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今更ながら成人式のお話

 どうも休載ライフを始めたdarkvernuです。
 全くニュースを見てるといろいろあるが、敢えて期限切れの時事ネタをやるぞ。

 私は104市市長である井筒行貴と申す。あの俳優殺しの監督と間違われるが、こう見えて市長に就く。それで私は何をしているか? それは今更だが成人式を執り行っている。
「ええ、ともかく新成人の皆様。おめでとうございます。これからは胸を張って--」
「オラオラ、新成人のお通りだああ!」やっぱり来たか!
 毎年この市では馬鹿成人が出てくる。しかも何て格好してるか! 今時もろこしヘアーなんてめんどくさい!
「お前が市長さんかえ? 随分偉そうじゃねえか、ア!」
「まあまあそのくらいにしようじゃありませんか。私には迎えるだけでも将来性があるという事でいいじゃないですか」
「はあ? 市長がそんなに偉いんか!」もう酒にありついて酔っぱらってる。
「いくら成人になったからってすぐに酒を一気飲みするのは止すんだ、君達!」
「ハア? 俺を誰だと思ってるんだ!」知らないよ、君達全員を把握してないんだよ。
「いい年して挑戦飲みしてんじゃねえぞ、売国奴!」ハア? 私はコップを片手で持ち、口元隠さず飲むというやり方だが。
「市長さんよお、あんまり調子こいてるとマッドギア使って脅すぞ!」私はハガー市長ではないんだが。
 他には酔拳披露する新成人も居たり、スマホを硬球代わりに投げる新成人も居たりと今年の成人式も無茶苦茶だ!
 ま、そんだけ暴れるんなら世の中も安泰……だよな?
「さあさあメインイベントのお通りだああ!」最後の最後に何か来た!
 何だって……ウワああああ、会場が壊れる!
「ヘヘヘ、クレーン車で一度でもいいから入場したかったんだよ。どうだい、楽しんだか老害ども!」楽しめるか。お陰で会場先である104小学校体育館が大破したじゃないか!
 やっぱり新成人に期待するのは良くないかも?


 すみません。書いてて凄くつまらないと本気で思いました。
 とまあ市長の名前はとある腐れ縁から勝手にとってきました。あいつはどこにでも居るちょっとぐれていた時期のある男なのでこんなブログを見るとは思いませんが、書いた後にこんな事をしてどうかはともかくなんですが申し訳ないことをしたなあ、とここに謝罪の意を表します。
 ええ、話を戻しまして成人式は毎年一月十三日くらいに行われる国民的行事。本来ならば成人という者はこんな神聖な場では毅然としなくちゃいけないのに毎年どっかで馬鹿新成人が新聞沙汰になるような騒ぎを起こして老害どもの嘲笑の的になります。今年も例外ではありません。ツイッターで千葉市長に喧嘩を売るような新成人も居たり、今時特攻の拓の仲間が会場に入り込んできたりと無茶苦茶です。全くそんなんだからお前らは老害どもから「最近の若いもんは~」何て言われ……ありゃあ、いつもの事だな(笑)。
 ちなみに自分が初めて成人式に行った時はニュースでやるような事態にならなかったなあ。自分には事件を呼び起こす力が無くて良かったと今日でも思っている限りです。ただし、当時の成人式で祝いの言葉を贈った市長はその後談合での容疑で手錠をかけられるとは微塵にも思わなかったなあ(悲)。確かその事件で逮捕された人の中には初田なんとか郎もいたっけ? もうこれ以上はヒントを出しません。
 以上で時事ネタを終わります。

 では第五十二話の解説にいきます。今話では珍しくパートを数字で表しませんでした。理由はあまりにも長すぎる序章のせいだと自分でも思ってます。
 とにかく五パート続けての序章はある意味今後の一兆年の夜における展開を予想するにはもってこいです。何しろ……『龍道』が出たもんだからそれだけで読者の想像力を掻き立てるのに貢献したんじゃないかと。ついでにオオクニヌシ銀河については第十二話で名前だけ出てます。読み返すのは大変でしょうから他にも名前の出た銀河を挙げると八十神銀河、ヤマタノオロチ銀河、ブラフマー銀河、ヴィーシュヌ銀河、シヴァー銀河、ただもの銀河、おかもと銀河。本当ですよ、そこは。
 とまあ話を戻しますが、あるキャラはその銀河から来た生命です。ただし、時系列まで同じかと言えば……です。ネタをばらすほど作者は懐は大きくないよ。とにかくわかる事は序章があまりにも長すぎたことと只でさえ都合が悪いとファンタジー色を濃くする傾向が更に強まったことだけは確かです。つくづく引き出しの少なさには呆れるばかりです(辛)。
 ただし、他人が見るとまだまあ甘いと思われるよ。けども残り二パートで納得のゆく終り方が出来たと自分では思います。確かにご都合主義が強すぎますよ。でも、空が歪んだままでは折角訪れる休載ライフを満喫出来ないじゃありませんか。そんな訳であんな終り方にしました。
 とこの先、全生命と銀河連合の戦いはどうゆう局面を迎えるかを想像しながら第五十二話の解説を終わらせます。

 久々に午前中に雑文が完成したぜ。これから先の雑文は時事ネタと試作品をほぼ交互にやりながら自分をさらけ出せたらいいなあと思います。ただし、圧力がかかればかの孫海王に喧嘩を売ったブログ主みたく全記事削除の憂き目に遭います。そんな覚悟もままならない中でいつか再開するであろう予定を載せますね。

 予定日不明    第五十三話 再誕の火 真正神武最後の最高官 作成日間
            第五十四話 再誕の火 男女は運命に導かれて  作成日間
            第五十五話 再誕の火 火は日を呼び寄せる    作成日間
            第五十六話 再誕の火 再誕の灯火         作成日間

 取り敢えず書ける事はFC2小説で書いているあれが完結次第、再開しますのでどうか期待(?)しながら待ってて下さい!
 そんじゃあ今日はここまで! 明日はここへ来ても一兆年の夜最新話は始まらないからね。再開は雑文にて逐一報告致しますぜ!

格付けの旅 宇宙は危険が一杯 打ち切りは忍び寄る

 デュアンは現在、かの中華大陸にある天下一武闘界でベストエイトまで進出中。
(案外奴等の戦闘力はS人襲来前で良かった。『1000』を超えるのが一人も居ないから魔法無しでやれる)
「あのターバン野郎、強い!」「いかにも魔法使いの格好して攻撃が素早い!」「こうなったら『Zランク戦士』を招集しないとなあ」残り七人はデュアンの強さに畏怖する。
(まずいぞ、こりゃあ! 確か宇宙は害虫駆除に乗り出す際には『どう考えてもこんな展開はないだろう』というような展開を持ち込んでくるぞ!
 それは『御都合主義』と呼ばれるものを!)
 御都合主義……それは創造主がネタに詰まった際に使用するリーサル・ウェポン。これが発動する条件は様々だが、使用すれば超宇宙の魅力を激減させるに十分な効果を発揮。なのでかのダスティーさんの『それがどうした!』と同様に最強にして何度も使用出来ない武器。
 例を挙げるならかのそうつー超宇宙圏にある伝説巨人超宇宙では伝説的な『その時Iは発動した……』が有名。当時、打ち切りの横槍が発動したとはいえ、この一言で全てを丸く収める辺りこの超宇宙の最終局面に多くの魅力が詰まり、後の平行宇宙では二つの物語が展開され、御都合展開の中身が見せられる事になった。他にはかのえすの超宇宙にあるデウス若本が支配する世界で一番目の未来が見れるケータイ所有者ユピテルがヤンデレに突き落とされた際に死んだはずのテロリストが超常的な力を備えて再登場して、ユピテルを助けるという展開。この展開には本来、魅力が詰まってたテロリストを創造主がいくら気に入ってるからと言って無理矢理復活させて挙句にユピテルを助けるという展開に難儀を示す者が多数出現し、賛否両論を呼ぶ事になった。三つ目の例ではかの三竦みエース超宇宙圏にある星の海超宇宙では第一期目と第二期目の魅力まで半減させる第三期目衝撃の『実はデータだった』という御都合展開。それまでの感動やら血の滲むような戦いを全てデータの一言で済ます展開には今まで付いてきた多くの者をゲンナリさせ、超宇宙の魅力を激減させた。
 なので三つの例が挙がるように一番目の例みたいに成功する保障はなく、二つ目の例になる危険性が高い。下手をすれば三つ目の例のように今までの苦労を灰燼にさせる事にも繋がりかねない。
(……そんなこと考える内に準決勝進出、と!)
「勝者デュアン……の前に大会よりデュアン選手にエキストラバトルが用意されます!」
(来やがったか、<アラレ>最強の『Zランク戦士』ってのが!)
 デュアンの後方より空を自由に飛ぶ八人の超戦士が試合台に降り立つ!
「あれが大統領が言ってた無茶苦茶強い魔法使いか!」「フン、期待はずれだったら承知しないぞ!」「ヘッ、先鋒はこのセイヤ・アルマークが出るぜ!」「待て、お前じゃすぐやられるぞ!」八名は左からヨーゼフツー、一・ノア、谷本ミクトラン、ろぺっと、イナカッペジェネラル、諸星シン、セイヤ・アルマーク、モンキー・パズー。
(危ない名前群だな。知ってる奴が果たして居るのか?
 そんなメタメタした話はいい! 問題なのはこいつらの戦闘力が最弱でも万は超えるという話だ。俺がいくら強くても『メアリー・スー』だと気付かれたら横槍が待ってる……)
「まずはセイヤ・アルマークが出るぜ! 受けてみろ、俺の宇宙を!」「おおっと最初は先天性『ヘタレ』の代名詞セイヤがデュアン選手に挑戦します!」デュアンは額に汗水を垂らす。
「おいおい、どうゆう展開をすれば俺が挑戦されてる存在になるのかわからんぞ! 俺はまだ準決勝に--」
「細かい事は気にすんなって! 俺のエイトセンシズはお前を倒せと叫んでいる!」
「そもそもエイトセンシズはそんな意味では--」
 五月蠅い、くらえ--セイヤは開幕早々どこかで見た事あるような技を出す!
 デュアンは音速を超えた拳打の前に仰向けに飛ばされる!
(どこが先天性『ヘタレ』だよ! 俺の計算では百八発もの拳打を一秒間に出してる! しかも俺を排除する為に宇宙があのセイヤに力を与えてるせいで一発一発が重い! 意識を持ってかれそうだ……!)
 間一髪で場外ギリギリに落下したデュアンは全身の痛みに悶える!
「あのデュアン……あれで死なないなんて! セイヤの代名詞である狼の牙を以て風の如き拳打を食らえば戦闘力『1000』あっても間違いなく死ぬはず!」
「一さん……感じます! あの者から溢れるエネルギーが増大してるのを!」
 何--ノアはヨーゼフツーの言葉に思わず耳を疑う。
「本当だ! あいつはあれだけの打撃を受けてるのにもう立ち上がってる!」
「モンキーの言ってることは正しい。セイヤの攻撃が全く効いてないだと!」
 ノア、ヨーゼフツー、モンキー、諸星は恐怖で顔を引き攣る! 一方で--
「あのターバンめ、やるじゃないか! まあ俺様の相手にはならんが」
「おら、何だかワクワクしてきたぞ!」
「世の中にはこんなに強い奴が居るんだね、お父さん!」
 谷本、ロペット、イナカッペジェネラルはデュアンの潜在能力の高さに喜びで一杯だ!
(コラコラ、勝手にそう解釈するな! 俺が立ち上がるのは寝てると余計に痛みが残るからだ! それならいっそ……休憩くらい--)
 セイヤは先程の技をまた打ち込む--デュアンはもう一度仰向けに飛んで、セイヤの後方で場外ギリギリまで飛ばされた!
(今度は食らいすぎて痛覚が麻痺してきた……だから立ち上がるのは楽なんだよ!)
 セイヤは三度同じ技をかけるが、今度はデュアンがその技よりも早く右へと移動し、回避!
「躱すだと! あれだけ食らっておきながら!」
「ぜえぜえ、俺に二度も同じ技を使うな! お陰で予備時間がどれくらいかわかっちまったよ!」
「じゃあこの技なら……グベエ!」
 予備時間がわかりゃあカウンターだって取れるんだよ--技を出すよりも早くデュアンは右ストレートをセイヤの右頬に当てる!
「もういっちょ……くそ!」
「掴んだぜ、デュアン。お前は確かに速いし、強い!
 だが素人の打撃は目を瞑ってでもわかるぜ!」
 掴んだ状態から片手で三度放った技の強化版を出すセイヤ!
 あっぶねえ--それを徐々に取り戻しつつある超反応で全て回避!
「馬鹿な! あのラッシュを近距離で躱すとは!」「しかもセイヤが初めて見せる技を!」「ほほう、面白い奴じゃねえか」諸星とノア、谷本は三者三様の反応を見せる。
「確かに俺は格闘の素人だ! けどなあ--」
 また素人のこ……アエバアア--セイヤは近距離でなおかつ掴んだままである事に気付かず、自身の持つ技よりも速い打撃を五発全て受ける!
「俺を誰だと思う……お前らには紹介しとくけど、格付士だぞ!
 だから格闘の素人であっても戦闘の素人じゃねえんだよ!」
「オノレ、ターバンの分際でZランク戦士である俺より強いなんて事はあってはならん。力の差を徹底的に見せつけてやる!」
 セイヤの肉体は発光し始める--思わず掴んだ手を離し、距離を取ったデュアン!
(オイオイ、俺のノートによると……こいつはかの先天性『ヘタレ』の代表格だぞ! なのに、どれどれ……あった!
 こいつ--主人公に関するノート五十五冊目--によるとこいつの声に聞き覚えがある……そう、Nタイプのあれに。だとすればまずいぞ!)
「どうした! そっちがこないならこっちから行くぞ!」
 セイヤは両手から光の塊を六つ放出--それらはデュアンに向かって放たれてゆく!
「当たるかよ、そんなもん!」
 見える--鍵をかける音と硝子が割れる音が混ざり合う効果音を放ちながら、セイヤはデュアンの動きを読む!
「はああ、あっぶねえぞ! なんでかの機動戦士が使う遠隔操作型の武器のように使ってくんだよ!」
「さすがはセイヤさん!」「操気弾を知らないようだな、阿呆が!」「しっかしあいつ良く粘るよなあ!」「まさか……な」ヨーゼツツー、ノア、ロペット、諸星は諸々の反応を示し、一方はセイヤの勝利は揺るぎない物と確信し、もう一方はデュアンの底知れぬ強さに畏怖を抱く。
(更にどっかの聖闘士が使いそうな技を使ってくるなんて聞いてない! ってかバトル物と関係ない消える魔球を操気弾に入れるな! 野球は野球ものの宇宙でやってろ!)
 デュアンは反撃に転じる--相手の動きの先を行く消える操気弾と音速を超えた一点集中の拳打をくぐり抜けて右ストレートを放つ!
「魔術師が蹴りを使えないと誰が言った!」左ハイキックでセイヤの米神に当てる! 「左手を挟まなかったらやられていた!」
「このままじゃセイヤさんが危ない!」「何か強くなりすぎてるんじゃないか、あいつ!」「まさか……噂で聞くあれじゃないだろうな」イナカッペジェネラルとモンキーと谷本はデュアンの正体に勘づいてくる!
(セイヤに集中しすぎて周りの反応に気が向かなかったが……まずい!
 このままじゃ横槍が--)
「受けろ、俺の宇宙を!」
 その一瞬の油断が勝敗を決めた--狼の牙を以て風の如き拳打の改良版を全発全て受け、場外に仰向けに飛ばされる!
「はあはあ、お前は強かったが俺の敵じゃなかったぜ!」
 飛ばされたデュアンは壁に激突--壁は粉々に破壊され、後には飛ばされたデュアンが飛ばされた姿勢に倒れる!
(横槍がなければ俺は好き放題戦ってたんだが、やっぱ駄目だった。『メアリー・スー』は古代に於いていろいろやり過ぎてほぼ全ての宇宙に嫌われてやがる。ここも例外なかった。まあ結果はどうあれようやく取り戻せたぞ、力を!)
 勝者セイヤ--審判の声と共にデュアンの敗退が決まる!
「ここまで良く保った方じゃないか、あいつ」「見て見て、ノアさん!」「馬鹿な、止めの一撃を食らって立ち上がるだと!」「どうやら決定したな」「まさか僕らの星を?」「ああ、『メアリー』じゃワクワクしねえ!」セイヤ以外のZランク戦士はデュアンの正体に気付く。
「いでで、言っておくが横槍はやめろよ!」
「そうはいかないぞ、メアリーめ! このセイヤの目が黒い内はしっかり止めを--」
 枷を外すぜ--デュアンは零秒で風系上級魔法をセイヤにぶつける!
 アベシ--セイヤは力を取り戻したデュアンの一撃を食らい、会場より五キロメートルまで飛ばされた!
「アア、セイヤさんが!」「今度は俺が相手してやる!」ノアは横薙ぎも出来る左突きでデュアンに迫ろうとするが--
「待って下さい、この者の力があればもしかすれば<クウラ>の魔の手からこの宇宙を救えるじゃないでしょうか?」
 突然、二人の間を止めるように別境界の神々しい男が立つ。
「お前誰だよ? 超電磁ロボの頭の方に座る奴と同じような声をして」
「僕の名前は上杉マーティ。実はメアリーである君に頼みたい事があるんだ」

 時は一年を過ぎる……だが、デュアンは年を取らない。
(奴等惑星アラレには倒すべき敵が居るとか。そいつらは惑星<クウラ>……なんて言うが俺にとってはどうでも良い。俺が興味を示すのは何でも向こう側に『メアリー・スー』が居るとか。『メアリー・スー』と呼ばれる俺にとっては向こう側の『メアリー・スー』が誰なのか見当が付くけどな)
 デュアンはZランク戦士を全員乗せた宇宙船の牢屋でノートを広げながら思考する--目的地に着くまで静かに。

 時は二年、そして三年の月日が経つ……それでも年を取らないデュアン。
(デュアンロールを取り上げられた俺は何も出来ないと思い込んでるようだが、魔術回路には必ず俺の元に戻るよう刻まれてある。
 そんな事はいい。どうやって宇宙の神々からの横槍を受けずに事を済ますか? またアルッパーと喧嘩するか? いやいや、命に関わる! それともいっそ横槍を……痛いから嫌だ。うーん、思い付かん……俺はこんな事を三年も考えてたのか?
 何が神々を超える存在だ! 全然進歩しねえじゃねえか! 横槍を恐がって何も出来ないんじゃゴミ屑以下の……そうだ!)
 デュアンの顔に狂喜の笑みが浮かぶ--三年かけて思い付く奇策に自画自賛するように!

 時は四年、そして五年……ようやく<アラレ>の主力は<クウラ>の第二艦隊と接触する!
 ン、何だ--デュアンは牢屋を開けたイナカッペジェネラルに叩き起こされた!
「デュアンさん、そろそろ行きましょう!」
「もう青年ご--」「早くして下さい、デュアンさん!」イナカッペジェネラルに襟を掴まれた状態で宇宙船の外に放り出されたデュアン。
(全くZ戦士は俺を牢屋に五年も入れておきながら扱いが……おや?)
 てめえは知ってるぞオオ--一年ぶりに会う懐かしい顔に募るに募った怒りを爆発するアルッパー。
「アルッパーだな。二十五年ぶりで何よりだ」
 ふざけるなああ--口から放射能の光を放とうとする!
「そこまで再会するのが嬉しいか? ならば、いっちょ--」
 ダマレエエエエエ--とうとう光線を放つアルッパー!
(とうとう本来の力を取り戻したか、アルッパー。じゃあ俺も--)
「出よ、デュアンロール!」
 一瞬だけデュアンが歪む--歪んだ先に間近で見ないとわからない紋様が彫られた経典が二重三重……と彼を覆い、アルッパーの放射能光線を無効化させる!
「てめえも力を取り戻したな! パワーアップした俺の一撃を経典如きで止めるなんて!」
「……暴れるぞ、アルッパー! 打ち切り物のようにはしゃごうぜ!」
「てめえはこうゆう時に……まあそれも有りかな」
 こうして彼等は光よりも速く対象に向かって激しく攻防を繰り広げる--周囲の被害も無視しながら!
「あの鯨を倒さないと!」「鯨の分際で!」「倒せるかな?」「やるしかないだろ、ヨーゼフツー」「このセイヤ様を舐めるなよ!」「このS人の誇り高き戦士である俺様がこんな鯨と戦わねばならないとはな」「おら、すんげえワクワクしてきたあ!」Zランク戦士は全員、船を防衛するべくアルッパーの対処へと乗り出す!
 邪魔をするなああああ--アルッパーは右螺旋による突進をかける!
「へえ、アルッパー君はそうゆう対処をするんだあ」「感心してる場合か、あの魔法使いを倒すぞ!」「他の艦隊との連絡はどうだ?」「問題なあい。既に二つのメアリーを止めるべく立場を超えて共闘を果あたした!」第二艦隊全ての船は全砲座をデュアンに向ける!
「えっと……あの船にある弾の速度は最大秒速九千六百くらい。一万に届かないのは光とかの……おっと!」
 一方のデュアンも最初から本気を出す--極限魔法を数百も自身の周囲に放出する!
「さあ、これなら横槍だって意味を為さないだろ? アルッパーを狙いながら他の連中を巻き込む……テロリストのやり口は時として己を守る盾と成るんだなあ」
 デュアンとアルッパーは約十年にもわたる殲滅戦の後、死闘を繰り広げながらこの宇宙を去る--後に残ったのは最早戦争する事さえ出来ずに自分達の銀河を焼き尽くされた両勢力の領域のみ。
「ウウウ、アルッパー君め! 次こそは必ず私の物にしてやるうう!」
 なおエルステッドはリメイク版では声変わりしている模様……


 白魔法01 宇宙は危険が一杯 END

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一兆年の夜 第五十二話 光不変の先へと 後篇(星)

 午前零時零分零秒。
 海は偶然にもサンショウ六達の無謀を応援する--まるで右翼を狙い撃ちするかのように次々と波はその場にいる傭兵や銀河連合を流しながら襲いかかる!
(僕は小隊長に掴まれている? 更には分隊長持参の雄略包丁『ツクモノカミ』の上に乗っかっている? 折れないかな?)
 そんな安心出来ない事を思う内に船は左右に揺れ、それから最大まで持ち上がった左翼は三名が飛ぶ絶好の状況!
 今だ、飛べエエエエ--ドストリーニの掛け声と共に跳躍!
 落下してゆく鯨型との距離は四百--まだまだ二つがくっつくには遠い。
「どうやら自分はここまでのようだなっち。生きていたら酒を飲もうかっち、サンショウ六っち!」
 イタ平は持参した『ツクモノカミ』を熊族に匹敵する力で振り回す--二名を鯨型に送るべく飛ばした!
(いくら見た目が筋肉質であってもここまで無茶が出来るなんて?
 そ、れでもまだ届かない?)
 鯨型との距離は百--ここまで来て二名の身体は落下体勢に入った!
「だから言っただろうん! 若い命は次を創るん為に生き抜くんと!
 わしは先に行ってるんぞオオオおおおおお!」
 鼓膜を破けんばかりの叫びで限界まで力を出し、サンショウ六をぶん投げたドストリーニ!
「有り難う御座います、小隊長殿オオオオオオ、分隊長殿オオオオオオ?」
 サンショウ六もまた叫び続けながら神々を信じる--風が背を押すのを信じた!
 神々は応えた--突如としてサンショウ六に襲いかかる暴風は背に強く押して、鯨型との距離を……零にした!
「ありがとう、神様? 今度はサンショウ子さんに感謝する番ダアアア?」
 サンショウ子から貰った足斧を右前足で抱え、それを上から下に加速させた--骨と骨の継ぎ目に嵌り込んで、痛がりながら軌道をずらしてゆく!
「落下針路はずらせたのはいいけど、どこに……わあ?
 サンショウ子さんの勘は凄い? 無かったら間違いなく海に投げ出されていた?
 ……なんて言ってる場合じゃない? 銀河連合はこのままにしておくはずがない?」
 サンショウ六の独り言は正しかった--サンショウ六を食らおうと次々と銀河連合が鯨型の上に乗り込んでゆく!
「このまま僕達は海に呑み込まれる? ただし、銀河連合達は確実にする為なら同胞に乗っかってでも僕を食事するのか? 海に沈む前に僕の命を食らう気なのか? 足が離せない僕は絶好の機会だと思ってるのか?
 それでも僕は簡単に食らったりしないからな?」
 三本足でも戦おうと決意を決めたサンショウ六--例え乗り込んだ銀河連合十五体が傾斜を利用してサンショウ六に特攻を仕掛けても!
「さあ、食べられるもんなら食べてみろよ? 僕はとってもお--」
 最後まで喋る間も毛先まで接近する間もなく、鯨型は海に落下--半径成人体型およそ四十はある水飛沫を上げながら周囲と外側より成人体型およそ七にいる傭兵と銀河連合を巻き込んで!
 サンショウ六の肉体は落下の衝撃で左後ろ足のみならず、右肋や左肋骨等々急所よりやや近い場所にある骨を折りながら深海へと沈む。
(グルじいぃ……? 死、ぬの、か? ぉ、ぅ、ぁ……?)
 全身強打は意識さえも深海のそこへと沈ませてゆく……。

 未明。
 サンショウ六は気付いた時、そこはあらゆる色が混ざり合う世界に居た。
『光が、眩しい? ここはどこ? 僕は山一サンショウ六? どうして自己紹介?』
 サンショウ六はまるで義務を果たすように自身を披露してゆく--好きな異性や、好きな食べ物、好きな趣味は何なのか、拘る所は何なのか、今やるべき事等々。
『って誰から命令された義務なんだ? 居るのかさえわからない眩しい場所で自己紹介なんて誰に命令された?
 まあ、いいか? どうせここは僕が僕自身の為に切り開いた<竜宮>かも知れない? 幻を自ら見るようになるなんてどうかしてるよ? こんなことしたって生命が変われる訳じゃないのに?』
『果たして変われないとお思いか?』
『え? どうして副……いや他にはベアケット分隊長にメエメンさんやきね由さん、それにサイ頭さんやマルノオビさんも? 遅れてきたのはカモノさん? どうしてここに?』
 サンショウ六は彼等に触れようとしたが、空を切るだけだった。
『止めとけやい、サンショウ六。わしらは光の集合体だい』
『光の集合体なにどしてまんまが出るかって?』
『思いーイ出がわしらを復元させたアアーのじゃ』
『分隊で過ごした日々は確かに短いス』
『短い事なんて関係なく俺達端お前似刻まれる!』
『オオここを幻と呼ぶのオオならさっさと目覚めろ! アア帰りをオオ待つ者がお前を捜しに潜った!』
『帰りを? まさか--』
 気がつくと空を見上げるサンショウ六--そこは光だらけの景色と異なり、海に濁った青い世界……。

 未明。
 サンショウ六は深部五まで沈んでいる事に気付くものの、全身複雑骨折のせいで思い通りいかない。
(イデデ……死にたくないとこれほど思えるのに?
 動け……デデデ? 動いて、くれ?)
 何度思っても身体は沈むばかり--息苦しさもまた増すばかり。
(今まで都合が良すぎた罪をここで払ってしまうのか? 死にたくないよ? まだまだやりたいことはまだ見つからないけど、守りたい生命は居るのに?
 このまま……あ、れは?)
 サンショウ六を助けるべく一名の山椒魚が泳いでくる!
(間違いない……サンショウ子さん? 彼女が助けに来たんだ?)
 サンショウ子は傷ついたサンショウ六を抱えるとそのまま力強く泳ぐ--およそ一の時をかけて引き揚げる!

