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試作品 殺人報道

 如何も相撲は好きだが、最近の相撲業界がすっかりパチンカスホワイトの言いなりに成ってて正直……日馬富士と一緒に白鵬も辞めちまえと思ったdarkvernuです。
 というよりもパチンコするような奴が綱取りするなっての。という訳で少しホラーなお話でも行きましょう。

 殺人報道……其れは殺人事件の報道ばかりをするという意味ではない。偏向報道だと判明するとスタジオ内で異常事態が発生し、変更した人間に死を与える報道の事。
 此れから起こる事は決して冗談でも何でもない。
『--ニュースナイター

 トミー・ユータ--こんばんわ、十時に成りました。ニュースナイターの時間です。司会は私、トミー・ユータです。
 コヤマ・アラレ--こんばんわ、最初に飛び込んで来たのはこんなニュースです。

 ウィンドウ画面にとある放送局表側を映す。

 コヤマ・アラレ--今日昼過ぎに生放送中に大事件が起こりました。国会質疑中にある国会議員が日本引き籠り協会のカメラマンを襲撃。カメラマンは病院に運ばれる途中で死亡しました。中継です……カトウさん!

 全画面を国会表門前に映す。

 カトウ・チーヒロ--はい、現場のカトウです。今も。国会前は人が賑わせております。

 カメラを国会入り口に立つ二人の警備員を映す。

 カトウ・チーヒロ--事件が起こったのは昼二時過ぎ。国会質疑中に突然、ある議員が隠していた包丁を取り出して白昼堂々と中継を映していたカメラマンに襲いました。カメラマンは腹部を刺されて直ぐにその場に居た関係者に依って110及び119通報。十秒後に救護班が駆け付けて現場の外にある休憩室か何処かに運ばれて行きました。
 此の事件で日本引き籠り協会に所属するカメラマンであるフラッシュ・トミタケさんは救急搬送されるも移送中に出血多量で死亡が確認されました。其の為、トミタケさんを殺害した容疑で衆議院議員で無所属・・・のヨシフ・アーリダ容疑者を現行犯逮捕しました。

 カメラに映る左側の警備員が突然歩き始める。

 カトウ・チーヒロ--調べに対してアーリタ容疑者は「勝手に体が動いた。何故包丁を持っていたのかも全然わからない」と容疑を否認しており、警察では被害者と接点がないかを……し、ら、え……ええ?
 トミー・ユータ--カトウさん、カトウさん? 如何か為さいましたか? カトウさ--

 全画面をスタジオに映す。

 コヤマ・アラレ--中継が切られました。カトウさんは一体何があったのでしょう?
 トミー・ユータ--明らかに普通じゃない事が起こっていますね。一体--

 トミーの元に何かが送られる。

 トミー・ユータ--そ、速報です。現場を担当するカトウが何と国会入り口の警備を任された警備員に刃物のような物で刺されて意識不明の重体です!
 繰り返します。現場のカトウは国会入り口の警備員の一人に依って刃物のような物で刺され、意識不明の重体ですぅぅぅ!
 コヤマ・アラレ--何という事でしょう。まさかこんな事態に成るとは番組史上初めてです。
 トミー・ユータ--続報が入り次第、別のニュースをお送りします』

 カメラが動いている中で二度も殺人事件が起こった。一度目は国会質疑中に野党サーヴァ・ブーメラン党所属の衆議院議員のヨシフが日本引き籠り協会のカメラマンに襲撃。本人でさえも意図しない事件。次に起こったのはテロ朝の報道官であるカトウ・チーヒロ襲撃事件。何方も供述に対して「勝手に体が動いた」と証言。如何して不可解な事件が起こったのか? 実は此れは始まりに過ぎない。
 とある民家で暮らすある少年が自室にて偏向報道が少しでもあると能力を使って中継に映る人間を操り、テロを実行。正に殺人報道。報道の中で殺人事件を起こす其の様は時空すら飛び越えて日本のマスメディアに牙を剥く!
 少年が望むのは次の通り……

 --偏向報道皆殺し……慈悲など要らぬ!--


 という訳で『殺人報道(仮)』をお送りしました。決してマスゴミ批判ではないよ。正義感は構わないが其れが例え正しくても行為だけは褒められないとある無垢なる少年が日本のマスメディアを駆逐する為に起こす悲しいテロ物語。少年は最後に成るまで名前は紹介されないが、ある時画面に映る人間を時空を超えて操る能力に目覚める。最初こそは只の悪戯で済んだ能力だったが、ある時にネットでマスメディアの欺瞞を思い知って以降は殺人衝動に目覚めて以降は全てのマスメディアを滅ぼす為に力を行使してゆく。つまり、良くあるいっちょ前な事を考えたつもりのクソガキが力を暴走させるお話だよ。そうゆうのに限って結末は変わらない。特にこの物語が若しも本格的にやるのならやはりクソガキが決して正義ではない事を描いてゆくつもりだ……が難しいだろうな。こうゆう系統に限って繊細に描かいといけないからな(苦)。

 そうゆう訳で今回はここまで。確かにマスゴミは滅ぼしてやりたい……けれども冷静に考えると此れはいけないと思う事もしばしば。実行に移せない事も良い事に繋がる物だな。

一兆年の夜 第九十三話 惑星から衛星へ(射)

 三月三十日午後七時三十七分二十八秒。
 場所は中央サッカス市中央地区サッカス速報本社。
 三階会議室にてチーンパ、二凝、そしてキッ次の三名が最終案を纏める。
「何っだと、本気っか!」
「ああ、設計図を盗んだ銀河連合が未だ行方を晦ましーている。地方軍者に任せてーも発射日時に成るまで奴等は姿を現す事さえしない。ならば先に打って設計図にない新たな装備を施す事ーで衛星へ向かうまでに対抗措置を取る!」
「すっかり乗組員の一名としての自覚を持ちましたね!」
「馬か鹿みたいな事を口にすーる出ない。私は未だに水の惑星からー抜け出せないと信じている。其の為ーにも自ら体験してお前達の謀り無きーを大笑いする為の万全なる準備ーがしたいのだ!」
「要するに当初の日に付っけ焼刃しても間に合わない。後出っしに成らないようにあらゆる事を先にやっておく……前に後出しに成っらざる負えないと言った口は何処へ行った?」
「奴等でも想定しない事をやる分ーには問題なーい」
「本当に可能なのですか! 水の惑星の外から銀河連合が攻撃を加えるという想定は!」
「いや、可能だ。特に空気抵抗っという概念が想像出来ない宇宙と呼ばれる世界では物体は飛っべば何処までも限りなく飛ぶと俺を想定するがな」
「だが、同時に三の週よりー前に私がサッカス速報朝刊ーに載せた書評通りならば第二加速器ーの他に逆さま噴射機ーも備え付けないと衛星への激突は避けられない」
「もう付け終わりましたよ!」
「付け終わった所で問題なっのは如何に惑星の加護から衛星の加護に入るか……だ」
「如何ゆう意味ですか! 所長!」
 チーンパは紙に記す。何でも惑星の外に抜ければ暫くは空気抵抗の必要がない宇宙空間を真っ直ぐ進む。但し、真っ直ぐと言えどもやはり惑星と衛星の両方からの引力が掛かる。そうすると軌道は真っ直ぐのようである一定の距離を超えるまでグラフの下降線を辿る様に衛星へと向かう。其れから一定の距離を超えると今度は真っ直ぐ進む。其処に至るまでに逆さま噴射機を使って軌道をずらす。そう、衛星の引力に乗っかる様に噴射機を駆使して軌道の調整を図る。そうして衛星の引力に乗っかるといよいよ試作六号機は衛星を周回するように成る。其れから徐々に落下を始める。焦らずに幾らでも日時を使って落下を始める。そうすると見事に生命体は衛星の大地を踏みしめる事に成功する。
「此れが俺が求っめる行きの計画だ」
「帰りは如何するのですか!」
「そうだー。想定さーれるのは帰る際にどのようにやるーのかが抜けてある!」
「済っまないが、俺は其処まで計画的でっはない。其の時でっないと思い付かん!」
 やっぱりそーうだ--二凝はわかっていても土壇場で何とかやりくりするチーンパを改めてろくでなしだと思った。
(此れが僕達が三の日より前まで行われた話し合い! 所長の発案した軌道に乗りつつ衛星に安全な落下を始めるという計画! 二凝さんが発案した緊急時に備えての装備は後々役立つ事と成る……!)

 三月三十五日午後十時二十一分四十二秒。
 場所はテオディダクトス大陸サッカス地方西サッカス町東地区新望遠弾倶楽部二階観測室。
 其処で二の日より前から泊まり切りで作業を続ける生命が二名。有野アン太とウシマル・ウシウミ。ウシマルは万が一の警護とアン太の代わりに観測を引き継ぐ為に。
「漸く晴れ出しましたう」
「ンォ……ふわああああ。フゥ眠くて眠くて仕方ないなあ」
「ンンンンンう?」
「ォオ如何したのだ?」
「なな、なな、なっとろっか!」
「ゥウ牛訛りで驚きを表現しなくとも良いのになあ……何々?」ウシマルに代わって固定望遠鏡で覗き込むアン太。「ンゥムムムム?」
「気のせいですかう、観測長う?」
「クォ観測長では、では……デュああああ!」思わず後ろに倒れ、ウシマルに抱えられるアン太。「イゥお月様に浮かぶあの粒は何だ……目盛りを調整して確認したら窓枠のような物が見えたぞ!」
「やっぱりそうですかう。あれは窓枠でしたねう!」
「イィ其れだけじゃない」再び望遠鏡を確認するも……「ウォ余り近付けると今度は画像が荒くなる」望遠機能に於ける処理能力の問題もあって苦戦するアン太。「フゥ少し補強を加えるぞ、ォイウシマル君!」
「わかりまったん、観測長う!」
 ウゥだから観測長呼びは止めんか--とアン太はそう呼ばれるのを好まない。
 二名は近場にあった大小合わせて全部で七十七つもの水晶板を取り出す。其れから観測に使う固定望遠鏡を取り外すと急いで補強を開始。作業は僅か二の分と五十八秒の内に完了。そして二名は交代々々で確かめる。すると……「タァ確かにあれは所長達が乗る望遠弾だ!」確信を持った!
「つ、つまり如何ゆうこったあ?」
「ァアお月様の一部と成ってしまったあ!」
 其の事実に二名は如何しようもない状態と成る。果たしてチーンパ、二凝、そしてキッ次は無事に衛星旅行を終えて水の惑星に帰還する事が叶うのだろうか?
 其れだけではない。安心出来ないのは設計図を盗んだ銀河連合の存在。彼らが此のまま大人しくしているのだろうか?

 ICイマジナリーセンチュリー二百三十一年三月三十五日午後十時三十一分一秒。

 第九十三話 惑星から衛星へ 完

 第九十四話 衛星世界旅行 に続く……

一兆年の夜 第九十三話 惑星から衛星へ(発)

 三月二十六日午後六時三十七分四十三秒。
 場所は西サッカス町東地区新望遠弾倶楽部本部一階。本部は数の月日を掛けて完成。
 しかも発射室は面積も広く更には耐衝撃波対策として二階観測室は其の日に合わせて移動出来るようにした。但し、移動には二の日より前に作業を始めないといけない為に直前に成ってやろうとしても準備が間に合わない。此れも又、仮本部と同じく巨大に成ったツケだと言える。
 では五名は如何成るか? いや、五名ではない。既に夢の舞台の為に計十八名と成った。初めてと成る衛星旅行まで一の週と迫った中で。
(漸く僕達は第一歩へと踏み出した! 父さん! 見ていて下さい! 僕は--)
 余っり気負うな、キッ次--とキッ次の頭に右手で撫でるチーンパ。
「わかってます! 其の為に僕達は衛星へと飛ばす計画に賛同しない二凝さんを相手に新技術の数々を御披露目して来ました! 其れでもまだ--」
「あいつの事は良いだっろう。其れよりも何故三名が乗っり込めるようにした?」
「え! 何の事でしょう--」
 惚けっるなよ……試作第六号には明らかに三名が居住出来っる環境に成っているって知ってるぞ--とチーンパはキッ次に当初の設計図と実際の居住範囲諸々の事を尋ねる。
「ああ! あれは--」
「誰かが扉を叩いております」
「わしも同行するう。銀河連合の可能性もあるかっどん!」
 序にチーンパとキッ次も同行して慎重に尋ねると……「私ー達だ、大二凝とサッカス速報の受付担当ーだ」其れを聞いて中を開くと其処には二凝と前に二名を対応したイーヌンが姿を現す。
「少し身体検査しますねう」
「私と合間君はイーヌンさんを行います。所長とウシウミ君は二凝さんをお願いします」
「何でお前なんかに触られーなくちゃいけーない--」
 其れはこっちの台詞っだ、二凝--とチーンパは満足しえない回答をしてから身体検査を行う。
 二名の身体検査を済んだ後は一階会議室まで招く望遠弾倶楽部の者達。其れから幹部以上五名を集めて何の為に立ち入ったのかを尋ねる。すると二凝は次のように答えた。
「私はーまだ、弾丸は衛星に届かなーいと信じる!」
「つまりー、先生は迷い始めてーいるのです!」
「ソォ其れでか。ナァ成程ね」
「でも素直に成るのも大人の務めですう」
「いえ、まだだと思います。素直に成るにはまだ材料が足りない……そう仰るのです」
「そうーだ。私はまだー信じない。第一、まだ惑星ーの外ではどのような引力ーが発生し……其れかーら内部で一体何が起こるかをー想像出来ずーに居る!」
「だったら三名目の乗組員として搭乗しましょう!」
「何ー……私に死にに行ーけ、とー!」
「やっぱりな。其の為にお前は設計図に記されっていない三名分の搭乗空間を作ったのだな!」
「オォやっぱりそうだったか。ナァ何度算出しても合わないと思ったら……君か、クゥキッ次君!」
「そ、其れは困りーます。サッカス速報の売り上げーの中には先生の書評を読みたくて購入していらっしゃるー方々も居られるのですよ!」
 宜しければ代理として私が務めます--とサク造が人気欄の引継ぎを志願する。
「え、幾ら細かい事に詳しい糸井さんーでも其処まーで--」
「イィや、ゥク彼はこう見えて詳細に解説してくれるよ。オォ思う存分起用してくれ!」
「わかりましたー」
「何故か私が乗り込む事をー前提に話が進んでいるように思うのだが……言っておくーが其の前に幾ら弾力液ーと其れを保護する鉄板の七重構造を取り入れても空間内のー酸素の維持はまま成らない。衛星へと向かうー内に冷静さを保持するだけの酸素は薄まり、其のまま内部で果てる事が目に見える。この事態ーを解決する手段を望遠弾倶楽部は所持しているというのか!」
「其の為にとある海底旅行を経験しった深海研究者から得た酸素供給機を開発した。気休め程度でっはあるが、此れで少しは衛星旅行も楽っに成る!」
「開発したかーらには実用に向けて試験運用もしたのだろーうな?」
「ああ、俺とキッ次が身を以って味わった。お陰で机上の空論にも少しは光が見っえた!」
「だが……私の見立てでーは惑星を一度出ると外はアリスティッポス大陸を遥かーに超える極冠の世界だ。何故ならー惑星は熱を溜め込むー機能が備わっている。一度惑星の保護からー抜けた時、身も凍えるー世界が待つ。そうするーともう一つ--」
「ごちゃごっちゃ言うな。其れ位は俺っも気付いているよ……だから俺達はある気球乗りの経験を踏まっえて温暖装置も開発した。同じく気休っめ程度にしか機能はしない!」
「じゃあ引力の枷から外れる時に体感するーであろう浮力は如何成ーる?」
「ええい、もう良っい。そんなに五月蠅く言うのっなら中をお披露目してやる!」
 余りにも注文の多い二凝に堪忍の限界を超えたチーンパはキッ次を伴って試作第六号内部に案内させる。其の結果、二凝は……「わかったーよ。一の週より後に成功しないのをこの目で見てやるぞ!」手摺を見て勝利を譲り渡した!
「やりましたね! 所長!」
「奴を出し抜く事が俺達の勝利でっはない。俺達は衛星に辿り着いって初めて勝利する事が出来る。其っれを忘れるなよ!」
 こうして二凝との議論に打ち勝った二名は一の週までの間に試作第六号の調整を行い続ける。其れは長丁場を想定されるが故に必要最低限の食料を積む事、出来る限り酸素供給機の仕入れ、温暖装置に必要な菅原炭、其れから事故を防ぐ為の一酸化炭素対策等々……どれも本番に成らないと本格的に知りえない事だらけである。
(本番かあ! 一応第三加速器も取り付けておこう!)
 実はキッ次は誰にも知られない所で帰還用に第三加速器を取り付けていた。其れは設計図では想定しなかった実物の容量を見てキッ次は試作七号機用に開発した第三加速器の取り付けを前倒しした。
 此れが後に三名の命綱に成るとは誰も想像が付かないし、付く筈がない。何故なら其れは後程語る事とする。

 時は三月三十三日午後八時零分十二秒。
 場所は真古天神武テオディダクトス大陸サッカス地方西サッカス町東地区新望遠弾倶楽部一階発射室。
 分厚く着込んだチーンパとキッ次、其れに二凝は火を灯すと急いで試作第六号内部へと駆け込んでゆく。扉を厳重に締めてから全身を固定する物を二重にも巻いて息を呑む。
(向かうんだ! 例え第一加速の反動で僕達が死んでも--)
「気負うなよ、キッ次。良くっない時は仕方ない。此れで衛星旅行が後数百の年まで延期しっても仕方ない。やるだけの事はやった。何事も上手くゆっく保証は何処にもない。俺達は其の為に命を燃っやしたんだ。なっあ、二凝?」
「私に聞くな。私は生まれーて初めて戦うー以外で命を懸けるのだ。だが、お前達に付き合うのはーこれで最後だ。余命ーくらいはお前達に左右ーされたりはしないぞ!」
 そして火は点り、成人体型半径十五、高さ百にも成る望遠弾試作第六号の尻部は勢い良く噴射--その時飛びは成人体型にして一万七千を超える!

一兆年の夜 第九十三話 惑星から衛星へ(論)

 午後五時十一分三十二秒。
 場所は仮本部内。
 五度もの実験を終えた五名は帰宅の準備に入る。其の中でチーンパとキッ次は納得がいかない。
「ォオ諦めろ。イィ幾らやったって衝撃を緩和する方法は発見する事なんて出来ない!」
「何度やっても圧し潰された形ってのは悔しいじゃないですか!」
「悔しいけどう、其れは仕方ないう」
「少なくとも中で操作するという危険が改めて知る事が出来ただけでも一歩前進です」
「中が未だ危険なっのが俺達にとって悔しいんだよ。其処まで水の惑星が過保護だったなんて……其処まで一般生命に惑星の外に出しったくないか!」
「ィシ仕方のない話だ。ゥス数値上でも内部に掛かる衝撃は私達が無事で居られる保証がない程に尋常ではない。ウゥ幾ら空間を開けても発射する際に掛かる衝撃と望遠弾に只管掛かる引力との均衡を保つ為にはそう成るしかない」
「確かに望遠砲から発射した弾丸はぶつかった個所に当たっるだけで先端が凹むのではない……ぶつっかる前から尋常ではない空気抵抗によって形が変化していき、当たった時には左右或は上下から押っし潰される。受け流っす事が出来ればどれだけ内部を確保出来っるかわからない」
「内部の確保……其れだ!」
「ど、如何したんだう?」
「きっと見付けました。そうです、合間君?」
「耐えられないのなら受け流せば良い! 武の世界では如何に相手の攻撃を受け流すかに焦点が掛かる!」
「武の世界と一緒にすっるな、キッ次」
「いや! 直ぐに小型試作第百七十八号の制作に取り掛かろう!」
 キッ次は転んだら只では起きない。少しでも可能性を見出すと其れに取り掛かる。故にチーンパはキッ次を重用する。決して贖罪ではない。確かに父親を死なせた思いがあろうとも其れは本者とは関係しない。彼の能力を信じてチーンパはキッ次を大事に扱う。
「全くお前は俺の大事な相棒だっぜ!」
「でも彼は第一号試作品で--」
「イィや、ぉそおゆうので所長はキッ次君を採用したのではない。ゥア採用する前に一度能力あるかを試したのだ……なあ?」
 ああ、身内の力で入っれても発揮しなければ所詮は足を……翼を引っ張るだけだ--とチーンパはあくまで本者の能力を信じて採用を心掛ける。
「寧ろ父さんは父さんだ! 父さんは衛星に足を踏み入れる事を夢見て人生を謳歌したんだ! 僕だって其れを可能とする夢の乗り物を作って衛星へと辿り着く為に果てたい!」
「だな。キジ一も戦友だったベイズも見果てぬ夢の為に命を燃やっした。罪を感じる位なら俺達は償う意味でも進っめなければいけないのだよ!」其れから右拳を握り締めてこう宣言するチーンパ。「其れがあいつらにとって一番の供養と成っる!」
 衛星に到達する夢は見果てぬ。惑星の外は果てしなく謎が深い。宇宙空間に飛び込む生命は何時如何なる時でも命懸けである。其の見返りは少ない。だが、見返りを求めて新境地に飛び込む生命に明日はない。いや、其の生命は遠過ぎる過去には何処にも居ない。彼等は銀河連合とは決して相容れない。何かの為には例え一文無しに成ろうとも実行してみせる。其れが良くない方向に作用する結果が訪れようとも決して後悔などさせない。其れが一般生命の進むべき道なら尚更の事!
(ベイズ・ボルティーニさんの事ですね! 彼は基本戦略確立の天才と称される戦略家だった軍者! 其の彼が衛星に辿り着く事は戦略上一般生命にとって有利に繋がると提言した訳だ! だが! 道半ばにして試作第一号の発射事故に巻き込まれて僕の父さん同様に命を落としてしまった! 後少し生きてさえいれば衛星に於ける基本戦略も確立していたであろう!)
 キッ次が思うようにベイズが軍者を引退してチーンパと共に衛星に望遠弾を飛ばす事業に参加したのは一重に新たな戦略を確立する為。衛星に辿り着くという見果てぬ夢を持つチーンパやキッ次とは大違いである。彼は大規模な流れ星を防ぐ為に衛星を使って水の惑星に降り注ぐ前に迎撃する事を提案した。其れが戦略上は最も効率を引き上げて惑星内から迎撃する或は惑星より少し外から迎撃するという後出しをしなくて済むという意味合いも籠めてである。しかも彼は生前に望遠弾を発射する際は引力の掛かりが少ない方角からやる方が必要火薬量が少なくなるという事も発見した。但し、其れを証明するにはまだまだ最新の計測器を開発する必要に迫られる。
 こうして実験結果から突き付けられる現実と僅かに見えた希望を胸に五名は帰宅してゆく。

 二月五十五日午前十時二分七秒。
 場所は西サッカス町東地区仮本部内。
 其処に二凝が立ち寄る。迎えるのはキッ次。
「あ! お早う御座います! 貴方のようなお方が仮本部に立ち寄るなんて!」
「んー? あの生意気な所長は何処ーに居る?」
「あ! 今は新本部の設計について簿記会計のアン太と共に夕方まで話し合うみたいです!」
「そーうか。其れで今日の朝刊は読んーだか?」
「読みましたね! 其れでもまだ衛星に辿り着けないと主張するのですか!」
「当たーり前だ。引力は水の惑星ーだけじゃない。衛星ーや或はお日様ーだって掛かっている。その見えない糸の力を侮るーなよ!」
「わかっていますよ! だからこそ……あ! サク造さん! お願いします!」
「わかりました」
 サク造はある物を二凝に披露する。
「此れーは……弾力液ー!」
「気休め程度にこいつを使えば……第二加速の手動操作の時に比較的安全で居られます!」
「だーが、弾力液は熱にー弱い。其れを知っているーのか?」
「ええ! 知ってますとも! だから僕は耐熱用に此れも掛けるのです!」
「ウグぐぐ……まだだ、まだ其れでも望遠弾は衛星に届かなーい!」
 あらゆる事実を突き付けられてもまだ二凝は衛星には届かない事を撤回しない!

