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一兆年の夜 第四十九話 燃える氷の怒り火(三)

「いいか、皆の者! 真っ向から対峙するんじゃない! 二分隊をものともしない銀河連合であることはわかるよな?」
 わかるよ、そんなことは--誰かは知らないが、上に対する態度は宜しくない模様。
「かといって消極的な姿勢は死期を早める……皆の者よ、前進するぞ!」
「「「「「「え!」」」」」」
 無口な者を除いて九名全員の反応はやや引き気味だ。
「別に『防御を捨てろ』とも伝えん。わしがやるのは……どうやらあちらは待つのが好きでない様子じゃ! わしが東側を先導するから北側は誰がやるのじゃ?」
 自分がやりましょうか--アラカツは自ら役を引き受ける!
「いいのか、七光り!」
「わかってるよ、雲丹。自分が頼りないのは一番わかる! けれども時間を急がせる以上は自分がやってやる! 無謀でも何でもかかって来るんだよ!」
 そう身なの前で伝えたアラカツは「じゃあ全員生きて帰りましょう、父上」とアラツネに目で送る!
「そうじゃのう、達者でな!」
 アラツネはいつも通り自らの運命を決めるような事を伝えて東の方向へ泳ぐ--付き者にはカブ弥、ヒト菜、ナマンダ、ヤッドンを連れて!
(相変らずお父上いつ死んでもいいことを伝えて……そんなことはいつだって有り得ない癖して!)
 北へ前進するのはアラカツ、イルカナ、イカレガ、クラ彦、雲丹と後は……だ。
「俺を忘れるとは何たる屈する恥! 俺の名前は--」
(来る! 梶木鮪族持つあの角には絶対に刺さったらいかん! 何としても通過しなくては!)
 イルカナはアラカツの反応を予想し、的確な信号を他四名に送る! 四名は--角を避けろ--という言葉を基にギリギリを定めに入る!
「さすがはイルカナ……でもここからは自分が送るから泡と同時に動け!
 いいな!」
「「「「「「おお!」」」」」
 泡による雄叫びと共に六名は梶木鮪型との距離を成人体型五十まで迫る!

 東側ではアラツネは自ら先頭に立つ--四名の士気を高める為に!
「あの距離ですと成人体型は三十しか--」
「わかっておるわい、カブ弥! じゃからこそわしはあの銀河連合を倒すのじゃ!」
 はあ、倒すって--ヤッドンは先程と異なる戦法内容を目にして一瞬足の動きを緩めてしまう。
「わしはとりたいのじゃ! 部下の仇を! なのでわしはここで命を落としても--」
「小隊長、前を!」とヒト菜は五本腕による信号をアラツネに送る……がどうやら避けるには距離が短すぎた!
「わしは死なん!」
 角はアラツネを串刺しに--

 北側では七名と梶木鮪型との距離は成人体型二十五に迫る!
「よし、送るぞ!」とアラカツは泡--避ける合図--を出す! 泡と共にアラカツら六名は角を正確に見極めてこれを回避!
(追撃が恐い! けれども無視してやるウウウ!)
 イルカナは--前だけ見ろ--という信号を四名に伝える! 六名の迷い無き前進に追撃する機会を逃した梶木鮪型はアラカツらと距離を離してゆく!
(やったぞ、自分! 後は別の穴にいる父上部隊救援……いや合流しないと!)
 そう思いながら彼は東側に通じる場所へ顔を向けようとしたが--
「何だこりゃ! 待ち伏せまで用意しやがるなんて!」
「数は……ハア、四分隊を食らった大部隊よりも二--」
「気が重くなるじゃない、クラ彦。折角命がけで通過したのにまだこんなにも!」
「前門の大部隊に後門の梶木鮪型……若よ。どこへ向かえば無事に済むだろうか?」
「合流を諦める以外に他は……それに後ろは見るな!
 人生なんて前に進む以外の道しかない! 特に自分達海洋種族は退路すら用意されてないんだよ!」
 二百以上もの銀河連合が上方向にも左右の方向にも部隊を展開。更にはいつ奇襲するかはっきりしない梶木鮪型が背ビレに突きつける!
 六名が自然ととる行き先は--
「下はまだ可能性がある! 皆の者、深部四に潜るぞ!」
 誘導されるのを承知でアラカツは短くも長い逃避行を始める……そこに待ち受ける先にあるのは灼熱の氷であるとも知らずに!
(雄略大陸まだ知られていない資源眠っていると石版伝わるが。自分そんな物を確認する暇はない! 今は自分自信を付ける為に現状生き残った部下全て守り通さねば! 自分自分自信を持ちたい、今度こそ!)

一兆年の夜 第四十九話 燃える氷の怒り火(二)

 午後零時一分五秒。
 場所は深部三。かつては銀河連合の拠点だった海底洞窟。シャーク傭兵団の拠点になってまだ九の年しか経たず、現在も大量の活性炭が設置されたまま。そんな場所に潜伏するのはアララギノ小隊。現在の数は十一名。残った分隊はタダナガラノ分隊のみ。この分隊は主に支援活動に精を出す。よって小隊に於いて欠かせない存在。彼等のお陰で残った十一名はこうして昼食を摂る。
「置いていった分隊の中に命を惜しんで生き延びる傭兵を待つのはいいけど、お父上よ。可能性はありますか?」
「無ければ困る。彼等が軽傷で済む状態で戻ってくるとは限らん。けれどもわしらは銀河連合とは異なる。無事を信じないでどうする!」
(無事を信じる? 生きている可能性が薄い状況でお父上どうして楽観的だ! 自分お父上考えが読めない。あの時だってそうだ。お父上命令がなければ四分隊無事でいられたのに!)
 どうやら若は満足なさげそうだな--齢二十五にして一の月と一日目になるエウク海月族の青年は身体を揺らしながらアラカツを見つめる。
「コラ、クラ彦! エラ会話で示さないの!」
「もう気付いてるよ、ヒト菜。というか五本腕で感情表現するな!」
 はあい--齢二十六にして二の月と十二日目になる武内海星族の女性ヒト奈は反って省みない反応を見せる。
「どうやら学ばないな、この雌。まあ雌の心はいつだってその場その場で変わると言うしな」
 あなたが伝える義理--齢二十九にして三の月と二十五日目になる物部海栗族の青年に反論するヒト菜。
(そう思えばタダナガラノ分隊個性豊かな連中が犇めきあった。分隊長タダナガラノイカレガ始めとしてヒト菜に大川クラ彦、それにナマンダ・ナマーネ、さっきの宋雲丹、長谷川カブ弥、ヤッドン・アリアスとどれもとても戦闘に適さない者達ばかり。ん?
 誰か居たような--)
「おかしいわね。私達って十一名しか居ないのに後一名思いつかないわ」
 本当だ、どうしてなの--齢二十にして四の月になったばかりのルケラオス甲蟹族の青年は齢三十一にして六の月と五日目になるラテス海鼠族の熟女から聞かれた通り残った小隊員すべてを数えた。
「まあたい亜の事は後にしようじゃないの。今は四分隊に生き残りが逃げ延びて来るのを待つしかないだろ?」
 果たして居んのかよ--齢二十四にして七の月と二十一日目になるクレイトス宿借族の青年は待ちきれん様子。
「クラ彦のように楽観し過ぎるのも良くない。かと思ってもヤッドンのように我慢強くないのも良くない。我ら分隊は心の均衡が保たれてないと支援に向かない」
 よくそんなことを伝えるか--誰かはわからないがとにかく齢三十五にして八の月と四日目になるセネカ鯛族の中年は齢三十四にして九の月と三日目になる仁徳烏賊族の中年タダナガラノイカレガに宜しくない態度をつく。
「まあいいじゃないか、タダナガラノ分隊の者達よ。これはわしの独断じゃ。いつ死んでもおかしくない老年じゃからとうとう気がおかしくなったと思えばいい訳じゃ」
「お父上! そうやっておかしいフリをするのは止めて下さい! そうやって下にして自分を持ち上げる行為はますます情けなくさせます!」
「まあまあ若。気持ちだけでも受け取ればいいのよ。何ならあたしが--」
「どうやらその暇はないっての、ヒト菜先輩」
 もうこんな所まで嗅ぎ付けるか、銀河連合--ヤッドンの視線に移るのは片方の二分隊を食らった梶木鮪型。眼光こそ銀色に光るもののその輝きはまるで相手を殺し尽くすかのようだ!
「皆の者共! ここに銀河連合が居るということは反対の方角にも同様のモノが……どうやらわしの思った通りになるようじゃ」
 は--ナマンダが振り返る先には別の二分隊を食らった梶木鮪型が反対方向に位置する同種に目で合図を送る。
(わかりやすい合図! あれ『食べ物が動いたら一斉に挟むぞ』という文字。いや……異なるか?
 簡単な合図で正しいのか? もしかすれば『~と見せかけて別方向から』……いやこの洞窟二箇所しか出入口がない。となればここは『~と見せかけて逃げる振りをする』の方か?
 他考えられるか?)
 小隊の命運はアラカツの頭脳にかかる……!

一兆年の夜 第四十九話 燃える氷の怒り火

 ICイマジナリーセンチュリー百六十年十二月百十八日午前十時八分二十三秒。

 場所は古式神武江田船山海深部三。雄略大陸の南西にある海。
 海洋種族の住居は新天地(があればの話)を除けばほぼ全ての海、川、湖に生命が
暮らし、地域社会を形成。だが、唯一雄略大陸の周囲だけは未だに開拓されない。
 理由は雄略大陸が技術集団の住処故に清浄な川、海が形成されない。よって、海洋
種族が暮らすには適さない環境になりがちだ。そんな清浄でない海である故にとある存
在にとっては極楽浄土であり、繁殖に適した環境と化す。
 ここ江田船山海にシャーク傭兵団江田船山海担当小隊『アララギノ隊』は深部三に拠
点を置く銀河連合の大部隊と遭遇したばかりだ。
(自分アララギノアラカツ父小隊長アララギノアラツネ指揮下に入る。自分どこの分隊に
も所属しない。情けないことに自分副長を務める。父曰く有能だとのこと。果たして自分
有能なのか?)
 齢二十二にして五の月と十日目になる応神魚荒族のアラカツは自分に自信の持てな
い青年。彼は齢四十五にして十の月と二日目になる応神魚荒族の老年アラツネの第三
十五子として誕生。彼は末っ子として産まれたが故にいつも兄や姉達と区別され、己の
無力感を味わう毎日。何をやっても兄姉達と比べてしまう。そんな彼も一族の掟なのか、
シャーク傭兵団に就職。だが、己は七光りである事を認める故か父アラツネの小隊に自
主転属。そして現在に至る。
「アラカツよ。お前はわしの伝える通りにすればいい。そうすれば立派な魚荒になろう」
「お父上は昔から自分を子供扱いする。けれども、この状況では従いましょう」
「わかっておるわい、主の気持ちくらいは。んで銀河連合の数が多い時どうする?」
「決まってるでしょう。真っ向勝負を避けるのみ」
「そうじゃ……各分隊のヒヨッコ共! 我等小隊の数は何名か伝えてみるが良い!」
 アラツネは泡で貝式エラ会話を五名の分隊長に伝える。全員--四十名--と返信。
「向こうは素者目で見ても百体以上……撤退じゃあ!」
 アラツネは後ろを振り向く--アララギノ小隊では『撤退』を意味する。
(撤退するのはいいが、自分副長である以上は全体を見渡さな……これは!)
 アラカツの反応にいち早く気付くのは同じく副長である齢三十八にして二十八日目に
なる武内海豚族の老年イルカナ。無口だが、伝えるべき事を素早く伝える雄。イルカナ
から電信された情報を頭に届けられたアラツネ。彼は撤退方向を包囲するように襲いか
かる銀河連合への対処法を各分隊長に伝える!
(『各個撃破』ってのは自分達数が甲足す一以上になってはじめて出来る戦法。普通の
銀河連合であればこれは有効だが……向かってくるのは二体。それも梶木鮪の形をした
銀河連合! 普通じゃない!)
 アラカツの反応にまたもや気付いたイルカナはそれをアラツネに伝えるが--
「各個撃破じゃ。例え二体の梶木鮪型が小隊を食らう為に包囲してきても……じゃ」
 右方二分隊と左方二分隊は梶木鮪型一体を倒すべく突撃する! 一方で中央分隊と
アラツネ、アラカツ、イルカナは真っ直ぐ撤退してゆく!
 アラカツは後ろを振り返る--右方を見ると圧倒的な強さを誇る梶木鮪型相手に次か
ら次と食われてゆく傭兵達を目撃!
(済まない……明石分隊、東郷分隊、山本分隊、シャチルソン分隊!)
 彼等の覚悟を見たアラカツは背ビレを向けて生き残ったタダナガラノ分隊の後に付い
て行く!

冬眠への道 夜明けは近いぜ篇

 どうもdarkvernuです。いやあスパロボの新作といい、サイボーグ総理の参拝といい、日本語能力の欠如する記者を一蹴する知事といい、胸が躍る事が連続する年末で楽しく感じます。
 試作品を始める前に『格付けの旅』が数行程更新されましたので読まれたい方はカテゴリ覧の<格付けの旅>及び<白魔法の章>をクリックして下さい。
 早速ですが、先週と同じく一回だけ紹介された試作品の一部エピソードをどうぞ。

 マーズ帝国が出来たのが22世紀初頭……。
 国民は全て『アドヴァンスドヒューマン(通称アーヒ)』で構成される。アーヒは『1999年7の月に起きた災厄』を生き延びる為に統合政府(後の地球連邦)によって作られた存在。彼等は一から作られたものはほぼ皆無で、主に裕福な家や孤児院で暮らす者など様々だ。貧しい者や中流だった者にはアーヒに成る為のコースは存在しない。彼等は政府によって改造され、名実共にアーヒと成った。
 だが、政府はアーヒを製作するとまるでゴミを捨てるようにアーヒの裕福層全てを火星に追放した。そして、彼等が行った政策は『アーヒ排除法』。虐殺こそ行われないものの、まるでアーヒを災厄の一部であるかのように地球の民全てに植え付け、弾圧。その結果が現在も続くオールドヒューマン(通称オーマ)とアーヒの対立だ。
 対立の激化と共に火星首都オリンポスで火星開拓政府の元首ゼオー・シオスが建国宣言。これにてマーズ帝国が樹立。当然連邦政府はマーズ帝国を認めようとせず、彼等への武力制裁が始まろうとしていた。
 そんな激しい対立が続く中でここアマゾネス基地……アーヒだけに入場が認められた場所。故にマーズ帝国の所有物と化した基地の作戦会議室の天井裏側にある配線がひしめき合った場所にとあるアーヒの青年が左腰に日本刀を携えながら盗聴していた。
(つまり……連邦軍第七部隊『ローズ・バルキリー』がここを奪還すべくネクター(ネクスタントヒューマンの通称)小隊『花乙女』を寄こした訳か。えっと『花乙女』の構成員は……『ローズ・バルキリー』がフェミで構成されている以上は女しかいないと言える。えっと、そうじゃない!
 俺が思うには『花乙女』の隊長は『リン・ディーズィ』。オランダ系スイス人。32歳。重火器を巧みに扱いながらも近接戦闘もやってのける奴だったな。
 えっとこの女の部下は上から読むと『チエン・シエン』。支那系オーストラリア人。28歳。ガン・カタもさることながら、真価は狙撃。ほぼ99%に近い確率で相手の心臓を射貫く。脳天だけはその確率じゃないんだ。
 三人目が『ローミン・ローディー』。ウェールズ系フランス人。最年少の26歳。僕より年下だ。そんな事はいい! マーシャルアーツの達人で武器術も部隊の足を引っ張らず、特にチェーンソーを使ったら右に出るネクターもアーヒも居ない……と。
 まあオイラにとってこの三人はどうでもいいな。けど、こいつだけは厄介だ! 四人目『文月エレナ』。日系アメリカ人。28歳。小隊に入ったのは欠員を埋める為。けれども、わしの情報ではこの女……『リマイドライブ』を所持していると聞く!)
 リマイドライブとは不運剣アズナーを基に明治元年に来日したイングランド人アルベルト・リマイがレアブラックストーンを使って作り上げた銃剣。切れ味ではアズナーに劣るものの、ほぼ型を囚われずに弾薬補給が可能でなおかつ戦車の砲弾数百発以上受けても壊れない頑丈さを誇る。
(わいの目的はリマイドライブの破壊。一見不可能そうに見えるかな? けれどもわてと『アズナー』がいればそんなものは--)
 やってのける--思わず大声に出す青年!
「侵入者だ!」「またあいつか!」「確か『ガイン・トカマク』とかいうふざけた奴だ!」「アーヒの面汚しはさっさと始末しよう!」「いや、締め上げれば済む事だろう!」天井に向けて銃弾が放たれてゆく!
 うわっと--青年は全ての銃弾を既に抜いた刀と鞘で受けきる!
「絡まったああ! こんのお、ふざけるなあああ!」
 青年は力一杯刀を振るった! すると配線どころか周囲全てを倒壊させる程の衝撃を与える!
「早く逃げろ、皆の衆!」「またガインか!」「あいつは今日をまき散らす災厄だ!」「いいから退避しろ!」会議室にいる全ての者は避難してゆく!
 青年は--何でこうなるんだあああ--と叫びながら倒壊してゆく会議室に落下し、瓦礫の下敷きになる!
 彼の名前は『ガイン・マーチンスター』。アイルランド系アメリカ人だが、現在は日本国に帰化してアイルランド系日本人『井原我引』である。年齢は27。種族はアーヒ。職業は何でも屋。マーズ帝国に籍を置かない。不運剣アズナーを肌身離さず所持し、持ち前の超怪力で向かってくるネクターやアーヒなどを次々と倒すが、加減を知らない故にいつも不運な目に遭う。今日もまたそんな不運な目に遭う。ちなみに決まった一人称は持たない。理由は単純に個性が強すぎるから。

 ここアマゾネス基地の北より数百メートル先のジャングルに潜むのは連邦軍第七部隊所属のネクター小隊『花乙女』。
 ガインがもたらした轟音は基地の防音すらも無効化し、小隊員全ての耳に届く!
(何かあったのかしら? まさか内ゲバ?)
 脇まで届く黒髪の兵はアーヒの内部対立を予測するが--
「アーヒ共が内ゲバをするとは考えにないことだ、エレナ」
「リン……そうよね。彼等はゼオー・シオスに心酔する機械だもの。それはないかもね」
「じゃあ何で爆発音が響いたの?」
「ローミン。そもそもどうして轟音がこんな所まで響くのかが気になるわ」
「チエンの言う通りよ。基地内部では戦車の砲弾であっても外には届かないわ。防弾機能を付けるのは安全保障上、必要な措置だから。音一つで戦局はいくらだって変わるもの」
「じゃあどうして防音が効かなかったの、リン姉様?」
「理解しがたい何かが居たとでも言って良いかしら、ローミン」
「隊長もお困りのようだね」
「いえ……案外正解じゃないの、リン」
 エレナと呼ばれる黒髪の兵は三人の目を基地の方に向ける。そこで更なる轟音が響く! 基地中央の建物の上半分が空高く飛ばされ、中から刀を振り上げる青年が頭に血を出しながら立つ!
「緑色の肌は間違いなくアーヒ。しかも剣……かな? まさかあれで建物を吹っ飛ばしたの?」
「チエン……常識で考えたらこんがらがると思うよ」
「声を出すな、二人共……気付かれたわ、あの男に!」
 居たぞ、ターゲット--青年は光に近い速度でエレナに向かって飛ぶ!
「狙いは私なの!」「エレナ!」「さすがエレナ!」「素早くリマイでガードするなんて!」青年から振り下ろされた刃をエレナは所持した銃剣を両手で構えながら寸での所で止める!
(ウグ! 何て馬鹿力なの! リマイじゃなかったら間違いなく真っ二つだったわ!)
「やはりその銃剣はリマイドライブだな!」
「いきなり襲ってくるなんて失礼な人ね! 名前は何て言うの!」
「コードネーム『ガイン・トカマク』だ! 本名『ガイン・マーチンスター』で日本に籍を置いた後からは『井原我引』と呼ばれる!」
「全然コードネームになってないわよ! 自分から本名を出してどうするの!」
「こまかい事は良いからさっさとそいつをわいに寄こせ!」
 嫌よ--エレナは鳩尾に向かって右膝蹴りを放つが、刹那のタイミングでガインと呼ばれるアーヒはリマイドライブを蹴ってエレナの背後にある上から二番目くらい大きい木の右端に飛び移った!
「あのタイミングで避けるなんて!」
「さすがはアーヒと呼ばれる人種ね。あたいらネクターとは身体構造が違うわ!」
「いや……違うぞ、ローミン! あんなアーヒは知らないぞ!」
「アーヒ? まあそうだけどそれがどうしたって言うんだ?」
「えっと、あなたの身体能力……は別にいいわね。とにかく私の自己紹介を始めないと。
 私は文月エレナ。エレナと呼んで。御覧の通りネクターと--」
「ネクター? そうなのか?」
 ガインはエレナと対峙してすぐに身体能力がネクターのそれとは異なる事を察知!
(まさか気付いているの? この人は--)
「まあどのみち僕の目的はリマイドライブの破壊だ。よって俺に寄こせ、エレナあ!」
「一人称……そんなのはいいわ! これは私が『花乙女』を入隊出来た記念品よ!
 みすみす渡さないわよ!」
「じゃあブッ倒す!」
 今二人の男女は熾烈なファーストコンタクトを果たした……!


 と言う訳で試作品『アズナーの戦士 神計画(ゴッドプロジェクト)』の一部エピソードをお送りしました。これは前に紹介した試作品と世界設定は同じです。只違うのは前に紹介したのは『アズナーの戦士ガイン』の序章部分であります。単刀直入に言っておきますが、先に紹介した方では主人公はガイン。けれどもここでは主人公はエレナとガインです。何故なら副題が示すようにエレナを中心に物語は進行します。一方でガインはメアリー・スーポジションで度々活躍の場を奪いに来ます。加減も知らない力でね(笑)。ちなみに一部エピソードではエレナに関する秘密がちらほら出しましたが、ガインに関する秘密は……まあ厨設定になるので例え世に出て物語の最後まで行っても明らかになりません(笑)。彼は存在そのものが理不尽の塊ですので。
 ついでにエレナとガインはどっちが強いかはネタバレになるので明らかにしませんが、両方のモデルは居るかと聞かれたら居ますよ。まあかのアンチスパロボのあの方が作りし三作目のアレとか、いつになったら6が出るんだよと日々叫ぶかの荒野に口笛が響き渡るRPGものの一作目の三枚目とか(辛)。とにかく自分にはオリジナリティはありません。正直ものに出来るまでこうして書けるかどうかすら怪しいものですよ(苦)。
 んな訳で試作品の解説を終えたいと思います。

 第四十八話の解説に行きます。今話は大陸移動に関するお話ですので海洋種族が中心になってます。
 主人公のモデルはかのジャニ一(?)のイケメンに祭り上げられている奴のライバルでやたらとお喋りな落語家です。バラエティによく出まくるせいでそう見えないかもしれないが、一応あの名前は落語家の名称です。なので落語家という肩書きに間違いは御座いません。
 えっと話を戻します。そんな良く喋る魚は正直お荷物でありながらも大陸移動論に者一倍意欲があってそれがラストまで通されてます。残念なのは主人公が学者肌のせいで各パートの初めが怠く、話が中々進まなくて痺れを起こした事は謝っておきます。ただし、超展開については謝る気は御座いません。基本、力業で通すのが自分のやり口ですので(苦)。けれども、いくら超展開でも十七話でやらかした事だけは二度と起こさないつもりです。あれは某機械大戦で言うなら隠しコマンドもなしにネオ・グランゾンやらポゼッションサイバスターを使う以上にやってはいけない行為ですので!
 まあ前向きに語るなら今話では海洋種族に関する設定を少し掘り下げられて良かった思いです。基本彼等を出すのは難しく、言葉の壁は想像以上ですので。そんな海洋種族を今後も上手く描けたらいいなと思う次第。
 短いですが、これにて第四十八話の解説を終えます。

 さあ明日は早いですので無茶を通してみますか、必要最低限のね。
 と言う訳で今後の……いや、第五十二話までの予定をどうぞ!

