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一兆年の夜 第十二話 天同生子 激動篇(六)

 四月百十五日午前九時一分二秒。
 場所は国家神武首都四門中央地区天同零の館。四階建てになっており、寝室は二階に設置。助産師がいつでも出動出来るように一階には助産師室を設置。三階には館の主、天同零の個室がある。ここにはリモートと身内以外の立ち入りは認めない。四階は展望室を設置。ここでおぞましきモノがどこに現われるかを四六時中見回る事が出来る。
 一階玄関口で零は愛する妻リモートとお話をしていた。
「もうお喋りは止めだ止めだ! 軍全体の士気に関わるんだよ!」
「よくもまああなたみたいな者が士気の事を気にするんだね。大人のつもり?」
「お前は子供を宿しても言葉遣いは変わらんな!」
「誰のせいでこうなったと思ってるのですか!」
「いや、嬉しく思ってな」
 零の意外な解答にリモートは思わず顔を逸らせる!
「ここはそんな言葉を仰るではないでしょ?
 この子が動揺したらどうするのですか?」
 リモートのお腹は今にも爆発しそうな大きさになっていた。それを改めてみる零は安心出来ない顔になる。
「ど、どうしたの? そんなに深刻な顔になって!」
「だ、大丈夫だろうな、リモート! ちゃんと子供を産めるだろうな?」
「当たり前でしょ! 私はあなたと共に戦場を駆け抜けた雌だわ!
 あなたみたいに大きな子供だって私は無事に産んでみせます!
 なので……どうか零は生きて帰って下さい!」
 リモートは自信に満ちた顔つきで言った--零の安心出来ない心は払拭された!
「全く。行ってくるぞ! 必ず俺は帰る! 約束だ!」
「ええ、行ってらっしゃい!」
 零は館を出て行った……無事を祈って!

 午後一時二分一秒。
 場所は天同零の館一階食事部屋。
 リモートは昼ご飯を食べ終えた。その時--陣痛は始まった!
「ぐぐ、ま、負けないわ! こ、こんなことでイウウウ!」
 リモートは苦しむ! 奥歯を噛み締め、呼吸を整えながら痛みに耐える!
「はあ、はあ、はあ」
「ど、どうなされたのですか、奥様!」
 齢三十八にして七の月になるアリスト人族のユーミ・ライダルはリモートの側へ寄った!
「も、もうすぐかな?」
「まだ、まだです。この痛みは初めてでしょう?」
「? どうゆう意味?」
「初めてならまだ痛み出すまでは時間があります。ですのでその間に私達は付添い者の準備を始めないとなりません」
 付添い者。まず挙げられるのが天同零。だが--
「零を連れ戻すの? それは危険だわ! あの方を連れ戻すと今の戦いで死者を増やすかも知れないわ!」
「それは本音ですか、奥様?」
 ユーミはリモートの言葉が本音でないことを知っていた。それでもリモートは私の心と向き合いながらも公の心で話そうとした!
「それでも私は彼を戦場から連れ戻す事に反対するわ!
 これでも我慢してるのよ! 辛いのよ!
 今のは私の真な叫びよ!」
 リモートの言葉に圧されながらもなおユーミは自分を曲げなかった!
「それでもあなたは私の心を口の話すべきです! でないとお腹の子に良い影響を与えませんわ!
 どうか私の心を全て吐いて下さい! お願いしますわ!」
 ユーミは七等親の身体でなお横幅の広い熟女だ! その体型は却って威圧感を出す! それもあってついに根負けしたリモートは私心を全て吐いた!
 それは一の時が経つほどであった。すでに彼女の両眼から溢れんばかりの涙が流れていた。愛する夫である零への思い、ただ一者の肉親リムーバへの愛情、象徴天同生子への憧憬……あらゆる思いを彼女は全て吐いた!
「だから。だから私は零やリムーバ、それに国家神武に住む愛する神々やみんなが私の側にいて欲しいのよ! 私はこのままでは、ウウ! ううううああああ!」
「いけないわ! また陣痛が始まったのね! 奥様! 私めの両手を強くお握り下さい!」
 言われたとおりリモートはユーミの太く弾力のある手の付け根を強く握りしめた!
「ウガアアア! イウウウウ!」
「少しでもお痛みを私に流して下さいませ!」
「はあ、はあ、はあ。これで二回目。まだなの?」
「ええ、まだですわ」
「呼んで」
「は? どなたをお呼びすれば宜しいでしょうか?」
 リモートは憧れの者をお呼びするようにユーミに告げる。

 午後三時二分一秒。
 天同生子は館に着くと直ぐにリモートの所に駆けつけた!
「お腹を触ってわかるわ。どうやら零の子は胎内から出ようとしてるわ」
「ええ、はあはあ」
「生子様! リモート様は三階名の陣痛で心身共に消耗しております。雑巾がいくらあっても足りませんわ!」
「いや、雑巾だけじゃないわ。彼女の体力がこのまま持つのかが心配ね」
「大丈夫であります、生子様。わ、私はこの子を産むまで耐えます、わ」
「と、ところでリムーバさまをお見えにならないのですが?」
 ユーミはリムーバが居ない事に気付いた。
「あら? あ、あの子は、はあ、朝早くに、はあはあ、零より先に廃マンドロス山に、向かった、わ!」
「奥様! 無理してお喋りなさらないで下さい!」
「いえ、リムーバはずっとここにいたわ。どうやら行く振りをしてあなたの事が心配のようね」
 生子はリムーバが真実でない事をリモートに告げたのを察知した! 本来なら誰よりもよく知るリモートならそれを認めないが--相手が天同生子なら認めざるをえない!
「そ、それじゃああの子は今頃!」

 午後四時三十五分十四十二秒。
 場所は廃マンドロス山標高成人体型千付近。大地は灰色。感触は泥のように柔らかく、匂いは小便と糞の混じり合った鼻につく強烈なものが出ていた。
 その場所で軍とおぞましきモノ達は激戦を繰り広げていた!
 そんな中で国家防衛官天同零はリムーバからの報告を聞いて両眼と口を大きく開けて立ち上がる!
「何だって! じゃ、じゃあ今頃あいつは!」
「ええ、姉上は陣痛で心身共に!」
 零は今すぐにここから離れようと考えるが--
「ここで俺が抜け出せばどれだけの被害が出るか--」
「心配するるなあ! 俺達でえ何とかしてややんよお!」
「おらーが見てー言うだーけの存在ーじゃなーいんだぞ! 戦ーいだっーてするーさ!」
「行かれよ! 自分の先祖シュラッテーならあなたを送られ出されよう!」
「お前ら! そんな勝手を認めるんだな! 俺はどこまでも飛遊実兎の血から逃れられないとはよ!
 じゃあ行ってやるよ! その代わりお前らは必ず生きて帰れ! 約束だ!」
 零はそう言って山を下りてゆく!


 それは彼等が聞いた天同零の遺言になろうとは……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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