一兆年の夜 第九十三話 惑星から衛星へ(議)

 二月四十一日午前八時五分七秒。
 場所は西サッカス町。所長チーンパはニの週より前の水の曜日に西サッカス町長に計画継続を訴える継続書を提出。
 町長もチーンパ同様に大柄な者柄だった故に又しても望遠弾事業の為に公共工事が開始。住民達は実験の度に再び遠ざけられる事に満足しえない事を漏らしてゆく。
 そんな建設中の望遠弾倶楽部本部。其処には二名ほど要因が送られる。齢二十五にして八の月と一日目に成るサッカス牛族の青年ウシマル・ウシウミと齢三十にして三十日目に成るエウク蜘蛛族の中年糸井サク造。二名は其々の目的を秘めて本部に足を運ぶ。
「お早っう……あっれ、誰?」
「如何も望遠弾倶楽部のチーンパさん。私はエウク蜘蛛族の糸井サク造です」
「わしはサッカス牛族のウシマル・ウシウミだっふん」
「俺は所長を務めっるチーンパ・ビーケルだ……が、本当に誰なっんだ?」
「あ! 予定通りやって来ましたね!」
「お早っう、キッ次。こいつらを知っていっるのか?」
「ええ! 巨体が売りの方はかつては一角族を追っていた方です! 細かいのが売りの方はかつては設計図ではわからない細かな作業を担当し! 陰ながらに完成に貢献しました!」
「有無、良くわからないが少なくとも凄っいのはわかる」実績を曖昧に説明する故に実感出来ないと考えるチーンパ。「だが設定だけ凄いと持て囃っしても共感出来なければ机上の空論でしっかないぞ!」
「ううむ! 紹介するのって大変だなあ!」
 キッ次は其のまま仮本部内へと二名を案内してゆく。

 午前九時五十七分十二秒。
 場所は仮本部内。望遠弾倶楽部の真ん前に設置された仮設民家の応用で建てられた組み立て式の本部。
 だが、半の日掛けて完成するかも難しいのが仮本部。其れだけに骨組みは下手な建て方をすると風が吹くだけで直ぐに崩れ落ちる。組み立て式も巨大に成れば複雑と化する事例。
 そんな仮本部内で二名への説明を終えたチーンパとキッ次。汗を拭って今週のサッカス速報に目を通す。
「又あいつは適当な事を言ってるな!」
「誰ですかう、あいつってう?」
「サッカス速報の週間連載を任せられた大二凝さんです」
「ンォ所長と二凝さんは軍者時代からの競争相手だ。ォオだから常に互いの事に成ると冷静で居られなく成るんだ」
「まあ気持ちはわかっですうね。わしもかつてはそんな競争相手が居まったかうね」
 一体どんな若い頃を経験したのです、ウシウミ君--とサク造は尋ねる。
「其れは気が向くうば話すぞう」
「あ! 何で此の事を二凝さんは知ってるのですか!」
「如何しった、キッ次?」
「読んで下さいよ! 所長や他の皆さん!」
 所長が読み上げる前に予め此れだけは解説すると次のように成る。チーンパはキッ次から第六号は要員を乗せてからの第二加速の手動化を実現。自動化で生じる問題の解決と自動化に於ける曖昧な時間帯からの発射を防ぐのが狙い。事実、第五号の残骸を回収した際に僅かに第二加速器の一部を発見。其れを組み立てた結果、落下の際に破損した以外の損傷を確認。望遠弾倶楽部は過剰な熱が原因で第二加速器の装甲版まで透過し、内部爆発に至ったと見られる。倶楽部の総意に依り、建設が完了次第に耐熱試験に取り組むことを決めたのだが--
『--装甲版や自動化に依る問題を解決しても望遠弾は衛星に届かない
                     元真古天神武技術開発部部長 大二凝

 毎の週、私は主張する。望遠弾は衛星に届かない。理由はやはり引力の錘は一般生命
の知が結集しても振り切れない。そもそも前の週に実際の現場に立ち会った事を書評に
載せましたが其れでも私の考えは改まりません。何故ならどれだけの問題を解決しても
成人体型時飛び一万も更に加えた二千も三千も如何考えても引力の鎖を振り切るには
至らないからです。
 其の訳はやはり向きの問題。向きが少しでも引力にとって都合が良ければ更に速度を
要する。其れは重要な火薬を依り多く使用する事を意味する。そんな事を政府が認めて
は今後銀河連合との激しい戦いで物の不足に直面する羽目と成る。其処まで衛星へ
向かう事に急ぐ意味があるか。仮に向きを解消しようとも消費される火薬の量に長い目で
見てどれだけの差があるのか知りたい。普段から生きている生命は長い目で見る事を
好まないのが普通ですのでね。
 次は第一加速で生じる重大な事故の孕み。此れは前の週に立ち会ったと書評に
記しました。今の週ではどれだけ其の現場の危険性が高いかを紹介しましょう。依り高み
を目指すには更に強力な火薬を生命は欲する。だが、第一加速を更に高めれば高める
程に生じる物は何か? 其れは西サッカス町を地上から姿を消す程の破壊を招く。いや、
実際にあれは町一つを地中に埋めかねない一撃だったぞ。幾ら第一加速でもあの衝撃波
の為に戦場よりも恐ろしい科学の凄みを体感したぞ。戦場では得られない心臓の高まりを
感じたのは事実。だからってそうまで衛星に足を伸ばす意味が果たして全生命体にある
のか? 町一つを壊しかねない試験をしてまで衛星に向かう意味があるのか? 其の度に
窓硝子及び各建物の修理に生じる費用は考えた事があるのか? 実際に最初の試験で
二名も死者を出したではないか。其れが証明されるように衛星への挑戦は叶わないだけ
でなく、余りにも代償が大きい!
 次に説明するのはやはり第二加速の問題。あれは自動では如何考えても可能と
成らない。何故なら誰も最速地点を読めない。望遠弾倶楽部の簿記会計の有野アン太でも
正確には測れない。仮に計算した所でもその日の空気抵抗の割合を算出出来なければ
机上で書いた空っぽの理論でしかない。其れだけ、その日の最速を割り出す事は可能では
ないのだよ。其れを打開する方法として恐らくは手動化に依る方法を用いる雉族の若造が
いるようだが、無茶は止めた方が身の為だ。何故なら中に入って作業する場合に想定
されるのが第一加速で内部に通常では考えられない衝撃が伝わるという事実。此れは
無視出来ない事実。つまり中で作業しようとする際に第一加速に無事耐えきったとしても
次に発射するであろう第二加速で間違いなく命を落とす領域。此れは流石に衛星へ行く為
に体を張り過ぎる。私は死ぬなら水の惑星で静かに死にたい。其れが全生命体の人生観
という物だろう。因みに第五号発射時に生じた物を基にして内部に生じる衝撃を計測する
としよう。少々適当なのは容赦したい。だが、重要な話だ。其の衝撃は中に居る者の鶏量
が十だと仮定すれば生じる衝撃は其の十倍以上も掛かる。普段から歩く度に掛かる衝撃
の量が大きいように中では足下より天井に向かって一般生命は一気に打ち付けられる。
しかも一瞬だけではない。加速する度に継続して圧迫し、第二加速時には最早生命活動
は停止した状態だ。手動操作をする事は即ち、此れを如何に耐えるかを想定しないと見る
も惨たらしい事が起こる。
 最後に三つを踏まえて私は望遠弾が衛星に絶対届かない。此れは紛れもない事実だ!』
 読み終えた五名は二凝の理論に反論する案が浮かばない。
「ウヌっヌ、内部での操作が危険である事っくらいは新聞に記さなくともわかっていたんだよ……だからって書評で紹介しなっくとも!」
(既に僕の提案は読んでいたんだな! 其れがどれだけ無茶な行いかも知っていたのだな! だが! こうも明確に記されたとあっては上手く反論出来ないって!)

一兆年の夜 第九十三話 惑星から衛星へ(合)

 二月二十八日午後零時四十八分十一秒。
 場所は西サッカス町東地区望遠倶楽部本部。全部で二階建てであり、尚且つ一階は特に望遠弾発射台が敷かれており、西サッカス町の大部分を占める面積を誇る。
 さて、一階食堂にてチーンパとキッ次、そして簿記会計を務める齢三十五にして四日目に成るサッカス蟻族の有野アン太の三名は食事を摂る。其処へ一派入り口の扉を叩く音が耳に入る。キッ次は翼を羽ばたかせて急行。すると扉の向こう側より……「私ーだ、二凝ーだ」という声がしたのでキッ次は安全を期するべくチーンパとアン太を呼んで中に入り始める二凝の身体検査をする。
「良かったっな、お前は紛っれもなく銀河連合ではない」
「当たり前ーだ。働き盛ーりの私が道半ばに銀河連合に死なーれてたまるか!」
「でも銀河連合のやり口は徐々に細かく成るのですよ! そうでしょ! アン太さん!」
「ンゥまあそうだが、アァ何だ……奴等は必ず此方の穴を衝いてくる!」
「堂々巡りじゃっないか。余計に後出しっで対策を取るしかないじゃないか……いっそ予想さっれる事態に備えて此方かっら迎え撃つという策は出来ないのか?」
「却って足のー平を見せる。結局は後出し以外に打つー足がない」
「ええっい、もうそうゆう話は止めっだ。取り合えず二凝は昼飯を食べって来たか?」
 ああー、既ーにな--と事前に行うのが大二凝という雄である。
「取り合えっず二階でじっくり試作第五号の望遠弾を眺めっておけよ」
「まあまあ! 此れでも所長は二凝さんも認めておりますので!」
「ォオ兎に角、クァ午後の三の時から発射実験を始めますぞ」
「是非共其のー末路を見てみたいでーすね」
 二凝は今度も望遠弾が必ず衛星に届かないと考えるようだ。
(其れだけは避けたいな! だからこそ僕は試作第六号に関してだけは少し設計図にないある物を挟み込んだ! 此れは内緒だからな! もしも設計図を盗まれても銀河連合に察知される事はない……筈だ!)
 キッ次は内緒で第六号にある物を挟み込んだ。其れは後程語られてゆく。

 午後三時零分七秒。
 場所は望遠弾倶楽部。一階発射室。其処には成人体型は直径十一、高さ五十にも成る望遠弾が設置されていた。
 尻部及び下腹部には真古天神武からの援助を受けて果ては藤原大陸まで掻き集められた雄略火薬、藤原火薬、そして武内火薬が詰まった起爆装置。第四号までの実験では二段式であるなら空気の壁を突破する事が可能と成る事が判明。其れでも星の引力を振り切るだけの速度には至らない。水の惑星の引力は想像を絶する程に過保護だった。其の過剰なまでの保護を振り切るには二段目までに一段目をもう少し早い速度の実現を目指さないといけない。
 因みに四名中半分は二階観測室にて其の様子を窺う。様子を窺うのはアン太と二凝。何故か? 起爆には近場で火を点ける者が最低でも二名必要。当然、二名は急いで傍を離れないと爆発に巻き込まれる。
 実は一回目に爆発に巻き込まれて二名死亡した。其の中にはキッ次の父キジ一も居た。其の爆発力は実際に確かめないとわからない程であり、実験の度に観測室は徐々に離れて行く。最初は第五回目に比べて成人体型にして半径の半分もなかった。だが、現在では二回目で想定を超える爆発力によって約二の年もの間は改修を余儀なくされる程だった。その度に西サッカス町は拡大を余儀なくされる。気が付けば市よりも巨大な町と化した。衛星まで飛ばすという果てない夢はこうまで土地を求め続けるのか!
 話を戻すと起爆に入るまで三の分。勿論、此れはアン太の長年の経験と積み重ねて来た細かい計算もあって実現に至った。勿論、計算出来るのは彼だけではない。チーンパもキッ次も入念なる計算が可能である。最も発想力が乏しい為にアン太は簿記会計にばかり集中しがちである。発想力はチーンパよりもキッ次の方が優れる。ではチーンパは何の為に居るのか? 其れはやり遂げるだけの突破力と土壇場に於いての対応力である。元軍者というだけあって其処だけは誰も彼に勝てない。そんな訳でキッ次は火を点す準備を始める。火打石を両手羽先で持ちつつもチーンパの合図を待つ。
「緊張しますね! 所長!」
「いっや、少し待ってくっれないか?」
 チーンパは望遠弾の東手前にて反対側に位置する観測室を眺める内に何かを見付ける。直ぐにチーンパは観測室に走ってゆく!
 観測室内では何故チーンパが合図を無視して真っ直ぐ向かって来るのかを二名は気付かない。直ぐにアン太はチーンパの様子を確かめに扉を開けようと--
「幾ら何でもー近過ぎるー音……オイ、有野ーさん。そいつーに近付くなあー!」
「ゥエ?」
 時既に遅く、扉は開く--すると現れた剥き出しの何かはアン太に圧し掛かる!
「ウゥオオワアアアアアアアアア、ァウアアアアアア!」
「ウオーオオ、元軍者ーを舐めるなーあああ!」
 間一髪でアン太は助かり、犬型は犬族で元軍者の二凝の噛み付きで頸動脈を引き千切られて其の侭息絶えた!
「ハアーハア……何とかー、助かーった」
「ハァ、ハァはあ……銀河連合の侵入を何時許したのだ!」
「裏扉か或はたまたーま昨の日から侵入していーて……何方にせよ後出しーでまた対策をしないとーいけませんな」
「……あぁ、ぉそ其れよりも所長は何処に行った?」
「探そう……と言いーたいが、先ーずはキッ次を一名だけにしては居られーない!」
「ゥオわかった。ゥス直ぐにキッ次君の所まで向かう!」
 二足に分かれた二名の内一名はキッ次の所に、もう一名はチーンパを探しに向かう。時間にして僅か二の分と八の秒にて二凝はチーンパを発見する。其処は図面作成室……「盗まれった……第六号を描いった設計図が!」だが、こちらは本当の意味で時既に遅かった。
「第六ー号?」
「折角明くる日かっら製作予定の第六号望遠弾が……如何すれっば良いんだああ!」
「あの銀河連合は設計図ーを盗む為の引き付け役だったーか!」
「全く御先が真っ暗--」
「其れなら大丈夫です!」其処へアン太と共にやって来たキッ次。「既に僕は本物の設計図の作成を完了しました!」
 何、本物だって--其れは二凝どころかチーンパとアン太にも知られていない事だった。
「んぁまあ今は第五号の実験を優先する。サァ再び持ち場に就くぞ!」
 第六号を描いた本物の設計図の事は此の際は重要ではない。重要なのは第五号の実験結果。果たして結果は如何成るのか?

 午後五時一分零秒。
 再点検を済ませる事で第一加速に於ける問題点をほんの少し解消したように感じる望遠弾倶楽部の三名。因みに第一加速とは外付けで起爆する装置で発射する加速の事。即ち、次の第二加速までに何処まで速度を上げられるかを表した物。其れから第二加速第一加速で速度を上げる毎に生じる空気の壁を突破する為の加速。此れに依り、一気に引力の外まで運ぶ事で衛星まで望遠弾を飛ばすという仕組み。その第一加速に於ける多点分散の問題を解消した事が三名にとって喜ばしい事だった。
 後は合図と共に点火し、二名は急いで観測室へと避難するだけ。数の分の後……徐々に望遠弾の下に溜まる火薬は点火を始める。その現場を始めてみた二凝は少し髭を右前足で握り締めるまでに怯える。どれだけ戦場を潜り抜けようとも火の尋常ならざる物の前では大人しく出来ない模様。
 やがて火は炎と成り、やがては光の領域まで踏み込んで望遠弾の尻に巨大な一撃をお見舞いした--起爆を起こして観測室全窓硝子どころか図面作成室の扉を破壊する程の衝撃波を走らせて弾丸は空に向かって突き進む--第一加速に火が点いた!
「だ、大丈っ夫か?」
「ンァ何時やってもこの衝撃波は馴れん!」
「寧ろ慣れなーくて、け、結ー構、こけ、ここオオーウい!」
「鶏族の真似事ですか! 二凝さん!」
「まだ衝撃波のっ影響は凄まじいな。暫くは屈っめ……俺が合図を出っすまで決して体を起こすのではない!」
 其の衝撃波の嵐は二の分より後には静まり返る--其処で合図を送り、四名共試作五号の様子を確認する。
(ああ! 何か空にて爆発炎上が起こってる! きっと第二加速器が自動で作動せずに寧ろ第一加速に使った火薬の量が過剰過ぎて漏れてしまったんだ! ああ! 何という事だ!)
 実験は成功しなかった。第一加速に使った火薬が原因で自動作動する筈だった第二加速は予想を覆して内部爆発を引き起こす事に。
「ハーハ、だから私の言った通りーではないか!」
「いや、第一加速で雲の上と思われる高っさまで二の分までに上昇した。此れはほんっの少しの進歩ではないか!」
「何が進歩だ。肝心の自動作動の第二加速のせーいで空中炎上するのがいけない。生命がー乗っていなかったから良かーった物を!」
 生命……そうっか、其の方法があった--チーンパはある事を閃いた!

一兆年の夜 第九十三話 惑星から衛星へ(集)

 午後四時七分十八秒。
 場所は中央サッカス市中央地区。其の中で最も面積の広い工場南側入り口にてチーンパとキッ次は立ち寄る。
 二名が突撃したのは二凝が毎の週書評を出す地方新聞社『サッカス速報』本社。其処で齢二十三にして二十二日目に成るエウク犬族のイーヌン・イトモアに尋ねる。
「取材ーは大さんの自宅で直にやりーます」
「夕刊での書評を見っせろ!」
「いえ、大さんの書評は一の週に一回だけだよー。しかも毎の週の月のー曜日だから覚えとーいてー」
 って今日は月のー曜日じゃないか……って当たーり前か--と時にはずれるチーンパ。
「取材を受けるのは何時の曜日ですか!」
「そりゃあ今のー曜日を基準にしたーら明くる日にはやってるーよ」
「あいつは俺と違って土壇場っでの作業が出来ないっからずっと事前にやっる事を第一にするからな」
「あーのう、若しかーして『望遠クラブ』のチーンパ・ビーケルさんと合間キッ次さんですーか?」
「あ、名乗っるの忘れた」
「いえ、大二凝さんがこーの宛先まで来るよーうにお願いされたーのです」
 え、歓迎しっていたのか--意外な一面に少し戸惑うチーンパ。
(いえ! 二凝さんはチーンパさん絡み以外だと寛容で誰が相手でも隔てない! そう! チーンパさんさえ絡まなければ……な!)
 一方のキッ次は既にニコリがそうゆう生命である事を既に承知。其れからチーンパとキッ次はイーヌンの案内で東サッカス町まで遠出する事に。尚、遠出する前に二名はイーヌンの勧められた中央サッカス一の料理店で腹一杯まで食べた。故に急ぐ時、少々膨れ上がったお腹が原因で速く走る事も飛ぶ事も困難と成る。

 午後八時五十三分十八秒。
 場所は東サッカス町西地区。其の中で二番目に大きな建物。
 其の表門に三名は立ち寄る。
「あいつはこっんな大きな家で贅沢の限りを尽くっしているのだな」
「いや! 退役軍者の中で技術軍者だった二凝さんですって! 数々の論文と今後の兵器の明日を記した功績は計り知れません!」
「こっちだって退役軍者だっての。なのにあいつは毎の週は半面程書評を掲載されるのに俺達はずっとこんな--」
 五月蠅ーいな、さっきかーら外で……あ、来たーな--犬族にしては長い髭を垂らすのはサッカス速報で毎の週の月の曜日に書評を連載する大二凝其の者だった。
「あ、大さん。言わーれた通りに望遠倶楽部の者達を連れーて来ましーた」
「今何時だと思ってーいる。こんなー時間帯にやって来て如何すーる!」
「どっちでっも良い。兎に角、新聞読んっだぞ。また勝手な事っを書き連ねて!」
「勝手でーはない。証言を元にしてーお前達のやる事が如何に全生命体にとーって益を為さないかを執筆したまでーだ。大体ねーえ、衛星まで飛ばすーのにどれだけの速度を出せーば良いかをー考えた事ーがあるか!」
「あっるさ。速度にして時飛びにして成人体型一万だっろう?」
 因に遠過ぎる未来では一の秒の間にどれだけ動くかを表すのが秒刻み、一の分の間なら分走り、其れから今回登場したのが一の時の間を表す時飛びである。
「ハッハーッハ、此れは御笑い事ーだ。そんな速度じゃあ直ぐーに落下が始まるぞー」
「何、其れは聞き捨って成らんな。何処が難しっいのだ?」
「確かお前達望遠倶楽部が用意しーたのは成人体型はー其々直径十ーで高さ五十だったな。下腹部のー限界まで火薬を積んでも望遠弾が耐えられるーかな?」
「そ、其れは今後次第だっろう。兎に角、俺達は絶対っに衛星に飛ばしてやるからな!」
「無理だよ、そーんなの。水の惑星は私達を掴んーで離さないのーだからな!」
 そう言って二凝は扉を閉めて……「あ、一つ忘れてーいた」閉め切った後に家の中で騒音を鳴らす。其れから何かを左前足に持参して扉を再び開けた。
「あー、別に日の曜日までありますからそこまで急がなくて良いーですぞ」
「書き直せーと!」
 二凝は事前にやらないと安心出来ない性格だった。
(二凝さんは頑なに望遠弾は届かないと主張する! 其の断言する理由が知りたいな! 毎の週の月の曜日の朝刊は欠かさず読む僕だが! その理由が今一つ納得いかないんだな! という訳で--)
「あーの! 其の書評を僕にくれますか!」
「雉族ーの若造ーか。わかったーよ、くれてやるーよ!」
「有難うね! 二凝さん!」
 全く物好きっな雉だっな--とキッ次の飽くなき原動力に顔を逸らせるチーンパだった。
 この後、二凝は一泡吹かせる為に明くる日の昼食の時間帯に望遠砲クラブを訪れると宣言。キッ次は激しい口論を予想して此の日の夜は熟睡出来なかった模様。

一兆年の夜 第九十三話 惑星から衛星へ(序)

 ICイマジナリーセンチュリー二百三十一年二月二十七日午前九時三十分四十三秒。

 場所は真古天神武テオディダクトス大陸西サッカス町。かつて、石の森があった場所より西側に広がる町。
 其処は別名『カバオラの村』と呼ばれていた場所。近年ではサッカス村との合併もあって名称を西サッカス町に変更。昔から馴染みのある者達は今でも『カバオラの村』と呼称する。石の森を制覇したカバオラ・ドドンドの名を忘れない為に。
 さて、この町の東地区にある一番大きな建物は通称『望遠クラブ』と呼ばれる研究所。其の所長を務める雄は今でもこの町を『カバオラ村』と呼ぶ。
 彼の名前はチーンパ・ビーケル……齢三十四にして六の月と二日目に成るサッカス猿族の中年。何事も疑って掛からないと気が済まない性格の持ち主。
「オっイ、キッ次?」
「何だい! 所長!」齢二十二にして十の月と二日目に成るサッカス雉族の青年合間キッ次は地方紙『サッカス速報』朝刊を読んでいた。「今! 文化面を読んでる途中なのにまた呼び出しか!」
「又新聞を読んでいるな……あ、此れはあの腹の立っつ奴の書評が乗った新聞じゃないか!」
「良いじゃないか! 別に其の者の記事を読む訳じゃないし! 其れに新聞は勉強に成るんだよ!」
「成るか。新聞読んだら偏った理屈が産まっれるんだ。特に散々俺に何か言ってくる奴なんかの書評を載せっるサッカス速報なんか契約解消すれば良いんだ!」
「あ! こら! せっかく読んでいたのに取り上げるな!」折角読んでいた日刊紙は新聞を好まないチーンパに取り上げられた。「返せ! 返せ! 返せ!」
「どれどっれ?」反面、長年の競争相手が何を言ってるのか気に成るチーンパだった。「確か一面の次っの面だったよな」
 サッカス速報二面の左半分を使って競争相手にして齢三十一にして七の月と六日目に成るサッカス犬族の大二凝たいにこるの特集が組まれていた。既に連載一の月を迎えた二凝。その内容は次の通りである。
『やはり衛星に行ける訳がない!
                     元真古天神武技術開発部部長 大二凝

 幾ら鳥族が空を飛んでも急激な気圧と気温の変化に耐えられないように何処かの
西サッカスで消費ばかりする馬か鹿かも区別がつかない猿の考えは実現する訳がない。
私は何度も何度も提言して来ました。そんな物は成功しないと。そもそも実際に発射
すればわかりますが、かつて銀河連合による大規模な流れ星を偶然にも生き延びた者の
証言を今回御紹介致しましょう。
 ※ 尚、訛りを取り払って紹介しますので詳しくは二面一番下端を参照に。
<あれは正にこの世の終わりを見てしまったかのようだ。(以下略)
 只不思議と思ったのが奴らが落下する際に何か赤い物を纏って落ちて来たように
見えた。あれは一体如何してなのだろうか? 其れが奴らが水の惑星に落下する際に
纏わないといけない物なのか?(以下略)どの道、どんな科学的な理由があれども私は
生き延びた。いや、私はあのまま死んでいた方がどれだけこの時まで苦しまずに済んだ
物か!>
<流れ星については銀河連合が落下する予報なのはわかる。わかるけど、俺はやり
切れない。(以下略)但し、少し冷静に成って思った事が一つ。あの奴らが落下する際に
纏う赤い輝きは何だ? 俺は其れが炎を纏っているように思ったのは一重に火と向き合う
職業に関係する為にそう判断出来た。けれども何故炎を纏う必要がある? 炎を纏うと
奴等とて身を焼かれる可能性だってある筈だ。だったら如何して炎を纏う?(以下略)
何方にしても俺は何も抗えない。圧倒的な天の前に地は力を持たない>
<冷静に成って考えてみたのだが、何故流れ星は水の惑星に落下する際に炎を纏うのか
わかる気がする。其れはきっと次のような公式が成り立つ。(以下略)つまり水の惑星
より外は熱で包まれており、其れが水の惑星に入った際に徐々に消えつつあった。その
証拠だと(以下略)どっちみち、私は生き残った。其れで十分じゃないか>

 御覧のように三名の証言通りだとすれば衛星へ向かう際に燃え尽きて其処で幕を
閉じる。仮にそうじゃないにしてもそもそも届く訳がない。何と馬か鹿かわからない計画
をどっかの西サッカスの猿は考案した。改めて思うね。もしも三番目の証言通りに宇宙が
熱で満たされるのなら惑星から離れた時点で燃え尽きるのが落ちの山だ。
 つまり望遠弾は惑星に届かない!』
 あの野郎め、又言って来っるぞ--扉を蹴って中央サッカス市まで出かけに行くチーンパであった。
(所長は本気だ! こりゃあ誰か留守を任せられたら僕も行くしかないね!)
 尚、今回の主人公は心の中を紹介するキッ次だけでなく、チーンパと二凝も担う。この三名を中心に物語は展開されてゆく……

森川軍団引き延ばし訴訟

 如何もタイトル見てわかる通り幾ら編集者があれとはいえ、作品に向かってストレス発散するような漫画家は自分で『俺はダメ人間です』と言ってるような物だと考えるdarkvernuです。
 始める前に『格付けの旅』の赤魔法の章04の三ページ目が終わり、四ページ目に入りました。読まれたい方はカテゴリ欄の<格付けの旅>又は<赤魔法の章>をクリック。
 兎に角ね、ジム経営に手を出したツケだよ……そうゆう結果になったのも。其れを考えさせられる時事ネタをやるとしよう。


 長年に亘ってトラブルが絶えなかった東京都のマガジン工場と漫画家との間に和解が成立しました。
 この問題は平成X年にマガジン工場の編集者の匂いで減ページと休載を連発する事に腹を立てた森川さんが計百巻にも上る程の子だくさんだった事もあって森川軍団引き延ばし訴訟として何度もネットチャンネルで話題と成りました。
 今回の和解案では週に一度はイコウ、フジカワを晒し者にするという物で罪を認めようとしない工場側が譲歩した形と成りました。
 この裁判の原告側の代表である森川クソ講談社死んでもマガジン買わないから那代表は次のようなコメントを発表しました。
「最早爺ちゃんが何で其処まで激怒しているのかはわからなくなった。自分の名前からして一生許す気はなかったとは思う。でもイコウ、フジカワは見てて面白そうだしな。今度産まれてくる子供の為にもここいらで潮時だろう」
 と前向きである事に対して、この件に関して福本茂新工場長は次のようなコメントを残す。
「棚ボタ式でトップに躍り出てみたら大変良くわからない問題が駆け込んできて驚いた。まあ、イコウフジカワを晒しておくだけなら問題ない。両方共、ペースメーカーを埋め込まれているのならお咎めがなかったし」
 と笑顔で語りました……


 元ネタは伊集院のラジオでやってた馬鹿ニュース企画の奴だぞ。動画共有サイトで探せばこれをパクっているのが良くわかるぞ。何が言いたいかって……もうね、前にもある試作品でジョージを遠回しに批判した自分だよ。今回だけは一歩の惨敗も含めて此れは流石に擁護出来ないぞ。いや、擁護出来ない部分は多々あった。1200回記念なのに決着を付けないという体たらくもそうだけど、幾ら一歩が限界とは言えどももう少しうまく見せる方法だってあった筈だぞ。挙句に後で知ったけど巻末コメント……本当にねえ、ジョージは一年或は二年以上筆を止めてリハビリした方が良いぞ。流石にその精神状態でやっても惰性ながらも期待して読んでいる読者も見てられないぞ。
 まあ講談社の編集者がクソなのはこの件が発覚する以前からあった事だろう。彼岸島は兎も角としても監獄学園なんて裏を嵌めて監獄から抜け出した時点で目的はほぼ達成されたのに人気作というだけで平本は無理やり続けさせられるのだからなあ。今じゃあ何を目指したいのかわからない状況に成ってるしな。カイジはまあ、福本は竹書房でも二十年以上も赤木と鷲巣との戦いを続けた前科があるのだから堕天録での展開は編集部以前の問題だ。何方にせよ、カルピスで薄めたように展開を遅らせる引き延ばしは講談社系列の得意とする悪質な手段だからな。今回はマガジンきってのエースである一歩の巻末コメントで今頃は……いや、皆まで語るまい。
 其れでも引き際を誤ったのはジョージの方だ。本来一歩はwikiに乗ってる情報なので不正確なのはここで記すが、元々漫画家人生に終止符を打つ為に連載を始めた漫画だろう。大好きだったボクシング漫画を描く為に。ところが本人と当時の編集者の予想に反して大ブレイクして今や人気を不動の物にしたのだろうになあ。実際、自分は一歩は長期連載の中では安定した面白さを誇っていたしページ数が極端に少なくなった時期であろうとも面白いと思えた漫画だった。ところが宮田が因縁を不意にした時期から下り坂の始まり。板垣の件ではない。自分はあそこからジョージの転落は始まったのだと推測する。すると如何だろうなあ……本来はこれで終わりのつもりで始まった起死回生の作品は見る影もなくなった。そして現在……いっそ二年以上の活動休止したら如何だ? もしも続けるなら一旦筆を止めて精神的なリハビリをした方が良いと自分は思う。確かに一歩無き週刊少年マガジンは見る影もないだろう……其処はあんたとは反対に速筆及び一週二、三話掲載するというサービス精神旺盛な真島ヒロを呼んでやれば十分に穴埋め出来るだろう、其れか一から発掘作業をやるとか……そもそもエースに頼り切った戦法は古来よりやってはいけないもんだろう。後進の為にもここいらで一旦筆を止めようぜ……ジョージ。
 ま、このまま打ち切りなら所詮ジョージとはその程度の漫画家だったと思って諦めがつく。其れにマガジンはこの件に依ってサンデー並みに落ちぶれるだろうね。取り合えずイコウ、フジカワは晒し首は決定事項だろうな……誰だか知らんが(怒)。
 以上で時事ネタ(?)の解説を終える。

