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一兆年の夜 第十二話 天同生子 激動篇(五)

 四月八十二日午後零時一分一秒。
 現在の天気は曇り。今にも雨が降りそうな勢いだ。
 場所は復旧マンドロス村西門。近くに並ぶ数十の仮設民家。
 その中央に天同零は泊まっていた。
「姉貴の予報ではここで待機しろだってよ!」
「ご飯粒付いてますが、如何なさいましょう?」
 リモートの双子の妹リムーバは零の下唇の右側付近に着いたご飯粒を取り除こうとした。
「いや、いいよ! 舌でなめれば案外届く距離にあるし!
 ところでリモートのお腹は順調か?」
「ええ、すくすく育っております。ただ、注意しなければいけない点があります」
「何か都合の良くない事でもあるのか?」
 零は心配そうにリムーバに聞いた。
「実は姉上のお腹の子はこのままいけば鶏量コンマ五になる予定です」
「零と五? それはどのくらいだ?」
「通常はコンマ三と六が人族の平均鶏量です。ですが、姉上のお腹にいる乳児は
明らかにコンマ四を越えております。
 姉上の成人体型は一とコンマ二です。人族の平均身長としては高い方です。
 けれども、そんな姉上でもそれだけ大きい乳児を産みますと身体にかかる傷みは相当大きい。良くない場合は--」
「やめろ! これ以上は士気に影響が及ぶ!
 今は俺が無事に帰ることに集中する。でないとあいつに迷惑をかけるからな!」
「迷惑かよお! お前はあ四六う時中う俺達にい迷惑かあけ--」
「五月蠅いんだよ、真島! それで状況はどうなった!」
 零は一名の父親から一名の戦う者の心構えになっていた。
「状況う? おいい、上空偵察大臣をお招集しろお!」
「はっ! 今すぐ! 駆けつけます!」
 齢十八にして二十四日目になるアリスト雉族の少年はカブ朗のいる仮設民家へと飛んでいった!
「零お! 心配するる気持ちはわかりりたいいがよ。
 ただあこんな俺でえも芽生えるる命いってえものにいは滅法う弱あくて仕方ねえよよ!
 だからさあ、そのおへんだけはわかあるぜえ!」
「ありがとな、真島! 俺はいつまでも我が儘言ってられな--」
「何かね。真島国家防衛副官殿ね!」
 少年に呼ばれて、すぐに白石カブ朗は駆けつけた!
「囲いしモノはあ現われれたのおか? それかあら天気いは御子おの予報う通りりになりそううか?」
「囲いしモノね? 何ですかね?」
 ベロウ都が指す囲いしモノがなんなのかをカブ朗は上下嘴を交差するようにわからなかった。
「ええっと、上う空偵い察大い臣殿は普段んなんんて呼びまあすか?」
「ああね! そうかね! 確かね、名称不明だったよね!
 えっとね、確かね成人体型五百まで近づいてるね!」
「そうか。いい加減名称を固定したらどうだ? おぞましきモノはもうおぞましきモノで良いだろ? いちいち他者によって名称が異なるのはややこしくて困る!」
「そうは言われましても私としましては生子様や国防官がお呼びする名称ではいまいち的を射ないような気がしてならないのですが」
 零の問いにリムーバはこんな返答をする以外になかった。そうしている内にカブ朗は最後の報告をする。
「あっとね! 忘れていたね。実は天気はまだ曇り空だったね。以上で報告を終えますね」
 と言ってカブ朗は自分の仮設民家に戻っていった。それとすれ違うように齢十九にして三の月になったばかりのキュプロ豚族の少年が駆けつけた!
「た、た、大変でぶ! 美味しそうなモノが上空よぶ成人体型二百! 陸上よぶ成人体型三百近付いてまぶ!」
 その報告を聞いた零達は早速行動を開始した!
「急げお前ら! このままここへ侵入されたら死者を出す!
 姉貴、いや仙者天同生子の予報に従い、俺達は例の戦法を実施する!」

