流暢に、そしてまた片言に移るように自己そのものを見失ってゆく! 彼女の自己を戻す者はこの部屋のどこにもいない。
 そう思われていたが--
「あ、ああ、ああああ!」
「! この子が? 私はこの子に?」
 生後間もない赤子は自力で泣くのを止んでいた--それを感じてか自らを取り戻す。
「あなたを絶対に守るわ! 何故ならあなたは全生命体の希望……
 あなたは私の弟零とあの子を愛した誇り高き雌リモートが遺した希望!
 そしてあなたは私を自力で救ってくれたわ!
 だから、だから私は!
 私はあなたの母親になるわ!」



 四月百六日未明。
 場所は中央地区神武聖堂。天同零とその妻リモートの国葬が始まった!
 国家神武全土の国民が長い列を作った!
 彼等の肉親である生子や読四、リムーバは勿論の事、零の親友である真島ベロウ都、陸上偵察官ピート・プート、更には天体研究家の板垣ツル夫といった多くの者達が彼等を偲んだ!
 天同零は国家神武の前身であるアリスト町の頃から勝手気ままな振る舞いで誰からも迷惑がられる存在だった。国家神武になった後でも同じだった。
 けれども彼はそれに反して好かれる存在でもあった!
 肉親の生子はともかくとして、よく喧嘩する読四や本来は彼の事を好かなかった愛する妻リモートを見れば明らかであった!
 国葬を執るのは生子。彼女は感情を込めて弔辞を読み上げた--激流となって大地に落ちて行くように涙を流してまでも!






  ICイマジナリーセンチュリー四十一年七月百七日午後零時一分二秒。

 場所は国家神武首都四門零の丘。そこは天同零とリモート・天同が眠る地。
 そこに齢二十七にして一の月と十三日目になる神武人族の女性が齢一と二日目
になる赤子を抱えて花束を供えた。
(もうすぐ一の年になるわ。あなた達の遺したこの子は立派に大きくなってるわ。
 この子を引き取ってから一の月が経過しても名前をどうするかで私達は大いに
議論したわ。産まれた地に肖るべきか、両親の名前を忘れないようにすべきか、
産まれた時の状況に合わせるべきかといった事をね。
 でも結局は私自身で付ける事にしたわ。なんたって私はこの子の母親なのだから)
 生子は赤子をあやしながら空の方を見つめた。
(空が近付いてる? もしかして板垣ツル夫はこうゆう事を報告しているのかしら?
 だとしたら私の勘ではおぞましきモノの正体は……いえそうゆう事は今は無しね。
 この子の名前の事について話を戻さないと。この子の名前は零の名前とリモートの
名前を組み合わせたものになるわ。わかる者にしかわからないけど。そして、そこへ
この子の母になった私の名前を組み合わせれば。
 この子の名前は)
 生子は赤子の方に優しい視線を向けた。
「ねえ、壱生いっせい。今日は何をして遊ぼうか?」



 ICイマジナリーセンチュリー四十一年七月百七日午後零時五分十二秒。

 第十二話 天同生子 激動篇 完

 第十三話 天同生子 継承篇 に続く……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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