 ではそろそろ第九十二話の解説と行こうか……が、流石に前後編に分けた不朽の名作を一纏めにパクるのは無理があった。取り合えず自分の中で名場面と思われる人の生き死にや鯨の大虐殺、其れと巨大蛸に殺された場面や謎の戦艦の船員大虐殺なんかは叩き込んだな。其れ以外は最早無理だった。やっぱ原点は凄いよなあ。
 因みにヴェルヌのあれは前後編に分かれているけど、お薦めなのがその前日談の<グラント船長と子供達>を読んでから前後編を読んだ後にネモ船長の正体がわかる『神秘の島』の順が良いってさ。自分は前日談も後日談もまだ読んでないからな(いや本当だ)。まあ元ネタである<海底二万マイル>も十分名作だからな。アロナクス教授のネッド弄りも注目ポイントならネッドとコンセイユの友情とアロナクス教授とネモ船長との仲も中々にドラマチックだぞ。但し、残念な点はヴェルヌのヨーロッパ人特有の鯨に対する偏見とやはり南極の描写だな。後者は仕方がないがな(笑)。
 本編に戻すと本当は深海種族の話をした語ったけど、作中の時代では流石の深海種族だろうとあんな物は作れないだろうと断念してあのようにラディヴェと同じ星の生命を出して辻褄を合わせる結果と成った……申し訳ない。自分は時々、ワープ航法を使うからな……この歳に成ろうともワープ航法から抜け出せない事をここに謝罪する。
 とまあこんな感じで第九十二話の解説を終える。

 では赤魔法の章04の三ページ目の解説をする。ああゆう風にしたのは一重にカズマと睦美がたくさんの人間達の犠牲の上で破壊の宴を倒した。だから安易に復活させると二人と二人を支えてきた犠牲者達の命が軽い物に成ってしまうからな。其処で因果交換と呼ばれる手法で一時的ではあるが、因果を逆転させて復活させたまでだ。つまり用が済んだらそのまま退場して貰う物さ。だって簡単に復活してしまったら『ドリーマーズアゲインよ、永遠に』でやって来た事が本当に無駄になるからな。だからこそこれくらいしか出来んさ。
 んで、何故だか主人公であるデュアンが破壊されちゃったみたいだけど……心配ない。其の為にデュアンロールがある。此れで奴が破壊されている間は物語は続行される。そう、アルッパーが主役を務めるという四ページ目を。さあ、今まで噛ませをやらされてきたアルッパーは汚名返上出来るのか!
 という訳で赤魔法の章04の三ページ目の解説を終える。

 其れじゃあ予定表と洒落込もうか。

     十一月二十七日~十二月二日  第九十三話 惑星から衛星へ             作成日間
     十二月四日~九日       第九十四話 衛星世界旅行              作成日間
       十一日~十六日      第九十五話 十五少年少女漂流日誌          作成日間
       十八日~二十三日     第九十六話 スクリュースタンダードアイランド    作成日間

 元ネタはヴェルヌが考案した人工島のお話。但し、中身は其れすら似つかないような物に成るぞ。其れを終えてから第九十七話で一旦一兆年の夜は休載する訳だ。『ブラムヘイム』やりたいしな……そうゆう訳だ。

 其れじゃあ遅くなったが、今日はここまで。さあ、修理に出したパソコンは返って来るかな。来なければ自力でサルベージするだけさ。

格付けの旅 デ・ヴァレラとコリンズは何故喧嘩するのか? 主役不在の死闘

 主役不在……其れは物語の途中で主役を務める者が死亡しても続いてゆく事を意味する。従来は其れを『主役交代』と呼ぶ物だが、全然意味合いは違う。主役不在は主役が死んでも主役の遺志を継ぐ者が決着を付ける事を意味する。つまり幕引きを任された者達が畳んでゆく事である。
 主役交代……其れは前の主役が次の主役にバトンを渡す事を意味する。主役不在との違いは前の主役が死んでも次の主役が引き継いで物語を続ける事を意味する。なので主役不在とは違って物語に幕を下ろす気はない。
 アルッパーとキスパールは撃ち合いを始める。最初は放射能熱線による遠距離戦を一年五ヶ月二十八日も続け、次に放射能拡散光線に依る波状攻撃を冥王星軌道十九週半も続ける。何方もアルッパーが一方的に止めた。何故なのか?
「俺の攻撃を全て見切りやがって……唇の分際が俺の真似をするんじゃねえぞ!」
 --クジラノワリニハイケメンダネ。ステキダワ、デモタンキナノハタマニキズ--
 俺の気が短いのは全部二本足に受けた怒りを忘れない為だあああ--とやはり長年に亘って人間に食されて来た経験から恨みはどれだけ経とうとも癒えない!
 アルッパーはまるで並行世界を経験したかのように何とキスパールに向かってホワイトホエールとブラックホエールを掛け合わせた必殺技を敢行。此れにはキスパールも思わず真の姿を少し晒してから防いだ!
「貴様……一瞬だけ唇以外の姿に成ったぞ!」
 --ワタシノスガタヲサラシタノハオマエデサンタイメダ--
「三体目……一体はあの二本足だとして後一体は何処のどいつだああ!」
 --もう一体は交渉者……ネイキッズだあああああ!--
 キスパールは真の姿を晒す。其の姿……まるで無数の真珠が重なり合って形成される太陽系を模す!
「此れは……何処にてめえの本体が……グワアアアア!」
 --おっと真の私は常時攻撃しているわよ。その攻撃をしつつも私は意識ある攻撃も意識ある防御も可能とするわよ……受けなさい、パールブラスター!--
 グワアアアア--アルッパーは下半身を消し炭にされた!
 普通の生物なら此れで死は免れない。けれどもアルッパーは癌細胞を克服した怪獣王の子孫でもある以上、其の癌細胞の扱い方にも長ける--結果、僅かコンマ零十九桁と二の内に下半身を再生して見せた!
「俺の放射能熱線を……グワアアア!」
 --その技は見切った。私に怪獣王の一撃が通じるか……パールボンバー!--
 文字通り放射能熱線を模倣したキスパールの光線型一斉斉射。無数の真珠を反射と発射を同時に活用して受け流しも困難なばらつきある威力の連続攻撃。
「此の野郎、だったらホワイト--」
 --其れも見切った……パールダイレクトショット!--
 体当たりの原理を応用した無数の真珠による突撃攻撃--だが、この攻撃からアルッパーは反撃の隙を見付ける!
「見付けたぞ……貴様の本体をオオオオウ!」アルッパーは放射能熱線を放つ。「そしてお前の反射攻撃を全身に浴びて癌細胞を……活性化させるウウウ!」
 --そんな虚仮脅しで私が……何、血……血が出た!--
 キスパールは久方振りに血を出す事に動揺を見せる。動揺は一瞬の隙を作る。その僅かなスキをアルッパーは逃がさずに癌細胞に蓄えた放射能熱線を次々と繰り出しては微妙にアレンジを加えてオリジナル技を編み出す。こうする事でキスパールの持つ一度見た技術は二度も通用しない特性の裏を掻く--流石のキスパールも次々と微妙なアレンジを加えて繰り出す癌細胞蓄積放射能熱線という全く新しいアルッパーの先祖がやった拡散光線を前にすると何度も行進を繰り返すしかない……其処がデュエルシーとの違いでもある。
 --細々と微妙なアレンジを加えて繰り出しちゃって……ならば取り込む前に私のオリジナルを浴びせて反捕鯨団体のゴミ共の毎日の食材に仕上げてやるわ!--
 キスパールも又、反捕鯨団体が嫌いな様子。そんな無駄話は兎も角としてキスパールが繰り出すのは世にも恐ろしい全身の真珠を次々と唇化してアルッパーにぶつけてくるという生理的に吐き気を催すインフィニティキスに依る必殺技。其の技は見切るのは簡単だが、躱す事が困難。見切るのは簡単であり、真っ直ぐ向かって来る以上は単純……けれども躱す事は難しい。何故ならキスは舌を絡めさせる独特の方法の他に吸い付くという方法もある。
 其の為、躱そうと試みると先ずは宇宙の端まで伸びる舌が逃がさない。次に掴んだ舌は絡め作業にて捉えた相手を唇前まで転がす。そして最後は見るも恐ろしい吸着がアルッパーの全身に無数の蚊に刺された穴を齎してゆく!
「ウギャああああああ、カイイイイイイイイ!」
 --痒みはまだ私の技の序の口……真に恐ろしいのは其の血液全てを空にするまで終わらない!--
 一度受ければ後はドミノ倒しの如くアルッパーに繰り出されてゆく。流石に癌細胞の塊であるアルッパーも血液を一度に失えば無事では済まない!
 其処でアルッパーは何と白い方の話題ではあるが、残り液体量が少ない状態で肉の塊である自らを液体状態にしたまま光速を突破--其の勢いでキスパールの本体と思われる真珠石に向かって空間突破してからの『液状速法』に依る物理攻撃でキスパールの胴体に風穴を開けた!
 --馬鹿な……私がデュアン以外にも敗れる……か!--
 キスパールを構成する真珠が全て崩壊してゆき、霧散霧消する。
「ハアハア、どうだ……俺だって、ハアハア」
 アルッパーは察していた。自分達の目指す道が破滅で更には何れ自分の命運は水分一つなく成り、肉も失うのだと!
「悔しいが、俺は、俺は--」
 アルッパーは消滅してゆく……

































 液状速法……其れは白い方の話題でも取り上げる可能性はあるが、言わばゴキブリダッシュと総称される速度を高める方法。とあるグラップラーが提唱した方法であり、使用すれば筋肉も骨も使わずに体内の水分のみでゴキブリのような速度を可能とする。事実、此れを用いてメイドと掃除屋と激戦を繰り広げたゴキブリは存在する。そいつは更に液状速法のみならず、無性生殖ミサイルや卵状マイクロミサイル等々……下手すればゴキブリに見られる命を粗末にした戦法を更に特化し続けていると言える。まあ、液状速法を使わなくとも奴は超光速を実現出来るからな。あくまで液状速法とは光に届かない者達が少しでも亜光速に近付く為に用いる技術の一つに過ぎない。
 って其処に居たかあああああ……二本足いいいいい--アルッパーは解説するデュアンロールを特定すると光を超える速さで全身を再生させる!
 --ああ、確かにデュアンロールに俺の意識を移し終えた所だ。だが、お前の意識も取り込んでやるぞ。何故ならもう直ぐ此の世界は元の因果に戻り始める--
「其の前に積年の恨みを晴らすのが先だああ!」
 アルッパーのホワイトホエールがデュアンロールに向かって放たれる……が、空を切ってアルッパーを呑み込んでしまった!
「ぎゃあああ、俺がああ!」
 --全くお前は初めて会った時から単純で子供でも引っ掛からない手に引っ掛かりおって……其れだからお前は主役に成れないんだよ!--
「五月蠅い、誰だって主役を欲しているんだよおおお!」
 --其割に神才の一体として普通じゃあ絶対に勝てないと言わしめる能力者だから洒落に成らん……さっさと黙ってろや!--
「グギャアアアアア--」
 アルッパーを飲み込んだデュアンロールは時空に穴を開けて何処へと--




























 この世は押しなべて事もなし……其れは物事には変わった事等一つもないという事柄。因果律が正常に働く内は因果を崩壊しかねない事が起こり得る筈など有り得ない。何、わかりにくいって? 要するにタイムトラベルをやったとしても子供が親を殺す事なんて不可能。結局、子供が存在しない以上は親が殺される未来もない。結果、因果は保たれる……ま、そうゆう事だ。
 時はデュアンに『ウルトラバースデイ』の持つ『因果交換』をデュアンに繰り出す瞬間に戻る!
「知らんな。とっとと『ウルトラバースデイ』が得意とする『因果交換』を受けて消滅するが良い!」
 ワイズマンの右手から先程のグレー色の何かがデュアン目掛けて飛来!
 其の時、デュアンロールが『因果交換』を受け止めて其の侭、ワイズマンに向けて叩き込まれた!
「ウグウウオオオオオオオ……此れは、そうか!」ワイズマンは既に『因果交換』の効力が消えている事を感じた。「チイ、仕方ない」
「フ、如何やら俺の保険が間に合ったみたいだな!」
「知るか……ホワイトホエール!」
「ギャアアアアアア!」
 アルッパーのホワイトホエールが炸裂し、ブラングリスパが消滅した!
「撤退するぞ、キスパール」
 --ワイズマン……ナゼカシラ?--
「破壊の宴の復活は阻止された。最早俺達が此れ以上、<アンデルセン大宇宙>に留まる理由が見当たらない!」
 --ワカッタワ、ワイズマンガソウイウナラ--
 理解の早いキスパールはワイズマンと共に空間に穴を開けて去って行く--デュアンもアルッパーも珍しく彼等を追わない……理由はキスパールの能力を警戒しての事か?
「感じたか、二本足?」
「ああ……『因果交換』の影響で今度はとんでもない奴が現れやがった!」
 其のとんでもない存在とは果たして何なのか……次回に続く!



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試作品 消費してばかりの馬鹿共のオタク会話

 如何もdarkvernuです。
 今回は自分自身が好きなあるシリーズについての自分の考えを作品内で議論して貰います。なので何時もの論争シリーズの感覚で読んで下さいね。

 彼ら六人は無駄な議論を始める。一般社会では彼らの事を一方的な消費者と断罪する。何故なら彼らの議論は知る人にしか知らない話であり、興味ない者にとっては苦痛でしかない。その内容は今から紹介する。
「きっとオリジェネのラスボスはオリジェネオリジナルのケイサルダークブレインだ……」そう主張するのはバイト歴十八年のベテランアルバイター佐藤達臣。
「確かにOG外伝最強のボスキャラのダークブレインならクロスゲートの創造主としてもしっくりくるよな……」納得するのはニート歴三十年の屑ニート橋本昴。
「いや、ラスボスはきっと完全体ペルフェクティオに決まっていますね……」そう主張するのはベテランゲーマーにして倒産歴二十八年の駄目起業家の島鉄山。
「ペルフェクティオ何てポゼバスターだろうとドラコデウスだろうと無理だって僕は思います……」と反論するのは漫画投稿落選歴四十年の万年同人漫画家八馬矢間和。
「じゃあカリ・ユガたんでJK……」そう主張するのは借金歴五十年の永久返済不能家の永七丞。
「一体何ノ話ヲシテマスカー……」観光目的でやって来たのに議論に参加させられたアメリカ人観光客のアメイ・テツゾーン。
 彼らの議論は勿論、次回で完結予定かも知れないスパロボOGシリーズの事である。スパロボとオリジナルキャラをこよなく愛する彼等は様々なバンプレオリジナルを出し尽くして議論を戦わせる。勿論、議論の結果が今後のバンナムの方針にも唯一神テラーダの判断に影響を及ぼす事もありませんのであしからず。
「カリ・ユガたんは……というよりもエーアイスパロボはWまでだろう。悪名高いKを始めとしたエーアイスパロボオリジナルは次のOGシリーズ次第だろうが!」
「でもKオリジナルまでが糸井と歌津デザインだぜ。其れと敵キャラに一部だが、コンパチキャラのデザインをしたがんぢーが居るのよね!」
「其れでもル=コボルじゃあ格落ち感が半端ない。ルミアー1,2のライターだったあの方のせいでもありますがね」
「でも次が最後だと仮定しても二次、三次Zみたいに二つに分ける必要ありますよ。だって二部構成のWが参戦するのですから二つに分けないと収集付かないと僕は思います」
「確カニ日本ノWジャムパンハ二層構造ニ成ッテマスネー」
「ジャムパンは知らないが兎に角今は誰がクロスゲートの創造主なのかを議論するのがJKだろう?」
「確かにな。其れにラスボスを語る上で欠かせないのがコンパチカイザーのOGエンジンとロアとエミィ、其れにダークブレインだな」
「オーバーロードは出さないと駄目でしょうね」
「だが、ダークブレインを出さないなんてロアの因縁の敵としては格落ちしますと僕は思います」
「だが、グレイトバトルはIVまで出す余裕あるのか? まだ3だって出てないし、其れにスカルナイトだって生きてるのだぜ。他には十二人いる幹部の内の生きていると思われる五人のうちの二人が誰なのかも議論しないといけないだろうJK」
「二人はリジェスとストラガイアに決まっている!」
「いや、リジェスはロアの一部だろう。其れにストラガイアは設定上は全にも悪にも成れる修羅神みたいな存在だぞJK」
「全クデスヨ。何ノ為ニティエリアノ同意種デアルリジェネヲ出シタンデスカ!」
「いや、話はダークブレインの残り二人の幹部の事ですね。うーん、新生コンパチシリーズや悪評高き6のインフェリオスや明らかにザンエルと同じ巨人族の臭いがするオーバーロードは省きましょう。後はダークブレインよりも古いグレーと雷門も除きましょうね」
「雷門はサンダーゲートだったりバリアニメのレジレイアの手下だったりと地味に出演回数が多いと僕は思いますね」
「最初期の相撲ゲームだったら一番の強敵だしな。一方でスーパーマンの格好をしたキッドはパスワード画面だったり背景だったり、或は下手すると同じロゴマークのロアやSRXにも知名度が劣る程に出番がないな」
「何……バンプレキッドだと!」
「何か閃いたのか、佐藤さんはですね!」
「いや、今は二人の配下の話に集中する。候補として残っているのは何だ?」
「ダークアイアンはスカルナイト達の拠点だから省くとしてコンパチシリーズ全体で候補に挙がるのはシャフバトのダルカスとガルシアス、祭りだ、ワッショイのフェスティバル大帝、鉄球王、後はリメイク初代スパロボ第二部のラスボスを務めたバトコマ版ロアのゴッド・ノアだな」
「他にも居るけど、中々探すのも面倒臭いと僕は思いますね」
「鉄球王は本来ならばダークブレインと合体するような存在だろJK。其れなら闘球王だろう?」
「闘球王は正義の味方ですね」
「だとすれば一体誰と誰なんだ?」
「多分、シャッフルファイトのダルカスとグレイトバトル外伝2のフェスティバル大帝だと僕は思います」
「最近ノ日本ノフェスティバルニ於ケル余計ナ清潔感ハ困リマスヨー」
「大帝と名乗っているのだぞ。奴がダークブレインの下に就くか!」
「だが、上昇志向丸出しで悪党感のあるデブデダビデが幹部に居るのですね。別の目的を秘めたダルカスや祭りを制覇したいフェスティバル大帝が幹部に成る事だって有り得る話だと僕は思いますよ」
「でもバトコマ版ダークブレインと思われるダグブールの配下だったバトコマ版ロアのゴッド・ノアは如何なのだ?」
「俺も気に成っていたんだJK。あいつの台詞は色々意味深な発言が多いからな」
「いや、あれは普通にブラックエックスの乗機に成るのではないか?」
「其処でグレバトIVの話ですか。僕としては正直、其処まで唯一神テラーダが手を回せるとは思えませんが」
「どちらにせよ、ゴッド・ノアはバトコマのストーリーを照らし合わせても別の扱いに成ると踏むぞ!」
「オーマイゴッドナ話デスネエイ!」
「普通にボーンファイターとクリスタルドラゴンは如何ですかね?」
「どちらもスカルナイトとクリスタルドラグーンだろう、JK」
「何れにしても可能性があるのはダルカスとフェスティバル大帝か。確かにシャッフルファイトと祭りだ、ワッショイを予測するプレイヤーは少ないしな。サプライズとしては成功するだろう」
「後はラスボスが誰かですね」
「俺はこう思う。ラスボスはバンプレキッドだ!」
「いや、さっき主張していたじゃないか。ケイサルダークブレインとね」
「其れよりも完全体ペルフェクティオですよね」
「だからペルフェクティオは無理だと言ってるじゃないですか、僕が散々!」
「カリ・ユガたんは次回シリーズだろうな、JK」
「其レヨリモバンプレキッドッテ何デスカー!」
「相撲ゲームで初登場した奇怪な髪形とスーパーマンの格好をした小太りの中年にしてバンプレストの初代マスコットだ。山科行事件親方の下で力士として活動する双璧の一人だ」
「あれがラスボスである根拠は何ですかね?」
「正直クロスゲート作れるようなおっさんか?」
「バンプレストのマスコットだからこそ敢えて唯一神テラーダは出してくると俺は踏む!」
「じゃあクロスゲートの意味は……は、もしや土俵ですか。僕は土俵を連想してしまいました!」
「どこをどう見れば土俵に見えますか? ここにクロスゲートの写真がありますよ!」
「土俵って確か四角の中に特徴的な注連縄の丸が描かれているものですよね」
「ウオワアアアア、コレジャパニーズ土俵デース!」
「どこをどう見たら土俵に見えるんだよ」
「ダッテコノクロスゲイトノ尖ッタ部分ヲ外シテ土俵ニ合ワセテ思イ描イテ下サーイ!」
「な、本当に土俵に見えるぞJK!」
「じゃあユーゼスは土俵を頭のわっかにしていたのか!」
「そうなるとアルケウスは土俵を背中に背負っていたのですね!」
「じゃあ今までZONEやクロスゲートは土俵として吸い込まれて別の世界へ跳ばされ続けていたのか!」
「アラウンザーの最強武器は土俵の神聖なるエネルギーを利用した攻撃だったのだな、JK!」
「有無、そうなると今までクロスゲートの先が戦いの舞台だったのも納得がいく。土俵なら致し方ない!」
「恐ルベシ、ジャパニーズ土俵!」
 こうして六人は一つの結論に至った……


 ンな阿呆な事をスパロボチームが考えるか……とお思いの皆さん。いや、自分が辿り着いた結論だ。唯一神テラーダもムゲフロ森住も全会一致しそうな気がするんだよな。だってスパロボってノリとパッションでストーリーを決めている感があるしな。まああくまで考察だから本気で受け止めないように。
 『消費してばかりの馬鹿共のオタク会話(仮)』はあくまで雑文でやりたい自分が敢えて試作品という形で紹介した議論物。今回は大好きなスパロボシリーズを妄想する内にこうゆうのも面白そうだなあ、と考えたまでさ。序にもう一つ記しておくとムゲフロ勢はナムカプ及びプロクロの零児やシャオムウ、其れにゼノサーガの邪神モッコスを除けばメインキャラは全部で六人。内二人はムーン・デュエラーズで参戦した訳だ……まあ予想通りだけどな。多分、露出狂娘とジュリアナ姫も参戦するだろう。だってあの二人が大人しく帰りを待つとは思えないからな。ちなみにアレディとネージュは居残りだと思う。あいつらまで跳んできたら誰がエンドレスフロンティアの留守を任せられるのだよ。そうゆう訳で是非ともDGG四号機と思われる大邪鬼銃王の御尊顔を期待する!