 午後零時二十四分五十二秒。
 陸上部隊は正門外より先頭三列は種族問わず望遠刀を装備。物部刃は三本づつ。三列より後方は補給部隊で固める。陸上部隊の総指揮は齢二十三にして四日目になる大陸藤原鹿族の陸上官藤原トガ由紀。藤原トガ務の甥にあたる。
 上空部隊も陸上部隊と同じく平行に先頭三列は種族問わず望遠刀を装備。物部刃は陸上部隊と同じく三本づつ。
 ただし、通常の望遠刀と異なるのは鳥科に所属する種族達のために開発された翼持刀。これは飛距離は飛ばないが、持ち運びが便利で柄の短い物部刃を使用出来る点にある。これにより上空で扱えないという望遠刀の苦手部分を解消したといえる。
 話を戻す。上空部隊も三列より後方は補給部隊で固められているが、陸上部隊ほどいない。上空部隊の総指揮は齢四十三にして十の月と三十日目になるキュプロ烏族のギングル・グルゥリィ上空官。ギャングゥの又従兄弟にあたる。
 二つの部隊の司令官は天同零国家防衛官。参謀に真島ベロウ都国防副官が就く。
「俺は直接指揮したいが、それじゃあ後釜が怠けてしまうのでな。
 ここで黙って戦況を見るだけだ」
「ん? 零お! 来たぞお!」
 ベロウ都の声と共におぞましきモノ達は上空から陸上まで埋め尽くすように攻めてきた!
「そ、れじゃあ作戦開始だああ!」
「「「「「ウオオオオオオ!」」」」」
 零の合図と共に二つの部隊それぞれの総指揮官は独自の命令を下していき、次々とおぞましきモノ達を倒してゆく! 三本切れたら二列目に交代、また切れたら三列目に、更に切れたら補給し終わった一列目と交代……と断続無く物部刃は放たれてゆく!
「今のところろ生子様あの予報うはあってえるな、零お!」
「いやまだだ。陸上部隊は良い!
 しかし、上空部隊は飛距離の短い翼持刀を持参している故、接近戦をする事になるだろう!」
 零の言った通り、上空部隊はおぞましきモノ達との距離が五つ鳥分まで接近された! ここで上空官ギングルは撤退命令を出す!
「撤退いか! だあが、いつまあでも逃いげられれんぞお!」
 撤退した分だけ距離は詰められ、それを好機に一部のおぞましきモノ達は二手に別れて一方は陸上部隊に急襲した! 陸上官トガ由紀も撤退命令を出して後方へ退いてゆく!
「零! このまあまでえは村まあで逃げえ込んでえしまあうぞ!
 ここはあ指令いを出すうべきでえはないいか?」
「いや、まだだ! 俺は予報を信じる!
 まだ予報の全容は明らかになっていない」
 ベロウ都は口を目先まで大きくして零の言葉に呆れた!
「なあ、何いいってえるかあ! 予報はあ巨大なあ色でえあるる囲いいしモノお共に小さあな色ろであある物部え刃で次々いと穴あを開けえることおじゃなあいのかあ?」
「その小さな色だが、それは物部刃のことだけを示しているのか?」
 零の疑問にベロウ都は思考停止している自分に気付く。
「そ、そううだあった。お前えからあは散々ん聞かあされたあな。予報はあただ意志いを聞くうだけえじゃ良くなあい。その中身いを御子おが正確くに理解いするるかによおって当たあり外れれが起こるるのだったあな!」
「そうだ! だから……ん? 冷たいな。雨か」
 戦場一帯に雨が一滴、また一滴と落ちる。やがて勢いが増していき、それは大きな雨と成り、両者の司会を逸らしてゆく。
「視界があ。いや、今ならら俺達にい有利だあ!
 零よお! 前進んの指令をを出すんんだあ!」
 ベロウ都の震源を聞き、零は立ち上がり、右手を広げてやや水平に振る!
「陸上及び上空に司令官命令を下す!
 全軍突撃イイ!」
 指令を聞いた両部隊の総指揮官は前進命令を出す! これにより、両部隊は武器を変えて接近戦を仕掛けようと距離を詰めていく--その時天候は大雨から雷雨に変化!
「ウオ! 雷が次々とお! いいや、雷があ囲いしモノ達を直撃しいてゆゆく!
 まさかあ、これがあ--」
「ああ、姉貴の予報の全容だ!」
 幸いにも雷は生命体側に落ちることなく、次々とおぞましきモノ達に落ちてゆく!
 雷光は生命を与える者を味方するように緑色にして黄色い光を出して、生命を死なせるモノ達を攻撃してゆく! それは偶然なのか必然なのかはわからない。ただ言える事は雷光そのものが神々の怒りだという事実。
 やがて全てのおぞましきモノ達を死なせた雷雨は収まり、雲は光を差す!
「もしやや青色とおいうのおは。このおことなあのかあ?」
 空一面を覆う雲は次々と穴を開け、そこから黄色い光が差してゆく--降り注いだ大地へと続く光はまるで青色を作るように綺麗であった!
「これが象徴天同生子の予報の全てだ! そしてこれは俺達国家神武の勝利の光なのだ!」
 こうしてマンドロス村防衛作戦は生命体側に一名の血を流さずに勝利した!

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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