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雑文特別編 一兆年の夜外伝丙話 おいらは彷徨う(後篇)

 どうもdarkvernuです。
 さあ、始める前に『格付けの旅』が土日合わせて百行以上更新したので読まれたい方はカテゴリ欄の<格付けの旅>または<青魔法の章>をクリックして下さい。
 それじゃあ早速始めよう。

 IC(イマジナリーセンチュリー)四年八月四十日午前六時五十七分五秒。

 場所は西物部大陸アリストテレス地方メデス村。
 齢二十三にして二の月と十九日目に成るテレス燕族の青年ヒュット・ヒッスイは空を飛ぶ。向かう場所は西地区で三番目に小さい藁家。
(日に日にソウスブの身体に強さが漲ろうとしない。怒りが予想以上にソウスブの肉体に強さを無くされようか。それであろうともソウスブは怒りを鎮めはしない。何がソウスブをそうまでされて駆り立てよう!)
 藁家に着くと、地面に足を着かせて中へ入る。そこには布団にくるまれて顔中皺だらけな齢二十一にして三の月と八日目に成るテレス牛族の青年うつ伏せの状態で目を閉じる。ヒュットはその青年ソウスブを起こす。
「おはよう、ソウスブ。今日は快晴の日であろうぞ」
「またお前かう」
「挨拶くらいされとうならどうであろうか?」
「みんな何もわかってくっべん! あいつらに言葉は通じってう!」
「気持ちはわかろうけど、いくら村を食らった者達に対されようも怒りを抱きすぎよう」
「許しちゃいけう……ググウ!」
 ソウスブは一の年以上も怒りを溜め込み、肉体の全機能が激しく熱する。その影響もあって、皺は至る所に点在し、呼吸も荒い。呼吸が荒いという事は上手く喋る事も出来ない。
「無茶するでなかろうて! このまま怒りを溜め込まれようなら--」
「もう無理う。おいらはもうすぐ死ぬう」
「まだ若いであろう、俺と同じく」
「それでもう……グウウウッグ!」
 怒りを溜め込んだ影響で内臓機能にも至る所で機能不全に陥るソウスブ。
 もう生きられなっかう--ソウスブは自らの運命を受け入れる。
「テレス村を食らおうた生命を食らうモノはいずれ分かり合おうると信じなかろうて!」
「それは良くないっかう! 得体の知れないモノ達はおいらの全てを食らったう! あの話を聞いてもまだわからっだう!」
 一の年より前に聞かされたテレス村の事件はヒュットが帰るべき故郷が無くなるほどの衝撃だった。けれども、ヒュットは怒りを抱くほど恐れていない。その為、一の年経とうともソウスブと隔たりを感じる。
 それでもソウスブは生命不振に陥る中で唯一話し相手に成ってくれたヒュットには全てをぶつける。
「得体の知れないモノ達は必ず生かすんな! 必ず生かすんな! あいつらはおいらの全とを奪ったう!
 生かすばおいら達は全てを食う尽くせるてしまう……んだう!」
 それを最後にソウスブは大量の唾液をヒュットの顔に掛け、そのまま垂れた顔で息もしなくなる。ヒュットは急いで村一番の医者の所に飛んで行くが……事既に遅かった。

 二日後のある快晴の空でヒュットはソウスブの死を間近で思い知る事である考えが浮かび上がる。
(ソウスブがあそこまで怒りに身を任そうのは何故か? 俺は二日以上掛けようにもこれしか思い浮かぼうか。
 彼等と同じ方法でしか対話の道は無いのではなかろうか?
 それらを実行した所で何に成ろう? 血で穢れを纏うのは全生命にとって何の利益に成ろうか? もう空高く飛んでも気が晴れようか。それなら学問に励んだ方があいつの死を少しでも立ち直れるのでなかろうか?)
 ソウスブの死を切欠にヒュット・ヒッスイは道を模索するという名目で学問に熱が入る。その後、彼はプラトー村に移住する。そこでソウスブの体験した悲劇を思い知る事に成った……彼もまた怒りを内側に溜め込む運命にあるのかも知れない。


 とまあこんな感じでソウスブのその後は終わります。消化不良な部分が山程ありますが、これ以上引っ張っても仕方ない。そろそろが遺伝を一端一区切りする準備に入らないといけないので。来週は一兆年の夜恒例のICに関するお話だよ。イリュージョンは如何にしてイマジナリーに変化するのかが明らかに成ってゆくぜ。
 さあ、解説はここで終わり……全然解説じゃないけど。

 そろそろ二周年だな。来週は雑文特別編を長々とやって終りにするか。やる気があったら同時に何時もの雑文で試作品を一つ書いてやろうじゃないか。タイトルはまだ決めてないが、烏に関する話だよ。
 それじゃあ今日はここまで。時間があるから誰も読んでなさそうな物を少し更新しとくか。

雑文特別編 一兆年の夜外伝丙話 おいらは彷徨う(前篇)