 という訳で今回はここまで。一応、修理に出したパソコンが帰るまでに出来る限りはサルベージしないとな。特にやらないといけない箇所は徹底してやらないとなあ。

一兆年の夜 第九十二話 海底成人体型一万二千(十)

 二月二十二日午前三時十八分五十七秒。
 場所は不明。外部船員室で深い眠りに就いた筈の三名が同時に目覚める事態が発生。
「何か知らねエガァ、健康に良くない夢を見チイマったあ!」
「何なんですかッケロ、いきなりッケロ!」
「はあはあイモォ、もしかしたらリィ」
「何カアイわかったのか--」
 扉を強く開ける船員が一名。蛇足族の生命は利き親指で『付いて来い』と三名に指示を送る。
「やっぱり此の為に例の技術で私達を叩き起こしたのですねリィ!」
「あの技術は考えるのも限界ですっケロ」
「細かい事考えずに付いて行くゾォウ!」
 三名は船員の後を追うように乗り込み口まで駆け付ける。するとその出入り口が開いていた。
「何イモォ、先に出て下さいリィ?」
「これは良い--」
「いえッケロ、今は下手な事を口走らないで下さいッケロ」
 わかったゼェイ、カエルヒコ--ベアッ土は思わずあの計画を漏らす所だった。
「……」蛇足族の船員は其れを聞いても何も反応を示さない。「……」
「どっちみち私達を必要とする事柄だイモォ、行くぞリィ!」
 三名は外へ出た。すると見えるのは成人体型高さ三十、横幅五十一、縦幅七十七にも成る巨大な蒸気船。其れを見てイモール達は三者三様の反応を示す事に。
 ベアッ土は上着を脱いで其れに持参した銛を括り付けて旗代わりとして活用。カエルヒコは蛙族の独特な声を駆使して救助を求める。おっぽうのイモールは次のように考え始める。
(蒸気船にしては何だか見た感じの材質が少し異なるリィ。船を全て鉄だけで覆い尽くせるだけの技術を今の真古天神武が所有するのかリィ? いやイモォ、そもそも鉄は未だに謎の解明されない材質だぞリィ。下手に水につけると溶けて使い物に成らない代物だぞリィ。
 だとすればあの蒸気船は……何となく--)
 考える……までもありません--三名の背後にネロリモ船長は立つ。
「またお前かヨォイ!」
「今から僕達は--」
「何故私が君達に……あの船のようなシロモノを見せたのか……教えましょう!」
 其れを聞いてカエルヒコとベアッ土は信じられない思いでネロリモ船長に訂正を求める。一方のイモールは確信に至った。
「カエルヒコ君にベアッ土君イモォ、少し静かにしてくれないかリィ」二名の口を閉じさせるとイモールは尋ねる。「もしかしてあれがネロリモ船長が求めていたモノですかリィ?」
「君たちの時代では……あのようなシロモノは知らないだろう。だが、私の時代では……あれは空の惑星を焼き尽くした恐るべき……浮上船に良く似たシロモノだ!」
「ならば如何するのですかリィ?」
 今から……粉々にしてやる--恐るべき一言を告げてネロリモ船長は中へと戻ってゆく。
「ま、待てヨオウ!」
「粉々にってッケロ、其れは幾ら何でも一般生命の倫理を超えた越権行為ですっケロ!」
「ああイモォ、閉め始めたリィ!」ネロリモ船長は例え仲間が死ぬ事があっても……「二名ともイモォ、直ぐに中へ入るぞリィ!」必ず無念を晴らす決断力を知るが故にイモールは二名に避難を促す。「ネロリモ船長は本気だリィ!」
「あの野郎メエイ、何処まで突破してるんだヨウィ!」
「もうこれ以上付き合ってられませんっケロ!」
 其れから三名は船員に案内される形で船長室まで迎えられる。其処で船長室に入って直ぐ右側の展望窓から浮上船に良く似たシロモノの下腹部が見える--ネロリモ船長の、そしてイモールの推察した通りに船は剥き出しの内臓と筋繊維……其れから灰色の骨を見せ付ける!
「何だよ、何ダァヨ!」
「剥き出しだ……船が銀河連合化をしたのかッケロ?」
「いや……最初からだ。しかもこれは……凡そ十段階先の姿だ……これから君達の時代にあれは……到来する!」
「なイモォ、鍵盤台がリィ!」
 イモールの見た通りに鍵盤台が突然、姿を変えて足踏台二つに上下左右倒し棒二つ、更に中央に中央基幹棒として変化する。
「さあ……此れで一つ叶う……これは全生命体の望みだああ!」
 ネロリモ船長は馴れた手足付きで操作し、浮上船のようなシロモノの銀河連合の下腹部中心部を貫くほどの勢いで突進--ピースケイスの先端に取り付けられた代物の貫通力と硬度は思った以上に……銀河連合の命を絶つ威力だった!
「此れで……安心出来る」その一言と共に元の鍵盤台へ戻る。「もう用は済んだ……自室に戻って寝たまえ」
 三名は無言のまま、船長室を立ち去った。
『--ピースケイスの技術力は今更記す必要もない。あの時代へ到達するまでに私達は
果たせるだろう。問題は其処ではない。
 私達は最早、ピースケイスに残る気は毛頭なくなった。これ以上、ネロリモ船長の怒り
に付き合っていられない。私達は自室に戻る振りをして脱出を決める。此れには前々から
出たがっていたベアッ土君や彼に同調してピースケイスへの積もりに積もった満足し
えない思いを溜め込んでいたカエルヒコ君も賛同した。私達は目配せ一つで
ピースケイス脱出作戦を決行する。其れは付け焼刃もあるが、前々から計画していた事。
しかも事を終えたばかりのピースケイスは何故か知らないが、浮上を始める。
 本来ならば成功しない作戦。ところが謎の浮上と誰よりも聡明で警戒心の強い
ネロリモ船長が私達を自由に帰らせた事が起因して見張りを担当する船員達の目を
掻い潜ってベアッ土に案内された部屋まで辿り着く。
 だが--』

 午前三時五十七分五十六秒。
 場所は不明。ベアッ土の言う穴の空いた船のような物は表に出された分だけで二十四も引っ掛けられている。その内の右側を取ったイモールとカエルヒコ。
「試しに空気を容れてみてくれイモォ、ベアッ土リィ」
「如何なっても知らんぞオオウ、はあああああう」
 ベアッ土の屈強な肉体は肺活量も期待通りと成り、僅か五の秒で其れは空気船へと形を変えた。イモールとカエルヒコは実際に乗り込んでその感触を確かめた。
「待て待て……加減利かないと困るだろうガアイ」
「済まないイモォ、ベアッ土君」
「いやっケロ、乗り心地はどうなのかを確かめたくてねっケロ」
「全く……後はこの栓を填メィレば、良いんダナア」
 栓は更に一度填めると其の侭取っ手の部分が解けて穴を塞ぐ。遥か明日の時代の技術を今更驚く気がなかった三名は最早論じる事もしないまま次の作業に取り掛かる。
「あとはこの巨大な四角が何なのかッケロ、ですねっケロ」
「何か開く物あるか……うおあリィ!」
「うわあお……あッケロ、ありましたっケロ!」
「あ、カエルヒコメエイ……まだ始メエルのは早い……うわあアオオウ!」
 三名を襲った揺れはピースケイス全体を揺らす。カエルヒコが引き倒した棒は四角の何かを開く。其処で海水が勢い良く内部に入り込む。浮上している筈の潜水艦の周りで何が起こったのかを三名は直ぐに察知出来ない。いや、其の前に空気船に乗り込むのが先だった。イモール、カエルヒコ、其れからベアッ土は何とか空気船にしがみつく事で津波に体を持っていかれる事はなかった。
「はあはあイモォ、こ……これはリィ!」
「今は遥か明日の時代の技術を信じてッケロ!」
「神様よ、どうか俺様達をもとの時代の技術の加護に帰しておくレエイ!」
 三名は特殊な空気船の操作盤をイモールの知識とベアッ土の勘、其れから両者の均衡を取るカエルヒコの操作で起動させる。起動こそ初めての試み故に其処まで出来は宜しくない。けれども空気船は三名を生かす為に最善を尽くして流される。そんな中でイモールの目にある物が飛び込むと次のような考えが始まる。
(あれはネロリモ船長……この渦の中でも鍵盤台にて音楽を演奏するのかリィ!
 という事は彼にとってこの渦は初めから予測されていた事なのかリィ? いやイモォ、何処までが彼の予測通りなのかリィ? あの船型銀河連合を倒す前からこうなる事を予測していたのかリィ? 其れとも私達が逃げ出す事も既に予測していたのかリィ?
 どっちでも良いイモォ、アウストラネロリモはこの時代に於ける倒すべき銀河連合を倒したリィ。後はこの渦を利用してピースケイスを深海の奥深くまで急落下して元の時代へと戻って行くだけリィ。
 私の知る限り謎の深い深海だと信じれば其れはまだ叶うリィ。まだ……ウワアアアア--)
 三名を乗せた空気船は激しい勢いの渦に呑まれて意識さえも深淵へと運んでゆく……
『--其れから先は気が付けばテオディダクトス大陸の最南端の崖にて私達は目覚める。
最初の方こそ空気船がなくなり、一体如何やって帰還すれば良いかに混乱したな。
けれども、その混乱を止めたのはたまたま現地を調査していたとある衛星研究班の三名。
何でも月へ行けるかどうかを議論する為にテオディダクトス大陸こそが発射台に相応しい
と踏まえて調査していたそうだな。
 まあ彼らのお陰で私達は生還を果たせた。無事に一の年ぶりに元の時代の加護を
受ける事が出来る。最初の一の週こそは如何してもピースケイスでの生活もあってパンも
グラシャラ蕎麦も其れから実に美味しい御粥も喉から足が出るほど欲しかった。だが、
其れを過ぎると心身は元の生活に適応を始める訳だ。そうすると寂しくなって来る物だ。
ピースケイスに於ける日常を私は好んでいたのだと。私達はあんなにも激しいやり取りを
していたのだと感じ始める。今だってそう思う。だからこそ今日に至るまで筆を執り
始めた。
 あの生活を忘れない為、死ぬまでに一度でも良いから私が体験したピースケイスの全て
を後世にも知って貰う為に。今回は他にも記したかった事も多くあった。けれども、私は
敢えて重要な部分だけを取り上げるに留めた。
 要望があればより詳しいピースケイスの真実を読者の皆様にも知っていただけたら
明利に尽きます!
                       深海研究者 イモール・アーロニク』

 ICイマジナリーセンチュリー二百三十一年二月二十五日午後二時零分零秒。

 第九十二話 海底成人体型一万二千 完

 第九十三話 惑星から衛星へ に続く……

一兆年の夜 第九十二話 海底成人体型一万二千(九)

 二月八日午後十一時三分四十八秒。
 場所は不明。三名は外部船員室にて眠りに就く。
 いや、三名共眠りは浅い。特にイモールは早朝に自分達を呼び出した少年の事が頭に浮かんで眠れない。
(確かに彼は最後に自らの訛りを吐露したリィ。ピースケイスの船員達がどんな目的を持とうともイモォ、彼だけは若過ぎる故に他の船員に比べて胸に溜める怒りは少ないリィ。其の結果が最後の瞬間だけ自らを隠さなかったリィ。其れだけに彼の死は私のみならずイモォ、みんなを眠りから遠ざけて行くリィ。
 特に苦しいのはベアッ土だったリィ。なのに眠りが最も浅いのは私なのは何故だリィ?)
 其の答えは静かに開く扉が教える。ネロリモ船長がイモールに用がある様子。イモールは現在のネロリモ船長の心境を窺う為に彼の後を追いに部屋を出る。
 其れから一の分掛けて船長室に辿り着いた後はネロリモ船長を先に入らせて遠慮気味に中へと四本足全て丁寧に中へと入れる。
「其処まで畏まる必要は……ありません」
「いえイモォ、早朝での出来事もありまして余り刺激を与えたいとは思っておりませんのでリィ」
「私を誰だと心得る……微々たる死を恐れて何が出来るか!」
「微々たるだってイモォ、彼の命も前に海難事故で亡くなった船員の命だって代え難いのですリィ!」
「済まない……格好の付かない姿を見せてしまって!」
「あイモォ、こちらこそ申し訳ありませんリィ」
「彼には……私達の目的を強制する気は……全くなかった」
「目的リィ?」
「いえ、聞き流して下さい……これは私だけの……目的なのです」
 イモールの思った通り、ネロリモ船長には怒りの炎を燃やすだけの理由があった。イモールは踏み込むように次のようなお願いもする。
「怒りをぶつけたいのはわかりますリィ。ですがイモォ、私共は其れに付き合うつもりはありませんリィ」
「其れは……質問かね?」
「いえイモォ、お願いですリィ」
「貴方は……立場を弁えなさい」
「其れでも貴方の怒りに付き合えるだけの勇気も覚悟も持ち合わせておりませんリィ!」
「捉え方に依っては……出て行く気ですね?」
「ええイモォ、私達にとっては念の残る形ですがリィ」
 其れは……出来ない相談だ--初めて会話した時から其れは譲らないネロリモ船長。
「なぜですかイモォ、ネロリモ船長リィ!」
「言った筈だ……この潜水艦に乗れば……一生ピースケイスと運命を共にする、と」
「ですが私もカエルヒコ君もベアッ土君も貴方の時代の生命では--」
「そんなの……理由に成らない屈っし内容だ」切り捨てるネロリモ船長。「この船を少しでも知ってしまう……或は知ってしまった以上……後戻りは出来ない!」
「私達を貴方方の時代に連れてゆくのですかリィ!」
「私達の時代は……遥か先まで進んでしまった!」
「だったら貴方達だけで進んで下さいリィ!」
「如何しても……譲らないのですか?」
「そんなの私達がどれだけ努力しても追い付けない所にあるのですリィ。だったら--」
「そろそろ……演奏の時間だ」話に成らないと判断してネロリモ船長は調律線鍵盤台を弾く為に近くの椅子に腰掛ける。「お休み……イモールアーロニク先生」
 其れからイモールは無言で部屋を立ち去った。
『--これが私とネロリモ船長が決裂した瞬間。私は明日の為に前に進むのに対して彼は
戻らない明日の為に前に進む。戻らないモノの為に命を懸けられるほど、私は出来た生命
ではない。私がピースケイスに残る最大の理由だった彼との私的な対話はこれ以降
行われない。私の中でピースケイスへの思いが薄れてしまった。
 其れでもまだ私の中でピースケイスから出て行くという選択肢はない。まだ
ピースケイスに僅かな希望を残している為なのかを今の私があの時の私を観察出来るか
を理解出来ない。当事者だからわからない事が多いのは認めても観察対象として思うのは
神様に対して礼を失する気がする。
 なので話を進める。次の話は--』

 二月十五日午後三時十二分十八秒。
 場所は不明。最近は三名を外に出す機会が多く発生する。
 外に出て感じたのは先端の方角に何かが浮かぶ。三名は近付く。するとネロリモ船長が顔を出す。
「何だよ、船長さんヨオィ」
「最近は禄でもない数で……沈没船が浮上する」
「何か意味を理解しかねますっケロ」
「済まない……独り言だ」
「……」
 この頃からイモールは自ら声を掛けようとしなくなる。そんなイモールの様子を露知らずにネロリモ船長は急に語り始める。
「まあ良い……この船は私達と同じくこの時代に飛んできた……恐るべき銀河連合の存在を明確に表す!」私達とはピースケイスの船員達を指す。「奴等は一体たりともこの時代に居ては成らない……其の為にもこの沈没船を手掛かりに……私達はずっと追って来た!」
 更にネロリモ船長の演説は熱を帯びる。其れは訛りという名の衣を外すと次の通りに成る。
 ネロリモ船長自身の目的は彼自身の故郷の時代にて凄惨成る事件を起こした銀河連合を全て打倒する事。其の為には慈悲さえも根こそぎ捨てる覚悟でずっと望んで来た。全ては故郷の時代で凄惨な目に遭った仲間達に報いる為に。道半ばで死んでいった仲間達をこの時代に眠らせたのもある理由があった。其れはもう戻れない故郷で跡形もなく消し飛ばされるよりもまだ希望があるこの時代に眠らせた方が幸せである為に。だが、一の週より前に埋葬される事なく死んだ仲間が居るように必ずしも埋葬が約束される訳ではない。其れもネロリモ船長は理解した上でこの時代まで誘われようとも其れを追い続ける。全ては戻らない明日の為に。
「此れで……九十九隻目」数えてもいた。「漸くこの時代の何処に……奴らが居るかを特定……出来るぞ!」
 黙って聞いていた三名はこの後、部屋に戻った。

 午後七時五十三分三十八秒。
 場所は不明。外部船員室にて三名は会話する。
「そろそろここから逃げ出そうゼエイ!」
「ええッケロ……でもッケロ」カエルヒコは次のように答える。「見張りが思ったよりも目を光らせているッケロ!」
「心配ないゼエイ、カエルヒコ」
「如何してですかッケロ、ベアッ土さんッケロ?」
「今日の朝に成って思い出したんダアイ」ベアッ土はある物を発見する。「一の週より前に呼び出された時に案内する傍らである部屋に目が飛び付イタアのだよ
「其れは本当かイモォ、ベアッ土君リィ?」
 珍しいナアイ、先生……喧嘩でもしたのか--とイモールが食い付く事を不思議に思う。
「私の事は気にしないでくれイモォ、二名共リィ。だから話を続けてくれリィ」
「わかったゼェイ、えっとなあ。あれダアヨ」ベアッ土は今日の昼食後の休憩中に許可された制限自由時間内にて……「俺様は目を掻い潜って其処へ入ったのダァヨ」僅かな時間の内に全てを脳裏に焼き付ける。「そしたら何故か穴の空いた船のような物を見付けタアゼ!」
「何故か穴の空いた船のような物……本当なのかイモォ、ベアッ土君?」
「其れじゃあ脱出する際に沈みますっケロ」
「普通の常識ならばイモォ、なリィ」
「先生もそう勘付くか……俺様もそう直感しているゼエイ!」
 まあ実物を見ない事にはわからないなリィ--他社の見た物を其の侭信じる程、イモールは空論倒れではない。
「其れで如何しますっケロ?」
「寝る時間帯は扉が頑丈に閉まってイルゥ。何度も挑戦した俺様だから言えるノォダ!」
「じゃあ休憩時間に--」
「待てイモォ、深海の中では危険過ぎるリィ!」イモールはネロリモ船長の考えを読んでこう意見を述べる。「空気の入れ替え時にはピースケイスは地上に顔を出すイモォ、そこが脱出する機会だリィ!」
「つまりまだ早いって訳か……全くこれだから深海の旅は嬉しくないゼエイ!」
「難攻不落ですねっケロ、深海ってのはッケロ!」
「だからこそ深いイモォ、私が深海の謎に挑戦してしまう程にリィ!」
 この時、イモールの中である閃きが浮かぶ。其れは次のように回顧される。
『--この時、私はピースケイスが深海の奥深くにあるとされる時空の扉よりこの時代に
やって来たという仮説を頭の中で立てる。その仮説を信じればあのようなピースケイスが
水の惑星中の海に出没するのに納得がゆく。其れ以前にあれは確かに潜水艦と名乗った。
だったら深海の中で初めて出没する方が説得がゆく。実際にピースケイスはずっと深海の
中を移動し続ける。深海という名も地中を潜り続ける。
 と話が脱線したな。そろそろ最後の部分を紹介しよう。其れはピースケイスが浮上を
始めた頃だな。私達はこれを好機と踏まえて耳に壁をやって浮上の様子を感じ取る。幾ら
防音と言えども触覚まで逃がす事は出来まい。そう思い、耳をやった。
 すると--』

一兆年の夜 第九十二話 海底成人体型一万二千(八)

 二月一日午後一時二分十八秒。
 場所は不明。イモール、カエルヒコ、ベアッ土は久方ぶりに地上の空気を吸う。
 何故三名にそんな事をさせるのか? 其れは次の会話から概ね明白と成る。
「何でも俺様達に近場の銀河連合を倒して欲しいらしいナアナ」
「ピースケイスは少し調子が芳しくないのはわかりますっケロ。だからっていきなり銀河連合の追尾隊を追っ払って欲しいってのはとても無茶な指示ですねっケロ」
「ああイモォ、そうゆう指示を送るくらいならわざわざ外部船員である私達に協力させる意味が理解しかねるリィ」
「まあ良い。ようやく俺様の活躍を奴らに示す時が来たぜエイ!」今まで見てるだけだったベアッ土はこの機会を逆に望んでいた。「これで銛師としての俺様の強さを存分に魅せしめる好機と来たゼェイ!」
「今までずっと悔しい思いしていたのでしょうねっケロ」
「まあ好きにしようかリィ。私達はあくまで頭脳労働者として空論を与えてベアッ土君がそれを修正しつつ助けに成れば構わないリィ」
「良くわかりませんがッケロ、この場合は黙って様子見ていきましょうっケロ」
 有無リィ--口だけしか活躍できない物は黙ってベアッ土の活躍を見守る……イモールの脳裏にそう過る。
 さて、ピースケイスの周りを泳ぐ銀河連合は全部で三体。どれも鯨型と巨体。果たしてベアッ土は右前足に持つ銛でどのように打ち込むのか?
「答えは……そのまま飛び込めば楽ダアイ!」ベアッ土に戦略はない……「戦い方は戦って初メイテ」あるのは付け焼刃で考案する戦術のみ。「閃くのダアィ!」
「成程イモォ、カエルヒコ君の言った通りだりぃ」
「寧ろ却って助言は足を引っ張るだけですっケロ」
「だろうなイモォ、助言にも対応出来た戦いならまだ口出しもかなうからなリィ」カエルヒコの見解を評価するイモール。「如何やら世代交代は近いぞイモォ、カエルヒコ君リィ」
 止めて下さいッケロ、まだその器じゃありませんっケロ--謙遜するカエルヒコ。
 では肝心のベアッ土はどうなのか? 其れは三体を難なく自慢の銛で全て二撃以内で仕留めた。特に最初と二体目は一つも掠り傷を与えずに一撃で急所を貫く技量にイモールは感嘆する。『賞金稼ぎとして活動する生命はこうも肉体自慢なのか』と感じる程。
 その様子をじかに見るのは二名だけではない。例のネロリモ船長が四本足どころか尻尾まで外に出して現れた。
「見ておられたのですかイモォ、ネロリモ船長リィ?」
「見られて……何か都合が宜しくないとでも?」
「ガバア……当たり前ダアィ。お前みたいなのは何をするかわからんカラァな!」
「言いたい事がありますが……聞き流します」
「口喧嘩には乗らないそうですねっケロ、ベアッ土さんッケロ」
 其処も気に入らんゼエィ--既に全身を陸の上に仰がせるベアッ土。
「其れでネロリモ船長が顔を出した理由は何ですかリィ?」
「質問かね……良いだろう」ネロリモ船長は早急に答えてしまった。「追尾隊は……他にも居る!」
「何だっテエイ、もう銛の刃は刃毀れして使い物に成らないぜエイ」
「えッケロ、そうなのですかッケロ!」
 だから三体目は二撃も要したのかリィ--とイモールは納得する。
「気付かれたか、先生には」
「私も気付いていたのだよ……君程の--」
「お前に聞いてネエヨ!」話に割り込むネロリモ船長に怒鳴り声をあげるベアッ土。「唾飛んだだろうガアィ!」
 まあまあッケロ--宥めるカエルヒコ。
「ではベアッ土君の休憩の序なので……御披露目しましょう」
「お披露目とは何ですかリィ?」
「中に入って下さい……でないと変な賢さを持つ……奴等は奇襲しますよ」
 其れは一理あるゼエィ--感情的過ぎないのもベアッ土の賞金首としての価値を高める。
 三名はネロリモ船長の後を追うようにピースケイスの中まで……「うわああッケロ、銀河連合がこのままじゃあ--」突然、急激な落下速度で銀河連合が中へと侵入を果たしたか!
 カエルヒコの叫びとは反対の事が起こった--中に入った鳶型が入って直ぐに呼吸のする個所から火を噴き出して炎上……其の侭、燃え尽きた!
「えイモォ、私達は何ともないのにリィ!」
「ピースケイスでは認証されないモノ……特に銀河連合には死に匹敵するお灸が……発動する」
「俺様は頭が良くないから構造は知ラァン」
 僕だって知りませんっケロ--頭脳労働者でも難しい仕組みがピースケイスには存在する。
(全会一致で龍道……なんてのは思考停止の極論リィ。だがイモォ、私達の時代では其れ以上の模索は出来ないリィ)
 例えわかっていてもイモールは思考停止するしか道はなかった。この後に三名はネロリモ船長に案内される形で船長室にてピースケイスの戦いぶりを観戦する事に。其の観戦内容は回顧録にて説明が為される。
『--正直、巨大一角族だと思われていた頃からの疑問が解消される気分だ。
ピースケイスは最早やり方が銀河連合とどう変わりあるのかを聞きたい。幾ら銀河連合が
如何しようもない存在であろうともあそこまでやる物なのか。
 出来る限り詳しく説明すると増援としてやって来たのは侵入した鳥型だけじゃない。
海豚型、鮫型、鮪型等々総勢十八体。確かにベアッ土君が足を上げたくなる数だ。そんな
大群にピースケイスが用いた戦法は全面の尖った先端。一角族と誤った認識の元である
あの先端だ。あれを海豚速度二に近い速さで繰り出せば如何なるか? とてもじゃない
が、同じ生命がこれを平気でやるのは見てられない。途中で目を背けた。だが、当の彼は
笑みを浮かべる。討伐に酔っているではないか。これが遥か明日の生命のあるべき姿
なのか?
 この心情は私だけじゃない。闘争本能の塊である筈のベアッ土君もその惨状を見て
思わず何かを吐き出しそうな気分に成ったそうだ。カエルヒコ君は私と見解を同じく
する。其れ位に私はこの頃から徐々にネロリモ船長に対して友好的な間柄を築ける気が
しないと感じ始める。
 其れでもまだピースケイスへの関心は薄れない。薄れない以上は出て行く事を考えたり
はしなかった。けれども--』

 二月八日午前五時十二分三十七秒。
 場所は不明。三名は外部船員室にて目覚める。
 だが、今日は今までと違う。何が異なるかは三名の会話で明らかに成ってゆく。
「お早う……ウウウ、寒イッテ!」
「お早うッケロ、ベアッ土さん……うへっくしょんッケロ!」
「お早うイモォ、カエルヒコ君にベアッ土君リィ。確かに寒いなリィ」
 寒さを感じ始めたのと同時に扉が強くそして暴れるように開く--齢十九に成ったばかりの鳥人族の少年が怖い表情で三名に目で指示を送る!
「この歳でイモォ、わかったリィ!」少年の言いたい事を理解したイモールは二名に合図を送る。「二名共直ぐに少年の後を追うぞリィ!」
「あれでわかるのカヨウ!」
 其れがイモール・アーロニク先生の偉大な所ですっケロ--と褒めるカエルヒコ。
 三名は鳥人族の少年に案内される形で本来は立ち入りが許されない機関室までやって来た。その内部を見て三者三様の反応を見せる。其れから三名は其処に立つネロリモ船長の指示に従い、直ぐに作業を始める。その内容も敢えて回顧録に記す。但し、今までと比べて簡潔に。
『--一の週より前の銀河連合の追撃隊はピースケイスを自分達の用意した氷山海域
まで誘き寄せるための作戦だった。其の結果、奴等は予定通りにピースケイスを内部から
攻め立てる事に成功する。最初の布陣が氷山固めでスクリューを停止させる事とは。
しかもこの氷は只の氷ではない。銀河連合其のモノの氷。氷型に依る圧壊戦術に依って
ネロリモ船長は加勢を余儀なくされた。結果はベアッ土君の大奮闘もあって機関部を占拠
した氷型の除去に成功した。
 だが--』

 午前八時一分十三秒。
 突然、氷型の気化と共に隙間を縫うように蛸族のような触手が鳥人族の少年の左足を掴んで離さない……「うわあああ、誰かー誰かあ!」少年は命の危機に反応して訛りを出して助けを呼んだ--これには三名も驚く!
「ああっケロ、僕よりも年下そうな少年がッケロ!」
「俺様が……畜生ガアイ!」後少し届かずに左前脚を丸めて硬い床を叩くベアッ土。「体の痛みより痛いじゃないかああよおおウガア!」
「オオ……オオオオウ!」ネロリモ船長は我を忘れて分離包丁を右手に少年を助けるべく飛び込む。「もう……死なせないぞおおおう!」
「ネロリモ船長が凍える海に飛び込んだッケロ!」
「あの船長がイモォ、又しても取り乱したリィ!」
「何……わかっタアゾ」ベアッ土は自らの勘で残った船員達が何を言いたいのかを理解した。「先生とカエルヒコは今直ぐ、副船長と思われる少し白と黒の髭を生やシィタ奴の後に付いて来い!」
「えッケロ、ベアッ土さんの--」
 わかったイモォ、ベアッ土君を信じるリィ--イモールは直ぐ様に従う!
「先生ッケロ!」
「今は一刻を争うイモォ、カエルヒコ君リィ」
「……わかりましたっケロ」
 三名は齢七十八にして十一の月と八日目に成る一目いちめ族の中年の後を付いていき、操舵室と思われる場所まで案内された。
 其処で三名はネロリモ船長が極冠の海中にて縦横無尽に分離包丁を振舞って巨大な蛸型を単機で仕留める様子を観戦した。如何して其れが可能なのかはこれも又、説明を省く。だが、三名はネロリモ船長が次元の違う手練れである事を認める……しかし--
少年は……右翼だけ残してイモォ、何という事だリィ!
 こんな事なら何も残さずに姿を消す方がどれだけ希み望まれるか……だがイモォ、現実は情というモノを知らないリィ!)
 どれだけ次元の違う手練れでも助けられない命は存在する。ネロリモ船長は中に入るなり、少年の亡骸を抱きしめて一名だけ自室に戻ってゆく--音が漏れなくとも中で号泣するのがわかる程悲しみに満ちた背中を見せて!