 十二月
 三十日~一月四日   第四十九話 燃える氷の怒火        作成日間
 一月
 六日~十一日      第五十話  エーテルは否定される     作成日間
 十三日~十八日     第五十一話 光不変の先へと 前篇    作成日間
 二十日~二十五日    第五十二話 光不変の先へと 後篇    作成日間

 今思い付いたが、第五十二話は二十二日に終わらす予定。理由は単純に別の方面に向けた準備の為です。ハイ、ここしっかり覚えといてね! 自分が嘘つきであるかどうかは線が示す言葉を守っているかどうかにかかりますので。まあ政治屋どもみたいに破る時は破りますので気を付けてください。
 では今日はここまで。はあ、早く二ページ目を終わらせないと……

一兆年の夜 第四十八話 大陸移動の予兆(五)

 暗闇の世界では影とは光を表す。それは闇だけの中で唯一光を放つ影。命無き魂が残す光の影。命無きモノ達はそうとは知らずに光を放ってしまう。それを見逃すサバ蔵ではなかった!
「では逃げるぞ、付いてこい!」
 ままてくれ--サン幕は慌てながらもサバ蔵にひっつきながら跡を追う!
 その逃走は正に命の駆け引きに等しい! 次々と死んだ角度を狙うように仕掛ける銀河連合にサバ蔵は耳と肌で波の音を嗅ぎ付ける事で躱すと同時に軽く噛み付ける事で銀河連合に損傷を与えながら逃げる!
(何だかよくわからっちゅうが、班長は銀河連合の気配がわかるっちゃ! しかも何だか噛み付いてもいるっちぃ。知らないけっちゃあ、血の波が僅かに見えるからそうだろうっちゅう事! 噛み付きなんて良くやるっちょ、班長っちぃ! 多分勝ちたい性分がこんな状況でも現われている証だっちゃあ。またまた班長も強者の誇りが強いんだからっちぃ。俺は絶対そんなこと出来ないっちゃあ、噛みつく前にか見つかれ返されるどころじゃないっちゅうねん! 下手すれば食われてしまうんだろうなっちゃあ。恐い恐いっちゅうねん。俺は学者筋でよか--)
 サン幕は気付く--あまりに思考しすぎて付いて行く対象が異なる事に!
(ええとっちぇ、どちら様でしょうかなっちぃ? 銀河連合様っちゃあ? 暗いけど、触ってみるとわかる気味の良くない感触っちゅうもの。他には……四面楚歌っちゃあ? ところで四面はわかるけどっちぃ、楚歌は何っちぃ? 多分神々の名前でしょうなあ……って腰砕けた事はいいから早く--)
 全く手間をかけさせる魚だ--通じない事を承知でエラ会話しながらサン幕を食らおうとする鯛型を噛みつく!
「班長! 血が--」
「見える訳無いが、伝えたい事はある程度わかる! けど……俺もこれまでか」
 右眼をやられてこの場に三体いる魚種の銀河連合に食らいつかれようとしていた……が都合のいい事が起こる!
 秋山班の頭脳係ただいま参上--右エラに傷を受けながらサバ蔵を救助する秋山班の副長蘇我イワ男だ!
「副長が--」
 エラ会話はここでは意味がないぞ--救援に来たイワ男と共に二名を助ける為に銀河連合河豚型の毒無き部分を噛むマッグネス!
「爺さんに……サケ眼まで!」
「俺が来ない訳にもいかないでしょ、先輩! さっさと蹴散らしてさっさとこんな寒い所から逃げましょう!」
「みんなして腰砕けた奴等だ。最早何を伝えているのかさえわからん。ただわかるのは……俺達全員むさ苦しくくっついてろ、いいな!」
「「「「おう!」」」」
 四名は一斉に目で返答した! そして、五名とも狭苦しくくっつく!
「大丈夫かの、班長や?」
「右眼しかやられてはいない」
「十分大丈夫じゃない怪我だぞ、班長! それでどうする?」
「頭脳の癖して俺に頼むな」
「銀河連合の数が増えている気がする。このままじゃあ俺達は--」
「あわわー! あべればがげだぐじゃべぢら--」
「先輩! ちゃんと目の開閉をして下さい!」
「無理じゃな、サケ眼の若造。サン幕の若造は土壇場で何とか出来る生命じゃない事くらい--」
「長文ばかり伝えてないで……時間切れ」
「僕はこんな所で死ぬ?」
 五名は己の運命を受け入れ始めた。刻一刻と数十体迫る銀河連合の牙に触れようとしていた。
(死ぬ前にアルパカルトの『我思う故に我あり』を研究したかっちゃあ。それか『自然数の最終定理』やら『カーモネー予想』やら『バルケミン方程式』やら『フク兵衛予想』やら『世界観問題』やら『ヒトデナシ龍脈図』やら……えっちゅ?
 『ヒトデナシ龍脈図』っちぃ? 思い出したら死にたくないイイイイイ--)
 牙が触れるよりも先に……燃える氷は周囲にいる銀河連合に襲いかかる!
(って何っちゃあああ! 突然灯りが……うわっちいい!)
 今度は五名に向かって氷の炎が襲いかかる!
「ち……これで少しはわかる! 皆の者! 火に気を付けながら逃げるぞ、付いてこい!」
「僕は右エラに傷を受けている以上は誰かに支えて貰いたい……マッグネス殿!」
「わしで不十分かの?」
 十分だ--満面の笑みを浮かべるイワ男。
「先輩、火と遊んでいる場合じゃないでしょ!」
「だけど、俺に降りかかっていて中々消えない! 海の中なのに--」
「早くして下さい! 銀河連合にまた包囲されたらもう機会はないんだから!」
 わかったって--サン幕は火傷を覆いながらもサケ眼の後を付いて行く!
「班長、奴らが追っかけてくる!」
「想定内だ! 気合いで逃げ切るんだ、いいな!」
「わしはイワ男の若造を抱えている以上は中々どうしてか--」
「まだマシな方ですよ、お爺さん! 俺なんか先輩を先導させなくてはならな--」
 突然五名は強烈な揺れで意識を黒い場所へ飛ばされた!









 未明。
 サン幕の意識は日の光によって取り戻してゆく。
(ンァ……ぁぁ、ぃぃ、ぇ、ぉ、こはっちゃ?
 眩しい……えっと何だっちゃあ? そうかっちゅうねん! 俺達は囲まれて死にそうだったのを突然『燃える氷』によって……そう考えたらみんなはどこっちゃあ!)
 全身に受ける軽度の火傷に苦しみながらもサン幕は周りを見渡す。そこには彼と同じく全身に軽度の火傷を受けながらも日の光で起き上がる秋山班の四名が居た。
「生きてるんだ、俺達!」
「そうじゃの。また老いぼれは生き延びてしまうとはのう」
「あつい……全く何だったんだ、あの揺れは!」
「僕の考えでは多分、『燃える氷』が溢れたのは地震の前兆」
「前兆? 詳しく伝えてくれ、イワ男」
「はい。サン幕の話を基に僕なりの解釈をするけど、恐らくは棒同士が擦り合う反動で大地にくっついていた炭化水素の固体は飛散した。本来なら深部六にくるまでに海に溶け込むはずだったが、どうして僕達を襲ったのか? それは深部六が最も深い所だったのが原因だろう。逃げてゆく僕らと銀河連合を捉えるように強烈な揺れが発生し、現在の深部零付近まで持ち上げられた……だろうな」
 深部零--サン幕のみならず、他の者も空を見上げるとそこにはお日様の光が眩しく照らす!
「じゃあどうして我等はここまで持ち上げられた?」
「そこはサン幕に任せる」
「やっと出番が回りましたか! 出番は大事ですので--」
「いいからさっさと説明しろ、サン幕!」
 サン幕によると星の活動で生じる棒同士の擦り合い。そこから発生する力こそが地震と呼ばれるもの。地震もまた距離が近ければ近い程、対象は放たれる力に大きく左右される。結果として秋山班と初めとした深部六のもの達は強烈な反動で深部零付近まで吹っ飛ばされる形となった。
「……成る程。ただ、安心出来ません。俺達が生きているという事は同様にあいつらも生きている証拠じゃないですか! この先どうするというのです!」
「心配無用じゃ、サケ眼の若造。この場所はどこじゃ?」
「どこって……あ! ここは北物部海!」
「そしてここは海洋稲目市が近くに……あったね」
「じゃあ我々は稲目市に針路を向けて出発するぞ!」
 五名は海洋稲目市へ向けて鰭を縦横無尽に動かしてゆく!
(北アリスティッポス海には『ヒトデナシ龍脈図』に記された血管があるっちゃあ。二度の揺れは間違いなく血液が流れっちぇ、大地が躍動しっちゅうた! そしてっちぇ、近場のものを揺れ動かすっちゅう訳だ!
 あんな力が出たら間違いなく大地が少しずつずれてゆく……『大陸移動論』の示す通りにっちぃ! ひょっとすると大陸は俺達の人生を数千回もかけて変動してるかもしれっちゃあ! いやっちゃあ、可能性は……いつになればこの理論は証明されるのかっちゅうねん。悠久すぎて誰も彼もわからんと違うかなっちゃあ)
 星が我々と同様に成長するのならそれは我々とは違う時間軸で形を変えてゆくだろうか? そもそも現在の地図が遠い時代の地図と一致するのか? もはや知らない内に改竄された世界地図を精査する程の時をかける事は超越者にでも成らなければ実現出来ないだろう……。




 ICイマジナリーセンチュリー百五十八年十二月九十八日午前六時零分零秒。

 第四十八話 大陸移動の予兆 完

 第四十九話 燃える氷の怒り火 に続く……

一兆年の夜 第四十八話 大陸移動の予兆(四)

 青く光る炭化水素はバラバラに散らばる。散らばりながらも赤い光を出しながら上昇。ほぼ九割近くが深部四に到達する前に海水に溶け込み、原形を留める事はない。『燃える氷』は真正細菌族による労働の結晶。生命の循環によってもたらされた上質な炭化水素は現在も海の底に眠り続ける。
 明石サン幕は現時点で正しい情報を基にそう思考しながらも、『燃える氷』の美しさに者目惚れる。
(……っちゅうか! 俺は頭を冷やすべきっちゃうか? そもそもどうして深部五の環境がこんなにも暖かいっちぇ? 暖かいっちゅう事は、えらを通して送られる空気は薄い証拠っちゃうか?
 だとしたらっちゃあ、上がるしかないっちゃああ!)
 サン幕は急いで深部四に上ろうとしたが、境目に触れると想像を絶する寒さで思わず下がった!
(ブルブル……やっぱやめようっちゃ! 『北風とお日様』という空想話は本当に学べるっちぃ。寒い空気は服を余計に脱がせないっちゅうが、暖かい日差しは熱くて服を離すっちゅうお話。実際の所っちゅうのは、俺が解釈するとこうだっちゃ。
 生命はいつだってお母ちゃんの温もりを感じたいからそこから抜け出せないっちゃあ。
 俺にしては良い事を思い付いたと……あれっちゃ? どうして銀河連合が来てるのかなっち?)
 サン幕はもう一つの北風に震える--さっきまで秋山班を苦戦させた銀河連合の内、三割がサン幕を包囲する。
「こうなったらエラ会話で助けを求めよう! 待ってくれ、銀河連合! ここで戦ったら炭化水素が反応して燃えかすになる! そうなったら折角俺を食っても得はしないぞ。本当だからさっさと退いてくれないかな……あれ? 近付いてるのかな? エラ会話だよ。海ではいくら声を出しても聞こえない所で効率よく相手に伝える事が出来るエラ会話。三国共通の通信歯段であるエラ会話が……いやあ! 俺を食っても美味しくないよ!」
 烏賊型が捕食する為に八本足で絡めようとする……がそこへ魚影がサン幕を更に深く下ろしてゆく!
「わわ……あばべばでえれえけこ--」
「無理してエラ会話するな、サン幕! 部下を助けるのは上司の役目だろ! 特に班長たる私は使命を放り出すなんて出来るか!」
 サバ蔵とサン幕は深部六へと下りてゆく……そこはもはや真正細菌族でさえ棲みつかない暗き世界。

 午後十一時三十分三十秒。
 場所は北アリスティッポス海深部六。そこは最早生命すら棲んでいるかさえわからない。
「ええ、と。班長? 伝わってるかな、班長?」
 海洋種族共通の通信歯段も目で捉える事が出来ないと何の役にも立たない。
(エラ会話が通じないっちゃあ。つーかここって深部六だよなっちぃ? つーか上と下がわから……ぎりぎりわかるかっちゃ! 浮力が上方向に働く以上は……つーかここに来て水圧を気にしてきたっちぃ。俺達は深く--)
 突然彼の身体に何かがぶつかる。彼は眼を向けるとそこには……秋山サバ蔵と思わしき眼が見えるのか?
 エラ会話が出来ないのなら、眼で通信するんだ--サバ蔵(?)は眼でエラ会話を実行!
 あわわ、はがべじゃ--瞬きもままならないサン幕。
「この方法は本来、貝族が得意とする開閉式会話だ。開け閉めを利用した会話はエラ会話に比べて複雑さもなければ、多様性も薄い。けれども効率性は十分。
 本来はすぐに慣れるべきだが、いつ死ぬかわからない環境である以上はじっくり慣れるといい」
 れうそれささばっち--眼によるエラ会話になれないサン幕はおよそ十の分もの間苦戦する。
「あかさたなはまやらわ……よし! わかってきた!」
「慣れてきたな……じゃあ伝えるぞ! 私から離れるな! 出来る限りくっつきながら逃走を図れ、いいな?」
「はい。えっと--」
「長文だったな。ここは私に離れるな! まず一つ!」
「『私に離れるな』……でいいんだね。次は?」
出来る限りくっつく。わかったか?」
「『出来る限りくっつく』……だな。最後は?」
逃走を図れ。もう一度伝えるか?」
「結構だよ。『逃走を図れ』って伝えてるんだろ? よくわかりました、班長!
 長文に直すと『私に離れるな! 出来る限りくっつきながら逃走を図れ!』だろ!」
「短期間だが、さすがは学者だ! すぐに慣れるならもう十分だろ! とにかく見えない世界では耳が重要となる! 耳で俺が居る位置を探れ! そうすればくっつきながら行動出来る!」
「安心出来ないですよ、班長! 銀河連合に食われたらどうする--」
 そんな可能性が私にあるとでも--強さに絶対の自信があるからこそ出る言葉。
(だよなっちゃ! 班長の強さは生意気なサケ眼でさえ認めるんだからっちゃあ)
「ゆくぞ、サン幕!」
「は、はい! どこまでに付いて行き--」
「と伝えている所で既に我等は囲まれてしまったな!」
 またですか--目でも耳でも捉えられないサン幕には銀河連合が居る事さえわからない。
 けれども生粋の傭兵秋山サバ蔵の言葉なら直感で信じられる。現在二名は生存の可能性すら薄い暗闇の世界で空想話における奇跡を信じようとしていた。
(んな奇跡をどうして信じようっちゃあ! 俺はもう全てを壊してでも元の明るい世界を拝みたい気分っちぃのに!)
 この時、この場所にいる全てのものは大地の声を捉えていなかった……第二波が刻一刻と迫りつつある事を!

一兆年の夜 第四十八話 大陸移動の予兆(三)

 銀河連合が全生命に休息を与えるはずがない。そんな事は常識中の常識。けれども、全生命は性質故に休息を望む。同じように痛みを分かち合えると思い込む。これ生命と銀河連合が分かり合えない小さくて大きな理由。
 ならばこそ銀河連合は話をさせる時間など与えるのか? それは『世界観補正』と呼ばれる都合の良いものが働くせいなのか? そもそも『世界観補正』は神々が作りしモノではないのか? 遠すぎる過去に於いてはまだ解明されない謎として残る……。
 そんな風に明石サン幕は神々のように思考する。しかし、生命が神々のように考えるのは無理な話。生命の脳は矛と盾が互いにぶつかり合うように一致しない箇所が多い。数学で説明するなら「私は真実を話さない」と言った生命の矛と盾を証明するのが困難なように。
(こんがらがるなあっちゃ! かつてのアリスティッポス奪還に関する歴史書では氷が襲ってきっちゅ、氷上とはいえアザラシがチーターよりも速く動いたりするという異常現象が発生したっちゃ。あの現象と同じく我々を保護する『世界観補正』は一体どうゆう原理で銀河連合の時間を遅らせるっちゃ?)
 サン幕が十の分もの思考時間に秋山班と銀河連合の比は一対三。圧倒的に利がない。サバ蔵が所持する五本の海中式雄略包丁は刃毀れで使い物にならない。イワ男が所持する袋は五つだが、既に中身は空っぽ。サケ眼が所持する三本の銛は全て丸まって刺しにくい。残ったマッグネスは徒歯空牙。だが年のせいもあって上歯は残り三本、下歯は二本の状態。
「僕の頭脳を使わなくてもこの状況は既に戦えないと宣言してるだろ!」
「けれども、俺達が撤退出来る空間が少ない。二択なんぞ傭兵はやってはならんぞ!」
「一方は銀河連合が狙いを付ける位置。二分の一程それより少ない数値よりも難しいものはない!」
「若いのう、サケ眼は。けれどもその答えは少し正しいぞ」
「また燃える氷が助けてくれたらこれほど俺達が助かるものはないと思いますよ。ただし、その時まで俺達が無事であればの--」
「神々に頼るのは本当に死ぬ時以外にしろ!」
「その通りです、班長! サン幕よ、それは『気合いで何とかしろ』と同じ意味だ!」
「わしはいつでも気合いで--」
「何とか出来ません! そもそもそれは空想話で通用する話で--」
「などとお喋りしている内に奴等が一斉攻撃を仕掛けたぞ! 全員俺に拍子を合わせろおおおおお!」
「班長! どどど、やててややるるなおえおうえ--」
「ちゃんとエラ会話して下さい! 混乱しすぎて伝える内容が訳わかりません、先輩!」
「今が班長の拍子だ、皆!」
「んじゃあバラけるぞい!」
 五名は全ての持ち物を放り投げて銀河連合の一斉攻撃を躱してゆく!
(ギリギリっちゅうねん! けどっちゃ、生きてるだけマシだなっちゃ!)
 サン幕は他四名同様銀河連合から逃れる為に異なる方向を泳いでゆく--更に深い深部四の光が僅かに届く所まで……。

 午後十時三十分三十秒。
 場所は北アリスティッポス海深部四。月の光が届かない暗闇の海。より凍える水温。だが、真下には星々のように輝く何かが見える。真正細菌族だ。彼等は極冠の地に適応された真正細菌族。
 真下に済む真正細菌族達のお陰で明石サン幕は可能な限り壁にぶつからずに泳げる。
(はぐれたのは仕方ないっちゃ。ああするしか……サビイっちぃい! がくがくっちゅ、とっとと深部三に戻らないといけないっちゃ! でっちゅ、でも上が暗くてわからないっちゅお! かろうじて下は真正細菌族が生命の炎を放つからいいけどっち、上は銀河連合が潜んでそうで泳げんっちゅ!
 下に向かう以外に他にはないっちゃ! まさか『竜宮』へと至る道を発見出来るかもっちゃ? ちなみに『竜宮』とはかつてのセネカ集落に伝わりし話っちゅうねん。確かIC一から十の年くらいに銀河連合に食われた……と伝えられたっちゃ? 昔過ぎてもうわからんっちゅうの。
 はあっちゅ、海洋種族は昔から後継者争いをしたがるっちぇ。俺はそんな争いから逃げるように傭兵団に入って自分のしたい事に挑戦してるけどっちゃ。跡継ぎ優先主義は俺には向かんっちゅうんや。いくら海が厳しい環境とはいえっちゃ。俺は俺の進むべき道で……サブイっち!
 ごのばばじゃあ……あれはっちゃ?)
 彼は体調の事を気にしない程に下の方に光る不思議な何かを探りに深く沈んでゆく……。

 午後十一時零分零秒。
「これが燃える氷なのか!」
 一名だけの世界でエラを動かすサン幕--深部五という周りの光に助けられる世界で上質な炭化水素を見た!

一兆年の夜 第四十八話 大陸移動の予兆(二)

 明石サン幕--空の張家、陸のアルパレア家なら海ではお喋りな家系として有名な明石家に産まれた。明石サン隆泊の第七子として。
 彼は現在シャーク傭兵団に就職。理由は自分がやりたい研究が出来る環境だけではない。けれども、それ以外に話す事は今すべきではない。やりたい研究というのは運命学の創始者マルメロ・バルケミンが提唱した大陸移動論。サン幕はその為に傭兵団に入り、前線を泳ぎ抜く。だが、戦闘能力は低い。なので戦闘に入ると見守る及び逃げる以外の行動は命令無しには行えない。正にお荷物と変わらない。
 そんな役に立つのかわからない彼でもこの日起こった地震と火を噴く津波に関しては誰よりも異なる反応を示す!
「あの地震は……間違いなく大地が移動している証拠だ! 恐らく大地を支える棒と棒同士が擦り寄って--」
「は? 頭の良い僕でも解るように……ここは熱すぎる。別の場所に移動しましょう。宜しいかな、班長?」
「自分で『頭良い』とか言うな、イワ男。だが、場所を変えるのは正しい。よって、撤退に変更無し!」
「そうじゃのう、段々熱くなってきた! わしはいいが、他の皆を死なせる訳にもいくまい!」
「という事でサン幕先輩は水温が比較的マシな場所に行きましょう! 急激な温度変化はさすがにきついからね!」
 四名に遅れるようにサン幕は--って聞いてる、みんな--と撤退命令に一拍子ずれながらもその場を後にした!

