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一兆年の夜 第四十四話 コペルニクス・ガリレオ・ケプラー(六)

 ICイマジナリーセンチュリー百四十五年十二月五日午後十一時零分三秒。

 場所は真正神武仁徳島西仁徳市第三地区六番地。二番目に大きな施設。三階に
ある隕石観察室。
 およそ四の年かけて超小型隕石の研究を行った者が椅子に座り、お茶を口に入れ
る。
(今日も外れか。歪みに関する研究はこの隕石のお陰で進だよな)
 齢三十七にして五の月と十七日目になる仁徳鴎族の老年はまたお茶を口に持って
ゆく。
(隕石の研究にっよ私は天動説では宇宙を示せな事が解った。何て罪深い雄だ。長
年培ってきた天動説を今年になって捨てなんて!
 そんな事はもいい。仮に捨てももっと外側ではきっと天動説に決っま! それっな地
動説との併用は可能だ。どちらが正しいとかそれでない。どちらも正しい事も証明し
ないと神々や先祖に申しわけない。
 それでどうして私が天動説を捨てる事になたか? それは--)
 彼はお茶の入ったお椀の真ん前にある百枚で収まった束の紙に翼をとった。題名
は『歪みにおける真の公式と楕円軌道を巡る真なる公転』。
 内容はより簡潔に説明するとホーラウスが示した歪み公式には正しくない部分が
あった。それを修正したのが地動説を主張するカバレイ・ジョンソン。修正する事で
二~三年もの誤差から二~五年もの誤差に変更。更には三つの国家でより緻密な
流れ星と銀河連合認知発生率を調査。その結果、誤差は年間平均一まで縮める事
が出来た。そう、歪みと流れ星と銀河連合は繋がっていた。
 なお、協力者はカバレイ・ジョンソンだけでなく、暦学者キンジャア・キッシェール、天
候学者鈴村きね吉、測量研究家田中ハム助、地質学者蘇我フク次。
 次に星の公転はどのように軌道するかを簡潔に説明する。それによると星は楕円
軌道に動く。完全な円では星の逆行運動を説明出来ない。それだけでなく、人族の
男の子が林檎を遠投した時、林檎が僅かに形を変えて移動するという説明が付かな
いからである。故に星は楕円に移動する。ただし、これはお日様にも適応される。そ
れは銀河内を回る時において。ではお日様は何を中心に回るのか? 中心点は更
に大きなお日様でもブラックホールでもないお日様。その星は北を極めし星でもある
のか? それとも周りを軌道する星座達なのか? いずれにせよ太陽系もまた楕円
軌道を行う。なお太陽系内にある惑星がお日様に近い惑星程速く公転するように太
陽系もまた中心太陽系に近い程速い速度で公転する。ただし、何故お日様の周りを
全生命が暮らす水の惑星を含めて軌道するのか? どんな力が働いて公転するの
かについては現時点では判明しない。
 協力者はカバレイ・ジョンソン、暦学者キンジャア・キッシェール、測量学者田中ハ
ム助、地質学者蘇我フク次、ブラックホール研究家トーン・ボー。
 最後は歪みの大きさと今後訪れるであろう未曾有の危機について簡潔な説明。こ
の部分だけは著者カモツ・カーモネーが超小型隕石を研究して得た事を纏めた物。
 それによると、歪みは一等星くらいの大きさなら矮小規模の銀河連合、新月規模な
ら小隊規模の銀河連合、三日月規模なら集落規模の銀河連合、半月規模なら大規
模な銀河連合、満月規模ならかつての旧国家神武を食らった規模の銀河連合、お日
様規模なら国中を覆う規模が迫る。
 そして、歪みは距離にもよるが大きさで説明するなら矮小、小隊、集落は平均二~
五年の誤差。半月なら五~七年の誤差。満月になると七~十三年の誤差。お日様
なら最小十三の年。最大四十二の年にもなる。なおこの誤差には例外がある事も後
付けで記す。
(超小型隕石は本当は小型なんかでない。あれは所々何かに喰わった後がある!
歪みだ! 歪みで喰わた箇所は何度も調った以上全部で六百六十六カ所。数字が
吉を呼ばなさすっぎ……待てよ!
 六百六十六? もしやまだでかいのが来っか? そんなはずは--)
 突然外が騒がしくなり始めた。カモツは最初、それはただの腰の砕けた騒ぎかと思
われた。けれども騒ぎは徐々に大きな唸りとなり、突然彼の背後にある反対側の扉
が叩き壊す勢いで開かれる!
 大変っし、大変っし--齢二十一にして九日目になるカモツの助手である応神鶏
族の青年コケッチ・コケラッタが顔面蒼白で現われた!
「その顔は……という事は歪みが発生しただな!」
「し、しかもスンゲエ規模っす!」
 行ってみる--白衣を纏いながらカモツはコケッチと共に屋上へと向かった!

 午後十一時十二分五十八秒。
 これは--カモツの全身に衝撃が走るような感覚に襲われた!
 現われたのはお日様よりも巨大な歪み--しかも一向に収まる気配がしない程の
長時間続く恐るべき物だった!
 カモツは『たまたま星の向きがそうなった』のだと一瞬思ったが、数分で却下。次に
『天気がやや曇っているからそうなった』と思考したが、それも数分で却下。最後には
このような結論になった。
「なあコケッチ君」
「あ、あっの? 何でっしょ?」
「この規模の場合はおよそ四十二の年から最大六百六十六の年まで続くっだよ。ま
あそこまで覚えていられる生命が果たしていっのかどかだな。こんな光景を見なくて
良かったよ。ジョンソン先生はもう目がお見えにならな状態だかな。
 でも私は見てしまった。そして、最も出したない結論へと導いてしまった。
 それは--」
「あ、あの? そんな事はお口にするべきじゃあないと思いまっし。い、今はもう遅い
ですので家に帰りまっさ、ね?」
 そのよだ--出したくない結論はこの後二度と彼の口から出る事はなかった。
 歪みは一の週経っても二の週過ぎて続く……収まる気配が無く、生命にとっては当
たり前の光景と化した。
 そんな歪みを見て三の週の後、カモツ・カーモネーは三十七の人生に幕を閉じた。
死因はホーラウスとは場所が異なるが、肺がん。彼は癌を隠し通しながら研究を続
けて突然破裂したと思われる。
 彼の後を追うようにカバレイ・ジョンソンは両眼が見えない状態で家族に看取られ
ながら息を引き取った。享年四十。死因はホーラウス、カモツと同じく癌。しかも彼は
胃がんを摘出しながらも同じ場所に再発して看病空しく想念の海に旅立つ。
 ホーラウスもカバレイもカモツも死に際にある結論に辿り着く……!





『百億光年の叫びは回る銀河の力に乗って大群を我々の住む惑星へと向ける! し
かも正確な位置を定めながら今度は近隣の太陽系がもたらす力にも乗る。乗った力
で更に近隣、更に近隣と来て我々が暮らす太陽系に入る! 今度は外惑星の力に
乗って大群を一挙に水の惑星まで運び、最後はほぼ全ての領域を呑み込んで我々
を食らい尽くす! この術から逃れる方法は一つ。それはそれまでに大群を倒せる
力を我々が持つしかない。そんな時間が我々にあるのか?』





 ICイマジナリーセンチュリー百四十六年三月十日午後十一時三十分五十五秒。

 第四十四話 コペルニクス・ガリレオ・ケプラー 完

 第四十五話 フェルマーは笑う に続く……

一兆年の夜 第四十四話 コペルニクス・ガリレオ・ケプラー(五)

 ICイマジナリーセンチュリー百四十四年十二月四日午後十一時七分九秒。

 場所は真正神武首都六影第三北地区音楽会館。五階建ての屋上。
 中では今も楽器の練習に励む生命が居る中で一名だけ建物の主旨とは異なる活
動を行う者が居た。
 彼の名前はカモツ・カーモネー。齢三十三にして五の月と十七日目になる仁徳鴎
族の中年だ。彼は下で響く音で緊張を和らげながら観測する。
(星々を眺めっとたまに不思議な光景に驚かさる。まずは北を極めし星の周りを軌道
する星々。あれっそジョンソン先生が太陽系公転説を唱えた訳もなる。月を追う毎に
位置を変っても結局は極めし星の周囲を軌道する。水の惑星がいくら自転しも最終
的には極めし星の周りを軌道すか。
 それにしも--)
 カモツは望遠鏡の向ける方角を『北を極めし星』から『木の惑星』に移す。
(何故だ? 木の惑星にはどうって四つの衛星がある? 我が水の惑星にはお月様
しかっなのに。更にはどうっし四つとも性質が異なるように見る?
 一つは火山噴火の耐えっなお月様。一つは我が水の惑星によく似た構造。一つは
灰の惑星に似る気が。最後は二つ目に説明した衛星のようであが、弱冠ながらアリ
スティッポス大陸に近いよな。
 いずれにしろ木の惑星は我が一族が長年培ってき天動説を覆しかねな威力を秘
める。『小は大の周りを軌道する』なんて認めっか? 水の惑星は本当にお日様の周
りを軌道すのか?
 何れにしろはっきりす事がある。円軌道ではない。円軌道では太陽系がどうして楕
円の形をしてのか? どうして銀河は完全な円でないのか?
 もしや何かに引き延ばされ……わけないな。恐らく物体が動いた時に引き延ばされ
た感じになっと同じ現象なのか? いずれせよ円軌道で説明出来ない星が逆走して
はまた通常走行す説明を付けには楕円軌道で惑星が動く以外には……あれは?
 隕石がこっちに……いか!)
 カモツは翼を広げて向かってくる隕石から避難--その瞬間、望遠鏡は粉々に砕
ける!
(危な! 幸い破片がこっちまで飛ばなって済だ。にしもこれでは今日の観測はここ
まで……ん?
 こは一体--)
 カモツは煙立ち込む超小型隕石に近付く。そこで目にした物は生命にとっては大
変有り難い物であった。
(素者でも金色に光る者に価値がある事は知って。これは正に宝だ。
 んでどうすべきか? 国に奉納すか? それともここで保管すっべか?
 いや--)
 代々隕石学の研究をしてきた故にカモツがとった行動は研究所に保管する事だっ
た。彼は近くにある学問施設に立ち寄るとすぐに研究班を要請し、超小型隕石の回
収に当たらせた!
(いくら小型でも触れば火傷をする。なら古式神武から輸入された防具を纏った傭兵
部隊に回収を任せっのが先決。後は研究者である私らが調査するのみ。久々に本
業をやれる機会が訪れっとは)
 超小型隕石が示すものは何か? 全生命の希望と成るか? それとも歪みが起こ
す災いの象徴なのか?
 カモツは今、運命の賽に翼でとろうとしてた……

一兆年の夜 第四十四話 コペルニクス・ガリレオ・ケプラー(四)

 ICイマジナリーセンチュリー百四十三年十二月三日午前十一時十七分十七秒。

 場所は真正神武仁徳島西仁徳市第三地区六番地。二番目に大きな研究施設。そ
の二階にある休憩室で二名の研究者が談話する。
 左側に座るのは齢二十九にして五の月と十六日目になる仁徳鴎族の青年で旧エ
ウク鴎族のカモツ・カーモネーは楕円を主張する。一方の右側に座る齢三十一にし
て十の月と二日目になる応神河馬族の中年カバレイ・ジョンソンは円を主張。
「円では星が逆走する説明が付かっな! 星は楕円軌道に回りっま!」
「それはないグバア! そんなのは綺麗な軌道にならないグバア! 星の動きが楕
円ではまるでブラックホールに『衝突してくれ』と言わんばかりグバア!」
 星がどのように動くかで議論を交わす--それは既に一の時が過ぎようとしてい
た。
「それにしてもジョンソン先生はよく生き延びてくった。あの状況だった私めなら骨に
なったな」
「思い出したくないことはいいグバア。あれから走馬燈で思いついたことを紙に書こう
とするグバア。だが、思い出せないグバア。夢日記はいつも付ける僕がこうしたこと
で思い出せずに中途半端な証明になるグバア」
 夢日記なか--カモツは夢日記を付けた事がなかった。
「現在も必死であの時どうやって証明したのかを辿るのだが、どうしても半端な物し
か紙に書けなくていつも塵を増やす毎日グバア。紙の節約をしなくてはいけない時期
なのにそれが出来ずにいつも--」
「ん? 待っよ! ひょっとするとしようした紙の量で何か新しい発見が見っかるので
はなか?」
 カモツは元々は隕石学者らしく、年間落ちてくる隕石が必要な物か、或は不必要な
物かを一族代々調査してきた。彼らしくカバレイに思い出す事よりも先に新発見を見
つける事を勧める。
「まさか完成しない証明を出してはそれを捨てる紙の量に規則性を見出せというの
グバア? いくらなんでもそこに思い出しそうな証明内容の足がかりを見出せるとは
思えないグバア!」
「確かに……けれっも私らの研究だて何の足がかりがあっのかはっきりしないもっだ
ろう? そんな物だよ、数学的っな道は」
 数学を含めあらゆる理の学問には全生命の生活に役立つのかはっきりしない。な
のにどうしてその分野の者達は追い求めるのか?
 それは--
「まあいいグバア! 真理を追究するのに得かそうでないかを考えるのは研究者で
はないグバア。僕はカーモネー先生の勧めることを試しにやってみるグバア」
「ありがた、ジョンソン先生。だからって対価交換として円軌道を認めなぞ」
「ムム! じゃ、じゃあこんな対価ならどうグバア! 実は思い出す過程で僕達の居
る太陽系にはある一定の距離で次の惑星を発見することが出来ると判明しグバア。
それはな--」
 カバレイはカモツにお日様と惑星との距離を表せる簡単な公式を譲った。
「この公式は果たして後の時代でも使えのか? 実際に距離を測れる訳でもないに」
「細かいことを気にするグバア。でも今の時代なら基準といては十分グバア。
 それに僕はもう腹が減って考えが回らない状態グバア」
 そうな--カモツは窓を見渡しながら正午を回った事に気付く。
「なあカーモネー先生グバア」
「何かね、ジョンソン先生?」
「天動説を今でも信じるのグバア?」
「本当だと証明さっるまではどちらの説にも信用は置かっな」
 そうグバア--カバレイの伯父カバダーノは地動説を主張した数少ない学者だ。
 カバレイもまた亡き伯父の後を継ぐように地動説の信者となった。一方のカモツは
代々天動説の信者。その為、天動説の正しさを証明しようとしては天動説の脆い部
分に直面し続ける。
「そんじゃあ僕は食堂に行くグバア。先生はどうするグバア?」
 そうだな--外を眺めるカモツ。
(お日様を見るのグバア? お日様は古くから光と熱を水の惑星に与えたグバア。古
くから中心に聳える星グバア。果たしてそれでも天動説を信じるつもりなのグバア?
 いや僕がこれ以上彼の道に口を挟む意味はないグバア。これから先は彼が進む
道グバア。一体その先には僕が復元しようと四苦八苦中の太陽系公転説やフォー
ディー爺さんの考案したフォーディーの公式より先をゆくのグバア?)
 舞台が古式神武から真正神武に移すように主役もまたカバレイからカモツへ移り
ゆく……ICイマジナリーセンチュリー百四十三年から百四十四年の第四の秋は今も蒸し暑い。