 未明。
 プハアアア--サンショウ六が息を吸い直すとそこには歪みから晴れてゆく青い空が見えた!
「イデデ……湯が見ない青い空を見るなんて初めてだ?」
「綺麗でしょ? 私も初めて知ったわ? 歪みない青い空がこんなに綺麗なんて?」
 どうやら山一君も無事みたいだね--落下した傷が何事もないような表情で小舟を動かすドストリーニとイタ平。
「分隊長と小隊長……アダアアアア?」
「無理しないでよ、サンショウ六? あなたは二名よりも傷は深刻なのよ?」
「そこまで喋られるのならすぐに元気になるさっち。
 それよりも頂上まで登ったお日様を眺めろよっち、二名ともっち!」
 四名はお日様を見つめる--歪み無き空のお陰でお日様の光は今まで以上に神々しい物となる!
(僕はもう二十歳に成ったのか? これからは少年と呼ばれなくなるのか? 青年山一サンショウ六……今一実感が湧かない?
 はあ、さっきまで威勢が良かったのは多分みんなのお陰だったりして? これから僕の青春は続くのか? お日様の光は僕を祝福してくれてるのかな? もうわからない?
 眠ろうかな? 久々に仲間達に会えたとはいえ、もう一度会いたい? ベアケット隊長、スメラビノ副長、きね由さん、マルノオビさん、メエメンさん、サイ頭さん、カモノさん、そして藤原小隊のみんなや他にも多くの仲間達……会っても良いよね? 会っても良いよね、ラディヴェヴァルデェンさん……?)
 お日様の光は今日の遠い過去でも照らし続ける……それはどんな銀河連合でさえ放つ事のない真っ直ぐな濁りのない黄金の輝きを出しながら




 ICイマジナリーセンチュリー百六十八年一月一日午後零時零分零秒。

 第五十二話 光不変の先へと 後篇 完

 第五十三話 再誕の火 真正神武最後の最高官 に続く……

一兆年の夜 第五十二話 光不変の先へと 後篇(流)

 午前十一時三十分五十二秒。
 銀河連合は総攻撃を開始--隕石並の落下をする一団のみならず、深海から襲撃する一団も含めて!
 一方の真正神武真鍋傭兵団、エリフェイン傭兵団、柊傭兵団、そしてシャーク傭兵団の連合も負けずに反攻を開始--海中はシャーク傭兵団が担当し、海上は柊傭兵団が担当、船内はエリフェイン傭兵団が担当し、そしてサンショウ六が所属する真鍋傭兵団は甲板を担当。
 真正神武軍は仁徳島奪還を開始する!
 舞台はサンショウ六の居る『星季』甲板に戻す。サンショウ六はサンショウ子が所属する山岡分隊と共に降りゆく銀河連合を避けながら反撃を窺う。
(分隊長山岡イタ平は包丁捌きが凄いらしい? それを見たくて山岡さんが率いる分隊に入ったけど、逃げてばっかりだ? 中々攻勢に転じられない?)
 それにしてもあのジャンゲルの部下と一緒に戦うとはなっち--サンショウ六を除く九名を率いるのは齢二十九にして九の月と十日目になる仁徳鼬族の青年山岡イタ平はいつでも刃を鞘から抜けるよう準備していた。
「しかもあのサンショウ六だからね? 頼りになるかしら?」
 なるっこと思いますよ--齢二十一にして十の月と九日目になる藤原子守熊族の青年藤原コア主はサンショウ子の背中に飛び移りながら言う。
「あんまり他者の身体に乗っかるなっち、コア主っち! 自分達の任務は船の死守っち。どのみち自分も含めて死者は出るっち。ならば--」
「死者は出しません? 勝手に死んだりしないで下さい、みんな?」
「お前はっこ口出しするな! 小隊のっこ任務に文章したっあ句を言いたけりゃっら小隊長に進言しろ!」
「コア主の言う通りっち。サンショウ六は部外者でもある以上は小隊長にさえ進言は許されないっち!」
 だってさ--サンショウ子は走りながらサンショウ六の頭を左前足で撫でる。
「そんなことして……ワワッツア?
 危うく押し潰されそうになったじゃないか?」
「御免なさい、サンショウ六?」
 声が大きいっち、二名ともっち--イタ平は分隊全員の足を止める指示を出す!
「分隊長殿っこ。こんな……囲まれたっこ!
 いつの間にっこ奴等は囲むようにっあ落下してきた?」
 間抜けなのは自分達の方かっち--それでも刃を抜かないイタ平。
「どうしますかっこ、分隊長っこ? 足をっこ止めれば生存率はっあ低くなりますが」
「サンショウ六っち?」いきなり振られてサンショウ六は戸惑う。「何でしょう?」
「前と後ろ……お前ならどちらを選ぶっち?」「前?」自信満々に答えるサンショウ六。
「意見は一致したっち。これより分隊は強行突破を図るっち!
 ちゃんとついて行けよっち、自分にっち!」
「「「「「「オオオオオオ!」」」」」」
 鞘から抜き、前方に構えたイタ兵に示されるようにサンショウ六を含む十名は進む!
 前方には分隊の十倍は居る銀河連合--強行突破を食い止めようと一箇所に固まる。
「確かにっこ強行突破を試みる……がっあそれは『真っ直ぐ』というっら意味じゃない!」
 コア主の言葉通り分隊は塊に押されるように二手に別れ、外側から囲むように一団を叩きながら前に進む!
(確かに正面からは数の面でも進めはしない? でも横に流れながらなら……しかも固めたせいで隙間が出来た?
 僕は山岡分隊長組に付いて行くように隙間から抜ける?)
 コア主を含めた五名は左の隙間を通れずに囲まれてゆく--イタ兵、サンショウ六、サンショウ子を含む六名は右に出来た隙間を抜ける。
「また一名っこ死んだ! 藤原鋭棒をっこ振り回してもこれじゃあっあ死ぬしかないのか?」
 そう言いながらも三体倒す事に一秒足らずで刃先を交換し、更に三体を難なく倒すコア主!
「コア主やわ、どうやら俺も……グワアアア!」と名も無き熊猫族の中年が血を吐きながら仰向けに倒れながらも戦意を保つコア主。「残りはっこ俺だけ? 腰砕けもっこ良い所だぞ、これっこ!」
 絶体絶命の状況に追い打ちをかけるように空から数体もの銀河連合がコア主の頭上に落下してくる!
「残り刃は……二つウウっこ! 俺にっこ『死ね』と言いたいのか、神々はっこ!」

 午前十一時四十七分二十八秒。
 山岡分隊の数は五名。抜ける際にイタ平を庇って一名の傭兵が討ち死にしたばかり。この状況になってサンショウ六はある事を思い出す。
(あの時と同じ? 副長が死んだあの時と? あそこから僕らベアケット分隊は次から次へと死んだ?
 だからって諦める訳にはいかない? でないと小隊長メデリエーコフに宣言したことが本当でなくなる? 意地でも生き残ってみせる?)
 その通りだっち、サンショウ六っち--心を読まれて一瞬だけ震えるサンショウ六!
「前向きになれないわ、分隊長? 正岡さんが死んだのにどうし--」
「だからこそ僕らは諦めてはいけないんだ? そうでしょ、分隊長?」
「そうだっち。それに自分は死なんっち。その可能性すら存在しないっち」
 イタ平は刃毀れ起こさず空からも横からも急襲する銀河連合を次々と両断--サンショウ子は驚くばかり!
「デエエエッダ……これで三体目?
 何をしている、サンショウ子? 死にたいのか?」
 死なないわよ--無気になったのか、足斧でサンショウ六の背後から迫る牛型目掛けて投げる!
 眉間に命中し、踊るように蹌踉ける牛型銀河連合。牛型からで達を右頬に辺り、背後に気付くサンショウ六の全身に痺れが駆け巡る。「あ、ありがとうサンショウ子?」と返事をするしかなかった。
「いえいえ、どういたしまし……テ?
 あ、わわ--」
「どうした、サンショウ子? 後ろなんて……な、何て都合なんだ?」
 二名は左翼から落ちてくる鯨型銀河連合を目撃--全長成人体型はおよそ二十七と巨大な姿に痺れと冷却の両方を身体に流れる!
(あれが船に当たれば沈没する? 間違いなく沈没する? 戦うと決めたのに逃げるなんて出来るか?
 それでもあれは無理難題過ぎる? 柊傭兵団? いやいやいやいや、あの方達じゃ軽すぎる? ど、どうすればいいんだ?)
 気合いで何とかするんだ--分隊長イタ平に続いて小隊長ドストリーニもサンショウ六の心を読むかのように答えを出す。
「生きてたんですか、小隊長殿?」「礼を失するんぞ、山一! わしはお前達若いもんよりも早くん死ぬんつもりではあっても簡単に死ぬんような軟弱者ではない!」「申し訳ありません、小隊長殿?」傷一つ無いドストリーニを見て驚くばかりのサンショウ六。
「それに所属のない者はわしの所に付けって言っただろうんに!」「も、申し訳ありません?」「話はそこまでにしてあれを倒すんぞ、お前ら!」飽くまで気合いで何とかしようとするドストリーニ。
「で、でもあんなに大きくて空から降る銀河連合なんて迎撃出来るの?」
「雌の糸風君にはわからないだろうんが、雄というん者は何よりも気合いを重視するん性だよ」
「お、雄の僕でもあんなのはどう考えても--」
 成る程っち、その足がありますかっち--まるで何かを理解するかのように左翼甲板物摺りに近付くイタ平。
「まさか揺れを利用して飛ぶんですか、二名は?」
「それ以外に何があるっち、サンショウ六っち?」「一つ訂正しなさい」「まさか僕を?」三名の力で鯨型まで飛ぶ事を本能で理解してしまったサンショウ六!
「な、何て罪なことを? 一歩間違えたら--」
「お喋りはもうそのくらいにしましょう、サンショウ子さん?
 どうせ死ぬはずだった命? 少しくらいは対価を払わないと死んでいった者達に申し訳がない?」
「よう言った! それでこそわしが見込んだ雄じゃ!」「まさか乗り込むのはサンショウ六?」何時の間にか足斧をサンショウ六に渡すサンショウ子!
「僕には徒足空脚があるじゃ--」
「これは雌の勘よ? どうせ大きすぎて絞め技は意味ないからこれで?」
「……わかったよ、サンショウ子? じゃあ行ってくるよ?」

一兆年の夜 第五十二話 光不変の先へと 後篇(気)

「あ、足に絡みついて?」
「花は植物です。なので茎を使った攻撃なんてのを平気でやれます」
 冷静に説明してる場合じゃないでしょ--絡みついた茎を解こうと必死になるサンショウ六。
「歴史を変えてはヴィスターにも影響します。ひょっとしたらヴィスターさえ存在しなくなります。
 そ、れでも我は誰かを助ける為にヴィスターの思い出に手を出す!」
 ラディヴェは左手を天井に掲げる。すると左手の周囲から立体円を描くように不思議な文字列が広がる!
「あ、れは……ワワッチャ?
 もう少しで食べられそうだった?」
 文字列に触れた者はラディヴェとサンショウ六を除き、文字として解体される。
 不思議な光景を目撃したサンショウ六は最早突っ込む気力さえ無くす。
(きっとラディヴェさんは手が素早いんだよ? 文字が花を文字にするなんてどう考えても飛躍しすぎるもんな?)
「もう少しです。もう少しでヴィスターの思い出は消えます。それまで我に引っ付いて下さいまし、サンショウ六君」
 は、はい--サンショウ六は言われた通りラディヴェの側に引っ付く。
「計算に狂いはありません。数値に少しでも間違いがあれば大変な事になります。様々な公式を用いる事で魔法と同等かそれ以上の奇跡を起こせる『龍道』は我の武器です。これをもってしましても百億年の叫びは--」
 何かを言いかけようとした時、今度は噴火と津波が互いに混ざり合った轟音が二名の鼓膜を破裂させかねんくらいに響き渡る!
「「あがあががあああ--」」
 轟音は一の分経過しても響き渡り、二名の気を失う寸前まで苦しめてゆく!

 未明。
(……止んだ? あの音は一体? それにしてもまた……光景が変わって?)
 サンショウ六は気付く--海に浮かんでいる事に。
 彼を救出すべく『ハヤブス』と同じ大きさの船が近付く。そこから計七名から成る救出班が海から出て、彼を慎重に運んでゆく。
 山一サンショウ六は意識を失うまで天使族と思われる雄がどこにいるのかを探った。
(……あれは夢なんだよ? 大体四十八で二十代の容姿なんて有り得ないし、人族の姿で背中に翼を生やすなんて有り得ない? そうなんだ、夢なんだ?)

 そして、十二月百二十四日午前十一時十五分十二秒。
 場所は珊瑚島直轄船『星季』。大きさはほぼ『ハヤブス』と変わらないが、こちらは戦闘用に使うのか、側面に砲弾と呼ばれる鉄の玉を出す武器が装着される。実験用である為、使用すれば船が沈む恐れが大きい。なのでほぼ飾りと変わらない。
 ちなみに名前の由来は大陸藤原で亡くなった真正神武初代副最高官天同星季にちなんだもの。製作を依頼したのは二代目最高官天同美世。彼女の名をいつまでも遺す為に星季の妹美世が製作を依頼し、完成したのは美世が亡くなってから僅か一の月が経ってからの事。
 『星季』は現在、シャーク傭兵団に譲り渡される。こうしてサンショウ六の救出やそれ以外の使用を任される。
 そんな船に救出されたサンショウ六はお日様を見渡す。
(ここに所属するアリゲラルさんに聞いたけど、『フォウルン』には誰一名として生存者は居なかった? 僕らのやった事は意味を為さないのか? 僕を運んでくれたカモノさんの死は結局報いる事が出来なかった?
 それだけじゃない? 他にはもう一名この船に所属する--)
 ここに居たの、サンショウ六--甲板の階段から上ってきたのは齢二十二なったばかりのラテス山椒魚族の女性糸風サンショウ子。
「サンショウ子さん? 正直恐いんだよ?」
「まさか『ハヤブス』が銀河連合に食われたことを聞いて安心出来ずにいるの?」
「そう、それが安心出来ない? 僕は結局みんなの命を意味あるものに出来てない? どうすればいい、サンショウ子さん?」
「そうだね、難しく考えないことね? そうそう、サンショウ六はもうすぐ二十歳?」
 そ、そうだけど--何故そんなことを聞くのかというような表情になる。
「どのくらい先になるの?」
「明日になれば?」
「明日かあ、じゃあ盛大に祝わないとね?」
 祝う--困り顔になるサンショウ六。
「そうだよ? 『二十歳になったら祝う』って古式神武では古くからやってるわ?」
「真正神武に国籍を置いてるから知らなかった?」
「『成者式』なら出たわよね? あれとは異なり、『二十歳式』というものがあるんだ?」
「大人になる『成者式』なのに『二十歳式』は只単に二十歳になるだけじゃない?」
「そうかしら? 二十歳になったらもう少女から女性になるの? あなた達雄なら少年から青年に?」
 へえ、そう--興味が全くなさそうな表情をするサンショウ六。
「はあ、これだから雄というのは飾り気がないんだわ? もう少し飾りを好まないと異性の心がわからないわ?」
「御免、サンショウ子さん? 僕はその……そのの?」
「どうし……たのよよ?」
 二名はさっきまで快晴だった空が突然辺り一面を覆うように銀河連合が埋め尽くされている事に気付く!
「あわわわ、こ、これは絶対に--」
 報告しないといけないわ--サンショウ子は思わず階段の方に走ってゆく!
「どうし……ワワ!
 痛いじゃないか……じゃなくんてさっさと戦闘準備に入るんぞ!」
 齢三十五にして一の月と一日目になるキュプロ栗鼠族の中年ドストリーニ・メデリエーコフに集まるように六つの分隊員が次から次へと甲板に集結する。
「「了解、メデリエーコフ小隊長?」」
「言っておくんが、山一よ!」「何でしょうか、小隊長殿?」「お前は戦わなくんてもいいんだぞ」ドストリーニは救出された一の週も経たないサンショウ六を気遣う。
「お言葉ですが、それはいけません? 僕は戦います?
 死んでいった仲間の命が僕にあります? なのに戦わずして逃げるなんてどうかしてます?」
「ここに居てもまた生命の死を見てしまうんぞ、いいのか?」
「死なせはしません? それに僕はもういつだって死にに行く覚悟です?」
「『死にに行く』ん? それはつまり『誰かの命を守る為なら自分の命をなげうってでも銀河連合を出来るだけ多く倒す』……でいいんだな?」
 はい--サンショウ六の眼には最早一片の迷いはなかった!
「その眼だ! その眼をわしは待っていた! じゃあ許可するん!
 ただし、死ぬ事は許可しない! 若い命は次を創るん為に残さねば隊長の資格なしだ、わしとしては!
 なのでこれからも生き抜け、山一サンショウ六!」
 了解しました--船内全てに聞かせる勢いで返事をするサンショウ六!
「いいの、サンショウ六?」
「雄の心は少しでもわかって欲しい、サンショウ子さん?」
「雌は一方的なのよ、サンショウ六?」
「お喋りするんな、二名! さっさと自分の所属するん分隊に付け! ただし、所属分隊のない者はわしの所に来い!
 いいな?」
「「「「「「了解しました!」」」」」」
 メデリエーコフ小隊は全部で六十名。そして、メデリエーコフ小隊以外の小隊九つの内、二つが甲板に集まる。それらを合わせると合計百五十。サンショウ六は百五十名と共に空から降る銀河連合と対峙する!
(僕は……もう迷わない? そうだろ、ラディヴェさん?)

一兆年の夜 第五十二話 光不変の先へと 後篇(乱)

「まだ我の知ってるリーダータイプじゃなくて良かったです」
「知ってる……ってことはやっぱりラディヴェさんは--」
 そんなことよりも先を進まなければいけない--神のみぞ知るのか、それ以上話すのを遮るラディヴェ。
(僕が質問しようとしたのはラディヴェさんは『竜宮』から来たのかについてなんだけどな? やっぱりあの反応ではそうかも知れない?)
 サンショウ六はラディヴェこそ古代から通じる『竜宮』の在処を知る者ではないかと睨む。

 未明。百獣型及び指揮官型を倒してから四の時経過。
「はあはあはあ、さっきの百獣型との戦いと今までの疲労で僕の足は思うように動けない?」
「とは言っても都合良く食べ物が落ちたりはしないのです。どこかに穴でもあればいいですのに」
 ないなあ--二名の表情は空腹で生気が落ち始める。
(腹減った、腹減った? 何か食べたい? そ、そうだ? この際は--)
「止めるんです、サンショウ六君。それは銀河連合の壺思いです。そうやって地面や壁を食べさせる事で君を銀河連合に変異させようとしてます!」
 そ、そうだった--サンショウ六はもはや冷静でいられない程にまで疲れ切る。
「にしても腹が減ります。『ヴィスター』が居れば少しは落ち着けますのに」
「『ヴィスター』って誰? 雄の名前みたいだけど?」
 実は雌なんです--改めて価値観が異なりすぎる事を再認識した二名。
「雌って? じゃ、じゃあその『ヴィスター』さんは天使族でラディヴェさんの恋者なんですか?」
 さ、さあ--頬を赤くしながら目を逸らすラディヴェ。
「ま、まあ空腹を紛らわすついでだから『ヴィスター』さんについてお話ししましょう? ど、どうせまだまだ先は長い訳ですし?」
「……そうですね。ではお話ししましょう。『ヴィスター』、いえ偉大なる血統の末裔『ヴィスティス・テッタリア』について」
 二名はどこまで続くかわからない道を少しずつ歩きながらラディヴェが言う偉大なる血統の末裔『ヴィスティス・テッタリア』についての話が始まる。
 彼女はラディヴェの居た空の惑星では『導者』と呼ばれし存在で、実質百五十年以上も長生き出来る存在。彼女は『龍道』のみならず『魔法』と呼ばれる『エーテル』と『マナ』の融合が織りなす奇跡も使える。それだけでなく『導者』は代々、身体能力と特殊な呼吸法を用いた尋常成らざる身体能力も併せ持つ。その中でヴィスターは双子の妹でありながらも同時代の導者の中では抜きんでており、『テッタリアの末裔』と呼ばれるに相応しい存在である。
 そもそも『テッタリア』は過去の惑星から来た一族で彼等は過去には『テンタウ』と呼ばれし一族。やがて空の惑星のとある現地で『テンタウ』は『テッタリア』と名字が変化してゆく。そんな『テッタリア』の一族は代々男系による万世一系。中継ぎで導者の雌が長に成る場合もある。ヴィスターは中継ぎという役割を揺るがす存在であった。
「あれ? どこかで聞いたような一族だね、『テッタリア』は?」
「これ以上は話せばそちらの歴史を変えかねんのでここまでです……我が居ること自体が歴史を変えていますかな?」
「ま、まあいいじゃないです? この際、僕も水の惑星に於いて自慢となる一族を紹介するよ?」
「一方通行だが、聞いても歴史に変化は起きないはずですが」
「代々続く万世一系の『天同家』のお話を?」
 サンショウ六は自分が知りうる『天同家』についてラディヴェに聞かせた。それによると現在三つの内、二つの国を支配する一族は皆『天同家』であり、支配体型は大きく異なる。
 まずサンショウ六が国籍を持つ真正神武は仙者と呼ばれる天同が最高官を務め、政が出来ない場合は副最高官と摂政が代わりをやる。その内の副最高官は必ず天同の者が務める。
 次に古式神武では真正神武と同じように最高官はある。だが最高官こそ一般生命でも可能。ただし、ここ古式神武には象徴制度がある。象徴には天同の者しか成れず、なおかつ万世一系の流れを汲む者でなければ象徴になれない仕組み。故に中継ぎとして雌が成る場合もあるが、女系は成れない。
「不思議な国々ですな。どちらも天同が実質の支配者なんですね」
「元々は同じ天同が三つの国に別れる時に彼等も三つに分かれたって聞きます?」
「それにしても天同とテッタリアはこうも類似しすぎます。まさか元々は同じ一族なんて事はないですよね?」
 それはさすがにやりすぎでしょう--二名はその説を完全に間違いだと断定した。
「テッタリアにテンタウ、それに天同……ん?
 そう言えば君は『仙者』なんて言葉を口にするけどあれはどうゆう意味ですか?」
「あ、話に入れるのは忘れた? それは--」
 突然、雷の鳴る音が二名の耳に響く!
「わわ? どうなってるんですか?」
「どうもこうも……う?」「どうしたの……ってここどこ?」二名は瞬きする内に花の大地に立つ。
「花? どうして花が……ここはまさか--」
 二名が花の大地を眺める暇なく花は二名に襲いかかる!
「この花も銀河連合だったのか?」
「奴等が花になるなんて朝飯前です! 本当に恐ろしいのは--」
「話は一旦中断するね? 花が相手じゃあ僕は自慢の徒足空脚も意味がない?」
「『龍道』で一掃したいがヴィスターとの思い出に似すぎたこの花園を払うなんて我には出来ません!」
 じゃあ一緒に逃げましょう--二名は花型銀河連合から逃れるべく蹌踉けた足を無理矢理動かしてゆく!

