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一兆年の夜 第十二話 天同生子 激動篇(七)

 午後八時五十分二秒。
 場所は国家神武首都四門中央地区天同零の館二階寝室。
 出産が始まっていた。リモートは激しい叫びを上げながらも助産師であるユーミ
からの助言通りに独特の呼吸法で痛みを抑えてゆく。
 そんな様子を見ていた生子はリモートの心配をしていた。
(腹を切らずに自力で産む。彼女も無茶をするわ。
 零の子だわ。零とリモートの愛情の結晶よ。それを自らの心身を懸けて産むなんて無茶だわ。それでも産もうとするのは彼女もまた天同に成ろうとしているのね。今は亡き私の母、天同子季のように。
 いえ、私が母上の心を勝手に解釈しても母上に叱られるわね)
 リモートは未だに苦しみの中にいた。彼女を心配に思ったのか次々と付添い者が増えてゆく。
 国家最高官天同読四、官房官アンジェル・アルティニムム、生活安全官
エウミョウル・ムルリリウーム、税務官フルシャル・シャウルル、文部官
ライッダ・来栖などそうそうたる者達だった。
「零の奴は何をしている! 妻が苦しむ中で側にいてやらないなんて!」
「最高官殿だ! 国防官殿だは今戦っておられますぞだ! これは我等だ政だをする者だとは都合だが異なる件だでありますぞだ」
「それは理解出来る! それでも普段のあいつなら私心で真っ先に駆けつけるべきだろうが! 心変わりが認められると思っているのか!」
「確かに! 国防官は、散々、勝手を、さられました、からね。
 でも、ここ最近の、あの方は、器が、少し、大きく、なられた気が、しますよ。そろそろ、大人に、なりますね!」
「なれえるかあの? 国防官んんはああ最高官とうお同じいいく子供おうっぽおうい部分があ残りまああすのおうで」
「一緒にするな! 私はあいつと違い仕事はちゃんとする方だ!」
「静かにせんかああ! あなた方には奥様の心配をするという心遣いがお有りならここで口喧嘩しないでさっさと励ましの言葉を一つや二つ仰りなさい!」
「「「「「はい……」」」」」
 ユーミの迫力ある怒声で彼等は黙り込んだ。
 リモートは今も苦しみの中にある。それも目に見えるもの全てが蝋燭の火を消し終えた煙のように歪んでゆく。「ああああ、ははああ! 揺れるよ、揺れるよ。辺りが揺れるよ!」
「しっかりなさい! まだ先は長いですわ! 後少しでも良いのです! あと少しの力でも自らの心を持ち堪えて下さいませ!」
(苦しいわ! 先は一体どのくらいなの?
 一の時? 二の時? 生命の誕生はこれほどまでに苦痛を伴うな--ん!)
 生子は強い気を感じた! それは生命に死を与えるために放たれる気だった!
 その時、三階の方向より階段を慌てて下りる足音が鳴り響く!
「何ですか! 奥様の気が居ても立ってもいら--」
「た、た、大変にゃあああ! 情無きモノが国家神武に侵入して来たにゃ!」
「何! おぞましきモノが!」
 齢二十二にして十一の月と一日目になる神武猫族のニャルタラノニャラレビコからの報告を受け、生子は気配のした方角に向けて大地を蹴った--それは風を切り、音を越えて行くように!
「あれ? 生子様にゃ?」
 周りの誰もが生子の生命の知を超えた速さに目が追いつけなかった。
「姉上はさっきまで居たのに? いやむしろ音が割れるような感じがしたんだが?」

 午後九時零分零秒。
 場所は中央地区未明。
 生子は気配のした方向へ向かう--音より速く、光に近付く!
(あれ? は零? いえいないわ!
 零が館へ向かって走っていたのを見ていたけど、どうやら幻を見ていたようね)
 生子はおぞましきモノを発見するとすかさず鞘を抜き、抜き身の神武包丁で正面から頭上へ正中線に沿うように一刀両断!
 だが、何かを放たれてしまった!
(いけないわ! あそこはリモートがお産をしている部屋!
 急がないと!)
 生子は何かが寝室に届く前に大地を蹴ってそれを打ち落とそうとした!
 その時、彼女の眼に移る光景は一巡してゆく--零を目撃したと思い込んでいた時の光景に誘われた!
(大地を踏んだ時に出来る砕けた石の破片。さっきここで誰かが強く蹴ったわ!
 しかも走るように。何者なの?)
 生子はそんな風に思いながら何かを打ち落とそうと向かった。
 しかし、事既に速すぎた

 同時刻。
 場所は中央地区未明。
 天同零はリモートの元に駆けつけてゆく!
「間に合え! あいつには俺が必要なんだ! リモートは立派な子供を産もうとしてるんだ!
 立派な……えっ! 何で姉貴がこんなと--」
 零は生子を目撃したように感じたが、それは気のせいだと気付く。
「姉貴がこんな所にいねえよな。って急がねえ--えっ?」
 零は自分の住む館の二階に向けて何かを放とうとするおぞましきモノを発見した!
「あの距離じゃ間に合わない! ならばあああ!」
 零は館へ向けて大地を強く叩きつけた--成人体型六十六以上ある距離を八秒台で走り抜ける速さで館に辿り着くと壁によじ登って二階寝室に届く寸前で--何かを左手で掴んだ!
「ぜ、零! お前何してるんだ!」
「兄貴か! 心配だったから駆けつけたんだよ!
 へへ、俺も勝手が--あぁ」
 何かはおぞましきモノだった--物部刃に似た物に擬態して寝室に向かって放たれたが、阻止される事を想定されたのか、それは零の左手を通して心臓を食らってゆく……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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