 どうも最近は日曜だけ怠惰に成ったdarkvernuです。
 早速いきましょう。

 IC(イマジナリーセンチュリー)四年五月三十六日午後七時二分四秒。

 場所は西物部大陸アリストテレス地方メデス村。
 齢二十二にして二の月と十二日目に成るテレス燕族のやんちゃ青年は空を飛ぶ。
(今日は快晴行き渡ろう日だなあ。このままこの日が続こうように)
 学問の道を志すものの、余りの辛さに度々外へ出ては神々より上空を旋回して回る。彼の名前はヒュット・ヒッスイ……未だ青さの目立つ燕。その若き燕は向上心に乏しいだけじゃなく、現実に対しても乏しい。恐るべきモノが水の惑星に恐怖を蔓延し続けても彼には何が恐ろしいのかさえわからない。故に学問を志す心は薄く、翼が詰まったら晴天の空を飛んで自らの青春を楽しむ。
 そんな彼はある牛が村に入って行くのを目撃。齢二十歳にして三の月と一日目に成るテレス牛族の青年が影を帯びた表情でなおかつ二日以上も何一つ食べない状態でここへ入るのを。
(牛族で俺と年が変わりようない奴でろう。声を掛けてみよう)
 オーイ--ヒュットは青年に声を掛ける。
 だが、青年は無視。それでもヒュットは「オーイ、君は誰だろうかな?」と再度声を掛ける。青年は無視。更にヒュットは「無視は良くなかろう。年も近そうだし、何か反応を送れい」と三度目も声を掛ける。けれども青年は無視し続ける。
(あいつめ。三回も無視されると何か頭に来られよう。俺が怠け者だからか? 神々の上を礼儀も無しに飛ぼうせいか? 傷付かろう)
 そうゆう所だけ諦めの良くないヒュットは何度も青年に声を掛ける。村に来てから何の目的もなく彷徨ってばかりの青年に対する苛立ちと重ね合わせるように心配する気持ちから。それでも青年はひたすら無視。終いにはヒュットを避けるように牛族の図体で飛んで通るには少し狭い道を行くように。
(そう来ようか! 陸の種族に有利な道を行こうならこっちは空の種族に有利な近道で対抗しちゃろう!)
 ヒュットと牛族の青年は自らを懸けて下らない競争を繰り広げるものの……ついには決着を付ける。牛族の青年が空腹から来る疲労で気を喪失した事によって。
 それから三の日が経つ。牛族の青年はヒュットが暮らす宿の二階にあるヒュットの部屋で目を覚ます。目覚めて早々にヒュットからお粥を口に放り込まれる。
 な、何すんだう--それが最初の一言。
「ようやくだろうな」
「よくんもおいらを!」
「名前を教えろ、俺はテレス村出身の燕族であろうヒュット・ヒッスイ」
「おいらは……おいらはその村の住民で名前をソウスブ・ブルホルと呼ぶう」
「ソウスブでろうか。宜しくのう」
 宜しくなう--ソウスブは突然激昂する!
「そう、そおれ! ど、どうしたろう?」
「わからなかうか? 食われたんだう、テレス村がう!」
 何だって--ヒュットはそれを聞かされ、波長の小さい反応しか出来ない。
「良いっか、おいら以外がみんな食われたんだう!」
 ヒュットはこの後、ソウスブからテレス村がどのように変わったのかを聞かされる事に……

 続く……


 という訳で今回も前後編に成りました。後篇は来週に成りますので気長に……

 そんじゃあ恒例の予定表をどうぞ

 予定日不明    第五十三話 再誕の火 真正神武最後の最高官 作成日間
            第五十四話 再誕の火 男女は運命に導かれて 作成日間
            第五十五話 再誕の火 火は日を呼び寄せる   作成日間
            第五十六話 再誕の火 再誕の灯火        作成日間

 一ヶ月に一回は載せるけど、自分自身でさえどのように初め、どのように終わらすのかを忘れてる気がする。その時に成ってみないとわかんないけど。その為に外伝を急遽書く事に成った。一兆年の夜がどんな物語なのかを思い出す為にね。
 そうゆう事で今回はこれまで。来週こそ格付けの旅を書くぞ。

雑文特別編 一兆年の夜外伝丙話 配達事業ここに誕生す(後篇)

 どうもdarkvernuです。
 早速ですが、後篇に参りたいと思います。

 呼び出された十名は一斉に満足げでない眼差しをハル朗に向ける。
「だから言っただろう! 出来もしないことを自信満々に頼むな! と!」
「出来るさーあ。だーが、こんなに多くなるとは思えないからーあ」
「それでは言い訳です! 前もってある程度は出来ると宣言して! この程度まで来ると出来ないと宣言するべきなのに!」
「御免御免ーん。だってハニーに言われたら自信が沸いてつい調子に乗っちゃうじゃーん」
「私のせいにしないーの、ハル朗君ーん。でないとぷんぷんしちゃーう」
「はーあ、だからハル朗はダラしなくなるーの」
「兄さーん、本題に入りましょーう」
 ハル助は野次が飛び交う中で淡々と共同作業について説明する。ハル朗は調子に乗って遠方にも手紙を届ける仕事を引き受けた。遠方宛は全部で七枚。どれも方角が大きく異なる。当然、一名では達成するには一ヶ月以上掛かる。それだけ時間を掛けるという事は即ち、依頼者の満足出来ない部分を高める事に繋がる。そうして食事中にハル朗はハル助との日常会話の中で意見を交わし合う。その結果、残り五十七枚を知り合い十名と翼を取り合って送る事を決定する。
「勝手に決められようか、フン!」
「困られるねえ。僕ちんは雌達とのデートがたんまりあられるんだよう。そう成ると僕ちんが振られるんじゃないかと--」
「バショモワカラナイノニカッテニキメテクレルトハ!」
「マアマア、マンゾクデキナイコトハタタアリマスヨ」
「心配無用でーす。送り先はちゃんと紙に書いときましたよーお」
 ハル助はこんな事もあろうかと昨日までに五十七枚の送り先を紙に書き留める。そのせいか、ハル助の目に隈が出来る。
「鳥の癖に翼先が器用だ!」
「あなたも鳥よ! 長時間飛行出来ないけど!」
 シュリッツは紙に書かれた宛先に目を向けながら賛同する事を十一名に告げる。
「シュリッツが賛同しようなら僕ちんも賛同されようかな? いや、雌達が僕ちんを慕われてるしなあ。どうされようか--」
「フン、シュリッツの演説で俺のやる気が出られてしまおうかあ!」
「どうやら皆さんの纏め役はシュリッツで有られるな」
「有難うーう、シュリッツーう。お前を呼び出して良かったーあ」
「ハル朗君ーん、今度から自分の出来る範囲しか宣言してはいけないのですよーお」
 うーん、そうすーる--ハル朗によって『口は良からぬ元』という諺が出来た。
「それじゃあ五十七枚中最低四枚は配らないといけなーい。だけーど、呼び出した僕と兄さんは六枚出すとして残り五枚をどうするーか?」
 えーえ、俺が六枚ーい--自分は五枚だと思ってたハル朗。
「事の発端は兄さんが出来もしない量を出来ると言ったせいでーす。責任者として兄さんは六枚ーい。兄さんの案を受け入ーれ、皆さんを呼び出したぼくも六枚ーい。それが普通でしょーう」
「でも、私達十名の内半分は五枚。私が引き受けるとされても残り四枚を誰が引き受けよう?」
 デュー一だけでなく、シュリッツも引き受ける。だが、八名は一行に翼を挙げない。よって仙者抜きで決める事に。
 それから三十の分より後……五枚を引き受ける三名は臨兵兄弟と陽に決まった。
「よおーし、これより柊ハル朗配達事業は開始ーい!」
 また調子に乗っちゃってーえ--なおハル朗の恋者の名前は遠すぎる過去に於いても明らかに成っていない。