一兆年の夜 第四十四話 コペルニクス・ガリレオ・ケプラー(三)

 ICイマジナリーセンチュリー百四十二年十二月二日午後八時九分四十二秒。

 場所は古式神武応神諸島南西応神小島。土地は農作業に向かないが、中心部は
木々で覆われた小島。そこでは天体観測にはちょうど良い丘があった。そんな場所
で一名は骨になるまで食われ、一名は恐怖で身体を震わす!
(ぼ、ぼ、僕は齢二十七にして十の月と一日目になる応神河馬族の雄グバア。こ、こ、
こんなこことでおおびええるんだッグバア? 腰くだだけだだグバア!)
 彼の名前はカバレイ・ジョンソン。ここで天体観測をしに来たカバダーノ・ジョンソン
の甥に当たる。だが、目の前でカバダーノが骨になって衝撃を受けたのか、猫羊型
銀河連合にカバレイは背後を向けようと足を左右に揺らすばかり!
 彼は生き延びるよりもどうやって太陽系が回っているかの証明に頭を悩ませる!
(ど、どうせ今日ここに流れ星が二つ落ちたんだグバア! それももの凄い轟音を一
つと、もの凄い襲撃を一つ貰う形でグバア!
 伯父さんが死んだのは運がなかったで済むなら神様だって運がなかったって腰砕
けに見るようなものグバア! だ、だけど僕は運がないから伯父さんが死んだので
はないグバア! 新天神武で計算された歪みの計算式に誤りがあることに僕達は気
付かなかったから伯父さんが死んだグバア。全くホーラウスの爺さんはちゃんと計算
して欲しいグバア!
 も、もういいグバア! これから走馬燈の中で僕は太陽系が回る理由を述べてやる
グバア! それが出来たら潔くおじさんの元に旅立ってもいいグバア!
 で、でも覚悟が出来ないから叫び声あげて死ぬのかグバア! も、もう現実に戻る
のを諦めるグバア!)
 カバレイ・ジョンソンは己が武芸者でない事も、運が良くない事も解っていた。そし
て、覚悟の据わった生命でない為に直前で叫び声を上げる事も解っていた。それで
も彼は走馬燈の中で太陽系が水の惑星同様に回る事を証明しようと頭の回転を試
みる!
 そこで繰り広げる内容は学者としての難解な文字列と難解な数式。更にはここでは
書き尽くせない程の説明--例えば星が円軌道を描く事を説明するだけで裏表の
紙を使っても五枚必要な文字数--を一つの証明に費やす。
 そうして走馬燈時間で三の時かけてようやく水の惑星がお日様の周りを動く事を証
明した。これはちょうど天動説における水の惑星をお日様が回る事を証明できない
事を示し、なおかつ地動説の絶対性を確立させてゆく作業だ。そして、他の惑星に関
しては水の惑星が公転する事を証明した事を前提にした消去法で短い時間をかけ
てお日様の周りを動く事を証明。
 そうしてようやく太陽系が公転する事を証明開始。ここでカバレイは『メヒイスタ』で
教義と化した『貸借対照宇宙論』とホーラウス・フォーディーが遺した歪みに関する公
式をカバレイ独自の改良を加えるジョンソン型歪み公式を用いて中心の太陽系を計
算。その結果浮かび上がったのはブラックホール。そう、彼の考えではブラックホー
ルこそ銀河系におけるお日様だ。ブラックホールに関する資料はどれも実在を証明
する手(足)掛かりはない。それを主張したのは五代目藤原マス太。彼女のブラック
ホールに関する主張を疑う者は現在において存在しない。疑うとしたらエーテルと同
様に実在するのかどうかであった。
 話は太陽系が公転するという証明に移る。カバレイによるとブラックホールは見え
ない力で太陽系を動かし、まるで周りを軌道するように各太陽系を引っ張る。その力
が何なのかを証明する為に『貸借対照宇宙論』を用いる。一方でジョンソン型歪み公
式を用いて水の惑星が公転するよりも速く太陽系が公転する事を証明してゆく。
 そして後一歩という所で走馬燈に突然終りが来た--鼻の差まで猫羊型が接近し
ている事に気付いた!
「あわわわ、せせめて証明させてから近付いて--」
 カバレイの右脇腹に木製の長い棒で叩かれたような衝撃が走る--衝撃で左後ろ
に仰け反る!
「ヒデデ、遊んでいるのは目に見えるグバア。イデデデ……走ってきたグバア!」
 今度は反対側に頭突きを受け、丘から勢いよく落ちてゆく!
(マ、まるでブラックホールに呑み込まれる感じだグバア!
 とこ、ろでブラ、ク、ホォ……)
 転がり落ちる衝撃により彼は星々を動かす何か得体の知れない力を閃く! だが、
意識もまたブラックホールに吸い込まれたらどうなるか解らないのにそれを連想しな
がら奈落へと引き寄せられてゆく……ただ解るのは自分がまだ死んではならない命
運びである事実。
 彼は今、死ぬ運命になかった……。

一兆年の夜 第四十四話 コペルニクス・ガリレオ・ケプラー(二)

 ICイマジナリーセンチュリー百四十一年十二月一日午前一時十二分十二秒。

 場所は新天神武鬼ヶ島中央地区新武烈聖堂観測室。
 ホーラウスが流れ星と銀河連合発生の関連調査から十六の年が過ぎた。彼はもう
齢四十三にして七日目になった。彼は胃がんを患い、いつ死んでもおかしくない状況
だった。
(癌は自然死に於いては避けられない病気だし。別に細胞のせいにしたって構わな
い。だがい、俺はもう四十を過ぎたよい。妻子も居るし、孫も出来たばかり。いつ死ん
だっていい。老年は若い世代の為に往かねばならんし。
 それはいい。俺はその前に最後の観測を行わなければならない。それは後世の者
達に今後も歪みとそれから二の年以上後に訪れる流れ星と銀河連合の発生。俺が
居ない間でも引き継ぎを行わないと癌による死を受け入れづらい。出来るなら国家
間を超えてでも--)
 彼は仕事を辞められない故に満足な調査が出来なかった。特に新天神武内でしか
得られない統計は他二国でも通用出来る保証はない。例を挙げるなら前五の年まで
の年間流れ星総数及び銀河連合認知発生件数だろう。
 流れ星から説明する。ICイマジナリーセンチュリー百四十年六月三日から八月百二十三日まで
は百七件。前年比より四件増加。
 八月百二十四日から十二月一日までは百二件。前年比より五件減少。
 十二月二日からICイマジナリーセンチュリー百四十一年三月五日まで九十八件。前年比より四
件減少。
 三月六日から六月二日まで百一件。前年比より三件増加。
 六月三日から八月百二十三日まで百二件。前年比より一件増加。
 次に銀河連合認知発生件数を説明する。ICイマジナリーセンチュリー百四十年六月三日から八
月百二十三日までは百五件。前年比より三件増加。
 八月百二十四日から十二月一日までは百件。前年比より五件減少。
 十二月二日からICイマジナリーセンチュリー百四十一年三月五日まで九十九件。前年比より一
件減少。
 三月六日から六月二日まで百件。前年比より一件増加。
 六月三日から八月百二十三日まで百二件。前年比より二件増加。
 ほぼ繋がりとしては十分だった。そして、今年になる八月百二十四日から第四下半
期を除いた十一月三十日までの流れ星件数は七十三。銀河連合認知発生件数に
至っては七十一になる。
 なお歪みに関しては彼自身の独自の簡単な公式で示せば距離と実際の発生にお
いて生じる誤差を修正し、最終的な数で表される。
 それによれば、八の年より前に起こった歪み発生件数は百十二件。前年比より五
件減少。
 七の年より前なら百件。前年比より十二件減少。
 六の年より前なら九十八件。前年比より二件減少。
 五の年より前なら百二件。前年比より四件増加。
 四の年より前なら百二件。前年比と変化無し。
 それらはほぼ二の年より後の統計とずれた形でほぼ一致する。
 では、三の年より前と二の年より前と一の年より前はどうなるか。それぞれを単純
に示せば、百十五件と百十三件と百十九件となる。となれば、今年降った流れ星の
数は最終的には百十五件に近付くと見られる。
(ただし、これは我が新天神武のみで示された発生件数だい。本当の数は三杯なの
かい、或は星の円さで死角になった部分にも歪みが出てる可能性があるし。星の円
さは却って……円い?
 そう言えば俺は昔から我々の住む星野形について疑問に思うことがあったし! 
本当に星は円いのかい? 仮に円いと仮定するならば説明の付かない星々の移動
やいつまでも居続ける北を極めし星やそこを周り続ける星々は果たして……どうや
ら生き恥をまだまだ晒さねばなるまい)
 彼にはやりたい事がまたひとつ出来た。けれどもそれから一の週より後に眠るよう
にして星々の仲間入りを果たしてしまう……後進の者達に貴重な資料を遺したまま。
 それから四の年が過ぎようとしていた……舞台は新天神武から古式神武に移しな
がら。

一兆年の夜 第四十四話 コペルニクス・ガリレオ・ケプラー

 ICイマジナリーセンチュリー百三十七年十一月百十九日午前三時二分五秒。

 場所は新天神武鬼ヶ島中央地区新武烈聖堂観測室。
 一日はおよそ二十四時間で構成される。だが、二十四時間も活動する生命は稀で
ある。生命は元々分刻みで睡眠をとらなくてはならない。その為なのか年齢にもよる
が、生命が必要とされる睡眠時間はおよそ七の時。これより上回ったり、下回れば
身体への重荷が大きくなる。なお現在の生命の大半は活動時間が長く、睡眠をとる
のは一日の活動時間の終りと同時に行われる。故に上手く寝付けられない生命は
不眠症に悩まされる。
 それでは現在の生命活動時間の種類が朝方なのか夜型なのか。一般的には朝方
である。大抵朝六時に起き、仕事を始めるのがおよそ朝八時。九時間勤務を厳守す
るならば休憩一時間を追加してもおよそ夜六時に仕事が終り、就寝に至る時間はお
よそ夜十時となる。なお、この場合は睡眠時間が一の時程余計になる。けれども、
無意識下に入るには大体三十の分以上掛ける必要がある為、妥当。ただし、この時
間をきっちり守る生命はほぼ皆無で大抵は二の時以上もの残業に追われるか、ある
いは帰った後に家事や明日の準備作業に追われたり、やりたい趣味に没頭して就
寝に入る時間は大体夜十一時から深夜の二時くらいになる。
 長々と前置きを説明したが、今回出てくる生命は夜型の者。お日様が出るまで
星々を眺め、出る頃には仕事を終え、帰宅してゆく。彼の名前はホーラウス・フォー
ディー。齢二十七にして五日目になるエピクロ鷹族の青年だ。彼は現在、望遠鏡で
星々を眺めていた。
「いくら仕事とはいえい、どうして何の得にもならない太陽系の星々を観測しなくちゃ
ならない! あーあい、さっさとお日様は顔を出せばいいのにい!」
 彼は今就く仕事を快く思わない。それでも仕事は真面目にこなす。彼の功績こそ目
立つ物は見られないが、星は円軌道に動く事を示す論文の手助けになったり、星が
自転する事を証明する手助けになったりと調査報告の精度は高い。
 けれども彼はその事を快く思わず、いつも仕事に満足出来ずにいる。
「んい? 少しだがい、歪んだい? そういやこの頃い、新天神武各地で発生する流
れ星で思ったことがあるし。歪みは必ず銀河連合と何かしらの繋がりがあるんだし。
まあい、どこまで本当かは……どうやら俺の仕事はここまでだい。
 さあてい、さっさと片付けを済ますかい」
 素早く望遠鏡を元にあった場所へしまうと一の時もかけずに東地区にある一階建
て木造民家へと飛んで帰った--日輪と月光を背に掲げて!