一兆年の夜 第九十二話 海底成人体型一万二千(七)

 一月二日午前六時三十二分十四秒。
 場所は不明。ピースケイスの大衆食堂の出入り口より一番右端にある机に座る三名。
「なあ、そろそろこの話をして良いカアイ?」
「良くありませんっケロ、ベアッ土さんッケロ」
「カエルヒコの言う通りだイモォ、ベアッ土君リィ。そうゆう話は部屋の中でする物だリィ」
「でも堪忍にも限界が来るってのが生命って物ダロォう。どんな大人だって超えてはいけない一線を超えると爆発するように俺様はもう堪忍の限界ダアイ!」
「其れでも堪忍するのだイモォ、ベアッ土君リィ!」
「そうですっケロ、ほら……今日は献立がパンから聖母液で出来たイエローデルタと呼ばれる酸味の効いた朝食ですっケロ!」
 この味好きじゃねえヨオウ--どうやら今日の朝食の満足しえない事が重なった模様。
(とはいえイモォ、たまに珍しい献立もあるのだなリィ。とすると今日は昼食の献立も変化しているのかもしれないリィ)
『--だが、私の予想は大きく外す。その日の昼食の献立は何時も通りのグラシャラ蕎麦。
どうやら食事担当の船員の気分が左右するようだな。だが、ネロリモ船長以外の船員と
話した事がないのでどうゆう風に考えているのかを私達は推察する事が出来ない。
 船員で思い出したが、ピースケイスに拾われて七の月ともなれば少しは船員達が
どうゆう生命なのかも観察が出来たな。カエルヒコ君もベアッ土君も彼らについて
詮索しようとしない。もしかするとそれも相まって二名の中は深まったのだと私は推察
する。可能性でしか過ぎない。
 其れじゃあ其処について回顧すると彼等の中には何やら高度な似顔絵のような四角い
何かを時折見つめる船員も居れば良く壁に向かって拳を振舞うカンガルー族のような船員
も居る。それぞれ二度と帰る事が出来ない故郷を思って一名は大事な者に何度も問い
掛け、慰める。もう一名は果し合いを約束してその日が訪れるまで研鑽する物と私は
推察する。あくまで推察でしか過ぎない。
 其れはそうとこんな話もある。そろそろ半分を過ぎた頃だ。其れはこの話より三の月
より後だったな。確か再び外に出た日での作業を終えて--』

 一月九十三日午後八時七分四十三秒。
 場所は不明。だが、ピースケイスは大きく揺れる。海底で何かが震え上がった。
(部屋の中で大人しくしていると……何事だリィ!)
 だが、イモールは許可が下りるまで限定範囲とは言えども自由に出る事が出来ない事を思い出す。その為、ピースケイスの中で何が起こっているのかを見る事も調べる事も出来ない。此れにはカエルヒコだけでなく、短気なベアッ土も落ち着いていられない!
「先生ッケロ、もう限界ですっケロ!」
「そうだゼエイ、絶対にこれは海底火山が噴火した激震に違いネエイ!」
「推測を述べても意味がないイモォ、ベアッ土君リィ。もしかするとピースケイスの一部が故障を起こして姿勢制御もまま成らないのかも知れないのだぞリィ!」
「だったら猶更僕達に避難を促しても良い筈ッケロ!」
「これが一般生命の行動カアイ!」
「壁に当たらないで下さいッケロ!」
 イ、でえええい……何て頑丈な黒壁だヨオゥ--右前足の腫れを気にするベアッ土。
(そイモォ、其れにしても……何か眠たいリィ。ここでずっと居るせいなのかリィ?)
 イモールだけが眠気に襲われる訳ではない。先ほどまで壁に当たるほど暴れていたベアッ土もそのベアッ土を鎮めるので精一杯なカエルヒコも徐々に瞼を閉じ始める。
「なっケロ、何か眠、いっケロ」
「畜産の生き様、カアィ……」
「何かイモォ、いろいろと……あってリィ。ねイモォ、眠り、にリィ……」
 三名は約十五の時まで死んだように眠り続ける……
『--まあ幸いなのは誰一名たりとも死者は出なかった……少なくとも私達の中では--』

 一月九十四日午前十一時五十三分三十三秒。
 場所は不明。三名は徐々に瞼を開ける。
(あれリィ? 扉が開いているリィ?)
 扉の奥で待っていたのは齢三十八にして二日目に成る巨耳族の青年。彼は目覚めた三名を見て数度ほど無言で全身を撫でる。
「ッテエイ、お前は雄色家か何かカアィ!」
「違いますっケロ、ベアッ土さんッケロ。僕達の心配をしてくれたのですよっケロ、彼はッケロ!」
「彼というよりもこの者って表現が良いんジャアね? だってどいつもこいつも俺様達よりも年上だしナアイ!」
 其れはあくまでピースケイスの船員達の寿命の常識に照らし合わせたに過ぎないぞイモォ、ベアッ土君リィ--とやや長々しい言葉でベアッ土に言うイモール。
「流石に聞き流しそうに成ったゾオィ、イモール先生ヨオウ」
「済まないなイモォ、私の良くない所だリィ」
 身体検査が済むと巨耳族の青年は右親指で指示を送る、『付いて来い』と。これを解読したのはイモール。他の二名はまだその域には達していない。ベアッ土は兎も角、カエルヒコはまだ指示の内容の把握にもう少し時間を要する模様。なので困った時はイモールに、更に困る場合はネロリモ船長に直接尋ねる程。
 では、三名が案内する形で入ったとある医務室のような所の中央の寝台に何やら齢四十一にして八の月と八日目に成る蜘蛛足族の髭が濃くて円形脱毛が目立つ青年が瞼を閉じて頭から血を流した為に何重にも包帯を巻かれて寝かされているのが見える。
「こイモォ、此れはリィ!」
「案内……御苦労」巨耳族の青年に労いの言葉を述べたネロリモ船長はイモール達に話し掛ける。「確かツミカゼノカエルヒコ氏は……両親が医者だと聞いたが……確かか?」
「あッケロ、僕の事ですかッケロ?」
「質問をするのは私だ……だから答えなさい!」
 何時もと違ってネロリモ船長は穏やかではない。如何やら寝台で意識も曖昧な蜘蛛足族の船員の事で冷静ではいられない様子。ネロリモ船長の放つ気に圧倒されてカエルヒコは真っ直ぐ答える……「はいッケロ、そうですっケロ」答えないと何をされるかわからないと感じて!
「彼を……看てくれないか?」
「あのッケロ、僕は両親が医者とはいえ--」
 一刻を争うのです……何でも良いですから早く--ネロリモ船長に余計な言葉は必要ない!
「わッケロ、わかりましたっケロ!」
 カエルヒコは直ぐに蜘蛛足族の青年の容態を確認する。カエルヒコが言いたかったのは次のイモールの思いから推察される。
(カエルヒコは医の全てを伝授される前に家を飛び出した経緯があるからなリィ。その為に基本はわかっていても其れを応用するだけの術がないリィ。だがイモォ、今のネロリモ船長にそんな言い訳が通じる筈がないリィ。何時ものネロリモ船長ならばここまで取り乱す事もないリィ。余程の思いがアスストラネロリモの中で渦巻いているのだろうリィ。その思いとは一体何なのかリィ?)
 其れからカエルヒコは付け焼刃と自覚しつつもわかる範囲で診療。その診療を以てしても彼は助からない事をネロリモ船長に伝える。
「頭蓋骨の傷が深過ぎますっケロ。腕の足の翼の良い医者がやっても奥が一の確率で助かる以外にないです……ヒイイッケロ、本当ですよっケロ!」
「恐がるのではない……少しの希望を抱いたのは事実だが……助からないのなら潔く諦める覚悟は持ち合わせている」
「本当に助からないのカアイ、カエルヒコヨオゥ!」
「あんなのどうしようもないッケロ。僕は基本しか知らない身で少しでも希望を以て診療したんだっケロ。でもッケロ、でもッケロ!」
「泣くなヨオゥ、泣きたいのはあいつの仲間達の方ダアゾ!」
 ベアッ土の言う通り、後少しで息を引き取る船員を思ってネロリモ船長以外の船員は皆涙をこらえようと必死に顔を逸らしたり翼や腕や足等々各自の体を使って顔を覆い隠す。
 一方のネロリモ船長はカエルヒコを退かせると蜘蛛足族の青年に何かを語りかける。その言葉はやはりイモールでも解読が困難を極める。一定の幅を見出す事さえ出来ない理由は一体何なのか?
(今は推察するよりも先に情を優先しようリィ。其れが全生命体の貫く事なのだからリィ)
『--彼は凡そ二の分より後に全ての生命活動を停止。その前に彼がどうしてあのような
状態に成ったのかを記そう。私はネロリモ船長に尋ねた。すると以下のような事が判明
した。
 そもそも原因はピースケイスを襲った巨震。其れは意外にも海底火山に依る物では
なく、更に食い込んだ部分から来た物だった。何と其れは鯰族の感知する何かを超越する
ある事実に依る所だったがな。残念ながら其れを記す頃には私の頭の中にその事を忘却
してしまった。まあ考察は自由に。兎に角、其れは津波の原因にも繋がる海を揺らす
巨震。どれだけ時代を遡っても克服出来ない海のうねり。其れがピースケイスを襲った。
 その後に揺れに耐えた代償として一部が破損。其れを修理する為に蜘蛛足族の青年は
駆け付けた。ところが再びピースケイスは巨震に振り回される。結果、頭部に猛烈な一撃
を貰った。カエルヒコでなくとも助かる見込みが難しい一撃を。最初の方こそ
ネロリモ船長は龍道と呼ばれる何かに依る治療を試みた。ところが、状況は良くなる方向
の反対側を進むばかり。当時の最新機器を使っても此れだとわかったネロリモ船長は
原点に戻って原始的な方法も試みた。其れがカエルヒコの両親は医者である事を私との
対話で思い出すかのように。だが、結果は好転せず。
 話を蜘蛛足族の青年が息を引き取った後まで戻す。その後、ピースケイスは彼を
埋葬する為に陸に上がる。その陸とは木々が生い茂った原初の無者島。一名も生命が
暮らしていない。どうゆう方法でここを選んだのかはわからない。だが、謎の言葉龍道
此の島を相応しいと判断したのかも知れない。
 ともあれ、その奥深くにて墓場と思われる二本の木で十字を立てた物が計八十本並ぶ
場所まで足を踏み入れた私達。幸いなのはやはりそこに銀河連合が居ない事だろう。
お陰で私達は一番奥で右から五番目の墓に青年の亡骸を埋葬する事に成功する。
 埋葬作業は簡潔であり、十字にされた物を抜く。次に蜘蛛足族の体型に合わせて穴を
掘る。其れから亡骸を放り込む。最後に亡骸に火を点ける。燃え尽きると最後に土を
被せてから十字の者を立ててから一の分もの間黙祷する。こうして青年は静かに眠る。
 その時の船員達の様子は何とも堪えた様子だった。特にネロリモ船長は目元一つすらも
私達に見せようとしない程に激しく。
 一通りを完了すると私達はピースケイスに戻ってゆく。この時私達の中で何か一つの
ある恐ろしいモノが浮かぶ。ネロリモ船長の目的はこの時代に不時着した何かを
追っているのではないか? 其れが判明するのはもう少し先に成る。
 今は--』

一兆年の夜 第九十二話 海底成人体型一万二千(六)

 十二月五十七日午後二時十五分三十二秒。
 場所は不明。ピースケイスは既に半分まで顔を出し、空気の入れ替えを始める。
 イモール、カエルヒコ、其れからベアッ土は約五の月ぶりに外の空気を取り込む。
「生き返るゼエイ」
「意外ですねっケロ。まさかネロリモ船長が許可を取って下さるなんてッケロ」
「其れ以前にピースケイスはとある無者島に発着リィ。しかも降りても安全な浅瀬ときた物だリィ」
「お前らは元ヨォリ、元々でかい俺様はこのくらいの浅瀬で溺れたりしねえゼエイ」
「こうゆう時に陸も水も両方扱える両生種族ってのは便利ですねっケロ」
 だがイモォ、私たち両生種族は塩分濃度の濃い水辺で活動出来るように構成されていないリィ--と海中種族との壁を伝えるイモールだった。
(其れにしてもネロリモ船長に依るとここは私達の国に属しない土地の一つだと言っていたが……熱いなイモォ、其れに湿っているリィ。これだけの蒸し暑さは幾ら夏の季節であろうとも体に堪えるリィ。特にここでずっと遊べば一気に肌黒く成るぞリィ!)
 イモールは既にネロリモ船長から日が沈む頃合に成ると急いでピースケイスに戻る事を伝えられる。理由を尋ねると何でも夕の方に成ると謎の木船がこの島にやって来て其処で取れる椰子の実等を採って行く為。その際にピースケイスの存在を知られると都合の良くない事も起こるのだとか。事実、存在を知ったが為にイモール等三名はピースケイスの外部船員として搭乗する羽目に成った。ネロリモ船長は出来るだけこの時代に生きる生命に知られたくないように水の惑星中の海を泳ぎ回る。
 だが、一つの疑問も浮かぶ。
(じゃあ何故私達を招き入れざる負えない原因と成った幾つかの事件に首を突っ込むリィ? 正直イモォ、これが気に成って仕方がないリィ)
 船内でずっと気に成る事があった。事実、イモールはネロリモ船長と対話する時間に必ずその事を計七度も尋ねた。いずれも巧妙に話を逸らされた為に真実を知るに至らない。
 そんな事を考える中でカエルヒコ達の進んだ方角より何か騒がしく成る。イモールが駆け付けると其処で見たのは何と計二十八体もの銀河連合の群れ。構成は犬型五体、猿型七体、雉型十体、そして鬼型六体と流石に森の扱いに自信のあるベアッ土でも一目見ただけで四足順序良く一歩下がる程。
「これは逸れ銀河連合かリィ。選りにも選ってこのモノ達が相手だとベアッ土でも難しいリィ!」
「流石に鬼族の怪力の前では熊族も獅子族同様に弱音を吐いてシイマう」
「直ぐにピースケイスに戻りましょうっケロ!」
 その必要……はない--その声と共にネロリモ船長は馬族の下半身を縦横無尽に扱いながらも人族の器用な上半身を振舞って左手に構える肩から爪先まで伸ばした包丁のような物で先頭の犬型を縦一文字に両断!
「凄い切れ味ダアゼ!」
「あッケロ、危ないッケロ!」
 カエルヒコの言葉通りに上空から雉型三体が降下しながら両足に持った鳥類用鋭棒に良く似たモノでネロリモ船長を串刺しにしようと試みる。
「フム……見よ、分離包丁の凄みを!」
 何とネロリモ船長の包丁は刃が七つに分離したかと思えばそのまま左側の雉型の首を刎ねながら右薙ぎに三体纏めて瞬倒した!
「ああ、あの包丁は隙間々々に何かで固定してから伸びていったゾオウ!」
「蛇族の腹見たいだリィ」
「ああっケロ、其の侭船長が突撃して刃に一つも刃毀れを起こさずにッケロ!」
「そ、そんな包丁が、あったら、あっタアラ……銛師はもう仕事を畳むしかネエイ!」
 いやっケロ、畳まないで下さいよっケロ--と慰めるカエルヒコ。
(あっという間にイモォ、数的な問題を何でも分離包丁とやらが解決したぞリィ。だがイモォ、あれは決して便利な包丁ではないリィ)
 分離包丁の特性を一目で理解するイモール。頭脳労働者の理論に照らし合わせるとあれは確かに素晴らしいが、今の時代まで如何して誰もあのような包丁を作らなかったのかを推理すれば答えは自ずと判明する。その答えは気が向けばイモールの回顧録で紹介。
「さて……刃毀れを起こさない理由は一重に龍道の……龍道の特殊性に依る所が大きい」
龍道? 何ダアイ、そりゃあ?」
「僕だってわかりかねますっケロ、ネロリモ船長ッケロ?」
「確かピースケイスの分類は『潜水龍道隠密突撃艦』と聞きましたねリィ。もしやピースケイスには其の龍道と関係しているのですか?」
「ああそうだ……だが、今は龍道と分離包丁の特性よりも先に……椰子の実などの回収に当たらないといけない」
「何ダヨォ、まったく肝心な事は直ぐ話を逸らす下半身馬野郎メエィ!」
 人馬族と……呼ぶように--ネロリモ船長は如何なる事でも冷静に答える。
『--其れから私達は急いで椰子の実を回収してゆく。意外と作業は難航する。この島
にある木々が高いのだよ。成人体型にして六十六ほどあると上るのにも苦労する。だが、
椰子というのは身の付いた所まで辿り着くと抜き取る作業は意外に楽。抜いてから
落とせば良いのだから。何しろ、椰子の実の殻は頑丈で余程高い所から落とさない限りは
突然割れたりする事は稀。但し、注意する必要があるのは落とす際に付近に生命が
立たない事。頭に椰子の実が当たって惨事でも起こったらどれだけ罪を償えば良いか
わかった話じゃないからね。まあその可能性は少ないがね。
 次はこの島には弾力液と呼ばれる白い液体を抽出出来る木も生えている訳だよ。弾力液
とは要は伸ばせば元に戻る力で元の長さに戻る液体の事だよ。これが意外と重宝されて
いて、工業素材の国内売り上げの一割も占める訳さ。まあ統計は適当に述べただけ
なので余り信じないように。兎に角、弾力液の木々は椰子の実が成る木の更に奥深くに
あった。其処まで辿り着くのが大変極まる。何しろ、逸れ銀河連合の集落が其処を守り
通している物だから如何しようもない。其処でネロリモ船長は船員である黒羽族の中年に
指示を出して全身を透明状態にする液体を塗り付けた訳だよ。原理はまあ、この時代では
如何考察しても難しいので匙を投げる。兎に角、五名程の船員と私とカエルヒコ、
其れからあの銛師の全身を塗りたくった。流石に銛師は塗られる前は雄の意地を張って
いたが何時の間にか仲良く成ったカエルヒコにお願いされると渋々従ったな。全く、何時
仲良く成ったのだろうか?
 そうして私達は弾力液のある木々を求めて集落を通過した。余計な戦いは長期的な視点
に立つと状況を芳しく無くならせるだけだからだろう。其れから私達はネロリモ船長に
手足渡しされた特殊な抽出機で弾力液を抽出してゆく。作業は昼の三の時少し過ぎた所
で終わった。後は再び集落を通過して無事にピースケイスに辿り着けば済む。戻る前に
ネロリモ船長は不思議な行動をしたな。其れは当初、私も含めて三名共気にしなかった。
遥か明日の世界で良くやる儀式の一つだと思って。
 話を戻して通過する途中で異常事態が発生。カエルヒコに塗った透明化の液体が
十分じゃなかった為に逸れ銀河連合が集落を抜けて直ぐに鋭棒や包丁や物部刃の
ようなモノを投擲し始めた。幸い、最初の五打を浴びずに済んだお陰で私達は走って
逃げる事が出来たな。奴等はピースケイスに乗り込んだ私達でも尚も食い付いて来た。
中には開く何かを見つけようと躍起になる頭脳面に優れたモノもいたが、遥か明日の時代
の代物に今の時代の私達が匙を投げる用に彼らが簡単に結論へと辿り着ける筈がない。
依ってピースケイスが完全に水没する頃にはもう逸れ銀河連合の追手は一体も
居なかったな。
 其れじゃあ次の話に移ろう。次は--』

 ICイマジナリーセンチュリー二百三十一年一月二日午前五時三十一分四十一秒。

 場所は不明。イモール達は外部船員室にて待機中。
(今で七の月の目に入ったなリィ。本当にネロリモ船長は私達を一生ピースケイスの中で過ごさせる気なのかリィ? だとすれば益々イモォ、ネロリモ船長の目的が謎のままだリィ)
 其れでもまだ心の何処かでピースケイスとの旅を楽しむ己が居た。イモールはまだ旅を続けようと考える。その理由は如何してなのか? 答えは--

一兆年の夜 第九十二話 海底成人体型一万二千(五)

 十一月三十七日午前五時二分十二秒。イモールがネロリモ船長に時刻を尋ねた為に判明し、それに合わせて調整が為された。
 場所は不明。だが、ピースケイスの中にある外来船員一号室の中である事もイモールが尋ねる事で判明した。尚、外来船員とはイモール、カエルヒコ、そしてベアッ土の三名。
『--何でもネロリモ船長曰くここに迷い込んだ以上は一生この船の中で暮らす義務を
課せられるそうだ。これを聞いて納得いかない生命が出るなんて当たり前の事。其れは--』
「ああ、あの馬足野郎メエイ!」
「少し落ち着いて下さいッケロ、ベアッ土さんッケロ!」
「落ち着いていられるカア、俺様をこんな薄暗い所に閉じ込めやがっテエイ!」
 このようにベアッ土のような生命が反発するのは目に見えてわかりきった事。幸い、イモールはピースケイスは知の海だと感嘆して行き来の自由な所をたった一名で走り回った。これについてカエルヒコは少々、イモールの童心に呆れた様子。勿論、暴れまわりたいくまっどはそんなイモールの様子を快く思わない。彼は何度もイモールにネロリモ船長に苛立ちをぶつける。
「あの野郎は何考えてイルウかわからねえ。一刻も早く俺様はこの船からおさらばスウルぜ!」
「だがイモォ、私達が行き来出来る範囲は限られているリィ。君の勝手な行動で船を危険に晒す気かなイモォ、ベアッ土君リィ?」
「勝手も何もそもそもあの野郎はそう言ったのダァヨなリィ。『ここで一生暮らせ』っテエイ……ふざけるなあ!」
「ですがッケロ、ベアッ土さんッケロ。ここは確か深海の中でしたよねっケロ。一体どうやって脱出するのですかッケロ?」
「クウ、圧力の挟み撃ちカアィ!」
「まあイモォ、脱出する機会があるとすればたまにこの船は急激に競り上がる時があるリィ」
 其れはどうゆう意味ですかッケロ、イモール先生ッケロ--カエルヒコだけでなく、ベアッ土も食いつく。
 イモールに依ると時々、船は競り上がる。最大まで競り上がると一旦止まる。その時間は僅か三の分又は長くて十の分も掛かる。その際に船内の空気が澄み渡るように成る。其れから急激に下降を始め、進み始める。この事からイモールは船は定期的に空気の入れ替え作業が欠かせないそうだ。どれだけ明日を進もうとも空気の問題は解消されない事をイモールは伝える。
「そうカアイ、その頃合を図って脱出すれば良いじゃネエカ!」
「ですがッケロ、船以外一面が海の上だったら如何しますかッケロ?」
 そ、其れは、其の……あの--言葉に詰まるベアッ土。
(はああイモォ、これだからこの銛熊は困るのだよリィ。こんなに素晴らしい技術を見られる機会にこの船から脱出しようだなんて考えてリィ。仮に脱出出来たとしても果たして無事に陸へと辿り着けるのかってリィ。其れならばまだ船を調べた方が幾らでも脱出する機会が出来るってのにリィ)
 イモールにとってベアッ土の文の句依りもピースケイスを調査する方が何十倍も価値があると判断する。これを助手のカエルヒコに吐露すると……「ええッケロ、先生の言う通りですねっケロ」と答えた。
「チエ、頭でっかちはこれだから困るナアイ!」ベアッ土は利がないと判断し、次のように答える。「わかっタアヨ、大人しくしてヤアルぞ!」
「わかってくれるならそれで良いリィ」
 イモールは安心して胸を撫で下ろす時、扉が開く……「……」無言ではあるが、齢四十四にして一の月と二日目に成る天使族の青年は右翼で器用に指示を送る。
「食事の時間だリィ。行くぞイモォ、二名リィ」
「サアテ、今度もどんな味のスウル食事を出すかあ?」
「でも美味いですよっケロ、全然飽きが来ない物ばかりですっケロ」
 食事内容については回顧録で紹介しよう。
『--朝は雲雪粉で作るクラウドパン一つと苺、林檎、葡萄、そしてこちらも雲雪粉同様
に想像も付かないベリアリアと呼ばれる甘くてしかもやや喉に打ち付ける辛みの掛かった
果物其々のジャム。パンもジャムもネロリモ船長曰く船員達の故郷で取れるそうだ。
要するに遥か明日の事さ。それ以上の追及を私はしなかったが。
 昼は菅原麺のようなグラシャラ蕎麦を専用の椀の中に入れて沸騰した湯を注いだ後は
蓋をして三の分程待ってから開けると出来上がる。食べると其れは口の中で醤油と
呼ばれる物が広がってゆくみたいに美味しい。しかも湯を掛けなくとも其のままで
食べても酒の抓みに成るそうだ。他の食べ方を紹介すると遥か明日にある星で取れる
ある物を使ってから湯に注いでから三の分程待てば出来上がる。これも又、美味い。
 夜は御粥が配られる。何、夜食だけ楽しみがないと仰りたいか? 違うな、船員に
とって暴飲暴食は緊急時では大問題と成る。幾ら現実の私たちの世界の軍者が
必要接種分が多いといえども加減がある。その為、ネロリモ船長の方針で夜は御粥と
相場が決まる。但し、只の御粥ではない。食べたら御代わりを頂戴したくなる程に
美味い御粥なのだ。まあその味をここに記すには余りにも脱線する恐れがあるから記す
のをここで止める。
 基本的に食事はこの三食で通される。但し、ある時だけ昼頃に特別欄として腕の良い
船員が振舞う料理を口に出来る。其れについては余裕があったら紹介しよう。
 さて--』

 十二月五十七日午後二時七分三十八秒。
 場所は不明。船は一旦、浮上してゆく頃合。
 イモールは浮上中にネロリモ船長に呼び出される。
「こんな時にどんなご用件をリィ?」
「君は……潜水艦をまだ知らないのだな」
「そもそも艦船とは従来は--」
「質問しているのだよ……私は」ここではネロリモ船長の質問には真っ直ぐ答えないといけない決まりがある。「私が聞きたいのは……潜水艦をまだ知らないのだな、と」
「はいリィ。申し訳ありませんリィ」
「別に謝罪の言葉は……不要だ」
「其れは従来の船とどう違うのですかリィ?」
「海を潜るのだよ……船がね」
「今でもその定義を認めずにいる自分がここに居りますリィ」
「まあわかるさ……初めての者は誰でもそうゆう反応を……する物さ」
「あのうイモォ、質問して良いですかリィ?」
「どうぞ……遠慮せずに」
「貴方方はどれだけ明日の時代よりやって来られたのですかリィ?」
「其れは……機密事項とさせて戴く」
「では質問を変えますリィ。どうしてこの時代にやって来たのですかリィ?」
「其れは偶然の出来事……と呼べる物かな?」
「質問に疑問文で答えるのは誤りですリィ」
「豪く返されたね……ハハハ」
「つまりイモォ、ネロリモ船長達も詳しい事はわからないのですねリィ?」
「答えよう……正解だ」
「成程イモォ、では……潜水艦が如何して海を潜れるのかをお尋ねしたいリィ」
「その方法を簡単に説明するのは……少々難儀するが……宜しいか?」
「ええイモォ、お願いしますリィ」
 ネロリモ船長は其の機構を語りだす。
『--答えは空気の蓄えと圧力機による打ち付け及び水の溜め込みを利用した方法。
此れには舌を巻いたね。井守族の私が思わずカメレオン族に形を変える程の衝撃を
受けた。まさか船内で水を引き込む或は微妙な空気の調整をすることで船を沈め行く
なんて驚かない筈がない。こんな単純な方法で乗り物を潜り込ませる事が可能だった
なんて。私は何度も驚いた。だが同時に幾つもの疑問も浮かぶ。何故、浸水は起こらない
のか?
 此れについてはネロリモ船長は明確な答えを出したさ。だが、読者からの奇想天外な
疑問を恐れてここでは紹介を省く。各者独自に考察してくれたまえ。
 其れじゃあ--』

一兆年の夜 第九十二話 海底成人体型一万二千(四)