 ハル朗の提案で始まった一回限りの配達事業。一週間掛けて全ての手紙を十二名が手分けして配り終えた……はずだったが!
「何故ーえ! 百五枚に増えてーる! 折角一週間も掛けたというのに手紙を貰うんじゃないーぞ!」
「だってし勝たないでしょーう、ハル朗くーん」
「こうして手紙を渡したというのに貰わないなんて神様にも送った生命にも申し訳ないでしょーう」
「それは困ーる。神様は何時だって俺達を見てるしねーえ」
「どうしよーう、兄さーん。百五枚じゃあ今の要員じゃあ一週間で届けられなーい」
「仕方なーい。配達事業は又続けよーう。それから協力者を更に増やそーう」
 二回目も三回目も……ずっと続き、気が付くと村長邸のすぐ近くにある建物で配達本部が誕生。そこで百名以上の配達員が日夜手紙を送る仕事に専念。なお配達本部が作られたのはハル朗ハル助兄弟が十名を呼び出して八の日より後だった……
「あーれ? 何時から俺はこんな面倒な物を天職にしてるんだーあ?」


 とまあこんな感じに配達事業誕生秘話はここに幕を閉じる。別に遠すぎる過去だけじゃありません。あらゆる世の中では趣味で始めた物が気が付くと一生懸けて取り組む仕事に成るなんて事は良くある話だよ。それじゃあ次回は第四話の主人公ソウスブのこの後のお話をほんの少しだけ紹介する話で御座います。まあ、碌な終り方はしないとは思いますがね。
 以上で解説を終えるぜ。

 マクドナルドショックは相当食品業界に大きな痛手を被るな。笑い事じゃないけど、マクドナルドはトップが不誠実な人間だったのであそこまで落ちたのだと自分は思う。誠実な人間なら舐めたような会見を行わずにしっかりと受け止め、再発防止に取り組むのが普通なのに……雪印事件から全く学んでない証拠だな。
 以上で今日はここまで。眠いから寝るぜ、五分間だけ。

雑文特別編 一兆年の夜外伝丙話 配達事業はここに誕生す(前篇)

 どうも寝坊癖が付いた自分darkvernuです。
 早速ですが、外伝を始めます。

 IC(イマジナリーセンチュリー)三年五月百日午前八時二分五秒。

 場所は西物部大陸ユークリッド地方エウク村村長邸。
 齢二十八にして五の月と五日目に成る馬か鹿かわからないエウク鳩族の青年。青年は朝目覚めて早速--
「クソーオ、まだ手紙出さなきゃいけねえかーよ!」
 彼の名前は柊ハル朗……五十七名以上もの子供を作った柊ハル熹の第二子。だが、ハル熹から言わせれば何をやってもだらしなく、それでいて贅沢を求める馬か鹿かわからない息子との事。彼が唯一やる気を出すのが手紙の配達。だが--
「後五十八枚も出さなくちゃいけなーい。しかも中には大陸と大陸をまたいで渡さなくちゃいけないもんまでーえ!」
 事の発端は恋者から『まあ素敵ーい!』と誉められて調子に乗ったせい。ハル朗はこんな事を言ったそうな……
『俺にかかれば百枚だって千枚だって楽勝だーあ!』
 気が付くと一日平均三十二枚もの手紙が送られる事に。
「いくら俺でも一日で達成出来るのは十枚程度だよーお。更に距離が遠いだけ余計に時間がかかって最近では一日二ーい、三枚しか送れなーい!」
 そんなに頼むからいけないんだーよ、兄さーん--そこへ齢二十五にして三の月と一日目に成るハル熹の第二十八子ハル助が部屋に入る。
「ハル助かーあ。また俺を馬か鹿のように見るかーあ!」
「見ないよーお、兄さーん。それよりも着替えを済ませて朝食を摂ろうよーお」
 了解したーあ--意外に乗りの良いハル朗。

 午前九時一分七秒。
 ハル朗とハル助は友者と恋者を合わせて十名を邸に集めた。その中にはきっかけを作ったハル朗の恋者で齢二十七にして十の月と二十九日目に成るセネカ鳩族の女性も居た。
「鳩族だけかと思ったのにわしまで呼びよせて何の会議だ! ハル助!」
 齢二十六にして三十日目に成るゼノン雉族の青年鉦晋郎(しょうしんろう)は満足いかない様子。
「まあまあ晋朗さん! ここは! ハル助君とハル朗先輩の言い訳でも聞きましょう!」
 齢二十七にして二十八日目に成るゼノン雉族で晋朗の妻雪塔(ゆきとう)は気遣いなしな喋り方で晋朗を宥める。
「ロクナコトジャナカッタラソッコウデカエルヨ!」
 齢二十二にして三の月と五日目に成るアデス九官族の臨兵(りんぴょう)キュー零は帰りたい気分。
「マアマア、アニジャ。ココハガマンシテイイワケデモキコウカ」
 キュー零の双子の弟キュー限はキュー零の我儘に付き合わされてる様子。
「これだけ集められたのだ。きっと重大な事に違いあろうか?」
 齢三十に成ったばかりの最年長であるエウク燕族の中年木戸デュー一は期待しながら待つ。
「フン、どうせ駄々捏ねよう話に終わるであろう」
 齢二十八にして九の月と十四日目に成るラテス燕族の青年は鳥族式の屈伸しか興味がない。
「何か言いたそうだろうね? ひょっとして言いたそう気分? シュリッツも相変わらずだんまりだろうね。この僕ちんは--」
「お前は黙れーえ、陽ーう!」
 最年少で齢二十一にして十一の月と二十二日目に成るタレス燕族の青年と齢二十三にして三日目に成るゼノン燕族の青年は口数が対照的だ。それから齢二十五にして三の月と二日目に成るラテス鳩族の女性フルー・ポーリアはハル助の恋者。
「まあまあフルーちゃーん。ここはハル朗さんの話でも期待しましょーう」
 三分後……彼らの前に現れたのは呼び出した二名。ハル朗は十名の前に、ハル助は後ろに立つ。
「お待たせしたかーあ?」その一言で一部が野次を飛ばす。それを無視するかのようにハル朗は言いたい事を言った。「よくないけーど、残り五十七枚を配るにはお前らの力が必要だーあ」

 続く……


 済まないが、後篇を作る事に成った。とにかく今回から主人公は人族以外に成りました。しかもやりたかった配達事業に関するお話。後篇は来週までお待たせを……以上で特別編を終えたいと思います。

 さあ新年早々の時事ネタ……はまだないと思うし、別に良いか。
 そうゆうわけで今日はここまで。さあ、忙しい忙しい!