 午前七時二十二分二十五秒。
 場所は鬼ヶ島東地区一階建て木造建築。東地区で三番目に小さな一階建ての家
にホーラウスは住む。彼は夜型故に朝型の者が出勤する様子を眺めては不平不満
を呟く毎日。
「あいつらにとってお日様は目覚めの光でも俺にとっては眠りの光だよい。あーあい、
どうして夜勤を選んだんだろうし、俺い」
 これもまた彼の職業における病であった--星々を眺める技術も気がつくと早朝
出勤する者がどのような表情であるかを眺める事に使われる。
(とまあ俺は眠たくて仕方ない。そろそろ報告書を書こうし。えっと……あれい?
 先月に比べて歪みの発生件数が増加して……おやい?
 仕事外ではあるけどい、歪み発生件数と流れ星発生件数がほぼ……一致し! 
間違いない! 一致しているし! 年月の誤差はい、あるけどい! こい、これはし!
まさに歪みは……流れ星発生件数と比例……もしやい、銀河連合の認知発生件数
も調べようい! えっと……あったい!
 こい、これは……資料が少なすぎるぞい! これじゃあどうしようもない!)
 ホーラウスは流れ星が銀河連合に繋がる事はわかっていた。だが、それを統計的
に証明する資料が今まで現われない事も知っていた。理由は時代が古すぎる事と、
かの藤原マス太の一族でさえ直感による調査を頼りにしたのが原因だ。
 だが、今の時代は三国統治による平和社会。昔よりも銀河連合に悩まされる時代
は過ぎ、平和による産物は生命に統計学の発展に繋げてゆく。
 それは、今以上に最新技術の情報が集めやすくなった事に起因。印刷技術の革
新が起こった事も関係する。従来のそのままの文字を大胆に書き写す時代から文字
一つ一つを組み合わせながら印刷してゆくという効率の高い物に取って代わった。こ
れがきっかけで本の生産個数は上昇し、大幅な値下げを産む事と成った。ちなみに
革新が起きたのはICイマジナリーセンチュリー百十年七月一日の古式神武にある雄略大陸大泊
瀬地方長谷町で始まり、現在に至る。
(流れ星……知れば知る程探したくなってきたぞい! ああーし、俺はとうとうやりた
いことを見つけたぞい!
 早速夜から行動開始!)
 ホーラウスはそれを探す為に有休届を出そうと決意する。

格付けの旅 宇宙は危険が一杯 インフレに御注意を

 超宇宙……それは創造主の創造主による創造主の為に作られし都合の良い宇宙。その中で主人公は創造主の化身であり、創造主の主張を通す為にあたかも正しいように環の中心を形作る。
「全くなんて理不尽な奴だよ、主人公は!」
「同感。アルッパーにしては珍しく気が合うじゃないか」
 ってお前だろ--アルッパーは脇役故に主人公役を務めるデュアンの耳が潰れんばかりの声で突っ込む!
「デュアンロールがなかったら俺の耳は潰れていた」
「それは主人公補正だろ! テメエだけずるいぞ!」
 主人公と脇役を隔てるモノ……それは主人公優越権。主人公優越権--別名主人公補正--とは主人公が必ず正しい事及び必ず無事でいられる権利。かの幕の内弁当がウォーリーを探せを飛べなくする為にひたすら効いているのかわからない打撃を数発も与えた事が記憶に新しい。この現象は創ちゃんのパンツファンを減らす原因の一つにもなった主人公補正。他には無敵の右手を持つ当麻・カノウが中身すら怪しい説教とセットでどんなチートそうな相手も倒してしまうという理不尽な主人公補正。三つ目の例は悪質極まるが、モビルS戦闘でキラ吉影が獅子との一騎打ちで獅子による自爆攻撃をコクピット剥き出しで受けたにも関わらずジャンク屋の証言によると直後にセーフティーシャッターが発動。原形を留めたままピンクの所に運ばれてゆく。
 とにかく主人公補正は創造主の主張を通したいが為に存在する。これほどまで悪質極まる補正は超宇宙に例え魅力を感じても主人公への魅力を感じさせないようにする。
「だってさ、アルッパー」
「お前の事だろ、二本足!」
 そんな主人公も時には座を追われる瞬間があった……主役交代。主に相原コージと渡哲也がタイトルが変わる度に主役交代したり、モンキッキがスペックにタイトル全てを奪われたり、ケンシロウが伊能舞に主役を奪われたり、工藤シンが夜神月に主役を奪われたりする現象。蛇足ではあるが、葛城宗一郎がほぼラスボスになって代わりに可哀想な奴が主人公になるという例もある。
 なお主役交代は主役のみならず感情移入し続けた者達に精神的なダメージを与える以上、超宇宙全体の評価を大きく覆す危険性が高い。
「俺を主役にしろ! 俺はこう見えてお前の攻撃を受けきったんだからよ!」
「断る。それに今回俺達は主人公補正とかそんな事をダベリに来たんじゃない! かのインフレ界の帝王が棲みつく大宇宙に侵入してるんだぞ!」
 デュアンとアルッパーは現在104超宇宙蛇の目宇宙海にあるエントロピーが流れ込んでゆく大宇宙……カカL型宇宙へと不法侵入していた。

 カカL型宇宙……それはかの有名なアドベンチャー兼バトル物で有名な超宇宙を複製した戦闘力の戦闘力による戦闘力が支配する宇宙。
「またありきたりな説明だぞ、二本足」
「仕方ないだろ? 作者の引き出しの少なさは有名過ぎるんだからさ。まあ話は置いといて」
 なお宇宙にも保護制度はある。それは他の宇宙の物が侵入した際にそれらが猛威を振るわないように赤子以下まで力を弱めるようにさせる。例えばアスクレピオスを宿す邪眼使いと電気使いのコンビが金髪とトンガリ頭のコンビが居る世界に入ってもチートな力を振るう事が叶わず、馬鹿の子分に喧嘩負けするように設定される事。もう一つは時を止める幽霊を宿す不良のレッテルを貼られたやれば出来る少年もやさぐれたおっさん空手家の世界に入っても幽霊共々ストーカーの思い人兼ひめ様の嫁をレイプする力を発揮出来ずに下される事。他には機動戦士を駆るニュータイプの少年も初登場時はトタン装甲で温度調整もままならないロボット相手に奇策全てを思いつかずに下される事。
「んん? それじゃあお前が俺と初めて会ったときはどうして力を振るう事が出来るんだよ!」
「それは同じ世界観だからだ。他には『交差宇宙』という宇宙同士が協定を結んで誕生した宇宙だって力を振るえる」
 交差宇宙(クロスオーバー宇宙)……それは夢の競演が実現した宇宙。宇宙同士が合わさる事で設定上実現しないはずの宇宙同士が競演を果たす。例えば人間以外抹殺するツンデレエネルギーを纏ったロボットが主役の宇宙と人が作りし神を体現した鉄の巨人が主役の宇宙と禿げる前のハゲが命を込めて作り上げた初めてのリアルロボット物の宇宙が共に同じ宇宙で設定された力を振るう。ここでは宇宙同士が組み合わさる上で様々な協定が結ばれ、なおかつ傍若無人に振る舞わないように力を調整される。とはいえたまに偏りがちな創造主が居れば特定の宇宙出身にだけ優遇した設定にして魅力を失う事もある。なお協定に参加しない宇宙出身者が勝手にその宇宙に入っても他の宇宙同様に修理費10で収まるロボットや二刀流使いのツンデレの可愛い妹相手にも負ける力に成り下がる。
 ただし、デュアンとアルッパーは空気の読めない存在だから交差宇宙では好きなだけ力を振るう。ただし、その場合は交差宇宙自ら彼等が侵入しないように逃げてゆく。
「それなら納得だな。俺だって怪獣王が居る世界にうっかり入って先祖を台無しにするような事になってしまったら大変だからな」
「やっぱりお前は人間じゃねえのか? そんな考えは普通鯨はしない……だろ?
 どうやら現われたなあ、敵さんがよ!」
 これは二本足だ--アルッパーは目の前で殺気を漂わす機械仕掛けの二個艦隊の乗組員が皆人間である事を察知した!
「待て、アルッパー! 今零詠唱で俺達二体アナライズしたが、どうやら戦闘力は『1』らしいぞ!」
 はあ--見当違いな事を言われたと勘づくアルッパーはそのまま一番前にある灰色の巡洋艦目掛けて突進を仕掛ける!
 ところがいくら前進しても一向に届かない--アルッパーにとっては巡洋艦十隻分の距離は一秒もかからない。
(やっぱりな! この宇宙の重力が歪んでいるのではない。俺達が戦闘力『5』のおっさん以下まで弱くなってるんだ! なのにもうあいつら--)
 戦闘力だけでなく思考速度まで低下している事に気付く二体--既に先頭を配置する三隻からロケット弾合計九発が秒速九千メートルで思考する間もなくアルッパーに直撃!
「ガアアア! こんなへなちょこが痛いなんて! 速く感じるけど俺達が--」
「ああ逃げるぞ、アルッパー! 戦闘力『1』じゃあ、さすがに赤ちゃんにだって負ける!」
 うおおおお--アルッパーは必死で二個艦隊からの脱出を試みる!
 だが速度が宇宙に従う以上、ものの一分では最大速度まで届かない。そうしている内に先頭の三隻から秒速八千メートルで電気の網が放射--瞬く間にアルッパーは捕獲された!
「じゃあな、アルッパー! 俺達は案外短い付き合いだったねえ!」
 二本足の分際ガアアア--デュアンに向けられた叫びは当の本人どころか、目の半径にも届かない。
 一方でアルッパーを囮にする事で脱出したデュアンは懐からB5ノートを取り出す。
(へへ、こりゃあ大変だな。まああいつを囮にしたのは自分だけ助かる為じゃない。あの艦がどこに向かっているか調べないとな。確かに戦闘力も思考も単細胞と変わらんくらい劣っている。だけど、俺達は神様を平気で殺せる奴等だ。数日と経たないうちにSS人3まで力を上げられるさ。
 まあそれまではアルッパーに付けておいた追尾魔法が頼りだ……あれ? 圏外?)
 デュアンは思考速度がそこまで衰えている事に気付き、呆然とする。
(……近くにある第三太陽系に向かおう。そこなら居場所がわかるやもしれんし)
 デュアンは経典を回して、一日掛けて光の速度まで上げてゆく--そして自らの重量をゼロにする魔法を掛けて光の速度で目的の第三太陽系まで一の週かけて飛ぶ!

 ベジタブル太陽系……それはかのインフレで有名なA・トリヤM超宇宙の世界観を示した太陽系。そこに出てくる知的生命体はどれも荒唐無稽な者達ばかり。
 例えばペンギン娘が村長の村ではドクタースランプに陥った博士が可愛いバラライカちゃんを作ってドタバタ劇を繰り広げたり、カプセルコーポレーションを家に持つお転婆娘が偶然戦闘民族でご飯粒付けた爺さんに育てられた西遊記の主人公と出会う事で七つを集めたら願いが叶う玉探しの旅に出るようになったり、或は銀河パトロールの男がタイムマシンを作ろうとしたジジイの所に不時着した事で宇宙人を巡る騒動物が始まったりなど様々だ。
 そのような一見混沌とした太陽系に空気の読めない一体の格付士が到着する。
(もう到着したのか? 光の速度に追いつけないな、思考が。
 ってそんな事よりもさっさと第三惑星に向かわないと……うーん、こうだったっけ?
 よし、計測開始!)
 デュアンの戦闘力は現在も『1』だが、肌身離さず身につける経典『デュアンロール』と持ち前の『零秒詠唱』である程度の能力低下をカバーする。そこから導かれた答えは第三惑星<アラレ>まで光の速度では一日かかる事が判明。
(一日……重力がそこまで光をねじ曲げるのか? それはそうと行かないとならない、がその前にやらねばならないのはここが物理太陽系なのか? それとも魔術太陽系なのか? はたまた数的太陽系なのか?)
 物理太陽系ならエーテルは否定される。魔術太陽系なら電波は否定される。数的太陽系ならヒッグスが否定される。そのように三つの太陽系は構成される。
 デュアンロールの導き出した結果は……魔術太陽系。
(エーテルの安定は出来る……俺向きの太陽系だ! えっと、格付けしよう)
 A4ノートにベジタリアン太陽系の事を記すと懐にしまって第三惑星<アラレ>へと飛んでゆく!