 未明。
 謎の人馬族と思われる中年に促されるように中に入ると其処には透明の床が広がる。床の上には一台の調律線鍵盤台が一つ。イモールから見て右横に全部で五段もある本棚、左横に何故か硝子窓のような壁が広がる。しかも望遠鏡も立てられる。最後は鍵盤台の奥にある机と寝台。寝台の上に掛けられる布団が分厚いのは人馬族である為か?
 何れにせよ、今の時代ではどんな技術体系を持ったらこのような物が作られるのかを想像し続けるイモール。それが今の時代の生命にとって苦痛と感じたのか、人馬型は話し掛ける。
「頭で幾ら論じても……徒労に終わる物は終わるのです、先生」
「済まないがイモォ、あなたの名前は何と言いますかリィ?」
「質問ですね……私はアウストラネロリモ」
「其れは真の名前なのですかリィ?」
 直ぐに通り名だと気付きましたね……先生--アウストラネロリモは直ぐに返答する。
「訛りを隠すのだから本当の名前まで隠さないなんて筋の通らない事があるかリィ」
「そうですね……敢えて先生を始めとした三名は……私の事をアウストラネロリモとお呼び下さい」
「その狙いは何ですかリィ?」
「其れも質問ですね……わかりました。狙いは……特にありません」
「そうですかリィ」
「では私から……質問します。貴方の御名前は何と呼べば宜しいのですか?」
「自己紹介ですねイモォ?」
「質問には……答えで返して下さい」
「わかりましたリィ。私は気を失った当時は齢三十二にして十の月と二日目に成る仁徳井守族のイモール・アーロニクと申しますリィ」
「えっと……どれが名前ですか?」
「イモールとお呼び下さいイモォ、アウストラネロリモさんリィ」
「わかりました……では少しお願いしたい事があります」
「何でしょうかリィ?」
 私の事は……アウストラネロリモの他に……ネロリモ船長と呼んでも構いません--とアウストラネロリモは更なる呼称も要求する。
「わかりましたイモォ、ネロリも船長リィ」
 其れから会話は始まる。其れについては回顧録で紹介するとしよう。
『--彼は出身さえも語らない人馬族と名乗る生命だった。何故語らないかは私には
どう推理しても最後までわからない事だらけの話だ。其れだけネロリモ船長という雄は
得体も知れない生命だった。
 だが、判明した幾つかの事を上げよう。これは彼の部屋で初めて質疑応答する内に
判明した事柄だ。載せても問題はない。その内容は時々段落を変えて説明してしまう。
少々、窮屈な話になる事を御容赦下さい。
 先ずはネロリモ船長が齢八十二の大高齢である事。腰砕けてなどいない。本当に
そうなのである。選者も真っ青な程に高齢の御方だ。だが、当のネロリモ船長はこれ位は
まだ若造の領域だと主張する。基本、彼の言い分では一般生命は平均百歳まで生きる
そうだ。こちらの常識よりも二の倍数も長い。其れでも私はしつこく聞き返した。流石に
三回目ともなればやや苛立ちが目立ち始めたと思って其処で質問を止めた私。
 次に尋ねたのはこの船についてだ。其処で判明したのはこの船は何でも
<潜水龍道隠密突撃艦>という枠組みに入り、名称は<ピースケイス>と呼ぶそうだ。
しかも動力は雲力と呼ばれる雲の力を放出して動くそうだ。其れには幾つか質問したい
気持ちに駆られたな。
 例えば<潜水龍道隠密突撃艦>とは何なのか? 他には<ピースケイス>の意味や、
雲の力とは何なのか? だが、どれも巧妙に話を摩り替えられた。余程、私達には
知られたくない何かがあるのだろう。そうゆう訳で私はこれについてはこれ以上尋ね
なかった。
 次はこの部屋にある幾つかの道具についてだ。一つ目が調律線鍵盤台、二つ目が本棚
の売り尽くし販売の意味、広がる硝子窓の壁の意味、其れから透明の床だ。
 一つ目は何でも鍵盤に少し力を乗せるだけで音が出る楽器との事。しかも鍵盤台の上に
広げられる紙に記された蛙族の幼年期時代の姿に良く似た記号を頼りに鍵盤を選んで
引くと歌に成るそうだ。私はネロリモ船長にお願いして演奏してみたさ。すると本当に歌
と成って部屋中に広がったな。もっとも演奏の才能に恵まれない私ではネロリモ船長
みたいに凄い演奏は出来まい事をここに告白する。
 二つ目は全部で本棚五段十二列に並べられた物は何か? 試しに抜いてみたら何と
鉄のような感触のする何かを取り出してしまった。しかも突然、四角の枠の中から何かが
飛び出した。恐くなって私は元に戻したまま以降は取り出すのを止めたな。あんな物は
許容する程若くはなかった。あれはまだ全生命にとって早過ぎる産物だ。
 三つ目は硝子窓の壁。あれは何でも外に何か迫った時の為に船長室から確認出来る物
以外でも発揮されるそうだ。其れについては後程紹介する。
 最後は床だな。まるで生命の内臓を見せられるかのように船の構造を見せ付けられる。
まるで用を足したのにわざわざ出した物を見せられた気分だ。私はこれについては例え
尋ねたとしてもその詳細をここに記すにはまだ全生命には早い物だと判断して紹介を断念
する。
 では最後に紹介するのが船員達も何者なのか? 其れについてははっきりとした答えは
返ってこなかった以上は皆まで紹介しない事だけを伝える。ただ紹介出来る範囲で言う
なら全員遥か明日の時代の生命。ネロリモ船長と同じく初めて出会ったあの青年は黒羽族
と呼ばれる種族だそうだ。正直、蝙蝠族の羽を生やした人族だなんて一体どうすれば其れ
が可能なのか知りたい位だ。
 他には白翼を生やした天使族、下半身が蛇族のような蛇足族、足が魚類の其れである
人魚族、下半身と両肩から爪先まで鳥類の鳥人とりびと族、小柄で耳だけが巨大な巨耳おおみみ族とキリ
がない。
 まだまだ全生命体には早過ぎる情報ばかりだ。流石に好奇心旺盛な私も圧倒されると
諦めざる負えない。其れだけここ<ピースケイス>は知の宝庫と呼んでも過言ではない。
其れから--』

一兆年の夜 第九十二話 海底成人体型一万二千(三)

 未明。
 場所は不明。
 イモールは目覚める。すると其処には助手のカエルヒコとたまたま組まされたベアッ土が座っていた。特に人族に肉体が近いベアッ土は座るのも窮屈な様子。
(ここはイモォ、何処だリィ? カエルヒコとベアッ土が居るのはわかるがイモォ、だがこの暗さを表現する黒い壁の数々では何と想像すれば良いかわからないリィ。ここは果たして想念の海なのかイモォ、其れとも秘境の一部なのかリィ?
 ンン……揺れるリィ!)
 イモールは何度も乗船した経験の持ち主。例え揺れ幅が少ない船であろうとも僅かな足元の揺らめきを逃さない。
「あッケロ、気が付きましたッケロ!」
「てっキイリ先生が死んだかと思ったぞ!」
「二名とも無事で何よりだリィ」
「あッケロ、最初は何処から説明すれば良いかわかりませんがッケロ」
 んなもん簡単だ……俺様達は深海野郎共に閉じ込められタアヨ--ベアッ土は明確に答える生命だった。
「明確過ぎますっケロ、ベアッ土さんッケロ!」
 いやイモォ、今ので十分にわかったリィ--逆にイモールはベアッ土の明確さに感謝する。
「でっけろ、でも時と場合によるでしょうっケロ?」
「だがイモォ、曖昧に答えるのは却って混乱を招くリィ。だったら先に事実から述べた方が相手は後で巨大な衝撃を受けるよりもまだましだリィ」
「全くコオレだから学者共の話し方は回りくどいっテェノ!」
「其れは同感しますっケロ」
 イモールはここから誰かが中に入って来るまで次のように推理する。それは正しかろうと誤ろうとも一向に構わない。
(ここは確実にあの一角族の中だろうリィ。何故か……其れはあの一角族には解明されない謎があったリィ。其れが鯨型を一撃で仕留めておきながらも反動も少ないまま海域を去る場面が多々あったリィ。幾ら生命の中には頑丈な部類の種族が存在しようとも其れは有り得ないリィ。其れに深海種族ほどイモォ、深海で生きるために身体構造に多大なる変化が訪れようとも圧力の急激な変化は内部構造を脆くしてみせるリィ。何故なら圧力とは其れだけ頑丈さではどうにも成らない空気の問題なのだからリィ。特に真空の世界は其れだけ深いのだからリィ。
 さてイモォ、では私達は一角族の中にいるリィ。じゃあ一角族は秘境なのかリィ? 答えはそうじゃないリィ。答えは……とある潜水が可能な船の中にいるといえば正解なのかリィ? だがイモォ、待って欲しいリィ!
 潜水が出来る船なんて外部構造は何で出来ているリィ? 圧力の問題は何処へ行ったリィ? 何れにせよイモォ、私の推理は間違ってくれると有り難いリィ。あっていれば潔く認めるしかないリィ!)
 そう、前者なら受け入れ難い新発見として覚悟する。後者なら杞の地に依ると憂いとして、胸が空く思いと成る。だが、その答えは直ぐに披露される事と成る。
「入って来タアナ、俺様達をここから出せえエイ!」
「……」齢五十七にして十の月と三日目に成る黒羽を生やした人族らしき青年は何も答えない。「……」
「……」齢八十二にして九の月と十八日目に成る明らかに高齢の筈なのに老年に差し掛かる上半身人族だが、下半身が馬族のような中年は前に出るも何も答える素振りはしない。「……」
「なイモォ、何だリィ!」初めて見たイモールは驚く様子。「貴方達のような生命が深海にはたくさん居るのですかリィ!」
「……」青年は中年に何か手話のような通話を行う。「……」
「……」一方の中年は瞼の開閉だけで青年を下がらせる。「……」
 イモールは貝族の会話法に精通する為に解読しようと試みたが--
「全然違うリィ。あの下半身馬族の中年がやって見せた会話は私の知る開閉式会話じゃないリィ!」
「ええッケロ、先生でもわからないのですかッケロ!」
「こリャア御足上げだな!」
「……」只一名だけ残った中年は右手でイモールだけ指差す。「……」
「えイモォ、私を指名するのですかリィ?」
「……」中年は首を縦に振る。「……」
「きっケロ、気を付けて下さいッケロ!」
「きっとあいつは外に放り出す気ダアゼ!」
 大丈夫だイモォ、彼らは私達と同じ一般生命だ……第一に剥き出していないじゃないかリィ--剥き出さなければ銀河連合である可能性はないと断言するイモール。
「……」まるで『その通りです』と頷くかのように中年は首を縦に振った。「……」
「では暫く其処で大人しく待っていてくれイモォ、二名共リィ!」
 イモールは中年の後に付いて行くように黒壁の部屋から出てゆく。
『--其れが彼との出会いだった。彼は遥か明日の時代よりやって来た生命であるかの
ようだった。初対面の私はそう感じた。だが、驚くのはまだ早い。
 次が私にとっても読者の皆さんにとっても驚きの数々の始まりだ。其れは--』

 未明。恐らく午後八時二十八分頃だとイモールは推測する。
 イモールは階段を二回も登って更に遥か奥にある白い扉まで歩き続ける。四本足で尚且つ直ぐ体温が変化しやすい両性種族の繊細な肉体に気遣いをしながらも。その上で余裕が生まれると扉に到着するまでイモールは次のように思考する。
(其れにしても不思議な肉体だリィ。上半身は人族でイモォ、下半身は馬族リィ。しかも正体もわからぬ数字だけが羅列する廊下の壁やら何やらと……これは前に何処かで聞かされた話があったなリィ。生憎イモォ、興味なかったので聞き流してしまった事柄ではあるリィ。
 思い出すならばそうだなあイモォ、やはりとある山椒魚族の少年が青年に至るまでの話だったなリィ。彼は其処で何処にも存在しない種族と初めて出会ったと回顧録で伝えたそうだリィ。詳しい話は彼に関する話を参照してくれリィ。多分イモォ、この生命は其の遥か明日から来たのだろうリィ。でないと--)
「到着しました……何か?」
 ウワアアアリィ--突然話す物だからイモールは天井まで飛び上がるかのように驚いた!
「無理為さない……貴方は変温でしょう?」
「両性種族の事を御存知なのですかリィ?」
「御存知も何も……私に知らない事はないと自分に言い聞かせられる……物でしてね」
「それがあなたの訛りですかリィ?」
「いえ、人馬族の訛りは……もっと別ですよ」
「ではイモォ、敢えて自らを隠してそのような訛りを為さるのですかリィ?」
 其れは……中でゆっくり話しましょうか、先生--と人馬族を名乗る中年は扉を開けて体を中へと潜り込ませる。
 イモールは息を呑んでから後に続いてゆく……

一兆年の夜 第九十二話 海底成人体型一万二千(ニ)

 午前十時零分七秒。
 さて、一段落於いて講義される内容は何か? 其れは一の年より前からエピクロ海を始めとした海に出没する謎の海中種族。その全長は成人体型にして凡そ百。実際に其れを何度も目押しと様々な証言を基に測量した学者がいる。彼は今講義をする者。
「あれはとても驚いた? 両生種族のあっしが訛りである疑問形がついつい忘れてしまう程のね?」齢三十九にして九日目に成る応神山椒魚族の老年ヤマガサキノサンショウヤマは熱烈に語る。「形は恐らく一角族と思われるね? 何しろ、突然鯨型に突撃しただけで一撃一倒だったね?」
「一撃で倒されろうだって?」質問するのは齢二十六にして二十五日目に成るラテス燕族の青年にして引力研究家を自称するフッシン・メッサーシュミット。「だからって一角がそんなにでかい訳なかろうに……フン!」
「私もそう思うリィ。何かの間違いじゃありませんかイモォ、サンショウヤマ先生リィ?」
「いや、間違いじゃないね? 確かに一角族みたいに何か鋭そうな曲線をしていたよ?」
「其れではわかり辛いと思いますがイモォ、サンショウヤマ先生リィ?」
「ヘェン、正確には前方に向かう毎に滑らかに成ってゆく……ジャアね?」フッシン同様に頭脳労働者とは思えない巨体を誇るのは齢二十九にして九の月と二十九日目に成るゴルギ熊族の青年にして賞金稼ぎと呼ばれる銀河連合討伐を専門職とする銛師真鍋ベアッ土。「其れならば俺様の出番ダアゼ!」
「お前みたいな脳まで筋肉詰まった生命は黙れ? って言うかまた顔を出しおって?」
「お前こそ黙れ、疑問形の訛りナアンかしやがって!」
 お前達はりーイ合うんじゃあない--齢三十八にして二の月と一日目に成るアデス羊族の老年にして塩分学者を自称するメエメリ・メヒイストは仲介の為に間に入る。
「羊族のメエめりが出て来られたら仕方がナアイ!」
「オホン……其れじゃあ話の続きと行きましょうね? 兎に角、一角族にしては余りにも巨大にしてしかも速い?」
「速いッケロ……速いと言いましたッケロ」イモールの隣に座る齢十九にして十九日目に成る応神蛙族の少年ツミカゼノカエルヒコは右前足で挙足する。「その速さとは一体どれ程出ていたのですかッケロ?」
「君はイモール君の助手に成ったばかりの少年だね? まあ速さで言うと海豚速度二ぐらいかな?」
「なのに鯨型を一撃で倒す程ッケロ」
「中々の良い質問だねイモォ、カエルヒコ君リィ--」
 た、た、大変でちゅ--そこへ齢二十七にして二十九日目に成る神武鼠族の青年ヤマカゼノチュミサキが教卓近くの右扉を叩き開けながら何かを知らせに現れた!
「ど、ど、如何したね?」
「応神海に、応神海に……例の一角族と思われる奴が現れたでちゅ!」
「何……これは嬉しい誤算ダア!」
 闘争本能の激しいベアッ土だけでなく、イモールを始めとした学者研究者達はそれを聞いて次々と席を立ち始める。中にはちゅ岬を突き飛ばして今にも一角族を捕えようと躍起に成る生命まで居る始末。其れだけに例の巨大一角族に夢中である。どれくらいに夢中かは次のイモールの思う所で明かされる。
(もしも一角族と対話出来れば深海に於ける謎がまた一つ判明されるリィ。しかも連鎖反応を起こすように次々と謎が証明されイモォ、深海が身近な存在に成る未来が訪れるリィ!
 何としてもその一角族だけは捕まえて対話を実現しなければいけないリィ。如何すればあれだけ巨大な肉体に成るのかを一刻も早く知らないといけないリィ!)
 其れだけに深海とは海中種族の中では巨大な割合を占める未知の世界である。特にその研究を続けるイモールにとっては浅い海では知り尽くせない摩訶不思議な深海の世界は宝の山其の物である。
『--ここから先は捕まるまで飛ばし気味に語るぞ。私達は無我夢中でその謎の一角族と
呼ばれていた種族を一目どころか捕える為に西地区にある港まで走って来た訳だ。正直、
直ぐに体温が変わりやすい私達両生種族にとっては走り込むのは体に堪えたな。だが、
弱音を吐いてられないのも事実だ。其れに後でたっぷり楽が出来る。其れが船に乗って数
の分もの間はね。
 さて、段落を変えて紹介するぞ。私と助手のカエルヒコ君は何故だか息臭いベアッ土と
組まされる事と成った。何でも私達学者研究者達がどの肉体労働者と組むかを決める
籤引きで奴のような礼を失する熊族と組まされるのだから正直、心臓の高鳴りが余計
激しく成ったな。依りにも依って真鍋ベアッ度とか言う真鍋傭兵団を再建しそうな雄と
組まされる身は堪える物だな。さて、ベアッ土への満足いかない部分はこの位にしよう。
 又、段落を変えて今度こそ説明しよう。ちょうど、例の一角族が現れたのは相変わらず
しつこい銀河連合の物荒らし共を討伐している時だったな。奴等は何なのかを先に説明
するといわば我々生命は海に用がある時は海藻成り若芽成りを取って来る物だ。ところが
銀河連合は取ったばかりの若芽及び海藻類ごと船を襲撃するのだよ。そいつらは主に海に
特化した海中型のみで構成され、そいつらの事を別名物荒らし十百の年程より前には
呼ばれるように成ったのさ。兎に角、そんな物荒らしを三隻の船は何時も通り船用望遠砲
やら取り付け式銛で投擲やらで迎撃していると突如として其れは現れたのさ。
 更に段落を変えて説明するぞ。前々からその噂を聞きつけていた漁業部隊三隻の内の
一隻は其れを報告しに私達学者研究者たちの所まで駆け付けた訳だ。そして現在に至る
訳だ。私達は報告しに行った船に乗って其処まで駆け付けているのよ。
 という訳で話の続きと行こうか!』

 午前十時五十七分二十三秒。
 場所は応神海仁徳島付近。若干、潮は渦を巻き始める頃合。
 幸い、一角族と思われる何かは未だに海上に留まる。まだ、物荒らし達を全て仕留めていないのか……縦横無尽に顔を出しては潜るの繰り返し。イモール達を乗せた船も接近するに至らない。それどころか、これ以上の接近は巻き込まれる危険性が高いと踏んで船長は聞く耳を持たない。
 馬か鹿カア、今シカアないんだよお--闘争本能の塊であるベアッ土は誰よりも冷静でいられない!
「だからってこれ以上端危険過ぎる」齢三十一にして二日目に成る仁徳鬼族の中年にしてイモール達の乗る漁船の船長を務める相原キヌ克は首を縦に振らない。「それ似あれ牙銀河連合じゃない斗いう保証模出来かねる!」
「だからって大人しく逃がシイテ良いのか……それだけでどれ程の生命を危険に晒すかわかっているのカアイ!」
「落ち着けイモォ、ベアッ土君リィ」
「落ち着いていられる程大人じゃないナア、先生ヨオゥ!」
「いやッケロ、先生の言う通り落ち着くッケロ!」
「蛙の分際で俺様に意見スルウとはなあ!」
「カエルヒコ君に何て事言うんだイモォ、ベアッ土君リィ!」
 もう言い、俺様自ら獲って来ルウぞ--何とベアッ土は自身よりも一とコンマ五の倍もある銛を右前足に海に飛び込んでしまった!
「ああイモォ、ベアッ土君めリィ。何処までも礼を--」
 いけないッケロ、直ぐに助け出さないとッケロ--義理に厚いカエルヒコはベアッ土に加勢するべく海に飛び込んでしまった!
(何だってリィ。カエルヒコ君まで……ってうおおおリィ!)
 ところが後ろ左足を滑らせた上に突然の船の揺れに手すりにしっかり掴まらなかったイモールは何と海に投げ出されてしまった!
「ああ、イモール先生牙海似投げ出されたぞおおう!」
 しかも海に慣れないイモールは直接海水を口に含んでしまい、終いに意識が薄らいでゆく……果たして無事で済むのか?

一兆年の夜 第九十二話 海底成人体型一万二千(一)

『地上で起こる事は海では起こらない事と同義のように逆もまた然り。こうして私が生還
出来たのも一重にその法則に依る所が大きい。シャーク傭兵団も密かに知っていた彼等の
存在は私が遭遇するその時まで一般生命には何も伝えられなかった。いや、そもそもあの
ような船がこの時代の技術で確立していた方が不思議だろう。蒸気の波動を使った次世代
の動力もあれに比べれば霞んで見えてしまう。寧ろ、あれだけで深海を縦横無尽に動き
回る物だからどれだけ凄い動力なのかわかった物じゃない。深海種族は既に我々
海中種族の更に先を行くのか。其れともたまたま深海種族にだけ技術が集まったのか?
 どの道、海は深い。私は海についてまだ無知であり続ける。一時でも全知であると思い
込む事をここに恥じる。恥じた上で改めて私は一の年より前までの出来事をここに記す。
海中種族としての誇りを大切にし、更には海も陸を両方活動出来る研究者としてここに紙
と石板の両方を以って記録する。
 其れが生き残った私達の使命であるのだから。二の年より前に起こった事件の生還者の
代表として!
                       深海研究者 イモール・アーロナク』

 ICイマジナリーセンチュリー二百三十年十一月三十五日午前九時五十七分三十二秒。

 場所は真古天神武西物部大陸応神海付近新仁徳島。
 十二の年より前に奪還が果たされ、更には大規模な土の入れ替え作業という名の公共事業が行われた。その結果、僅か二の年で浄化が果たされ、現在では徐々にかつての学問の島へと戻りつつある。因みにこの公共事業を行った政権はその後の選挙で相手側に大勝させてしまい、政権を明け渡してしまった事だけをここに記す。
 新仁徳村の中央地区の村長邸。五階建てで一階当たり最大十部屋もあるという作り込みが為される。これも又、政権明け渡しの原因と成った財政赤字の元。しかも一部屋当たり平均百名も入る事が可能な面積。其れで居ながら大体一部屋当たりの高さが成人体型三と大柄な種族でも入室が可能な天井。その中の二階未確認種族講義に置いてある生命が聴講する。
(そんな生命が深海ではまだ存在するかリィ? 両生種族故に普段は淡水の中でしか暮らせない私が遥か遠い深海の話に耳を傾けるとはリィ!)
 齢三十二にして十の月と二日目に成る仁徳井守族の中年イモール・アーロニク……彼こそこの物語の主人公。しかも彼がとある講義に顔を出す事こそこの物語の始点と成った。

サーヴァブーメラン党崇使とは下半身からの政治を目指す者達の事だったのか!

 如何もdarkvernuです。崇使とはルフィとクリリンの声をしたヴォルクルス教団の偉い人の次に偉い人達を指すがガエンさんは残念ながら候補に選ばれただけでOGダークプリズンにて考えを改める事に成りました……合唱とスパロボ好きなdarkvernuが語るのでした。
 始める前に『格付けの旅』が土日に更新されましたので読まれたい方はカテゴリ欄の<格付けの旅>又は<赤魔法の章>をクリック。
 じゃあ早速やりましょう。

 サーヴァ・ブーメラン党はみんな一緒党や日本攘夷の会同様に選挙の時だけ持ち上げられて選挙が終わった後は沸騰し過ぎた鍋に蓋をしても水が溢れ出すように次々と話題を提供してゆく。
「いやあ、止めて下さい!」
「とか言って如何せ『ほ、本当は先生の事を愛しています』と最後に言うんでしょ?」
「そんな訳有りません。少しおかしいですわ」
「良いじゃん良いじゃん。ここには僕と君だけしか居ないんだからさあ」
「キャアア、先生が、先生が……ハイハイしている!」
 第一弾は駄目大人党のフェアな人の苗字と被っているハイハイ。シャア専用フルアーマー革マルが寵愛する良い歳をしてハイハイするおっさん。此れでも人権は弁護士だった模様。恐らくはヴォルクルス教団のヌル・ツーホークか?
「フウ、君タクシーに乗ってるね」
「はい、ミョンバク先生。其れが何か?」
「という事は君は俺に気があるという訳だね?」
「え、何の事でしょう……って何チャック開けてるのですか!」
「勿論、セクシーコマンドーさ」
「キャアア、何人の頭を掴んでさっきチャックを開けた部分に顔を埋めさせようとするのですかあああ!」
「其れはね、男女がタクシーに乗るという事は即ち寝技を掛け合っても問題ないという意思表示だと知らないのかね?」
「知りませんし、止めて下さい……あ、止まった!」
「あ、待ってくれええ!」
 第二弾は去年猥褻行為をしたばかりなのに結党して一ヶ月も経たぬ内にネトウヨとレッテルを貼られる者達にネタを提供したセクシーコマンドー外伝凄いよ、ミョンバクさん。前のネオ・ブーメラン党でもやらかした男は新党入り立てであろうとも自重しなかった。流石はヴォルクルス教団のサティルス!
「言っておくが俺は違うぞ。俺は日本人のテツロウ。ほら、福はフクタケフクヤス親子と同じ字じゃないか」
「ところでチン君? あたしへの援助まだなの?」
「今はガールズバーへの支援で手一杯だよ。増額はまた今度?」
「今度て……何時貧困調査するのか日帝がわからないわー」
「そ、その時はその時でお願いな」
 第三弾はブーメラン党政権で初めて本名が陳であるとわかった成り済まし議員。ガールズバーならある程度は誤魔化せる物の流石に元AV女優の経営する店は幾ら何でも誤魔化し切れないだろう。尚、ヴォルクルス教団で言うならティアンを最終的に殺したウーフか?
 このように彼らは絶賛下半身からの政治を実現中。今後も下半身事情を宜しく!


 という訳だ。ハイハイでは物足りないかなあと思っていた矢先にみんな大好きミョンバクさんがやってくれました。去年やらかしたのに今年もやらかすなんてどれだけ欲求不満なのだよ! 更には公式成り済まし議員認定されたチンのクソ野郎が自分の所の政治資金を使って支援していたそうだ。同胞だの何だの関係なしにこれは駄目だろう。あのチンでさえこれだ物なあ、これからもサーヴァ・ブーメラン党は何かやらかしてゆくだろうな。しかもパコリーヌ事ガソリーヌがそこに入党するらしいから本格的に下半身からの政治は実現されてゆくなあ……下からの政治ってそうゆう意味じゃねえぞ!
 因みにヴォルクルス教団で当て嵌めるっつってもあくまで自分の思い込みが大きいので上手く噛み合わない事は御容赦を。因みにフルアーマー革マルは真・ナグツァート状態のルオゾールで。バイブはセメントとピースボード事情からしてウーフの師匠であるバシュリエで。ガソリーヌことパコリーヌは不本意だが、エルシーネで。じゃあ蓮舫は預言者ヨーテンナイ? 預言者? うーん……噛み合わないな。
 という訳で時事ネタの解説を終える。

 第九十一話を解説する。ジュール・ヴェルヌの小説必死の逃亡者をモチーフにはしたけど、全てではない事をここに明言する。あれの場合は最後に実は全てを失った訳ではなく、早まらずに生きてさえいれば良い事があるという事を伝えたお話だからな。こっちの場合はそうじゃない。家族を失った主人公アンティラはラク一と共に正体不明の世界を生き抜く内に生きる事は決して良くない事ばかりじゃない事に気付いて第二の人生を歩み出してゆくというお話。なので失った家族は決して戻らないが、だからって早まる事はないというのを伝えたまでだ……本当はそんな予定なかったけどな。原典通りに実は家族が生きていたという結末にしようか迷ったのだけど……描く内に其れじゃあ駄目だと考えてこのような結末にした。如何もなあ、一度失った者が戻って来るってのは却ってパチンコで大負けした奴が実は『あ、負けたってのは嘘だよ……だからほら!』とお金が戻ってくるような思い込みと似てるのだよな。其れじゃあ駄目だと考えて今の展開に成った訳だな。失った物は決して戻らないのが人生。寧ろ戻ると考えるから何時までもギャンブルから抜けられないと気付こうぜ!
 という訳で第九十一話の解説を終える。

 さあ、予定表と行きますぞ。

     十一月二十日~二十五日    第九十二話 海底成人体型一万二千          作成日間
       二十七日~十二月二日   第九十三話 惑星から衛星へ             作成日間
      十二月四日~九日      第九十四話 衛星世界旅行              作成日間
        十一日~十六日     第九十五話 十五少年少女漂流日誌          作成日間

 本当は世界一周旅行の話をしたかったが其れだと時期尚早と考えて少年少女は誰もが憧れるヴェルヌの漂流小説を捩った物にしたさ。ま、どんな話かは描いてみないとわからないが。
 そんじゃあ今回はここまで。第六宇宙はナメック星人二人かあ。だが、来週は第二宇宙が先に消えるらしいぞ。じゃあどんな見せ場があるって言うのだ、あの二人は!