格付けの旅 少年デュアンの憂鬱 別れは突然訪れる

 師匠……それは弟子にとって邪魔な存在。弟子は師匠を越えるのはどうしてか? それは師匠という邪魔な存在と一生付き合うのを避ける為に越えなくては成らない。只、時間だけ過ぎても師匠は弟子から離れない。弟子は師匠から離れるには師匠以上の力を身に付ける必要がある。だが、独学で師匠を越えられない。どうするか? 師匠から技や術を盗んでしまえば良い。但し、盗んでも物に出来ないと只のパクリでしかない。師匠越えを果たすには盗んだ技術を自らのオリジナルへと昇華させなくては成らない。だが、その道は険しい。
 とまあこのように俺はクラリッサ・ロロリアーナにボロ負けして以降はあの女の雑用からしたくもないマラソンやバーベル担ぎなどのビルダーがやりそうな修行までやらされる毎日。『基礎練習』程抜ける口実の見つからない物はない。今までの格付けだとハードな修行ではなく、一般的で当たり前な修行を課すのだと俺は判断したが……見誤った! おっとあれを説明しないといけない。
 基礎練習……それは卒業が不可能な一個でも抜いてはいけない当たり前の練習。基礎とは人間の……いや、全ての生命が必ず付けなくては成らない物。そんな物を一個でも抜かそうならそいつは不安定で存外脆い物。主な基礎練習とはランニング、腕立て伏せ、腹筋、ラジオ体操……他には天気予報を毎日確認。今日の運勢を欠かさず確かめる事で精神の安定を図る。後は作文。基礎練習は調べ上げたらたくさん出る。そんな物を少しでも抜かして見ろ……取り返すのは大変に成るぞ!
 こんな風に俺は毎日十キロを全力で走らされる。但し、必ず一時間よりも一分以上も速かったり遅かったりしては成らない。破ればペナルティとしてまた十キロ走らされる。あの女め……出来ない事を課しやがって!
 俺はあまりに速く到着する為、計十三回目の仕切り直しのマラソンをさせられる。何故あの女が俺に時間通り到着するようにマラソンを課すのか? 詠唱法と関係するだろうと俺は考えるのだが……寧ろ俺の推測を先に紹介しよう。
 マラソンは人間の、いや動物が行わなければいけない基礎練習。マラソンはランニングを更にハードにした基礎練習。テンポ悪い説明だが、続ける。マラソンは持久力を上げてなおかつ根気を強く長く伸す為の修行法。持久力を上げるのが理由というのは誰でもわかる解答。だが、根気を強く長く伸すという解答はスポーツ馬鹿でもわかってないのが多い。根気というのは一つの事に一年、二年、一生続けるかなどに深く関わる気力の事。根気がなければ信念は磨かれないし、根気がなければ執念という物は形成されない。根気は人間が人間たる物を気付く上で重要な事柄……努々忘れぬように。
 何て誰に向かって語りかけるのかわからない俺だが、昔からそうゆう気質なので今更変えられない。では話の続きだ。マラソンが詠唱法と関係する理由……それはあくまで俺の推測でしかないが、魔法を一つ唱えるだけでも神経を大きくすり減らす。神経をすり減らすという事は体力を大きく消費する事を意味する。それを防ぐべくマナという代替物が消費される。協力であったり、範囲が広かったりするなら更にマナを消費。当然、華奢な人間は体力が減るのを避ける為に膨大なマナを無駄に消費する。当然、使えば息切れは避けられない。その為、魔術師はランニングを欠かしては成らない。よってマラソンは詠唱する上で重要。
 次にあの女が俺に時間通り十キロ完走させるように勧めるのは……俺の詠唱法にある欠点を発見したからだと推測。俺は言わば零秒で詠唱する。という事は内容も無茶苦茶で纏まりが欠ける。その結果、威力はあるのに力の安定が疎かな魔法が放たれる。そこに着眼したあいつは俺に時間通り十キロ完走させるように課した訳だ。早とちりをさせずに時間通り到着させるのは時間通り詠唱するように俺へと課し、魔法の威力を安定させるのが目的だろう。
 相変らず思考だけは休まないね、デュアン--箒にまたがって俺と並走する例の魔道師さんだ。
「もう日が暮れたぞ! 何時まで俺をは知らせるんだ、クラリッサ!」
「お前が詠唱法の何たるかをわからせるまでよ」
「時間通りでは相手に先手を取られる」
「それがいけないのよ、デュアン……お前は大技に頼りすぎて小技を使う事を避けてるわ」
「敵は一撃で倒さないと意味ないだろ?」
「でもその一撃を使うには膨大なマナが必要。だからこそあなたには基礎を叩き込むのよ」
「箒にまたがって空飛んでる方もマナを大量に消費してるんじゃないか?」
「残念だけどあたしは太腿にしかマナを集中してないわ。手を使うのは言わばバランスを取る為よ」
「消費量はどうだ? 俺の見立てでは下級魔法並だろ?」
「それは見習い魔術師レベルの話?」
「チイ、ばれたか!」
「フフフ、お前って面白いのね。益々課したくなるわ」
 十四回目でようやく時間通り完走出来た。朝食は一口も摂ってない。水は少しずつ摂るのは良いが、少なすぎる。とにかくそこで一日は終わる。何一つ食べ物を口にせず、寝込んでしまったのでな。