一兆年の夜 第五十二話 光不変の先へと 後篇(混)

「し、しっきかんがたあああああ?」
「ハンドレットタイプとリーダータイプ……まだジャネラルタイプが居ないだけましなのですね」
 百獣型と指揮官型が揃うのを見て二名の反応は様々--ある者は徒足空脚最強の銀河連合と近接戦最強の銀河連合を見て身体を打ち震わせ、ある者は淡々とする。
「サンショウ六君?」「何でしょう、ラディヴェさん?」「我はリーダータイプを相手します」「リーダータイプ……え?」サンショウ六は気がおかしくなったのではないかというような表情でラディヴェを凝視する!
「大丈夫です、サンショウ六君。我の住む世界ではあれの対処法は確立してます。信じて下さいませ!」
「で、でもあれは最強の銀河連合なんだよ? 僕らの住む世界の仙者でも勝てるか勝てないかわからないくらい--」
「いえ、我はあれよりも強い銀河連合を知ってます。
 ですが、今はそんな話をする場合ではありません」
「ありませんって……うわ?
 いきなり……わああああ--」
 二体同時に仕掛けないで下さいまし--ラディヴェは右手の平から文字のような物を出して、サンショウ六から突き放す!
「凄い? その手から出る文字は何なの?」
「今はお喋りの時間はありません。とにかく我は一名でリーダータイプを倒して見せます。サンショウ六君は申し訳ありませんが、ハンドレットタイプを一名で倒して下さいまし!」
 百獣型なんて無理だよ--指揮官型よりは相手出来るとはいえ、それでも強い銀河連合を押しつけられたサンショウ六。
(弱音は吐けないよね? こんな姿を隊長達が見ていたらきっと怒っていただろう? いっそのこと強音を吐かなくちゃ?)
 さあ来い、百獣型--覚悟の据わったサンショウ六を見て百獣型は少し怯む!
(どうやって戦うか? 僕は学問が好きじゃない? なので数学者の名前とか詳しく知らない? でもコウモ……危なかった?
 コウモ・リックマンの名前は知ってる? けれども今はやるしかない?)
 先足を許してしまったサンショウ六だが、すぐに調子を取り戻す--逃げ決めを受けるよりも速く右前足による引っ掻きで百獣型を後ろに下がらせる!
「避けてくれた? 僕は一族代々から強いと思う銀河連合には油を断たないようにしている? 僕はお前ではないにしろ銀河連合全体に怒りを抱えてるんだ?
 その怒りを少しでも発散してやる?」
 本当ではない事を敢えて言うサンショウ六--それは自分自身への怒りをぶつける事で油断ちを防ぐ為。
 二つは気の面では互角となり、次の出方を窺うように睨み合う--少しでも呼吸の波長を乱さないよう慎重に!
(技術面は僕に利はない? 力の面も速さの面も……だけど心なら勝てる?
 たぶんじゃなく確実に心の面では? だけど頼っても勝てないことはリックマンが証明してるんだ? 一本化してはいけない?
 僕がとる戦いは--)
 その先を考える暇なく二つは勝負の一撃を懸けるべく同時に踏み込む!
 百獣型は両前足で頭を潰しにかける--サンショウ六がとった一撃は頭突き!
 両者の攻撃が交差する時……決めたのはサンショウ六であった!
(イデデ……最初から命を捨てる頭突きであいつの動きを弱めるのが狙いだ? 僕の頭突きを只の頭突きと思ったのがあの銀河連合の油断ちだ? あの頭突きは駱駝族の動きを研究することで誕生した山一家秘伝の頭突き……わあ?
 自慢話に酔ったら良くなかった?)
 予想以上の突進力を発揮した頭突きを首に受けても百獣型は攻撃を止めない。だが、神経をやられたのか両後ろ足が立てなくなった!
(文字通り動きを止めたんだな? ここは一気に倒して……いや待て?
 『必ず倒せる』と思わないようにしなくちゃ? ここは慎重に近付いて本当に動ける状態でないか確かめないと?)
 用意なしの接近をせず、構えながら足を進めてゆく。
(ど、うやら本当に後ろ足は動けないみたいだね? 良かったな、ここはゆっくり息の根を止めないと--)
 緊張を弛んだ瞬間を狙うように百獣型は口から液体を吹き付ける! ところが都合良くサンショウ六の両眼に一滴も当たらない!
「唾……そんなことよりも先にやらないと?
 えっと、死なせたことに怒りを感じていいです?」
 サンショウ六は百獣型の首に両前足を引っかけると力一杯締め付ける--骨の折れる音が数回するまで!
「はあはあ、勝てたんだね?」
「どうやら一名で出来ましたね、サンショウ六君」
「ラディヴェさん? 怪我はないの?」
 心配無用です--サンショウ六と異なり、冷や汗一つかかないラディヴェ。
「で、でも相手は最強の……え?」
 サンショウ六は指揮官型の死体を見て驚きを隠せない--あちこちに文字のようなものを刻まれて息絶える様はどのような方法で死なせたのかをいくら頭で探っても混乱する程に!
「これが我の使う『龍道』です」

一兆年の夜 第五十二話 光不変の先へと 後篇(迷)

 サンショウ六は握足(握手)して気付く--目の前に居るラディヴェヴァルデェンが自分よりも二倍以上も年上であることに!
「あわわわ? そ、そんなに高齢だったのですか? まさ、まささか仙者ではないでしょうか?」
「仙者? ああ、我の年齢の事ですか! 四十八なんてまだまだ若い年齢ですぞ。それにそもそも『仙者』とは何でしょうか?」
「え? 若いの? さすがにそれはないよ? 四十八なんて僕ら生命がそこまで長生きできるかさえ分からないんだよ? それを『若い』の一言で済ますなんて? 僕には是非とも長寿法を知りたいよ?
 そ、それから『仙者』を知らない生命が居るなんて初めて知ったよ?」
「長寿法はないです。元々……おかしいですな?
 我ら生命の平均寿命は百歳なのにどうして君はそんな事を言えるのです?」
 ひゃ、ひゃくさああああい--思わず飛んでしまうサンショウ六!
「あれ? とすれば君は我とは違う世界の生命なのですか?」
 ど、どうゆう意味--とんだ衝撃で右後ろ足を捻って痛がるサンショウ六はラディヴェヴァルデェンの疑問に耳を傾ける。
「ひょっとすると君の言う『仙者』とは我の常識で言う『導者』かもしれないですね」
「『導者』? 導く者と書いて『導者』? じゃ、じゃあラディヴェヴァルデェンさんが住む世界は違うというんですか?」
「済まないです。我の事はこれから『ラディヴェ』と呼んで欲しいです。
 話を戻してサンショウ六君だったっけ?」
「そうですが」「君の住む所は何銀河なんです?」「そこまでは知らないけど、星は水の惑星だよ?」サンショウ六は頭の中が混乱して自力で思考できない状態であった。
「水の惑星、まさか……いややめましょう!
 とにかく君の住む銀河はアマテラス銀河。その中にあるスサノヲ太陽系なんですね?」
「た、たぶん?」「じゃあ我の住む銀河を教えましょう。我はオオクニヌシ銀河に住みます」「オオクニヌシ銀河?」サンショウ六にとって星を観察する趣味がない以上、何の話だかさっぱり分からない。
「そして我が住む惑星はオオナムヂ太陽系第三惑星『空』です」
「『空』? 何だか空に住んでそうな名前だね?」
「いや文字通り空に住みます
 はい--幻を披露されるような感覚に襲われるサンショウ六。
「我の住む世界では空を登る事以上に地上へ潜る事を夢見る若者が多いのです。けれども蝙蝠族や黒羽族のように滑空を用いて潜らないと中々深くまで潜れません。ですので--」
「すみません、そこまでの話はいいですよ? つまりラディヴェさんは僕ら水の惑星民じゃないってことでいいんですね?」
「そうゆう事になります。そしてここが……重要なのはそこじゃないです。
 とにかく我とサンショウ六君は急いでこの中から脱出しましょう!」
 ええ--再び握手(握足)を交わす二名。
「とにかくここはドラゴンタイプ銀河連合の体内です。いくら進んでも我々が小さくなりすぎている以上は--」
「どらごんたいぷ? 何ですか、それ?」「名称は気にしなくていいです。どうせ我の住む星の用語ですので」「訳分からないよ?」サンショウ六にとって異星の言葉ほどややこしい物はない。
 二名はようやく歩き始めようとしていたが--
「どうしたんですか、サンショウ六君?」
「えっと僕が起きたのはどれくらいですか?」
「時間の事ですね? 君を発見したのはついさっき……二、三分前だよ」
「えっと僕が眠っていた時間がわかりさえすればいいんだけど?」
「じゃあ体に触れて数値を測ります」
 ラディヴェは右手の平をサンショウ六の背中にそっと触れる。するとサンショウ六はよくわからない文字が飛び出すのを目撃した!
「な、な、ななんだ?」「『龍道』……それによると眠った時間は二日と三時間十五分です」「二日……二の日なんだね?」よくわからない単語を質問しようとしたけど、ややこしくなるので流したサンショウ六。
「どうやら銀河連合は眠っているサンショウ六君を食らえないほどにこの領域を支配しきれていないと見ました!」
「もうさすがに混乱するから話は後で聞きます?」
「うーん……そうですね。先に進みましょう」
 二名はやっと足を動かし始めた……。

 未明。
 二名が歩き始めて五の時が経過。二名は空腹の只中にあった。
「僕は二の日も食事してないから余計に食べ物にありつきたい?」
「仕方がないでしょう、サンショウ六君。銀河連合が食べ物を提供してくれる存在だったら我々生命は四万年以上も苦しむ事はありません!」
「『四万年』……まあとにかく銀河連合は僕達が飢えて死ぬことも望んでいることはわかります? だってこんなにも歩いて一体も銀河連合が居ないなんてさすがに--」
 いや、目の前に居ます--ラディヴェが右人差指で示す方角には百獣型と指揮官型が聳えていた!

一兆年の夜 第五十二話 光不変の先へと 後篇(零)

 サンショウ六はおよそ十秒ずつ五日間の記憶を思い出そうとしていた。
(僕はどうしてここに? そうだ……僕は中で--)

 十二月百十八日午後五時零分四十七秒。
 場所はフォウルン海洋種族用鯨族区域。事実上船の動力源となる鯨族専用の区域に入ったサンショウ六。
(銀河連合はどこかに潜んでいる? それだけはわかる? だから僕は……やめよう?
 今は少しでもいいから生存者を見つけないと?)
 血という光を目印にサンショウ六は奥へ泳いでゆく--その先に何があっても!
 そして、彼は船の動力部に入った!
(これは……え? こんなのってありなの?)
 彼が見たモノは僅かな希望でもなかった! ましてや悲観的な光景でもなかった! あったのはどちらでもなくここは……体内そのモノだった!
(あ、わわわ、あ、あわわ? ぼ、くは、は、はは、今まで銀河連合の体内に入っていたっけ? 居たのは、は、あ、ああ、船の中だよな、な、あ?
 な、の、ににんんんどどど、うう、し、いい、て--)
 どうして赤黒い生々しいモノが見えるんだよおオオオ--サンショウ六は叫ぶ内にここが海の中ではない事にも気付く!
 彼はいくら頭を回転させても今まで海にいた自分が突然、陸に……それでいて銀河連合の体内にいるのかを理解出来なかった! 彼は海に潜る際には息がどこまで続くかも覚悟していた--それだけに突然息継ぎの出来る空間に出た事には整理しても整理出来なかった!
(そ、そうだ? だ、だ、脱出しなくちゃ……あれ?)
 後ろを振り向くと既に通路はない--代わりに血管の浮き出る赤く蠢く壁が目に映る。
 彼は恐怖で顔が真っ青になりながらも注意深く振り戻る。それから三回深呼吸して足を踏み出す。
(切り替えはだだ、いじ、な、なんだ? ででで、なないと、死んでいった仲間達……ベアケット隊長やスメラビノ副長にマルノオビさんやメエメンさん、きね由さんにカモノさんとサイ頭さんに叱られれてしまま、う?
 僕は山一サンショウ六……父サンショウ兵衛の第二子なんだ?)
 彼は体内に居ることもあって父の名前を思い出しながら勇気を奮い立たせる!
 踏みしめる音といい、感触といい、彼は改めて快くない場所に立っている事を実感。彼がここへ来たのは生存者を確認する為。今はこの中を脱出するかを探る!
(一体いつ銀河連合が僕に襲いかかる? 上も下も横も全て注意してる? 薄暗いけど血管らしきモノで僕の身体を引き裂く? それとも実は壁で僕を押し潰す……そんな碌でもないことを考えるなんて神様に申し訳ない?
 今はそうじゃない? 銀河連合に気を付けるのはいいけど、ここを脱出する以外に道は無い? 確かに生存者の方を考えもしたけど、ここにいるかさえわからない?
 ここは……やめよう?)

 未明。
 この中に入ってだいぶ時間が経つ。サンショウ六の足は蹌踉めき、目は虚ろになる。戦闘による疲れと海洋種族用の船内を泳ぎ続けた疲れが一気に出て、彼を眠りに誘う。
(まだ、だ? どこま、で、つ、づく? どうしよ、う? 寝ようか、な……?)
 だらしなくうつ伏せになりながらサンショウ六は目を閉じる。

 未明。
「……きるのです」
 サンショウ六は聞き覚えのない声を耳にする。
「……きるのです、山椒魚の者」
(聞き覚えのない声、訛り? もしやここが『竜宮』--)
「起きるのです、山椒魚の者」
「んあ? 誰……かな?」
 彼の目に映ったのは人族らしき青年……だったのか?
「はい? えっと、翼?」
「起きましたですか、山椒魚の者。喋ると言う事はあなたは銀河連合ではないのですね」
 誰--サンショウ六が見た背中に白い翼を生やした茶髪の男。
 見た感じでは二十代半ばで成人体型は一とコンマ二くらい。訛りはですます調。顔付きは今で言うなら美形には程遠い。
「良かったです! ここに君のような生命が居て! 君の名前は何て言うんですか、山椒魚の者」
「本当は僕の方から質問したんだけど……いっか?
 僕は山一サンショウ六なんだ? こうゆう訛りは山椒魚族独特なんだ? 齢は十九にして十一の月と……日にちがどうしても判断が付かない? ここに来る前は確か二十四日目だったんだが?
 まあいいや、出身はラエルティオ? ラエルティオ山椒魚族の山一サンショウ兵衛の第二子として生まれたんだ? 宜しくね、翼を生やした者?」
「ラエルティオ? 十一の月? 齢は十九? 随分変わった自己紹介ですね」
「あれ、そうなの? 僕達生命の間では普通なんだけど? あなたはなんて種族なんだ?」
「我の事ですか? 我の自己紹介を初めていいかね?」
 いいとも--サンショウ六は変わった男の自己紹介を促す。
「我の名前はホーウェイジェウェン・ラディヴェヴァルデェンと申します。種族は天使族です。君の紹介で言えば高村天使族になるのです。年齢は四十八です。月と日はさすがにわからないです。父は国会議員を務めるホーウェイジェウェン・ラディヴェレルディンです。我は父の三男として生まれました。宜しく」
 彼等は互いの手足を出し、固い握手(握足)を交わす。

冬眠への道 神々の雄叫び篇

 どうもdarkvernuです。何だかんだ言いながらも偉業を達成する者が何かしらのスキャンダルを持っていてもそれが代の為になるのなら大体認める所はあります。ただし、バレンティンが偉業を達成する為にあのようなスキャンダルを持つのは自分にとっては認められません。それだけを冒頭に書いた後、試作品をどうぞ!

 百四億九千八百七十六万五千四百三十二年一時間零分九秒八七……それは最大悪が誕生した数字。
 最大悪は瞬く間にあらゆる超宇宙を灰燼すら残さず破壊し尽くしてゆく……この世で最速の宇宙速度七で!
 最大悪の名は……あらゆる真実がこの一文字によって破壊し尽くされ、文字通りと化す!
 に対抗すべく立ち上がったのは全ての超宇宙の支配者……生命が敢えてひれ伏す崇拝対象。
 神は生命の間では未来永劫議論が交わされる存在である生命は万物には宿ると主張し、ある生命は唯一と主張し、ある生命はの存在を否定する。
 そして現在彼等の中間に当たる幹部級の者達と死闘を繰り広げていた……フラワーCセカンド超宇宙太陽系の真っ直中で!
「こ、この神共は強い! 十認衆干凵カのFサンに仕えしこのマッスラー様がこうも押されるとは!」
「我の名はスミスハンド……の見えざる手を知らぬはずはないだろう?」
 ふざけるなああああ--マッスラーは右手の筋肉を一点に膨張させる!
「スミスハンド、あの力は何だ?」
が力を与えている。ケインジアンよ、お前も知る穴を掘って穴を埋める作業で無理矢理あそこまで!」
「食らえええ、マッスルストロングパアアアアンチ!」
「ここは私に任せてもらおうか、スミスハンドよ」「任せたぞ、ケインジアン……中央一体の力を使えし神よ」ケインジアンの周りに桃色の光が集まってゆく!
「マ、マッスラー様!」「知ってるわい、あの光は様が滅ぼそうとしているあの宇宙が与える力だろう?」マッスラーはケインジアンとスミスハンドの領域に入ると星の大きさまで膨張した右手をぶつける!
「死ねええええ!」「いや、死ぬのはお前だ!」右手があと一歩の所で急停止!
「な、何故……ゴギャアアアア!」マッスラーの右手は左螺旋に捻じれ、そのまま肩、首、胸部および顔まで巻き込みながら凸凹の球になった!
「さ、すがはだ!」「空間使いだったとは!」「だ、が様に比べたらそんなものは屁でもないなあ」「マッスラーは油断したから死んだんだ」「一斉にかかれば負けねえ」マッスラーの手下達はまるで誰かに操られたように二柱の神に特攻を仕掛ける!
「この言葉を吐かせているのはだな! このスミスハンド一柱で数万の雑魚を仕留める!」
 スミスハンドは全身から黒い物を飛ばしてゆく--それは彼の術『神の見えざる手』である。
 『神の見えざる手』はマッスラーの手下たち全てを二柱の神の眼前で踊る様に動き、小宇宙時間にして百億年もの長きに渡って赤い星の形へと仕上がる。
「時間まで使うなよ、スミスハンド」
はこうして全ての者をひれ伏せるんだ。時間くらいどうだって言う?」
「まあな。それにしてもマッスラーも大したもんじゃないなあ。なんてのも実は影でびくびくしてるんじゃないかあ? 部下をこき使うんだから」
「だろうなあ、と言いたいがまだ幹部級だろ? 『十認衆』は全部で二十も居る。たまたまそんな奴の部下が出てきたのはいいけど、あれは末端かも知れんぞ」
「『十認衆』なのに二十とはどうゆう意味だ?」
「奴の口ぶりからして最低でも男女の二つは分かれているんだろう。となると女の方の『十認衆』も居るやもしれん。奴が言ってたのは三文字だが、合わせると男になる。簡単な話さ」
「すまないな、スミスハンド。危うく慢心するところだったよ。過小評価もしてしまった。
 まあいずれにしろ俺達が手を合わせればなんて--」
「倒せる……なんて思わない事だ」
 ケインジアンは自分が言いたい事を寸分の狂いもなく言ってのけた若い男の声に恐怖を覚える!
「ど--」「こにるんだ、……一秒後に姿を出す」宣言通り一秒後に二柱の前に姿を現すと呼ばれる黒頭巾のか細い男。
「み、見えなかった! あ、れが--」「なのか……その通り。そしてお前らはこう--」「俺の言葉を喋るなああ!」「止めろ、ケインジアン!」思考を読み取られることに激怒したケインジアンは左手をかざす!
「な、何故捻じれない!」
「貴様らが空間を操る事くらい初めから予測していた。対処法はこうして次元を一つ増やす事で十次元による攻撃も十一次元の前では後一次元足りずに次元の空を切る……つまらない話だと思わないか?」
「何が--」「言いたいんだ! 小難しい事で俺達の上を行ったと思っているのか……違うな。私は初めから貴様らの上でも下でもない。絶対的な存在は上下の垣根すら越えているんだよ、始めから終りまでな」「だから俺の言葉を喋るなあああ!」今度はよりも速く時を止めて懐まで近付きながら左手を翳す!
「捻れたあああああ!」ケインジアンはそう思ったが「な、ぜ……」
「馬鹿な! どうして攻撃を仕掛けたケインジアンが俺の背後を漂う!」
「時を止めた後、十次元による攻撃をしただろうが私は奴が仕掛けるのを初めから予測済みだ。だから私は奴よりも六徳速く奴が攻撃を仕掛けた未来まで跳んで顔面に右の一指突き、臍に左肘打ち、首に左踵回し蹴り……」「わかったわかった! 計六発も浴びせたんだろ!」と途中で遮るスミスハンド!
「惜しい……計五発だ。右肋に左掌底を放った後、全体にレーザーランダムシュートを放ったまでの事よ」
「これがなのか……だが、俺はだ! 見えざる手で最後まで--」「抵抗する……事はもう無い」最後通告が出された時、スミスハンドは黒い物体に侵食された!
「また貴様か、生子」「あら、バレちゃっやーよ!」は左に振り向くとそこにはセンスの欠片もないファッションをしたロングヘアーの女が浮かぶ。
「攻撃する時間本部余裕も与えずに倒すなんてよっぽど神々に力を示したい訳?」
「当然だろ。いつまでも支配者で居る時代はもう終わった。これから始まるのは一方的な破壊だという事を知らしめるのが一番手っ取り早い」
「あいつらは黙らないっちゅう訳ね!」「気分悪いな、ふざけるな生子」「あらあらあら、フッザケルナアアって?」「ベスターの一族の事だろ、既に予測済みの事柄」は生子の調子を狂わす態度に翻弄される事なく淡々と喋る。
「余裕なんだ。てっきりビク子ちゃんかと思っちゃいまんがな」
「お喋りはお終いにしよう。あんまり奴等に何かをやればこちらも--」「私と戦って無事で済むの?」「今はその時期ではない」冷酷な目を見せる生子に全く動じる気配のない
「そうね、一応十認衆もやってる私だし。ここでバイナラってーるわ!」いつもの瞑る目に戻った生子はその場で姿を消した「ただし、貴様に権限はない」
「遅れて申し訳ありません、様」「遅いぞ、ロストパワー」背後から宇宙速度六でやってきた軍服姿の口髭が特徴的な男は頭を深々と下げる。
「そろそろ本体との戦闘準備に入りました」
 では戻るとするか--とロストパワーの周囲に巨大なブラックホールが形成され、彼等を右捻りに呑み込んだ。
 こうして最大悪との戦争を開始する……


 何回も調子に乗って申し訳ありません。本当は冬眠への道シリーズで紹介した試作品をもう一度出す予定でしたが、いろいろあって出来なかったので代わりに試作品『神々の雄叫び(仮)』の冒頭を紹介したのですが、あまりにも長すぎた。その原因は小学生が考えそうなキャラ謎が原因です。このキャラは本当に小学生の頃に考案した。なので描く場合は小学生の頃に戻った気分でやっちまったぜ(笑)!
 話を戻してこの物語では神々は謎と呼ばれるあまりにもチート過ぎる奴を倒すべく一致団結して倒そうとするものですが、話を読んだ方ならもう諦めている方々がたくさんいると思います(悲)。まあ話を戻しまして、ケインジアンとスミスハンドと呼ばれる経済学で有名な名前も謎の前には……でしたが他の神なら勝てる奴は居るだろう! と思ってる方がいればそれだけで有り難いと思いますが……まああれは自分が考えた中では最強の悪の一つになってますのでその、なんというか(苦)。
 話を切り替えますね。宇宙速度ってのは光よりも速い単位ですが、相対性理論とは矛盾しません。あれは宇宙の膨張速度までは言及しませんのでその辺は理解して下さい。
 ちなみに自分は最強の悪を三つも用意してます。一つはマクロ的に巨大過ぎな奴で、一つは完全な理性を備えた奴で、一つは透明すぎて才能を超越した者でないと見えない奴です。謎は中間に位置します。
 ついでに最強の悪とは対称的に最強の善も三つ用意してます。一つは雑草すら殺す事にも罪悪感を覚える奴で、一つは女子供だろうが全力で殴ってみせるくらい失礼な奴で、一つはあまりにも可哀想な奴です。
 以上で試作品の説明を終えます。

 第五十一話の解説を行う。今回は二部構成になってます。その内の前篇に当たるお話をお送りしました。
 主人公は山椒魚族なので何を言っても疑問系になってしまう為、そうゆうのが好きじゃない方がいらっしゃいましたら申し訳ありませんが一度決めた事は気分次第にならない限り変えるつもりは御座いません。えっと悲観的なのはこのくらいにして前篇に当たる今話ではラテス島に続き、仁徳島までもが落日を迎えました。ラテス島は毎度の事なのであまり悲しさは出ませんが、仁徳島だけは別です。インテリが集まる島がまさか終焉を迎えるなんて誰が予想出来ますかな? 済みませんが、自分はそうゆう奴ですよ(辛)。とまあ個性的なインテリが集まる場所もいつかは朽ちる様をちゃんと描いたかはともかく銀河連合がいかに恐ろしいかを改めて実感させる事が出来たと自分は思います。
 ついでに二つの旅客船を少し説明します。二つは内容を読んでいたらわかる通り彼等の名前を冠してます。そんで動力源と言えば実は二十五話及び二十六話で明らかにしてます。他にもあったな。二十八話にもちゃんと記されてたよ。まあ面倒くさい事なのでまた読み返す事を勧めませんがね(苦)。ともかく動力源は巨大な海洋種族である事は確かですぜ。
 とまあ今話では結末があれになって「あれ?」ってなったならそれはそれで自分は嬉しいです。今話でのあれは後篇で明らかにしてゆきますね……ただし自分がまともに書けたらの話ですが(辛)。
 以上で第五十一話の解説を終えます。

 来週以降はいつもの時事ネタに戻ります。そして五十二話をもちまして一兆年の夜は休載に入ります。自分は案外長続き出来るほど身体は鍛えてませんので恐らく二年ないし三年以上は休むかも知れませんが、再開は毎週日曜の雑文で追って連絡します。宜しくお願いします。
 では五十二話及び再開後に書く予定の題名を載せます、いつものコピペで。

 一月
 二十日~二十五日   第五十二話 光不変の先へと 後篇        作成日間
 予定日不明       第五十三話 再誕の火 真正神武最後の最高官 作成日間
               第五十四話 再誕の火 男女は運命に導かれて 作成日間
               第五十五話 再誕の火 火は日を呼び寄せる   作成日間

 休む間も筆を止めませんが、ここで書く日はほぼ日曜になりますのでそれ以外では別のところで書く予定です。まあどこかについては秘密主義で行きますけど。
 それじゃあ今日はここまで。さあ、寝るぞ!