試作品 進行順調法 何処に需要があるのかわからない試作品(2/5)

 如何もあのレダの戦士があのような形で天に召された事を受けて正直、実感が湧かない状態の自分darkvernuです。
 ううむ、ブルマの後任は誰がやるのだろうか? ドキンちゃんの後任を誰がやるのだ? 兎に角、名声優はまた一人……天に召されてしまわれた。
 と気を取り直して二週間ぶりの奴をやるぞ!

 とある漫画家はボクシングジムのオーナーを務める。
「オオ、張り切ってるな」
「オオ、オーナー。今日は仕事休みですか?」
「何、今日も少しやる気を出したら本番だ」
 彼の名前は林谷グレン……本名林原志門。かつては打ち切り漫画家として二作立て続けに打ち切りを受けた不遇の漫画家。漫画家人生を終わらせようと思い、現在週刊少年カートリッジ連載中の人気漫画ファーストの捨歩を執筆。これが空前絶後の大ヒットを遂げて以降は鰻上りに人気急上昇。現在ではとあるボクシングジムのオーナーを務めるまでに上り詰めた。
 だが、同時に純粋に一貫から追いかけてきたファンの間では如何しようもない溝が出来た事も囁かれる。その結果、彼の経営するボクシングジムに特捜部の車が十台集まる。中から合計五十人の検察関係者が黒スーツと一糸乱れぬ黒ポマードヘアー、そしてキアヌ・リーブスが一躍世界的な名声を浴びたあの映画に出て来るエージェントの如きサングラスを着用してボクシングジム表側入口より大挙する。
「け、検察だ。オーナー、脱税したのですか?」
「いや、俺は高橋の件以降は依り入念に資金管理をしている。脱税なんてする理由が見付からない」
「じゃあこの集まりは……まさかオーナー!」
「奴等め、俺の大事な漫画を打ち切りに来たな!」
 林家はインターホン前まで駆け付ける。既に事務スタッフが対応に当たり、彼が階段を降りる頃には正面扉は開いた後だった。怒りの形相で林家は検察官達を睨みつける……否、睨み付けるだけじゃ飽き足らなかった!
「何の用があってアポなしで大挙するか、進行審査会の犬め!」
「お早う御座います、林谷グレン先生。私は東京地検特捜部の捜索部所属の丸佐と申します」
「俺の仕事場だけでは飽き足らずに事務の関係者が必死で練習している最中に家宅捜査する気か!」
「ええ、先生が連載するという漫画ファーストの捨歩には明白な引き延ばしの疑惑があるのです」
「俺の仕事場でも見つからない物が事務にも見つかる筈がないだろう!」
「其れは如何でしょうか……もしも見付からない場合は打ち切りを示す決定的な証拠がないと判明し、近日中に謝罪文を送ります」
「謝って済む話じゃない。正式に弁護士団を結成してこの腐った進行審査会を世に知らしめてやる!」
「気持ちはわからんでもないが、こっちも仕事だ。手を抜く訳にはゆかない」
「口だけは何とでも言えるな!」
 其れから丸佐を含めた五十人は深夜十一時に成るまで家宅捜索。マット裏から会長室の隠し引き出しまで入念に。だが、今回の話も一筋縄ではいかない模様。漫画家林谷グレンは何処にも引き延ばしを示唆する証拠を残していない。進行審査会を通さなくともわかる明らかな引き延ばしと減頁の連発、そして記念日であろうとも盛り下がる展開の数々……と枚挙に暇がない。
 だが、証拠は発見されなかった。あるのは深夜に成っても練習を続ける命知らずのボクサー達。練習生こそ帰宅は早いものの、チャンピオンという名の栄光を夢見る現役ボクサー達はどんな事があっても練習を続ける。シャドーは既に一日百回超えているかもしれないプロボクサー、サンドバッグをすでに一万回も殴り続けるであろうプロボクサー、パンチングボールも同じく一万回も殴り続けるプロボクサー、縄跳びは既に十万回を超えて余裕があれば四重跳びもするプロボクサー、この時間帯に成ってもロードワークを続けるプロボクサー……と彼らはボクシングの為に日夜減量と命知らずな程の練習を課す。お蔭で現場の検察官達も触発されるように捜査を続ける。だが--
「お疲れ様です。其れ以上の捜査は心身に異常をきたす事に成りますよ」
「見つからない……ある筈だと思ったのに!」
「見つかるのではなく、初めから無いのです。大体俺はボクシングジムを経営する身としてオーナー兼会長を熟しながら漫画の執筆に当たっているのですよ。どうしても今週中に書き切れないのは当たり前じゃないか!」
 其れは誰が聞いても明白な言い訳。だが、この場に居る誰もが反論出来ない--証拠と呼べる物が見付からない以上は下手な反論は負け惜しみとしか聞こえない!
「そうゆう訳ですので、帰って下さい。でないとジムの人間も安心出来ませんので」
「わかりました。では後日改めさせて戴きます!」
 こうして今日の捜査は不発に終わった。


 今回の話は休載及び減頁ばっかりで絶賛不評中のあの漫画家をモチーフとしたお話。さあ、後半へ続く。

 車内で丸佐は灰皿に当たり散らす。誰が見てもわかる引き延ばしと減頁……後者は兎も角、前者は確実に指示をしたと睨む創作捜査官丸佐茂。だが、深夜十一時まで件のボクシングジムを片っ端から探して見付けたのは証拠にも成らないサイン色紙の数々と簿記会計……漫画制作をジムでやったという証明は出来ない模様。漫画制作は漫画スタジオで行われる事が証明されただけ。だが、スタジオは過去に何人もの創作捜査官が挑んでは誰も引き延ばしを行ったという証拠が出なかった事で有名。勿論、連載雑誌であるカートリッジを出版するひゅんだい社の全ての支部にも強制捜査を敢行し、シロである事実だけが残った。林谷グレンは手強い。漫画の展開は読者も呆れて物が言えないにも拘らず、誰も引き延ばしの証拠を見付けずにいる。進行審査会は長年に渡って強制捜査の手配を送り続けているにも拘らず。
「奴は間違いなくクロだ。ジム経営しながら漫画を執筆しているなら展開だって多少は早く成ってもおかしくないだろ!」
「ああ、あれっすね。何度も大ゴマとカルピス薄めたような頁数の少なさで何度も読者に待たせるからね。酷い時には試合終わるまでに一年も掛けるからもう誰も見てないっすよ」
「一つ訂正しろ!」
「何ですか、警部?」
「誰も見てない事はないだろ!」
「あ、そうでした。し、失礼しました!」
「全く」
 丸佐が乗る車は未だに事務の来客用駐車場に停車中。検察らしく注意が来るまで居座り続ける模様。これに依り、襤褸を出した創作者は跡を絶たない。
「其れにしても今は二時ですよ。何時まで練習が続くのですか?」
「其処の着目したか」
「え?」
「俺が最も気に成ったのは閉館時間が異常な所だ」
「閉館時間の遅さを?」
「教えよう、白岩。俺が如何して奴の事務の閉館時間が余りにも遅いかに着目したのは?」
「其れってジムで練習を続けるボクサーが鴨川ジム並にスパルタである証拠ですか?」
「実はな。草を潜り込ませて確認を取っているのだよ、歴代の担当捜査官達は。その結果、一月に一回は閉館時間が四時を回るそうだ!」
「よ、よ、四時!」
「驚くのはまだ早い。更には平均値では何と三時五十七分……今時、ブラック企業並の不効率な閉館時間はないぜ!」
「其れは驚きますね。、で、でも平常時は何時頃に終わるのですか?」
「えっと今で深夜二時十二分三秒だから昨日の十一時に捜査が終わった頃だよ」
「其れも調べたのですか?」
「ああ、ここは確かに異常な時間帯に閉館するらしくて近隣の住民は迷惑を被っているって話だ」
「そりゃあこんな時間帯に成ってまで灯りを灯すのが異常だよ!」
「同意だな。俺も……ン?」
 ここで丸佐はある事に気付く。遅過ぎる閉館時間に何時までもハードワークを続ける現役プロボクサー、そして丸佐が目撃したという何か!
「白岩……わかったぞ!」
「如何したのですか、警部!」
「まだ間に合う。直ぐにジムに乗り込むぞ!」
「いや、さっき日を改めるって言ったじゃないですか!」
「あ、そうだったな……ならば過去の捜査資料を洗い直しに帰るぞ!」
 こうして丸佐の乗る車は発進。其れを見て安堵する事務オーナーにして漫画家の林谷。彼は気付いていない……丸佐は決定的な証拠を見付けてしまった事を!

 四十二日後の午後八時三十分……丸佐と白岩は彼の経営するボクシングジムに立ち寄る。しかもボクシング用具を一式取り揃えるように。林谷は気を緩めた状態で二人を入館してしまう。
「又来たか。如何ぞ、中へ」
「ええ、今日は捜査令状もこの通り持って来ました」
「何? 一ヶ月も来なかったから諦めたのだと思っておりましたが」
「我々はその位で諦める程軟じゃありませんよ」
「あ、実は本官は--」
「何、負けず嫌いに火が点いてついつい粘ってしまいましたよ!」
 林谷は満面の笑みで次のように尋ねる。
「其れは無駄な努力をしますね」
「でももしも幕の内一歩が自分と同じ検察官ならば諦めずにフィニッシュブローを狙い続けるでしょう」
「ウグッ!」とボディーブローを受けた振りをして次のような事を呟く。「とマウスピースを飛ばすのですか……御冗談を!」
「冗談か如何かはこれからの推理ショーに期待してみてて下さい!」
「期待しますよ、警部殿?」
 其れから丸佐と白岩はスーツを脱いで練習生と同じくマウスピースとヘッドギア、其れから分厚いボクシンググローブを装着して前者は縄跳びを、後者は黒のサンドバッグに向かって練習を開始……するのだが!
「お、おい!」「あ、あいつらはど、ど、如何してあの方法を!」「ヤバイ、ヤバイ、やばいイイ!」と十年以上のベテランプロボクサー達は突然悲鳴を上げる!
「おやおや、何を立ち止まっているのですか?」
「本官達は普通に練習しておりますので気にせずに続けて下さい!」
「いや、気に成るのだよ!」「さ、さきいから、な、な、何てふしだらな事を!」「気に成って練習に身が入らないだろうが!」と二人の練習が気に成って体を止め始めるベテランボクサー達!
「え、佐伯さん達は何を驚いているのですか?」「至って普通に練習しているじゃないか」「少し拍子を撃つような練習だけど、素人的には其れが普通じゃない?」とベテラン以外は至って反応を示さない。
 これは一体何が起こっているのか? 何故、ベテランボクサー達だけが丸佐達の練習に過剰反応するのか? 答えは後程紹介する。
「じゃあ次は……あ、リングの上で練習試合しても宜しいかな?」
「そ、其れは……その!」
「如何したのですか、ベテランの皆さんが揃って冷や汗を流しちゃって!」
「別に向こうのプロ専用のリングで練習する訳じゃないのですよ。このおんぼろのリングの上で自分と白岩が練習試合するのだよ。良いだろう、オーナー?」
「先生と呼ばんか……だが!」林谷は次のように呟く。「それはお前達の思い込みに決まっている!」
「何故先生まで焦っているのですか……いや、担当の人間も焦ってますね」
「そ、其れは--」
「ハッタリだ、琴山さん。そうに決まっていると信じて下さい!:」
「は、はい先生!」
 其れから丸佐と白岩は練習試合を始める……のだが、林谷と担当編集の琴山、其れからベテランボクサー達は阿鼻叫喚の縮図を描いてゆく。
「如何したのですか? 少々、最初は顔面一発にボディ二発、其れとリバー一発だったのがボディ二発目をガードされましたな」
「因みに正解はおちんこ……あ!」
「馬鹿、答えを言うな!」
 これが答え。暗号のルールはここでは紹介しないが、林谷グレンが引き延ばしを指示するのに使ったのはボクシングジム。しかも一部のボクサーにだけ暗号を示唆する打ち方を叩き込む事で練習しているように見せ掛けて引き延ばしの指示を送っていた。
「何故わかったんだ、お前達!」
「いや、確証に至るまで長かった。何にせよ、通常のボクシングジムを使ったトリックは如何してもボクシングの神様を信仰する日本人にとっては障害と成る。減量苦に耐え、食事制限と戦いながらようやく掴むチャンピオンの座。だが、漫画家なら別だ」
「ウググ……だが、お前達は其れだけを暴いただけだ。其れで俺達が引き延ばしたという証拠には成らない」
「いや、証拠はある。これだよ」
 丸佐は白岩に指示してビデオカメラを取り出す。本来ならスマホ映像を見せるのだが、見るなら大画面の方が証拠に成ると踏まえて大画面用に画像を調整し、事務内にあるテレビジョンに直結。其処に映るのは……ロードワークしながらも右手に持つ特性のサイリウムを何度も点滅させるジム所属のボクサー……否--ボクサーに偽装した担当編集の琴山だった!
「ウワアアアあ、な、何だあああ!」
「驚いたよ。俺はな、四十三日前からずっと引っ掛かっていたのだよ。名簿の中に歴代の担当編集の名前がある事にな!」
「ク、其処まで洗い出したのか!」
「お前はそうやって強制捜査が入る頃合を図って担当編集に連絡を取ったのだろう。しかも無理があれば代理の編集に依頼をして引き延ばしの指示を送る事をな!」
「だ、だが腑に落ちないぞ。名簿を、み、見ただけで如何して俺達がボクシングジムを使って引き延ばしに関する連絡をしているのだと気付いたのだ? あの時は、あの時は……ウググ!」
「ああ、あの時はジムに戻らずにずっと走らせたのだろう。言いたい事は其れだろ? だがな、気付いたのだよ。お前が頻繁に窓の前に立っては何かを覗き込んでいる事をな。其れで少し車内からその何かを調べたのだよ。すると見付けたのさ」
「だが、本当なら真っ暗闇の中だ。とてもカメラで写せる光量ではない!」
「国の科学力を舐めるなよ、漫画家が!」
「畜生……俺だって理解しているのだよ!」
 とうとう崩れ落ちる林谷。彼は静かに告白した。
「俺はボクシングが描きたかった。ボクシング漫画が描きたかった。そして最後のチャンスに俺は乗っかり、漫画家として大成したんだよ。其れでも俺はタイトル通りの事を忘れない為にずっと読者の為に面白い漫画を提供する努力を怠らなかった。ジムの経営だって現場でないとわからない事があると思い、やった。屑みたいな奴を雇って痛い目も見たさ……でもなあ、でもなあ!」そして林谷は最後にこう絶叫する。「もう好きなようにやらせてくれええええええ!」
 引き延ばしとは好きだった物まで根こそぎ奪い取る。もう輝きを放つ林谷グレンは居ない。其処で項垂れるのはその成れの果て。
「だから震災漫画やったんだな。全く引き際を間違えた漫画家程見にくい物はない!」
 こうして人気漫画ファーストの捨歩は長い歴史に幕を閉じた……


 という訳で『進行順調法』をお送りしました。一応あいつはボクシングジム経営しながら漫画描いているからな。正直、誰かに経営を任せるとかしないのかな? いや、昔屑野郎に依って手酷い目に遭ったから無理なのだろうな。

 それじゃあ今回はここまで。もうこんな時間か!

一兆年の夜 第九十一話 必死の逃亡者達(六)

 午後十時二分三十七秒。
 場所は不明。二名は既に息も枯れ、三等分に裂いた仙人掌四つを抱えて砂漠の中で足を動かす。
(ァアもう六本足全てが固く成って動かない。セェっかく俺が先導してやったのに、やったのに……蟻地獄型の、いや銀河連合が良くやる相手を疲れさせてから狙い撃ちするというやり方に嵌ってしまった!
 オォもう俺達はここで果てるのか。カァもう無理だぞ、ラク一よ!)
 既に喋る気力もないアンティラ。ラク一もまた、背中の瘤が全て萎み切った後。仙人掌を食べて体力を回復したいがその余裕もない。背後より蟻地獄型がラク一の動脈を狙って飛んで来る。幸い、紙月による攻撃の為に柄物の長さは余りに短い為に動脈を切り裂くような程深く噛み千切られる事もない。其れでも徐々に薄皮一枚から掠り傷と徐々に精度が上がる。銀河連合の学習能力の高さが窺える。深く入り込めば入り込む程に危険性が高くなるという戦いの常識を照らし合わせてもこれ程の成長性は侮れない。
 その事に気付いたアンティラは自ら蟻地獄型の前に立つ。自決を望んでいたアンティラが如何して他者の為に命を投げ出す事に踏み切るのか? 其れは次の通りである。
(ォオ俺は何故これに気付かなかった。カィ俺が命を投げ出す方法がずっとここにあったじゃないか。キィここでラク一の為に命を投げ出してあいつに勇ましいのは何なのかを教えておけば……だが、死ぬのは恐い!
 ソォうだ。ィシし、死ぬのは恐かったのだ。オォ俺は今までどうしてこんな当たり前の事に気付こうとしなかった!
 クゥびを縄で括る事だけを考えている時はさしもの恐怖なんて感じなかった。カァ感じ始めたのはラク一が俺を呼んで止めた時だ。アァいつが制止してもそのまま縄を首で括って台を倒せばそれで済む話だった。ナァなのに出来なかった。デェ俺は其処で恐怖が湧き始めてラク一に助けを求めてしまった。ンィ何て事なのだ。ンゥなのに俺は命を投げ出そうとしたのか。ァア半端だ、俺は!
 ダァからこそ俺はここで恐怖と向き合う!)
 アンティラは家族を失って初めて自らの生きる意味を見出す。其れは誰かに生きる意味を見出す事でも自ら家族の元に行くのでもない。生き永らえた命が一瞬たりとも意味のない物でないように全力を尽くす事である--その時、肉体は呼び動力を分け与えてアンティラを動かす!
 言葉こそ出ないアンティラではあったが、精々三の分もの間の猶予を以って自らよりも巨大な蟻地獄型と対峙--力の方こそ、蟻地獄型の方が勝る為に徐々に背骨が曲げられて今にもくの字に折られそうなアンティラ!
(ナァんて力だ。クァ家族を死なせた銀河連合とは訳が違う。クィこいつは足場の緩い砂漠地帯に適した肉体を持つ蟻地獄だという事を忘れていた!
 ウァあの時とは訳が違うし、同じ方法で倒せないのか。タァ倒せないのか、そうなのかあ。ダァがなあ、だがなあ……俺はあの時と違って怒りのままに戦うのではないああああ!)
 アンティラが僅か三の分もの間に蟻地獄型と戦う理由……其れは生き甲斐を見付ける為。死を覚悟し、誰かを守る為に命を投げ出す段階から生き抜く為に戦う段階へと上り詰める。その時、アンティラは気付く--やや後ろ左足の重心を少し浮かせると蟻地獄型が前のめりに倒れるのではないか……気付いた時、アンティラは釣り落としして蟻地獄型の頭から叩き付ける投げをしていた!
(イィ、まのは何だ? オォレがやったのか……じゃなくてまだ動けるか!)
 アンティラの思った通り、蟻地獄型はまだ動ける。砂の大地は蟻地獄型を死なせるには柔らか過ぎるようだ。これがもしも普通の大地ならとっくの昔に頭から血を流して果てていただろう。だが、この世界は砂漠……砂漠である以上は平衡感覚こそ安定しなくともまだ戦える。アンティラにとってこれ程までに死を受け入れようとする事態はない。何故なら--
(モォう体が動かない。コォこまでか)
 三の分を過ぎるとアンティラの呼び動力は其処を尽きて休みの段階に入った。最早後がない……そう思った時、蟻地獄型が突如止まり、背中を向ける!
(ナァ、何と……背中を向けて直ぐに踏み潰されたぞ!)
 アンティラの思った通りに蟻地獄型は何者かに踏み潰され、全身から血を流して果てた……一体誰が蟻地獄型を踏み潰したか? 答えは明白--
(ラァラク一か。ヤァれば出来るじゃないか……あ、ァ--)
 二名は意識する気力も失い、そのまま眠りのその辺引きずり込まれてゆく……



































 十一月二十八日午後五時十七分十八秒。
 場所はプロタゴラス大陸フィス地方ゴルギ市第三北東地区。
 その中で二番目に大きな建物二階個室。その正面扉から二番目にある寝台から這い上がるように起きる生命が一名。
「ハァはあ……あれ、ここは?」
 目覚めたみたいだじょお--目の前に巨大な何かが見つめていたのでアンティラは声を張り上げて飛び上がった!
 幸い、三名程の看護婦が駆け付けた事で安心感を得たアンティラはそのまま寝台の上で寝転ぶ。
「ヨォかった。ホォんとうに良かった……俺達は生きてるんだ!」
「念が残るようにピアス饅頭は届ける事が出来なかったが、代わりに仙人掌を届けられたので良しとしようじゅう」
 ァア何が良しだ……何処に生やすのだよ、そいつらを--とアンティラは怒鳴る。
 一方でアンティラは感謝する。家族を失った後でも生きる事を諦めては成らない事を教えてくれたラク一の事を。其れだけでなく、アンティラは気付く。自決した所で家族の元まで行ける保証はない。家族とは別に死に急がなくとも幾らでも会う機会があるという大事な事にも気付く。
(ソォうだ。オォ俺は妻や息子や娘達とは何時でも会えるのだ。ンァ何も急がなくても良いのだ。ンィ俺はずっと生き急いでいた。アァ俺は家族の為と思ってずっと生き急いでいた!
 ダァが違うんだ。ダァ俺は別に好きなように生きる理由を見付けても良かったのだ。スゥなのに俺は自らの意思で生きる意味を見い出す事も放していたなんて!
 アァ改めて俺は俺自身を見つめ直さなくちゃいけない。オォ俺は--)
 退院後のアンティラは如何成ったか? 彼は生きる意味を見出す為に出家を始め、四十八の年まで生き抜いた……
 尚、アンティラとラク一を閉じ込めた世界の謎の真相は突如として明日の世界より飛来した正体不明の鯨族の白骨した肉体が最後の力を使って見せた幻。其れはその時代の鯨族が死の寸前に自らの世界に危機が及ぶ事を知らせる為に放った摩訶不思議な出来事。だが、ここで大きな誤った算出なのは二つ。アンティラとラク一は死ぬまであの世界の謎を追求しなかった事。もう一つが二名を追っていた蟻地獄型まで幻に包まれてしまった事。
 そう、真相は更に話が進まないと解明されないのである。まだ全生命体にとってそれを開示する時期ではない……

 ICイマジナリーセンチュリー二百三十年十一月二十八日午後五時三十分一秒。

 第九十一話 必死の逃亡者達 完

 第九十二話 海底成人体型一万二千 に続く……

一兆年の夜 第九十一話 必死の逃亡者達(五)

 十一月二十七日午前六時一分一秒。
 場所は不明。其処は試験管の中の世界。
 星の中では有り得ない月の位置。月はお日様の光に浴び方によって形を変え、少しずつ位置を変えて動き続ける。だが、アンティラとラク一が流れ着いた世界には其れがない。そこで二名は気付いた。ここは水の惑星の上ではない。だからこそ幾ら方位通りに進んでもコルギ村に辿り着く筈がない。
 現在、二名は再び誰も住まない神々だけが残された村に到着して一夜を過ごした。其れから朝の光。お日様も又、不自然な角度のまま二名を照らす。
(ァアここは正に試験管の中の世界だ。ダァあの光で俺達は見知らぬ世界に跳ばされてしまった。ウゥラク一の話も聞かずに大人しく自決して居れば良かったのだあ。ソォすればこんな目に遭わずに済んだのに!)
 アンティラは悔いるように目覚めの朝を迎える。彼は睡眠が足りない訳ではないのに目元に隈が出来る。生きる意味もないのに只の生命の頼み事を聞いただけで見知らぬ世界に跳ばされてしまった。其れだけではなく、自決用の縄まで無くしてしまった。幾ら栄養価の高い仙人掌が直ぐ其処に生えていても変えるべき場所に戻れずに一生を過ごすのは心に堪えてしまう。
 ふわあああ、良い朝だじょお--一方のラク一は前向きの様子。
「ウゥお前は父親に似てどうして呑気で居られるのだよ!」とラク一の巨大な鼻に乗っかり、何度も足蹴するアンティラ。「ガァ俺達は別の惑星に跳ばされたのだぞ、わかってるのかああ!」
「まあまあじゃあ。其れに心配は要らないじょお」
「ナァにが心配要らないのだよ。ンィ俺達は確かに食糧に困る事はない。ンゥ砂漠を彷徨っても仙人掌さえあれば生きられる!」と言いつつも反対の事も口にするアンティラ。「ソォれでも見ず知らずの場所に跳ばされ、帰るべき場所に戻れない事は精神的に堪えるのだぞおおう!」
 イッデ、ま、まあ……そうだねじぇえ--鼻の痛みを訴えてアンティラを降ろしたラク一。
 其れから二名はもう一つの村の探索を始める。建物の構造や配置、そして広場の有無の違いがあれどここもまた秘境ではない事に気付く二名。やはり空気の問題、秘境にはなくてはならない説明の付かない彫像の数々がこの村にもない。
「これはまるであの話に似ているじゅう」
「ァアの話?」
「約二百六十の年より前に起こった東海洋藤原で起こった事件の事じゃあ」
「ァアああ、あれか。ンェ確か銀河連合の体内に入り、無事に生還したというお話だったな」
「ひょっとしてここは銀河連合の内部じゃないかなじょお?」
「ンァな馬か鹿な事が……あ!」アンティラは其処で足下の土を掘り始める。「ァアあああああ!」
 お、落ち着いて下さいイイいじい--アンティラを咥えて止めようとするラク一。
「ブゥぶへえ、早まるな!」
「一体何をしているのですかじょお!」
 ァワかったぞおおう、この世界の正体がアアア--天に向かってアンティラは叫ぶ!
 其れからアンティラは語り始める。最もこれはあくまで約二百六十の年より前に起こった事件と同質ならばを前提とした推理であり、真実には届かない説。
 兎に角、アンティラが提唱するのはここは銀河連合の体内。しかもずっと時間だけが過ぎてゆくような感覚に陥り、遠回りをされて来たのは銀河連合の体内では肉体が小さく成るだけでなく、時間の流れさえも変質する為。実際の経過時間は二名が感じる物よりもほんの一瞬の出来事に過ぎない。其れだけじゃない。この世界では二名の脳内と連結する事に依って世界が広がっているような錯覚に陥らせる。結果として狭い範囲なのにアンティラとラク一の記憶を基にして構築されゆき、世界は作られ続ける。だからこそお日様もお月様も実際とは異なる動きを見せる。これがアンティラの提唱する世界の真実。
「だが、少し納得いかない事が一つあるじゅう」
「ァア質問してみろ!」
「仙人掌の謎はじゃあ?」
 カェ其れはオイオイ納得いく理由を考えておく--とアンティラは顔を逸らした。
(ァウ仙人掌は確かに謎だな。ゥエ仙人掌は書物の中でしか知らない。シィなのに俺とラク一の記憶を基にしたなら仙人掌があるのは自然じゃない!
 キゥそもそも仙人掌が生える程の砂漠の環境とは一体何の要因があって出来上がるのだ!)
 砂漠が出来る理由をアンティラは知っている。其れは森林の過剰な伐採と降水量の少なさ、そして高止まりを知らない気温の高さ。それらが結んで大地は砂の海と化す。砂漠とは雨水を知らない大地が生む物。だが、其れを悲しむべきではない。結果として水の有難さを思い知り、仙人掌と呼ばれる副産物を産み出す。
 だが、プロタゴラス大陸で暮らすアンティラとラク一にとっては仙人掌は珍品その物。寧ろ仙人掌の数よりも水湧き湖の数の方が多い程。それだけ仙人掌が生える地域は見た事がない。ならば仙人掌の謎は果たして……だが、その謎を解明する前に再び蟻地獄型が二名の前に現れる--土を大量に巻き上げながら地面の下より這い出て来るように!
「もう驚かないし、恐怖もしないじょお!」
「ァアだが、油を断つのじゃないぞ。ヤァつは自らの肉体の小柄さを生かして頸動脈を狙う筈だ!」
 流石に三度も出会えば恐怖も和らいで寧ろ勇ましさが前に出る。そんな勇ましい巨漢も年長者にして冷静で小柄で生命の言う事は素直に聞く。
「わかっているさ。なので何時も通り--」
「ィイつも通り?」
 逃げますじょおおおお--少し毛が生えただけの勇ましさであったラク一!
(ナァラク一が成長したと思っていた俺が甘かった!)
 流石のアンティラもラク一の肉体に見合わない臆した病を治療する術を探すのを諦める程。二名は地面を掘って追撃する蟻地獄型から逃れるべく北北東の方角より村を出て最後の対面を果たすべく熱砂にしてハリセンボンたちが見渡す砂の上で最後の逃亡劇を始める……
 現在、逃亡一の週の目……

