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一兆年の夜 第八十話 丸橋忠弥の誤算は起こるべくして起こった(三)

 十月三十八日午前十一時二分三十二秒。
 場所はサッカ市第一南地区。
 その中で五番目に小さな一階建て建造物は上島ダツ比呂の家。
 今日の彼は非番の為に久方ぶりの休みを満喫する。そんな時に戸を叩く音が鳴り響く。戸越しから生命を確認するダツ比呂。するとその生命は返事をした。
 如何してそれをやるのか? これは銀河連合がお喋りしない事を前提に行う確認法。もしも銀河連合ならば声を発する事が出来ない。依って戸を開ける事なく窓或は裏口から避難する事が可能に成るから。但し、例外は必ず存在する。それが声を発する事が出来ない生命。耳が聞こえなくて言葉に表せない生命は世の中にたくさん存在する。けれどもそんな生命でも叫ぶ事は可能。ところが声を発する事が出来ない生命の場合は叫ぶ事すらまま成らない。この場合は如何したら良いのか? その対策として一名で行動せずに一名以上の声を発する同伴者を連れてゆく事を義務付けられる。勿論、先程説明した耳の聞こえない生命も同伴者を連れてゆく事が可能。無理して叫ぶのは喉を傷める行為に繋がるのだから。
 とそんなダツ比呂は齢二十三にして八日目に成るボルティーニ兎族の青年宇佐美ウサ道を招き入れる。
「まだ計画は実行しないのっですか!」
「先生はー何か狙いがあって実行しないのだ。もうー少し待て、ウサ道君ーってな」
「もう待てっません。このままっではでは、で、で--」
「どー、如何したーのだ。その様子ではーまるで……うわあーってな!」ウサ道が突然銀河連合化したので咄嗟に飛び越えて外へ出るダツ比呂。「まさかー液状型が襲い掛かって来るなんて予想外だーってな!」
 液状型銀河連合の攻撃にダツ比呂は逃げ回るだけ。つまり命を懸けるのは今ではないと頭の中でそう思う。だが、ウサ道を助ける為に命を懸けたいという僅かな思いのせいで自分に引き付けるように逃げ回る。その証拠に--
「キャアアアッチ」
 止めろーおお、ウサ道イイイーてな--他の物に襲い掛かると咄嗟に体を張り、彼らを助けては液状型を無言で挑発するダツ比呂。
(ど、如何すればー良いんだよ。ウサ道をーこの嘴で死なせたくない。でも死なせないとー他の生命が被害に遭ってしまう。このままーじゃあ--)
 その時、ダツ比呂の背後は落下すれば命を落とす高さ十メートルの崖の上。サッカ市は南端がちょうど崖の上。サッカ町からサッカ市に昇格する際に当時の町長又は市長は更に広くするように要請。気が付けば南地区は新たに作られた第五南地区だけが崖の上に作られ、小さな子供を持つ保護者達は其処へ居住するのを躊躇う程の地区へと様変わり。成者式の儀式に用いるにも高過ぎる高度成人体型十五の高さは落下したらどんな生命でも命を落としかねない。そんな場所でも良い所があるとするなら鶏走りと言う度胸試しに用いられやすい事だろう。もっとも鶏走りは新天神武は堅く止めるが。
 絶体絶命のダツ比呂。少し下がれば体勢を崩してあの世に真っ逆さまの崖の上。追い詰められ、今にも次のように考え始める。
(落ちたらー死んでしまう。ここでー俺は死ぬのは良くない。まだまだやりたいー事もある。あの計画だってー実行したいのだ。でもー他の生命に足を懸けるのは御免だ。だからこそ俺は……如何すれば良いんだあああーってな!)
 一歩ずつ近付く液状型。もう下がる事も出来ないダツ比呂。跳躍するのは簡単だが、その動きを見せれば液状型は自ら落下してダツ比呂の心を喰らうだろう。自ら死なせ、更に自ら生かされる程生命にとって大変重い苦しみはない。ダツ比呂は銀河連合がそれを狙っていると考えるだけで跳躍する事も出来ない。このまま食べられたまま自身の足で落下する方が誰にも死なせずに済む方法。でもダツ比呂はまだやりたい事がある。なのでここで死ぬ事は本望ではない。ところがここで自ら食われに行かないとウサ道を苦しみから解放する術もない。道理の捻れに嵌るダツ比呂。
 その時、ダツ比呂の脳に直接何かが届けられる。
 --ドウヤラボクハココマデミタイッデス。アトハタノミッマシタ--
 それが響く時、液状型は突然、ダツ比呂も驚く程の跳躍を見せて奈落へと真っ逆さまに……その方向へと体を向けるダツ比呂。そして落下した何かが鈍い音をして更にはその先で赤い液体が広がる様を見て……ダツ比呂は静に涙を流し、やがては大洪水へと至った!
(御免ーよ、俺が他者にー決断を迫るせいで、迫るーせいでえええーってな!)
 それがきっかけでダツ比呂にある決断をさせてゆく……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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