一兆年の夜 第五十一話 光不変の先へと 前篇(七)

 カモノはサンショウ六を掴みながらもう一方の船へと向かう。
「カモノさん?」と安心できずにいるサンショウ六にカモノは答える。「きと無事だ、もう一つは」
(もう一つは『ハヤブス』よりも五の分遅く発進したんだよね? えっと名前は『フォウルン』で大きさはほぼ同じで本来は旅客船だったから?
 そ、そんなことよりも『フォウルン』は『ハヤブス』より右の岸に着いてたからカモノさんが飛んでいる方角は間違いなく吾妻--東の意味--だね?)
「お! サンショウ六よ、どやら見えきた……重たった。
 やっと……ざつく?」
ざつく? 『ざわつく』ってこと? どうし……まさか--」
 二名は大きく旋回しながら振り返るとそこには数千もの烏型が剥き出しでありながらも歪み続ける空を覆っていた!
「追っていたのか……俺達を!」
「こんなに近づかれたら逃げられない? 仮に逃げ切っても船が危ない?」
 仕方ないなて言い訳でしないけども--カモノはゆっくりと掴む力を抜いてゆく。
「な、何で落とすんだよ?」「お前を掴んで向かっらこいつらはハヤブスのみなずフォウルンの乗組員さえ食らっしまう!」カモノは守るために命を捨てる事を決めた!
 カモノさあああん--海に落ちながらカモノを叫ぶサンショウ六!
「ベアケット隊長、副長、サイ頭、きね由さん、メエメン、そてマルノオビ……腰砕け共の仲間入りを果たす!」
 カモノは最後の戦いを遂行して見せた……!

 午後二時二十五分十四秒。
 サンショウ六はカモノが黒い霧に呑み込まれるのを目撃する。
(カモノさんまで居なくなってしまった? 僕はもう一名だけで戦わなければいけないの? それとも僕も守る為に死んで見せるの?
 そうじゃないだろ? 僕は副長が死んだときに誓ったんだよ? 死んだ者を背負って生き抜くって? まだ覚悟がないのかな、僕って? まだ謀りないことに挑戦するのかな、僕って?
 ってそんな哲者達が考えそうなことよりも早く『フォウルン』に乗らないと? 『フォウルン』は、『フォウルン』はあの船体の色だったね? 急いで乗らないと?)
 サンショウ六は光を目指して四本足を動かしてゆく!

 午後四時二十七分二十八秒。
 場所はフォウルン甲板。
 プハアア--サンショウ六は船首の方から甲板まで攀じ登った。
(もうお日様は沈んでゆく? そう言えば昼ご飯は食べたっけ? 食べたね?
 そ、そんなことよりも--)
 サンショウ六は四本足をだらしなく伸ばしながら気付く--空がお日様の大きさまで歪んでいる事に!
(元の歪み? いや、これは全く新しい歪みだよ? しかも沈みそうなお日様と同じくらいの大きさはある? えっと……カモノさん?)
 サンショウ六は気付いてしまう--カモノの死を認めた後の自分を。
(こんなにも身近にいる者の死が悲しいなんて? 今まで戦ってきた仲間の死が悲しいなんて? もういなくなってしまうとこんなにも誰かを欲しがるのか……誰か?)
 サンショウ六は気付く--甲板には誰も居ない事に!
(おかしい? 本来なら船夫や傭兵か軍者が見張りをしているのにどうして居ない?
 信じるか? 良くないことを信じるくらいなら自分の目で確かめてやる?)
 サンショウ六は甲板から降りてゆく……。
 
 午後四時四十七分五十九秒。
「ここにも居ない?」
「どうしてここにも……オーイ?
 誰か居ますかああ?」
 サンショウ六の出したくない予想に反して陸上種族用の階層には生命が誰一名も居ない。
(急いで調べたから詳しく見てないけど、あちこちに血の跡が見える? 絶対に銀河連合の仕業だ? あいつらはどこかに骨を隠してるんだ? どこに……それは僕ら両生系と呼ばれる水陸両用の系統だから出来る種族がやるんだ?
 海洋種族用の階層にあるんだ、きっと?)
 サンショウ六はそれでも僅かな希望を信じていた……。

 午後五時零分零秒。
 場所は海洋種族用二階廊下。
 サンショウ六は潜ってすぐに気付く--血が流れ出ている事に!
 その後を辿って彼は泳いでゆく--それが銀河連合のやり方だと知っても!
 そして彼は辿り着く--鯨族区域へと通じる扉に!
(この先にはあいつらが待ってるのか? それとも避難してる途中で傷を受けた生命が居るのか? 今の僕は後ろ向きな方にしか頭が回らない? 確実に銀河連合が待ち伏せする方を考えてしまう?
 今の僕は頼れる仲間をみんな死なせてもう疲れ果ててしまった? たった数の時しか経ってないんだよ? どうしてなんだろう? どうしてこんなにも疲れ果ててしまったんだろうかな?
 ……本当ならどっちも正しいのが見えるんだろうか? 答えは--)
 サンショウ六は網式扉に身体を潜らせてゆく。

 未明。
 サンショウ六は鯨族区域に入ってから五日間の記憶を置いてゆく……気付いた時にはシャーク傭兵団東藤原海洋珊瑚島支部直轄の船に拾われる。
(ここは? 僕はどうしてここに? 確か海の中に入ったはずなんだけど?)
 山一サンショウ六はまだ生かされている……!









 ICイマジナリーセンチュリー百六十七年十二月百二十三日午前四時二分十二秒。

 第五十一話 光不変の先へと 前篇 完

 第五十二話 光不変の先へと 後篇 に続く……

一兆年の夜 第五十一話 光不変の先へと 前篇(六)

 午後一時五十七分五十八秒。
 場所は甲板。
 至る所に銀河連合が埋め尽くす--空から降り、軋む音は響き、船体を左右に揺らす程の数。
 そんな場所に一番乗りを果たしたベアケット分隊は現在も心の葛藤を続ける--怒りと恐怖が互いに揺れ動きながら!
(こんな時こそそれらを呑み込んで勇敢なる心にしないと? 数がどうだって言うんだ? もうすぐ三小隊が来るんだ? そうすればこんな状況だって?)
「『何も考えるな』アアなんてエエ無理な相談だが、こうゆうウウ時こそオオ心を強く持て! オオお前らあああ、アア必ず生きイイ抜くんだ! アア誰よりイイもなああ!
 でエエは進めエエエ!」
 五名はそれぞれの方向へと足(翼)を運ぶ--固まるよりも分散して戦う方が有利と判断!
 サンショウ六が向かった先は落下が最も少ない箇所--そこは即ち銀河連合が比較的少数配置された所。
(問題は質なんだよな? いくら数が少なそうでも質に関してはどうにもわからない?)
 サンショウ六は今、陸上銀河連合十五体と真っ向勝負を仕掛ける!

 午後二時二分三秒。
 ベアケット分隊に続いて蘇我小隊の二分隊が甲板から現われる。そこで彼等は数の少ない方へと足並み揃えて進撃してゆく!
「いいやわ、みんな! 奴等の数は八体よの。二分隊合わせて十一名居るよの! こちらに負けはないやわ!」
 分隊長蘇我パタ康は自信満々に言う。だが、二分隊の運命を決めたのはそんな安易な判断であった。
「パタ康分隊長ス、あれをス!」「何だ……えよの!」二分隊全員が空を見上げるとそこには無数の流れ星が彼等に向かって降り注ぐ!
 流れ星の速度は空を見上げた頃には事既に遅い--瞬時にして二分隊の傭兵達を肉の塊と化すには十分であった!
 腰砕け、共めス--右刃をもぎ取られ、限界に達するマルノオビはその光景を一部始終する。
 彼は死の間際に「俺、も腰、砕けス」という言葉を呟き二十五体もの銀河連合に一斉攻撃を受ける……

 午後二時五分四秒。
 きね由はくの字に折れた棍棒を離さず、振り回す--自身は左腕を食われた形で!
「済まない。どうやら俺端生き抜く斗いう約束尾果たせそう似ない。けれども数端……減らしてやる!」
 棍棒を投げ捨てるときね由は片手で二体もの銀河連合を、身体に食らいつく計九体の銀河連合を抱えて海へと身を投げた!
 彼は海に潜りながら組み付く銀河連合に食われてゆく……。

 午後二時七分十五秒。
 ようやく全ての小隊が甲板に辿り着くも数は既に二十五名だけになっていた。そんな状況であっても彼等は戦いを止めない--僅かな希望を頼りに!
 ジャンゲル・ベアケットもその内の一名だった--彼は死ぬ寸前まで血を流しながらも二十八体もの銀河連合を相手にしながら!
「はあはあ、オオ俺も、どう、やらアア死ぬ……。イイ死、ぬウウ前に、せ、めて--」
 ジャンゲルは鎌鼬流を披露する--近付きすぎた三体の銀河連合はまるで自ら飛んでゆき、海に投げ出された!
 それがジャンゲル・ベアケット最後の攻撃になった……。

 午後二時十分二十三秒。
「デエ……はあはあ、やっと十五体、目?
 でも僕一名だけになったかな、分隊は?」
 独り言を呟きながらサンショウ六は周囲を見渡す。分隊長のジャンゲルもタケナカノマルノオビもカモノ・カーモネーも鈴村きね由の姿がどこにも無かった--正確には骨が多すぎてどれが当てはまるか憔悴しきったサンショウ六には判別出来ない。
(僕の周囲に銀河連合は……一体だけ? 相手して良いのかな? それとも一体と見せかけてるのかな?)
 お前ら、一体だけ奈羅問題なくゆくぞ--物部小隊羽田分隊生き残り三名はサンショウ六が狙おうとした一体だけのアルマジロ型銀河連合に向かう!
 サンショウ六は空を見上げるが、降る可能性はないと決めていたが--
「たいちょおおおう!」「うわあああああ!」「こんなとお……」サンショウ六が振り返るとそこには一体だけのアルマジロ型銀河連合から出てきた若布型三体に呑み込まれる!
(こんなことになるなんて僕はどうして仲間を死に追いやってしまったんだ? 少しでも言葉を添えていたら死ななかったのに?)
 三体を食い終えた若布型は地面を這いずるようにサンショウ六に近付く。
(徒足空脚ではこいつらを倒せない? 僕は逃げるのみ?)
 サンショウ六は周囲を警戒しながら四本足を勢いよく動かす!

 午後二時十三分六秒。
 ベアケット分隊ではサンショウ六だけでなく、カモノも生き残っていた。彼は残り一本となった物部刃入り籠を背負いながら分隊の生き残りを探す。
 そして彼は若布型やそれに付いて行く銀河連合に追われるサンショウ六を発見--高度を徐々に下げてゆく!
「そこにいのはサンショウ六か!」「その訛りは鴎族。しかも僕の名前を呼ぶのはカモノさん?」サンショウ六はカモノに捕まる事で難を逃れる!
「ありがとう、カモノさん?」
「やっぱ重たい。もう俺達し居ない、分隊は」
 その事実に心を重くする二名。彼等は無断で船から離れてゆく--小隊長クマ孫の最期を見届けながら!
「船から脱出している住民は居るかな?」
「そなことまで頭が回ないが、少なくとも小隊は全部で五つ分船に乗ってただ! 二小隊を信じしかなだろ?」
 そうだけど--サンショウ六は安心出来なかった。
 だが、本当に安心出来ないのは彼等の方だ--前方に集中している為、後方より迫り来る数百もの追っ手が接近するのを……!

一兆年の夜 第五十一話 光不変の先へと 前篇(五)

 午後一時零分十四秒。
 場所は食堂。
「全員揃ったカア。これヨオリ我々藤原小隊は仁徳島からの一時退却を行う!」
 一時退却--齢三十二にして一の月と十八日目になる藤原熊族にして小隊長藤原クマ孫から発せられた言葉は事実上仁徳島が食われた事を意味する。
「辛い選択ダア。けれどもコオレ以上死者を出す訳にもいかない。北仁徳市ニイ住む生命のおよそ六割は残念ながら瓦礫の下か銀河連合によって食われた。およそ一割は安否スウラ定かではない。残り二割程度は我々が乗る船ともう二隻に載せタアが、内一隻は出発準備さえ整わずに……助かった住民が居るだけデエモまだ我々はいい!
 そして我々の内枠ではアアルが、小隊は全部で四十名からナアル。その内分隊は全部デエ五。我ガア陣頭指揮を執る主力分隊で十名。内五名ノオ死亡を確認。次ニイベアケット分隊は八名。内二名ノオ死亡確認。次に楊分隊ハア七名。内三名ノオ死亡確認。次にメッサーシュミット分隊ハア七名。全員死亡ヲオ確認。最後にプート分隊ハア八名。分隊長ピーキュル・プート以外ノオ死亡確認。小隊はもう残り十六名と成ってシイまった。ピーキュル・プートは今後楊分隊に組み込ムウ予定。
 我々は要員が少ない状態で住民の避難及び藤原大陸ヘエノ退却を行う。他の小隊とは点呼終了次第、合併或は協力体制を取る予定。以上ダア!」
 クマ孫から発せられた言葉の数々は事実上、仁徳島奪還を諦める内容であった。これに反発する者は少ない数で五名に上った。無論ベアケット分隊も例外ではなかった--分隊長ジャンゲル・ベアケットは納得いかない様子だった。
「……以上の観点からアア藤原大陸への退却は銀河連合にウウ追撃を許すことに繋がります! オオそれでエエ良いのですか、クマ孫小隊長殿!」
 もう十分戦っタアだろう、これ以上戦っテエどうする--クマ孫には最早戦う気力はなかった。
「クウ……エエ命令はアア絶対だ!」
「辛そうですなス、ベアケット隊長はス!」
「仕方ないさ、仁徳島尾死守する斗いう任務牙果たせなくなるんだ。肝心乃小隊長端もう戦うことさえ出来ないくらい似疲弊しておられる。辛くなる乃端目似見える」
「けどない、このまま逃げるのは納得いかない! わしは何が何でも戦いたいぞい!」
「だが、数が多すぎる! いくら船に物が積まてもすぐに底を尽く!」
 ベアケット分隊でサンショウ六は誰よりも異なる考えに悩まされる。
(僕は結局何も果たせずに覚悟も出来ずに退却してゆくのか? 強くなれないまま逃げるのか? そんなのは良くない? このままじゃあ--)
 た、大変だ--仁徳栗鼠族の船夫が顔中に汗を流しながら食堂に入った。
「どうしたんダア、若いノオ!」
「か、か、かんぱんに、に、ぎぎぎ、が、れれ--」
 何だっテエ--僅かな文字だけですぐに状況を理解したのは何もクマ孫だけではなかった!
「アアまさか空からアア降る範囲はここまで広いとは!」「そうゆう問題じゃないでちゅよ、ジャンゲル!」「甲板にー出る以ー外に迎撃のー道は無ーいのか!」それぞれの分隊長は銀河連合の対処法に悩まされる!
(甲板に出るなんて一歩先が異なるだけで食われてしまう? そんなの僕でもわかりきったことだよ? 迎撃なんてそんなに長くは--)
 オイ、小隊長クマ孫--先に声をかけたのはサイ頭だった。
「まさカア我に命令しろと言いたいのかな、君ハア?」
「そうだい! このまま何もせずに死ぬのは御免だい! わしは何としても命令されたい! でないと無断で甲板を出て行ってしまうぞい!」
「前だけ進む癖に命令だけは聞きがる奴だな、サイ頭は」
「……いいダアろう。これより我等藤原小隊は単独デエ行動を開始する! 針路ハア甲板!
 もう一度言うゾオ! 我々藤原小隊は単独行動ヲオ開始! 針ハア甲板を示す!
 以上ダア!」
「「「「「「オオオオオオ!」」」」」」
 ここから藤原小隊最後の戦いが始まる……!

 午後一時四十八分五十三秒。
 甲板方面の通路では藤原小隊十六名のみならず、物部小隊十五名、蘇我小隊二十二名。全部で五十三名が狭き道を切り開いてゆく!
「アア……猿型がこんなに強いなんて?
 こ、こいつらは……デエ?
 負けられない?」
「はあはあ……ダアイ!
 数が多すぎて中々多対一に持ち込めない!」
「空から増援が来る以上はどうしうもない……ハ!
 残り翼持刀は十五本」
「十五本じゃあ足りないだろ……ドスウウ!
 俺なんか残り七本……ハッス!
 最後は片方で戦うしかないス!」
「フン、トオ、ドオ、ハアア!
 棍棒端凹んだまま出模俺乃心端凹みなし!」
「ハア、ダア、ダリュウ、ゴオ!
 アア守りのオオ薄い方に進め、お前ら!」
 ベアケット分隊はどこよりも先を進む--既に甲板まで成人体型五に差し掛かろうとしていた!
 あ、エエれは--ジャンゲルは甲板へ通じる穴から緑色の何かを目撃!
「わしが先陣を切るぞい!」「アア止めるんだあああ、サイ頭!」ジャンゲルの言葉は後一歩遅かった!
 サイ頭は緑色の物体--若布型銀河連合--によって全身を包まれる。
「サイ頭ウウウウウ! 何でいから喋ってくれエエ!」
 カモノの言葉は届く事叶わず、若布型が離した頃には骨だけの姿に変えられた……!
 よもサイ頭をオオ--思わず二回も翼持刀の弦を振るわして若布型に二本もの物部刃を貫通させた!
「感情的なる乃端解る牙、二回放ったってサイ頭端戻らない」
「わかる、わかる! だが、気が収まない! あいつがこな所であの世にゆくが納得出来ない!」
 カモノは両眼から悔しさの涙を流す--サイ頭への鎮魂を示すように!
「……ゆこう、みんな? もうすぐ甲板だろう?」
「ああス、副長やメエメンやサイ頭が死んだのは俺達を活かす為だろうス。生き抜く為だろうス! ならば命令を下さいス、ベアケット隊長ス!」
 オオこれより甲板にイイ突撃する--五名はどんな光が差し込むか判明しない甲板へと向かう!

一兆年の夜 第五十一話 光不変の先へと 前篇(四)

「オオお前ら! アア守る戦いでは守りにイイ入るな、攻めるオオように守れ!」
「わかってるよス、ベアケット隊長ス!」
「この……毛を切らせて骨を断つーウ!
 また一つ足斧が使い物にならーアなくなったぞ」
 知るかい、こっちは徒足空脚じゃい--惹き付けるように自慢の角で突き刺してゆくサイ頭!
「ごめん、みんな? 僕が覚悟出来ないばかりにこんな--」
「謝る奈、サンショウ六……ドオ!
 どのみち銀河連合端せめてきたろう。後ろ向き端健康似良くない」
「わしみたいに前向きで……ダアアアイ!
 跳ね飛ばせばいいんだよい!」
 そうゆこと--残り三本の物部刃を三体の陸上銀河連合に当てるカモノ。
「ダアア、フン! コノオ、ドオオラア!
 数がアア多すぎるからオオ徐々に後退してゆくなんて!」
「こんな時に他の分隊は何をしてるス! 俺の両刃はもう錆びちまったぞス!」
「結局頼れる乃端己自身なの科……フン!
 棍棒乃凹み牙多すぎる! 後ろ向き奈考え牙浮かび始めて--」
 危ないーイ、鈴村殿オーお--一瞬の隙に鰐型は長い口を伸してきね由を食らおうと仕掛ける!
「ああ、メエメンさん?」
「どうやら自慢の毛がなかったら死んでいーイたなあ……今だ、鈴村殿!」
 オオオ--メエメンに気を取られている隙に棍棒を鰐型に振り下ろすきね由!
 頭部は棍棒の凹みが問題にならない程歪み、両眼は飛んで口から赤黒いものをメエメンにかけながら鰐型は息絶える。
「ぐうう、よくーウやった……きね由」
「まさかその傷端……申し訳ない、メエメン!」
「腰砕アアけ、メエメン! オオサガのイイ遺志を忘れてエエどうする!」
 そんな、メエメンさんが--メエメンが受けた傷はサンショウ六でもわかりきった致命傷。
「うわス! 悲しみに暮れる暇は俺達にないス!
 でス、でもメエメンは生きなければならないだろうにス!」
「ブブ……どうやらそうもいーイかん。わしはここで退場する運命にイーあったな、御免よ」
「謝るない! 諦めるのはまだ……ダア!
 わしが押し負けるだとい!」
 もはやベアケット分隊には死守するだけの力は残されていなかった--メエメンにはサンショウ六を守る時から気付いていた。
「ど、どウーうか六名だけでも生きて下さいーイ! わしらの命を代価に払ってでも……ガブ!
 ブッフウ……どうか--」
「オオもう喋るんじゃアアない、メエメン! オオそう言ったからアアにはこの大群を抑えられるのか?」
 おさえ、まーアすとも--それがメエメンの遺言となった。
 メエメンを見送るように五名は二つの内、中央の船に進んでゆく!
「何しる、サンショウ六! メエメンの覚悟を意味なきものにすのか!」
「いえ、見届けたいんです? メエメンさんの覚悟を?」
「オオそう言ったアアからには見届けるんだ、サンショウ六!」
「いいのかス、ベアケット隊長!」
「ただアアし、本当に危ない時イイはサイ頭が無理矢理にでも連れて行け!
 オオこの中では船までエエ飛ばせるのはサイ頭以外には--」
 いえ、そ任務は自分にお任せを--志願するカモノ!
「重たいぞ、意外似山椒魚族端」
「気合いで何かすばいいださ!」
 ありがとう、カモノさん--感謝するサンショウ六。
 サンショウ六は十の分を切る間、メエメンの勇姿を刻む--全身の毛は毟り取られ、首筋に次々と噛まれながらも戦う意志を捨てずに果ててゆく様を!
 こまでだ、連れ行くぞ--頭を両足で掴み、重々しい状態で船まで運んでゆくカモノ。
(さよなら、メエメンさん? 僕はあなたの戦う姿を忘れません?)

 午後零時五十七分十九秒。
 場所は中央の船。名称は『ハヤブス』。成人体型縦二十、横九、高さ十五はある旅客船。その甲板で町を眺めるサンショウ六とサイ頭。
「副長、メエメンさん? 僕達は生き抜いて見せます、絶対に?」
「疑問文の訛りはどうしても意志が伝わりにくい。これも種族の壁かない?」
「そんな壁がある中で僕達は共存出来るなんて素晴らしいじゃないか?
 なのに銀河連合とは共存出来ないなんて?」
「出来たら六百の年以上も苦しまない。あれからもう六百の年はゆくのかい?」
「そんなに時は過ぎるのですか?」とサンショウ六が尋ねると「まるで光の速さだい」と納得ゆくのかわからない答えを返すサイ頭。
「光? それと時が過ぎるのとはどう関係しますか?」
「学者じゃないわしが明確な答えを返せると思ったら見当外れだい。
 けれども時の流れは長いようで短いぞい、例えばサンショウ六が二十歳になろうとしている様なんかい」
 そう言えばもうすぐ二十歳か--後七日で二十歳になるのを不思議に感じるサンショウ六。
「実感は湧かないようだない。わしだってサンショウ六の年頃ではそう感じたんだい。お互い様だい」
 お前は寧ろ二十四になっも実感を感じない口だろ--割り込むようにカモノが甲板に出る。
「どうだい、カモノ? 愛しの彼女と会えたかい?」
「済まなが、その話は止めう。特にいつ落下するもわからんこの船に乗ってる間は」
 そうかい--何かを悟ったサイ頭。
「それはとかくクマ孫小隊長が呼でいぞ、早く行こぜ!」
 いそがないと--三名は駆け足で甲板を降りてゆく!
(まただ……また僕は気付かなかった? サイ頭さんとカモノさんの内、どちらかが死のうとしていることに?)