 <アラレ>に着いたデュアンはデュアンロールを用いて大気圏を突入し、ちょうど北半球にある四季折々の島国に着陸。そこではヒマラヤの戦士を驚愕させた巨大なスカイツリーが覗ける位置にあった。
(さあて、俺はさっさと力を取り戻す旅に出ないと。まずは適当なチンピラに喧嘩を吹っ掛けよう)
 そう考える内にターゲットとなる適当なチンピラ--チャイナマフィアの風貌をした--四人が背後からデュアンを見つける。
「よお、兄ちゃん。その格好からしてお前はアラブから来たんかい?」
「ん? ああ、誰だあんたら?」
「質問には答えないと痛い目見んぞ、ターバンの兄ちゃんよお」
「んな訳ねえよ。俺は別の宇宙から来たんだ。あんたら風に言えば宇宙人だ」
「宇宙人? どこをどう見たらそんな発想を思いつくかねえ?」
 笑う四人のチンピラに釣られるようにデュアンも笑う。
「ってお前が笑うなよ! 自分の頭がいかれてんのがわからんのか?」
 ああ、いかれてる--先頭にいるサングラスをかけたチンピラを右手でいきなり殴るデュアン!
「ッ! て、めえ! よくもやりやがったな!」
「早速ナ……じゃなくてバトルアックスなんか出しやがる! 他三人は弓矢と倭刀と……光線銃!
 随分混沌としたチンピラだな」
「減らず口はそこまでにしようじゃないか、自称宇宙人の兄ちゃんよお」
「俺をブン殴った事をあの世で後悔するんだなあ」
 デュアンは早速四人の戦闘力をアナライズした。結果は四人とも戦闘力『4』。
「お前らは情けない連中だよ。たかが農夫にも劣るなんて--」
 デュアンは左頬を掠める。光線銃による威嚇だった。
「次は外さんぞ、兄ちゃんよお」
「まいったなあ、こりゃあ。ここまで弱いと本気で情けない。そんじゃあ早速……逃げる!」
 やや斜め後ろを向けて走るデュアンを追う四人。彼等は怒号を浴びせながらもデュアンとの距離を縮めてゆく!
「足もそこまで衰えては仕方ないよな。というか俺の持ち味は--」
「あ、兄貴! あ、あいつの手が赤く光って--」
「俺は魔術師だ! 受けろ、ファイヤーボールを!」
 火系低級魔法を四人に向かって放つデュアン!
「アヂイ! てめえ、魔法使いだったのか!」
「こんなへなちょこで俺達を倒せると……ウワヂイ!」
「あ、あいつ……走りながら何発も撃ってる! アクティブな魔術師なんて聞いたことねえ!」
「あぢいいよおおお! このままじゃ焼け死んでしまう!」
 初めから命を取りに来たんだ、覚悟くらいしろっての--燃えさかる炎に格闘する四人のチンピラに追い打ちをかけるように殴る蹴るといった攻撃をするデュアン!
 昏倒した事を確認すると水系低級拡散魔法を放って火を消す。
(多分……死んでは居ないけどチンピラである以上は心配の余地無し。そんじゃあ戦闘力を測るか)
 結果は……戦闘力『2』に上昇した。
(たったの『2』かよ! RPGみたいにマラソンしなくちぃけねえんか、こりゃ)
 こうしてデュアンはインフレ宇宙で日々武者修行を始める……

 島国より東にある海洋を横断して北の大陸。その中心部に位置する国のある白い建物では……
 真剣な眼差しでデュアンが映る映像に釘付けになる位の高い一人の白人男性が思案をしていた。
「如何なさいましょうか、プレジデント!」
「奴がアラブ出身者である可能性は低い。その証拠に奇妙な経典を身につけている……と」
「奴に関してわかる事は魔法使いである事と、生身で大気圏突入した事くらいでしょう。今のところ力を隠している可能性は高いでしょうが、要注意すべき存在。
 『Zランク戦士』をぶつけましょうか?」
「『Zランク戦士』……戦闘力万~億以上でなおかつ全員舞空術会得者の集団か。いくら何でもあの男には分が悪い。万の相手ですぐに力尽きるだろう」
 んん--橙色をした片眼鏡を左眼に着ける黒服の男は表情を強張らせる。
「どうしたかね?」
「どうやら例の男の戦闘力が……『3』に上がりました」
「何? いくらサタン合衆国からクリリンまでの距離があるとはいえ僅か一日で『3』に上昇するなんて!」
「奴は適当なチンピラを倒して強くなってる模様。どうやら私めが行くべきでしょうな。奴が<クウラ>を討ち滅ぼせる存在足り得るかどうかを、よ」
 片眼鏡の男は気を高ぶらせる!
「期待しておるぞ、戦闘力『5』のおっさん……」
 なお例の戦闘力『5』のおっさんは二日後にデュアンと出会うなり、僅か一分で倒された。
(情報は聞いた。ここには『Zランク戦士』とかいう集団が居る事を。それにここの連中はえっと惑星<クウラ>を侵略しようとしている事も聞いた。んでそいつらが戦争を仕掛ける惑星とアルッパーを連れ去った連中が同じ連中なのかどうかだよ。
 とにかく俺が今やるべきは……只ひたすら戦闘力を上げるしかねえ!)
 惑星<アラレ>は今日も天下一舞踏会で大忙しであった……


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冬眠への道 虚構篇

 どうもかのUK氏みたく圧力に屈するのが目に見えてますdarkvernuです。
 だからといって今回も時事ネタはやりたいけどやらないよ。だって冬眠への道ですから。
 では試作品をどうぞ。

 世の中は空想。んなわけないでしょ! 空想だったらドキ胸なことから授業中のお喋りやらそんなものだって全て空想になるじゃないの? そうでしょう!
 こんな、こんなにも馬鹿げた事実を突きつけられてあたしはね……
「認めないわよ! どこの王子か知らないけどそんなデタラメ話なんて!」
「姉ちゃん、もう諦めようよ。ファンタジーなこの世界が僕らの本当の世界だからさ」
 そもそも惑星『ファーストボーン』という名前……どこの小説を題材にしてるのよ!
 そんなのはどうでもいいのよ! 周りあるのは木! いたるところに木が一杯! 自然保護団体ホイホイの木で一杯よ!
「いつまで現実逃避している、君?」
「現実逃避? あたしの視界には現実逃避で一杯なんだけど。大体ここには電波はないの?」
「姉ちゃん。スマホは繋がらないよ。『圏外』って表示されてるし」
 わかってるわよ! 繋がったらそれはそれで恐いし!
「質問に答えるんだ、君。いつまで現実逃避をするのだ?」
「さっき答えたでしょう? こんな世界に飛ばされていまさら元居た世界を空想だと認める気にならないわよ」
「それでもあれは空想だ。あれこそ我がライブ王国の仇敵セティスジュ帝国が起こした結界魔法だからな」
「魔法--それよ! あたしは魔法なんてマジシャンの手品と同じく種があると思ってるのよ! 見せなさいよ、種を!」
「姉ちゃん。そんなのはないよ。あったらとっくに……」
「……」
 だんまりなんてずるいよ。ライブ王国のラスター・ウィルツェン王子様は金髪で髪は短く、顔は西洋美人らしくうっとりさせてしかも声まであたしをうっとりさせるわ。そんなのは後よ。とにかく才色兼備と思われるイケメン王子様を前にあたしは真実を認めないつもりなの!
 認めたら今までお父さんやお母さん、それに叔父さん伯母さん伯父さんに父方のお婆さん、お爺さん、母方のお爺さん、お婆さんまでの思い出さえ空想になってしまう。むかつく花沢昭江や嶋木辰吉に片思いの鈴木蛇具羅無君や後輩の日向終ちゃんまでの思い出。さらには好きな教科数学や日本史A、嫌いな教科生物や英語まで全てが思い出なの? 修学旅行先の試される大地に学園祭のお化け屋敷まで全部全部空想になってしまう!
「姉ちゃん。もう意地張るのはやめに……」
「しないわよ、京介!
 じゃあ王子様! 聞くけどここにはエーテルはあるの? ヒッグスはあるの? 電波はあるの?」
「エーテルは充ち満ちている。ヒッグスは現在研究中。電波はかの物理学者オエンシャトエインによって否定された。これでいいか、美しき赤髪の女性、赤羽涼花よ」
 あたいの名前は赤羽涼花。現在十八になろうとしている。こう見えて箱舟高校三年五組出席番号二十一番。所属する倶楽部は剣術部。生徒会風紀委員長を務め、早朝に通う冥惨亜流専門の道場で黒帯にして師範級を貰う程の功夫はあるよ。
 んで後ろで引っ込み思案なのがあたいの弟である赤羽京介。現在十六になったばかりよ。箱舟高校一年一組出席番号二番。所属する倶楽部は脳電波部。バイト先は時給三百円という破格の安さで有名な霊とかの相談所。正直姉として恥ずかしいのよ。
 そんなあたし達姉弟は現実を突きつけられた子羊となって受け入れるか悩んでいる所なのよ。この世界『ファーストボーン』を現実として受け止められるのかを……


 取り敢えず近々どこかで一週間に一回のペースで書く予定の『魁と赤い髪に誓って(仮)』です。内容は主人公である卒業間近の少女赤羽涼花が弟でヘタレな少年赤羽京介と共に異世界というよりも本当の世界に飛んでライブ王国の王子ラスター・ウィルツェンと共に迫り来るセティスジュ帝国の刺客を倒してゆくお話。その序章部分を書いてみました。まあこの物語はバリバリのRPG物です。だがネタバレを承知で敢えて言いますが、額面通りに内容を読み取らないように! とにかく出てくる単語に注意しながら読むと先の展開がどうゆう物になるかを想像出来るはずだ。とまあここまでにしときます。
 このお話を作る場合はとにかくどちらを選んでも道は続くように作るつもりです。基本として一兆年の夜や格付けの旅及びそれ以外の物語群と違って主人公側が本当に正しいんだというような物語構成はしないつもりです。何たってそれらとは世界体型が大きく違いますから。
 なおこの物語に出てくる登場人物のモデルはいます。外見なら主人公赤羽涼花はかの絶望エンドで有名なモノクマが出るゲームの前日談においてキーとなるあのキャラ。弟京介の場合は某超能力青春物語に出てくる詐欺師に利用される最強の中学生超能力者。王子ラスターはそれなんてエロゲなタイトル名のRPGの二作目に出てくるライバルキャラ。それくらいにしときます。
 とりあえずこの物語はRPGっぽいので涼花の仲間は京介やラスター以外にもう一人出てきます。それはまだ明かしません。
 以上で試作品の解説を終えたいと思います。

 第四十三話の解説を行います。正直言いますと自分でもこの話の出来はいまいちだと認識します。とにかく方向性が曖昧な上に結局何がしたかったのと思えてくる内容になりました。自分で言うのも何ですが。そんな訳で四十三話の出来は普段から自画自賛しやすい物書きでも書いててしっくりこない。すなわち誰が読んでもしっくりこないのが普通だと自分は思います。
 とまあいきなりネガティブな方向から解説を始めて申しわけありません。まあ簡単に説明するとしたら党が解党の危機に立たされて困っている主人公が他の弱小政党との協力を取り付けようと緊急招集で会う為に船に乗ったら銀河連合が来て……その後はまあ読んでみたらわかります。正直最近は銀河連合さんがとってつけたように出てきて悩みます。四十三話の内容を遠目で見ればもう奴等入らないんじゃないのかとつくづく思う次第です(辛)。初期はかなり鬼畜だったのに(苦)。
 さてと。今話では自分が大好きな政治ネタを前話に続いてこれでもかというくらい詰め込んだよ。まあたった五パートの間にだけどね(笑)。政治・経済が苦手な人でもこれを機に衆議院優越やら参議院の半数改選やらを覚えてくれたら有り難いなあと思うけど、まあ拒否反応が多いのが事実だよ。ダグラムなんて大人にならないと面白さを理解出来ないものだしね。しょうがないさ、政治ネタは。何たって子供や興味を湧かない人にとては情けない大人の姿を見せられて喜べる訳も興味を示せる訳もない。おっとこれ以上はネタバレになるので自分が言いたい事は四十三話を最後まで読むとわかります。ただし、説教臭いので注意して下さい。
 何だかんだ解説しながらも自分は四十三話を誉めてるじゃないかと思う方。しょうがないじゃないですか。物書きだって子供を誉めるように話を誉めたがる性格ですから。
 と気持ち悪い所はここまでにして、第四十三話の解説を終えたいと思います。

 取り敢えず自分はUK氏の手がける虚構新聞のファンですので是非とも圧力すら虚構にしてあの忌々しいユ……おや? 何だっけ? とまあ圧力をはね除けるくらいの勢いで虚構記事を配信し続けて下さい!
 エールを送った所で今後の予定をどうぞ。

 十一月
 二十五日~三十日   第四十四話 コペルニクス・ガリレオ・ケプラー  作成日間
 十二月
 二日~七日        第四十五話 フェルマーは笑う          作成日間
 九日~十四日       第四十六話 ニュートンが支配する世界で   作成日間
 十六日~二十一日    第四十七話 質量は保存される         作成日間

 さあてと、気分がやりたい雰囲気ですのでもしかしたら書くかもしれん。何て気分かどうかはともかくとして今日はここまで。オノーレ、ア……おや? 誰か来たみたいだね。誰だろうかな?