 午後九時零分零秒。
 北アリスティッポス海深部三。無数にある廃洞窟で二番目に小さな場所。水温は先程戦闘した場所に比べて僅かに低い気温。だが、彼等秋山班にとっては燃える津波で暖められすぎた場所に比べれば住みやすい環境。
「寒い。長話はするなや、サン幕の若造」
「え? 何の話?」
「御免。僕がいきなり場所を変えるように提案したせいで」
「謝るな、イワ男。それにあれを聞いて命令したのは私だ。よって謝罪はするな。それに爺さんの伝えるようにさっさと説明しろ、サン幕!」
「だから何を伝えればいいかわかりかねますよ、班長と蘇我副長。大体何の話をするかを先に伝えないと--」
「先輩。寒いからさっき俺達に伝えたかった『大陸移動論』とさっきの地震がどう繋がるのかをもう一度説明して下さい!」
 ああ、その事か--やっと理解したサン幕は右に一回転する。
「いいでしょう、この天才が伝えましょう! 明石サン幕はお喋り好きな明石家の第七子に産まれたからには--」
「前置きはいい! さっさと本題に入れ、サン幕!」
「そう焦らずに、班長。えっと本題とはどんな話にも必ずありまして--」
「本題の説明じゃなくて君が伝えようとした事を説明してくれない?」
「御免、副長。えっとどこから話そうか迷うんだね。話にも繋ぎはありまして--」
「寒いからさっさとしてよ、先輩。もう始めでも終わりの方でもいいから!」
「それじゃあどこにすればいいか余計に迷わない? 最初から? それともあの部分? それか--」
「「「いいから始めろ、腰砕け!」」」
 サン幕があまりにも余計な事を伝えようとする為、しばらく十五の分は彼等の掛け合いに終始する。そして、ようやく本題に入る……。
 サン幕の話は聞き流していい部分があまりにも多く、台詞に表すのは骨が折れる。よって簡略して説明を始める。
 彼によると地震の発生要因は主に地の奥深くに関係する。奥深くは直接見る事は叶わないが、巨大な棒が重ね合わせにある。棒同士が動けば反動により必ず地震が発生する。そして、地震の発生は時間差に左右されやすく、未だにどの拍子で来るのかを予測出来ない。けれども、地震の前兆だけはほんの短い時間に予測は可能。その予兆は人族を中心とした一部の種族を除けば、耳では判別しにくい音が発生。音の後にほんの僅かな揺れが発生。この揺れ自体は大きな被害には成り得ない。だが、この揺れの後が問題である。それこそが強力な揺れ--地震--が直後に来る。その為、先程説明した判別しにくい音と僅かな揺れこそが地震の前兆。音を聞き取る事が出来れば地震への対処が容易になる。けれども僅かな揺れで感じ取るなら事既に遅い。地震とは全生命が対処出来るような自然現象ではない。
「……成る程。んで深部零まで上った燃える津波はどう説明する?」
「班長……正確には津波は上りません。奥深くにある大地の上下運動が海に作用したり、或は海面の膨張で津波は発生します。しかも燃える津波はある物質が深部零まで上昇する事で発生します。あの物質は--」
「まさか『燃える氷』の事を指すのか!」
「知ってるのかあ、イワ男の若造よ」
「サン幕が説明すると長くなるので僕が解説に入ります。あの物質は海の奥深くに眠る氷。未だに伝承でしか説明されない物質故に鮟鱇族といった深海種族ですら取り出す事は難しい物質。何故難しいかは、水に触れるとすぐに散らばってしまい、使い物にならなくなるからだよ」
「へえ、『燃える氷』かあ。でも、それがどう地震と関係するの?」
「恐らくは棒同士の擦り合いで巨大な熱が発生したのが原因じゃろうか?」
「正解に近いけど、外れだよ。答えは上下運動の衝撃で『燃える氷』は発火したんだ、急激にね!」
「急激に? 偶然にも擦り合う場所に燃える氷が眠っていたと伝えたいのか、サン幕?」
「そうそう。それにしても偶然は恐い恐い。偶然程予想だにしないものはない。必然ならば予想出来るのに偶然なんて誰が予想出来るか--」
「先輩のお喋りは必然である事はわかりました。
 じゃあ地震と大陸移動はどう繋がるかを知りたいけど」
「大陸移動とどう繋がるかは--」
「お喋りはそこで終了だ! どうやらこんな場所にも銀河連合は潜伏してるぞ、気を引き締めろ!」
 え--サン幕以外は表情を固め、武器を構えた!
(ああ……どうするんだっちゃあ、俺の解説っちゅうのは!)

一兆年の夜 第四十八話 大陸移動の予兆

 ICイマジナリーセンチュリー百五十八年十二月九十五日午前八時零分零秒。

 場所は新天神武北アリスティッポス海。
 海は陸と空の種族にはまだまだ未知数かつ未開拓の世界……。
 未だに銀河連合の勢力は弱まる事を知らず、海の生命は陸以上に死者を出し続ける。
それでも海の種族達は懸命に泳ぎ、戦い、自らの地及び家族を守り続ける。そんな彼等
の中で一際戦闘に特化し、並み居る銀河連合を倒し続ける傭兵集団が存在した。
 彼等は『シャーク傭兵団』。彼等の前身は『海洋藤原一族捜索部』と呼ばれ、発起者は
武内鮫族のシャーキング。後にセネカ秋刀魚族の明石サン太郎ら調査団が加わり、規模
が拡大。本来は調査を中心とした海洋集団だったのが、調査の妨げになる銀河連合を
倒してゆく内に何時の間にか武闘派集団に様変わり。代々の部長は戦闘に特化した鮫
族。特殊な世襲制度故に捜索部は何でも屋に変貌し、いつしか『シャーク傭兵団』に様変
わりした。
 話は現在の北アリスティッポス海に遷る。この場所でなおかつ深部二では北アリスティッ
ポス海担当の班と未だに猛威を振るうアリスティッポスの銀河連合が死闘を繰り広げる。
現在で二の時が経つ。そんな激しい戦いを遠目で眺める傍観者が一名。齢十九にして
五の月と二十八日目になるセネカ秋刀魚族の少年明石サン幕。彼はある理論に興味津
々。故に戦おうとせず、眺めるばかりだ。
(倒しても倒してもきりが無いっちゅうねん。もう二の時経つっちゃう? 戦おうかなっち?
いやいやいやいやっちゃ。俺が行くと皆の妨げになっちうて! つーかっちゃ、学者肌の
俺が行っても追い出されるのが責の山っちゃ! 出来れば特攻……死ぬのは恐いっちゅ
うの! ここは--)
「オイ、サン幕! 泡ばっかり吹きやがって! とっとと退くぞ!」
 彼に声をかけるのは班長秋山サバ蔵。齢三十二にして十四日目になるルケラオス鯖
族で海中包丁捌きが優れた中年。彼に付き添うのは現在三名。中央に配置するのが
齢二十三にして十一の月と一日目になる蘇我鰯族の青年蘇我イワ男。副班長を務め、
班の頭脳を担う。左方には齢十八にして二の月と二十二日目になる物部鮭族の物部サ
ケ眼。中性的な顔付きをしており、あらゆる意味で皆から羨ましがられる少年。右方には
齢四十五にして八の月と三日目になるエピクロ黒鮪族の老年マッグネス・ブラーネス。
班では最年長で最も大きい体格の持ち主。
 班は戦闘前まで七名が居た。だが、現在二名食われて残り五名。撤退を余儀なくされ
た。
「撤退は僕と班長、それにマッグネス殿の意見が一致して決めた事。納得のゆかないの
はサケ眼。彼によると--」
「二名も死んだんだぞ! 彼等の念無き声を無視して逃げるなんてどうかしてるだろ!
 けれども、多数決には……従う!」
「だそうじゃ。案外利口じゃの、若いの
「我等四名も『若いの』だよ。とにかく利が訪れるまで撤退するぞ、皆!」
 だが、十体以上もの銀河連合はサバ蔵達を逃さない--アザラシ型及び鯱型は秋山
班(北アリスティッポス海担当班)に勝るとも劣らない速度で追跡!
「班長! あわわわ、早過ぎるよ! このままじゃあ俺達は逃げるよりも先に食われてし
まいます! 出来れば身体を洗ってから--」
「いくらエラ会話でも少しはこちらに伝えさせろ、サン幕!」
「班長にサン幕先輩! もう尻尾に触れようと--」
「間に合わない! 神頼みで--」
「頭脳なんじゃからそこは--」
 突然海を揺るがす轟音が響き渡る! 音に反応するように深部十以上から陽炎が銀
河連合に向かって触手を伸す!
(わわわわわっちゃあ! あれは炎っちゅうもん! 触ると火傷を……って何で炎が海の
中から出てるっちゅうの!)
 炎はその場にいる銀河連合の部隊を呑み込み、深部零を超えて津波と共煌めきを見
せる!
 その光景を目撃した秋山班の誰もが自然の不可思議現象に唖然とするばかり--只
一名のお喋りな者を除いて!

冬眠への道 悪人コエエ篇

 どうも王将の社長がプロの殺し屋らしき奴に殺されたニュースを見てガクガクぶるぶるしてますdarkverunuというチキン野郎です。
 試作品始める前に『格付けの旅』が数行更新されましたので読まれたい方はカテゴリ覧<格付けの旅>もしくは<白魔法の章>をクリックして下さい。
 さあ題名に併せてかのパクリ作品の一部エピソードをどうぞ。

 少年ジョーは引っ込み思案になってゆく。それまでは比較的穏やかであった生活にマイヤーが入る事で辛い日々に変化。食事の作法は見せるような美しさ。それに比べて彼は堅くぎこちない。勉強の方では僅かな時間にジョー以上の英会話を披露。運動では学年トップ。それに比べてジョーはクラストップ。ジョーとマイヤーは違うクラス同士。
 あらゆる分野でジョーはマイヤーとの差を開いてゆくばかり。友人は全て彼に奪われ、親や執事、女中の信頼はマイヤーに傾きつつあった。
(あいつが来てからだ! あいつは善い子ぶって父さんやセバスチャン、それにメアリーやアンまで懐柔しようとする。僕が散々頑張ってるのにあいつはその更に上をゆく。まるで見下したような表情を包み隠さずに! あいつなんて、あいつなんて……やめよう。
 しっと深いなんて僕らしくない。死んだ母さんなら怒っただろうかな? 僕が赤ちゃんの頃に死んだからな。はあ……そうだ!
 僕にはまだ信頼出来る友が居たよ。生意気で中々主人の言うこと聞かないけど、いつだってあいつは僕の親友だよ! そうとわかれば散歩させないと!
 えっと太陽はまだ明るいよな。ビートを連れて散歩に出かけよう!)
 ジョーは部屋を飛び出す……それは最初の悲劇の始まりであるとも知らず。

 レッドバーグ家のゴミ焼却炉の前に立つ十四歳の少年。金髪で容姿は美しい。けれども悪意のある眼を備え、表情は悪魔そのもの。彼は現在笑い声を上げる!
「ハハハハハハハ! いやはやこの感情はいつだって己を活性化させて良い物だ。おっと……セバスチャンの前でつい独り言を呟いてしまったよ」
 あ、あのマイヤー坊ちゃま--白髪の目立つ身長180はある五十代の執事セバスチャンは少年マイヤーの高笑いに少し引き気味だった。
「どうしたセバスチャン。僕の独り言を聞いて何か言いたそうだね」
「あ、あの? な、何故ゴミ焼却炉の前に立ってらしました?」
「ああ、それの事なんだ。御免御免。勝手にゴミ掃除して。とにかくそのゴミは結構抵抗していてついつい左肩を噛まれそうになったね。まあ、仕留めれば後は燃える生ゴミとして処理出来るし」
「ま、まさか生き物を中に入れたんじゃないでしょうね!」
「それがどうした? 何も人を殺している訳じゃないんだ。少しくらい犬や猫を殺したってヤアウェは怒らないだろ?」
 セバスチャンは顔を近付けるマイヤーに恐怖した--神の名前を平気で口にしながら自分以外を殺す事に躊躇しない少年の眼に!
「別に告げ口して良いけど、その場合、は君に容赦しない。今は自らを抑えたいんだ。その領域に達しない内に行動を起こしたくないからね」
 セバスチャンを通りすぎて行くマイヤー。セバスチャンは涙目になりながらジョーが来るまで立ちつくす。
「ど、どうした? な、何かあったのセバスチャン!」
「あ……ジョー坊ちゃまですか! い、いえ何でも!」
「そう。ところでビートは見なかった? いくら探しても見つからないんだけど!」
 『ビート』という言葉に反応したセバスチャンは左人差し指を焼却炉の方向に指しながらこう言った。「まさかあの中に入っているのは!」その言葉で誰よりも早く身体を動かすのはジョーだ! 彼は焼却炉の火が消えるように風を調整するレバーを回す。それが済み次第、格子に素手で触れる!
「アヂイ!」
「坊ちゃま! 私めの手袋をお着けなさいませ!」
「ありがとう、セバスチャン!」
 手袋を着けたジョーは格子を外し、蓋を開けた! すると中には犬の死体が十字架の形に無理矢理引き裂かれた状態で燃やされていた!
「ああ、ああ! も、えていてもぼ、僕にはわかる! ビート……ビイイイイイイイとオオオ!」
 ジョーの絶叫は邸にまで響き渡る。叫びに釣られて邸内の住人全員が集まった、犯人以外は。
「どうしてこんなに変わり果てたんだ、ビート……お前は何も悪いことしてないって言うのに。いつだって僕の言う事を聞かないお前はいつだって僕には優しくしてくれた。そんな優しいビートがどう、して……神よ。どうしてこんな試練を与えるというのです!」
 最初の悲劇は始まったばかり。この悲劇より先にあるのはジョーとマイヤーの二人が初めて死闘なる。この時当人達は予想しない……


 試作品『ブラックレイピア』のあるエピソードです。一応、神の名前はわざと誤表記しております。だって恐いんだもん……と幼稚な台詞は置いといて。この試作品は前に二回くらい紹介しました。今回で正式タイトルをここに載せます。とは言ってもこの作品自体を世に出そうと思ったら自分自身があらゆる宗教に喧嘩を売る覚悟で挑まない事には出せません。何せ著作権のみならず、宗教的タブーすら平気で冒しますから(恐)。
 えっとまあ著作権に関しましては前二回くらい説明したが、宗教的タブーは読めばすぐに解ります。つーかタブーを犯してくるのはいつだって悪役がやるけど、免罪符にはなりません。かのアハマドさんが所属する所に喧嘩を売った小説家は後日何者かに殺されてます。想像するだけでも恐ろしいぞ、これは(恐)!
 ちなみにタイトル名は一応登場人物を指していて、そいつはブログでは『格付けの旅』試作品が最初に公開された時にゴールド、チルー、サダス、欠番、ヴァルゼリオンと共に名前が出てます。探るのは面倒くさいけど、はっきり言って何から何までスーパーチートな存在です。チートさはともかく悪役度では闇のフィクサーや時空王とタメを張れる存在だよ。とまあどうでもいい事は置いといてタイトル名だからって主人公はその外道じゃないですよ。主人公は一応ジョー。自分自身の悪役贔屓のせいで影が薄くなり気味だけど主人公はジョー。彼とマイヤーの青春を描いた物語。けれどもかの作品と違ってジョーはある能力に目覚める訳ではありません。一方のマイヤーも「人間をやめるぞ」何て言いませんが本当に辞めていきはします。あの方とは別ベクトルで。とまあそれ以上はネタバレになりますのでここまでにしましょう。とにかくこの作品に出てくる悪党は自分で言うのも何ですが、最早他の悪が悪って叫んでしまいそうなくらい酷い事を平気でやります。まあ出さなきゃ想像で終わりますが(笑)。
 以上で試作品の解説を終えます。

 第四十七話の解説は今回数行で済まします。取り敢えずどこにでもありそうな心霊話をミックスした内容になりました。本来はバッドエンドで締めるつもりだったのにどうゆう訳かそんな終り方になりました。蝉が主人公だけあって心の中が激しすぎます。たまに自分がインテリぶるゲスなだけあってどうしてもほぼ全てのキャラがインテリぶります。なので何の話かさっぱりわからないと考える読者が多数出たと思います。今更だけど(笑)。只残念なのは話の方向性が定まってないという事でしょう。自分はいつもやってしまうのですが、大体の短編は結末だけは決まってるのに肝心の間がクダついて読者置いてけぼり感が強めです。四十七話はそれが強く出ていて間は暗いのに終わってみれば間は必要だったのって感じになります。とまあ後ろ向きな事はこのくらいにしてとにかく四十七話は気分次第で書き加えるかも知れません。けれどもそれはブログ内での話ではありませんが。ちなみに辻褄合わせについてだが、今更だけど期待しないで下さい(苦)。
 何だかんだいってたった数行で済ませないまま四十七話の解説を終えます。

 王将の社長が死んだのは会社自体があれだったせいではありません。渡邊美樹と同じ狢であってもそれが原因ではなく、別の要因が関係します。有力なのがパチンコに魂を売ったゴーマン漫画家が寄付したとある世襲型社会主義国家が……済まない。さすがにそれは勘違いでした。べ、別に脅されたから訂正した訳じゃないよ(恐)。ガクガクブルブル……気を取り直して今後の予定をどうぞ。

 十二月
 二十三日~二十八日  第四十八話 大陸移動の予兆      作成日間
 三十日~一月四日   第四十九話 燃える氷の怒火       作成日間
 一月
 六日~十一日     第五十話  エーテルは否定される    作成日間
 十三日~十八日    第五十一話 光不変の先へと 前篇   作成日間

 あいつらは島に住んでるんだよな! ちぇえ、出来ればC国ごと隔離されるように大陸移動してくれないかな? 只よくよく考えてみると大陸移動すると言うことは大地震が毎日のように発生するって意味だし、これ以上地震に遭うと日本が住めなくなって困るしな。とか言って自分はしがみつきそうだな、きっと。
 んな訳で今日はここまで。おや? 黒服らしき人物が来たような……?

一兆年の夜 第四十七話 質量は保存される(終)

 俺達迫り来る銀河連合の雨から逃げなければ! だ炎に包まれている今なら間合う! 俺もベンジャロボロスさん同じ考えの下逃げ続ける! こればかり生存本能の為すがままに逃げるしか道ない! 俺落下速度が加速する前に船に戻らないと! 銀河連合降下速度はいくら空気抵抗というもので限界が設定されたとしても雨の一粒を一般生命は避ける事出来ない。俺吉なし考えを隅に置いてでも鳴き声を背一杯出して自らの力を引き出し逃げる!
「耳に響くん! 俺は昔からお前ら蝉族の鳴き声が好きじゃない!」
「御免なさい! も残った生命よりも自らの命を優先した俺達の償いこれしかないです! 鳴き声せめて誰かが気付いてくれたらそれ十分!」
「などと言ってるん間に銀河連合の雨がもうあんなに--」
 近すぎる! 落下速度加速し出した! 早く港に戻らないと……瓦礫にひび?
 何て考えてる暇は--






 イデデ……な、んで俺寝てる? そもどうして傷付きなが? いやいやいやや整理しよ! 俺どうして傷付きながら倒れていたかを!
 の為……は? あわわわわ! ベンジャロボロスさん?
「がはあ……下半身がないことくら、いはしてる、ん。しく、じ、た。あん、なこと、が、あ……」
 あの世逝くのは当然! そもどうして俺達は気付かなかったか何て……落下音? 悲鳴? 考える暇もう無い! 全体見渡しながら俺は逃げる! 申し訳ありません、ベンジャロボロスさん! 俺あんたとのほんの僅かな時間を共に過ごした事生涯忘れません! 俺……うわああ! まただ! ひび割れた所から突然……ひび割れた?
 そう! 銀河連合俺達全員を食らう気なん! から……わああ! から予め島に入った銀河連合は潜んでいてベンジャロボロスさん諸共俺達襲いかかった! 奴等自然現象と同じように見たがいけなかった! 銀河連合……あの蝉は?
 間違いない! あれ--
「先輩! 先輩なんだ!」
「ん? その声……セミ吉? セミ吉・後藤! 生きてい……ワア!」
「先輩! 大丈夫か!」
「わし心配よりも己の心配しろ! 雨予想以上に不確定! 気抜けば……ドワ!」
「ワア! 質量持った雨なんて避ける方難しい! も銀河連合は死なないの?」
「あれだけ高さから? ゆう原理か知らないが奴等の構造は星の中に入る時だけ落下に耐えるように出来てるらしい……もう少し錬金術が発展しないと解らない、んなもの!」
 折角再会なのにどうして俺達には感動させるものない! それ以上食われてゆく建物、公園、生命この目で見るから? 悲しいから? 怒り込み上げるから?
 んなつまらない疑問を考える内に俺達は東地区の港に着い……タ?
「燃えている! 船食われてやがる! あいつら木板や竜骨さえ主食にするの?」
「何船の中なら安全なん? 俺達蝉族短い命を全うする生命よな、先輩?」
「悲しんでいる場合じゃない。一体どれほど生命が死んだのかを数えるよりもどうやってあの雨から切り抜けられるか考えよう!」
 俺今助けようと考えてしま! 何て事! 燃える倉庫もしかすれば有野さんや大原のおっさんが生きているとさえ考えようとするなんて腰砕けだ! 生きている訳--
「何ボケッしてる! さっさ……倉庫から生命出る? あ、れ団子虫族中年?」
「大原おっさん! 生きてたん!」
「も、う死あにそあい、う。大量に火炙あり、さいうれた空気を吸あいすえおあぎ、た。はあはあ」
 俺考える暇もなくおっさん近付く! 火傷……ないど、呼吸少し過剰な気。
「わしの最後の、願あいをかな、いうえてくれ! ア、デスの海へ、わしを、沈あいうめ、て……」
「セミ吉。生き返らせようなん思うな。死んだ生命もう戻らない。俺達蝉族一番わかる事だろ」
「わかってる、先輩。から俺は最後の願いを叶えるべくおっさんを海沈めないと!」
「助力何でもしてやる! だし雨に当たらぬようにお互い神々祈るしかねえ!」
 俺達おっさんの遺体背負い、西アデス海へ飛び立つ!

「はあはあ、つまらなく一生送るものだと思ったのにこんな目に遭うなんてわしらの成虫以降の人生は山と谷が連続してない?」
「はあはあ、そうだ。でもやくおっさんの願いである西アデス海着いた」
 お日様沈み、お月様輝き増す時間。さよなら、大原ダン児。
 おっさん身体は海とぶつかるり、身長より三杯程の飛沫上げた! して後は浮力なのか知らないど、おっさん浮かばせながらどこかへ流してゆく……。
「からわしらはどこへゆくか言わないと」
「アデス県あったよね、この近く」
 あれ? 返事ない。いうか先輩? 消えた?
「ねえ、先輩! 鳴き声高々と出しますから返事し下さい! ねえ先輩!」
 下方を向いても先輩居ない。そもここに一名でおっさんの死体を弔いに来たというに! どこ行ったというです、えっと。誰だろう? かく俺はアデス県向かわないと!
 何だろ? みんな死の悲しみよりもどうして何も知らない何かを悲しいんだろ? 何知らない何かってどんな者なんだろ? いうよりか俺は何を担いで……これは--
「日記帳? おかしい! 俺こんなものを持ってきた覚えない! って俺は--」
 さっきまでおっさん背負った俺がどうして日記帳担げる? それ俺は逃げ遅れた者探す時、倉庫置いたっきり! のに何で俺は日記帳?
 もういい。短い人生だし、信じてみよう? 超常現象やらを一つ二つくらい……。
 して俺は悲しみと解けない謎を心の中に残したままアデス県着く。当初、アデス県へ通行に必要な許可証なくて困った。けど中央が被災者支援に積極的だったお陰で俺は被災者として中入れた。勿論、避難所以外通行は当分無理だった。許可証発行する時間は一の週を切るといえ、時間かかる作業だった。
 から一の年より後が経つ……そろそろ俺は自らの人生に幕を下ろそうしていた。

『羽はもう動かせず、毎日毎日這いずり回って残りの生を全うする。どうやら人生とはつ
まらないものだったのかも知れない。解けない謎についてだが、俺はようやく解った気が
する。日記帳は現在二十冊目。
 その日記帳全てに目を通すのは時間のかかる作業ではあるが、恥ずかしくもあり、楽
しい時間だった。そこからわかったのは一冊目の方だ。一冊目には所々辻褄の合わな
い箇所が多く見られた。ほぼ最初の部分ではあるけど、俺は幼年期に先輩と呼べる者
を一名も持った事がない。それなのにどうゆう訳か俺は幼年期の思い出を書く度に<先
輩>という単語を十以上も使ってある。一体誰なんだ? <先輩>って?
 まあいいか。例えわからなくても俺には<先輩>と呼べる存在が内側にあった。それ
は何であれこの日記帳なのかも知れない。腰砕けだけど。
 とにかく俺はこの日記を出す事で一躍名を上げられるだろう。ただし、書いた本者は
想念の海に旅立ってるが。時間がない、時間がない。家計簿に取り掛からなくては』







 ICイマジナリーセンチュリー百五十八年五月四十四日午後九時十八分二十七秒。

 第四十七話 質量は保存される 完

 第四十八話 大陸移動の予兆 に続く……

一兆年の夜 第四十七話 質量は保存される(六)

『俺は現在荷物を纏めて五番地の港に寝泊まりした。といっても倉庫の中だけど。
 どうしてそんな状況なのか? 実は昨日の就寝時間帯にラテス島東地区に勤務
する軍者有野アリ太さんから避難勧告が出された事に端を発する。そもそもどうし
て避難勧告か? それがわかるのは東地区で俺と大原ダン児のおっさんだけ。
 その経緯としては接近する銀河。二の日より前におっさんから歪みを観測するよ
う勧められてからだ。ちょうど火の星に銀河が現われるという有り得ない現象を観
測。そして、銀河は僅かではあるが動いているという事も確認。ところが昨日の場
合は恐怖心すら抱いた。火の星周辺にあった銀河が月と火の星の中間にあった。
銀河の動きに関しては近付いたからわかったが動く事が明白になった直後。有野
さんがおっさんの部屋に入ってきて現在に至る。
 どうして倉庫で寝泊まりしているか? それは避難勧告だよ。有野さんから避難
している時に聞いた話では観測班が一の月より前から俺達二名が観測した銀河を
調査していたんだ。それから一の週より後、銀河は真っ直ぐ水の惑星にあるラテス
島を目指している事が解った! そして一の週より後に首都タイガーフェスティに今
までの調査が纏められた報告書が届き、僅か二の日より後に緊急招集でラテス島
住民全員の救出を決定したが、船や積み荷の準備やその他多くの案件が重なり、
東地区に避難勧告が届いたのが昨日の就寝時間付近だった。
 ひょっとして銀色の光が関係しているのか? あの光は直接あの銀河を呼び寄せ
る合図だったのか?
                            俺はどうすれば良いのかわからない』

 まま船に乗るべき? とも寿命迫る蝉族らしく命を散らしてでも救助にあたる? も故郷を……大樹型倒して以来、ずっとラテス島棲みついたラテス蝉族の故郷をこんなにもあっさり捨てていいのだろう? こは先祖だけでない。俺だって思い出深い。セミ麻呂先輩、シ点殿、大原のおっさん、して会社の同僚及び上司……他にも思い出せば言葉表せなくなる。両親居ない俺には親の愛情わからない。けど、友及び劣友達愛情は両親の愛情を持たない蝉族の心を満たすのに十分! 俺未だに情への恩返しを……して居ない!
 動かないと……ラテス島まだ残る生命を助ける為も動かないと! 俺は倉庫から出る--軍者達の注意を背に受けて!