 俺は暇さえあればクラリッサから書物を渡される。それらは全てあいつが学院時代に学んだ物だ。中には何を書かれてるのかわからない物さえ読まされる。そうゆう場合は高等魔術師で古文専門の先生方に頭を下げて解読させてやったまでさ。そうして放課後に成ると俺はあの女の修行を受ける羽目に。全く俺にバーベル担ぎとか山登りとか……俺は魔術師デュアン様だぞ。ビルダーになる気はちっとも無いぞ!
 就寝時間は十時と変わりはしない……けれども俺はこっそり抜けてあいつの弱点とやらを粗探しする。扱きの復讐は少しはしておかないと気が済まん。それにあいつは俺より三つも年上で大人じゃない。十六なんて立派な少女だ。だからあいつは少女らしく未熟な部分を探ろうと俺は考える。
 あいつの寝室は……いくら『マジカルロック』を掛けようとも俺は凍死する魔法にも詳しい為、留守であるのはバレバレさ。
 マジカルロック……それは魔法で錠を掛ける魔法。これにより見えない鍵で扉が閉まる仕組みさ。解除するには本人の魔法で鍵を解くか、解錠魔法で解くしかない。中には本人の魔法でも解けず、独特の『属性コード』で鍵を掛けるマジカルロックもある。その場合は正しい属性を組み合わせないと開かないように成るのさ。
 属性コード……それは魔法を放つ際に使われる属性を暗号として使用するコードの事。別に魔法を放つ際に属性コードが使われてない訳じゃない。詠唱する言葉は属性コードを填め込む為の物。よって属性コードは魔法を放つのに重要。
 と解説してる場合じゃない。あいつが居ないのならどうするか……無断であいつの部屋に入る。どうやら属性コードのようだが、結属性のあいつだからこことあれとそれで……解除可能。俺が毎日侵入してる事への対処だが、癖を格付けされてるぞ。全く……で、部屋中にある罠に掛かる俺じゃない。俺に掛かればこれくらい読めるんだよ……アナライズに優れてるからさ。
 ええっと、あいつは女の子らしくぬいぐるみとか飾ってるのはわかる。日記帳は……読む気はない。何度か侵入したけど、これだけはあいつの為に読まないようにしてる。そこまで俺は他人に踏み込む気はない。兎に角ある程度の弱みは握っておこう。これで少しは扱きは楽に成る。さて……何処に行ったかな? 日記を読めばわかるんだろうが、何度も念を押すが……止めよう。
 さて、と。サーチ魔法で調べてみよう……何、俺が毎日訪れるあの崖に居るだと? フウ、行ってみるか。俺は指紋などを拭き取って、同様の属性コードで鍵を閉める。さて、行こうか。

 あら、来たわね覗き魔さん--クラリッサはやはり居た。
「真っ二つに割れた月を眺めて何をしてる?」
「就寝時間よ、デュアン」
「断る、俺は他の連中とは違う。何れあの月を消滅させるんだ」
「お前は知ってるの、あれが真っ二つに成った理由を?」
「ある剣士がここを訪れた。正直どんな種族かわからないが、少なくとも異邦人である事はわかった。あいつは俺に見せたんだ……月を真っ二つにする事を」
「お前も月が二つに割れるのを目撃したのか」
「ええ、あれはあたしに衝撃を与えた。こんな腐った世界に一筋の光を差し込むように」
 その言葉に俺は引っ掛かりを覚えた。クラリッサは何を始めようとしてるのかを……だが、そこで俺達の会話は通常に引き戻された。真相は更に数日経った後でしか知る由もない。

 クラリッサに無理矢理弟子にされて一週間が経つ。中等部のある屋上で俺はクラリッサに渡された書物に目を通す。あいつに渡されるのは何時も歴史上の登場人物--有名な魔道師--に関する物。何でもそいつらを知れば魔法が上手くなるなんてあいつは考えての事だろうか? 火属性を極めたモーノン・リース(547-601)や歴史上初めてのジェネラリストであるマーリン・ドーレス(1220-1310)何かを知っても俺の魔法が上手くなるとは思えないけどな。ついでの今の年号を教えておこう……全く誰に向かって解説してるんだ、俺は? 今の年号はMC2060年のアクエリアス五日目。
 そんな事よりもどうしてラキが紙パックの牛乳を飲みながら俺を疑うような眼で見つめるのか? 俺は少し尋ねてみた。
「牛乳は美味いのか?」
「質問の内容が違うように思えるけど、デイズ人?」
「質問に質問で返すな。俺は牛乳の味について聞いてるのに」
「へえ、巨乳の魔道師先生からの修行を受けて鼻の下を伸すあなたがよく卑猥な事言えるわね」
「卑猥か? それになんだ、巨乳って?」
「クラリッサ教授の事ですわ。だって彼女はスタイル良いんですもの。中等部の間では人気が高いのですよ」
「そりゃ初耳だ」
「あら意外。あなたってそこには格付けしないんだね」
「全ての事柄に格付け出来るほど俺は万能じゃねえんだよ」
「それでクラリッサ教授とどれくらい仲が良いんですの?」
 まさか……俺はあの現場を目撃したのかラキに尋ねてみる。「三日前の深夜に俺とクラリッサ以外にお前も居たのか?」
「さあ?」
「俺が就寝時間に眠らないでクラリッサの後を付いていき、あの真っ二つに割れた月が眺めやすい場所であいつと会話してる所にお前は盗み聞きしたな?」
「へえ、二人っきりで?」
「何だ、知ってると思ったが……俺の勘違いだったな」
「そこまで関係を深めるのね。あーあ、デュアンったら余程胸の大きい人が大好きなのね」
「だから何の話をしてるんだ? それにクラリッサがいくら85センチメートルの胸囲でも--」
「え! そこまで測ったの、変態ね!」
「その眼差しは何だ? 俺は何か碌でもない--」
 見損なったわ、デュアン--右平手打ちを俺の左頬に与えたラキは怒りの赤い表情で去ってゆく!
 ったく鞭で叩かれる痛みは好きじゃねえんだよ。まだ響くぞ、これ。にしたってあいつが呼称を俺の名前で呼びながら去ってゆくのは初めて見たぞ。あいつとそんなに仲良かったか? まあ良いか……女なんてどいつもこいつも--
「あら、ガールフレンドを怒らせるなんてよっぽど酷い事を言ったのね」
 すれ違うようにスパルタ女が出て来やがって。「何の用だ、クラリッサ」
「何、デートよ」
「昼休みはもうすぐ終わるってのにデートする暇はないだろ」
「失礼……放課後ここに来てね。その時にデートしてあげるわ」
 それを伝えたらクラリッサの奴は去ってゆく。付き合いはもう一週間だろ? 何を考えてるのか俺でもわからない。只わかるのは……あいつはこの学園を潰そうとしてる事。

