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一兆年の夜 第七十九話 天草は生贄として担ぎ出された(八)

 十月二十九日午前十一時二分四十一秒。
 場所は新天神武エピクロス島ルケラオス県中央地区。中央地区で真ん中より三番目に中央の建物の一階倉庫より司会のビーリ、働くべきと主張するチュンニーナと働くのは寧ろ宜しくないと主張するフクロンは相変わらず一昨日と変わらない議論を繰り広げる。彼らの意見は次の通り。
「二の日より前を忘れちゅのか!」
「忘れないけどちゅ、それとこれとは関係ない。誰が働いてやる物か。俺は働くのが好きじゃないんでちゅ!」
「では如何してそこまで働く事に熱心ではないのかッチ?」
「そんなの決まってちゅ。予定外の残業でちゅ!」
「そんなの当り前でちゅ。予定立てて残業した所で突然の欠勤は起こちゅ物でちゅ。それとも突発欠勤を想定してより多くを働かせちゅのか? 掃除以外にどんな仕事をさせちゅのでちゅか。雇用主だって残業はなくしたいでちゅ。けれども雇用主は予報士ではないので結局無理なんでちゅ」
「結局認めてるじゃないちゅ。そんなに簡単じゃないのにどうして働かされるんだ。社訓だって読まされるし、喉痛いのに読まなくちゃいけないんなんてやってられるかちゅ!」
「社訓は気分が良くなちゅ。発声は積もったものを取りはらちゅのに良いからな」
「老者かよちゅ。あんなの科学的に証明出来ないに決まってる。何とか効果だの何だのの麻酔効果でえっと--」
 高揚効果ッチ--と発声で気分や健康が良くなる心理作用を代弁するビーリ。
「そちゅ、それ。心理効果何て判明したら忽ちの内に効かなく成ちゅ!」
「ああ言えばこう言いやがっちゅ」
 ここだっちゅか、さっきから倉庫内が騒がしいと思ったら--そこへネズ高が四名分のおにぎりが入った包みを持参して倉庫の戸を叩く。
 それは早い昼食の時間でもあった。そして--
「ウメッ禽は大丈夫だ。後一の月も入院すれば万全の状態に戻ちゅ」
「良かっちゅ、モグモグ……ところでどうしてここがわかったのでちゅ?」
「そんなのは係りの者に尋ねたらこうゆちゅ議論の為の部屋を紹介されなかったのでお前達が妥協してここを選んだって聞いたので」
「ああ、その通りッテ。未だにこの袋鼠が働きもせずに文句ばっかり口にするから耐え兼ねたチュンニーナは再び始めたんだッチ」
「今回も僕を含めてたったの三名だけ。やっぱりフクロンのぐちを聞く生命は一名も居なかっちゅな」
「どいつもこいつも考える作業をしないからいけないちゅ。肉体労働何て何も考えなくても出来ちゅ!」
「何だって、今なんて言ったんちゅ!」
「言ったちゅ、何も考えなくても出来ちゅって!」
 オノレエエ、この要労働者の分際ちゅえええ--袋小路のような喧嘩をする二名。
「大人げないッテ」止めるのは双方の片耳元に近付いて大声を張り上げるビーリ。「体のぶつけ合いは議論ではないッツ」
「いい加減に意地を張ちゅのは止めちゅのだ、フクロン」
「出来ちゅか。どいつもこいつもお金お金って……お金と結婚したら良いんちゅ!」
「お金がなければ物々交換に戻ちゅ羽目に成ちゅぞ、良いのか?」
 え、そうなのでちゅか--殆どを漢字で表せないチュンニーナはお金が如何して出来たのかを知らない模様。
「うぬぬちゅ、それだと物の価値がわからなくて困る。そ、それでも俺は働かないからな。俺が働いたら世の摂理が狂ってしまちゅ」
「心配ないでちゅ。お前さん一名だけなら大きな歯車とは成りえない。そこまで一般生命社会を侮ってはいけないでちゅよ」
「わかってるちゅ。俺達の進むべき道は生きてる内では一歩にも及ばない。けれどもそれこそが大いなる一歩へ到達する為の足掛かりでちゅ!」
「それってお前が働ちゅ事こそ当てはめちゅのではないの?」
 五月蠅いちゅ、最後は俺に纏めさせろでちゅ--と宣言通り、フクロンは脳内で次のように纏めてゆく。
(回り道をしようとも結局は最初に戻ちゅ。どれだけ今起こってる事で偉業を達成しようとも歴史全体で見ればほんの僅かしか進んでない。ほんの僅かしか進んでない事は確かに悲しいし、努力の無常さを知らしめるに十分な理由でちゅ。
 それでもその一歩は俺達生命にとって大いなる一歩への足掛かりとして褒め称えられるのだちゅ。その為に一般生命は働く。お金の為だとか楽して暮らしたいとかは終わってみれば到達した生命は一名も居ない。何故なら彼らは全員、回り道を恐れた。遠回りしていては意味がないと考えるからでちゅ。
 でも本当に近道をしたいのなら先ずは遠回りを恐れない心だろちゅ。そしたら自ずと道は開く。頑張るからこそ、一生懸命に良くしようとするからこそ神様はご機嫌で居られちゅ。
 おっと全然纏まりがないでちゅ。これが近道をしようとして訳わからない状態だな。じゃあ一つ一つを解決するんだったらやっぱり一般生命は何れ銀河連合と分かり合うという大いなる一歩を突き進む必要に迫られるな。これが俺の決めた事でちゅ。
 それは道なき道でしかないちゅ、そんなのは可能ではないとわかるさ。わかるけど、俺達は未だに奴らを理解し切れていない。戦うという方法にせよ、対話する方法にせよそれだけでは……だからこそ俺は昨の日も今の日もそれから明くる日も要労働者として君臨し続けちゅぞ!
 最終的に俺が働く道に進むかも知れないがちゅ、それでも俺はこの道を進む。要労働者の立場からこの悲しみ溢れる世界に少しでも光明をでちゅ!)

 ICイマジナリーセンチュリー二百十七年十月二十九日午前十一時五十九分五十九秒。

 第七十九話 天草は生贄として担ぎ出された 完

 第八十話 丸橋忠弥の誤算は起こるべくして起こった に続く……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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