一兆年の夜 第五十一話 光不変の先へと 前篇(三)

 ベアケット分隊を囲むは数万もの銀河連合。よって彼等の戦略は自然と包囲網からの脱出以外にない。一方で戦術面では戦わずして突破する方法は採れない。その為、彼等は数の少ない箇所を見極める必要を迫られる。
(恐い? 僕は恐い? 死ぬのが恐いとかじゃなくこの状況が恐い? どうすれば突破出来る?)
「簡単に死ぬことなんて宣言出来るかい! 副長オオサガが命を捨てたのはわしらに生きて貰いたい為だい! また一名の命を捨てさせるのかい!」
「簡単に結論を出な、サイ頭! まだ死ぬと決まった訳ない」
「けれどもこの状況出端また誰か尾死なせなきゃ突破出来ない。しかもこの数出端軽く二、三名乃命尾投げ出す以外似--」
 アア誰も死なせはアアしないぞ--ジャンゲルはその案を退ける!
「だとしても奇跡なんて起こりますかス? とてもそんな状況に転がらないような--」
 来たぞイー、銀河連合が--四方八方から攻撃を開始した銀河連合!
「いいイイか、オオお前ら! オオ匍匐前進するウウぞ!」
 ジャンゲルの戦術は地べたを這いずる事で包囲網からの突破を図るというもの。この術は四百以上もの年より前に鬼ヶ島からの脱出を図ろうとした三名が行う。一見すると速度は遅く、実用性に乏しいように思われる。だが、大多数を相手にする場合は足払いも兼ねて意外と抑え付けにくい。特に数万もの銀河連合の包囲網では一回の足払いは数十体の足払いと成って銀河連合の体勢を崩しやすくする。
(カモノさんだけは匍匐前進せず、一足早く突破してるだろうか?
 それにしても体勢を崩す間に進むにしろ、僕とベアケット隊長は速く移動出来ても後の四名はそうはいかない? そうゆう風に身体は出来ていないから……わああ?
 危なかったあ? 油売りの真似をすると一気に食われてしまう?)
 彼等は匍匐前進しながら銀河連合に食われそうな仲間がいると率先して助け合い、一歩一歩進む。
「わしの四本足は匍匐に向いていない! だからこそ分隊一名一名で--」
 補うんだろス、サイ頭ス--マルノオビは上からのし掛かってくる銀河連合を払いながら言葉を繋げる。
「疲れる乃端百模承知……だが、兵士たる者牙疲れ尾恐れてどうする!」
「その通りイー……ドオイ!
 羊族を只の鈍重と思わなイーい事ぞ!」
「もうすウウぐだ! アア後一踏ん張りだ、お前ら!」
 一の時をかけて北西に突破してゆくベアケット分隊--カモノも含めて全身傷だらけになりながら!

 午前十一時三十分五十三秒。
 場所は北仁徳市第四地区六番地。ここは藤原大陸とを行き来する港。
 船は三隻停泊するが、内二隻はいつでも発進出来る。
「ベアケット隊長、乗るんですか?」
「乗るのオオではない。オオここをイイ死守するぞ!」
「船に銀河連合が落下すルーう事は--」
 イイ今はアア考えるな--ジャンゲルは飽くまで死守する事に拘る。
「乗ったらクマ孫小隊長に怒鳴られるもんなス。そりゃあ本来の任務とは大きくかけ離れるしス」
「我等は飽まで仁徳島の防衛及び一般生命の避難が最優先。にしもこの数を迎え撃ちにはさがに我等の怪我が--」
「弱気はやめらい! 気を弱めれば負けだい! わしらはオオサガのみならず死んでいった仲間の為にもこんな掠り傷に屈する訳にはいかい!」
「掠り傷端さすが似無謀奈言い方。似したって強気端勝利する上出端絶対条件乃一つ。必ず仁徳島尾食わせない!」
「オオそうゆうことだ! 後少しでエエもいい! 必ずウウ生きてここをイイ死守する!
 いいか、オオお前ら! イイ生きてエエここを死守するんだ!」
 サンショウ六以外の五名の覚悟は身体全体を通して目の前の銀河連合を後じさりさせるに十分だった。
(生きて死守なんて矛と盾のような言いぐさだよ? 僕にはそんな無理なことは出来ないよ?)
 一名だけ、サンショウ六だけは覚悟不十分--そこを突くように先頭の銀河連合十数体は襲いかかる!
「ぼ、僕に向かってくる?」
 アア奴等はイイ気付いていたのか--ジャンゲルは五名に無言の指示を送る!
「覚悟無き者を狙うのが最小の方法なて!」「一番乃若輩端死なせんぞお!」「世話の焼ける山椒魚だい!」「蟷螂族が盾になるんだス!」「羊の毛は案外堅牢だぞーイ!」五名は指示通りサンショウ六の盾となる!
(僕はこの時気付くべきだった……その内の一名が既に死のうとしていることを?)

一兆年の夜 第五十一話 光不変の先へと 前篇(二)

 事の件には必ず複線はある。仁徳島が今食われようとする切っ掛けは八の年より前に起きた満月規模の歪み--あれはカモノの先祖カモツが発表した『カーモネー予測』で詳しく記されている。
「うわっ……カモツ爺さんはとんでもない生命でよ!
 規模の大きさだで今日に至まで……ヒエ!
 あがとう、サイ頭!」
 お喋りはするない、カモノ--サイ頭は体当たりという安易な戦法で降りたばかりの銀河連合を次々と轢いてゆく!
「カモノ、解説するのは後にしろ!
 今はここを突破する以外に道は無い!」
 了解しぜ、副長--カモノはオオサガの背後にある壊れた展示物の上に降りて翼持刀を構え直す。
「俺を狙えス、銀河連合ス!」
「わしは狙うなよ。機動力低いーイから!」
 真面目にやアアれ、メエメン--ジェンゲルは大小の鶏型を二体相手にしながら渇を入れる!
(ウワッ……山一一族は代々徒足空脚の使い手だよ?
 ドリャア……と蟻型くらいは何とかなるけど、ハイエナ型になるときつい?)
「さすがだない、サンショウ六!
 機動力や攻撃性ではハイエナは相手しづらいのに反撃で捕えてそのまま噛み千切るなんたい!」
 こ、これでもきつい--サンショウ六はハイエナ型を倒してもその背後から飛びついた必要な筋肉だけを備えた黒い犬型に前左足を噛みつかれる!
「倒してもオオ倒してもキリがアアない!」
「突破するのがこんなに難しいなんて……ウワ!」
 オオサガ、何をしてるんだい--オオサガが突然望遠刀を放り出し、雄略包丁で銀河連合の大群に突撃するのを見て叫び声を上げるサイ頭!
「まさかイイ死ぬ気イイか、オオサガアア!」
 死ぬ気だよオオオ--三回斬って錆び付いてもまだ包丁を振り回し、駆け足を止めないオオサガ!
「止めるんだあああ、ふくちょおおおおう?」
 銀河連合のど真ん中で包丁は下くの字に折れると命運びを受け入れるように「申し訳ありません、父上、母上。私の代でスメラビノ家をた--」と黒く覆われた空に顔を向けた。
 オオサガアアア--きね由の叫びはもうオオサガに届かなくなった……。
「今すぐ副長を助けないたい!」
「やめろ、サイ頭! どみち助からない……だったらどうすか!
 銀河連合がオオサガに目を向けいる間に俺達は進むみ!」
「お前は一分隊員だい! わしに命令するのかい!」
 ならばオオ俺が命令しよう、今のオオ内に突破するぞ--分隊長ジャンゲルの命令には誰でも従う六名。
「さよなら、オオサガ副長?」
 オオサガの死体を食べ尽くした銀河連合は狙いをベアケット分隊の方に切り替える--先行するのは隼型を初めとした翼を持つモノ達。
「ベアケット隊長?」
「前だけオオを見ろ! オオこのまま廃倉庫まで突っ込め!」
 捕まりそうになりながらも分隊は北の方角にある取り壊される予定の倉庫内へと避難!

 午前十時一分七秒。
 場所は旧食料庫。かつては北仁徳市にある食糧を保管する施設だった。だが、新たに食料庫を建てる為に一度取り壊される。取り壊した後、ここを仁徳水の生産工場に建て替える予定。
「だが、その願い空しーイく今日に至ルーうか」
「ところで仁徳水とは何だい?」
「仁徳島出身者じゃないからわからないーイのか? あれは応神海で採れルー海洋深層水の事だ。
 味は水を愛飲する者にしーイかわからないだろうけど」
「お喋りはアアそのくらいにしイイよう。オオサガが生きていたアアなら音にウウ注意が回ったんだが」
「音ス? 言われてみるとここは倉庫内だったなス。となると音が聞こえづらいからすぐに--」
 突然、倉庫内に三回内臓が破裂するような音が響く!
「銀河連合が落下したんだい! しかもここの建物は鉄で出来ているから衝突と同時に--」
「恐いこと言わないで下さい? 肌に快くない感覚が流れるから?」
 二度目の音が響く--今度は内臓破裂音だけでなく何かが軋む音まで響く。
「こりゃあ大変だ。今度響けば間違いなく天井端--」
 三度目の音はきね由の言った通りとなった--天井の壁は内側に曲がり始めた。
「お前らアア、いつでもイイ避難する準備をしろ!
 次こそアアは--」
 四度目の音と同時に穴が開く。穴は瞬きもしない内に広がり、次々と銀河連合が入り込む!
「絶対にイイ当たるんじゃない! 俺達イイはオオサガの為にもこの状況からイイ生き抜くぞ!」
 崩壊してゆく倉庫内から全員脱出したベアケット分隊は取り囲まれてしまう!

一兆年の夜 第五十一話 光不変の先へと 前篇

 ICイマジナリーセンチュリー百六十七年十二月百十八日午前八時二分七秒。

 場所は真正神武西物部大陸付近応神海付近仁徳島北仁徳市第二地区五番地。
 空は銀河連合で埋め尽くされていた。生命は逃げ惑い、学者達の大半は己の運命を
悟る。
 そんな状況で戦う者達が居た。それは真正神武軍者と真鍋傭兵団。彼らは一般生命
の為に己の命を投げ出してでも運命に立ち向かう!
 ここ五番地で銀河連合に立ち向かうは真鍋傭兵団北仁徳支部。藤原小隊は第二地
区を任された。その中で八名からなるベアケット分隊が今回の主役。
 主人公は齢十九にして十一の月と二十四日目になるラエルティオ山椒魚族の新米傭
兵山一サンショウ六。彼は先祖代々から続く自分調子で働く少年。
 降り注ぐ銀河連合の落下進路を予測しながらベアケット分隊は残骸から残骸へと移っ
てゆく! 常に多対一を心掛け、多数とは相手しないように気を配る。
 始まりは数学記念館の残骸の中から入る。
(僕にはよくわからない? クマ孫小隊長はどうして今にも食われそうなこの島を死守し
ようとする? こんなにも食われてるんだよ? どうして?)
 安心できないイイのか、サンショウ六--心配してくれたのは齢二十九にして二の月と
二日目になるクレイトス獅子族の青年ジャンゲル・ベアケット。
「気付かれましたか、ベアケット隊長?」
 当たり前だろス、わかりやすいんだからス--横から口を挟むは齢二十五にして三の
月と三日目になる仁徳蟷螂族のタケナカノマルノオビ。
「口を挟むウウんじゃアアない、マルノオビ!」
 そうだ、そうだ--齢二十三にして四の月と五日目になるアデス羊族の青年メエメン・
メヒイスタはジャンゲルの意見に同調。
 んで、何を心配だ--齢二十七にして五の月と四日目になる仁徳人族の青年にして
副長を務めるスメラビノオオサガは話を進める。
「はい、実は古式神武のラテス島のように遅かれ早かれここは食われるのではないか
と?」
 そんな乃端弱音だ--齢三十にして六の月と七日目になる仁徳鬼族の中年鈴村きね
由は渇を入れる。
 けど実際問題じゃ無理な話だっの--齢二十四にして七の月と八日目になる仁徳鴎
族の青年カモノ・カーモネーはやや後ろ向きだ。
 だからって諦めたらそこで死んだも同じだい--反対に前向きなのが齢二十四にして
八の月と六日目になる藤原犀族の青年藤原サイ頭。
「サイ頭の言う通りイイ! 俺達は僅かアアな希望があればどんなアア望みなき事柄で
もオオ立ち向かわなければならない!」
 ジャンゲルの言葉はどんな反論も丸く収める力がある--ある者を除いて部下全ての
顔に迷いが消える。
(ベアケット隊長は強いし、頭が良いからいいんだよ? 僕は頭の出来も良くないし、すぐ
迷惑かけてしまう? どうすればいいんだよ?)
「『迷うな』オオとは言わんぞオオ、サンショウ六。もうすぐ二十歳にイイなるお前はオオ
それまでに迷えばいいんだ。たアアだし、オオそこにも限度はある。
 迷ってばかりのオオ者も傭兵としてエエ平常点ではない。ほんのオオ少しがイイ命取り
になるように。
 けれエエども迷いを知らない者も傭兵としてエエ平常点をあげられない。迷いとは考え
るウウことにイイ通じる。アア迷わないというのは考えて物事を決められないイイ者が陥
りやすい傾向。
 ならアアばどうすれアアばいい? 真んンン中の内のどれか好きな道を選んだ者オオ
こそ傭兵として平常点を得られる!」
 そ、そうですか--疑問系が特徴的な山椒魚族特有の訛りで溜息混じった呟きをする
サンショウ六。
「ジャンゲル端そうゆう奴だから難しく考える奈、坊主」
「さ、参考にします?」
「訛りのせいではっきり答えているように聞こえない」
 言うたな、サイ頭--鴎訛りで突っ込むカモノ。
「シッ! 風を切る音がする……急いでここから脱出しよう、ベアケット隊長!」
「オオサガよオオ、どこへイイ避難する?」
 両手両足の方角へ--北を意味する暗号を呟くオオサガ。
「相変らずわかりにくいス」
「仕方なイーね。兵士たる者は銀河連合に悟られないようにーイするだけでも一苦労」
「腰砕けはアアここまでアアだ! アアさっさとオオ両手両足へ急げ!」
 ベアケット分隊は北の方角を進んでゆく!

冬眠への道 現実逃避篇

 どうもdarkvernuです。いやあ強姦魔が捕まって良かったね。全くヨシフと愉快な仲間達は本当に屑ばかりで困りますよ。
 試作品の前に『格付けの旅』の白魔法の章01の二ページ目が終わりましたので読まれたい方はカテゴリ覧の<格付けの旅>或は<白魔法の章>をクリックして下さい。
 じゃあ早速ですが、前に冬眠への道シリーズで出した試作品をどうぞ。

 あたいの名前は赤羽涼花。もうすぐ十八歳になる現役女子高生。
 今校舎南側の三階廊下を歩いてるわ。確かあたいの嫌いな生物科目専用の教室が見えるわ。あたいの周りはみんな小さい。いえ、あたいが大きいのよ。あたいの身長も紹介していい?
「あの、姉ちゃん。誰に喋ってるの?」
「勿論あたいに喋ってるのよ、京介」
「世間一般ではそれを独り言って……」
「ああ? 殴られたい?」
「御免」京介はいつも通り黙りになったわ。
 さあ、て邪魔な弟は口を噤んだし、早速紹介するわね。あたいの身長は175cm。体重は女という性別もあって秘密よ。スリーサイズは知らん。測る馬鹿は居るけど。
 第一あたいだけが大きいからなんて通じないわ。みんな小さすぎるのよ。特に男子はもっと食事しなさい! あたいが見たところ身長が170に届かないの多すぎ! 絶対夜更かしして一日二食の奴ばっかよ! 深夜アニメとかは録画でもしなさい! テレビゲームとかも深夜にやろうとしないの! 夜遊びなんて更に論外よ!
「ああ? 風紀委員長だからっていい気になんなよ!」
 おや、早速不良発見! でも、力は控えてゆっくりと……
「オイ、坊主」「え、何かな?」何で京介に絡むのよ!
「オイ、風紀委員長のお姉さああん?」「あら? どうしたいのかしら?」京介大ピンチ!
「京介君の好きな人言っていい?」「いや、い、いな、な、いないよ!」それはわかりやすい反応だわね。私は眼を細くして京介を見たわ。
「実は同じクラスの終ちゃんだよ」「やめてよ、秋山君!」そんなの知ってたわよ、何今更。私は不良共に顔を向けて両眼を瞑って溜息を吐いたわ。
「おや? 反応薄いなあ、お姉さんは?」
「そんなのとっくの昔に知ってたわ。京介が日向さんと目を合わせるとついつい顔を背けるから大体見当つくわ」
「だ、だから違い、違うって!」
「ちぇ、じゃあこれならどうだ!」「何々?」不良の手に引っかかるまいとあたいは思った。
「お前好きなんだろ、『ダグラム』の事が」さ、さあ? あたいは目を逸らしたわ。
「べ、別に姉ちゃんがロボットアニメが好きで何が……」
「そっちは初めて聞いたぜ! 俺らが言いたいのは鈴木蛇具羅無の事だよ!」
「え? そんな名前の人居たの?」居るのよね、たまに馬鹿親のせいで酷い名前付けられる人は。
「弟君でも知らないとはよほど好きなんだろうな、『ダグラム』という奴に」
「ええ、何て言うかその。
 ああもう! とにかく色恋沙汰はここまでにしなさい!
 さもなくば五体無事では済まないわよ!」
 あたいの燃えさかる炎--髪の毛が立つくらい沸騰した感情は不良共の足が震えるのは十分だわ!
「い、いあや? まま、まあ今日はこの辺で、か、勘弁……」よおし、このまま恐怖を植え込んでゆき……
「キャアアアアア、誰か来てエエエ!」ってあの声は花沢? 声がしたのは四階の真上。ここ箱庭学園校舎は北と南がくっつく構造だったから正確には四階北側の……あそこ!
「どこ行くの、姉ちゃん!」「決まってるわ! 直接乗り込むのよ!」沸騰した感情なら三階南側の生物室前から四階北側にある一年四組の教室前まで何の……その!
「死ぬ気か、あのデカ女は!」「窓から飛んだぞ!」「信じられねえ、今にも届きそうだ!」なんて声がするけど、冥惨亜流師範の資格を持つあたいからすればこの程度の距離なんて朝飯前よ……右指が窓の下格子に引っかからなかったら大怪我になってた所だけど。
「はあはあ、大丈夫!」花沢を心配してあたいは声をかけてみたけど。「冗談よ、先輩。ちょっと演劇の練習してたのよ」
「演劇の練習は演劇部の部屋でやってちょうだい!」廊下で練習をやるんじゃないわよ、全く!
「めんごめんご」どこの時代の言葉よ、それ?
「それにしても先輩は凄い身体能力ね。まさかあんな所から飛んでゆくなんてスパイダーマンも真っ青よ!」スパイダーマンは大袈裟よ。
「君は赤羽君だね?」いけね! 化学の東国原先生だわ。「お早う御座います、東国原先生」
「挨拶はさっきしただろう。後で職員室に来なさい」「まさか一部始終を目撃したとかで?」絶対そうだわ。
「君の超人芸の事よりも君が引っかけた窓をよおく見なさい」そっちなの! 「えっと……指の跡がついてる」
「こりゃあ弁償物だね、先輩」あんたのせいよ!
「君は指の力でさえも超人だから今後そうゆう真似はしないように……後で職員室だよ。生徒指導室じゃないんだぞ、わかってるね?」はあ、だから嫌いなのよ。花沢昭江は。

 あたいは職員室に行って生徒指導で数学教諭正宗和成先生にたっぷり説教されたわ。風紀委員長なのにこれはきついわ。あと五分でチャイムが鳴るわ。ギリギリで登校してくる連中が邪魔でしようがないけど我慢我慢。
「また随分と無茶をしたようだね、赤羽や」朝はよく先生に出会うわね。「お早う御座います、上条先生!」
「早速だが、赤羽には仕事してもらうよ」へ? 上条先生は生徒会の顧問じゃないはずなんだけど。
「二階の物理室前で不良グループの喧嘩があってのう」それは大事だわ!
「わかりました! 早速行ってきます!」「ちょ、どこから行くんだね! 君は!」ここ一階東側の窓から直接二階南側の物理室まで飛んでゆくように!
「うあああ、赤羽だ!」「暴力風紀委員長が出てきやがったぞ!」「邪魔すんじゃねえよ、デカ女!」風紀を乱す輩は力尽くで止めるのみ!
「と考えるけど忠告するわ。怪我したくなかったらさっさと教室に戻りなさい!」どうせ無理だわ。だって……
「よお赤羽ねえ! 雑魚共じゃあ物足りなかったんだ。早速バトろうぜ!」ここの番長嶋木はそうゆう奴よ。
「どうやら痛い目に遭いたいのね、嶋木君は」あたいは第一ボタンをゆっくり締める。「バトル前に雑魚共を当てて実力を測らねえとな」
「今のあたいは本気だよ」髪に付けてある輪ゴムを外してストレートヘアーからポニーテールヘアーにしてゆくあたい。
「嶋木さん! やっぱりあの女は変ですよ」「いや、あれが赤羽涼花の真の姿。奴は普段から気を解放し続けるように第一ボタンを外し、髪の毛を自由に振り乱す。けれども本気の場合は形から締め付ける事で気を抑え付けるんだ」その通り。
「じゃあ来なさい! 出来る限り楽にさせるから」嘘だけど。
「五人がかりでやればデカ女だって!」その時点で……
「負けよ!」中央から来るスキンヘッドには右ジャブで顎を当て、右から来るモヒカンには右肘で右米神に当て、左から来るアフロには左足払いで転ばせ、左側面に襲い来るポルポルヘアーには人中に左手刀を当て、背後に回ったロン毛には合気で前のめりさせたわ!
「全員昏倒とはやるな。じゃあ早速始めようか!」始める? 馬鹿ね!
「終りよ!」単純な左正拳突きは嶋木の腹部に命中!
「グヘエ」嶋木は仰向けに倒れた。
 ふう、早速嶋木のグループと喧嘩をした馬鹿に事情を聞かないと。
「大丈夫、君?」
「いでで、助けてくれてありがとう」「なあにが『助けてくれてありがと』よ!」そもそもあたいは助けたつもりなんてないわよ!
「力も言葉も両方駄目よ! 喧嘩を取り締まる風紀委員長として一言申し上げるわ!
 見栄っ張りは止めなさい--以上!」決まった! これほど格好良い言葉はないわ。
「姉ちゃん、それださいって」ストレートに戻し終えたあたいの背後に京介が居る事に気付かなかった。
「ほっといてよ、京介。あたいだって格好付けたいんだし」
「そんなことよりも休み時間に図書室に来て欲しいんだけど」藪から棒に何を言い出すのやら? とにかく第一ボタンを外し終えたあたいはチャイムが鳴るのに気付き、急いで五組の教室に戻ったわ。

 あたいにとって休み時間とは昼食を食べ終えた後になるわ。二階東側にある図書室では毎日のように遊ぶ馬鹿は居るけど、あたいが来るとみんな大人しくなったわ。そんでネットをやってる五人の中で右端に座る弟京介が居た。
「それであたいに何の用なの、京介?」京介は席を譲ると奥の方に歩き出す。
 そして一番後ろから京介の身長がギリギリ届かない所にある黄金の本をあの子は右人差し指で示したわ。
「これが欲しかったの? 何で椅子を使わないの?」「別に欲しい訳じゃないんだ。姉ちゃんに読んで欲しいと思って」何が書いてあるのかしら?
「題名は……英語なの? ラテン語なの?」「実はその文字は『オーバーロード』っていう全く知らない文字なんだ」クラーク小説の読み過ぎよ。
「それでなんて読むの?」あたいは京介に翻訳を頼むわ。
「えっと題名は『二つを彷徨う魂』」何それ? 「と、とにかく読んでみてよ!」
「ええと……え? 何これ?」あたいは目を疑った。
 ネバーエンディングストーリー? いえ、あれには文字しか書かれていないはずだわ。この本は最初からイラストで一杯。いえ、イラストにしてみたら明らかにおかしいのはいくら何でも実写じゃないの、これ!
 そこで描かれる金髪のイケメンは巨大なクリスタルに剣を振りかざすわ!
 そして……そこから先は真っ黒。気が付くとあたいと京介は森の中に居たわ。


 前に紹介した『魁と赤い髪に誓って』ですが、正式なタイトル名は

 二つを彷徨う魂

 になりました。本当はそこから先も描きたかったのですが、時間がなかったのでここまでにしました。前も書きましたがとにかくこの試作品はどこかで一週間に一回のペースで書く予定です。
 まあどこにでもあるファンタジー物ですが、某夢野何たらのような打ち切り漫画な展開もパクる予定です。とにかく主人公赤羽涼花は普通とは程遠い女子高生ですが、そこには本編で重要な複線があります。
 とまあ短く切りますが、この物語は前にも書きましたがどちらに進んでも世界は続くように描く予定ですので、味方敵分け隔て無く善悪を切り離せればいいなあと思います。まあ願望ですけど(笑)。
 と言う訳で試作品の解説を終えます。