一兆年の夜 第九十一話 必死の逃亡者達(四)

 十一月二十四日午後四時七分三十七秒。
 場所は不明。わかる事は仙人掌が生えていた事。そして月の方角から考えてゴルギ村より南東側にあるという事。
 アンティラとラク一は北西を目指して進む物の待ち構えるのは幾重にも出現する螺旋の砂。その為、遠回りを余儀なくされ続ける。しかも丘が多く出現する為に予想以上に足腰に響く。幸い、アンティラは蟻族故に六本足で丘を越えるのも左程苦ではない。駱駝族であるラク一に至っては元々砂漠を渡る為に適応された種族。その足腰と過酷な砂漠横断を可能とする持久力の源である瘤はそう簡単に萎んだりはしない。故に遠回り程度で其処まで深刻に成らない。
 問題なのは遠回りする度に包囲の調整を図らないといけない。何故なら星は丸く、平ではないのだから。
(タァ天体学者に依ると星は楕円であるそうだ。ァダとすると必ず真っ直ぐは曲がりくねってないと説明が付かない。ィイしかもどれくらいの角度で曲がるのかを誰も正確に測る事が出来ない。カァ円周率での曲線だからなあ。ァア何百桁だろうと何千桁だろうと円周率の果てが見えないからなあ。コォれを突き詰めようとする学者及び研究者共は少し頭を冷やして欲しい!)
 方位の話も気が付けば円周率の話に行き着く。脱線しやすい話とは何と脆い事か。さて、螺旋の砂に苦労しつつもアンティラとラク一はゴルギ村を目指す。確かに方位通りの道を突き進めば辿り着くと信じて……信じて!
「ナァなあ?」
「如何したのですか、アンティラさんじゃあ?」
「ィイつに成ったらゴルギ村に着く?」
 わからないじい--二名が確信が持てない所までここが本当に同じ大陸の砂漠地帯なのかわからない程だった。
「ォオそもそも泳いで行ったのは他でもなくラク一だろう。ァサ何で迷うのだ!」
「じ、実は言い忘れていた事があるじゅう!」
「ナァに!」
「じ、実は泳ぐ途中で眩い閃光に呑まれたのじゃあ!」
 ナァンで其れを今頃に成って話すのだよ--と怒鳴るアンティラ!
「だ、だ、だってええ……今に成って気付いたんじゃあ!」
「マァ全くラク殿さん同様に呑気だよ!」
 いやあ、褒められても出ませんじょお--褒めても居ない事に嬉し顔なのも父親譲りのラク一だった。
(ァア俺は家族の所に行きたいのにこいつのせいで其れが叶わない。カァ銀河連合に依って家族を奪われた俺が何でこうして彷徨うのだああ……ンン?)
 二名は見付ける--蜉蝣なのかどうかわからないが、遠方に何かが浮かび出す。
「き、きっとおお村だあああじゃあああ!」
 オォ、走ろうかああ--大喜びの余り、息が荒くなっても二名は其処へ向かって走り出すのである!
 現在、逃亡四の日の目……

 十一月二十五日午前六時七分二十八秒。
 場所は不明。二名が見つけた村は神々の眠る地だった。
 誰も住まず、尚且つ仙人掌だけが住処として存分に栄華を極める。お蔭で二名は飢えに苦しむ事はない。しかも水資源も仙人掌で補えるのだから一石で二名の鳥とはこの事を指す。
(アァいにく鳥族を目撃しておらんがな。カィにしても何で建物全てが神様なのだよ。ァアここはまさか秘境だというのか!
 ィイや有り得ない。カァ秘境って言うのは聞く所では空気も新鮮で緑も溢れる話だ。ダァがここは異なる!
 コォこは空気は確かに心地良くとも話題にする程じゃない。ワァだいにする程じゃない以上はここは秘境じゃない!)
 ではここは何処なのか? 二名は少々長たらしくも会話をする。其処に何か答えが見付かるだろう。
「ひょっとしたらここは銀河連合に襲撃される前の村じゃないかじい?」
「ィイや、其れならば生命が住んでいなければ答えに成らない。スェ生命が住まない村に何の意味があるのだよ!」
「じゃあ。もしかして秘境じい?」
「サァ其れは有り得ないな。ナィ何故なら神々しさをこの村から見出せないからな!」
「謎が深まるじょお」
「ソォ其れに秘境だったら何かしら俺達には理解の難しい像等が残ってもおかしくない。ノォなのでここは偶然神々が眠っていた仙人掌だけが住む村だ!」
「仙人掌だけが……だけがじゃあ?」
「ンゥ如何した……あ、あ、あああああああ!」
 其の村に蟻地獄型は居た。其れが追い回していたモノと同じなのかはわからない。わからないが、これだけはわかる。二名は至急採取した仙人掌だけを回収して逃げるしかない。逃亡生活はまだ続く!
(ウゥうわあああ、如何して銀河連合は俺達を安心させてはくれないのだあああ!)
 現在、逃亡五の日の目……

 十一月二十六日午後八時七分十一秒。
 場所は不明。謎の村から北地区から出てそのまま北へ向かって成人体型二千六百の距離まで逃亡。
 二名は食糧こそ砂漠のあちこちで映える謎の仙人掌で賄える物の何処へ向かっているのかわからずに既に諦めつつある。
(ソォそもそもここは一体何処の砂漠だ? サァ地同正伝せいでんはこんな所に来たのか?
 キィ急にその話を考え始めるのは地同正伝が奪還した数々の土地についてだ。クゥ詳しくは紹介しないけど、俺はこう考える。クゥ喰われた大地と奪還された大地はちょうど重ね合わせの状態に成ってるのではないか? デェでないとここまで方位と結び付かない数々の土地なんてある訳がない。ソォれに仙人掌の存在も謎だ。ナァんで仙人掌があちこちに生やすのだ!
 ゥウ……又向こう側に何か建物が見える!)
 二名は精神の疲弊に依り、幻を見ている己を自覚出来る。其れでも希望に縋りつく以外に生きる道はない。真っ直ぐ走る……希望は目の前だ。例えそれが幻だとわかっていても信じるしかない!
 二名は月夜に浴びつつも……「チョォ、っと止まれええい!」其処でアンティラはもう一つ異様な事にも気付く!
「ど、如何したのじゃあ?」
「ァア見よ、月を!」アンティラはラク一を見上げさせる。「ァア月がどの時刻でも同じ角度で聳える!」
 其れは有り得ない話である。何故なら月は時を追う毎に少しずつ季節毎に移動する。だが、ここの月はそうじゃない。
「じゃあ、じゃあ!」
「ァア、ここは水の惑星ではない!」
 確定ではない。其れでも惑星の中で暮らす生命にとって当り前の常識が通用しない場所は明らかに別の星での出来事だと思えば謎は解けてゆく。アンティラ達は水の惑星とは別の何処かに移動しているのだと確信するにはやはり月夜で見つけたあの村に辿り着く以外にない!
 現在、逃亡六の日の目……

一兆年の夜 第九十一話 必死の逃亡者達(三)

 十一月二十二日午前八時三十二分五十九秒。
 場所はフィス地方ヒッピア砂漠。
 ゴルギ村より北東に成人体型六百六十七離れた場所に水湧き湖がある。アンティラとラク一は二の時より前に其処まで辿り着いて水を飲みつつ朝食を摂った。だが、輸出品であるピアス饅頭に足を付けない。其れから二名は一の時も眠りに就く。
 だが……安眠は出来ない--蟻地獄型は目前まで近付く!
「ウゥにゃあ……グああああああああ!」
「何だよ何だよじょお、眠たい中で……ってじぇえ!」ラク一も眠気が吹っ飛ぶ程の衝撃を受ける。「銀河連合だあああああああじゃあ!」
「ウォこう成ったら倒すしかない!」
「いやじゃああああ、いやじゃああああ!」
 ゥウって俺を置いて逃げるなああ--図体の割に臆した病に掛かるラク一に上手く乗っかるアンティラ。
 ラク一は更に逃げる。だが、逃げた先は何と崖っぷち。大陸の端では如何する事も出来ない。其れでもラク一は自分よりも一回り小柄な蟻地獄型から逃げようと必死だ。
「そ、そうじょお。と、飛び降りようじゃあ!」
 マァ待て……ってウワアアア--制止する事も聞かずにラク一と共に落下してゆくアンティラ!
 流石の蟻地獄型も海へ潜る事は叶わずにそのまま踵を返した。
(ラァ駱駝族は泳げないのだぞ。ォオよげないのだぞおおう--)
 アンティラはそのまま気絶する!
 現在、逃亡二の日の目……

 二十三日午前二時四分八秒。
 場所は不明。
(コォこは想念の海? デェも月が見える? ゥツ月イイイ!)
 熟睡が済んだアンティラは飛び起きる。すると其処は昨の日に訪れた水湧き湖ではない。植林の数も仙人掌さぼてんの数も違う。前来た所は植林の数が全部で二本であり、南北に配置されていた。ところがここは二本多い四本。しかも現時刻と季節、其れから月の配置を調べてわかった事は四本とも北北西に偏る。其れから仙人掌については前来た湖には一つも生えていない。其れだけじゃなく、ヒッピア砂漠では何処を探しても仙人掌が生えない。と成るとここはフィス砂漠?
 其の前にアンティラは熟睡中の楽市を起こす為に彼の舌に何度も刺しに掛かる!
 イデエエエエじぇエエエエ--するとラク一は飛び上がるように起きる!
「ゥウワアア、死ぬかと思ったぞ!」
「ってアンティラさんが起きたじゃあ!」
「ソォ其れよりもここは何処だ? ォオ泳げない筈の駱駝族が如何して地面を踏みしめられる!」
「泳げないじぇえ? 其れは普段から砂漠を渡り歩く駱駝族の想像を前提にした誤りじゃあ!」
「ナァんんだって!」
「駱駝族は古来より泳ぐのに適した種族なのじゃあ!」
 そう、駱駝が泳げないというのは勝手な思い込みである。亀が泳ぐと速いように駱駝は砂漠の上だけじゃなく、海の中でも泳いで何とかやれるのである。
「ソォれは知らなかった。アァ知らない世界とはこんなにも好奇心を沸かせる物なのか!」
「其れじゃあ自決を諦めるのだじぇえ?」
 ソォ其れとこれとは別だ--アンティラはまだ命を捨てる事を諦めない!
「如何してだじょお。何故其処まで死のうと考えるのじゃあ!」
「オォ俺にとって家族こそ全てだ。カァ家族の為に夜遅くだろうと迷い惑わせようとも頑張って来たのだ!」アンティラは涙を流し始める。「ァアあああううう、ウオオオ!」
「そ、其れは大変辛い様子じゃあ」
「ウゥ、やっぱり自決を……あれ、縄は?」
「いけないじい。荷物を全て海に放り出してしまったじゃあ!」ラク一は大変な事をしてしまう。「ああああ、如何しようじょお!」
「シィ食事は仙人掌で我慢すれば良いだけだろう」
 仙人掌は周りの針の多さからそう名付けられる大変貴い食物。但し、食べる場合は針を抜く作業を怠らないように。
「え、仙人掌って食べられるのじょお?」
 ァア知らなかったのか、其処は--ラク一にも知らない世界がある事を認識するアンティラ。
 こうして二名は仙人掌が生える水湧き湖を何とか一の日過ごす物のここが何処なのかがわからない。
 現在、逃亡三の日の目……

一兆年の夜 第九十一話 必死の逃亡者達(二)

 十一月二十一日午前五時五十九分三十二秒。
 場所はピアス県第四南西地区。
 其処にある五番目に小さな建物から何とか出てゆく生命が居る。彼の名前は時山ラク一……物語の主人公アンティラ・ピオールの自決を止めた生命。なのに住まうのは駱駝族にとって潜るのが大変な建物。入る度に屈まなければ成らないその構造は扉を潜る程度の存在する幅さえも気遣う始末。
「ンァそんな小さな建物に住まうのか? ゥグ大変じゃないか?」
「潜ってから荷物を口繰り寄せるじょお。こんなのが大変じゃなくて何が大変じゃあ」
「ァアまあそうだな。ィイラク殿さんも長年そんな事を口走っていたが……実物を見るのは初めてだ」
「幸い、瘤の大きさも駱駝族の屈強な肉体の割には意外と細いのじゃあ」
「ァアわかった。ォソれよりも良くも一の日も待たせたな。ウゥつまらない事ならこの場で首を括ってやるからな!」
「まあまあ、ではそろそろ行きましょうじい」
 ドォこへ行く--何も知らないアンティラは尋ねる。
 ラク一が行くのはコルギ市。しかも奪還して今年で三十の年を迎える。其処へ何しに向かうのか? それ以前に如何してアンティラを連れて向かうのか?
「実はおらが運ぶ中にはピアス饅頭があるじぇえ」
「ァアピアス饅頭が如何した? エェピオール社の定番商品を如何してコルギ市にまで広げる?」
「知らないのじょお? 実はピアス饅頭は社内でもピアス以外に広げたいそうだじょお」
「ァア良くないに決まっている。ガァ自社の饅頭は地方名産として売るもんだ。ダァ誰が外に売って堪るか!」
「でも社長さんはもう社長じゃないじい」
 ゥウぬぬぬ、ドラール・ジニンめ--後継者に選んだドラールは約束に背いてピアス以外でも売る方針を固めた模様!
 アンティラはピオール社に向かおうとしたが、ラク一の巨体が進路を遮る--仮に擦り抜けようとも持ち上げて逃げられないようにする。
「オォのれ、ラク一!」
「旅に出ますじゃあ。ピアス饅頭がコルギ市でも通用する事を証明する為だじぃ」
 ァア別に証明したくなあああい--旅は道連れの如くアンティラはラク一に運ばれてゆく!
(ァアこいつは何を考えている。ガァピアス饅頭を売りつける為にわざわざ俺を連れてゆく理由が見付からない。イィ見つかる訳がない!
 ナァ何を考えているのだああ!)

 午後七時十八分二十一秒。
 場所はヒッピア砂漠。
 螺旋の砂の前で二名は夜を明かそうか議論を戦わせる!
「ァア螺旋の砂の前で大人しくしている場合じゃない!」
「だが、ここで動いたら呑まれてしまうじょお!」
「ァアだが、螺旋の砂同士が急接近する前に中央を渡り切れば十分に乗り切れる!」
「無茶じゃあ。引力は満ち潮だけじゃなく、砂の上でも発生するじい!」
「ナァ何だと!」
「其れよりもアンティラさんじゃあ」
「ナァ何だ……って、螺旋の砂の上を疾走する奴は何だ?」
 二名は其れが内臓まで剥き出ししている事に気付く。例え目が遠くを捉えるのも難しい年齢に成ろうとも一瞬で皮膚に何も被さっていないモノが何の存在なのかを把握する事は簡単--恐らく形は薄翅蜉蝣薄翅蜉蝣うすばかげろうの幼虫である蟻地獄型と思われる。
 二名は来た道を戻るように走ってゆく--途中アンティラはラク一の瘤に乗っかって安全に避難してゆく!
 だが、二名を捉えた蟻地獄型は逃がさない--これより短くも長い逃亡劇が始まる!

一兆年の夜 第九十一話 必死の逃亡者達(一)

 ICイマジナリーセンチュリー二百三十年十一月二十日午前三時十二分十八秒。

 場所は真古天神武プロタゴラス大陸ソフィス地方新ピアス県第三南西地区。
 その真ん中より二番目に大きな建物と真ん中より三番目に大きな建物の間にある路地裏で齢三十四にして六日目に成るピアス蟻族の中年が網目の縄を二番目に大きな建物の突っ掛けに引っ掛け、前後の先端を輪っかにして自らの首に合うように結ぶ。其れから蟻族の脚力で転がせる事が可能な台を用意して其処へ乗る。その中年がやるのは何か? 其れは文章で察するよりも彼自身の思いで直接感じる方がわかり易いだろう。
(ンァ死んでやるううう! ンェもう妻と息子も娘も……みんなみんな死んでしまったあああ!
 アァ俺はもう生きる意味がないイイイイ! ブゥ銀河連合に全員食べられてしまったああ!
 カァ仇は取ったよ、取ったけどおおおおう……俺にはもう何も残らねえ!
 コォこのまま死んでやるう。シィ死んでやるからなああああ!)
 自ら命を断とうとしている生命の名前はアンティラ・ピオール……僅か一代で会社を興して十の年の内にピアス一の会社へと伸し上げた実業家。自社製品であるピアス饅頭は新ピアス市をピアス県に昇格させるなど彼の偉大なる功績は彼を慕う社員達の中では巨大な物だった。
 だが、一の週より前に彼に悲劇が訪れた。その悲劇とは帰りを待つ彼を家族を全て食べた銀河連合が冷たく迎えるという物だった。幸い、銀河連合は死を覚悟の上で抵抗したアンティラの力もあってか直ぐに討伐出来た。だが、失った物が大き過ぎた。幸いの妻と十八名の息子と娘を同時に失った。いや、子供の数は十八名以上と数えた方が適切だろう。何よりも妻は十九子以上先も儲けようとお腹を膨らまして家の地下で出産を控えていたのだから。何方にせよ、幸せは僅か一の日の内に全て失った。残ったのは自身の栄光を築き上げた会社だけ。だが、会社だけでは彼の生き甲斐に繋がらない。愛する妻と子供達の居ない中で会社を運営する意味はない。葬儀を終え、さっさと後継者を決めたアンティラは誰の目にも触れないであろうこの路地裏にて命を断とうとしていた!
「ちょっとそこの生命じょお、命を断つのは後一の日待たんかじゃあ?」アンティラを止めたのは齢二十四にして九の月と八日目に成るピアス駱駝族の青年。「死ぬのはおらが如何しても頼みたい依頼を受けてからにしないかじゃあ?」
「エェいいい、駱駝族のでかい若造が小さな俺の気持ちをわかって堪るかあ!」
「その小さいあんたにおらは頼んでるんじゃあ」
「ソォその前に名乗れ、社会者なら常識だろうが!」
「おお、そうだったじょお。おらはピアス駱駝族の時山ラク一と申しますじゃあ」
「ァア時山? フゥひょっとして俺が経営していた会社の部長にまでしか昇進しなかったラク殿さんの--」
 ああ、父ちゃんの一名息子じゃあ--ラク一との出会いはアンティラの逃亡劇を築いてゆく!
 まだこれは始まりに過ぎない。ラク一の頼みがまさか必死の逃亡劇に繋がるとはこの時、二名も予想出来ない事だろう。
 現在、逃亡零の日の目……

雑文特別編 ハヤトは死なず 第陸話 サイコパワー対決勃発! 鳩山由紀夫VS竹下登

 如何もdarkvernuです。さて、やりますか。

 ドナルド・トランプの訪日が終わってから彼此うん日経ったか? だが、どれだけ忘れられ用途も戦後歴代内閣総理大臣を決めるトーナメントは継続される!
「解説は私、希望の党の共同代表を務める事に成りました玉木雄一郎と--」
 コラ、まだ名乗り出る段取りではないから黙って下さい、タマキード氏!
「いや、私は--」
 さて、一回戦Bブロックの第一試合はまさかの結末を迎える事と成りました。誰もが『勝負に成らない』という予想を遥かに超えて『勝負すら行われていない』というバトル史上類を見ない結末を誰が予想出来るか? そんな戦後歴代ワーストスリーに入る男で驚いてはいけない。次の試合では戦後歴代最悪の政治屋を目指して引退後も各方面に迷惑を掛ける男が入場する!
「はい、確か我が党どころか古巣であった民進党も--」
 だから貴方に聞いておりませんので黙っててくれますか、玉木氏?
「……」
 邪魔者が押し黙った所で例の鳩山由紀夫の入場であります。
「な、何だこいつは!」
「勇人も吐きそうに成ったか、あのイカレポンチを見て!」
「全くあのような人間が総理大臣に成るなんて日本の不幸ではないですか、小泉君?」
「細川さんも人の事は言えませんよ、はい」
「あーうーあーうー」
「大平さん、また故障ですか?」
 池田、佐藤、細川、小泉、大平、そして鈴木の反応通りに鳩山の入場は正に常軌を逸する。何よりも自らをローマの独裁官シーザーに見立てるかのように飾り物を頭に付けてほぼ裸の状態で現れるとは。更に信じられないのはやはり自らを紙だと勘違いしたように正中線より左右の色が全く異なる状態という事。右側は赤で左側は青というまるで保守と革新が手を繋ぎ合えると勘違いするように。
「ユアオールナッシング!」
 そして恐ろしいのはルーピー染みた英語から下着以外の全てが燃え尽くされて戦闘状態に成ったという事。これほどまでに不気味な入場がありますか!
「其れが鳩山由紀夫さんですよ。実況もこれから--」
 何、安住淳議員の言葉をパクっているのですか。いいから解説の玉木氏は黙ってて下さい!
「……」
 邪魔者が黙った所で早速ですが、あの男の入場。何というサイコパワーを放出しながらの入場でしょうか。しかも姿を現してすぐに次のような台詞と共に奇妙なポーズを取るではないか!
「ウィッシュ!」
 竹下登という男は何時如何なる事があろうとも場を和ませる事に全力であるか。正に田中角栄の懐刀にして角栄の良い部分だけを受け継ぎつつも孫にまで受け継がれる礼儀正しさとコメディ溢れる人物像は例えヤクザを相手にしようとも自らのサイコパワーを溜め込んでまでも耐え忍ぶ……下手な忍びよりも忍びに相応しい振る舞いであるか!
「竹下の野郎、又調子に乗ってやがるぜ。絶対にぶっ殺してやある!」
「落ち着け、角栄!」
「角さん、又竹下さんへの嫉妬がぶり帰している!」
「其処が竹下さんが角さんの不肖の弟子と呼ばれる所以なのかも知れないね」
 観客席で暴れる角栄を取り押さえる佐藤、橋本、小渕であった。
「この勝負、鳩山さんには--」
 いや、だから玉木は黙っててくれない。解説席に獣医師会の人間や元事務次官の人を呼んでも良いから会話に散会しないで欲しい!
「……」
 全く何の為に絶望、嫌希望の党の共同代表である彼を呼んだかわかりません。ですが、今はそのような事よりもそろそろBブロックの主審を務める二階俊博も右手を下げる準備が完了しました。後はこれが下がれば試合開始ですね。
「良いか、お前達。何があっても変な行動だけはするなよ」
 二階が懸念するのは鳩山由紀夫の方でしょう。確かに何をするか予想が付きませんからね……と話す内にもう右手は下がり、号令を叫び終わった余韻を残して両者走り出したああ!
「喰らえ、サイコクラッシャー!」
 出ました、竹下登の放つリクルート社への疑惑で積もりに積もった汚職は政治力に変換され、鳩山由紀夫に炸裂したああ!
「フウ、如何です……おや?」
 全画面にも掛けて行われたサイコクラッシャーを受けて鳩山は突然天に昇るかのように傷を癒してゆく。これはまるでリザレクションのようだ。其れからサイコクラッシャーで受けた傷がなかったかのように戦闘続行。右手で放つパイロキネシスと左手で放つクリオキネシスに依る射撃で竹下の繰り出すサイコクラッシャーを迎え撃つようだ。
「僕の素晴らしい力を何故誰も認めてくれない!」
「そりゃあそうでしょう、威一郎さんの子供よ。其れはな」竹下登は地上が駄目なら大気圏離脱してから一気に大気圏突入してからのヘッドプレスに依る踏み付けで鳩山の顔面を直撃!
「続けてサマーソルトスカイダイバーで終わりです……いや?」何と追撃のモンゴリアンチョップで鳩山を埋めた--
 いや、埋めた後でも油断しない竹下登は何とニープレスナイトメアで駄目押ししたああ!
「折角の復活が早過ぎたんですよ、鳩山さんは--」
 だから貴方に聞いてません!
「勝負あり!
 勝者……竹下登!」
 順当な勝利を前にして一部外野は何か呟いている模様。
「お前の所の孫は見せかけだけで中身が伴っておらんのう」
「孫ながらに……だが、褒めるべきでしょう。あの竹下を宇宙空間まで飛ばした力量を」
「竹下か、別ブロックとは言えども警戒する必要があるな」
「中曽根さん自ら彼を評価するのですかあ、其れは中々に」
 勝者竹下登。試合時間三分。決まり手はニープレスナイトメア!


 第陸話に登場した政治屋は鳩山由紀夫、竹下登、玉木雄一郎、二階俊博、池田勇人、佐藤栄作、細川護熙、小泉純一郎、大平正芳、鈴木善幸、田中角栄、橋本龍太郎、小渕恵三、吉田茂、鳩山一郎、中曽根康弘、宮澤喜一。
 第漆話『誰も期待しないだって! 野田佳彦VS羽田孜!』に続く……

 玉木雄一郎は特になしだが、鳩山由紀夫はスト3のギル、竹下登はベガ。

 それじゃあ今回はここまで。マジで次回の試合だけは誰も期待しない面々じゃねえか。まあどちらも政権交代後の非自民政権では他の二人が強烈過ぎた為に今一つ話題に成らない事で有名だからな。
プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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