 放課後の午後六時だったか? 待ち合わせ場所である中等部の屋上にやってくる俺。クラリッサは待ってた。
「来たわね、早速デートするわよ」
「風紀委員の仕事か?」
「正解……魔道学園には革命を起こそうとする人間が山ほど居る。そういった連中は早々に片付けないと事態は最悪に繋がる」
「弟子である俺としてはクラリッサ先生の活躍を見届けないとね」
「それじゃあさっきの彼女にまた嫉妬されちゃうかも?」
「ああ、あれの事? あれは怒ってるんじゃないのか?」
「格付け出来る癖に鈍いのね、デュアンったら」
「残念ながら女心は永遠にわからん」
「あら残念……じゃあ、行こう」
 俺はクラリッサと共に小等部、中等部、高等部、大等部の校舎を回る。すると、大等部のサークルである『マルクス真理教』の一室で事件は起こる。
「聞いたわよ、『マルクス真理教』の計六名さん?」
「てめえはクラリッサ!」
「クラリッサ教授と呼びなさい、下郎!」
 マルクス真理教……それは暴力革命を掲げる魔導共産主義思想に染められたサークル。大等部で活動をするサークルではスリーカラー同盟やハッピーの科学等と並んで危険サークル指定される。彼等の活動は主に同志を集めて魔導共産主義思想を密室で説く物。その内容は極めて異常であらゆる古い物を悪と認識し、それらを破壊する為なら何をやっても良いという物。故に彼等絡みの事件は一週間で一、二件のペースで発生。今日、クラリッサは抹消を決定。
「--呼ぶか、俺達より若造の癖して……ブリリアントスパーク!」なお、彼等の魔法は全て名称が違う。雷系威力重視の中級魔法サンダーハープンもださい名称と成る。「何、弾かれた……ウワアアア!」
「ボックラー!」「何なんだ、見えないバリアは!」「--ならば俺の必殺技であるデストロツキストで!」怯えてるな、こいつら。
「--既にリフレクターは発動済みよ……ブラッディパーティー!」
 範囲重視の闇系中級魔法で十五人居たメンバーは全員闇の血潮で肉の塊と成った。やはりリフレクターは厄介だ。あの女は戦う前にこれを纏うから攻略が難しい。
「これでマルクス真理教も暫くは活動出来ないでしょうね」
「寧ろ滅んだのではないか? ここまで徹底すれば反抗する気も失せるだろうに」
「どうかしら? あたしとしては残党狩りも含めて学園に潜む危険分子は排除しておかないといけないわ」
「それでしたいはどう片付ける?」
「--下がってて、デュアン。この教室ごと葬れば良いだけの話」
 クラリッサの奴は超級魔法を唱え始めた。俺はあいつの言う通り、教室の外に出た。
 出でよ……ブラックホールクラスター--重系で空間ごと破壊するとは!