 第五十話の解説を軽くやります。今話は四十九話とは一転変わって明るい雰囲気を最後まで出しました。
 主人公は鮟鱇ですが、はっきり言って影が薄すぎます(辛)。どれくらい薄いかは「主人公要らなくね?」と思えるくらいに最初から最後まで主人公として活躍した場面がないんです。具体的には説明しませんが。
 今回では遠すぎる過去ならではの傭兵団のお仕事が描けたと思います。捜索活動から科学の仕事までありとあらゆるのをこなします。出来れば主人公がもう少し目立てたら良かったんだけど(苦)。
 後はまあ、「エーテルって関係するの?」という事に関しましてはまあ時代がアインシュタインまでまだ遠いので未だ否定はされません。けれどもエーテルった話を描いたという点では関係します。エーテルったって何だよ(自演)。
 とまあ軽くしまして第五十話の解説を終えます。

 それじゃあ『格付けの旅』白魔法の章01の二ページ目を解説します。今回の話ではアルッパーに視点が回ります。そこではデュアンが居る星と敵対する惑星クウラの生き残り艦隊の一つ。そこに捕獲されたアルッパーはデュアンに仕返しするのを理由にひたすら自分の身体を痛めつけてます。その様子を眺めるのがほぼ声優ネタで溢れる連中です。一応かの国民的アニメで役を演じた者達ばかりです。例えば谷本夏やバイキンマンやイグニスやモニカやルクスンの声優はちゃんと出てます。そんな連中だからこそアルッパーは不憫な役回りを演じます。それが横槍。本当に横槍が来るなんて誰が考えたかわかった物じゃないぜ(苦)! 済みません、調子に乗って。
 今回のページでは一ページ以上に解説が多くなった気がする。これも格付けの旅の方向性だろか? そんな訳で白魔法の章01二ページ目の解説を終えます。

 冬眠まで後二話。しかも前後編になります。ここではちゃんと主人公を活躍させます(辛)。宜しく(誰に?)。
 では予定をどうぞ。

 一月
 十三日~十八日    第五十一話 光不変の先へと 前篇         作成日間
 二十日~二十五日   第五十二話 光不変の先へと 後篇         作成日間
 予定日不明        第五十三話 再誕の火 真正神武最後の最高官 作成日間
                第五十四話 再誕の火 男女は運命に導かれて 作成日間

 別に冬眠するのは一兆年の夜であって筆(キーボード)まで氷漬けませんよ。それじゃあ今日はここまで。

一兆年の夜 第五十話 エーテルは否定される(六)

 未明。シャーケン達と別れておよそ一の時が経つ。
 アン駈歩達は心地の良くない匂いを放つ銀河連合の体内から出ようと泳いでゆく。
「それにしたって不思議だよねえ」
「『不思議』って伝えたの?」「そうだよ、アン貴茂さん」「銀河連合の体内が不思議なのは当たり前だろ、タッツ代!」アン駈歩以外の三名はこうしたやりとりを繰り返す。
(こいつらは呑気すぎる。あああー! もうこんな所は早く出て行きたい! 何でわてがこんな目に遭わなくちゃいけないんだあああ! 神々に少しでも情があるんだったら試練を与えずに助けて下さい!
 と思っても神々なんてわてらを見守る以外に能力を持ってないんだし、諦めようかな? いやいやいやいや、諦めたら死んじまう! こんな腰砕けはもうこりごりだああああ!)
 アン駈歩の方はいつものように満足しない思いを繰り返すばかり。
 そんな風な退屈凌ぎをしている内に次の区画に辿り着く。

 未定。そこは紫と藍が混じった異様な空間。
 早速六名発見--先にエラで伝えるのはアン貴茂!
「アン貴茂……ひょっとすれば一名以外はお前が探していた遭難者じゃないのか?」
 調べてみるわ--アン貴茂は所持した袋から石版を取り出す。
「器用なこと! 海洋種族は手や足が無く、鰭では手の代用にならないって伝わるけど」
「あ、あの? 僕達を救助しにきた生命ですか?」「何で入ってきたんだよ」「珊瑚が欲しい」「紫と藍が不思議と光を作り出す世界に来る四名かえ?」「助かったあおえお!」「もしかして俺らと同じく掴まった系?」と六者六様の反応を示す。
「えっと……ヤマナシノナマズスケさん?」「俺だけど」一名目救助。
「次は……コインダ・フェルフェンさん?」「よお君? 救助すんのはいいけど、どうやって脱出するんだい?」二名目救助。
「確認が始まったばかりよ……ヤマビコノクロコミさん?」「珊瑚くれたら付いて行く」三名目救助。
「嬉しいことなくて御免なさい。だけど、無理矢理連れて行くわよ……板倉ザリ有紀さん?」「折角楽しんでいたのに、何で来たんだよ!」四名目救助。
「楽しむな! さっさとここから出ますわよ……片岡ウミ逸見さん?」「あおうえおあいううういい!」これで五名全員救助!
(まさかこんな都合良く残りの遭難者まで救助するなんて!
 じゃあこの鮭族の爺は一体?)
「わしかね? わしは古式神武では知らん者は居るようじゃが、新天神武では知らぬ者はおるまい!」
「いいから早く……まさか新天神武で有名な光観測者佐藤マス男殿!」
 そうじゃ--齢四十二にして四の月と四日目になるルケラオス鮭族の老年。
「良かったね、チヅヨさん! これで光観測がやり易くなって!」
「そんなことはここから脱出しないと意味ないだろ?
 それはそうと、この爺さんは生命で初めて光が粒だと主張した方です」
「それまで誰も粒とか波とか主張しないのが居たのか気になるんだけどねえ!」
「細かいことは良いんだよ! とにかくこの爺さんは様々な光を見てゆく内にそれらを纏めた論文を彫り上げて、光粒子説を主張したんだから凄いものだぞ!」
「じゃが、ここへ来てその説に疑問を抱きだしたのじゃ」
 へ--マス男が自らの説を退けようとする姿勢に呆然となるチヅヨ。
「いやあ、君達が来るまでにこの風景を眺めていると何か前にわしが主張した光が粒だとする主張は間違いじゃないかと思い始めたんだ」
「はあ、そうゆうのはそれがしが務める役割だよ! 爺さん自ら退けようとする姿勢は止めた方がいいって!」
「そうは伝えてものう--」
「もう堪能したでしょ、光の話は!
 あたし達はここに留まっている暇はないんだからさっさと--」
「アン貴茂……念が残るようで済まないが、どうやって残らずにいける?」
 本当だあ、どこにも通路がなあい--タッツ代以外入ってきた者達はこの状況を嬉しく思わない。
「何だよ何だよお前ら! 骨拾いが骨になってどうする!」「喚いても遅い!」「珊瑚また拾いたかったなあ」「お終いだああ!」「さすが銀河連合!」自己調子でゆく者以外は悲痛の叫びを上げる。
 だまらああ--巨大な泡と強烈な水圧で発せられる音で五名を黙らせるアン貴茂!
「恐い恐い。雌は恐いよな、アン駈歩!」
「こうゆう場合はしっかりしたのが多い雌の方が適者ってな」
 アン貴茂は九名に渇を入れてゆく。その時間は半の時はかかる。短くもなおかつ長いアン貴茂の言葉は九名に慌てる事がどれほど謀り無しなのかを思い知らせた!
(さすが救助者ってのか? もはや愚痴る気力も起こらねえ。とはいえ、このままじゃあまた悲鳴を上げる奴が出てくる! さっさと……何だ?)
「どうしたんだ、アン駈歩?」
「こっちを見てくれ……ひょっとするとここに居なくて済むんじゃないか?」
 アン駈歩の長い方の突起が示す方角には僅かに口が開いていた。
「ひょっとすると出られるかも?」「銀河連合の体内だぞ、危険だ!」「珊瑚あるかなあ?」「終わりよければ全て良しってなあ!」「歌える! 歌えるの、そこ!」五者五様の反応を見せる。
「じゃああたしに続くんだよ! 単独行動なんてしたら後でどうなるか記憶に刻ませるわよ!」
「恐いのう、あの嬢ちゃんは」
「爺さん、ここから出られたら光に関する話をもう一度--」
「それって世間では死にそうな者が言う--」
「エラとか泡を出すな! 黙ってあたしから離れず泳ぎなさい!」
 十名はどんな結果があろうとも僅かな希望を求めて進んでゆく……。
(問題はこの先に銀河連合が待ち構えているか。或いは酸の雨がわてらに襲いかかるか? とにかくこれだけはわかるぞ。
 『残り五名の捜索』と『光観測』という伏線はほぼ回収した。後はわての仕事である『藤原マス太の子孫』が回収されるかどうか。『竜宮』はさすがに無理がありそうだし)

 未明。
 十名はさらに異様な空間に入った。
「よお、お前ら! 生きているとはな」
「団長にオニ子、それにラブカルチャーまで!」
「俺の名前は--」「あれはあこがれのシャーケンさん!」「印貰おうかな?」「あの方は鬼金目族の、サンゴ持ってるかな?」「やったああ、これで助かる!」「傭兵三名は心強い!」羅鱶族の青年の言葉を遮るように救助された五名は体で表現する!
「とにかくみんなが無事で良かった。俺ら三名も奇跡ともいえるモノだよ!
 あの時は死ぬかと--」
「先輩の話は後で聞きます。とにかく無事で良かったわけだ」
「すまないが、わてらはどんな所に入った?」
 伝えてみればそうね--アン駈歩、アン貴茂だけでなく他十一名も異様な空間に戸惑うばかり。
 どの時代にもない乗り物が走り、地面に鉄の線が二本引かれ、なおかつ四角い乗り物はまるで役目を果たしたかのように積み上げられてゆく。
(もしやここは『竜宮』なのか? そんなはずはない! 銀河連合が見る夢や希望なんて我々と大きく異なるというのに!)
「おんや、そこの鮟鱇君」
「何でしょうか、マス男先生?」
「お主はこう思うとるじゃろ? 『銀河連合の体内に楽園があるはずはない』ってのう」
 そ、それは--アン駈歩は心を読まれて動揺する!
「確かにその意見はわしも同じじゃ。奴等に楽園があるならば六百以上もの年にかけて我々に与えた悲しみや怒りをどう説明出来る! 過去の重みはそう簡単に覆らない。
 わしにもそうした過去さえあるのかどうかに自信がないように」
「先生、もしやとは勝手ですが--」
 その時、異様な空間に終りが告げられる--天井の壁が崩れ、地面へと落下してゆく。
「あわわわ……あれ? どうしてアタチに当たらないのかしら?」
「どうやら俺達は幻を見ているようだ」
「けれどもこんな幻は共有するもんなのか、シャーケン?」
「まあ良いじゃないか、ラブッケル! 団長の伝える幻でも何でも気持ちが良いのならそれで」
「いい加減に俺の名前を--」「く、ずれるけど」「折角シャーケンさんに会えたのに!」「結局珊瑚なかったよ」「dからげばべぼばあ」「事実は小説よりも奇なり。ところで小説って何?」救助された五名は相変らず羅鱶族の青年が言いたい事を遮った。
「さて、と。わしらはこれから変わらぬ日常に戻るかのう、チヅヨ君や」
「さあ? どうせならこのままエーテルの導きを期待したい」
「伝える意味わかるの、チヅヨ!」
「これでまた辛い日常に逆戻りだな!」
 空間の全てが壊れ崩れる時、彼等は生きて自分達の世界に帰っていった……。

 十二月百十七日午前九時零分九秒。
 場所は真正神武東海洋藤原。珊瑚島より西におよそ成人体型三千二百。深部五。
 藤原アン駈歩は変わらず調査を続ける。異なるとしたら従姉妹アン貴茂の仕事である深海遭難者捜索の仕事まで鰭伝いさせられ、一の週より前以上に愚痴が多くなる。
(ああー! わては遭難者まで探す気がないのに団長はわてを気に入ったのかこんな仕事まで押しつけるなんて! もう『竜宮』に行きたい! 一生そこで暮らしたいよー!)
 オーイ、オーイ--愚痴を溢すアン駈けに泡をかけるは鸚鵡貝族の青年物部チヅヨ。
「また見かけてしまう!」
「嬉しくなさそうだな、アン駈歩!」
「いつもそうだろ? そんで今度はどんな仕事を押しつけられた?」
「ああ、それかい? 今度は『エーテルは存在するか観測しろ』という仕事」
 はあ--ややこしい仕事に顔を歪ませるアン駈歩。
「全く団長も考えて欲しいなあ。エーテルなんて至る所にあるのにどうしてそんな仕事を依頼したのかは絶対にあれだ!」
「わかりにくいって」
「佐藤マス男先生の影響で団長は疑似科学に目覚めてしまったんだよ! だからエーテルを意地でも存在するか確かめて欲しいんだよ!」
 途方に暮れなきゃいいが--アン駈歩にはその依頼は一生懸けても実現しないと感じる。
(結局わての推測は当たってるかどうかさえわからずじまいだ。佐藤マス男先生は果たして藤原マス太の子孫だったのかどうか。わてはあの事件以来、あの爺さんの身辺調査をオニ子先輩に頼んだが、今のところ鰭掛かりはない。んでそんなことを思ってるのかって?
 実はもうすぐ終わるんだ。仮にわての毎日が空想話なら全ての複線はもう回収され、幕を下ろすのは今なんだ。
 わてはようやくその幕を下ろす。『今まで読んでくれてありがとう』なんてエラ会話で示せたら客名を喜ばせられるんだけど。
 さあさあこんな腰砕けを考える暇があるならさっさと仕事仕事!)




 ICイマジナリーセンチュリー百六十四年十二月百十七日午前九時五分零秒。

 第五十話 エーテルは否定される 完

 第五十一話 光不変の先へと 前篇 に続く……

一兆年の夜 第五十話 エーテルは否定される(五)

 午前十時三十二分四十八秒。
 巨大鮟鱇型から逃げ続けて十分経過--三名の内二名の疲労は限界に達しようとしていた。
「どうしたのよ、アン駈歩先輩にチヅヨ先輩。フラフラになってたら銀河連合に食われますよ」
「それがし達はずっとこの海域で泳いでいたんだよ」
「お前は疲れるほど泳いじゃいないからそう伝えられるんだよ」
 ふうん--こう呟くもタッツ代は貴重種を目撃して心が高鳴る。
(タッツ代はいいけど、わてらはもう限界だ! どこか隠れる場所があったら体力を回復できるんだが、その場所を見つけるにはこの深部は暗すぎる! つまり逃げ続けなくてはならないとは。こうなれば空想話のように都合良いことが起きたらなあ……待てよ!)
 アン駈歩は一瞬、全ての鰭を止める。「何してるんだよ、アン駈歩!」とチヅヨの叫びも空しく彼は鮟鱇型に呑み込まれる!

 午前十一時三分六秒。
 銀河連合巨大鮟鱇型の体内。
(わてはどうして銀河連合の体内に入ってるのか? それはうっかりしすぎたからだよ。団長やラブカイオーン、それにオニ子先輩の所に行けば助かるとついつい鰭を止めてしまって--)
 だからそれは俺の名前じゃねえ--目の前に居るのはラブカイオーンと間違われた羅鱶族の青年。
「ところでどうしてラブリーゼンが? 大王烏賊型を追っていたんじゃないのか?」
「だからそれは……まあともかくよくわからん。俺だけでなくシャーケンもオニ子班長も呑み込まれたんだが、どこに居るやら?」
「それがしも一応呑み込まれた。間抜けなのはどうやらそれがしも含まれていたとは」
「俺達も変わらん……ついでに大王烏賊型なら何とか倒せたぞ! だからもう心配はないぞ、その部分だけ。
 問題はどうやって銀河連合の体内から脱出できるか、だろ?」
「ここはおそらく胃の中のはず……胃液が薄くて助かったよ。さすがはアン駈歩ら鮟鱇族を模した銀河連合の体内だぜ!」
 ちっとも誉めにならねえ--アン駈歩は真っ赤な表情になる。
「喧嘩は止せ! 現在の俺達がやり遂げねばならない目的はいかにして穢れそのものである銀河連合の体内から脱出するか、だろ?」
「だろうけど、それがし達はあいつらの体内に入る為に体を小さくされてるんだよ。途方に暮れてしまうと思うけど」
「ああ、こんなことなら藤原マス太の子孫探しの仕事を受けるんじゃなかったって! 出なきゃあ万事は運んだのに!」
「用法正しいの、アン駈歩?」
「正しいと思うぞ、アン貴茂……ってどうしてお前がここに居る?」
「この雌は……確か捜索班の藤原アン貴茂だな」
「お久しぶりです、ラブレイエン先輩!」
「その名前じゃないし、先輩と呼ばれる年じゃない! 俺の名前は--」
「本当のことを伝えると五名救助した矢先に鮟鱇型に呑み込まれたの!
 たぶん、五名とも危険はないわ。近くにあった洞窟に避難させといたから」
「なるほど、それならしょうがないな。あれは大きすぎてさすがに逃げる以外選択なかったのにこうして俺達三名は呑まれてしまって!」
 居たのかよ、オニ子班長--唐突に現れたオニ子に驚いて鰭をじたばたさせる誰かはわからない羅鱶族の青年。
「俺だけじゃない。団長も居るぞ、ほら!」
「覚悟が足りないから銀河連合の体内に放り込まれたんだ」
「だらしがないぞ、シャーケン!」
「お前に言われたくないな、ラブッツェン!」
 お前まで俺の名前を間違えるか--青年は落ち込む。
「別に名前とかいいだろ! とにかくここから出ようぜ、何なら口から出る方がいいかも!」
「アン駈歩……口へと通じる穴が閉じてるんだ」
 は--チヅヨが告げた事実に納得いかないアン駈歩は問題の個所まで泳ぐ。
(あれ? わては自分の体内には詳しい。なのにどうして穴どころか始めからここには出入り口がないような……銀河連合に新事実判明か。
 あいつらとわてらは体内の構造が大きく異なるとは! そうだよな、小さくさせる連中が体内まで一緒とは限らんもんなあ。畜生!)
 まあいいじゃない、楽しいし--気がつくとタッツ代が合流していた。
「お前もその原因だろうが、タッツ代!」
「まあまあ、そのくらいにしてさっさと探検始めちゃいましょうよ!」
「少しは恐がれよ、タッツ代!」
「そんな怖がらないの、ラブリュイランさん!」
「俺の名前は--」「タッツ代の伝える通りだ! 探検も脱出する為に必要なこと。往くぞ皆の者!」シャーケンは強引に話を打ち切った。
(これが空想話ならどこで区切りを付ける? わてが創作者ならこの場面だろう。けれどもここで区切って良いのか? 今までの線はどうやって回収する?
 『藤原マス太の子孫』やら『光観測』やら『残り五名の捜索』やら。『銀河連合の打倒』や『貴重種の調査』はほぼ回収したも同然だが、果たして……そう思ったら他にもあった!
 『竜宮』の件は回収すべきかな? 頭を悩ますなあ)

 未明。
 銀河連合を増殖させる区域に到着した七名。
「今更だけど、見てしまうわ、風景を」
「後十四文字足りないけど」
「アン貴茂もタッツ代も遊んでないでさっさと鰭を動かせ!」
「どうしてか、何で鰭動かす、より速く、それは花びら、天井見よ」
「現実逃避中だね、アン貴茂さんは」
「いや……アン貴茂の短歌によればそれがし達に向けて降ってきました!」
 あいつらは子作りだけ励めばいいものを--羅鱶族の青年は数百体もの卵型銀河連合の襲撃に迎撃の態勢をとる!
「戦えるのは俺とラブカッターに団長のみ!」
「だから俺の名前は--」「じゃあわてら四名は先に行きます!」アン駈歩ら四名は増殖空間の先を急いで泳いでゆく!
「それでお前は何て名前なんだ?」
「俺の本名はニニミサキノラブカスケだ。数多の戦場を駆け抜けた雄の名前くらい覚えとけよ!」
「まさか応神海出身者だったとは。つーか気かしたんじゃないだろうな、ラブベルド!」
「さっき本名伝えたのにもう忘れたのか!」
「もういい! 二名ともさっさと鰭を動かすぞ!」
「「了解!」」

一兆年の夜 第五十話 エーテルは否定される(四)

 させるか--シャーケンは先牙必勝をかけるべく大王烏賊型の鰭に噛みつく!
「体格差が有り過ぎる! 団長がいくら鮫族で傭兵であってもこれは……うばお!」
 安全じゃないなあ--アン駈歩は勢いよく右へ横切った大王烏賊型を眺めながらそう呟く。
「あのままじゃ団長が危ない! 鰭伝うか?」
「わてらは実戦慣れしてないんだぞ! 鰭纏いでない証拠があるか!」
「確かに、それがしは学者肌の生命だからなあ」
「それを伝うは学者肌の傭兵だろ? 生命じゃあ一般生命なのかそうでないのか判別する?」
「だろうな。けどもこのまま団長を一名だけにする訳にもいかないって。
 誰か戦える傭兵がいるか見渡していいか?」
「こんなくらい深部だぞ。見える範囲は縮まって--」
 見つけた--アン駈歩の見る方向とは反対より近付く生命をチヅヨが発見。
「泡で『見つけた』と示すか? どれどれ……あれは先輩!」
 現われたのはオニ子。彼は何故か銀河連合から逃走中--追いかけるのはアン駈歩を追い回した傷ものの鯛型!
「逃げてるのではない! 挟み撃ちをかけている! 後ろをよく見るんだ!」
 あれは深海の鮫族といわれる羅鱶族の誰かだ--齢二十六にして八の月と十八日目になるフィスト羅鱶族の青年は鯛型の尾鰭に噛みつくと勢いよく右回りに振ってゆく!
「そんであの豪快な戦法はまさか--」
「知ってるのか、アン駈歩!」
 間違いない、ラブレス--と二名は既にラブレスらしき羅鱶族の青年に驚くばかり!
「てめえらは生命の名前を間違えてんじゃねえっつーの!」
 ラブレスと間違われた青年は岩目掛けて鯛型を放り投げると、すかさず鰭の水圧を調整して急加速--跳ね返って間もない鯛型の左肋を強く噛み千切った!
「凄い! あれが羅鱶族で『最速のラブリッテ』と呼ばれし傭兵の技なのか!」
「間違いなく『ラブリッテ』だな、チヅヨ!」
「また名前を間違えてんじゃねえよ、てめえら!」
「じゃ、じゃあ他にいるのか?」
「きっと『短気のラブラドーラ』に違い--」
「ラブリッテもラブラドーラもラブレスもみんな雌だろうが!」
「じゃ、じゃあ本名は--」
「ラブカディアなんて名前じゃねえ! そいつは俺の兄貴だ!」
「何だって! 羅鱶族最強と謳われし雄『ラブカディア』じゃないなんて! じゃ、じゃあ他に誰が居るんだよ!」
「目をかっぽじってよく見てろ! 俺の名前は--」
 突然巨大な音が三名に近付く--なおも持久戦を続けるシャーケンと大王烏賊型が全身の神経を周りに見せながら激闘を繰り広げる!
「わあれべ! 団長と大王烏賊型を忘れていたよ! えっと……あれ? 何で先輩が居ないんだ?」
「先輩? ああ、オニ子班長ならシャーケンと共に大王烏賊型を倒しに向かったぞ!」
 本当だ--チヅヨが大王烏賊型の全身を眺めているとそこには触腕二本と残り八本腕を何とか避けながら追撃するオニ子の姿を捉えた!
「止めは団長で先輩は陽動なのか? 二名だけじゃあ足りるか?」
 ならば俺が行こうか--そう伝えるなり全身の連動させながら急加速する--名前の判明しない羅鱶の雄は大王烏賊型打倒に加勢してゆく!
「これじゃあ誰が主役かわからないけど、いいのか?」
「わてに振るな! どうせわては外野のような存在で十分か?」
 あのなあ--愚痴を必ず吐くアン駈歩に困った表情を見せるチヅヨ。
(今日はどうゆう訳かいろんな案件が絡まりすぎる気がするんだけど。これも全てはこいつと会ってからなのか? それとも先輩と会ったのが良くないのか?
 どれも関係ない事柄だし、わてはそろそろ調査に入らなくては--)
 おーい、そこの二名さん--もう一つの案件が飛び込んできた!
「あの雌は確か海馬族のタッツ代。武内海馬族で--」
「齢二十三にして十一の月になったばかりのピチピチな雌よ!」
「お前か! だったら次に訪れるのは吉じゃない!」
「え? どうしてさあ」
「えっとタッツ代ちゃん? 君は何の仕事をしに来たんだ?」
 そりゃあ勿論『貴重種探し』よ--それは正しく二名の体内を冷やすには十分な条件だった!
「じゃ、じゃあ今度来るのは--」
「た、た、大変だ! ベボバグベベ……ああ、ええ、うー。
 じゃなくて銀河連合がまた一体来やがった!」
「ワオ、すっごーい!」とタッツ代は喜ぶようだが、現われたのは普通じゃない鮟鱇型--しかも全長成人体型が何と十という規格外の存在が来るとは!
(規格外を超えすぎる! わてらの選択肢は逃げるのみ! わざとかで何とか出来る銀河連合ではないぞ!)