 俺まず、おっさん部屋で観測しよう思った。がどうやら朝は日差し眩しく、観測向かない事を改め思い知らされた! して天体観測なんかしようと思ったん、俺! 時間数十の分くらい余計に使った!
 気取り直して俺はまだ残っている者を探しに家々回った! が、途中齢三十四にして一日目になるラテス栗鼠族の中年に説教食らった!
「いくら短命であってもやって良いこととそうでないことを分別しろ! てめえ一名で俺達軍者の数名に迷惑を及ぼせば助かるん命も助けられないぞ!」
「わかってます! すが、うか俺にも--」
「聞く耳持てるんほど俺は寛容な性格じゃねえんだ! と言ってもどうせてめえは俺の忠告を無視するんだろ?」
「いや、だ何も--」
「俺はマルメロン・ベンジャロボロスだ! 俺と共に避難の遅れた生命を探すんぞ!」
「ま、だあんたと一緒に行動するとは一言も--」
「四の五の言うんな! 俺に出くわした自分の境遇でも悔いるんだな、蝉族の若造!」
 案外聞く耳持つ軍者出くわしまった。確かマルメロン・ベンジャロボロスいい? と、にかく俺はそのベンジャロボロスさんと共に逃げ遅れた生命を探し回る事にした!
 東地区から北地区……そ、う言えば何だか空が暗いよう? だお日様が頂上に来る時間のはず?
「とうとうラテス島は終わりそうだな、えっと名前は何て言うんだ?」
「ラテス蝉族セミ吉・後藤申します。う見えて齢は--」
「年は言わなくんていい。短い付き合いなんだから……なんて言ってるん場合じゃないぞ、セミ吉の若造!」
 空見上げられない! 恐くて無理! 暗いど見上げたくない! そ、れでも見ないといけないような……あれ!
 俺言葉選ぶ。表現少ない俺がどうして言葉を選ぼうとする? 現実から逃げる為? 現実逃避んて蝉族やっちゃいけない。じゃ何の為? 恐怖心和らげる為? 他何ある! 俺知りたい!
 本題入る! 俺見た空は……赤く燃えていた! 只赤なら表現としては意味ない。俺の見た赤は血と炎が混じり合った自然界では有り得ないモノ
「何ボケッとしているんか! 考えているん暇があるんならさっさと島から脱出するんぞ!」
 そう、脱出……出来る? 蝉族小さい身体でもわかるがこの大きさはとてもじゃないが……船を出しても間に合う程なの?

一兆年の夜 第四十七話 質量は保存される(五)

『昨日鶏量一の氷に関する例え話なんて腰砕けたのを思い付いたけど実は夢でも
そんな例え話を出してしまった。あんなのが夢に出る程にまで俺はミーントへの憧
れがあるのか? それともただの抑えきれない感情なのか?
 そんな事はいいとしても俺はどうして鶏量一の氷に関する例え話を思い付いた
か? そこから探らねばならない。突飛な発想には何かそこへ至るまでの道筋がな
ければならない。昨日は今でも現れ続ける歪みを観測しに。そんなのではない。昨
日は大原のおっさんに頼まれて部屋に来たんだよ、夜に。部屋に入るなりおっさん
は天体観測なんてものを頼んできた。そんで俺は例の出続ける歪みを観測したん
だ。するといきなり火の星で銀河を発見したんだよ。何で銀河が惑星より小さいの
かわからなかった。というよりも動いてるんだ、その銀河は。そんで訳わからぬまま
俺はおっさんの部屋を後にした。そん時になって思い付いたんだよ、その発想に。
 探ったつもりが更にこんがらがった! 団子虫族ならこんがらがる事だって一段と
説得力が増すのに俺では。
 今日は俺とおっ三よりも早く迫る銀河を見つけた者を探しに島のほぼ全体を回っ
て探す。うーんますます生活が乏しくなる。今日の仕事は休みなのか。欠勤を生ま
れて初めてしたよ。
       お返しは日記帳が万部以上の売り上げを出したら会社に支給しないと』

 欲強い。どもこれはまだ神様への奉公適ってある。俺そろそろ行かな。窓から出たい、れは神様にお叱り受ける行為。玄関から出て一回まで下りたら全開飛ぶ!
 思った通り俺は一階に下りると羽を広げて東地区飛び回り始めた! 俺は日記帳通りに天体観測をする生命が居るか探し回る……家々だって訪問したのにこの地区にはそれを趣味とする生命が一名も居ないなんてどうかしてる!
 俺次の地区--南地区--へと方向定めた! 風は気持ちが良いな……空は気分を暗くさせてくれるど。空歪んでいなかった時代は幸せだったの? 俺いくら想像を働かせても答え出ない。家々訪問する作業は時間費やす。二つ地区で合計十二の時過ぎた。そろおっさんの所に向かわないと間合わない! なみに結果はどこも天体観測したがらないそう。南地区外れた。

 俺おっさんの部屋に着いたのは恐らく午後十の時か? おっさん気分が良いのがその証拠。
「今日は早く着あいたな。近所の奴等から聞あいたぞ。後藤。あの件で仕事を休あいうんでまで尽力しうてるそうだな」
「それ御免--」
「謝あいる意味がわからない」
 え? ここ謝るべきじゃないの? て仕事を休んだんだから--
「古式神武国民の命が係あいうってる以上はその判断は正しいことだ、後藤!」
「そ、そうなんだ……あれ? 国民命? して国民の命繋がる?」
「来たまえ、後藤!」
 俺どうして大原のおっさんが『古式神武国民の命』と言ったの理解出来なかった。望遠鏡であの銀河を覗くまでは!
「何なんだ! して火の星付近にあった小さすぎる銀河月に接近しようしている!」
「わしだって信じうえおられなかった! まさか火の星と月の中間まで移動しうてるなんて!」
 中間まで……いや異なる! 近付け近付く程この銀河動いてる! 周りまで躍動してるようさえ見える!
「後藤よ。『銀河連合』の名称はどうして付いうえおたか知っておあいるか?」
「それ知らない。大体いつからそな名称?」
「四百六十の年より前に旧国家神武を喰らった銀河連合の集団。あれを予言あした一名の天体観測家は命を懸あいうけて仁徳島にいる鬼族に伝えおたんだ! 動あいく銀河を発見あしながらそれが後の銀河連合という名称に繋がいる程のを!」
 動く銀河発見しながらそれが後の……まさかあの銀河!
「じゃあ改あいうめてその銀河を覗いうてくれ!」
 俺再度覗いた。先程より動いて。動いて……む、むむむむむむむきだだだだ--
「ンァ遅れて済まないが、ァァさっさと荷物を持ってここから出ろ!」
 扉開けるのは齢二十五にして十一の月と六日目になるラテス蟻族の有野アリ太だったよう?
「ァァなんだね? ィィ何を聞きたい?」
「有野アリ太さんだった?」
「ゥウそうだよ……ってお喋りはこのくらいにするからさっさと島から出るんだ!」
「坊主! 状況がさっぱりわからいうえんぞ!」
「ゥオ走りながら説明するからさっさと島を脱出しに行くぞ!」
 ちなみ有野さん軍者。よりも説明を聞いとかなけれわからない!

 俺有野さんからもたらされた驚くべき予報に一瞬羽止めてしまった! それ本当なら俺達は次の日のお日様が頂上に移動した時までに島から出ないと銀河連合の急降下襲撃によって押し潰される事になる……本当にそうなのかはわからない。

一兆年の夜 第四十七話 質量は保存される(四)

 多分十時か? 俺はおっさんの部屋に入ろうと扉を三回叩く。音怪我しない程度なの小さい。一分経ったが反応ない。俺再度三回叩く。ども返事無し。なれば蝉族独特の五月蠅い声で--
「待て待て待あいうてエエ!」
 体型小さいせいか転がる音が僅かに聞こえたかと思うとすぐに扉を開く音がした! 目の前にはまん丸としたおっさん大原ダン児が現われた!
「もしかして六回くらい扉を叩いうえおた?」
「正解。御免、大原おっさん。小さい音!」
「気にするえおな。身体は大事である以上は一般生命の平均的な音量を出しうて扉を叩くえのは良くえおないことだ。
 そんなことよりも中に入れ!」
 俺おっさんの行為に敬意を込めて高度を地面に擦るギリギリまで下げながら中入る。
 部屋独身なら誰もがやる整理届かない部屋。新聞紙恐らく一の月より前の物は廃品回収しないま放置。食べ散らかしっぱなし皿に洗い物は一体いつやるのか判然としない程積み上がったま。でも俺の部屋に比べれば整理されている方。壁蝨族が生息しやすい環境の部屋で一つだけ綺麗に磨かれた物あった。
 それ望遠鏡。昆虫種族専用作られた軽量望遠鏡。持ち運びこそ便利遠いものの遠距離顕微鏡の性能高く、現在火の星を回る衛星まで見通せる程。
「言あいっておあいくが死あいうんでも片付あいうけんぞ!」
「じゃなくてこれで星を眺めれば良いんです?」
「だいうえろう……と言あいたいが一つ頼あみたいことがあいるんだ」
 頼みたい事? 慰め俺を誘ったんじゃない?
「生まいうれた時からずっと俺達の空を歪まいうせるあれを望遠鏡で眺あいうめて欲あしい!」
 あれ……か! 俺気なってた! 口伝五十以上の年より前にあれ発生した! 歪み銀河連合の襲来予め告げる。
 歪み大きさによって規模も襲来時期変わる。一等星ぐらい矮小、新月ぐらい小規模、三日月ぐらい集落規模三つとも短期襲来。半月なら県市を覆う規模でなおかつ中期襲来。満月ならかつて旧国家神武を食らう大きさの銀河連合襲来。期間長期。だが、お日様規模現在も続くあれは未だに記録ない。お日様場合は国を一つ食らえる大きさ聞き、長さ超長期。正直理論範疇しかない。
「いつまでだらだらと考えごとをあいする? さっさとわしの言わいうれた通ありしうてくうれって!」
 忘れてた! 早くしない! 俺せっせと土台が安定するようにおっさんと共に掃除済ませる! からすぐに望遠鏡設置して観測開始! うせ新しい発見は……何だ?
「ん? 早速発見しうえおたか?」
「何銀河が火の星付近にある?」
「はあ? お前は何眠たい事を言あいうか? よく見あいうて見あいうえろって!」
「いや、何度見直して火の星の衛星の一つを隠すように銀河があるん!」
「わしにも見あいうせろ! 何を寝言なん……本当にあいる!
 というか動いうてるような?」
 動いてる? それ本当なの? 俺再度望遠鏡を眺めた……けどわからない。というより遠すぎて動いているのかさえわからないものをどう……本当動いている? 気せいじゃない?
「動いうているえおかどうかはまた明日ここに来あい! ただわかいるのは火の星付近に銀河があいること自体吉の良あいくない報せおだ!」
「ええ。また明日お願いします!」
「いや、お願あいはこちらがあいするもんだ。互いに頑張ろあいうぜ!」
 明日あの銀河火の星を離れていたなら良くない報せは災いへ転じる。それ鶏量一の氷が密閉した状態で体積を増やしても一まま、水から水蒸気へ大量に変化しながらも鶏量一のままであるような……頭良くない例え。こんな例え読者を納得させるなんて無理! 帰ったら日記付けず寝よう!

一兆年の夜 第四十七話 質量は保存される(三)

『初めて付ける日記題名は何にしよう? 今気付いた商業化するなら訛りは外さな
い。次行外す。
 えっと、セミ吉・後藤は日記を書きます。どうせセミジャック・ミーントの様に成れな
いならせめて自分が大人になって生き抜いた証だけは残そうと思い、ここに至りま
す。日記を書くのは初めてである以上、最初は結構退屈な事ばかり書きますので注
意して下さい。
 うーん、これでいいかな?
        現在の時刻はお日様が頂上に着いた頃だから午前十二の時くらいだ』

 日記帳案外安かった。もっとかかる思ったけど紙の量産は三十枚日記帳の価格下落に繋げる! だが、依然生活苦しい。くら社会保障担当の蝉族が積立金を用意して地上社会での暮らしをし易くしても働かなければ満足に食い扶持稼げない。毎月かかる家賃支払えない。昆虫用ほうきちりとりだって立て替える予算ら捻出困難。家計簿書かないといけない。寿命短いんから少しくらい俺達蝉族が暮らしやすいように高額な社会保障でもいいのに……誰か来たみたい。
 俺ラテス島中央ラテス市第三東地区三番地にある昆虫族専用宿泊施設二階六号室暮らす。そこ誰かが俺の部屋を三回叩いたか? 蝉族伝統五月蠅い鳴き声で居る事示す!
「五月蠅いっうえお! 羽の音で十分わかったいうえぞ!」
 声、それあからおまで続けざまに言う訛りは……団子虫族大原ダン児。一階二号室暮らす大原ダン児。
「まだ生きていうえおたとは。一の月くらい会わいうえをないから死んだいうえおかと思ったいうぜお」
「礼失する挨拶は止めてく、大原おっさん」
「おっさんじゃないうえお! こう見うえおて齢三十一にして五の月と六日目だぞ!」
「十分おっさん齢! そ、んな事は良いから要件何?」
「忘れおあいる所だった! わしがここに来たいうえのは一重に皆が就寝すえおあいる時間に部屋へ来あい!」
 藪棒に何を言う、の団子虫?
「ついつい蝉族への特別扱あいをしてしうえおまうが、とにかくわしの部屋に来あい! そうすれば短い一生も少しはゆとりが持あいうてるぞ!」
「……期待しない考えとく」
「五分五分の回答は止あいうめろ、後藤。世の中を生き抜あいくには十割の回答を心掛あいうけよと出会ったいうえときから言っておあいるのに!」
「御免。つての恩師にもそれを言われた事ある。俺どうしても--」
「気に病あいむ事じゃないって! 下ばかり見続けおあいるような生活しておあいると気楽に生きうえおられないぞ。とくにお前みたいなのは適当でいいうえおんだからさ!」
 楽観的生命。俺は到底考えがつかないっの。これ普通の寿命を全うできる者の生き方なの?
「それで改めてお聞あいくけど、午後十の時、わしの部屋に行あいくえのか?」
「……行く」
「良い答えおあになった!」
 一方的部屋に来ては一方的に部屋を後にする大原おっさん。正直して十割の回答を出した? 五の年より前に銀河連合の死体から放たれた銀色の光……あれの解釈があってるかどうか知りたかった。本当関係なくないのかどうかという事!
 正直過去が現在に及ぼす影響も現在から未来に及ぼす影響もわかる。ども頭の構造が一般生命と異なる者は未来から過去にも及ぼすなんて言ってくる。だけはあり得ないと俺は思うんだけ……。

一兆年の夜 第四十七話 質量は保存される(二)

 何皮を剥ける痛そうだな。絶対痛いんだ。一昨日だった? 昨日か? 忘れた剥いた瞬間の痛み時間が経てばすぐ忘れるけど、あれ痛い。のにやってしまう。ほど俺達生命は自分追い込みたい性質なの? わからない。
 わからない事三つ程見つかった。一つどうして国人族が頂点なの? 二つ目陸と海独自の発展可能なのに地下だけそれらを真似た社会成るのか? 三つ目セミジャック・ミーントはやって万有引力発見出来たか?
 まず国が人族頂点にした社会しか有り得ないかについてだ。国最初に興したは確か四百七十年より前くらい? あまり昔なのか、とも歪んだ空なかった時代がそこなのかわからないくらい昔。現在最強の仙者名高い天同生子よって旧国家神武建国された。まで集落から大集落。大集落から村。村から町というものだったを突如国いう社会基盤が形成されたから当時反発が大きい思った。までわからないよな。かく俺考える事はして人族中心とした国成るのか……いう疑問だ。俺住むラテス島は御覧通り古式神武の領土。古式神武最高官は仙者でなくとも良い、象徴間違いなく人族成る。でに象徴は最高官より上の位。よって古式神武の頂点は象徴成る。たらどうして頂点は人族? それ象徴が天同家でしかも男系の流れを汲む者でないとなれない制度。女系だと直系だとかでない。かつ必ず先祖が仙者という連続した系統でないとなれない仕組みだから意外と大変。
 あれこれする内考えがこんがらがった。答えたい事つまり仙者でないとなれないからこそ国の頂点はどうしても人族になりやすいしか思えん。今そんな答えしとこう。
 そうする内羽化の準備やってきた。訛りすっかり成虫時の感じ。一つ一つ飛び訛りから前後飛びの訛りに変化したのがその証拠。したって痛い痛い! 絶対痕出来た出来た! 先輩こんな苦しい痛みに耐えたとなるとこれ辛い辛い! 痛み衝撃死し!
 和らげるは二つ目の疑問を考察すっなない! 陸現在三つの国ある。一方海にも国ではない、独自社会が築かれる。シャーク傭兵団戦いを担当、政各海洋を分担する市長及び町長ら担当。分担支配形成されてる、海方。だが、俺ら蝉族初めとした地下種族には独自の社会ない。あって陸と海の社会を真似るような社会しかない。イダダ……蟻族だって地下社会を築こうしない。彼等二つの種類ある。一つ俺らのように地下深く生活する集団。二つ目陸の種族同様に日の光を浴びながら毎日送る。だけ働き盛りで力仕事を人生の生業とする蟻族ですら独自の社会がない以上は何かあるかも……ダダイ! も、もう少し殻! 殻出そう! イデデ……出た!
「はあはあ、つがれで……」
 独り言止め。よ、やく俺は大人になれ……まだ早い。身体乾かさなと! 乾かす内二つ目の疑問に答えを出さなと。と、かく今の段階で答えは暗い場所では世界を見渡す事出来ない。何故ら暗い場所では石版意味ない。紙意味ない。意味あるすれ口伝。ども口伝は必ず真実を伝えられると限らず、社会発展促しづらい。
 ダダダ……風体中に浴びさせ痛い! くら羽を乾かすのにいいとは言えこれじゃあ身が持つ? ならば三つ目の疑問も考察しとこう? セミジャック・ミーント俺ら種族の間ではかなりの変わり者。幼年期は物覚えが良くな、いつだって先輩蝉叱られてばか。ども数学の才能は者一倍優れて、誰か知らないが団子虫族で数学に詳しい雄が彼に数学を教え込んだらしいとか何と。それ功を成したか、あの雄蛹に至るまでに様々な発見し続ける。から俺のように成虫に成ってからはあの万有引力の法則を見つける至った。噂は林檎が木から落ちたのを源泉にしたとか伝える蝉がいるが、それどう考えても論理の飛躍。寧ろして林檎が木から落ちる事で万有引力への切っ掛けになったかの経緯についてそこに至るまでがわからないとそんな閃きは真実成らない。して俺が羽を広げている間にも経緯を辿ってるけどいくら穿ってもわからない。一つの才に特化した者はもはや一般生命とは頭の構造が異なるんだろう。積み上げた物いくら巨大でも類い稀なる才能は時として更なる土台を乗せてゆくんだから後の者が困って仕方がない。てかして達観した事考える、俺? これ大人の考え?
 面倒くさい、今答えは才を発揮できるほどに論理の積み上げが十分だった以外ない。短い寿命やる、セミジャック・ミーント。はあ、自信ない。俺日記が書ける、シ点殿。どこか飛んでいるあろう坂上セミ麻呂先輩。
 俺はこうして飛ぶ……未だに歪み続ける空を見上げながら!