登場キャラ紹介

 デュアン・マイッダー

 主人公。圧倒的な魔力を持つものの、あまりにも深淵を知りすぎた故に故郷を追われた男。主に何かを格付けする趣味を持ち、物事に比較的消極な性格。故に人並みの正義感は持ち合せておらず、興味があれば力を行使する。なお太陽系を滅茶苦茶にしながら死闘を繰り広げたアルッパーを相棒に持つ。
 好きな異性は処女を大切にする美女。嫌いな者は格付けの邪魔をする者。どうでもいい食べ物はマッコリ。

 アルッパー

 鯨。反捕鯨が行き過ぎた結果産まれた鯨外の存在。野性的な割には意外と博識。ただし、好物が人間である以上、人間を見ると衝動的に食べようとする危険鯨。なのでデュアンは常にアルッパーを脅しながら制止させる。自分と同等かそれ以上の戦闘能力を持つデュアンとの死闘を経て何故か行動を共にする。
 好きな人間は巨乳な女性。嫌いな動物はダイオウイカ。どうでもいい思想はルソー関連。


 あらすじ

 ひょんな事から太陽系を壊し、神々に喧嘩を売る形でアルッパーを相棒に持ったデュアンは様々な世界を旅してゆく。行き先には全生命の敵が待ち受けているにもかかわらず……

 

 プロローグ 2(全二ページ)

白魔法の章 目次

 ステージ1 宇宙は危険が一杯 2 3(全三ページ)

 ステージ2 三年Δ組デュアン先生 2 3(全三ページ)

 ステージ3 デュアン・マイッダー死す 2 3 4(全四ページ)

 ステージ4 進撃のアルッパー 2 3 4(全四ページ)

 ステージ5 チャージマンデュアン 2 3(全三ページ)

 ステージ6 アルッパーが如く 2 3 4 5 6(全六ページ)

 ステージ7 カクヅケフレンズ 2 3 4(全四ページ)

 ステージ8 鯨滅の魔法 逆襲のカクヅケフレンズ(全七ページ予定)



 主にあらゆる創作話(著作権の有無に拘わらず)に関するネタ話。なので出来る限り名称を伏せる予定です。

tag : 格付けの旅

黒魔法の章 目次

 

 タブー1 Gネスαの攻防 2 3 4(全四ページ)

 タブー2 カンターレファイト 2 3(全三ページ)

 タブー3 おーい、デュアン 2 3 4(全四ページ)

 ステージ4 コンスは止めろ! 2 3 4 5(全五ページ)

 ステージ5 セル百合子の野望 何でもゼロ 2 3(全三ページ)

 ステージ6 ゲルショッカーの奇妙な味方を後ろから撃つ冒険 2 3 4 5 6(全六ページ)

 ステージ7 リアルバウト東京五輪開催 さらばキーシ・ハワード 2(全七ページ)



 主に時事ネタが中心です。今度は現総理の祖父に当たる方の汚点を……おや、誰か来たみたい。まさか一夜限りの悪夢か?

tag : 格付けの旅

赤魔法の章 目次

 

 キーワード1 神々の敗北から始まるカタストロフィ 2 3(全三ページ)

 キーワード2 ブラックストーンが起こす悪意 2  3 4(全四ページ)

 キーワード3 一般市民街にて休息 2 3 4(全四ページ)

 キーワード4 デ・ヴァレラとコリンズは何故喧嘩するのか? 2 3 4 5(全五ページ)

 キーワード5 第六天魔王波旬……降臨! 2 3 4(全四ページ)

 キーワード6 ルトワックは繰り返し唱える……戦争に機会を与えよ! 2 3 4 5 6(全六パート)

 キーワード7 宇宙という揺り籠の中で(全四パート)



 本編。ただし、デュアンやアルッパー以外の門番は二名以上出る事はない。

青魔法の章 目次

 ブロック1 少年デュアンの憂鬱 2 3 4 5(全五ページ)

 ブロック2 青年デュアンの試練 2 3 4 5(全五ページ)

 ブロック3 青年デュアンの死闘 2 3 4 5 6(全六ページ)

 ブロック4 デュアン 旅立ちまで後一週間 2 3 4 5(全五ページ)

 ブロック5 デュアン、格付けの旅は此処から始まる 2 3 4 5 6(全六ページ)

 ブロック6 デュアンは浮力の宇宙を体験する 2 3 4 5 6 7(全七ページ)

 ブロック7 デュアン、神武天皇と共に神話を作り出す!(全五ページ)



 主にアルッパーと出会う前のデュアンのお話。尚、ユーザータグを追加して置いたぞ、宜しくな!

tag : 格付けの旅

一兆年の夜 第四十三話 選ばれしは凡庸なり(五)

 十一月四十八日午後九時十八分五秒。
 場所は新天神武首都ボルティーニ中央地区開発党本部。二階立ての横長な建物。一番の特徴は外からでもわかるくらい大きなメエガン・メヒイストの銅像が建てられており、『メヒイスタ』の信者にとっては聖地として崇められる。
 そんな気味がない建物の四階会議室で力道党党首蘇我パタ吉と開発党政調会長板垣ツル彦が現在二の時と十七分もの間、会談を行う。
「--どうですかわ、板垣政調会長よの。主旨は異なるものの我々はより新しい結合を求める部分では一致するやわ。選挙協力をどうかお願い申し上げましょの」
 ううむ--齢三十五にして六の月になったばかりのアイスト鶴族の中年ツル彦は欠席中の党首に代わってパタ吉の話を聞く。
「勿論のことですがの、後でカマクラノ先生が反対するかも知れませんよの。それは百も承知やわ! けれども、これは時として開発党を飛躍させる機会じゃありませんかわ! どうか--」
「済みませんがお断り申し上げましょう。確かに選挙協力は議席を更に獲得しうる機会で御座います」
「ならばどうしてお断りをよの?」
「それは開発党の隠れた理念があられます。ですが、この理念は秘密事項故にパタ吉先生にお話しされる事は御座いません。隠れた理念故に」
(隠れた理念……これは知っているぞの! 確か--)
 開発党の隠れた理念。それは『妥協を許さない』事。元々は『メヒイスタ』のメンバーが新天神武で勢力拡大する為に政治に参加。政党になっても『メヒイスタ』における理念を忘れない為に党にいる全ての者に隠れた理念である『妥協を許さない』という単純且つ明快なものを叩き込まれてある。
 そもそも『妥協を許さない』とは科学者は新たな科学的事実を発見する為に信念をねじ曲げて誰かの協力を得てでもそれを手にしないというもの。仮に疑似科学集団である『メヒイスタ』もまた科学者の魂を持つ団体である以上は妥協を許さない姿勢でいる。彼等は例え政治の世界に参加しても最後まで妥協せずに自らの主張したい科学を貫くという思いで有権者の支持を集め、少数ではあるが政党に必要な陸空合計十議席を得た。
(そうかわ! ここに来てそんな隠れた理念を忘れていたとはよの!)
「それからパタ吉先生の琴線を突くようで申し訳ないので御座いますが、先生には我々の協力なしでもうまくやっていけるものを持っておられます」
 え--意外な言葉にパタ吉は両目の焦点が合わない。
「あなたは助けてみせたではありませんか、『ホエ人』に乗船した千名以上もの命を!」
 あ、あれかの--今になって後悔している行動を持ち出されて顔中に大量の汗を流すパタ吉。
「恥ずかしがらないでくれましょう。もっと自信を持っていいのですよ! 確かに代議士らしくない事は承知です。それでもあの行動がなければ合同部隊でもあの銀河連合と波による攻撃に晒されて海に投げ出されましょう。あなたの行動が今を生きる乗客をお救いなさった。パタ吉先生の行動はもはや我々の協力が無かろうと自らの力で有権者に訴えられる力をお持ちです!」
「そ、そうなのかの? 正直あなたみたいな党の政策を纏める御方からそんな太鼓判を貰うなんて事は想定されなかった次第でありますやわ」
「我々はお互いに研ぎ澄ましていく者同士で御座います。確かに議席の取り合いは演じます。ですけど、党で争うよりも先に他党が我々と同じく前に進んでゆく事をお望みです。太鼓判の一つや二つを与えても神様はお叱りになりません!」
 確かに--その後三十の分もの間は端話で盛り上がる二名。
 会談が終わったのは午後十時二分二十秒。

 午後十一時八分九秒。
 場所は首都ボルティーニ第三東地区雀合唱団音楽会館前。第三東地区で最も大きな建物。正面前で力道党の三名は路上で歌う駆け出し中の歌手下霧スズ女の歌を聞く。
「--男女は惹かれ、男は慈しむ
 女は女で心を絞めて--」
「ナアボス。本当にワシらは離ればなれになるんカア?」
「考え直しましよう! 力道党は百もの年まで存続してきたんでえ」
 もう決めたことやわ--パタ吉の決意は揺るがない。
「--離れ、離れ、苦しみ抜いて
 誓いを賭けて、別れを込める--」
「ワシは力道党ガア好きなんだ! これからも力道党で活動したいんダア!」
「これは決定やわ! それにあの時大王烏賊型に飛び込んだ時から決めたことなんだわ!
 俺達はもう--」
「--ああ、恋者たちよ」
「あれが引き金だったでろう。あの時に生還した頃でえ、既に党首蘇我パタ吉は死んでろう。それ以降は--」
「ああ、これからの俺は政治団体『力道会』の代表蘇我パタ吉となったわ」
 歌が終わる頃にパタ吉から思いも寄らぬ言葉が飛び出す。
「は? どうゆう意味でしょうカア?」
「そのまんまの政治団体やわ。力道党は沈んでも魂はこれからも続くよの。政治団体『力道会』としてよの」
 全く話が見えねえ--パタ吉の突然の政治団体結成に頭が着いてこないハルフェン。
「済まないよの。突然こんなこと言ってよの。説明するよの。
 まずは--」
 パタ吉によると政治団体とは政党を支持する母体の事。選挙は大量の資金を必要とする。広告費から遊説場所の確保まで。例え選挙に勝ってもまた資金を必要とする。どこかの土地がそのようになっているかの調査や実態解明に至るまでありとあらゆる所で。その為、議員になっても入ってくるお金の管理は非常に厳しく、宴会でもしたらたちまち借金生活へ入ってしまう。議員とは地元を回るだけでもお金の管理に困る職種。
 そんな議員と所属する政党が少しでもゆとりを持たせる為にパタ吉が考案したのが政治団体。政治団体は選挙費用からその後の事務処理に至るまでありとあらゆる局面で支援する為に存在する。これによって議員にとって管理の厳しい資金を代わりに処理出来る。
 ただし--
「『力道会』にお金を回すのはどこダア? まさか募金活動なんて言うんじゃないだろうナア?」
「心配無用やわ。目の前にある雀合唱団と交渉してくるよの」
「だからなのけえ。どうしてこんな場所で今後について話し合ったのでろうを!
 それで党首殿はどうして中に入らなかろう?」
 ここに交渉相手が居るじゃないか--前右足の人差し指で四曲目を披露しようとする下霧スズ女を示すパタ吉。
「あ、あの? な、何でしょう?」
「君はここで歌を披露しているそうじゃないかわ。良かったら音楽会館を管理している者と会いたいんだがの」
「ま、まさか私ごと売り込ませようとしているんですか?」
 そのまさかだよの--代議士らしくパタ吉は彼女の望みを叶えようと獣肌を脱いでみせる!
(議員には全てのことは出来ないやわ。当たり前よの! 議員は超者ではないよの。仙者ではないやわ。議員は特別優れた者が成れるのではなくの、どこにでも居るようなおっさんと若造が成るんだわ。だからこそいつだって国民が裏切られてゆくやわ! 普通でないことを要求される度に俺達議員は頭を下げて情けない姿を晒すよの。俺達だって好きで国民の期待に応えてはいないやわ!
 だがなわ! それでも無理を通すんだわ! それが俺達政治の異世界に足を突っ込む者の命運びだわ! だからこうして無理を通そうとするんだわ! これは俺が議員でやれる最後の無理よの! これだけをやって俺は無理強いする者の支援に回るよの!)
 凡庸だけが選ばれる政の世界で己の道を見つけた蘇我パタ吉。
 彼は先駆者として歩き始める……!




 ICイマジナリーセンチュリー百三十七年十一月四十八日午後十一時三十分一秒。

 第四十三話 選ばれしは凡庸なり 完

 第四十四話 コペルニクス・ガリレオ・ケプラー に続く……

一兆年の夜 第四十三話 選ばれしは凡庸なり(四)