一兆年の夜 第五十話 エーテルは否定される(三)

「お前はアン貴茂! ここで何の仕事させられてんだよ!」
「普通は挨拶しないなんてどうゆう神経? お早う御座います……これくらい言いなさい!」
「はいはい……お早う御座います。今日は絶好の深海日和で御座います。
 これでいいか?」
「まあ、ないこともないわね」
「それでどんな仕事をしてるんだ? こんな深い所で何もしないはずないだろ?」
「そうねえ、言っていいかわからないけど伝える?」
 構わんだろうが--アン駈歩は催促する。
 彼女の目的は深海遭難者捜索任務に当たる。深海では浅海に比べて光は届かず、エラ会話どころか泡会話でさえ役に立たない。そこでシャーク傭兵団は深海系の海洋種族のみで構成される捜索隊を設立。
「まあ長い説明はともかくとしてあたしはこうして残り十名を救助しに泳がずにいられないわ」
「それで何名浅海に帰した?」
「二名だけよ。今日は石版に書いてある十二名を死なせず救助するのよ、鰭伝う?」
「断る。わては藤原マス太の子孫捜しで暇じゃないから」
 藤原マス太の子孫って--アン貴茂は藤原マス太に僅かながら興味を示す。
「興味あるみたいだけどさすがにこれは鰭伝うことじゃないだろ! と、とにかく救助せずは良くないぞ!」
「た、確かに救助に鰭抜いたらいけないわね。じゃ、じゃあ鰭伝うのを待ってるわアン駈歩!」
 二つの髭を揺らめきながら真っ直ぐ泳いでゆくアン貴茂--それを後ろから見守るアン駈歩。
(遭難者なんぞすぐに見つかる訳ないだろ。いっそのこと石版を見りゃあ良かったかな? まあ関係ないことはやめて……とにかく銀河連合と鉢合わせないように元の所まで戻らないと)
 アン駈歩は安心出来ない面持ちの中、来た道を戻ってゆく。

 午前十時十八分三十六秒。
 アン駈歩が戻る頃には二名の姿はなかった。代わりにまん丸な鯛型銀河連合の死体が漂う。彼は用心深い正確なのか、成人体型五十まで離れながら横切る。
(死体は気を動転させるから困る。どうして人生に必ず死体を見なければならないのかさっぱりわかんないっての! 葬式なんかそうだ! 今は亡き両親の葬式は辛い。だって動かないんだぞ。これほど気を動転させるものが他にあるのか聞きたい……ってそんな考えを浮かべていいのかなあ?
 何かさっきから死体がワテから離れないような気が--)
「そこの鮟鱇! 見えるんなら急いで鰭を動かすんだ!」
 はあ--目の前にいる齢二十七にして七の月と七日目になる武内鮫族の青年に勢いよく泡を突きつけられて答えに詰まるアン駈歩!
「もう一度伝える! 急いで鰭を動かせ!」
「『鰭を動かせ』って伝えてるわけない?」
「ややこしい訛りだな。そう伝えてんだよ! 早くしないと死ぬぞ!」
「死ぬって……うわれべげばべっぜ」死んだはずのまん丸な鯛型が突然襲いかかってきた事に全身をじたばたさせるアン駈歩!
 全く学者肌の生命は--鮫族の青年は力強い泳ぎで素早くアン駈歩と鯛型を切り離すと、鯛型の腹目掛けて強烈な噛み突きを浴びせる!
(あ、あの噛み突きは……武内鮫族だ! とするならあの鮫はまさか--)
 でりゃあああ--青年は身体を引き千切るように右捻り回転で噛み砕く!
 鯛型は今度こそ息絶え、右半身と左半身が別れるようにそれぞれ浅海と深海を漂ってゆく……。
「あ、あなたはシャーケン! シャーケンじゃないだろうな!」
「呼び捨てか、年下だから! まあいいけど、俺の名前はシャーケンで間違いない!
 こう見えて--」
「わかってる! シャーク傭兵団団長。所属する者が知らないはずがありません!」
「まあそうだろうな。それにしても運が良いな、そこの鮟鱇! 名前は何て言うんだい?」
「わて……いえ自分は遊撃調査員の藤原アン駈歩と申さない訳には参りません!」
「アン駈歩……知ってるぞ! 確か愚痴が多いせいで『藤原マス太探し』をさせられているあの--」
「痛い所突かないで下さい、団長!」
「そりゃあ済まなかったな、ハッハッハ!」
 シャーケンが高笑いしている中、二名の右横から「オーイ、オーイ」と貝式エラ会話で呼びかける物部チヅヨがやってくる。
「また鉢合わせか、チヅヨ!」
「『光観測』していると普通はこんな所に来ないはずなんだけど……ってあなたはシャーケン団長じゃありませんか!」
「何をしているか聞きたいか? 実は狙ってるんだよ、『大王烏賊型』とやらを」
(『大王烏賊型』……確か深海に潜む生命の中には超巨大な種族も居るんだった。だから『大王烏賊型』は多分--)
「二名とも急いで逃げろ! どうやら俺が打倒しようとしている銀河連合が背後から来たぞ!」
 背後って--アン駈歩は振り返る。そこにはシャーキンが目当ての大王烏賊型が三名を絡めようと全ての腕を駆使する!

一兆年の夜 第五十話 エーテルは否定される(二)

 現れたのは銀河連合二体--二つとも鯛型。
 彼らの狙いはなぜかアン駈歩。「何故わてを逃さない!」と鮟鱇族独特の遠回りなエラ訛りを示しながら逃走する!
「狙いをつける相手が異なるぞ! 俺はお前らを死なせに来たのに!」
「銀河連合とはそんな連中です! それがしも協力しますか!」
「いや良くない、銀河連合を死なせたことのない君では食われて同然だ! ここは俺が責任を果たす!」
 だったらさっさと見守るのやめろ--逃げ回っても愚痴を示すアン駈歩。
「示さなくともわかるぞ!」
 オニ子が最初に狙うのは左側の鯛型--まん丸とするが遊泳速度は僅かに速いけど、オニ子に比べれば少し遅い。
 二つの距離は現在成人体型二百を切る--両魚互いに気づく!
 いざ尋常に勝負--まるで遊戯の審判をするかのようにチヅヨが泡で合図する!
 先制したオニ子はまん丸な鯛型の背びれを噛みつく! 鯛型はもう一体の鯛型の方へと鰭を動かす事で二体一の状況を作ろうと画策!
「正しい選択、それが戦いというもの! だが、掴んでいるのが俺でなければこうやって--」
 オニ子は何とチヅヨが居る方角に真ん丸な鯛型を投げた! 「それがしが危ない!」とチヅヨは背中を向けた! すると鯛型はチヅヨの背中にぶつかり大きくのけ反りながらオニ子から見て左の方角へ流されてゆく!
 これも戦い方だ、許せ--とオニ子は鬼金目族の強面な形相と共に鋭い牙を剥きだす!
「勝負あったな、まん丸い方は目ん玉を噛まれてさらに痛がり、止めは--」
「もう着いた! お前さんは恐がるのか楽しんでいるのかどっちだ?」
 どっちも正解だよ--チヅヨは素直に答える。
「さあ残りは傷ものただ一体だけ!」
「それが……アン駈歩を追っかけたまま姿を眩ました」
 本当なんだな--オニ子は本当かどうかを動き回りながら確認する。
「まあ心配無用ですって。あいつは満足しないことばっかり言うけど、ちゃんと生きて帰りますぜ」
「そうゆうもの伝えは却って安心させなくするだろう! 十六の年より前に起きた雄略大陸西側で起きた大地震とアララギノ正体全滅事件のように!」
「あの二つは大袈裟だよ! それなら二十七の年より前に起きたラテス島を食らった空の方が--」
 とにかくそれくらい安心できないってこと--話を打ち切ったオニ子。
「ま、まあゆっくり待てばいいでしょう。ここは深部五。安易に探せる場所じゃないからね」
「はあ、ここは心に留めるのは諦めよう。却って健康を良くなさせるし。仕方ないから場所を変えて銀河連合の打倒を続けよう」
「そうしましょう。ついでにそれがしは『光観測』を続けよう。光は果たして波なのか? それとも粒なのか?」
 それが『光観測』なのか--呆れるようにエラを動かすオニ子。

 午前九時三十分八秒。
 ここはどこまで離れたか--アン駈歩は傷の付いた鯛型から逃げ切ったもののどこにいるかを見失う。
(こんな深海で先輩やチヅヨに会うんじゃなかった。あの者達と出会う度に思い知る、痛い目に遭うってのを!)
 それでも全てが全て痛い目に会うわけではなかった--下の方を見ると輝く何かを発見。
(下へ行けばいくほど光はない。なのに光るということはもしや『竜宮』がここにあるのでは?)
 彼は『竜宮』に憧れを抱く。それは将来『竜宮』で一生を過ごすのが目標。純でない動機の下、輝く何かに近付くアン駈歩。
(もちろん周りを見渡しながら泳ぐのは共通の常識。わては『竜宮』に辿り着く前に死んではならない。誰も居ないなら安心だが、世の中はそうは上手くいかねえ)
 それでも普段から愚痴の多いアン駈歩にとっては悲観的になりやすく、両鰭は思うような速度が出ない。そうして輝く何かの正体が解ったのは発見して十の分より後。
「んだよ、てめえ! 期待を高めさせるな、コラ!」
 その愚痴はあんたなの、駈歩ちん--齢三十にして九の月と六日目になる藤原鮟鱇族にして従姉弟にあたる藤原アン貴茂だった。

一兆年の夜 第五十話 エーテルは否定される

 ICイマジナリーセンチュリー百六十四年十二月百十日午前九時零分九秒。

 場所は真正神武東海洋藤原。珊瑚島より西におよそ成人体型三千二百。深部五。光
が届かず、暗闇だらけの世界……深海。
 そこでは陸上種族が地上と地下で大きく異なるように海洋種族もまた浅海と深海では
生態系が変わる。光すら届かない上に水圧が大きい世界では目は闇を照らす方が暮らし
やすい。
 説明はこのくらいにして今一名で泳ぐ生命が居た。
(全くシャーク傭兵団は深海の管轄にまで口を出すんだから質が良くない! 鮫族なんだ
から浅海にだけ口出し……いやエラでもだしゃあいいんだよ。こんな碌でなしの世界にま
でエラを出しやがって!)
 彼の名前は藤原アン駈歩。齢三十にして十の月と三日目になる藤原鮟鱇族の雄。彼
は満足しない事を息でも吐くようにエラで示すが、やる事はやる生命。今日は調査の為
に珊瑚島に近い深海を泳ぐ。
(その調査とは『藤原マス太の子孫』。何で実在するかもわからん一族を調べなくちゃいけ
ない? わてはそれが理解出来ない! もしや支部はわてのような深海種族を遊ばして
いるじゃないだろうな! 奴等は深海を泳ぐ事が出来ん身体だからか?
 ああー! そう考えると怒りが込み上げてきたぞ!)
 オーイ、オーイ--泡による貝式エラ会話で呼ぶのは齢二十九にして十一の月と二日
目になる物部鸚鵡貝族の青年。
「あめえは物部チヅヨか? 雌みたいな名前しやがって!」
「ここはお早う御座いますだろ、アン駈歩! 会ってそうそう愚痴をこぼすな、腰砕け!」
「ほざいてろ! わては暇が欲しいんじゃ!」
「全く気分が落ち込んでゆく一方だ。お前との会話は」
「年上じゃないんに『お前』とは何だ!」
「それの何が良くない? いっつも--」
「こらこら二名」
 あなたは--チヅヨの視線に現われしは齢三十一にして一日目になる蘇我鬼金目族
の中年。
「蘇我オニ子を知らぬ者は居たら返事しろ」
「オニ子先輩だろ? 雄らしくない名前しておいて雌らしくない先輩!」
「君らが雄として情けにないのがいけないだろ? こんな所で油売りの真似をしている場
合じゃないぞ」
「そうだった! それがしの目的は『光観測』だった!」
「『光観測』? まあ良いとして先輩は目的がない訳じゃないだろ?」
「相変らず鮟鱇族のエラ会話はややこしい。
 そうだな、『銀河連合を打倒すること』かな?」
 うう--アン駈歩だけでなくチヅヨも表情を硬くする。
「確かに恐い。銀河連合は会いたくない。だが、仕事だと思ったらどうしても……早速来
たぞ!」
 オニ子先輩は必ず吉とは縁遠いんだよ--アン駈歩の見る場所に愚痴を溢さない箇
所はなかった!

冬眠への道 嘘つき篇

 どうも今日かのブラックキングワタミのゲス野郎が平然とどの口下げてそんな事言えるんだと怒り心頭になっちまったdarkvernuです。
 試作品始める前に『格付けの旅』が数行程更新されましたので読まれたい方はカテゴリ覧の<格付けの旅>か<白魔法の章>をクリックして下さい。
 ほぼテンプレートと化した二行にすっかり悦を浸ってる場合じゃないと思いつつ今週も前二周と同じく一回だけ紹介された試作品のプロローグをどうぞ。

 別荘の敷地に難なく入ってゆく一台の車……それは限りない悪夢の始まり
 銃声が響くのはそれから五分と経たない内--別荘の南入口で無防備に構えていた主である髭の男の頭を吹っ飛ばす!
「ああ、あ……おじいいさん!」
「死んだよ、あんちゃん。俺様のビッグマグナムはオートマトン用に開発された戦略銃さ。首がもげるくらい人の頭蓋骨を吹っ飛ばすのは簡単なこったああ!」
 主の死に五名の誰もが引き攣った顔をする。その中で派手な化粧と格好をする老婆は激高する!
「あ、あんたらはどこのもんだい! まさかグス--」
 老婆の左胸には半径五センチもの穴が開き、そのままの表情で後ろに倒れた!
「マ、ル、シ、ァ……」
「ボクチンの銃は改造されてて、ハンドガンでもこんなに威力あるんだよお」
「父さんだけでなく母さんまで! そ、そんな事よりもどうやってここまで来た!
 敷地内にはダットラーが許可した者でないと--」
 あ、なた--ほお骨の目立つ熟女がほっそりした男に右手を差し伸べようとしたが、男はそのままうつ伏せに倒れた。
「あたしに言わせりゃ金が足りないから裏切られたんでしょ?」
「よ、よくも私の旦那を--」
 かあさああああん--青年は中央に大きな風穴を開けられた熟女を見て叫び声を上げる!
「ヒヒヒ、これでアト二人い」
「確か依頼では俺達五人は一人一人の家族を殺しても良かったよな。んでそこの……綺麗なお嬢ちゃんは確かどうだったかな?」
 まさかミーシャを--青年はミーシャと呼ばれる白髪の女性に視線を送る。
「ど、どうしようブラム」
「ミーシャ! 早く逃げるんだ! ここは僕がこいつらを食い止めるから早く!」
「で、でもそれじゃあブラムが--」
「だ、大丈夫だだ! 僕だってこう見えて身体は鍛えてあるんだ! あんな五人組の奴等を食い止めるだけの力はあるるって!」
「で、でも--」
「大丈夫だ! あそこへ逃げろ! そうすればあいつらだって気付かないって!」
「おやおや何してるのかな、坊や達? 恋人ごっことは熱いねえ」
「五月蠅いぞ! 僕を誰だと思っている! リンドブルム家の嫡子ブラムヘイムだぞ! あんたらみたいな馬の骨とも知らない者が簡単に近付いちゃならんのだぞ!」
 そう言いながらもブラムヘイムと呼ばれる青年はミーシャに視線を送る「逃げろ!」と。
「わかったわ、ブラム。でも死んだりしないでね」
「うん。僕は死なない。例え神様に命じられたって!」
 もうブラムったら、この世に神なんていないわよ--ミーシャは後方にある扉へ走ってゆく!
「逃がすかよ、このアマ!」
「まあ待て、イシュコフ」
「何止めるんだ、ザイゲリア!」
「俺達は知ってるよな? ヒョヒンから貰った地図があるんだし」
「ヒヒヒ、あれかね」
「確かにゆっくりと仕留めるのも悪くは--」
 オカマ口調の男の左頬に掠り傷が走る--気がつくとブラムヘイムはハンドガンを両手で構えていた!
「よくもやってくれたわね、このガキャアア!」
「よせ、クルギエフ! そいつは俺の獲物だ。しっかり生まれた事を後悔させねえとよ」
「わかったぜ、ザイゲリア。じゃああの女はどうする?」
「犯してでも良いぜ、追え!」
「ミーシャは渡さな……い?」
 先に引き金を引いたのは左眼に眼帯をした男ザイゲリア--ブラムヘイムは右肺に穴が開き、呼吸困難になる。
「やるねえ、ザイゲリア! 餓鬼相手を生殺しする気かあ?」
「そうじゃねえよ、ゾドムゴ。しっかり殺すんだよ。だけど俺みたいなガンマンにはそれじゃあ物足りねえよ。だから六発全てを使ってこいつを嬲り殺すんだよ、ククク……」
 四人が横切る中、ブラムは中央付近に二、三発目と風穴を開けられる。立つ力が尽きると仰向けに倒れながら「ミイ、シ、ァ」と情けない声を出す。
「女が心配か? 残念だけどあの女は死ぬんだよ、小僧。どうゆう風に死ぬかはこれから死ぬお前にはわからねえだろうが」
 残り全てを中心部に放つザイゲリアは標的が死んだのを確認した後、ミーシャが逃げ込んだ先へと歩を進める。
 この時奴は気付かなかった……全ての弾丸が心臓に一発も当たっていない事に!

 ミーシャは隠し通路を抜けて別荘より北に五百メートル先にある人工林にある隠れ場所に逃げ込んだ!
「大丈夫、よね? ブ、ブラムならだ、大丈夫よね?」
 ミーシャの精神は今にも狂いそうな状態であった。それに拍車をかけるようにザイゲリアを除く四人が林の中へと入ってきた!
「ど、ど、どうしてここが!」
 彼等はまるでミーシャの隠れそうな場所が解るように探索。そして、ついに--
「見つけまちたねえ、お嬢ちゃああん?」
「ヒ、ヒイイイイ!」
「この女! いい年してちびってやがんぞ!」
「グヘヘ、大丈夫だよ。しっかり俺様がベロで掃除するからさあ」
「来ないで、変態!」
 黙れ女--オカマ口調をした男クルギエフはミーシャの鳩尾に右膝蹴りを入れる!
「恐い恐い、これだからエセオカマは。とにかくさっさと殺して--」
「待てや、ゾドムゴ! その前に抜いとくだけ抜いとく?」
 さんせえい--四人はミーシャを羽交い締めにして衣服を破り、彼女が泣き叫ぶのを快楽に感じながらひたすら食い尽くしてゆく!
「た、す、け、て、ぇぇ、ブ、ラム……」それが最後に彼女が出した言葉

 ザイゲリアがミーシャが居る隠れ場所に着いたのは彼女が死んで半時間経ってからだった。
「結局銃弾を使用せずに死んだか、あの女!」
「中々いいもの持ってたな! しかも一度もあの餓鬼とやった事ねえとは驚いたがよ!」
「やだねえ、これだから処女ってのは醜いのよ!」
「それにしても一時間以上も喘ぎ声一つ出さないとはどうしようもなくムカツク女だったよお! これじゃあ抜いただけ抜いて損した気分だってのお!」
「ヘヘヘ、いいじゃんか。一杯揉めたんだし、キスもたくさんしたんだからいいだろう、ザイゲリア?」
「そりゃ残念だったな。俺だったら喘ぎ声出せたかもな、ククク。それじゃあとっととここも含めてあの別荘を盛大にしてやるぞ!」
 彼等は一服すると点いたままの吸い殻を放り投げてこの場から立ち去った--人工林はやがて吸い殻五つ分のぼやで怒りの炎となり、全体を燃やしてゆく!

 別荘が燃える中、車から出る小太りの男が一人。彼は仕事を済ました五人を温かく迎える。
「いやあ、やるねえ君達。お陰であっしの地位は向上したと思いますんで」
「ご託はいいんだよ、ヒョヒン! さっさと金を渡せ!」
「まあまあその辺は後日君達に送るから」
「やっておいて言いにくいんだけどお、あの一家を殺したらリンドブルムがまずいじゃないかあ?」
「その心配は無用ですぞ。すでにエヴェルヴェはリンドブルムの懐柔及び粛清に成功したとダットラー殿が先程報告してきやしたもんで」
「早いわね、あの男ったら」
「敵に回したくないな、ヒヒヒ」
「それに例えこんな事件があっても不慮の事故で済みますし、今後彼等一家の情報は修正され、公に流されないようになりますんで」
「俺達ゴミ溜からしたら怖い話だなあ、オイ!」
「いいじゃないか、いい生活出来るだけまだマシだろうに」
「ではお乗り下さい! がこちらへ来るまでに急いで!」
 その火とは警尾官のことだろう--四人より遅れて車に乗り込むザイゲリアは満足げな表情であった。

 焼かれた別荘内では四肢を燃やされてゆく四人とは異なり、一人だけ火の直撃を免れる死体があった……いや死体ではなかった!
 は--六発もの弾丸を受けながらもまるで何事もなかったかのように立ち上がる青年。
(そう、か。僕は……うう!
 父さん、母さん、お祖父さん、お祖母さん……もう死んだんだ。あいつらのせいで!)
 彼は蹌踉めきながらも燃やされてゆく四人の死体を眺めてゆく--火に当たらず、瓦礫すら彼を避けるようにして!
(……そうだ! ミーシャはどこだ! ミーシャ……ああそうだ!
 僕はミーシャをあそこへ隠れるように言っといたんだ! も、もう扉は形留めないけど、崖くらいこんな傷なんか!)
 青年は僅かな希望を胸に別荘の北入口を出て行く。

 青年の目に映ったのは燃えさかる人工林。けれども彼はどうでも良かった--ミーシャという希望があるなら。
(ミーシャ……居るんだろう? 例え燃えさかる炎があっても彼女だけは無事で居るんだ! 無事で、無事で……無事で?)
 青年は見てしまった--どこへも往かない瞳で口を開けながら全身の服を破られ、所属不明の体液を流しながら機能停止した女性の姿を!
「ミイ、シャ? ミ、イ、シァ? こんなのあるのか? 返事をしてくれないか! 誰にやられたんだ! あんな場所は僕とミーシャにしかわからないんだぞ! なのにどうして、どうして! どう、してなんだ?」
 青年の両眼から出る赤い涙は全てを呪うかのようにミーシャを見つめる!
「う、う、う、うぁぁ……こんな事が! う、う、う--」

「うわあああああああああああああああああああああ!」
 青年は目覚める--警尾官宿舎にある個室。彼は公衆画面よりやや上にある電子時計を見る。そこには『AM5:00』と表示。
(また見てしまうとは……私には思い出したくない光景。あれ以来私は三年も4バンチで死線を潜り、現在に至った。富も名誉も全ては復讐に捧げた。父さんと母さんとお祖父さんとお祖母さんとミーシャを殺した連中全てを殺し尽くす為にな!
 奴らは一人の雇い主と殺しや五人組。雇い主の名前はマク・ヒョヒン。出世しか能のない新羅人。小太りでえらの張った男だが、地位はそれなりにある以上は近付くのは困難。
 五人組の一人はゴローン・イシュコフ。巨漢の男でロシア人。既に始末した後だ。
 一人はゲオルク・クルギエフ。オカマ口調をした北アイルランド人。これも既に始末した。
 一人はファンゲエ・テッサリエン。小柄だが、目は良いジンバブエ人。これから始末するのはこの男だ。
 一人はビエン・ゾドムゴ。舌を垂らすコロンビア人。テッサリエンの後だ。
 最後が五人組のリーダー格ガギャーン・ザイゲリア。私を殺した気でいる眼帯の男。人種はスペイン人。恐らく手こずるのはこいつだろう。
 しかし、早く起きすぎた。何もする事はない。針鼠は四六時中全てを見て回れるが、公衆テレビは起床時間を過ぎないと映し出されない。ただし、私の周りにあるホログラフは針鼠と同じく四六時中付いて回る。ただし、部屋を出れば通路用のホログラフに移る為、そこまで監視は行き届かない。それでも針鼠一つあれば死角であろうとすぐさま赤服が矯正しに来る。
 矯正された人間がどうなるかは……私の知った事ではないが)
 青年は制服に着替え終えた後、机に置かれた部品を僅か三秒でハンドガンに組み立てた。そして、新品のカートリッジから使用済みのカートリッジを合計二十個ホルダーに仕舞う。それが済むと何故か二十個入りマッチ箱を十ケース懐のあちこちに仕舞う。
(今日は非番の日。よって私は現状不在の口実を作る為に署から承る仕事を貰う必要がある。けれども今の時間じゃない。針鼠は四六時中私を監視する。七時になるまでビッグマザーへの愛を復唱しておこう)
 青年は昔も今も熱心な共産主義者……けれども少し違う点があるとすれば復讐心。彼は愛する家族とミーシャの仇をとる為なら全ての者を殺すつもりでいる。そんな彼には未だに名前があった。
 ブラムヘイム・リンドブルム……目に映るのは果たして嘆きなのか?