一兆年の夜 第四十七話 質量は保存される

 あれ夏だ。俺日の光見たのはこれ初めてなのか? とも卵孵る時に一瞬見たのか? 真実死んだ後しかわからない。俺こうしてお日様下で木登るんだ。神々感謝しないといけない……誰?
「君誰だい? 蝉族の者はこの季節に五月蠅くて困るんだがねい。名前を聞かせてくれない?」
「俺セミ吉・後藤。ラテス蝉族齢は二十成ったばかり」
「何だか解釈しづらい訛りだねい。僕の名前は正岡シ点い。正岡シ点と呼ぶい。語尾に『い』が付く蜻蛉族のラテス島出身者だい。齢は十九にして十一の月と三十日目だい。僅か一の日遅いだけで年下なんて悔しい!」
 居るんだ。俺以外僅かな日数の差悔しがる生命がいると。
「それでセミ吉とやらは木に登ってどうするのだい?」
「蝉族知る者なら知ってる?」
「どん……そうかい! 蛹に成るのかい! んであのくそ喧しい音を出すんかい!」
「仕方ないだ! 蝉族代々そうして子孫繁栄してきた! 鳴き声高さ、華麗さセミの右出る種族が聞きたい!」
「いやいやい、寿命が短い上に鮭族並に親の顔が知らないお前らが鳴き声まで記録出来るとは思えないけどい」
 そ、そうだ! 俺達蝉族大人に成って僅か時間で死至るから鳴き声は耳聞き伝え続ける以外にないんだ! まで弱い部分あるとますます成虫成りたくなくなるんじゃない!
「まい、まあ僕の言葉をそこまで受け取らなくてもいいよい。けい、けれども寿命が短いのならいっそ地下生活に戻ってもいいんだよい。そう急いで蛹に成る必要もない訳だしい」
「も、もう遅い。俺これから蛹成ろうとする。から先お喋りは出来ない」
「そい、そうなのかい? てっきり蛹に成っても喋られると思ったけどそうじゃないんだい」
「当たり前。蛹状態お喋り出来るとっく昔に蝶族お喋りしてる!」
「そうだったかい。ところでいつになったら蛹に成るい? 蛹から成虫に至るまでどれくらいかかるい?」
「年齢ほぼ比例する後十二の分。から成虫成るには蛹同じく僅か二十の分だ。まで聞きたい事は一つ絞った方が良い、シ点殿」
「セミ吉とやらはセミジャック・ミーントのように名を残したいと思わないのかい?」
「はっきりいって俺頭の良い蝉じゃない。いって名を残さず土の中眠るのも御免だ。今それ言えない、いいか?」
「蝉訛りは解釈が難しいから。どう反応すればいいか悩むい。うーん……こうだない!
 良かったら『日記帳』を付けて良いんじゃないかない? 『日記』ならひょっとすれば可能性ありだしい!」
 日記……その羽あったか!
「少し表情が軽くなったじゃないかない? 蛹が直前だから気のせいかない?」
「あ、ありがとう! お陰迷う事なく成虫に成れそう!」
「どう致しましてい! そい、そろそろ行かないとない! い、生きていたらまた会おうい。そのセミ吉とやらい!」
「再会近い! 神々の祝福あらん事を!」
 いっちゃった……彼出会えて良かった。お陰で……そろそろ始めようか。大人階段を上る今だよ。

一兆年の夜 第四十七話 質量は保存される(零)

 俺見てしまった。銀河連合死の間際両眼から銀色光を出すを!
「どうした、セミ吉? 俺達蝉族雄は銀河連合死体で痛んだ土浄化に励んでいるだぞ! 地上死んだ銀河連合に構う意味ある?」
「確か無い。それ銀河連合は俺達全生命体倒すべき存在だしな。
 どもは気なる!」
? 何光?」
「見えなかった? 地上そんな深くないこの場所見えたん。銀河連合死に際だった目から銀光を出す」
「銀? 何また銀なの? 銀河連合に銀? 落ち語りだな」
 落ち語り? 何話だ? 忘れていたが、俺ラテス蝉族のセミ吉・後藤。元々ツクヨミ系名字で先祖確か『~・ミヨカリーナ』だった。つい数十年より前アマテラス系名字の雄嫁いで現在の名前至る。齢十五にして十月と十八日目至る。蝉族幼年期は長い。成虫なるとに寿命尽きるから名声残せない。全くセミジャック・ミーント凄いな! 短い時間万有引力の法則見つけるんさ! 俺名を残したい気分。
「何ボケッしてるか、セミ吉! 浄化作業にかかれ!」
「はは、セミ麻呂!」
 口五月蠅いのは坂上セミ麻呂。同じくラテス蝉族齢十六にして十一日目なる先輩。彼いつも叱れてだ! あれ? そうか、蝉族特有訛りだからわかりにくいこう言ってる『俺は彼にいつも叱られる身』十分。
「したって俺ら蝉族種族特有の短い寿命いくら幼年期長く最大三十の年以上生きられん! 正直二十の年なる恐くて仕方ないよな、セミ吉」
「地上に出る延期させる気か、先輩?」
「しない! 生命運命には逆らえない。俺きっぱりお日様光に浴びて蛹なるさ!」
 先輩強い。俺引き延ばしたい気分。もっと知りたい事に出会える。
「どうした、セミ吉? 安心出来ない悩み時間がある内、言え!」
「実光を浴びたくない。ままで居たい!」
「居たらいい! けれども、永遠幼虫で居られる訳ないのだ! 俺知っている内では幼虫まま世に行った者達に成る?」
「そ、それ……」
「言葉詰まるようだ。生命寿命は短い。俺達最大三十の年。鮹及び烏賊族ような海洋種族最大三十八から四十。一般生命最大五十五。仙者現在の記録最大七十五の年。IC二十五年生きる生命は皆無言ってよい!
 でも幼虫で良い言えるか?」
 寿命等しく俺達に死与える。暗い場所いつまで居られない。だけど、したらいいわからない。
「お前俺より二月程若い。分だけ悩み抜け! 俺若者だ。若者悩み抜く権利がある! 俺この先悩んで悩んで悩みまくる。殻荷が軽くなった?」
「少しだけどいい?」
「十分! とっとと目標周林範囲十まで浄化する!」
 俺達二名結局目標に届かず、現場監督こっぴどく叱られました。
 だけど、先輩お陰で俺お日様を浴びる事した。まで子供のでは居られない。全生命大人の道避けては通れない。いって中途半端決断すれば子供じみた生命成る。こそ俺ような柔らか優しさで断行出来ない生命には励ます存在居てくれない大人として進めない! 居てくれて良かった! ありがとう、坂上セミ麻呂先輩。
 セミ麻呂先輩は二十年に成る真っ先に地上生活始めた。成虫なった蝉はおよそ二年で死ぬ。俺彼を笑顔送った裏では運命に悲しみ抱いたさ!
 セミ麻呂先輩蛹になって二月が経つ。俺もう二十年に成る。ちなみ周林範囲とは面積木の数表す単位。縦一本、横二本なら周林範囲二と成る。解り辛かったら御免。

格付けの旅 宇宙は危険が一杯 引き延ばしは突然に

 惑星<クウラ>……既に滅んだ星。かの宇宙最強の故郷を模した惑星。そんな惑星の死は模倣には程遠く、とある魔人の好奇心一つで滅ぶ事になろうとは皮肉以外の何物でもない。
 そのような惑星にも生き残りはいた。それは百メートルにも及ぶ巨大鯨を捕獲した艦隊。名称は<クウラ>第二艦隊。主に知的生命体の捕獲を任務とする。第二艦隊は捕獲艦が五割近くおり、戦闘力は他の艦隊に比べて劣る。けれども総合戦闘力は『100”000”000』でかのSS人に引けをとらない。
 では第二艦隊の中央に位置するかの猪武者艦隊にいそうな塗装をした巡洋艦内部に移る。その中で最大千メートル級の知的生命体が入るスペースの檻にアルッパーは全身傷だらけになりながら脱出を試みようとしていた。
「俺を誰だと思う! こんなへなちょこなんてすぐに破壊してやる!」
 いくら体当たりを仕掛けてもアルッパーの肉体が傷つくばかり。その様子を防弾硝子越しに見つめる三つの影。中央に位置するのが艦長バルバトス・ワカモト。今日は紳士的な性格であった。
「あの鯨は出血多量で死にたいのか、博士よ!」
 ワカモトの左手に位置するのはラインハルト・ウラキ。人参が嫌いなシスコン。
「死にはしないでしょう。あの鯨は何たって生身で宇宙空間を進む訳なので」
 ワカモトの右手に位置するのはセニア・グラニア・エルステッド。かの地底王国の王位継承者にして格闘術及びエーテル研究の専門家。
「寧ろ凄いのはこの鯨って言葉が話せる所よ! きっと解剖したらもっと凄いのが--」
「てめえ、この二本足! 俺を食うんじゃなく、ただ解剖したいなんて酷いぞ! つーかてめえは俺に食われろ!」
「あの鯨は随分吠えるな、エルステッド博士!」
「艦長。私達を食べたくてウズウズしてるのよ、きっと」
「まさか人間が主食の鯨が居たとはな。特にエルステッド博士に反応しているという事はひょっとして--」
「あのねえ、ウラキ君? 私の胸はどう考えてもBカップしかないわ」
「嘘つけ、そこの二本足! 俺が計算した所、てめえはさちこK式の大きさだろ!
 つーことでさっさとそこから降りて俺に食われろ!」
「あの鯨は結構頭が良い。すかさずスリーサイズを調べ上げるなんて畏れ入るなああ!」
「けれどもここからは出られないわ。それに一ヶ月も壁にぶつかるなんてどこまで本気なのかしら?」
「ああ、それだけど。余が戦闘力を調べた結果……何! 昨日よりも五十八ポイント上がって『873』だと!」
「さすがに環境が良すぎたな。そろそろ……あそこへ移そうか、皆の者よ」
 三人はアルッパーの視線から離れてゆく。
「まちやがれ、二本足共オオオオ!」
 自動ドアの開閉する音がした瞬間、アルッパーの身体は己の意志に反して宙に浮かび「何しやがったんだああ!」と無情な叫びが発せられる! そして、百メートル近くの巨大な身体は僅か一秒で清浄にも満たない大きさまで縮められながら部屋から姿を消す!

 アルッパーの感覚はまだ一秒を速く感じるものだった--というのも一秒で部屋の光景が変化するのに戸惑う!
「二本足共め! 瞬間移動で俺を転移させやがって! つーか俺だってかつてはそれくらい出来たのに!」
 何独り言をいってるのかね、この鯨君は--全身が白くなおかつ黴菌を好みそうな声をした男がアルッパーの背後にある窓辺で両手を後ろに回して見下ろす。
「その声は糞餓鬼向けの番組に出てたレ何とかだな!」
「誰の事を指しているのか解りかねますが、私はムーザ・カナハン。御覧の通り『私の戦闘力は五十三万です』と言いそうな元赤肩の兵士ですよ」
「パーフェクトソルジャーにボロ負けしたような三枚目に用はない!」
「あんな尖兵相手では難易度をイージーにしたって勝てませんよ」
「そっちじゃない! 俺が言いたいのは--」
 唐突にカナハンの背後にある自動ドアが上がり、出てきたのはワカモトとウラキ、それにエルステッドの三人。
「何を漫才をしているう、カナハン!」
「これはこれは艦長。あなたがこの鯨を転移させましたか?」
「仕方ないだろ。これ以上戦闘力が大きくなったらあの部屋に閉じ込めたって何れ一日で壊されてしまうからな」
「そうそう、そうなるんだったら手頃な子にその鯨を始末しても良いかもね」
 エルステッドの上半身にある一部が揺れるのを捉えたアルッパーは防音窓硝子を者ともせず「さっさと下りてきて俺に食われろオオオ!」と叫ぶ!
「運が良かったな、鯨よ。今日の俺は紳士的だ」
「それは良かったな、艦長。そろそろカナハン先生。あれを出して貰おうか」
「全く五月蠅い鯨は黙らせるのが一番のようですね。じゃあ出しますか、島田エリート兵を」
 アルッパーは音がする方へ身体を回す。その先にある転移扉に現われたのは全長がアルッパーの五十分の一以上。人型で一見すると伊達筋肉に見える男。
「貴様か。鯨の癖して俗物臭が漂うのは」
「オイ、二本足共! こいつのどこが兵士だよ! 脚本家共が厨キャラとしてる奴に外見が瓜二つじゃねえか!」
「有り難く余が解説して進ぜよう。奴は間違いなく島田エリート兵という名前だ。一見すると鉄郎に赤ん坊の頃から恨みを抱くような碌でもない奴の姿をしていて、性格は女が世の中を動かすと言いながら自分が影から支配しようとする木星帰りのエリートみたいな嫌な奴だ。
 けれども戦闘力は間違いなく高い。せいぜい破滅の王に捧げられない事を祈るのだな」
「けれどもいいの、艦長? このままではアルッパー君が死んでしまうわ。相手があの大魔王では」
「死んだらあそれまでの鯨。また探せば良いだけの事よお」
「もしや<アラレ>との戦争に備えるというのですか? このアルッパーが<アラレ>を討ち滅ぼせる程の力を秘めましょうか?」
「アーア、気に入ってたんだけどなあ。アルッパーく--」
「またんかああ、てめえら! さっきから聞いてりゃあ俺を『アルッパー』と呼びやがって! その呼び名はあの糞ムカツク二本足以外しか知らねえぞ!」
 ワカモト達が居るフロアの窓硝子に五度以上体当たりするアルッパー。
「お教えしよう。この私は君が付けていた電子発信器からこんなメッセージを解読しました」
 カナハンは右手を出してアルッパーに見せる。そこには何と--アルッパー追跡用魔法--とミクロンサイズで描かれていた。
「あの二本足メエエエエ! 絶対に食ってやるウウウウウ!」
「どうやらこの子にも相棒は居るみたいね」
「口ぶりからして恐らくは余らと同じ人間……まあ今はどうでも良いだろう。
 艦長、本当に島田エリート兵を当てても大丈夫なのかな?」
「『下手をすると殺しかねない』とでも言いたいのか、ウラァキよ」
「島田エリート兵の戦闘力は現在でも『530000』はある。カナハンの第一形態並の戦闘力だ。確実に死ぬぞ、今のままでは」
「まあ死んだら私らの見込み違いだったで済みますよ。ただ、この鯨……間違いなく死にそうな雰囲気がしませんなあ。私と同じように何度やられても立ち上がりそうな気がしますねえ」
「お喋りは済んだか、二本足共! そこから下りて俺に食われろよ!」
「俺を無視するのか、アルッパーとやら?」
 いつの間に背後をとった--アルッパーが気付く間もなく島田エリート兵は尾ヒレまで接近!
「もう戦闘は始まってるみたいね。果たしてどちらに勝利の女神が微笑むか、楽しみだな」
「私は島田エリート兵に賭けよう。人間が鯨に負ける展開なんて珍しいからね」
「じゃあ私はアルッパー君に賭けてみるわ。だってこれほど胸が躍る実験材料は見た事ないんだから!」
「てめえら! 俺を賭け物にしてんじゃ--」
 島田エリート兵に尾ヒレを掴まされ、窓側より反対方向にある壁にぶつけられたアルッパー!
「ガアア! てめえ--」
 喋る暇も与えず、アルッパーの肉体に三十六発もの右ジャブを与える島田エリート兵--戦闘力五十三万もあるビルダー体型の男から放たれた一撃一撃で大きく怯む全長百メートルもの巨体!
 この程度か、アルッパーよ--左ハイキックで右顎に与えられて吹っ飛んだ先にある壁に半径七十五メートルものクレーターを形成!
 島田エリート兵の追撃に終りはない--中心部に左ストレート、右飛び膝蹴り、左アッパー、右ハイキック……攻撃の雨は止まらない!
「一方的じゃないかあ、皆の衆」
「たかだか戦闘力三桁の鯨と六桁の戦闘民族……一方的にならない方がおかしいものですよ」
「結局そこまでの子だったのかな、悲しいわ」
 ん--ウラキは右手の平にある方位磁石スカウターに目を配る。
「どおうした、ウラキ? スカウターがどうかした?」
「ええ、艦長。どうやらアルッパーとやらの戦闘力が異常な数値を叩き出してるようだ!」
 見せて見せて--エルステッドはウラキの所持したスカウターを盗る!
「何か解ったか、エルステッドよ」
「確かに異常だわ! 見てよ、みんな!」
 エルステッドは右手の平を見せるように三人の方へスカウターを翳す!
「な、何イイイイ! こんな馬鹿な事があるか!」
「どううやらアルッパーは間違いなく逸材だな!」
「余が見た時は『1256』から『28877』に倍増していたが、ここでは更に……何!
 戦闘力『12569876』だと!」
 ウラキが某戦闘民族の王子のような顔芸をしている間にアルッパーと島田エリート兵の戦いは何時の間にか熾烈な激戦に変貌!
「やるなあ、アルッパーとやら!」
「隙を突いて食らおうとしたのにいつの間にゴリマッチョな肉体に膨張したと思ったら髪が金色に変化しやがって!」
「これが俺達戦闘民族の潜在能力『SS人』だ!」
 ワカモトらの居るフロアの窓以外全ての壁に半径五十メートル以上のクレーターが量産されてゆく--凡人やちょっと強い連中では全く見えない速度と手数、ヒレ数による攻防が部屋全体で繰り広げられる!
「この俺が押されてる……だと!」
「まだ光を超えちゃあいないぞ、二本足イイイ!」
 現在両者の速度は秒速210027m/s……『SS人3』まで程遠い速さだ。
「島田エリート兵が押されている! こんな馬鹿な事があるかああ!」
「叫ばないの、カナハン。それにしても凄い成長よね。こんな短期間に五ケタ以上も強くなるなんて有り得るの?」
「もしや……『メアリー』の素質があるのでは?」
「『メアリー』? 何でしょうか、艦長?」
 メアリー……別名メアリー・スー。かの伝説的なSFドラマの同人物。ここで説明するならとある宇宙を基に二次的に誕生した宇宙を指す。その宇宙で説明不足の人物が唐突に大活躍する事やあからさまな設定だったり、その宇宙では出来るはずもない視点で物事を言う人物を指す。メアリーはあらゆる意味で魅力を損なわせる存在。例えば暴徒鎮圧に慣れた霧やヘタレを克服しすぎて理不尽な苗木誠、後はデュアン・マイッダーら門番達がこの宇宙に来てよく似た世界の良く似たキャラを一蹴する事も十分メアリー・スーである証拠だ。
「それは大問題だ! このまま巨大鯨に負けたら島田エリート兵のプライドが傷つきかねん! 艦長! お願いします!」
 いや、待て--ワカモトはアルッパーが何かの仕種をするのを待つ。
 一方のアルッパーはとうとう戦闘力を『987654321』まで到達し、なおかつ光と同等の速さまで力を戻した--速度で増すはずの島田エリート兵は先回りしているはずが、光の速度で迫るアルッパーを捉えきれずにやられるばかり!
「馬鹿な! この俺が鯨如きにやられて……ぐわああ!」
「これで止めだああ! プロトン砲を食らえ!」
 アルッパーは体内にある放射能を一点に集中して口から放つプロトン砲を島田エリート兵にぶつけようとしていた!
 その時、ワカモトは「今だ、ウラキ!」と逆巻いた声で指示!
 古来からメアリーはお断りだよ、アルッパーとやら--ウラキは胸ポケットにある片手で押せるスイッチに親指の力を入れる。
 すると右横からクー・ホリンが使っていそうな槍がアルッパーのサイズに合わせた状態で彼の者を貫く!
 ギャアアア--突然現われた槍を受けてアルッパーは部屋中を跳ねるように悶える!
「フフフ、艦長も中々鬼畜ですなあ。まさか伝家の宝刀『横槍』を入れるなんて」
 横槍……それは勝手に動きまくるキャラを抑え付ける為に創造主がどこからともなく飛来させる通告。本来ならば第三者が二人同士の問題に介入する意味として使われる用語だが、創造主が作りし超宇宙では善悪関係なく引き延ばされたり、終わらせたりする為に使用される。例えばウィークリーJプ超宇宙太陽系ではアンケート結果が全てに比例。これが上位に入れば創造主の意志に関わらず引き延ばされる。或は下位に入れば終わらされる。
 前者における引き延ばしの横槍について説明しよう。引き延ばしは創造主の誰もが望むもの。物語を最後まで終わらせるには引き延ばしは一番効果のある横槍。ところが、終わらせたいのに引き延ばされる場合はその超宇宙に悪影響を及ぼす効果は計り知れない。例えば働く意志の全くない創造主が支配するヨシヒロT超宇宙ではユウY宇宙でシュワルツネガー戦で終わるはずが水瓶座のカミュ編以降も引き延ばされ、そこから設定がどんどんおかしくなってゆく。挙句の果てには鈴木さんですらシュワルツネガーより強くなるというおかしな現象が発生し、事実上その宇宙の魅力が損なわれる形となった。他にはざわつく描写で有名なノブユキF超宇宙にある天宇宙の過去にあったシゲル時代で主人公の白髪と落ち着きの良くないキチガイ老人が端から見ると約十年も麻雀をやった挙句に何故かキチガイ老人が地獄で鬼やら閻魔大王と死闘を繰り広げ、更にはどっかの巨人が主役の超宇宙を真似るように地上で好き放題やるという最早麻雀関係なしの展開をやらかしたせいで別の意味で魅力を出しているものの、古くから愛好してきた者にとっては苦笑い以外なにものでもない。このように引き延ばしはいい影響を発揮する事は皆無だ。無論このように長々と説明する事も引き延ばしの一つではあるが。
 では後者における打ち切りの横槍について説明しよう。それは創造主ですら逃れ得る事の出来ない最後通告そのものである。これを突きつけられたら最後、創造主はその宇宙におけるいくつかの複線を急いで回収しなくてはならなくなる。故に展開が急激になり、尻切れ蜻蛉な終りを迎える事が多数。例を挙げるならマスダK超宇宙に住むとある作者夢野何たらの作品群はいい参考材料となり、その中でも剣聖タケルは最早伝説級で四天王の一人の不死身な能力をたった一回刺されるだけで済ませるどころか、他の四天王まで同時に始末した挙句、いきなりラスボス戦に入り、ラスボスから効果アイテムなしでも倒せる事が判明、なおかつ主人公には妹が居ない事も判明するどころか、ラスボスが両親を逃がしていたという事実まで判明した後に最後は戦う直前で終わるという展開には多くの魅力が詰まる。他にはヒロユキT超宇宙のマンK宇宙ではあまりにも多くの複線を回収するどころか、終盤はダイジェスト方式になり、更に予想出来ないのはラスボス役のキャラが王女状態で締めくくるという斜め上をやらかしたせいでゲンナリする者が多数出た程。もう一つ例として挙げるならクルマダM超宇宙の野郎坂宇宙では最早回収不可能なくらい複線を抱えたまま主人公が坂を上ってゆく場面で終わった……はずが『未完』という文字で締めくくるという展開。つまり、創造主は終わらしたくない一心で締めくくった(というよりも凍結させた)二文字は伝説となり、今でも続編を待望する者は居るとか居ないとか。このように打ち切りは創造主達に多大な圧力を与えると共に複線を回収する暇さえ与えないのが現状。無論、我々の超宇宙も例外でない事は覚えておこう。
「随分長い説明どうも有り難う。それで誰が説明していたのか解らないわ」
「とにかくアルッパーは悶え苦しんだ挙句にとうとう身動き一つとれなくなりましたね」
「あれだけ長ければその様子さえ書き記す時間はないだろう。とにかくこれでアルッパーとやらは死んだ……ン?」
「どうしたあ、ウラキ?」
「本来スカウターの画面は対象が死んだら表示されないはず……なのに!
 見てくれないか、画面を!」
 本当だわ--エルステッドはスカウターが『1234567890』と表示されているのに目を爛々と輝かせる!
「何を嬉しそうなのですか、エルステッドさん」
「だってアルッパー君をこれからも観察出来るじゃないの。こんなに嬉しい観察対象はないわ」
「けれども奴はメアリーだ! このままではこの宇宙の強者を難なく屠り、活躍の場を奪うのだぞ! 何としても……ん?」
「どうしました、艦長?」
「そう言えば発信器は誰が付けた?」
「えっと確か……誰でしたっけ?」
「フロイライン・エルステッド、忘れるなよ。確かあのアルッパーとやらには相棒が居ただろう?
 頑なに殺意を抱くあの--」
 いつからあの二本足を相棒にしたああ--突然起き上がったアルッパー!
「何! 槍刺さったまま起き上がるなんてこいつはどこまでメアリーなんだ!」
「となればあ、その相棒もメアリーかも知れん……アルッパーとやら」
「さっきから気になってるが、俺をそんな名前で呼ぶ--」
「我々に協力しないか? そうすればあ好きなだけ人間を食べられるぞ」
「俺は今にもてめえらを食べてえんだよおお!」
「メアリーの癖に私達に協力せんとは! 都合良く協力せんと人間を与えないどころか今度はお前の仲間である鯨の同胞を解体するぞ!」
 さ、さすがにそれだけはやめてくれエエ--アルッパーにも弱点はあった。
「いけるいける。鯨を超えた子だけど意外に同胞思いなんだね」
「本当に二本足を好きなだけ食えるのか?」
「ああ、約束する。ただし、目の前の島田エリート兵や我々ではないぞ。通称『雑魚』と呼ばれる名前も与えられず、人権すら存在しないモブキャラをプレゼントしよう」
 雑魚キャラ……それは古今東西から存在するエキストラ。彼等はワカモトが言ったようにモブキャラと大して変わらないくらい主役やちょっと強いキャラなどにやられる為に存在する人権のない存在。ただし雑魚キャラにも分類はあるが、ここでは二つを紹介しよう。それは影の主役たる雑魚キャラと雑魚っぽい脇キャラ。
 影の主役たる雑魚キャラとは主役ではないが、主役と同等かそれ以上に存在感を表す。やられキャラではあるがそのやられっぷりも含めて魅力を与える存在。例えば暴れん坊将軍や剣豪などに斬られる為に存在する斬られ役がそうである。彼等の斬られっぷりは見事でそこに暴れん坊将軍の見事な刀捌きを引き立たせてくれる。他には機動戦士と共に一話から最終話まで登場するモノアイ型の機動兵器がそうである。彼等は様々なバリエーションで登場。赤い人が三倍速く見せるような専用機があったり、電磁鞭を持った一味違う物もあったり、ジェットストリームアタックをかけるような黒い物もあったりなどそうしたバリエーション機が登場しても最後まで原形を留めた本機は登場し、機動戦士と比肩する魅力を与えてくれる。なので雑魚キャラがいるから主役や脇役が引き立つのを努々忘れぬように。
 雑魚っぽい脇キャラとは名前有りなのにいかにも雑魚キャラの空気を匂わせるキャラの事。本来ならばモブキャラとして退場してもおかしくない程に小物で何でいるのかさえ不明である。例えば某裁判物に出てくる大体の小事件の背後にやはり貴様かと思えるキャラがそうだ。奴はいかにも雑魚キャラの雰囲気を漂わせながらも最後まで脇キャラを演じた存在だ。他には死体で発見されるはずだったドレッドヘアーの男。奴はあらゆる意味でいつ死んでもおかしくない状況であっても最後まで生き残り、脇キャラを演じた存在。他には女と間違われそうな中学生。彼は全ての媒体宇宙であってもいつ死んでもおかしくない呪われたクラスで生存するという希有な存在。名字が四文字の相棒や眼鏡の相棒は別媒体では無惨に犠牲となったが。とこんな具合に彼等のように雑魚と変わらない匂いを放つ脇キャラはあらゆる意味で貴重である……雑魚キャラの説明になってないか、これ?
「--というわけだ。これならそなたの条件に適うだろう?」
「いいだろう、協力してやろうじゃねえか!」
「やったわね! これで--」
「早速だが、二本足を食べさせろ!」
「あのなあ、アルッパーとやら。物事には順序って物があるのよお。さすがに作者は次のページを書こうとするんだ。
 よって二本足のフルコースは次のページで出すぞ、いいな?」
 メタってんじゃねエエエエ--アルッパーの叫びは艦隊全てに響いた!