 代議士は皆、選挙に勝つ為なら格好を付ける事も辞さない。現在、代議士の多くが先程の理由で甲板に残る。
 だが、パタ吉は異なる。彼はいかにして大王烏賊型銀河連合を倒すかを探る。
「パタ吉氏よ。わしらは議員なのじゃん。議員んは戦ってんはいかんんのだよん。震え声んで表されるん通りん議員んは格好付けんの集まりんなのじゃん。ここんは船夫んと軍者ん、それんに傭兵んに任せるんだん!」
「それは出来ない相談やわ。俺はこれでも寝技を得意とした家系なのですよの! 絡みつくことに関しては議員になっても修練を欠かせないつもりよの。前に踏みだその!」
 早まるんなん、パタ吉氏ん--制止する声を背に受けて、パタ吉は戦いに赴く!
(わかってますよの、タヌ蔵先生やわ。代議士がどうしてお守りを必要とするのかわ?
 万が一に命を落とせば政治空白を作ることよの。後継者擁立が困難になることよの。更に補欠選挙を急遽実施しなければならないことよの。代議士一名だけでもこれだけ大切にしなくてはならない理由として十分ではないかわ!
 しかし、俺は代議士以前に一生命だわ! 命を懸けて銀河連合を倒すよの!)
 大王烏賊型は船に迫る--船体に穴を開けるだけでは済まない速度で!
「あ、あなたは代議士ですんね! その議員留め金を見ればわかりますん!
 ……っていくら代議士でも戦うんことだけはやめて下さい! ここは我々に任せてさっさと船内に退避して下さい!」
「俺も戦うよの! こう見えて寝技を得意としてるぞの」
「いや、説明になってません! あの銀河連合の成人体型を見て下さい! どう見たって十三を超えますん! とても寝技で絡めるん奴じゃあありません!」
「だがやわ、黙って甲板に立っても解決しないよの! ここは議員であっても一矢報いる覚悟で踏み出すのが一番だろうよの!」
「何が『一矢報いる』ダア? お前は俺の従兄弟が所属する党の頭ダロオ? 不心得者が戦場に出るナア!」
 あなたは真鍋先生の従兄弟で現真鍋傭兵団団長ベアガル・真鍋よの--齢四十二にして十一の月と十一日目になるテレス熊族の老年にして歴史上数少ない五十体を相手に出来る生命ベアガルの方に顔を向けるパタ吉。
「お前はこう思っテエルだろ? 『老いぼれになったあなたに勝てる保証はない』トオ。その通りダア! だからコオそ--」
 ベアガルの前左足が頭上まで掲げると甲板及び船内にいる軍者及び傭兵が一堂に会する!
「だからこソオ我等心得者は協力し合って巨大な銀河連合に立ち向かうのダア! お前のヨオウな者は偉そうに我等に無茶を要求するのダア! その権利がアアル!」
 偉そうなのはどっちだわ--パタ吉は前右足を大王烏賊型に向けて突き出す!
「議員先生が指令を出したゾオ! 我等は軍者と傭兵の垣根を越えて今協力し合おうではないカア!」
「団長ス! 網及び縄の用意が完了しましたス!」
「それで烏賊の距離はどのクウラいだ?」
「今で五百を切りまし!」
 戦闘開始イイ--合計二十五名にも及ぶ合同隊は大王烏賊型が成人体型二百まで近付くのを待ち構える!
「真鍋団長やの。差し出がましいようですやわ、飛んでくるという可能性はありますかの?」
「それはついさっき自分も脳裏を通った所ダア。そんな可能性があるならば命令された彼等を信ジイるのだ。烏族の集まりみたいに一見統制が取れないように感じても長年の厳しい訓練に耐えし者同士の掛け合いは案外上手く行くノオダ」
 投げ棒な意見やわ--左米神付近から汗を出すパタ吉。
 成人体型が二百五十から突然驚くような事が起きた! それは左甲板の方角に何かが落ちた!
 波の音に反応するようにパタ吉が振り返る先には船を揺らし、三名の行方不明者を出した大波がまたも襲いかかる!
(右は銀河連合やわ! 左は波……いや異なるよの!
 あれは……二体目の大王烏賊型なのかわ!)
 波に乗っかるように二体目の大王烏賊型は船を沈めに迫り来る!
 そんな中で船は何かを掴んだように右へ大きく傾く! 幸いエピクロ栗鼠族の船夫が直前に投げた縄を掴んだお陰で海に投げ出されずに済んだ!
(左に大王烏賊型と波よの! 右は現在合同部隊が倒すのに夢中やわ! 左が明らかに薄いやわ! こ、こうなったら俺は--)
 ま、待つんだ--船夫の声も空しく縄による遠心力を利用して左甲板へと飛び移ったパタ吉!
 寝技を得意としているのか通常よりも高い握力は傾斜が急であっても僅かな隙間があれば指を入れても滑り落ちることなくよじ登った! そして左甲板の橋に後ろ両足で直立しながらパタ吉は船が元の角度に戻るのを待つ!
(恐らく成人体型六百は切ったわ! 後は真鍋団長が指揮する合同部隊が引き上げるのを待つ……ウオ!
 速いよの! でも飛び込んでやるよの!)
 急激に角度を戻す時に生じる反動を利用してパタ吉は今、大王烏賊型とそれを乗せる波に突っ込む--船との成人体型が五百二十を切った所!
 パタ吉は既に縄を離し、大王烏賊型に接近してゆく!
(どんどん下がってゆくよの! だが、間に合えやわ! このまま俺はこいつに一矢報いてやるよの! 父が死んだ時に何も出来なかったわ! でも今回だけは何かをしてやるよの! そこで死んだのなら俺は劣名を遺すだろうの! いや、そんな後ろ向きな考えは死ぬ者に相応しくないやわ!
 死ぬんなら恐さだって払拭するものだろうよの! 俺はまだ生きたいんだわ! 恐怖が取り除けないなら生きてお叱りを受けよの!)
 結局一矢を報いるよりも先に生き恥を優先したパタ吉は鰭にぶつかり、そこで意識を飛ばした!












(ん? やわ? あれよの? 声がするよの? 俺が死んだにしてはどうして真鍋団長と真鍋先生よの、それにハルトマン先生に他の者の声が--)
 目を開けるとそこは成者の世界だった……彼は不思議な表情で生きている事を実感した!
「そうかの。生き恥を晒すのも議員の務めなんだわ。いいだろうよの。政治の世界に生きる者は都合良く生きないといけないよの」
 時間はどれくらい経ったかはっきりしないが、パタ吉にはわかる。そこは『ホエ人』にある代議士専用の客室である事を。

一兆年の夜 第四十三話 選ばれしは凡庸なり(三)

 十一月二十一日午後八時十五分二十八秒。
 場所はエピクロ海鬼ヶ島方面。
 成人体型縦八十、横三十、高さ五十にもなる木造旅客船は鬼ヶ島に向かってゆっくりと進む。
 看板で夜空を眺める生命は皆、客者ばかりではない。陸族院議員蘇我パタ吉は右看板にもたれ掛かりながら客者達と同様に夜空を眺める。
(この船の名前は『ホエ人』やわ。かつて旧国家神武領ラテス島に巣くう大樹型を倒した英雄の一名を称えるべく付けられた名よの。俺は英雄に憧れる気持ちはないやわ。出来るならば英雄を作れる環境を整えないといけないという思いはあるやわ。いや違うよの。
 この場合は英雄が気持ちよく働ける環境を整えるべきよの?)
 何考え事をするかな、蘇我パタ吉氏よん--齢三十九にして八の月と九日目になる蘇我狸族の老年がパタ吉に声をかける。
「あなたは海洋党の陸族院議員でアリスティッポス大陸アレテ出身の蘇我タヌ蔵先生ではないでしょの!」
「おやおやん、わしに声をかけられるのがそれほど珍しいと思う年頃かね、パタ吉氏ん」
「そりゃそうでしょうやわ。第三党である海洋党の政調会長であられるのですよの、先生はや! 滅多なことでは声をかけられる機会は少ないよの!」
「そこまで謙遜なさらなくともん。さて、挨拶はここまでにしようん。
 わしが君に声をかけたのには訳がある。まずは答えて貰おうかん?」
(引き入れる為よの? それとも蘇我大陸出身の同胞として思い出話を持ちかける為やわ? 他には党そのものを吸収させる為やわ?)
 タヌ蔵が何故自分に声をかけたのかを考えながら察するパタ吉。どれも後ろ向きな考えであった。それに気付いたのか口に出す言葉は--
「『流れ星に気を付けろ』でしょうかの?」
 見当違いじゃん--狸族なのに余計に目の隈が広がる程の表情を晒すタヌ蔵。
「じゃあ『船酔いになってないか』ということでしょうかの?」
「それも違う! そもそも君は船旅に慣れた方だろうん! ってそうゆう事じゃなくわしが言いたいのは他にある!
 それは『どうやって議席数を増やす』のじゃと聞きに声をかけたんじゃん!」
 それですかの--そこまで鋭くない答えに溜息を吐くパタ吉。
「後三の月もすれば陸族院総選挙が始まる! この一戦で九議席以上確保しないと党として認められず解散する以外にないのじゃぞん! これは百の年より前から連綿と受け継がれる党制度なのじゃぞ。前回の選挙で十を下回りながらそれでも力道党として活動出来たのは党制度における五の年まで党を名乗る事が許された救済措置があるお陰じゃん!
 けれども今回はもう救済は働かずん、下回れば即解党し、無所属扱いとなるぞん!」
 党制度に於いて少し説明をするならば国会で陸族院と空族院併せて十議席以上に成れば正式に党認定を受ける事になる。ところが、それを下回る場合は党として認められず諸派(または無所属)となり、国会の場に於いて党として認定されない。なお一度党として認定された政党が一度の選挙で十議席を下回っても解散がある間で救済措置として党を名乗る事を許可される。それも次の選挙で十議席を上回るまでの話。一度十議席を下回った党がもう一度十議席を上回って再度下回る事があれば救済措置は認められず自動的に解党される。
 なお解党された党は同じ名前で党を再結成する事は許可されず、紛らわしい名称も認められない形となる。理由は党の主張がねじ曲げられるのを防ぐ為以外にもあった。
(名称は使い回せば重要さが落ちてゆくよの。党制度は今でも議論される制度やわ。
 けれども党制度にもやっていいことが他にもある。それが俺達力道党が今やろうとしている他党への選挙協力よの。今は二名だけでなく付き者にも口外しないようにしてあるがの、どこまで隠し通せるかやわ?)
「また考え事かん? まさかわしら他党に延命措置を頼もうとしているのではないじゃろうな?」
 ま、まさかよの--思わず冷や汗を顔中に出すパタ吉。
「まだまだ青いのん。政治に携わる者は常に無表情が……そんな事ん言ってるん間にんできなくんなってん申しわけんないん!」
「恐怖口調になったわ! ま、まさか--」
 パタ吉が振り返る先には恐怖が目の前に落下--波を起こしながら、船に襲いかかる!
「えっと先生方! 急いで私の方に付いて下さい! 波は一瞬で生命を流しますん!」
 あ、ああわ--パタ吉とタヌ蔵はエピクロ栗鼠族の船夫の言葉に従って退避する!
 波は甲板を襲い、大きく揺らす! 幸い横転する事なく横に大きな揺れ幅をもたらすだけで済んだ。だが、これによって海に投げ出された生命が十五名--その内の三名は海の底に沈んだ!
 全身塩水塗れになりながらも海に投げ出される生命を見てここを痛めるパタ吉。
「全く船旅に於いて海神様は荒ぶる……と言いたいがこの一件は神様のせいではない!」
 どうし、て--パタ吉が振り向く先には波を発生させた落下物跡から得体の知れない大王烏賊族のような巨大な剥き出しが船に迫ってくる!
「あ、あ、あわすぁ、ああわ! あれは、は、銀河、連合よの!」
 蘇我パタ吉が力道党に入る切っ掛けとなったモノとは異なる。それでも彼に力を付ける意味を教えた存在--銀河連合--は甲板にいる者達全てに恐怖を湧き起こす!
(しかも大きいよの! 議員である俺がここにいる者達と共に戦えるのかわ!)

一兆年の夜 第四十三話 選ばれしは凡庸なり(二)

 午後六時五十五分六秒。
 場所は赤兄県支部三階党首部屋。
 パタ吉は現陸族院議員の真鍋べア太と現空族院議員のハルフェン・ハルトマンを招集。
「偶然にも二名が北蘇我大陸に居て良かったよの。別の大陸だったら短くて二の日はかかるからどうしようかと思ったよの」
 ボスヨオ、用件を言っテエ下さい--齢三十四にして三日目になるテレス熊族の中年は前左足の人差し指と中指で顎髭を弄りながら招集した理由を尋ねる。
「真鍋先生やハルトマン先生を呼んだ理由は短刀を直に入れるように宣言するやわ! 近々開発党と選挙協力を申し出るつもりやわ!」
 何だってえ--叫び声が最も大きいのは齢三十七にして四の月になったばかりのエピクロ隼族の老年ハルフェンだ。
「本気カア! いくら何でも後がなさ過ぎるゾオ!」
「古参政党と呼ばれし力道党もここまで落ちぶれてえ。まさか他党にお願いしなければならない程にまでえ」
「別に党の為ではないやわ。これは全生命が危機感に目覚める為よの、平和に慣れないようにする為の足及び翼やわ! それがちょうど力道党の延命措置に繋がったやわ!」
「開発党がそんなお願いを聞き入れマアスか? あいつらは科学に信念を込めタア連中だ! 断られるに決マアってる!」
 こちらだって軍事力に信念を込めた党やわ--力強くパタ吉は意見を通そうとする!
「まさか信念を貫く部分を狙って協力関係を築こうとするでえ? 商いにおける契約がいくら政治の世界で通じるとは言ええ、概念を持ち込んでも引き受ける可能性はごく僅かでろう、党首殿でえ」
「ごく僅かでもやらないよりやる方を優先するよの。やらなければ可能性は零やわ。わかるよの?」
 二名だけでなく言った本者ですら分の圧倒的不利な賭け--概念による取引は曖昧故に利益に成り得ない。
 それでもやる価値は十分にあるとパタ吉は強く繰り返し主張し続ける!
「--数学の世界だろうと科学の世界だろうとどこの世界だろうとの、先駆者は必ず報われることは少ないやわ! 後に成って報われたりやわ、遅すぎた日に報われたりとどこまでも現実は厳しいよの!
 けれども先駆者が居たからこそ今の我々が居るやわ! 百の年以上前の先駆者が居たからこそ今の新天神武があるよの! 今の力道党があるよの! ならば我々は選挙協力の先駆者に成ろうやわ! 例えなんて言わないやわ! 必ず力道党……いや全生命を生き残らせる道を作るよの!」
 『力なき国に未来はない』という文字を背に受け、パタ吉は二名を説き伏せてゆく!
「若さは違うでえ。わしも党首殿くらいの若さがあればでえ」
「ワシモオ同じ意見だ。わしが議員になった年はもう三十日か近付く頃だったナア」
「被選挙権がもう少し早い時期に二十五以上からになってたら真鍋先生も早くから父上の後を継げたのにやわ」
「協力……する前に開発党の議員の平均年齢はいくつくらいでろう?」
 パタ吉は慌てて開発等に関する書類を探し回る! それが完了するのは二十七の分が経ってからだった。
 陸族院は合計二百五十六名。空族院は合計百二十八名。諸派になるのは十名を切った辺りから。開発党は陸族院に六名。空族院の四名。合計十名達する為、諸派に当たらない。
 重要なのは開発党党首カマクラノカモノハナを除いて議員九名の年齢は三十八から三十。平均年齢は党首を入れると四捨五入して三十五になる。
「ボスの資料を拝見すると年寄りを除けば平均三十ジャアねえか! 若すぎるゾオ、彼等は!」
「聞き入れるには若すぎるでえ。選挙協力してくれるかでえ?」
「例えよの、もしもよの、万が一も考えるなやわ! カマクラノ先生ならよの、カマクラノ先生ならやわ聞いてくれるやわ!」
「もオウ、何も言ワアない! 信じるゾオ、先生イ!」
「では開発党党首といつ会談するのですけえ?」
「一の月より後に緊急招集がかけられるやわ! その時に開発党の面々と目を合わすよの! その時に我々三名で開発党の面々と話し合おうやわ!」
 新天神武では与党は必ず首都ボルティーニに滞在しなければならない。しかし、野党は重要法案や緊急招集といった緊急を要する以外は各地区で選挙活動以外の調査や情報収集に当たらなければならない。与党が出来ない仕事を野党が務める。そうする事で国民の声を政治に反映する機構が確立する。
(弱点は与党に圧倒的な不利をもたらしよの、政治空白が出来る可能性が高いやわ。別に政権を握るのは三の次やわ。
 一に全生命をよの、二に力の強化やわ、そして三にようやく政権交代やわ。これを忘れた党は長続きしないやわ。かつて政党制度発案者にして自由党初代党首カゲヤマノスサナミキは『政権はまず後回し。重要なのは全生命の為に命を懸けられるかどうかだ。力も大事だが、力だけでは生命の為にならない。まずは全生命を守る為に命を懸けよ』と人族訛りで訳された言葉こそ新天神武の方向性やわ!
 そう考えると力道党がこんなに落ちぶれたのも納得がいくよの。だからといって方向性を今更変えられはしないやわ! これは先代の党首達の思いが詰まった党よの! そう易々と変えては力道党は例え存続しても死んだも同然よの! まだ理念も方向性もぶれてはいないやわ!)
 三名は二階にある会議室に入り、明日から首都ボルティーニへ向かう為の準備を始める。ボルティーニ着くまで最低九日はかかる距離。その為、それまでに食費から旅費までの計算及び書類作成代と調査報告書などを書き上げなければならなかった!
 それが完了したのは明くる日の午前十時。出発は一日ずれる形となった。