 済みません。試作品のつもりが本気を出しすぎました。申し訳ありません!
 話を戻して試作品『ブラムヘイム』をお送りしました。これも前二周と同じく前に紹介した試作品をまた出しました。今度の場合は始まりの部分をお送りしましたが……長い(驚)! 書いてみて思ったが、長すぎる! さすがにこれからこんな調子で書いちゃ駄目だと感じましたぜ!
 話を戻すよ。この物語ははっきり言って気持ちを損なう場面が多数出ます。というのもかのオーウェルの最高傑作の続編のつもりで書きました。別に同人という訳ではなく、続編っぽい世界観でなおかつ自分色に染め上げたような感じになります。なので、主人公ブラムヘイムを初めとして登場人物全てが現代の日本人の感覚からすると気色悪い常識で物事を考えます。例えば『ビッグマザーへの愛』がその一端を担います。他には針鼠とかホログラフ。近未来に見えて実はこれも物語の気色悪さを引き立たせます。何よりも四六時中監視されるんだよ。とてもじゃないが空条除倫(合ってた?)が○三文字をやる事出来ないぜ。まあどうでもいいが。
 ところで針鼠について説明しますとあれは針鼠式監視カメラの事を言います。監視カメラを知る者ならわかると思いますが、あれはどう数合わせした所で死角に関する問題を解消出来ません。ところが針鼠の場合は乱反射によって映像を修正且つ死角部分を映し出すという恐ろしいカメラです。しかも修正時間はさほど係らず仮に死角で下ネタな行為をやらかす不敬な者もちゃんと映し出され、しかもタイムロスがほぼ係らない状態で縄に繋がります。とにかく全体主義もそうですが、科学力も行き着く所まで行くと恐るべき社会を形成しますので気を付けて下さい、皆さん。
 と言う訳で試作品の解説は終えます。

 第四十九話の解説を短く纏めますと、「いきなりキャラ殺すか、普通!」「親父は中々しぶといなあ。あんだけ死亡フラグ立ててんのに!」「ようやくスイッチが入ったのかよ、主人公」「でも遅すぎた、何もかも」と会話方式で解説しました。取り敢えずいくら疲れているとは言え、まともな解説が出来なくて本当に申し訳ない。後は何度も注意書き通りやらずに更新を遅れさせて申し訳ありません! 今後は再犯防止に努めて参りたいと思います!
 一応まともに解説するとしたら今回は銀河連合に有利な状況ばかり出ましたが、これも彼等の領域内故に小隊の者達はまともな判断が出来ずに初っぱなからほぼ四分の一にまで数が減ったのよ。いやあ、補正も敵側に渡ると最早収拾が付きません。一応都合良く転ばせてはいるんですが、一度決めた結末からの変更は中々無いので彼等の、まああれに関しましては諦めて下さい。かの暗黒面に堕ちた女子高生がほぼ主役のアニメで期待値を上げて出したチームがまさかのかませ要因になるという衝撃展開よりかはマシですよ(苦)。
 以上で第四十九話の解説を終えます。

 本当に申し訳御座いません。新年をまたいでこんな展開をやっちまって! おまけに今日紹介した試作品がこれまた読者のテンションを下げてくれます。さすがに明日以降は少し明るめに行けたらいいなあと思います。
 では第五十二話までの予定日と五十三話の題名を載せます。

 一月
 六日~十一日     第五十話  エーテルは否定される         作成日間
 十三日~十八日    第五十一話 光不変の先へと 前篇        作成日間
 二十日~二十五日   第五十二話 光不変の先へと 後篇        作成日間
 予定日不明       第五十三話 再誕の火 真正神武最後の最高官 作成日間

 冬眠の章が終わったら一兆年の夜は本当に冬眠します。再開のめどは立ちませんのでほぼ一年以上しばらくは雑文や格付けの旅でも読んで下さい。どっちも読みたくない方がいればそれはそれで仕方ないと自分は思ってます。
 それじゃあ今日はここまで! さすがに来週以降の試作品は午前中に終わらせないといけない!

一兆年の夜 第四十九話 燃える氷の怒り火(十)

 午後八時十七分三十四秒。
 長谷川カブ弥は甲羅にはいくつもの傷を受けながらも彼は一名で四方八方より合計二十七体もの銀河連合との死闘を繰り広げる! 最初の十分は優勢に働くも今では一対一の状況は最早なく、身体を掴まれながら一方的に食われてゆくばかり。
 そんな彼でも誰かは知らない鯛が救援に駆けつけたお陰で死の状況は回避されてゆく!
「無事なのか?」
「ナマンダが死んだ!」
「これでもう三名だけに……そ、それじゃあどうして副長イルカナは居ない!」
「あのじじいの頼みだ! 若い命をこれ以上……囲まれたぞ、カブ弥!」
 ああ--カブ弥ら二名はそれぞれの道を進むかのように泳いでゆく!

 午後八時二十分三秒。
 老年イルカナは尾びれごと尾を食われ、以て五分の命となった! それでも己の精神は高潔であり続ける!
 銀河連合は油を断つのか、急襲する戦法をとる! そこに狙いを付けたイルカナは間合いに入った銀河連合の急所を次々と狙い、噛み砕く! 下手に身体を動かさず、銀河連合を限界まで惹き付けながら一体一体丁寧に倒す。
 制限時間内で最初の一の分まではそれが有効だった。だが、そこを過ぎると銀河連合はゆっくり近付く戦法に変更。もはや返し技は通じなくなった。
 そんな状況でイルカナがとった行動は何もしない--命を捨ててでも魂だけを残す最大限の抵抗であった!

 午後八時二十五分十二秒。
「じゃあ行ってきます、父上!」
 アラツネを比較的安全な場所に隠れさせたアラカツは最後の戦いへと赴く! 彼がまず向かったのは自分達がは行っていった道を通る事--即ち外へ出る為に出入口に近付く。
 ここでアラカツは奇妙な感覚に襲われる!
(おかしい! 自分ここ通ったはず! なのにさっきとは景色が違う!)
 そう思い、振り返るとまたしても奇妙な現象を目撃--さっきまで泳いでいた道が変わり、目の前にあるのは奇妙な崖。
(これが『秘境』呼ばれる場所なのか! こうも景色変わりすぎると自分どこ向かっているのかさえわからなくなるぞ!)
 また振り返ると予想通り景色は誰も居ない左右に人族像が並ぶ通路から三体もの巨大な人族像--左には指揮官型によく似た複数本もの手が生えた筋肉隆々の像。右には両肩に穴の開いた望遠鏡を生やす全身鎧の像。中央には無数の目を抱え、背中に複数の翼を生やした像--を背景に百体以上の銀河連合が居る部屋に遷る。
(奥にある三体の人族像一体何を示す? 神々何自分伝える? 最早遠すぎる時代しかわからない予言!
 今は目の前の銀河連合全部倒してやる!)
 それが出来るのは歴史上見ても天同生子だけ……わかりきってはいたが、敢えて挑戦するのがアララギノアラカツ! 彼は真っ直ぐ駆けて行き、三体もの銀河連合を倒した所で限界を迎える!
(食われてゆく……し、ぬぅ、かぁ? ぁ、ァァ、ん……)
 目を全て食われて視界を失い、耳の器官を食われて音を失い、全身を食われて痛みに喘ぎながら彼は何かが怒りを込み上げる感覚に気付く……『秘境』周辺で大規模な地震が起り、それは雄略大陸南西部に巨大津波を与える! 巨大津波は当然炎のように燃える為、流すと同時に流れなかった建物、木などに火を付ける!
 この地震と津波による死者は十万名以上、負傷者はその倍の三十五万名以上、行方不明者は五万名以上となる。神々は銀河連合による都合の良い展開への対抗策として巨大地震を発生させたのかも知れない。別の見方をすれば大陸移動で生じた力によってこれだけの巨大地震が起ったと言える。
 いずれにせよこれだけは確かだ……アララギノ小隊の生存者は零名である事を。







 ICイマジナリーセンチュリー百六十年十二月百八日午後九時零分零秒。

 第四十九話 燃える氷の怒り火 完

 第五十話 エーテルは否定される に続く……

一兆年の夜 第四十九話 燃える氷の怒り火(九)

 午後七時十五分十五秒。
 場所は不明。海の秘境と思わしき場所。
 秘境とは神々が眠り続けるまか不思議な地。地理も年を追う毎に変化するなら正確な面積も精神のように変化。なおかつ正確な位置すら掴めない。それが秘境が秘境たる由縁。
 アラカツら六名は水の惑星に現存する秘境の一つに着く。
「父上、ここから先は自分めが指揮を執ります!」
 イカレガの死を以て精神が崩れたアラツネの表情は笑顔で満たされる。
「年をとりすぎるとああして情緒が保てなくなってくるの?」
「そうじゃないよ、先輩。分隊長はあまりにも仲間の死を見すぎて精神の均衡がおかしくなった。もう死んだも同じ状態だ」
 死んだも同じか--誰か知らない者はアラツネに見えない角度からそう伝える。
 彼等は不思議と躓くことなく秘境を泳いでゆく。その訳は秘境の水温が深部一の場所以上に安定しており、それでいて周りが見える程に照らされる。
 あまりにも住み心地よい場所を探索してゆく六名は襲撃に備えて今日最後の食事を摂り始める。
(元々が支援分隊だから食事明日まで保つ。いや、正確には一食ずつと換算すればあと三日は保つかな? 取り敢えず腹ごしらえを済まさないと戦いに支障をきたす。食事時こそ自分達生きている証!)

 午後八時零分十一秒。
 六名は秘境にある不可思議な建築物や構造物、それに像を調べ回る。
(鯨系の海洋種族使う信号を応用してそうな巨大な人族像二つカンガルー拳法が使えそうな人族像まである。後は超巨大な建物型の人族像それ乗っかる鳥族の姿……いや人族にも人鳥混合型にも成れそうな像まで。神々眠る地とはこうゆうものだったのか!)
「不思議な所だね、総長!」
「カブ弥か。確かにこの地は見ていて飽きない。これが神々が眠る地『秘境』なのか!」
「ところでイルカナにはいざという時、信号を送るのかしら?」
「そのように指示を出したよ。今じゃあ指揮官は自分とイルカナだけになった。父上はとても指揮出来る状態じゃない。となると前線指揮はイルカナしか居ない」
「どうゆうことだ、七光り?」
「あんた聞かなかったの? 総長は分隊長を安全な場所に避難させる為に私達に指示が出せないのよ。だから戦う際はイルカナが直接指揮を執るのよ!」
「その方がいいですね。誰だって肉親が一番大切ですし。僕なんか生まれた時から既に肉親どころか兄姉さえ居ない。親が居るだけでも幸せな方ですって」
「よくわからん……な?
 お前らよお、七光りどこ行った?」
 総長なら神々が宿っていそうなあの木造建築の建物に入ったわ--身体の方を神武聖堂に近い形をした建物の方に向けるナマンダ。
「あの場所は入りづらい気がするよなあ。僕みたいなどこの骨とも知らん種族が入って……副長から届きましたか!」
「ああ、こんな時に銀河連合が来やがった!」
 ほんとだ--ナマンダは空がある方面に身体を向けるとそこには一の時より前に襲来した時よりも十倍の量で現われる銀河連合の大部隊!
「俺達は六名だが、分隊長と総長は現在戦力から外れる。となると--」
「たった四名……どう考えても死にに行くわ!」
「だけど僕達は守る為なら数なんて関係ない! この命を燃やしてでも--」
 四名はイカレガ同様誰かの礎となるべく--
「「「食い止める!」」」
 駆け抜ける!

 午後八時十五分零秒。
 アラツネとアラカツは神々の住まいを進んでゆく。
(父上。もう治すこと叶わなくとも魂はまだ生きておられる。どんなに辛くても生きていればこんなにも嬉しいことはない。どうか神々、父上支えて下さい!)
 アラツネに気配りしながらもアラカツはある考えが浮かぶ。それはセネカ集落に伝わりし、『竜宮』伝説。『竜宮』には空、陸、海の種族それぞれによる主張が異なる。
 空中種族によれば『竜宮』とは実在が危ぶまれる恐竜族の都を指し、彼等が過去へと還るまでに理想郷と呼ばれる世界を作り上げたという説。
 陸上種族の場合は『竜宮』とは海に住むであろう陸上種族達が捨て去った技術を用いて作り上げた都市。遙か未来に実現する文明都市という説。
(海洋種族場合はそれこそ弥勒菩薩そのものであろう。それは即ち人生の終りに相応しい極楽の地。自分またここに来て命を捨てる時が来た。済まない、みんな)
 アラカツは父アラツネと共に巨大な魚荒族が拝む像を眺めながら何かを唱えるように口を動かす。彼には外で何が始まったのかに気付いていた。それだけでなく、自分達に逃げ場がない事にもようやく気付いてしまった。
 只一点だけ気付かない事があった。それは徐々にではあるが、悲鳴を上げるように響く大陸移動の音に……!

一兆年の夜 第四十九話 燃える氷の怒り火(八)

 午後六時十九分五十八秒。
 七名だけになった小隊は最早分隊と変わらない。彼等の部隊は現在分隊長にアララギノアラツネ。総長に息子のアラカツが就く。副長はイルカナとタダナガラノイカレガ。彼等が残りの傭兵を支える。
(といっても三名だけになった部下自分達よりも少ない。本来自分かイルカナ平隊員降ろされるべきだったがそういかなかった。自分どこまでも只の七光りなのか? 情けない。自分自信が持てそうにないな)
「また自分を後ろ向きに評価するのか、アラカツ?」
「だからどうなんだ! 自分にはいつだって彼等に助けられてばかりじゃないか! こん--」
「前を向くんだ、若! 我は何度も伝えているだろう! 我々は前に進む以外道はないと! でなきゃ明石分隊、東郷分隊、山本分隊、シャチルソン分隊、それにヒト菜、クラ彦、雲丹、ヤッドンにどう顔を上げきったままでいるか!」
「『顔を上げきったまま』って伝えたの?」
「案外古風な方なんだ、分隊長は」
「今じゃあもう副長だよ。それでもお前らが部下であることに変わりはないぞ!」
 副長に昇格とは元分隊長も偉くなったよなあ--誰か知らない者は羨ましい気持ちを示す。
「あんまり伝言してばかりじゃあ良くない! いくら深部五という暗闇に向かっているとはいえ、油を断ち切れん。いつでも現分隊長と総長、それに我の指示とイルカナ殿の信号が来るまで体勢を整えるんだ!」
「ええ、そうね」
「そうか、僕達は『燃える氷』に向かって泳いでいるのか」
 現アララギノ分隊は深部五と呼ばれる暗闇の世界に入ってゆく。どうしてそうなったか? それは現分隊長アラツネの精神状態が度重なる部下の死で危険状態に達しようとしてた。
 アラカツによればアラツネは昔から死にそうな言葉を自ら伝えるのに終わってみれば何故か自分だけ生き残るという矛と盾にぶつかる。一桁代ならそれで済んだが、彼の場合は傭兵団に入ってずっと仲間の死を見続けた。一命前の青年に成っても、中年に成っても、更には現在の老年に成っても。死者の中にはアラカツの兄が八名含まれており、それが年を追う毎に彼を苦しませた。そして、抱え込んだモノはやがて深部五で破裂しようとしていた……。

 午後七時零分四十秒。
 場所は深部五……のはずだったが--
「理解出来るのか、イカレガよ」
「申し訳ありません、分隊長! 我ですらここは理解が困難だ!」
「真正細菌族の命の輝き……ではないのか?」
「たい亜……これ炭化水素よ!」
「本当ですか、先輩! となるとこれがかの有名な『燃える氷』?」
「わかることを伝えていいか、父上?」
 エラ会話を許可する--アラツネは光る世界で混乱していた!
「ここは間違いなく『秘境』に近い! いや、正確にはここは神々が眠る場所だ!」
 アラカツは六名全員にエラ会話で表現する--燃える氷で辺りを照らす深部五の中で!
 そこは表現しようにも生命がまだ理解とはほぼ遠い位置にあった。泳ぐ城壁頭の巨大な人族像に三つの何かがくっついて一つの人型に成った人族像、背中に二つの棒を突き刺した鞄を埋め込んだ人族像。他には両肩が頭よりも大きな巨大な人族像、目がなく剥き出した人族像、三点望遠鏡を回す首なしの小柄な人族像、歯を剥き出して両肩も長く、顎も長い巨大な人族像などそれらが分隊の周りで漂う。理解だと出来るはずもない。
 呆気に囚われている間に空気を一変させる存在が分隊の十倍以上で迫る!
「……は! イルカナか!
 どう……本当だ! こんな時に現われたか、銀河連合ウウ!」
 アラツネ、イルカナ、そしてイカレガを除く四名は度重なる死で怒りが頂点に達しつつあった!
「今すぐに先輩達の仇を--」
「早まるのではない、四名! 気合いで何とか出来る世の中じゃないんだ! ここは奥へ逃げるぞ!」
「でも私達の心はもう--」
「自分だって同じ思いだ! それでも命令は絶対だ! 自分が我慢しなくて誰が我慢するか!」
 七光りが何を伝えてやがるか--琴線に触れる言葉を見せたが、イルカナは誰か知らん者の身体を覆う事で回避!
「ここで争うのは銀河連合を有利にさせる! それでも争うなら我に考えがあるぞ!」
 イカレガは一名だけ銀河連合に特攻してゆく!
「ちょ、副長! 何してるんですか、戻って下さい!」
「カブ弥か? もう我は疲れた……これから先は一の分以上持ち堪えてやるからさっさと行け!」
「どうして自ら死ぬような--」
「死ぬ? 死にはしない……想念の海で自我を保てれば我は死なん!」
「戻れ、イカレガ! またわしを長生きさせるのか!」
「御免、分隊長。最後に命令無視して……後は若が支えるんだ!」
「七光りに何が出来るって--」
「出来る! そうでなくちゃ我の上司は務まらん!」
「イカレガ……わかったよ! 最後くらいは背ビレで送る!」
 それでいい、若--アラカツがようやく一命前の雄に成るのを見たイカレガは銀河連合の大部隊へと頭を向ける!
「我は最後まで前向きに泳いでやるぞ!」
 分隊とイカレガは互いの背を感じながら一方は生き残る為に! もう一方は……大部隊の僅かを噛み千切ってゆく--全身が跡形もなく消えるその時まで精神を保ちながら!
 イカレガアアアアア--ここにアラツネの精神は限界点を超えた!
(自分……自分支える! もう自ら前に泳いで生き残る! 例え無理だとわかりながらも最後まで命を輝かせて……輝かせて!)
 六名はもう一つの秘境へと入ってゆく……!

一兆年の夜 第四十九話 燃える氷の怒り火(七)

 洞窟の出入口は一つ。そこから出てきたのは三体の若布型……正確には--
「気を付けろ、若! 奴等は六体以上いるかも知れない! 僕は見た目で数え間違えたせいでヒト菜を--」
「だから悔いる暇があるなら前に進めとさっき伝えただろうが! 我等は死んでいった者達の為にも残った者全て生き残るんだよ!」
 その通りじゃ--アラツネはある指示を出す。
「『四対一で対応しろ』と送るのか、イルカナ?」
 アラカツの問いにイルカナは上唇を隠す。それを見たイカレガは--隊列任でゆくぞ--と分隊員全員に伝える!
 小隊は密集し始める。それを確認した若布型三体は三角形が描ける隊列で接近し、距離が成人体型三十になると一斉に上下左右様々な回転をしながら挟み撃ちを開始!
 今だ--アラカツの指示と共に彼を含む九名は散開する!
 小隊と若布型は互いに二対一になる絶好の場面になるまで洞窟内を縦横無尽に泳ぎ回る!
(依然自分達利が少ない! 二対一になるのは真実じゃない! 自分達目的は『四対一』! 『三対一』ではこれも安心出来ない。若布型一体じゃない! ヒト菜死なせた若布型裸亀貝型潜ませてある。あんな身体では一体くらい潜ませてもおかしくないってのか! この……危ない!
 この場合三対一では安心出来ないのは父上話した銀河連合に都合の良い世界……ここはそうなんだ! だから四対一で対応しなくてはならない!)
 小隊と銀河連合達は互いに探り合う--開始して十六の分は経過。
「さっさと集まってくれないかな、雲丹さあ」
「私に頼んでも時機を早まらせないわ! だからひた……来たわね!」
 雲丹とナマンダ、それにイルカナとカブ弥が居る中で若布型は一体だけになった! 彼等は一斉攻撃をかける!
「出て来い、隠れた銀河連合!」
 ところが一斉攻撃で倒してみると中には何もなかった!
「どうゆうことよ? どうして中には居ないのよ、カブ弥!」
 ここでイルカナは全体図を見渡す--若布型の死体周辺には自分とナマンダ、雲丹にカブ弥しかいない。
 だが、イルカナは観察の目で見渡す。そこである物体が叫び続ける雲丹の中に入り続ける。気付いた彼は雲丹以外全員に発信する! 内容は--雲丹から離れろ--真正細菌族が行う戦法による死者を減らす為の苦渋の決断であった!
「ど、どうしたのみんな?」
「ごめん、雲丹。私達は……あなたと永遠に別れなきゃいけない
「先輩からは大量の真正細菌族が入ってるんだ!」
「え? まさかわをぃ……」
 そこで彼女はもう宋雲丹ではなくなった……海栗型銀河連合としてナマンダに襲いかかる!
 させるかあ--ヤッドンはナマンダを庇うように持っていた貝を彼女に放り投げる!
 海栗型は貝の頑丈さに思わず付近にある壁まで跳ね返り、更に跳ね返った! 跳ね返りながらも海栗型は剥き出しのヤッドンに突進!
「狙いが僕であることくらい承知だ! あの世にはお前だって連れてってやるからな!」
 ヤッドンは海栗型に全身を刺されながら彼女の亡骸に足を刺してゆく!
「止めるんだ、先輩イイイ!」「腰砕けた真似なんてどうかしてるわあああ!」「まさかヤッドンと雲丹は!」「また我は部下よりも先に生きちまった!」「ヤッドオオオオン!」彼等の叫びの泡を見たアラカツは奥歯を噛み締める!
(二体さっき倒したばかり……呆気なく終わったのに! なのにどうして雲丹ヤッドン呆気なく終わったんだ!
 答えてくれ、一兆年の神々!)
 ヤッドンは雲丹と運命を共にする……死体は天井を激突してアラカツの左を横切り、更に跳ね返る!

一兆年の夜 第四十九話 燃える氷の怒り火(六)

 アラツネから聞かされた話はあまりに都合が良すぎた。雄略大陸の周囲を話すより先にシャーク傭兵団の前身についてエラ会話から出る。それによると元々は藤原マス太の後継者を捜す為に結成された調査集団。彼等は血が途切れた藤原マス太の系統は続いているのではないかという目的の下に時の新国家神武最高官兼象徴天同星央から許可を貰い、二百四十の年もの間捜索に励んだ。
 だが、その過程で銀河連合との幾たびに渡る戦いの末に調査団は傭兵を雇う必要性に迫られる。最初こそ調査団の理念を崩さぬ為に反対の声が多く、既存の調査隊に留まった。しかし、年を重ねる毎に銀河連合のやり口が巧妙になるにつれて反対派の声は賛成派と拮抗するようになる。これはおよそ五百の年より前に戦いを巡って豚の親子が争われた光景と瓜二つだ。シャーク傭兵団へと至るまでの話に戻る。調査集団がどうして今のようにシャーク傭兵団と成ったか? そこには雄略大陸周辺の海が関係する。
 ここ江田舟山海も含めて雄略大陸周辺の海は銀河連合が都合の良いように改変された世界だった! それはまるでかつてのアリスティッポス大陸が銀河連合の都合が良いように改変されたのと同じように!
 その周辺の海に入った調査団はいつも通り銀河連合を倒せると踏んだ。だが、先程説明された改変は今まで通用した戦法も意気込みさえも呑み込んだ。派遣された調査員はおよそ一万名。内の二名しか帰還せずに調査は中断された。この報告を聞いた上層部は三の週も経たずに傭兵制度を採用。その時に調査団の名称も変更され、『海洋藤原捜索部』から『強行捜索部』に成る。傭兵制度を採用してからは組織は年を追う毎に拡大し、僅か七の年で現在の『シャーク傭兵団』へと変更された。
 シャーク傭兵団は名称が変更された今でも藤原マス太の子孫を追い続ける組織。彼等は雄略大陸周辺を開拓してゆく内にある事実に気付いてゆく。それこそが雄略大陸周辺に関する話だ。
 雄略大陸周辺の海は銀河連合の都合が支配された世界。それは恐らくかつてのアリスティッポス大陸とは比較に成らない程ではないかとさえ噂される程。特に人族が陸の種族である以上は仙者による力が深海まで及ばない未知なる空間。全てを開拓する日は一体いつに為るのか? 話を雄略大陸周辺の海に戻す。ここも含めて周辺の深海には生命が『燃える氷』と称する上質な炭化水素の固体が眠る。
 本来『燃える氷』と呼ばれるのにも訳がある。それは海の中で起こる地震の際に勢いよく揺れた海はやがて津波と成る。それは誰もがわかる簡単な知識だ。ところが偶然にも大きな揺れで地表深くに眠っていた炭化水素の固体が津波と共に運ばれる。これに適切すぎる温度が加わり、『燃える津波』を発生させる! かつては自然現象の一種と伝えられてきた。だがシャーク傭兵団の度重なる調査の結果、燃える津波を発生させたのは深海深くにある地表に眠る上質な炭化水素出る事が判明。ここに『燃える氷』と呼ばれるように成る。
 話は雄略大陸周辺の海に戻る。実はある傭兵小隊がこの海の秘密に触れてしまう。それは--
「『秘境』? 何で秘境の話が出てくるんだよ!」
「誰かは知らんが、目上に対する態度は改めるべきじゃぞ」
「じゃあ教えて下さい。もう二百三十の年くらい昔に姿を消した『秘境』がどうしてここらの海と関係するのです! お聞かせ下さい、父上!」
「それはのう、実はこの江田舟山海こそ……どうやら話はここまでじゃな」
 皆の者、戦闘態勢に入れ--アラカツは素早く指示を出す!
「わしは絶対に死んでなるものか! 生きてこの海の秘密を明かさねば死んでも死に切れんぞ!」
プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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