 一方、デュアンの方は武者修行して二十年目に入る。戦闘力は未だに『1200』しか上昇しない。
(弱い奴ばっかり相手しても意味がない。本来ならばもうそろそろ敵組織が出ても良い所だろ。どうも俺は遊ばれているようだな。
 はあ、とにかくことしも天下一舞踏会にでも参加するか? そしたら少しは強いのと出会えるかもしれん。
 ちなみに俺の寿命はこの星とは連動していない。それに加えて少々肉体改造を施されているから普通の奴から見れば千年どころか万年以上長く生きられる。まあそうゆう設定だ)
 デュアンに忍び寄る影は二十年目にしてようやく動く……



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冬眠への道 鬼斬篇

 どうも何だかPS4のMMOに一見すると萌えゲーもんっぽいのが目について萌え文化の恐ろしさと日本鬼子のキャラクター性を改めて素晴らしいと感じるdarkvernuです。
 始める前に『格付けの旅』の白魔法第一話の一ページ目が完成しましたので読まれたい方はカテゴリ覧の<格付けの旅>または<白魔法の章>をクリックして下さい。
 あ、そうそう初めてweb拍手のコメントを貰い、嬉しいです。しっかりコメントをお返ししました。んじゃあ鬼絡みの試作品を始めますよ。

 鬼は悪魔と並んで人々から忌み嫌われる存在。容赦ない所行はみな鬼と呼ばれ、豆を投げつけられる。鬼に権利はない。鬼は滅ぼされねばならない……俺はそう思う。
 俺は何をしているのか? 俺は死を求めている。だが、死ねない……ビルと呼ばれるアメリカ製建築物が立ち並ぶ日本を彷徨いながらも。
 俺がどうして死なねばならないのか? 俺は人間であって人間ではなく、鬼であって鬼でない。そんな半端で下劣で見るに堪えない存在、それが俺だ。俺は人間の為にも死なねばならない。鬼の為にも死なねばならない。
 けれども……右肩をわざとぶつけるものが必ず見つかる!
「いでえな、オイ! そこの兄ちゃんや!」
「ひょっとして俺の事を指すのか?」
「ああ? 俺を誰だと思ってる? 許せねえの会を解体させたシバーク隊の特攻隊長様だぞ!」
「知らないな、どっちも」
「ああ? 知らねえが免罪符になるんなら世の中みな罪がゆるされんだぞ、ええ!」
「だろうな、ごめんなさい。これでいいか?」
「”いいか”だって? 生憎だがなめた口を利いた罰を受けなきゃならねえな。それ以前にてめえの持ってるその持ちもんを取り上げねえと気がオサマらねえ!」
 角の事か? これを渡す訳には……ゆかん!
「何恐い顔してんだ?」
「今すぐ逃げろ! 俺に出会った事は金輪際きっぱり無かった事にしろ! さもないと……」
「わかったぞ! それは刀だな! だが、俺には最強の拳銃が……」
 股間から頂上まで斬るのは容易い。けれども血飛沫を起こさず斬るのは難い。付け加えて右手に持つ鞘の中に素早く納めるのはなおも。
「だから言った……”逃げろ”と!」
 そして俺は他人の生き血を吸って長生きする。意志に反して。
「おいおいあれって!」「あの若白髪の兄ちゃんは鬼なのか?」「角はきっとコスプレに決まってるってにゃ!」「にしてもさっきのやーさんはどうしてうごか……」「キャアアアア!」そんな声が遠くの方に聞こえる。気のせいだろう……


 試作品『鬼は変わりゆく世界を生き続ける(仮)』です。主人公の名前は鬼神。ただし、その漢字を付けたのは別の人物で本名は鬼にとっては屈辱的な漢字が当てられております。何故屈辱的かは内容を察すれば解ります。とにかく鬼神は半人半鬼で人でもなければましてや鬼でもない。そんな中途半端な存在故に苦しみます。けれども彼は正当防衛だけはそつなくこなし、いつだって長生きし続けます。
 とまあこんな感じですが、基本自分にはオリジナリティと呼べるものはありませんのでこの物語にもモデルは複数ありますが特に顕著なのがガールズザウルスの作者が書いた鬼ものや尾田英一郎の兄弟子で今は墓の下で弟弟子及び兄弟子達を見守り続ける人が書いたあの鬼ものです。僅かではありますが、菊池御大の名作やカプコンの名ゾンビシリーズも内容に濃く出てます。けれども後者の二つは詳しく知らないので敢えてパクリと言われたいのは前者の二つです。まあ願望であって自分の意図を超えていろいろ言われるのが落ちですが(笑)。
 話は試作品の方に戻して主人公である鬼神は死にたがり屋です。だが、自殺はしません。なので更に生き続けます。その先に何があるのか……それがこの物語のテーマです。ただし、こういった物語は必ずバトル物になりますのでテーマをぶれずにやるのははっきりいって出来ない予定です(苦)。
 そうゆう感じで試作品の解説を終えます。

 第四十六話の解説に入る。今回は全編に及んで……「ニュートン関係ねえエエエ!」だった。以上で解説を……終わらす訳にもゆかん。えっと主人公はタコで主軸となるのが落語(?)『エーテルホーラウ返し』だ。
 とにかくタコはイカと共に師匠である貝に落語(?)の稽古を付けるお話だったんだけど気がついたら自分達が師匠が思い付いた落語(?)の複線回収及び落ちの収拾をされる羽目になってラストがまあこんな感じだな。正直いってニュートンと関係したのは最初だけだった気がするんだよな、これ(辛)。
 まあ一応『エーテルホーラウ返し』の解説だけはしとこう。この落語(?)は貝が即興で思い付き、なおかつ現代世界に出てくる格闘バトルギャグ物を勝手にパクる内容で始めて、最初の落ちがかのギャグ物の複線投げっぱなしの状態で締めるという物。それでは良くなかったのか、貝は更に話を付け加えますが、今度は隕石を巡るドタバタ劇も追加され、ますます混迷を極めます。どうしようもなくなった所で弟子二名に丸投げをします。んで今度は隕石が銀河連合と関係してるのではないかという訳分からんまま迎えて訳分からんまま話は終わりを迎えます。言っておきますが、落語はグダグダな内容を語るものではありません。なのでこれはあくまで落ち語りであって落語ではありません。これを落語と呼べば委員会のレギュラーであるざこびっちさんから有難い説教が来ますので注意してください(震)。
 とりあえずわかる事は今後題名に沿うような内容にしなければならないと心から思いました。ですので第四十七話以降は題名に合わせる形にします。必ず(?)。
 以上で第四十六話の解説を終えます。

 それじゃあ『格付けの旅』白魔法の章01の一ページの解説を行うぞ。今回の舞台はかのアンチパチンコ漫画家の一人であるインフレの名手が描いた名作を模した舞台。とにかく戦闘力が全ての世界に入ったデュアンとアルッパーは持ち前のスーパーチート性能を発揮できずに苦戦します。何せあの御大の作った作品を模した世界なので初っ端から戦闘力五のおっさん以下でスタートします。いろいろ突込みどころ満載な展開は健在ですが、いきなりアルッパーは捕獲されてどっかに運ばれてゆきます。捕獲されたアルッパーを追おうと発信魔法かけますが、思考がスーパーチートの感覚だった事と圏外になる事も考えなかった為なのか、見失います。そんで向かった先がほぼノープランで惑星<アラレ>でございます。デュアンは果たしてこの星でアルッパーに関する手掛かりとスーパーチートな力を取り戻せるのか?
 まあ取り戻すんですがね、奴は(笑)。以上で01の一ページ目の解説を終えます。

 よく良く調べるとそのMMOの奴はよく出来てるなあと思った。まあやらんのでこれ以上詳しくは調べん。とにかく興味ある方は調べてくれ、ただし自分は曖昧に情報を出す以上はそのタイトルが何なのかを出さんがな。
 では今後の予定をザラっと出す。

 十二月
 十六日~二十一日   第四十七話 質量は保存される      作成日間
 二十三日~二十八日  第四十八話 大陸移動の予兆       作成日間
 三十日~一月四日   第四十九話 燃える氷の怒火        作成日間
 一月
 六日~十一日      第五十話  エーテルは否定される     作成日間

 我々の世界にエーテルの波は検出されない以上はトップをねらえの世界は諦めてもらう以外にないぞ! それじゃあ今日はここまで。時間があれば例の奴の二ページ目に入る。

一兆年の夜 第四十六話 ニュートンが支配する世界で(七)

「おーい、タコタルゾ! そろそろ第六部の続きを始めろよ!」
 そう言えばそうだったそうだった。次の部……いやいやボウっとしていたいた。えっとどこから始めればいいかな?
 ……そうだそうだ! 確かここからだ!
「近藤イノ左右衛門は長年……どれくらいの年かは定かではない。およそ十か十一の年くらいの付き合い? 細かい事を気にしちゃあいけないが、とにかく板垣ツル次郎とは年に一回は挑戦する程に息子のツル助に次いで理解する雄。彼はツル次郎の空最強の秘訣が何なのかを日夜研究してきた。その結果、仙者とは言えないが独特の呼吸と何者にも負けないくらいの精神力と想像力が肉体を強くしていったことに気付く。
 現在、彼はそれに近い呼吸と想像力を持って自然災害及び銀河連合が引き寄せられるかを試す。だが、そんな姿は他者から見れば奇抜な体操をしているようにしか見えない。けれども、彼等の注目する所が普通じゃない親子喧嘩である以上は恥ずかしい場面として認識されることはない……はずだった!
 何やってる乃、おっさん--齢十八に相当するであろう鬼族の少年に注目される事になろうとは!
『見てわからんのカカ、若造ウウ! <万有引力>に基づいて隕石や自然災害が呼び寄せられるか実験してるのだアア』
『<万有引力>? 何それ? 美味しい乃?』
『貴様ああアア! <万有引力>を知らんとハハ! さては筋肉しか詰まってないと見るかアア!』
『それ端おっさん乃方だろ?』
『おっさん出端ないイイ! こう見えて三十代半ばじゃアア!』
『十分おっさんじゃねえ科!』
『それにあっしのどこが筋肉詰まっておると言えルル!』
『だって場所尾考えず似筋肉体操じみたこと尾してるんじゃあ誰だってあんた乃方牙筋肉詰まってそうじゃない科!』
『うヌヌ、あっしはこう見えて<万有引力>研究家アア!』
『あーはいはい<万有引力><万有引力>……偉いんだね』
『これ以上はあっしながら退かせて貰おウウ!』
『ところ出名前端何て言うんだ? 俺はカゲヤマノヒカゲノカミってゆうんだ』
『カゲヤマノ……最強遺伝子の内の一つだナナ。おっとオオ、あっしは近藤イノ左右衛門と名乗ルル。よろしくなアア、少年ンン』
『ん出イノ左右衛門乃おっさん。頭牙良くない俺乃勘だけ土まさかあのツル次郎似挑戦する為似奇行尾してた乃?』
『今年は既にしタタ。結果はあっしの負け宣言に終わったアア』
『あっそ……じゃあ他乃理由?』
『有無ウウ。あっしの<万有引力>論に基づいて気合い一つで銀河連合やら隕石やらが引き寄せられるかを実験したのだアア』
『それ端絶対似ない。普通考えたらわかるでしょ?』
『いくら鬼族とはいえ生意気は腹が立ツツ。そんな小さいことよりも気合い一つで引き寄せた雄が近くにいながら気付かないのかなアア、少年カゲヤマノ君ンン』
 あれね--ヒカゲノカミは右人差し指を突き出してツル次郎を示す。
『実際には引き寄せたアア、隕石と銀河連合をのオオ』
『んん? 何科おかしくない?』
『少年の意見は多少なら聞くゾゾ』
『ひょっとして隕石似乗っかって二体乃ほら……あの死体端来たんじゃない科奈?』
 それもついさっきあっしは思ったアア--イノ左右衛門は二体の銀河連合の骸に視線を向ける。
『<思った>って? じゃあ違う斗いう事?』
 これを見たまエエ--イノ左右衛門は先程登ってきた四名の内、蹄程ある隕石を持っていた雌従業員から貰う。
『小せえ。実物端どれくらい?』
『ほぼ二倍しかなイイ』
『じゃあ違うじゃん。最高乃閃き駄斗思った乃似!』
『いやそうとも限らンン』
『え? え?』
『乗っかってきたというのは異なるガガ、関係はするウウ。二体は骸になる間際に目から銀色の光を放っタタ!』
『はあ? それ牙何科意味あん乃?』
『ひょっとすればあれは未来から過去に情報を送ったのかもしれンン』
『はあ? 未来科羅過去似? 何言ってんだ余!』
『光で送ったなら最大速度が時間の問題を引き起こすウウ。だがアア、未来の宇宙から過去の宇宙に送るならそれは解消されルル。そして過去から現在の我々が過ごす宇宙に送られ……待てヨヨ!』
『はあ? な、なな、何言って--』
『ひょっとすればあの光は穴を通して別の未来宇宙へ飛ばさレレ、次に穴を通して別の過去宇宙へと飛ビビ、そして穴を通して……もしやこれは--』
 突然空から轟音が鳴り響き--」
 え? ええ? あれあれ? どうして聞こえるんだろうだろう?
「どうやら『現実は仮想話よりも奇』というのは真実のようじゃの」
「何言ってるの、先生? 音なんて気のせいじゃ--」
「そうも言ってられんだろ! 深部零まで上がるぞ、本当かどうかを!」
 ま、待ってよ待ってよ、イカラン君! そ、それに先生まで!

 僕達三名は深部零付近である事に気付きました……光の屈折作用かと最初思ったのですがですが。何度顔を出してもそれは異なりました異なりました。
「わかるよなあ、タコタルゾ。昔からある歪みではないことに……」
「ありゃあ大きいのう。わしは詳しいことはわからんがの。あれくらいの大きさは今後何が降ってくるのじゃ?」
「満月だ。多分、七から十三の年より先にかつての国家神武を食らった規模の銀河連合が……もうそろそろ『エーテルホーラウ返し』を終わらせましょう。師匠、それにイカラン君』
 僕達は元の洞窟に戻って長編落ち語り『エーテルホーラウ返し』の続きを再開……。

「誰もが皆、歪む空を見て目ん玉をこれでもか、これでもかと飛び出そうな勢いですぞ!
『おっさん……ありゃあ一体どうすればいい?』
『わからンン。ただ一つの理論に辿り着いた……それは--』
 平行世界の時間旅行を駆使して情報を送る方法……時間すら伝達に使うという発想から生まれたのが『エーテルホーラウ返し』!
 それは過去、現在、未来の事柄すらひっくり返してでも実行に移す方法……正に光を伝えるエーテルならではのホーラウス的転回でありましたとさ…めでたしめでたし」




 ICイマジナリーセンチュリー百五十六年一月五日午前八時五十六分四十三秒。

 第四十六話 ニュートンが支配する世界で 完

 第四十七話 質量は保存される に続く……

一兆年の夜 第四十六話 ニュートンが支配する世界で(六)

「もう始まってるぞ。わしらはこれ以上待てん。期待はしないが見事な複線回収劇にかける!」
 それを世間一般では--
「独り言を呟いている暇があるならさっさと始めんか。終わってもしばらくは叱らんので」
 結局叱る予定ですですね。えっとどうすればいいかないいかな? うーん……閃いた閃いた!
「まずは一部から五部までを整理します。第六部を始めるには途中から来た客の為に今までどうゆういきさつだったかを説明しなくてはいけません。
 第一部では天体研究家のとある親子は空最強の生物を懸けて喧嘩を始めようとしてました。子供は板垣ツル助。彼は父で『空最強の生物』である板垣ツル次郎に勝つ為にひたすら強くなり続けました。そんな彼も親子仲睦まじい生活がしたいタダっ子でした。彼は第六部に登場するであろう『万有引力』研究家近藤イノ左右衛門にお願いをして木造一階建ての古ぼけた家にツル次郎に飯炊きさせます。本当はこの場で喧嘩をするつもりでしたが、ツル助の心が恐がり、第二部に移ります。あんな望遠鏡を縦にも横にも曲げられたら喧嘩する気持ちになれませんよ、実際問題は。
 さて第二部では今度はツル次郎がツル助を迎え入れます。しかも六階建て煉瓦製宿泊施設に。んでツル助は第一部で行えなかったツル次郎への礼知らずとも言える態度で接します。そんなことをされて怒りの湧かない生命は居るかな? ただ怒りで済めばいいが、事もあろうにあの板垣親子ですぜえ! ツル次郎の怒りに共鳴するように何と隕石が降って来やがって! 建物の近くに落下したもんだから施設が揺れるのも無理はありません。二名はそんな揺れには気付きません。何故ならこの後、ツル次郎の怒りに呼応するかのように二体の銀河連合が現われます! まあこの辺はツル助が銀河連合二体に苦戦したことに業を煮やして二体を巻き込んでツル助のケツを叩いてツル助に最強であることを誇示します。ですが、ツル助は父ツル次郎の攻撃を受けても立ち上がり、ここに『空最強の生物』を襲名します。
 んで親子喧嘩している中でいろいろ動きがありました。それが次に振り返る第三部で御座います。登場生命はここで板垣親子から三十代の雌雄に移ります。隕石を研究しようとするミス・マハルーンと親子喧嘩を見ようと通りがかった野次者エリフュウリは隕石回収の際にマハルーンは転んで仰向けになったで御座る! ただ転ぶだけなら運がないという結論で済むが、マハルーンは科学者の閃きを持つが故にこうして『ホーラウス的転回』を閃いてしまったよ!
 さあ転びに転びまくって第四部に転がります! 閃いたのはいいに越したことはないのですが、仰向けではどうしようもありません。そこでマハルーンはエリフュウリに手伝いを要求。そうして元の体勢に戻ったマハルーンはエリフュウリと協力して先程の隕石を持ち上げようと試みました。すると、あまりに力が入りすぎて今度は二名とも仰向けになります。そんで隕石の方は宿泊施設の二階廊下に入ったよ、こりゃ。
 そんでまたいても登場生命を変えて第五部に飛びます。たまたま近くを通りかかった宿泊施設従業員リック・真鍋は外にあるはずの隕石が突然二階の窓から入ってくるもんだから恐がって自問自答なり、真鍋の踊りなんかの奇行をします。そんな様子を誰かに見られたらどうする気でしょう。見た生命は居ました。先輩従業員リザリウタ・メデリエーコフその者だった。運が良かったのかリザリウタも変な生命だったのか、先程までの行動がまるで見ていなかったかのように振る舞い、奇行は全て洗い流されます。それからリザリウタは隕石が入ってきたであろう窓の外を覗いてくれたお陰で第四部で仰向けになっていた二名の雌雄は助けられ、彼等を引き連れて外から五階まで駆け登ります。
 とまああらすじを流れるように語りましたが、いくつかの複線は回収されないまま第六部を迎えます。そもそも『エーテルホーラウ返し』とは一体どんな理論なのか? 更には隕石は何故降ってきたのか? 二体の銀河連合は何の為に親子を襲撃したのか? そして重要なのは隕石落下と銀河連合は関係するのか?
 第六部の舞台は親子喧嘩がちょうど終わり、四名が五階に駆け上った後から始まります。出てくる生命は近藤イノ左右衛門。板垣ツル次郎の付添い者にして挑戦者。彼は決着を間近で見ながらも二体の銀河連合の生死を確認します。結果は二体ともツル次郎の一撃に耐えきれなかった模様。そりゃあそうか。煉瓦の壁一層が壊れる程の力で吹っ飛ばされたら叶わんって。
『全くツル次郎には叶わンン。あのツル次郎に<空最強の生物>を明け渡されたツル助も中々の雄じゃアア。だったらあっしもそろそろ<空最強の生物>に戦いを挑んでみようかナナ?』
 勿論彼にそんな勇気が現在備わってはいない。何故ならイノ左右衛門が毎年ツル次郎に挑む際は鎧及び四本全てに最新の足斧でゆくのですから。ならば何の戦いを挑むのか?
 それは……心の呼応で銀河連合が寄せ付けられるかを試す為。勿論これも彼の専攻する『万有引力』における一つの主題。果たしてどうなるか?
『あっしがこうしている間に日が過ぎたではないカカ!』」

一兆年の夜 第四十六話 ニュートンが支配する世界で(五)