一兆年の夜 第四十三話 選ばれしは凡庸なり

 ICイマジナリーセンチュリー百三十七年十一月十七日午前六時八分十五秒。

 場所は新天神武北蘇我大陸石川麻呂地方赤兄県第二中央地区。その中で二番
目に大きな煉瓦製建物三階。一番奥の部屋。扉の立て札には党首室と記される。
 中に入ると目に付くのが長方形の半紙に墨で大きく『力なき国に未来はない』とい
う字。その真下に座るは齢三十一にして五の月と二十七日目になる蘇我熊猫族の
中年。彼は書類に目を通していた。
(今回も我等『力道党』は圧倒的に不利よの! 世論は一貫して軍事力削減の方向
に向かうのやわ)
 彼の名前は蘇我パタ吉。強硬路線を主張する『力道党』党首。力道党は過去に二
回は政権与党の座に着き、一貫した軍需拡大政策を推進。それにより、新天神武の
軍事力は古式神武や真正神武よりも国内総生産に占める軍事費が一分程高い。
 そんな『力道党』も平和な時代が続きすぎると世論からの支持が離れ、現在ではい
つ解党してもおかしくない状態にまで落ち込んだ。現在では陸族院に二議席、空族
院にはたったの一議席いかない。
(俺は陸の種族だから陸族院やわ。そんなことよりもどうにかして議席を確保しない
よの! このまま平和呆けが進めばいずれ銀河連合によって新天神武が食われて
しまうやわ!)
 現在の新天神武では力道党を含めて七つの政党が乱立する。勢力の大きい順に
自由党、青空党、海洋党、生命の会、共和党、開発党、そして力道党。
 自由党の主張は『暮らしの向上』。公共整備の充実から福祉の安定など突出した
政策をしたがらない政党。けれども国民からの支持を受けやすく、野党に転がっても
大多数の勢力を保持する力を持つ。政党制度施行から百の年以上も続く古参政党
の一つだ。
 青空党の主張は『空を駆けよう』。この政党は名前や主張通り空の種族を中心とし
た政策を推進し、空族院に於いて自由党と拮抗する議席を占める。空の種族に有効
な政策ばかりが突出しており、陸や海の種族からの支持は受けづらく、陸族院では
生命の会に次ぐ議席しか保持しない。
 海洋党の主張は『海を大切に』。名前の通り海の種族が中央議員に成れない代わ
りとして支持を受けた陸及び空の種族による党。彼等の勢力は決して多い訳ではな
いが、常に安定した議席数を占め、陸族院では二番目に多く、空族院では三番目に
多い。それだけ海に関心を持つ支持層からの受けが良い政党だ。
 生命の会の主張は『新しい事を求めて』。他の政党に比べて保守的な要素が少な
く、常に改革を重視する政党。若い巣からの支持は高い者の、古い者を大切にする
者からの支持は少なく、陸族院では三番目に多く、空族院では共和党に次ぐ議席し
か保持しない。
 共和党の主張は『共に手と足と翼を取り合う社会』。主に軍事力削減と兵器の平和
利用を強調。自由党と同様に政党制度施行から百の年以上続く古参政党。現在は
平和が続くためなのか、年を追う毎に勢力が拡大する傾向にある。
 開発党の主張は『科学と共に』。こちらは発足して十の年しか経たないばかりの科
学者の科学者による科学者の為の政党。かつては古式神武首都タイガーフェスティ
で幅を利かせた科学者集団『メヒイスタ』の構成員の一部が新天神武でも新たな技
術を求めて政党を発足。どこをどうしたらそこへゆくのかを置いても彼等は一貫して
科学技術の向上を推進し、生命の会以上に革新的な政党と言える。
 最後にパタ吉が党首の力道党の主張は『力なき国に未来はない』。こちらは自由
党、共和党と同様に百の年以上続く古参政党。超保守的な政党であり、常に軍事力
拡大を強調。かつては大多数を占めた政党。現在は平和の進行と生活の向上を望
む声により、いつ解党するか知れない極小政党となった。
(どうすれば党を生き延びさせられるやわ? もはや軍事力を伸す時代は終わったよ
の? 所詮は政治も商いと変わらぬよの? 親父の言葉が俺を突き刺すやわ!)
 彼は政治の舞台に上がる前は居酒屋『大人の隠れ家』で父パタ蔵の弟子として修
行した。そして十の年より前、彼を政治の道へと駆り立てる事件が発生した!
(親父は死んでしまったよの! 十の年より前の流れ星が降り注ぐ夜によの。俺がこ
の政党に入ったのはあの事件以来やわ。けれどもその頃にはもう力道党も議席数
が十名を切っていたやわ。俺を含めてもよの。
 全くどうして党首になんか成ったやわ! 世論は商いと同様に何を求めるかを探り
ながら選挙戦を繰り広げなくてはならないのにこの党は流れではなくよの、意地を貫
くことを優先するんだからやわ! まあだからといって先代から培ってきた『力なき国
に未来はない』を反故に出来ないよの! どうすればいいよの? 下手に既成事実
を打開すれば生命の党と主張が被るやわ。かといって開発党のように馬か鹿かわ
からんことを主張してもよの。んうん?
 早速始めてみようやわ! あちらさんを了承する前に他二名と打ち合わせをしよう
やわ!)
 パタ吉は選挙に勝つ為のある根回しを思いつく。それは商いの世界でも通用する
協力の一足である……。

冬眠への道 宣言篇

 どうも時事ネタがしたいdarkvernuです。
 『格付けの旅』のプロローグがやっと終わりましたので、読みたい方はカテゴリ覧の<格付けの旅>をクリックして下さい。
 自分はまあ千葉市長をしてる馬鹿野郎がアハマドさんの同志を呼び寄せてる事に腹を立てて時事ネタやりたいけど、今週以降は予定の一月二十六日まで冬眠の道という雑文テーマを扱いますのでそれまで時事ネタは自分のHP『クソゲーツクーラーの墓場』の呟きで我慢します。
 んで冬眠の道とはいわゆる『一兆年の夜』がしばらく休載するという事を告知するためにやります。ちなみに『格付けの旅』はいつも通り日曜の不定期にやりますので安心(?)して下さい。けれども、まだ休載開始しませんのでどうかお付き合いを宜しくお願いします。
 じゃあ早速試作品をどうぞ。

 十四人はゆうちゃんの死体を発見した!
 一番驚いたのはなんっっとお、マツムラだった!
「ゆうちゃんが死んでる! て、テロリストのスァざだよ、仕業だよ!」
 マツムラという男は愚痴が多いが、死体になった男を含めて割と普通の良い子だ。そんな中、十五人で最も普通でない顔をした男タイラントは「そんなことよりもムーミンムーミン、さっさと逃げる方法探そうよ」と空気を少しも読まない発言をした。
「そうだねん。ゆうちゃんはきっと死体の振りしてるんだよってい!」
 ムーミンは目が細く、小太りの男。仲間内ではタイラントに次いで奇行が目立つ。そんな訳なのかゆうちゃんの死体を真似するよおおおおうにムーミンは仰向けに倒れ込む!
 ムーミンの奇行に怒る者がいた。「人が死んでるのにそんなこと出来るのよ、やめてよ!」とマイマイ兄がタイラントとムーミンに怒鳴る。
 マイマイは主に二人いる。一人はマイマイ弟。知的障害者なのか「そうだよ、タイラント君、ムーミン君。人あ死んでるのにそんあのやめてよ」と上手く喋る事は叶わない。
 もう一人が「ゆうちゃんが死んで悲しいともうのが普通でしょ!」とオカマ口調だが、根が優しい男マイマイ兄。ただし、真面目すぎる故に抱え込みやすい性格である。
 そんな中、「それよりも何でゆうちゃんが死んだ? あいつはテロリスト達に何か恨みを買ったっけ?」と皮と骨しかないような体格をした男チャラオが口を開く。
「そうだよね。確かにあいつはウザイし、ムカツクし、借りた物を平気でパクるしさ。でもそれ、俺達の中でしかわかんないじゃなーい?」
 気分が高揚しやすい男ハラちゃんは死体の事を気にせずに喋る! それに反応するのは「オイオイ、お前は何気に酷い事言ってねえか? さすがにそれは」と言葉を返すはロバという年上にも生意気な口調で話す男。
「と、とにかくゆうちゃんの事よりもこれからどうするかを考えよう」
 かわいは比較的常識がわかる男。状況打開がどこかにあるのではないかと目を向けたのは「かわい君はこう言いたいんだね。『俺達を閉じ込めた扉を確認せよ』って」口を開くのは物静かな男ジュンペイ。十五人の中で最も考えが読めない男に「そ、そうだよな! で、でも万が一にテロリストが撃ち殺しに来るんじゃないのか? あいつらは何するかわからないし!」とびくびくしながら怯えるのはカズヒロ。彼は他人に流されやすく、意見が二転三転する。
「じゃあタケマサ。機械に最も詳しいお前ならいけるんじゃないか?」
 そう助言するのはライトノベルをこよなく愛する男オオニシ。タケマサという男はオオニシとはネットで繋がる仲間。更には機械いじりでは十五人中最も高い技能を有する。
「俺に『死ね』って言いたいのか! 酷いなあ、オオニシ君は」
「別に死んだっていいだろ! お前鬱陶しいんだから」
 十五人で最もコミュニケーション能力が欠如する男ゴメクボに「アア? 何か言ったか、おい!」と顔を真っ赤にするタケマサ! 一触即発のおおおっっ中で「やめてよ二人共、喧嘩してる場合じゃないだろ」と止めたのはマツムラだった!
「先に喧嘩吹っ掛けたのはこいつだろうが! こいつに怒れよ、マツムラ!」
「喧嘩はやめてよ、ゴエクボ君もタケマサ君も」
「そうだよっな。死体がある中で喧嘩したのは全てムーミンが悪いんだから」
「いや、ムーミン関係ないでしょ!」
「そうだよ、俺が悪かったよ! じゃあ罪を償いに扉を開けに行きますうよ!」
 ムーミンは本当に扉に近付く! 「いやいやそんな行動する? する? おかしいでしょ!」とやかましく喚くチャラオの声を背に浴びながらムーミンはノブのない扉を蹴り倒す!
 扉は力の方向になんっとお倒れてゆく! おかしいと思って先に声を出すは「昨日まで俺達を閉じ込めた扉だったんだぞ!」とかわいは呟く。
「で、でも脱出出来るんだろ! やったじゃん! 最高じゃん!」
 気分が更に高揚したハラちゃんは扉の奥に駆け込むのを「ま、待て。テロリストが」カズヒロという男は止めに入るも既に彼も扉の奥に出ていた。
「あいつらが大丈夫なら私もついでに行きましょうか」
「呑気だな、ジュンペイは」
 そうして一分の内に十四人は部屋を脱出--ゆうちゃん死体をそのままにしながら。
「ところでテロリストは全部で何人だった?」
「俺達の数より十人少ない五人だったっけ?」
「俺に振るなってハラちゃん!」
「と、とにかく離れないように慎重に行動しよう」
 彼等は歩いて二分もしない内に「うわああああああああ!」マツムラの叫び声と共にテロリスト五名のバラバラ死体を焼き付ける!
「ほ、本当は六人じゃないのか!」
 タケマサがオオニシに確認するも「いや、確かに五人だよ!」そう、誰もが六人目のテロリストがいたという記憶がない! そう、テロリストは全員殺されていた!
 じゃあ誰がテロリスト五名とゆうちゃんを殺したのか?
 フフフ、それは私が知っている--お前ら十四人の内の誰かだよ!
「ふざけるな! 何で俺が人殺しするんだよ!」
「僕だっていくらゆうちゃんがどうなっても殺したりせず、炭火焼きして丸ごと食べるぞ!」
「嫌だよ! 疑うのは嫌だわ!」
 ハハハ、この私狂言師はお前らにいる犯人を見つけるまで手を貸しはしない。早くしないと次の犠牲者を出すぞ、いいのかな?