 その後も立て続けに悪の始末をするクラリッサ--全部で十七件だからもう深夜の零時を過ぎた。
 皆、雑魚の集まりである以上は大した脅威でもなかった。俺が寧ろ脅威だと思ったのはクラリッサの力。三日……正確には四日前に呟いたあの言葉が正しければ近々始末しないと大変な事件に発展する。
 何て事を俺が思っても仕方ないな。俺達二人は帰路に着こうとして……ここは俺達が戦ったあの高等部の運動部専用のグラウンド。
「帰るんじゃないのか?」
「ええ、帰るわ。その前にお前には頼みたい事があるの」
「部屋に入るなという頼みは聞かない」
「そっちじゃない。あたしが言いたいのは」クラリッサはとんでもない事を口にする。「一緒に魔導学園を潰しましょう」
 やはり俺の格付けは正しかった。こいつは『ユミル選民思想』の信徒だったか!
 ユミル選民思想……それは優秀なユミル人はその他ユミル人及び他の人種の頂点に立つという歪んだ思想。彼等はユミル人の中で特に過激な選民意識を持つ。例え同じユミル人でも劣っているとわかれば生死を問わない。実はこうゆう思想は惑星ディーに於いては数千年と続いており、それが切っ掛けでビスマルクで実権を握った労働党こと通称アードルフはユミル人迫害を推進する一方でユミル選民思想を実践……その結果、多くのユミル人が大量に収容所生活を強いられ、中には劣悪環境とガス事故によってゴミのように死体が出来た。ちなみにこれはホロコーストの別説を元に俺なりに分析した事実なので真実は闇の中。
「あら、どうしてあたしがお前に告げるかって? お前は確かに劣等種族デイズ人よ。でも同時に選ばれた人間でもある。選ばれた人間を同志に招き入れないでどうするの?」
「さっき風紀を守ってきたんだぞ。なのにこんなのはどう考えても風紀を乱すだろ?」
「そんなのは老害共への口実。こんな歪んだ世界であたしは息を吸う事さえ苦しいの。どうして劣った人間と肩を並べなければならないの? どうして魔術師なんて意味のない物があるの? 小さい頃からずっと悩んでたのよ、どいつもこいつもあたしよりも劣る癖に偉そうで」
「餓鬼の思考だろ、そりゃあ」
「お前もその内の一人でしょ?」
「だろうけど、だからって魔導学園を潰そうなんてどうかしてるぞ」
「お前は魔導学園の実態を知らなさすぎる。あの学園こそマギの真実をひた隠しにし、大魔道師を抹殺し続けるのよ!」
「大魔道師? マーリンか?」
「そっちではない。あたしの言う大魔道師は」眼鏡を外すクラリッサ。その目に聖痕が刻まれる時、月は真っ赤に染まる。「あたしの中に居る『私』なのだよ、デュアン」
「成程、『多重人格者』か」
 多重人格者……それは複数の人格を持つ個人を指す。普段は大人しい人だが、一方では血に飢える。それならまだ良い。問題はある時は優秀な教師をしていて、裏の仕事では売春の斡旋をして、更に別の場所では人間の臓器をコレクションするというような人間なら社会にとって大問題であろう。
「私は彼女が産まれた時から力を与え、月が真っ二つに成ると同時に彼女の人格を蝕み始めた」
「どうゆう意味だ?」
「あの月こそ私を封印するのだ。私という偉大なユミル人をあの月が封印した……一万二千もの時を掛けて!」
「つまりお前は神話時代の人物という訳だな」
「神話ではない! 私は何度も転生を繰り返してその度に彼等へ力を与えてきた! 全ては偉大なるユミル人の為に!」
「それじゃあ封印されて当然だろ?」
「黙れ! 封印したのが優良種なら納得もいこう。だが、私よりも劣ったユミル人数人掛かりで封印されればこれほどの屈辱も他にない!」
「だからって一人の無垢な人間の身体を乗っ取る都合には成らないはずだが?」
「彼女は拒んではない。現に意志を委ねた。その意味は即ち、彼女は魔導学園に迫害されていた! この世界に迫害された! その意味を理解しろ、お前だってこの世界に迫害されてる癖して!」
「迫害ねえ」俺に笑みが溢れる。「だからどうした? 居場所がないなら見つけるもんだろう」
 何だと--やけに驚いた顔をしやがって。
「わざわざ潰す意味がわからん。お前は単に認められたいだけだろ、周りに? だったら断言しよう……お前は何処へ行っても居場所は見つからん!」
 それを言われたクラリッサの中に潜むマーリンは彼女の体を操作してただでさえ大きな口をさらに広げて笑みを浮かべる。まるで『口裂け女』のようだ……あまりにも不気味すぎる口は本当にクラリッサの肉体なのか?
 口裂け女……それはアマテラスの国で囁かれる都市伝説。口裂け女は刃物か何かで不気味に口を大きくした女。彼女は刃物を持ち、遭遇した者達に殺傷する。何故そうするのか? 恨みの為、それとも同朋が欲しい為? いずれにせよ考察の必要がある。
 というか俺に都市伝説を語っても仕方ないだろう。今はマーリンとどう対峙するか? いや、話を戻そう。
 マーリンは表情のみならず、声を張り上げて笑い始めるではないか! 鼓膜に響くくらいの声だ。しかも重低音からして女の声じゃない。どうやら浸食してるようだな。マーリンが完全に乗っ取るのはおそらく一時間後……それまでに俺はこいつを仕留める必要があるな。
「救いたいか、クラリッサを?」
「そんなのは幻想だ、マーリン。ただ」俺に情が移るなんて今でも認めないが、これだけは正直感情を露にしたかな? 俺が大人を気取る餓鬼だからか? 俺はこんな事を口にしたなあ。「俺のような奴でも他人のために怒りを露にしたのは初めてだ。貴様は必ず殺す……必ずな!」
 互いの魔力を開放する時、空間の歪みは発生する物なのか? 当時の俺は重系魔法に関する知識が乏しい。それでも知ったかぶりで敢えて思ったことは人間だろうと動物だろうと何かしらの重力を発生させる力を身に付ける物だと……その重力が互いに干渉し合う時、詠唱は既に終わった後--戦闘開始の合図。
 クラリッサの能力に加えてマーリンの解放された魔力の前に前半戦は劣勢のまま進む。いくら零詠唱した上級魔法を使用しても先ほど見せられたクラリッサの応用……リフレクターの前に俺は為す術がない。あれを突破するにはどうしたら良いのか?
「この程度か、デュアン」
「さすがは無敵のリフレクター様だ。俺の魔法が悉く俺に返る。『因果応報』じゃないはずなんだけど」
 因果応報……それは良いことをした人間は必ずいい思いをし、悪いことをした人間は必ず相応の報いを受けるという例え。この場合だと後者の方で悪人は必ず人を不幸にした罰としてそれ相応の惨めな最期を送ると言われる。但し、それに当てはまらない人間が居たりする場合はどうなのか? その場合、そいつが暮らす社会は独裁国家なのかもしれない……という冗談は兎も角としていずれにせよ悪人は必ず不幸な目に遭うことは世の摂理。但し、公社だけの意味なら自業自得と大して変わらないため、用法に注意したい。
 と長々と解説して俺はあることに気付く。別に相手を倒す為なら上級魔法を使用する必要がないだろう……そう、別に魔法を使わない方が有利ではないかと。
 そう思ったら後半戦は俺の有利に転がる……肉弾戦を駆使することでな。
「『徒手空拳』なんて魔法使いのすることじゃない!」
「クラリッサがどうして俺にマラソンをさせたのか」単純なベアナックルのみで馬乗りしながら顔面を殴り続ける俺。「この為にあったのさ!」
 徒手空拳……それは何一つ持たない拳のこと。本来の意味は頼る物もない状態で何かを始めること。今の俺に相応しくない四字熟語だが、こと肉弾戦だけは当て嵌まる。
 顔面が脹れても俺は殴り続ける。彼女の美貌を台無しにしてるとかそんなことは関係ない。俺はマーリンを倒す為なら拳だって振るう。それを実践したまで。だが……マーリンは直前に成って秘められた魔力を開放--十メートル近くも飛ばされた俺は頭から地面に激突!
 あの時は意識を失いかけた。眠った方がどれだけ楽だったか。だが、マーリンの姿を見てすぐにその考えを放棄--クラリッサからどこの馬の骨とも知らない老人の姿が俺に冷静さを失わせたのが原因。
「魔法による乱れ撃ちとは」マーリンは狙いを定めない俺の魔法に嘲笑を浮かべたかな? 「もはや勝負あったな」
 もはや勝負あった--それが奴の敗因と成った!
 奴はおそらく極限魔法を唱えたであろう--結属性を一点に集めてまるで銀河を生み出すような光を収束してる事から。
 それから俺に向かってそれをぶつけた……だが俺はその中心点を右拳で叩きながらクラリッサのリフレクターの応用--リフレクトブレイカーでギャラクティックヘヴンを数倍底上げして奴に返してやった!
 奴は断末魔を浴びながら真っ二つに割れた月まで飛ばされてそいつと運命を共にした--マーリンの全魔力を乗せたギャラクティックヘヴンとそれを冷静さを失って過剰に魔力を放出した俺のリフレクトブレイカーを乗せたからこそこんなどでかいことを可能にした!
 俺はようやく成し遂げた--あの月を消滅させることを!
 ただ、失ったものは大きい……どう足掻いてもクラリッサは戻らない。マーリンに取り込まれてはもう助かる見込みはない。ただ、涙が溢れるばかりだ……俺には。あいつを超えてやったのは良いけど、死んだ後に超えてしまっては何も残らない。
 俺はこの日を境に魔導学園から最上級監視対象として様々な戦いに身を投じる事に成ろうとはこの時……俺は予想出来たのかな、わかんねえな。


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雑文特別編 一兆年の夜外伝甲話 対話から打倒へと移りゆく

 あけましておめでとう御座います。今年もdarkvernuはひたすら文章の練習を欠かさず、日々書く事だけは怠らずにやって参りたいと思います。あ、ちなみにサボる時は何度もある事は覚えといて下さい。
 外伝始める前に『格付けの旅』の青魔法の章01の三ページ目を終えましたので読まれたい方はカテゴリ欄の<格付けの旅>又は<青魔法の章>をクリック。
 さあ、時事ネタが本格的に復活する為にも雑文特別編を切りの良い所まで進めないと如何なあ。