「じゃあ『エーテルホーラウ返し』の第五部と行きましょう。舞台は建物の外から中へ移ります。突然にして窓から蹄程の面積はある隕石がぶつかり、中の方へ硝子の破片が飛び散ったものだから近くを通りかかった従業員は驚いて客室の扉にしがみつくって訳だよ。気持ちはわからんでもないが、情けない事にそいつは雄だな。更に情けない事実としてそいつは熊族ときた。名前はリック・真鍋。真鍋傭兵団との繋がりは多少あるのに窓硝子の破片出すら恐がる情けない雄だよ。
『危なかっタア! 刺さったら痛いカアラね』
 リックの齢は二十三。傭兵団を自主退職して以降、職探しに日々を過ごし、やっとこさ就けたのがこの宿泊施設。ところが、この施設で困った事が発生。それは板垣親子による最強を巡る喧嘩だった。ただの親子喧嘩なら問題にはならない。だが、あの野性的で有名な天文学の親子。喧嘩を観戦しない野次者は興味ない者や都合がある者を除けば観戦しない者は存在しなかった。今日という日は運勢が良いものではないせいも相まって喧嘩が始まる前に隕石が降ったり、五階以外の客が一斉に板垣親子の居る客室まで詰め寄ったり、隕石が連れてきたのか定かではないにも関わらず銀河連合が襲来するなど一体全体何が起こってるというのか!
 リックは頭が混乱する中で更に迷わせる事に遭遇--隕石が中に入ってきた!
『き、き、きと僕の日頃の行いが良くないせいダア。ださ、ださから隕石が飛び上がっタアんだ、きっトオ!』
 リックの答えは筋違いだった--隕石は外にいる羊と山羊が力を込めすぎて二階まで届いた事に気付かない。
 気付くはずもないが、リックは日頃の行いのせいだと自答して悩み始めた! そんで彼は二階に誰も居ないのをいい事に独り言をあれこれ呟く。
『きょ、きょきょは伯母さんの薦めでアアった腹筋百回するつもりガア、僅か九十九回だったことニイ神様がお怒りになったのかな?
 そ、それかか? 毎日塩分を摂る為に欠カアセない味噌汁を、今日に限って一回も作らずに済ませたのがいけないかな? み、み味噌汁は辛いから毎の日一回食ベエるのが辛かったから一日くらい減らしてもいいトオ考えたのにお怒リイかな?
 そ、それかかな? 真鍋家が代々早朝にやる真鍋の踊りを今日に限っテエ一回もしなかったのがいけないかかナア? あ、吾、あれは柔軟な体操もは入るカアラ痛くて千切れそうで音が好きじゃなかっタア。間接が軋ムウヨうな音は僕、好きじゃジャアない!
 た、多分異なる。ど、どれも神様がお怒りすスンニはむるりなこと! あわわ、まだ心当たりないことデエお怒りしてんかなあ!』
 リックは隕石を見つめながら自分の行いの何がいけないのかを悩むがどれも当てはまらない。そりゃあ当てはまる訳がない! なのにこの熊は事もあろうに隕石の前で土下座をするわ、真鍋の踊りを披露するわで一体全体訳がどうなってるやら。こんな場面を目撃するものの目には何と映るかわかったもんじゃ……いや目撃者が出てきやがったぜ!
『何してんの、真鍋君?』
 リックよりも一の年より先に就職した先輩従業員リザリウタ・メデリエーコフだ。彼女は齢二十四になったばかり。栗鼠族では美雌に当たる快い匂いがする者だ。
『あ、ハアいメデリエーコフさん! 隕石に触れていいかどうかデエ悩んでましたが』
『あれ? 隕石? どうんして外にあるんはずんの隕石が二回のしかも落下軌道じゃあ有り得ない場所に落ちてるんのよ?』
『え? メデリエーコフさんにはわかるんデエすか?』
『腰砕けな答えよ。実際わかるんわけないわよ、目撃してないし』
『だよね。で、でも触れレエバ銀河連合が--』
 出るわけないでしょ--リザリウタは用心せずに左足で隕石に触れる。
『だい、じょうぶ?』
『私だって恐がったわよ! で、でもほら……持ち上げても骨伝導で何か伝わるんはずんなのにそんな気配ないわよ!』
『本当ダア……っよりも骨伝導ナアンてわかりますか?』
『わかるんと思うんようんに見えるん? 適当に言っただけよ』
『メデリエーコフさんの言葉は腰砕けに聞こえナアイって。エーテルと言ってもメデリエーコフさんなら--』
 そんな事よりも--隕石が入ってきた窓の方に近付くリザリウタ。
 彼女は外で仰向けになってじたばたしながら助けを呼ぶ二名の者に気付いたのか、こんな事をリックに言ったぞ。
『真鍋君! 至急一階まで降りて裏口に出るんわよ!』
 え--リックは走ってゆくリザリウタの後を追う!
 まあこの後二名は外で仰向けになったマハルーンとエリフュウリを助けた訳だ。うーん……この後はそうだな。
 この後は突然五階で歓声が沸くのを聞いた四名。急いで中へ入ろうとするが--
『あ、れ? どこへ行クウんですか、メデリエーコフさん!』
『決まってるんでしょ! 今の状況なら五階へ上るん方法はただ一つ!』
『それ木登りが出来ナアイと無理ですよ!』
 偶然にも四名全員、外から五階へ上ることは朝飯前であった! かくして彼等はこんな言葉を編み出した……『エーテルホーラウ返し』という常識をひっくり返すものを!」
 ……。
「それで落ちを決めたつもりかの? さすがにそれではきまりが良くない、イカランよ」
「……仕方ありません! けれどもこれ以上話を膨らませても意味はありません! それじゃあ落ち語りとしては長すぎて客が欠伸をします!」
「ま、まあいいじゃないかな。『エーテルホーラウ返し』は綺麗に幕を閉じたし」
綺麗……某にはそう感じないの」
 うう。なな、んだか良くない予感がするする。
「済まないですが、第六部は思い付きません。わしはもう力を使い果たしました。
 後は……タコタルゾ。お前に任せる以外にない」
「え? 今なんて言ったの?」
「わしはもう無理なんだ。いくら想像してもこれ以上の複線回収は思い付かない。ここは落ちは碌なものではないが、複線回収だけは上手いタコタルゾに任せる!」
「宜しく頼むぞ、タコタルゾや」
 え? え? あれ? どうして僕が任されてるの? そもそも言い出しっぺは--
「これも『万有引力』の作用じゃ。某はもうこれ以上種は蒔かん。蒔かせん。そもそも言い出しっぺが度であれ投げられたものをみすみす捨てる行為を落ち語りする者がやるんじゃない。
 どんな状況でも難なくこなすのが落ち語り家じゃ! とにかく当たって砕けてでもいいから力を出し切れ!」
 あわわ、あんじゃそら! もう心が折れそう折れそう。
「心配いらん。考える時間を設けるから第六部をじっくり考えろよ、タコタルゾ!」
 イカランまで誰に向かって伝えてるんだよだよ!

一兆年の夜 第四十六話 ニュートンが支配する世界で(四)

「ようやく思い付きました。尻切れ蜻蛉にならないように落ち語りを始めます。
 エーテル論を専攻する女性研究者ミス・マハルーンが思い付いたのは『エーテルホーラウ返し』……ではなく『ホーラウス的転回』でした。
 そもそも『ホーラウス的転回』とは今まで常識とされた星は平面という事実から星は円いという常識に変わる認識。この常識に移るのは簡単ではある。けれども一般の生命がこれを言い出すには礼節なり自らを律する心なりが遮り、中々難しい。何しろ今まで信じられてきた教えを投げ捨てるものです。わしはとてもとても出来るものではありません! けれども、『歪み公式』を世に送り出したホーラウス・フォーディーはこれをやってのけた!
 さてと、前置きはこのくらいにしてそろそろ『エーテルホーラウ返し』第四部を始めたいと思います。
 マハルーン氏は『エーテルホーラウ返し』ではなく『ホーラウス的転回』を思い付きました。それはいいとしても四本足が空に向かって付きだした体勢から元の地面に根を張る体勢に戻らねばなりません。けれども四本足の種族はその体勢から元の体勢に戻る事は自力では無理なのです。試してみて下さい、四本足の方々よ。首を捻っても足をばたつかせても中々どうしてか。横に倒れてくれませんぞ。
 そんな体勢で困り果てたマハルーン氏は側にいるエリフュウリに頼みます。
『助けてよ、格好良イーいエリフュウリさん!』
『煽てる気かうえ! どうして俺が三十過ぎのババアを助けなきゃならんのだうえ?』
『エリフュウリさん? 後でどうなアーアるか覚えて下さイーね』
『とはいうえ、神々への礼節でえい! それ……元に戻ったろうえ?』
 エリフュウリのお陰で元の体勢に戻ったマハルーン氏は--ありがとうね、エリフュウリ--と感謝を込めて頭を下げるとすかさず隕石を持ち上げようと三度目の試みを開始!
『またひっくり返っては困るでえい。俺も手伝ってやるうえ!』
『ありがとう、エリフュウリ。これで仕返しはなしーイになったわ』
『ついてるねえい! そんじゃあ合図を送るからそれに併せて掛け声を上げようぜえい!』
 せえーエの--二名はそれぞれの両前足で隕石を持ち上げた!
 するとどうでしょうか! 二名の力が大きすぎて隕石は成人体型四まで跳ね上がりましてな。二名は隕石を飛ばした反動で後ろに転んでじたばたするような体勢になったのです。そう、さっきマハルーン氏が困った足を空の方に向ける体勢ですよ。
 肝心の隕石はどうなったか? それは二階の廊下が見える一番真ん中の窓に硝子を割って入ってしまったよ!
『あなたのせいーイじゃないの? あたしのせいでエーえは済まなイーわ!』
『そんな事よりもどうにかならないのかうえ! 二名とも仰向けでは第三者に助けて貰う以外にないってえい! えっと銀河連合が来たら俺達は食われるけどうえ』
 助けに来る者が現われるかはわからない。何しろ彼等は板垣親子の喧嘩を観戦しに建物の五階に集まってる訳だ。さあ話は第五部に移ります。
 一旦ここで休憩を取ります」
 そう言えばこの落ち語りの冒頭は天文学者親子が空最強の生物を巡って喧嘩する者だったね。それがどうして隕石降ったり降ったり、『ホーラウス的転回』なんて物を思い付いたり付いたり、その隕石が二階に飛ばされたりするんだろうだろう?
「大分複線を回収しとるのう、イカラン」
「あのう、師匠。正直複線を回収するどころではない気がします。どうやって落ちを付ければいいか迷ってますが……」
「そんな物は気合いで十分じゃ」
 いやいや、師匠! 気合いで片付けられる状況じゃないですよですよ、この調子では!
「もう口を閉じろ、タコタルゾ! 今わしはあれこれ四回苦しんだ! 更に八回もの苦しみを味わっているんだぞ、わしは!」
「正直諦めようよ、イカラン。適当に終わらせれば--」
適当? それは逃げる事と等しい! ならばますます落ちを念入りにしなくちゃいけなくなったじゃないか! 覚悟しろ、師匠!」
「ほっほ、存分に苦しみ抜け! 落ち語り師は苦しみ抜いたものがどうであれ世に送り出す以上は足を抜く事は礼を失するからの。ここで全力を出しても叱りはせん。後で叱りはするけどの」
 それじゃあ余計に力を入れちゃう入れちゃう! 早くしてくれくれ、イカラン!
「急かすな、タコタルゾ! いつも通り次の部で思い付くから待ってろ!」
 だから誰に向かって伝えたんだよだよ、全く!

一兆年の夜 第四十六話 ニュートンが支配する世界で(三)

 と言う訳で別の部でカイ彦先生の落ち語り『エーテルホーラウ返し』の続きが聞けます聞けます。さあ、どんな語りになるかお楽しみ楽しみ。
「突然隕石が落ちてきたもんじゃから親子喧嘩の目撃者で一名だけエーテル論を専攻する古式神武出身の雌ミス・マハルーンが隕石がどんなものかと用心無しに近付くのじゃ。まあ近付くとはいえ隕石の周りは足場がいいものではない。特に周囲半径成人体型二まではまるで蒸し風呂みたいに熱いんじゃ。
『熱は平気じゃないーイわ。羊族たる者が無理しイーて熱々の隕石に近付くなんて無茶でね。特にあたしは雌の子。齢三十越えても雌の子。いくらマハルーンの亜種でも雌の子。果報を寝ながら待つようにーイ隕石が近付けルーう温度までよ。そこまで下がるーウのを待つしいーかないわね』
 雌はこうゆう時には雄よりも頼もしい。何て事は置いといてマハルーンはその間まで隕石が銀河連合とどう繋がるかを考察するのじゃ。ところがマハルーンにとって困る事は隕石に近付く生命が他にも一名居たのじゃ。その者は武内山羊族のエリフュウリ。ツル助と鶴次郎の親子喧嘩を見にきた野次者じゃ。
『おいおいうえ、どうして隕石に近付かねえい? 俺の勘では銀河連合はいないはずでえい』
『蒸し風呂みたいーイに熱いわよ、坊や。毛が燃えたらどうすルルー訳?』
『坊やとは礼を知らんお嬢さんだうえ! 俺の名前はエリフュウリでえい! 齢は今日で三十一でえい!』
『三十一? てっきり十八に見えた!』
『やいやい、年を聞かれてその反応はないだろお嬢さんでえい!』
『礼を知らないのはアーアあなたの方よーオ! 第一あたしと大しーイて変わらない三十過ぎの癖しねえ。<お嬢さん>呼ばわりーイなんて!』
『何? お嬢さんの年齢じゃないうえ! じゃ、じゃあ本当の年は--』
『雌に年を聞くのはエーテルの波を乱すのと同じイー行為よ!』
『エーテルうえ? 何それえい? 雌の名前うえ?』
『あら、知らなイーの? エーテルとは光を伝えルー物質よ。あたしは日々エーテルの研究をしイーているーウのよ』
『むむうえ? もしやうえ!』
『どうやら思い出したみたイーね!』
『<ホーラウ歪み公式>の事かうえ! かのホーラウスが流れ星と銀河連合発生件数から--』
『言い違いはしーイてないわよ! <エーテル>よ、<エーテル>! どこから……なんて言ってルーう間に湯気が少なあーアくなってきたわ!
 ひょっとしーイたらこの隕石にエーテルの波がわかルーかも!』
 マハルーンは近付く。湯気がさっきよりも五分の一までしか出ないから大分冷めたようだの。だからマハルーンは隕石のすぐ側まで近寄ると蹄程の面積はある隕石を両前足で持ち上げてのう……左後ろ足を滑らして地面に顎をぶつけてしもうた!
『イダダ、絶対折れてルーわ!』
『言った通りだろうえ?』
『何、にイーが言った通り?』
『<ホーラウ歪み公式>は必ずしも正しい訳では--』
『話が異なルーわ。そもそも何が言った通りなのか解らなくなったけど』
 エリフュウリを無視して先程の隕石を持ち上げようとしたら……今度は後ろにひっくり返ってしもうた! 四本足が空の方角に向いている以上は自力で体勢を戻したくても戻せないから困ったものじゃ。マハルーンはこんな時に助けを呼べば良かったものを何とあやつは論理学者の思考が勝ってしもうた!
『わかったアーわ! 今までの論理をひっくりイー返す方法。これぞ正しく--』
 かくして『エーテルホーラウ返し』が完成したのじゃ。
 愛でたし、愛でたし……と」
 うーん、これも何だかしっくり来ないような? というかどうしてそんな落ちに収めたのか聞きたい聞きたい。
「そうじゃの。それ以上思いつかなかったので尻切れの蜻蛉族にしてみたのじゃ」
「タコタルゾ……読まれてるぞ、心を!」
 そんなに単純なのなのか、僕は?
「そんな事よりもこんなのもはっきりって消化しきれない落ち語りです! 聞いてる者が納得しますか!」
「そうじゃのう、納得しないのう。だけど某はもうこれ以上思い付かんでのう。何ならイカランが続きをやってみるかの?」
 え? 収集付かなくなると今度は僕らに投げるおつもりですかですか?
「タコタルゾの思った通りです、師匠! いい加減にして下さい!
 師匠が始めた落ち語りをどうしてわしらに投げるのです? 『エーテルホーラウ返し』は--」
「これも『万有引力』の作用じゃ。『エーテルホーラウ返し』の続きを披露したまえ。
 なに、足の力を緩めるようにすれば自然と伝えたい事が思い付くぞ」
 先生……貝族である先生が僕ら種族の身体を知らないんですです。なのでそんな知ったような言葉は説得させる力を十分に発揮出来ないと思うのですがですが。
「ま、まあいいでしょう。わしは落ち語りの道を進む者。土壇場で対応出来なくて落ち語りをする資格はありません!
 よって始めましょう! まずはどの辺りから初めていいか悩むなあ」
 落ち語りは辛い道だ。語り部に本番で思う存分発揮する舞台俳優の性質を混ぜた以上は。僕は本番に結構強くないから僕に投げられる前に終わらせてくれくれ! 頼む、イカラン君!
「取り敢えずイカランは考え中での。まあ、次の部までには思い付くじゃろう」
 何だか今回は誰に向かって伝えているのかわからないわからない!

一兆年の夜 第四十六話 ニュートンが支配する世界で(二)

「『エーテルホーラウ返し』とはいわばかの歪み公式を記した新天神武の天体研究家ホーラウス・フォーディーが晩年に天動説をひっくり返すような予言を呟いた事でとある無名の絵本作家が作ったお話」
 聞いた事ないない! そもそもホーラウスはそんな予言をした石版なんて知らない知らない! 絶対カイ彦先生の--
「有無、その通りじゃタコタルゾ! これは某がついさっき思いついたお話じゃよ」
「え? いくら独り言を吹いてもそんなにあっさりと読まれるもん?」
「案外お前の考える事は単純だからな。師匠に読まれても不思議じゃないだろ?」
 そうだったのか!
「お喋りをさせて済まん。それじゃあ始めようか。
 このお話はとある天文学者板垣ツル助が父で同じく天文学者の板垣ツル次郎とあちこちに補強の木板を張った一階建て木造建築でお食事している時じゃ。ツル助は父に望遠鏡返しを期待しとったんじゃ。そこから親子喧嘩となって晴れて普通の家族並の心温まる雰囲気を醸し出したかったのじゃ。
『オイ、親父! <飯が大変美味しくないのでよろしいかと>何て言われてもなあ』
『事実だから仕方が無かろうかと。それにあまりにも美味しくなかろうなので』
 とうとう望遠鏡をひっくり返すどころか折ってしまったよ、縦にも横にも!
『折角の貧しい建物で真実であられない事を言っても仕方が無かろう。けれども、これも良い物でしょう』
『あの、親父。一応望遠鏡を折った事は謝るの?』
 負けるのが一番好きでないツル次郎に謝罪の言葉はない。それでも望遠鏡を元に形に戻す手羽先の力はあった。
『これで宜しいかな、ツル助?』
『え? あ、うん』
 二名の家族会話はまだまだこれからじゃ。第二部に移る」
 うーん。正直微々たる妙だ。そもそもそんな鳥が居るのか居るのか? 望遠鏡を縦にも横にも折った上に折った望遠鏡を元の形に戻す手羽先の力があるのは?
「あの、師匠!」
「何かの、イカラン」
「そもそも始まりからして意味が明らかではないかと。そのツル助とツル次郎は一体何者でしょうか?」
「徒翼空羽家。特にツル次郎は空族では空最強の生物なんて呼ばれとる負け知らずの鶴じゃ」
「設定は大事だな、タコタルゾ!」
 これはきつい落ち語りだ! 先生はたまにつまらないおち語りを僕達に聞かせるから叶わん叶わん!
「じゃが種を蒔くのは師の務めじゃ。けれどもまだ某は種を蒔いちゃいないぞ。それじゃあ第二部を開始するぞ。
 ツル助とツル次郎は今度、六階建ての煉瓦建築の五階で食事をとっていた。その時、ツル助は事もあろうにツル次郎を挑発しおってのう。
『お袋が死なれた時、親父はどうゆう気持ちでいらしたのかな?』
『ツル助よ。親への口の利かれ方は考え得るべきであろう。でないと窓の外から迫る隕石からお前を守ってはやらぬぞ!』
 偶然にも隕石は二名が居る食事部屋を通り過ぎて、反対側より成人地形およそ二の地点に落下--ラカ地点より半径成人体型十まで震度四の揺れを観測!
 そんな状況下でツル助は更に挑発。今度は事もあろうにツル次郎の着物の襟首を掴む行為にまで及んだ!
『俺を怒らようか、ツル助エ!』
『え? 何を?』
 その時、二名の様子を眺めていたであろう銀河連合鳩型と烏型が一斉に襲いかかりおった!
『銀河連合であられよう! ツル助は俺への礼無き態度の責任をおとりになって颯爽と倒しなされエ!』
 ケツを強烈な左翼で叩かれたから勢いよくツル助は二体の銀河連合に勝負を挑んだ。けれどもこの二体がえらい強かったのか、思った以上に翻弄されるツル助。それに業を煮やしたツル次郎はツル助の背後に立ってまたもやケツを叩きおった! 今度は二体の銀河連合どころか煉瓦の壁一層を壊すくらいの力で!
『やっぱ強うございます、親父』
『さすがであろう。俺は内心体中が冷えよう。あれほどの力であろうともお前は立ち上がり候。ならば空最強の生物はお前に譲り受ける』
 とうとうツル助は空最強の称号を獲得した。空最強を襲名したツル助は蹌踉けながらこう口にしおるのう。
『勝負とは最後まで平静に立たれる者でありましょう。なればこそ、この勝負は俺の負けでよろしいかと』
 何と空最強の負け宣言とはこれは真かのう? 一体全体何の為に銀河連合が現われたのかは明らかではないが、空最強の生物獲得の為に彼等は現われ、時代の最強を示すべく彼等は倒されたといえよう。
 正に『エーテルホーラウ返し』の如き展開じゃ! めでたしめでたし!」
 正直僕はようやく……苦しみから解き放たれた気分であったあった。
「師匠。エーテル全然関係がない。頼むから出だしでつまらない話は止めて下さい! 聞いているこっちが--」
「苦しい? 苦しいからこそ次の話が楽しくなる可能性が出てきたじゃろう! これはまだ『エーテルホーラウ返し』の前日談に過ぎん」
 え? まだあんのあんの? さっきのが『エーテルホーラウ返し』じゃなかったの?
「続きが聞きたい? 聞かせて進ぜよう。あの語りには別の側面があったのじゃ。今から語られるのがエーテルに関連した語りじゃ」
「先生。さっき思いついたんでしょ?」
「細かい事は別の部で話すかの?」

一兆年の夜 第四十六話 ニュートンが支配する世界で

 今日も仁徳島は騒がしい騒がしい。おっとすまんすまん、僕の名前から始めないと始めないと。僕はマキジャクノタコタルゾ。マキジャクノが名字でありますんでありますんで、呼ぶ場合はタコタルゾと呼んでくだせえ呼んでくだせえ。
「タコタルゾや。誰とお喋りしてるんだ?」
「落ち語りの練習ですです」
「複数足会話なんだからいい加減訛りを付けるのはやめとけ」
「ごめんさいイカラン君」
 ついでに僕は仁徳鮹族で現在齢二十八にして五の月と七日目になるピチピチの青年で御座います御座います。ついでに隣の言葉がきついおっさんは齢から--
「だから誰とお喋りしてるんだよ、タコタルゾ!」
「さっきも言ったじゃないか、イカラン君。落ち語りの練習だって」
「いいか、タコタルゾ! 齢二十八にして三の月と九日目だぞ、わしは!」
じ仁徳族士じゃないか、イカラン君よ」
「タコタルゾ。『同』という漢字が二回もかけるのは落ち語りではやるなよ。ついでにわしの名前はダダナガラノイカラン。仁徳烏賊族で通るタコタルゾの同門だ」
 さて今回僕らがやるのはやるのは、かの真正神武で話題沸騰中のセミジャック・ミーントが提唱する『万有引力』だ! そもそも短命で有名な蝉族の雄がどうして成虫になって僅かな期間で理論を確立出来たのか出来たのか?
「だから誰かが居る前で声を出すな、タコタルゾ!」
「相変らずきついな、イカラン君は」
 まあまあそんなこんなで僕らは応神海仁徳島南付近にある深部四へと帰ってゆくゆく。その中で師匠の居る三番目に大きな洞窟が僕ら二名の寝食を共にする場所へ向かうのだ向かうのだ。

 えっと第二区画で僕ら二名は『万有引力』について腰砕けをしていたしていた。
「引力なんて可愛い雌っ子を誘う為だけに使えたらいいのに!」
「それは出来ない相談だよ、イカラン君。もてない歴二十八の年の雄では--」
「五月蠅い、タコタルゾ! 君だってわしと同類だろ?」
「いや、鮹と烏賊では形が--」
「そっちじゃない! 『もてないという点では同類だろ』、と伝えている!」
「そんな二本の触腕で大袈裟に表現しなくていいだろ」
「あーあ、セミジャックが生きていたら引力講座にでも参加出来るのに」
「無理でしょう、イカラン君。そもそも海と陸では隔たりが大きいですし」
「それを突っ込むな、タコタルゾ。とにかくこれだけはわかる。『万有引力』は水の惑星とお月様が引っ張り合う力でくっつき合ってるのが証明されたんだよ。あんなに短い寿命で良く思いついたな」
「噂では林檎が木から落ちるのを参考にしたとか。本当なのか?」
「林檎が落ちるのは水の惑星に引力が働いている証拠。仮に働いていない場合だったら今頃は我等海洋種族が国を築いていただろう」
「そこは対抗意識を燃やさないでよ、イカラン君」
「仕方がないだろ! 引力の発見はどうして海洋種族が表舞台に出られないかを証明させる事になったんだ!
 わしは勝ち気な性格でよ。何事も誰かに勝つのを優先するんだ。だからこそ未だに海洋種族が陸上種族に生活水準の差で負けているのに我慢出来ない!」
「まあまあ、後ろ向きな話はこれくらいにしましょう。とにかくカバレイ・ジョンソン先生が確立した地動説の土台としてセミジャック・ミーントの『万有引力』が鏡付けとなった訳。それだけでも素晴らしい理論じゃないかな?」
「出来ればわしに雌っ子の一名でも引き寄せる力を授けて欲しかった」
 無理だって。ミーント先生は理論を構成する学者であって金銀を創造する者じゃないんだから。ましてやエーテルを操れる訳じゃないじゃない。どうしたって生命には無理な現象はたくさん……とか言ってる間に師匠がやってきた。
「また独り言か、タコタルゾや」
「落ち語りの練習をしてました、カイ彦先生!」
 紹介しますよ。齢四十九という高齢の方こそ僕ら二名の師匠である扶川カイ彦先生。ラテス貝族一の落ち語り師です。
「落ち語りをする貝というのはどうもしっくり来ない」
「それはわしの台詞です、師匠」
「これも引力の作用じゃ。イカランは『それはわしの台詞です』とまんまと伝えてしまったぞ」
「こじつけですよ、師匠。そんな事よりもさっさと--」
「それよりもタコタルゾは何か伝えたい事はあるかの? 『<万有引力>は全て真実でしょうか』とは伝えなくとも何かを--」
 さっきそれを伝えようとしたした! それ以外に何を伝えたいかわからないわからない!
「おやあ? 独り言を呟くかの? 確かに『万有引力』については真実かどうかはわからない。某達は落ち語りを生きる者じゃ。科学の為に生きる生命ではないからの。
 それにセミジャック・ミーントとかいう若造は成虫になって十の年より後に亡くなったから後の者が偉い苦労しておるのう」
「そりゃあミーント先生は蝉族の者です。蝉族は長生きでも三十を少し越える所までしか生きられません。そりゃあ僕達二名も短命な種族です。四十以上生きられるかわかったものじゃあありません。ですが、ミーント先生と異なり、子作りはもう完了してますので後は--」
「後ろ向きな話は止めるんだ、タコタルゾ! わしらは辛い話も笑い話にする碌でもない者達だぞ! 後ろ向きなんて心が冷えて生命が笑ってくれめえ!」
「無理に傾くのはよさんか、イカラン。馴れない事はするもんじゃない。ここは一つ某が見本を披露しようか!」
「ようやくやる気になったな、師匠!」
「何伝えるんだか、イカラン。その為に無理な傾きをしたんだろ?」
「足を止めろ、タコタルゾ! そろそろ師匠が落ち語りを披露するぞ!」
 始まる……扶川カイ彦先生自慢の--
「それじゃあ『エーテルホーラウ返し』を披露しよう」
 え? 何それ? 先生の得意な落ち語りは『はじめての戦い』じゃないのじゃないの? ってか何? 『エーテルホーラウ返し』って?