 IC(イマジナリーセンチュリー)十六年九月二十二日午後九時五十七分三十二秒。

 場所は秘境神武中央空間烈の間。
 齢六十八にして五の月に成ったばかりの神武人族の老年は障子を開けて、月がどのように満月へと至るか観察。肉体は老いにより、動かす事さえ窮屈で座れば自力で立つ事さえ体力を要する。視力は満月なのかそうでないのかを詳細に確かめる事も適わない。それでも目の奥にある光は衰えは知らない。残念な事に目の光が輝いてもそれに見合うだけの寿命はもう残されない。
(わしは余命宣告をされて何日経つ? 今日で三百日? そんなに経たない? わからない……月さえ満月なのかそうでないのかもわからぬ。何もかもいくら近付いても揺れるように見える。遠目に見ても近間で見ても)
 老年の無謀な行動に叱りつける生命有り。齢八にして三の月と二十四日目に成る神武人族の少年だった。
「また魁か」
「またじゃないよ、烈さま。にいさんがしんぱいしてたよ」
「魁(さきがけ)は良いな、それに比べて暁(あかつき)はまだまだじゃ」
 わしの事ですか、父上--齢四十四で七日目に成る仙者暁。
「高(こう)はまた熱か?」
「異なる。おぞましきモノ達をどうにかして秘境神武に入らせないようにしてる……成者のする事なのに」
「あやつらし……」烈は胸を押さえて苦しみ出す。「ウ……また、か」

 午後十時五十七分六秒。
 成者達に追い出されるように齢十一にして十一の月と三十日目に成る神武人族の少年と彼を連れてきた齢二十八にして五の月と十八日目に成る神武八咫烏族の成年と齢三十五にして五日目に成る神武猫族の中年と齢四十四にして六日目に成る神武鬼族の老年が烈の様子を確かめる為に駆け付ける。
「随分、と、集まって」
「そりゃそうだよ。だって烈様がこの先も生きられるかどうかにかかるんだよ」
「もう無理をしなくて良いんですだ、烈様だ。この先は暁様と高様だ、それに魁様が力を合わせて秘境神武を守り通す役割を担いますだ」
「暁端直ぐ怠ける牙、そこ派このカゲヤマノドウタヌカ牙怠けた分摩出働く所存出御座います」
「失礼だな、昔からドウタヌカ君は」
 支えてるんだ、これ出模奈あ--ドウタヌカは鬼族独特の誰もが引き気味な表情の内に生命を和ませる笑みを浮かべる。
「それだけ信頼されてるなら心配……ウ」左胸を右手で押さえる烈。「はあ……そろそろと行こう、か」
「烈さま……なにを?」
 遺言、じゃ--烈は六名全員を見回しながら大事な事を言う。
「遺言とは何を遺しますにゃ?」
「あのおぞましく剥き出された、モノへの接し、方」
「彼等の対話は今日も多少の死傷者を出しました」
「確かに死者は多いだ。それでも対話は確実に--」
「良くな、い。対話は、意味、を、為さ、な、い」
「あのモノ達端確か似通じ合える可能性端低い乃端わかります牙、それ出模--」
「それでもじゃない! ウウウ……あのモノ達へ、の接し方、は--」
「まさか四十の年以上前に父上がやったあれでしょうか? お止めなさい、そんなの!」
「誰に向かって……ウグウウ!」苦しみながらも烈は力を最後まで振り絞りながら声を出す。「それしか、方法は、ない! 良い、か……それ、しか、わしら全生命の、生、きる、道、は、ぁ、ぁぁイ……」
 烈の魂はこれを機に想念の海へと運ばれてゆく……彼の死を痛むのは何もこの場に居る者だけではなかった! その後の葬儀では相次いで烈の死を確認しようと百名以上の生命が道が出来ないくらい集まり、ドウタヌカとニャルタラノニャンタロウらは整列させるのに一苦労。騒動が収るのはそれから二日後。

 IC(イマジナリーセンチュリー)十七年一月三日午後十時四分二秒。

 初代仙者天同豪を始めとした天同家を供養する建物にお辞儀する影が二つ。齢十三にして三の月と十一日目に成る神武人族の少年と齢九にして七の月と五日目に成る彼の弟が居た。
「ぼくは反対するよ」
「私も反対。だってそんなのはやって良いことじゃない」
「でも烈さまは正しいことだとはんだんした」
「それでも私は反対だ。そんなの悲しいよ」
「その時が来ても反対しないと言いきれるの、兄さん?」
 わからない--高は悩む。
(魁の言う通り。生命を多く助けるには彼らと同じことをしなくてはいけない。でも、対話はまだ可能性があるんだ。死なせるなんて大きな罪を背負えない! どうすれば良いんだ?)
「ぼくも同じだよ。せおうなんてできない」
「心を読むな、魁。私は迷う。この先もこれからも」
「せいじゃになってもまようのかな?」
 どうだろうか--高は曖昧に返す。
(おぞましきモノ達を倒す……それで良いのだろうか? 私は一生悩むのかな? こんな歳で偉そうにして何になるんかな? 全生命の運命は何処へ向かうのだろう……教えて下さい、烈様、狼様、そして豪様!)
 先祖達は何も告げない。だが、先祖は心の在り方を伝える……代々受け継がれる生き様で!

 IC十七年一月三日午後十時七分零秒。

 第甲話 完

 第丙話 に続く……


 という訳で第甲話はここで終り。次回からは人族の話から別の種族による話へ移ります。最初は配達事業の誕生、次に第四話以降のソウスブ、最後に第五話の主人公ストルムの劣友キッシャ・キッシェールに関する物語と進めながら外伝を一旦終わらしたいと思います。
 只残念なのは天同家の年齢を合わせる作業はがもう杜撰。この後どうするんだよ(汗)。
 知らんぷりする形で解説を終わらします。

 では青魔法の章01の三ページ目を解説しましょう。いやはや、とうとうデュアンは中二病を発症した。とにかく中学一年生なのにこの病気が発症して最早とんでもない成長を遂げてます。まあとにかく今回は幼馴染との再会や終盤でコテンパンにやられるシーンまでほぼダイジェストに語られててあんま進んでない感たっぷりですね。とにかくバトルをやっても良いけど、プロローグでのアルッパー戦のようにマウスで送る作業が多くなるのでしません。つーかボロ負けするという事実だけを伝えればそれで良いと判断したのでそうしました。取り敢えず青魔法の章では一体ヒロインは誰なのか? 自分は基本的にヒロインは決めてませんが、青魔法の章では敢えて言うならラキだけです。クラリッサはまあ……おっとネタバレだな。とにかく四ページ目のタイトルだけを鵜呑みにすれば読者の予想通りですぞ。まあ鵜呑みにすればの話だけどね(笑)。
 以上で青魔法の章01の三ページ目の解説を終えます。

 さあ明日から忙しくなる。なのでホリデイモードはここでお終い。明日からはやや本気を出す。本気はまだ出さないが、やや本気は出すぜ。
 そうゆう訳で今日はここまで。今年は悪い意味で有名人出ませんように!
プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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