冬眠への道 老害篇

 どうも南アフリカでは比較的偉大なマンデラが死んで一方のジンバブエではかのドラゴンボールジジイが今も健在中である事に世の中の不合理さを感じるdarkvenuです。
 試作品始める前に『格付けの旅』が数行程更新されましたので読まれたい方はカテゴリ覧の<格付けの旅>または<白魔法の章>をクリックして下さい。
 早速ですが、一昨日思いついたアイデアを元にこんな試作品を書いてみました。

 乗り物は日々革新するのか?
 そんなのを昔の人達は考えたのだろうか? いや、考えつかないよな。
「何考えてんだよ、草野?」
「いや、何でも。それよりも余所見していいのか、真島?」
「いいっていいって。電車は線路を走るのが当たり前だろ? だったら赤信号への反応は早いっての」
「といっても俺達は駅員じゃないんだ。そう上手いこと止められる自信はないが」
 今では一般電車による通勤は日常茶飯事となった。車社会はもう終わった。排気ガスをふかす車の時代は終わったんだ。
「それにしても便利だよな、草野!」
「何が?」
「ほら、電車運転だよ。確かに駐車スペースには困るだろうけど危ない時には急停止をかけられたり、歩道に突っ込むというような事もないじゃないか。後はほら、車なんかよりも早く会社に到着出来るんだぜ!」
「確かに早いよな。車だとガソリンが必要だし、切れたらいちいちスタンドに行かないといけない不便さがあって困ったよな」
「だろ! 一般電車は便利だな。まあ当たり前の事をいまさら言う訳にはいかないけど」
 一般電車は便利……これも馴れたらすぐに隅に置かれる。電車社会の問題点が車よりも少ないのは事実だよ。交通事故は車より少ない。かつてのアメリカ社会を賑わすカーチェイスだって起きない。温暖化問題も資源エネルギー問題も起きない。万々歳……のように見える。
「どうした? ああ、熱問題で悩ますのか?」
「ああ。電車社会にも問題点はあるにはあるよな、真島?」
「そうだな。電気で動かす以上は感電死と隣り合わせだ。うっかり点検ミスしただけで配線が切れて通りかかった老夫婦に悲劇を起こす事故が昨日あっただろ?」
「あれは痛ましい。他には停電被害が毎年百件以上も起きている。電気の過剰消費は日々新たな発電機を設置するんだったな」
「俺に聞くなっての! とにかく発電所を作れば作る程、町はどんどんヒートアイランド化してゆくんだ! 温暖化どころじゃなくなるぞ、こんなに!」
 クラークの予言はこんな形で実現しようとしている。自分は電車社会でどう暮らしたらいいのか? 果たして電車社会の末路はどこへ向かうのか?
 人間は馬車を開発した。けれども馬糞問題が馬車社会を悩ます。そうしている内にフォードが車を開発した。けれども車は排気ガス問題を引き起こす。今度は一般電車を開発した。けれども一般電車はヒートアイランド問題を起こす。
 果たして自分達はこんな社会とどう向き合えばいいのだろうか……


 題名『草野正は星の死を垣間見る(仮)』の一部を紹介しました。かの伝説的なライトノベルであるハルヒみたいな題名ですが、こちらは自分が想像する近未来の末路を描くお話です。
 主人公草野正は倒産寸前の中小企業に働くサラリーマンです。彼は一般電車を持たず、旧時代の遺産である天然ガス使用の車で通勤します。当然、車を入れるスペースはなく、いつも会社の入口に止めて、警察の検問を受けます。
 とまあ主人公の紹介はここまでにして、そもそも一般電車とは何かを説明しますと普通の電車と同じように線路を通り、なおかつ電線を伝って動き、更には大きさも普通の電車やたまに道路を通る電車に比べてコンパクトな電車。設定では開発したのは日本の企業でここはとある電車企業と合併して一般人でも運転出来るように試行錯誤した結果、誕生し、僅か三十数年で車にとって代わりました。ちなみに三十数年とは希望的観測です。
 作中でも紹介した通り電車社会では様々な問題もあります。これは自分の想像した問題でしかありませんが。とにかく自分がどうしてこんな発想を思いついたかと説明しますとまあ自宅に帰る途中、バイクの五月蠅い音からいろいろ想像してゆく内に電車社会もありではないかと考え、今に至ります。とにかく電車社会が出来たからといっても暴走族や走り屋が消える事はありません。形を変えて奴等はまた生き残りますので注意して下さい。
 とにかくそんな未来が訪れるかどうかは知りませんが、以上で試作品の解説を終えます。

 第四十五話の解説に入ります。今回は予告通りバトル物になりました。
 主人公も予告通り戦いはしません。けれども強そうな奴を見つけたら片っ端から百獣型に挑ませてゆきます。とにかく彼がそんな事になったのは一重に数学者によくある挑戦する心が原因です。数学者は難問が出ては損得など構わずに挑戦して解けると損得に関わらず無邪気に喜び、挫折すると心身共に大きく傷つく大変困った連中です。主人公もまたそんなどうしようもない連中の一名です。
 とまあいろいろとありますが、「数学関係なくね?」と言ってるあなたは正しい。けれども、一方で的外れ。自分が物語を書く場合に於いて題名が付いた話は題名みたいに数学話を展開するとは限りません。寧ろ題名のように登場キャラ達が苦しむ姿や「フェルマーの最終定理」がどれほど難攻不落かを肉弾戦で表現してます。それに「フェルマーの最終定理」の答えは「ない」では零点。あれで解けると思っていたらとっくの昔にオイラーとかジェルマンとかは解いただろうが! どうしてワイルズの二度目の証明まで解けなかったかというのはそんな稚拙な答えじゃないからこそなんだよ!
 とまあどこかは知りませんが、「フェルマーの最終定理」の名誉にかけて感情を露にして申しわけありません。えっと第四十五話の解説を急ぎ足で終わらします。

 「老害関係なくね?」という質問は出来る限り受け付けないが、電車社会の障害は必ず車業界とか飛行機業界でしょう。何せアメリカの鉄道社会を衰退させたのはかの車企業ゼネラルモーターズですから。当然、奴等を黙らせない限りは実現は遠のくと自分は思っております。けれども実現したからといっても待ってるのは電車業界の老害化でしょう。彼等もまた圧力団体と化して次世代の交通社会の障害になります。その事は頭に入れましょう。
 さあて、じゃあ予定を載せますよ。

 十二月
 九日~十四日      第四十六話 ニュートンが支配する世界で 作成日間
 十六日~二十一日   第四十七話 質量は保存される       作成日間
 二十三日~二十八日  第四十八話 大陸移動の予兆       作成日間
 三十日~一月四日   第四十九話 燃える氷の怒火        作成日間

 メタンハイドレートが実用化するにはお隣三国とロシアが邪魔でしょうがない! 奴等が大人しくなれば少しは掘り起こす作業が円滑化すんのにな。
 そんじゃあ今日はここまでだ。気が向いたら例の奴を書くぞお!

一兆年の夜 第四十五話 フェルマーは笑う(終)

 七月九日午後十一時五十一分分五十三秒。
 コウモは老いの苦しみに悩まされる。今まで風に乗せて崖の上を飛ぶ事は苦にならなかった。ところが、部屋に閉じこもって数学の難問に挑戦してきたツケなのか、或は年齢と共に身体能力が衰えたのか、吹き付ける風に飛ばされてばかりで一向に目的の標高成人体型近くまで進まない。
(もうかこね訪りるなほかれぢ最後どの。我ほかな目ぢ証明せなくちほ! 果としち人族或ほ鬼族以外ぢのほかつ徒手空拳ぢ最強な百獣型ね勝ちる生命ご居るこだうこわ!
 うう、風ね吹こり続きるなほ身体ね……さりぼかれこ寒え。
 飛べやすくする為ね、よよ薄着ねしとなご目な逆わ見しとの。かうなるななろ息抜けね登山すれば良かったまのわ)
 何度風に吹き飛ばされても、壁にぶつかっても、新年の凍える寒さにくしゃみをしながらも老年は老いた身体を懸命に動かし、翼で風を調整してゆく!
(こんのなどっどろ我ほ鳥系ね生もれとろ良こっとこの? 我等蝙蝠族な翼ほ自力ぢ飛びるやうね出来たらん故ねえつま風ね頼ってぼかれ。よみとこうこな?
 死んだ両親よ唯一な姉た弟ね叱られ……よった、着いたざ!)
 コウモがようやく目的地に到着。そこではジャンズと百獣型の死闘は始まったばかりであった!

 七月十日午前零時零分零秒。
 ジャンズはまず『鎌鼬流』による力をあまり必要としない投げで先制する!
(自ろな流派ぢ攻みる。どごさりぢほ勝りんざ、ジャンズ)
 ところが百獣型はジャンズに投げ返した--『鎌鼬流』によく似た足を触れずにジャンズ自ら飛んでいるように!
 そんなのオオわかりきったことだアア--『鎌鼬流』を師の次にわかるジャンズは両前足を使った見事な受け身で顎への衝撃を和らげながら体勢を整える!
(今度ほ……い? かな動けほ--)
 ジャンズは初速こそ遅く見せる--ところが百獣型が動いた瞬間、一気に加速!
 百獣型は獅子による一本背負いで後頭部を地面にぶつける! ところが、百獣型はぶつかる前にジャンズの中腹に一発後ろ左足蹴りを与えて衝撃を抑えた!
「ブ! 脳にまでエエ衝撃を与えるウウつもりだ! 上手くウウ躱しやがってエエ!」
 攻撃を受けながらもなお先制し続けるジャンズ。今度はチイタマの戦い方を披露--当てると同時に素早く別の位置に足を運ぶ戦法!
(ジャンズな戦え方ごわからのえ。イタトシキ殿な技ほ当とれ前。たこらご相手ね幻わ見しる所ほ一見するた技巧的たえうこマンダリンさんね近え! きりだま今よる戦法ほ明ろこねチイタマど!
 もさこ今度ほ--)
 コウモが予想した通り、ジャンズはチイタマに近付く素速さで百獣型の懐に入ると同時に頭を右前足で掴む! 突然、力ごなしに遠投--コウモが居る場所の反対側に成人体型百を少し超える距離まで飛ばす!
「クマ吾はもっとオオ飛ばす! このくらいでエエくたばるなアアよ、百獣型アア!」
 ジャンズは百獣型が投げ飛ばされた場所へと駆けてゆく! それに続く形でコウモは翼を広げる!

 午前零時十五分三十八秒。
 ジャンズは目的の場所に着くものの--
「あのオオ野郎! どこオオ行きやがった!」
 そこにはたくさん木々があり、更には雪が降り積もる。そんな場所を雪踏みつける音を周囲に響かせるジャンズ。そして、背後に自然的でない大雪が落下する音に反応して振り返る!
 そこオオか--本当はジャンズの正面にある降り積もった雪に息を潜めていた!
 百獣型はジャンズが背後を見せるのを確認すると風を切る速度で飛んでゆく!
 しまったアア--ジャンズが振り返ると百獣型は右前足の人差し指で両眼を横切るように切り裂く!
 ジャンズは両眼を切られ、そこから光を捉える事は永遠に叶わなくなった!
(視力わ食ろうこ、百獣型!)
 両眼が死に、痛がるジャンズに赦しを容れることなく百獣型は内臓を多く所有する箇所へ次々と攻撃を加えてゆく! 右肋は複雑骨折。その結果、右肺に複数の骨が刺さり呼吸困難に陥る。そうなるとジャンズはただでさえ視力が使えない状態なのにそれに加えて重度の呼吸機能の低下。それは即ち動きが鈍くなる証。
 蹌踉めくジャンズに躊躇なく四本足による数十発以上の攻撃が外側及び内側を深刻にさせてゆく!
(よっぽれ百獣型ねほ勝ちのこっと! 後一歩たいうなね僅この隙一つぢ形成ご逆ね転ぶのんちだかもぢ強え、百獣型! まう止みるんど! ジャンズほまう戦っとじょなえこ! さり以上やらなくちま何り死ぬんど、ジャンズほ! さんのね痛みつけたいなこ、百獣型や! まうやめ……おり?
 もど戦いる? 折りなえこ、ジャンズ!)
 ジャンズの心はまだ折れない--計五十以上の打撃に耐えながらなおも反撃する。
 空振りされても反撃を繰り返し、なおも弾き飛ばされる。だが、何度でも立ち上がりまた反撃を繰り返す。彼はブルッダ・クロレットの魂も引き継ぐ! それは何度攻撃を受けようとも僅かな可能性を信じて前進する。
「はは……があ! はあはあ、どうしたアア? はあはあ、俺様はまだ、ぜはあぜはあ、戦え、るぞ。恐れて、るかアア? ぜえええぜえええ、怪我者ををを、恐怖するウウ、理由を、はっはっ、知りたアア、い」
 百獣型は一瞬恐れを抱くような素振りを見せた。ところが、その考えをすぐに置いたのかはわからない。が冷静な足運びでジャンズの懐に入る。そして体重いっぱいまで乗せた左前足の足刀をジャンズの眉間を狙った!
「お前も、油を、断った、なアアアアア!」
 頭突きで血を滲ませながらも百獣型の左前足指を拉げさせるジャンズ。百獣型が痛がる素振りを見せる。そんな様子を静かに見るジャンズ。それからようやく体勢を取り戻した百獣型を確認すると蹌踉めく足取りで前進してゆく--目の前の巨石に向かうように。
(えくろ左前足わ使いなくせてま勝ちる可能性ほ--)
 コウモの心配は的中する--ジャンズは蹌踉めく足で雪に滑り、体勢を崩してゆく!
 好機と踏んだかどうかは定かではない、が百獣型は組技をかけるべく最後の攻撃へ向かって突進!
 結果は……雪を限界まで潜らせる事で体勢を一気に戻したジャンズが組技を仕掛けた百獣型が懐に入ると同時に顎を右前足で掴み、近くにあった成人体型一はある巨石に後頭部を激突させた!
(きま……と?)
 百獣型の肉体は小刻みに震えはしたものの、二度と生命活動を再開する事はない。その時、両の銀眼が大きく光のを確認。コウモにとって何を意味するかはもう知る必要はない。今は徒手空拳で百獣型を倒したジャンズに近付く以外頭にないのだから。
「はは、ど、うだぁ……」
「ジャンズ! まう死ぬなこ? 死ぬ前ね教いちくれのいこ?
 『自然数の最終定理』ほ解きるなこ? 教いち、くれ」
 でき、るさァァ--ジャンズは前向きな言葉を遺して父の居る所へ旅立つ。
 ジャンズ・ベアケットを死に追いやったのは癌なのか? それとも度重なる百獣型の攻撃なのか? もうそれを知る術はなかった……。
(やうよく我ほ『自然数の最終定理』わ解く鍵たやろご見つかっと! されほ今もぢ試せとあらゆる物わ一つどけぢ勝負するのぢほのえ。互えね協力せのごろ前進せてゆく他のえ!
 ジャンズほされわ命がけぢ証明せと! 今度ほ我ま命がけぢ挑戦せなくちほ!)
 後世の世ではあるが、ジャンズは最後まで『自然数の最終定理』を解く事は叶わなかった。けれども彼は解く鍵を一つ、後世の数学者に与えた。それは関数。関数に関する論文を残りの余生に研究したコウモ・リックマンは死ぬ間際に証明する夢を見た……それはいつの時代かは定かとならないが、僅かな先である事は確かだった。





 ICイマジナリーセンチュリー百五十五年七月十日午前零時三十分七秒。

 第四十五話 フェルマーは笑う 完

 第四十六話 ニュートンが支配する世界で に続く……

一兆年の夜 第四十五話 フェルマーは笑う(七)

 ICイマジナリーセンチュリー百五十五年六月九十八日午後九時七分十八秒。

 場所は真正神武応神海付近仁徳島北仁徳市第二地区三番地真ん中より五番目
に大きな二階建ての宿舎。部屋は管理者室を除くと全部で十一部屋。二階の一号
室。
 中を覗くとそこは神と石版の山が積まれており、生命が住むには窮屈であった。玄
関と遂になる窓の下には机があり、そこには齢四十六にして十六日目になるクレイト
ス蝙蝠族の老年が必死に論理を展開してゆく。
(よはれ通ろなえこ! 『甘美の公式』わ改良せち『自然数の最終定理』ね挑んぢま
崩しぬこ! 済もなえざ、レオーネ・オーランド!
 お前さんご作れ上ぎと至高な公式ぢそい『自然数の最終定理』わ崩しぬ! おれほ
三角形な斜みかろさな下及べ斜みかろさな横わ足すた実数ご表しるたいう単純且
つ美わ追究せと素晴ろしえもの。されぢそえま打て崩しぬ難問!
 他ねほ天文学な発展ね貢献せと対数わ使って崩すこ? えよえよ、おれほ……誰
こご三回叩えたの?)
 老年数学者が扉を両翼で開けるとそこに現われたのは--
「管理者のオオ婆さんンンからアア聞いた。あんたがアア腰砕けなアア定理にイイ
一生をヲヲ懸けるウウ数学者コウモ・リックマンだな?」
 さな声ほジャンバさん、さんのほずほ--齢三十二にして八の月と十八日目にな
るクレイトス獅子族のジャンバ・ベアケットと瓜二つである事に皺をより多くするコウ
モ。
「親父のオオ名前だよ、それ。俺様はアアジャンズ。ジャンズ・べアケットだ!」
 コウモは死んだはずのジャンバを見ているように口を開けたまま頭が回らない。
「幻をヲヲ見させられているようなアア表情はアアやめてくれ! いくらいつウウ死ぬ
かわからないイイ年齢であってもオオ今からアア死んではアア困るんだから」
 だうゆう意味--ジャンズの言葉に両翼を広げて反応するコウモ。
「もしかして『今から死んでは困る』というウウ言葉をヲヲ尋ねるのか?」
「さうど。おれほどうゆう意味ど? どうしてさん……もさこ君ま--」
 後一のオオ月にイイ親父のオオ所にイイ行く--ジャンズは父ジャンバ同様治る
見込みのない病に冒された。
 ジャンバ・ベアッキャットの死因は膵臓癌--しかも末期。
 クレイトス峡谷でコウモと出会った時には既に余命宣告より一の週が経っていた。
本来なら死んでもおかしくない状況でコウモを助ける事が出来たのは生命の命の輝
きに他ならない。助けた後、彼は三の日より後に家族に看取られながらこの世を去っ
た。享年二十二。当時は幼すぎる故に死を悲しむ心は発達しなかったジャンズ。
 けれども--
「さうこ、もさこイタトシキ殿な唯一居と弟子ほ君どっとなこ!」
「あのじじいのオオ死がアア原因じゃない。マンダリン・レヴィルビーの遺族がアア肌
身離さずウウ身につけるウウ遺書をヲヲ読んだことでもない。偶然ンン助けたシラナ
ガシノチイタマからアア早口言葉のオオ説教を聞き続けたアアのもオオ原因じゃない
からな。ましてや同僚の猪イイが勝手にイイ休んでエエ勝手にイイあの世に行ったア
アことにイイ腹を立てたアア訳でも--」
 いええ、よよかしえ--コウモは理由のはっきりしない事には怒鳴り声を上げる!
 声が大きすぎた故に「五月蠅い、リックマンのジジイ」という応神蜘蛛族の管理者か
ら大声で注意された!
「そのお陰でエエ俺様はアア誰よりもオオ強いイイ獅子になれたアアんだぜ!
 今からアア百獣型をヲヲ倒してエエ名をヲヲ上げて--」
「止みるんど、ジャンズ! さんの言葉わ言っち死んでえっと者わ我ほ見ちきと!
 だうし返れ討てね遭うなご責な--」
「俺様はいつウウ死んでもおかしくないイイ命! あいつとオオ会わないならアア意
味イイのない人生イイを送らせるウウつもりか! その方がアア末期癌だってエエ俺
様をヲヲ長生きイイさせるだろう。
 しかしなあ、そんなのオオ納得いかないんだアア! 俺様はアア勝てるウウ要素を
ヲヲ多くウウ備えたんだ! 生命一倍イイ苦労だってエエ経験した! 膝をヲヲ折る
ウウ毎日イイだってエエ送った! 悲しみイイも喜びイイも分かちイイ合ったアア!
 百獣型にイイ最後はアア勝つ! 勝たずウウして人生をヲヲ終わらせてたまるか
ア!」
 『勝たずして人生は終われない』--その言葉はコウモにもう一度百獣型を倒す為
の強者捜しに火を点す。
 とはいえもう既に決めてあった……ジャンズ・リックマンだ。
「頼んどざ、ジャンズ。お前ほ強えんどら?」
 当たり前だアア--彼はコウモが見つけてきたどの生命よりも強い何かを放つ!
(されほ幻こま知りなえ。さりぢま我ほもう一度挑戦せよう!
 今度ま負きるやうぢおれぼ我ほ逃ぎなえ。もう長生けせとんどかろええだろう)
 それから一の月が経つ……新年を迎えてもなおクレイトス峡谷には雪が積もる。
プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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