 この物語にミステリー要素を期待しないで貰おう。とにかく試作品故に序章部分のみを書いてみました。えっと犯人は試作品であっても言えません。言ったら先の展開がつまらなくなるのはミステリー物の常識です。
 まあ、こいつの題名は『狂言師(仮)』。推理要素は出来る限り入れない物語です。推理要素は結構筋を通すように描かないとすぐに破綻しますので自分がもしこれを本格的に描くとしたらキャラを一番上に置き、その次にストーリー、シナリオ、最後に推理要素という風に進めてゆくつもりです。特にキャラが出来ていないとどんなにストーリーが出来ていても読者は惹き付けられないと自分は考えております。まあ読んでくれる人が一人でもいれば自分としては嬉しい限りです。
 ちなみに登場キャラは狂言回しとテロリスト以外は全て自分の知っている奴等を勝手にモデルにしています。はっきり言いますと中学時代からは四人。高校時代から六人。大学時代は一人。バイト先からは四人。なのでこれを読んでいる人の中にモデルが居て、そいつがもしも勘が鋭ければ間違いなく……まあ真似しないように皆さん。下手すると関係を崩しますから!
 以上で試作品の解説を終えます。

 では第四十二話の解説にいきます。今回でやっと五部構成の中編物は完結しました。疲れた、特に四十話はばたついてパート数の割に比較的話が短いものになったぞ。
 それじゃあいきましょうか。四十二話はほとんど後日談になってます。ほぼ四十一話で完結した部分をある程度掘り下げた形になっていて一つ一つが良い出来ではないものの、全体を通せばまあまあの出来になったと自分は思います。最後には零パートで主人公の一人星央の予言が現実のものと成りました。それだけに全体を通して三兄弟の章は壮大な大河ドラマになったと自分では思います。ただし、自分は後ろ向きな性格故に後で読み返すと今日書いた記事と逆の評価を下す可能性が無きにしも非ずだという事を覚えといて下さい!
 ついでに眠りパートで出てきた二院制や三権分立についてだけ説明します。二院制は一兆年の夜において初期に出てきた空陸の配達本部が四百年をかけて政治の世界に反映された形をとってます。主に陸族院が衆議院のようなシステムに近く空族院が参議院のシステムに近い物と成ってます。それだけに陸族院は任期が短く、途中解散がある為、優越権を所持します。一方の空族院は任期こそ長いが、解散はない。ただし、任期の半分には半数が改選されてゆきます。ちなみに議員の数は日本の国会議員程馬鹿に多くはありませんのでご安心下さい(何を安心するのだよ)。
 続いて三権分立についてですが、司法はありません。そもそも法律で縛る程彼等は悪い事が出来ないのです。その代わりに矛をとる軍法というものがあるのです。まあどちらも国民にとっては邪魔者以外の何物でもありませんよ、縛られるものの中には。まあ、脱線はここまでにして軍法以外ならほとんど日本における行政や立法と変わらないと思って下さい。
 以上で第四十二話の解説を終了します。

 では格付けの旅のプロローグ後半について解説にいきます。ようやく主人公デュアンは後にアルッパーと呼ばれる神を超えた力を持つ鯨との太陽系すら気にしない程のファーストコンタクトを果たしました。ここから二体の罰当たりは数々の世界を旅してゆきます。
 それじゃあデュアンの相棒を務めるアルッパーについて解説します。取り敢えずは、もしも捕鯨反対が行き過ぎれば鯨による人間界への侵略の先に誕生した超鯨こそアルッパーなのです。彼は勿論雄なので女の身体を狙う変態です。ただの性欲丸出しの変態ではありません。何とエロゲーや昨今のライトノベルに出てくる巨乳を狙う変態なのです。しかも巨乳を美味しそうに食べるから洒落じゃありません。なので全世界の巨乳の皆さんはアルッパーが出てきたらさっさと神々を呼んで別世界に追放して下さい。とまあ冗談はここまでにして、アルッパーはある意味では人間よりも人間の本質を知る鯨なのですよ。それ故に彼は人型体型の者を見ると「二本足」と呼んで忌み嫌います。そこには同族殺しをする人間が異種族殺しをする者よりも醜く見えるからなのです。まあこれ以上はネタバレになりますので解説は控えます。
 なおデュアンは結局アルッパーとの戦いに勝利したかと言われたらこう返します。彼等は二度とやり合わないだろう、と。何せ神を超えた存在を消滅させるには相当な根気が必要ですので(辛)。
 それじゃあプロローグが終了した暁に白魔法、黒魔法、赤魔法、青魔法の四つの章がどんなものかを説明します。まずは白魔法の章から。これは主に本筋から離れてはいるが、他作品に踏み込んだネタが満載の章です。他作品と言っても自分の作品ではありません。主に著作権が切れた物からある物まで。ある物に関しましては出来る限り伏せるように努めます。
 次に黒魔法の章について説明します。これも白魔法の章と同じく本筋から離れているが、ここではブラックジョークが満載の章です。とにかくあの国の法則とかアハマドさんの所属する何とかとか有名人をディスったりとか洒落を超えてます(恐)! なので圧力がかかったら内容を変更される可能性が最も高い章になります。自分は神でもなければ権力者でもありませんので強い力には屈するのは当たり前です!
 そして赤魔法の章について説明します。これは本筋に踏み込んだ内容で、プロローグに出てくるデュアンが危険視する連中が暗躍しながら彼やアルッパーを未知の領域に踏み込ませる章です。気が向いたらやるので気長に待ちましょう(笑)。
 最後に青魔法の章について説明します。これはアルッパーと出会う前のデュアンがどうしていたかを彼の回想録で表す内容となります。ここではデュアンがどうやって神を超えてしまうのかや彼が尊敬する者がどんな存在なのかが明らかになります。言っちゃえば「格付けの旅 ヤング篇」って所でしょうか(苦)。そんな青臭いデュアンをお楽しみ出来る章となります。
 以上で格付けの旅、プロローグについて解説を終了したいと思います。

 冬眠への道はこれからも続いてゆく予定です。ここではどんな試作品が披露されるかを楽しみして……くれそうかな(悲)。ってなわけで今後の予定をどうぞ。

  十一月
 十八日~二十三日   第四十三話 選ばれしは凡庸なり         作成日間
 二十五日~三十日   第四十四話 コペルニクス・ガリレオ・ケプラー  作成日間
 十二月
 二日~七日      第四十五話 フェルマーは笑う            作成日間
 九日~十四日     第四十六話 ニュートンが支配する世界で     作成日間

 四十三話以降は七達が築いた平和がこの先どうなってゆくかが明らかになってゆきます。それは怠惰なのか、それとも飛翔なのか?
 そんな中学生みたいな事を書いて今日の雑文を締めくくります。さあ、思い知るが良い、このdarkvernuの蝸牛にも劣る筆の遅さを!

一兆年の夜 第四十二話 三兄弟物語 三つ星は今(眠)

 ICイマジナリーセンチュリー百九年一月十九日午後三時一分七秒。

 場所は新天神武首都ボルティーニ中央地区神武聖堂天同七の間。
 退陣を表明した天同七は最後の案である『三国会談案』を満場一致で可決し、今
日に至る。
 『三国会談案』が成立した年は七が『新天神武』初代最高官に就任して八の年の
最後の月。『古式神武』二代目最高官林原コブ八の了承、『真正神武』二代目最高
官天同美世の了承の他には八の年までに積み重ねてきた政策がようやく功を奏し
た事が背景にあって満場一致の可決に至った。
 それから二の月が経ち、会談場所が発案者の国の首都で、なおかつ三国にとって
出発点となる神武聖堂に決定した。会談内容は政治、経済のみならずあらゆる分野
での話し合いであり、いかにして自らの国益とするかにかかる。
 なお会談に参加者は三名。『新天神武』から発案者にして三国分領宣言をした元
最高官天同七。齢五十にして一の月と十日目になる仙者。顔立ちは三十代終盤に
見紛われる程。
 『古式神武』からは象徴天同恵弥。齢三十にして四の月と二十六日目になる仙者。
現在は第一子(ただし、雄の子ではあるが仙者に非ず)が産まれ、近々後継者に育
ててゆく予定。
 『真正神武』からは現最高官天同美世。齢三十二にして六の月と一日目になる仙
者。輝星の遺児の養母となり、赤子が生者を迎えるまで最高官を務める予定。
 彼等は昼食を済まし、これから先の事について話し合う。
「--望遠刀に代わる飛び道具は開発された。だが、大きすぎる故に持ち運びは不
便だ」
「火薬弾って言うんだ。それならば銀河連合数体を倒すのに最適かも?」
「じゃがまた穢れを深めるんじゃな。わしらは一体いつまで穢れれば気が済むかわ
からんのう?」
「永遠でしょう……でも穢れから逃げても奴等は必ず私達を傷つける! 私は例え
穢れを増大させたとしても銀河連合全てを倒す以外に全生命が生き残る道は無い!
例え彼等が私達の対抗策を講じたとしても!」
「全てを倒せる時期はいつなの? 九星の頃なの? それともその後の世代なの?」
「わしの見える先は『空が落ちる』までじゃ。それ以降が全く見えん」
「私も同様です」
「あたくしもよ」
「誰かを傷つけるような物ばかり作っても仕方ないじゃろ。わしらが本来造るべきは
誰かを幸せにする物じゃ。何かないかの?」
「あたくしの国なんですけど……『音楽』は聞いたことあります?」
「『音楽』? まさか我等の先祖生子の歌じゃないでしょうね?」
「言い伝えじゃあ、あんな物は歌とはとても思えない恥ずかしい物じゃ。
 話を戻して、『音楽』とは歌とどうゆう違いがあるのじゃ?」
「発明者はわかりませんけど、噂じゃあ数学者の集団が建物の木板や瓦から導き
出した音を元に娯楽にしたと聞きますが、本当でしょうか?
 とにかくそんな噂もあって現在『音楽』は『真正神武』で流行してます。それを国益
上一部ですが、二国に送って宜しいでしょうか?」
「いいですね。一つに集中しすぎる職者集団の励みになればこれほど高ぶることも
ないでしょう!」
「同感じゃ。是非とも『音楽』とやらを聞きたいぞ!」
「交渉成立するには恵弥と叔父様が提供する誰かを幸せにする物を聞きたいの」
「私の国は技術集団の類だよ。だったら引退軍者に一名……健康法を確立した者を
知ってる。そいつは現在、同種族の者を弟子にとり、様々な健康法を開発中だ。彼
に説得して弟子の数名を派遣するのもいいかも」
「にしてどんな健康法なの?」
「強いて言うならば『体操』。老若男女の誰もが出来る簡単な体操なんだよ。詳しくは
発案者に聞いてみるといい」
「その発案者の事を知りたいんじゃが」
「それは国益に繋がる以上は言えない。けれども『体操』は最適な健康法だ。幸せに
するには十分じゃないかな?」
「そうね。健康ってのは大事よね。あに様がもっと早くそれを知っていれば--」
「過ぎた事じゃ。わしらは彼等の死を胸に前に進んでゆくのじゃ。
 んでわしからも提供すべき者を用意しないとの。まあわしが発案しても議会に通さ
なくてはならんからのう。引退した者の言う事を信じてくれるかの?」
「いいから早く言って下さい、おじさん!」
「それじゃあこれを二名に渡そう」
 七は大事にしまっていた日記帳の写本を渡す。
「写本、ってことは初めからあげるつもりだったの?」
「そうじゃ。これなら議会を通すという面倒な事をしなくて済む。それをお前達の国で
出すのじゃ。まあ売れるかは購入者と訳者次第じゃ」
「まだ書くんじゃないでしょうか? 今は出すのを控えた方が--」
「もうわしには必要ない。わしの物語はここで終わるのじゃから」
『わしの物語は終わる』……その会談を機に天同七は政治の舞台から身を退き、行
方を眩ます。

 それから十五の歳月が過ぎる……。
 舞台は復活した氷の大地アリスティッポスに移る。
 降り立つのは齢四十九にして三の月と二十四日目になる武内人族の老婆がある
者を探しにやってきた。
(ここにいるのよ。あの方が)
 彼女は見届けるという信念を胸にここに辿り着く--ここに必ずあの雄は居ると!
(寒い。復活しても寒い。全くどこまであの方は私を困らせば気が済む? 老体に重
荷をかけさせて!)
 そう言いながらも老婆は足を踏み出す!

 アリスティッポスに降りたって一の月が経つ。
 老婆は中心点に暮らす者が居る事を聞きつけ、案内者である齢三十九にして十五
日目になる仁徳人族の老年。運命学の創始者にして現在は大陸移動研究の先駆
者だ。
「--大陸が移動していると本気で思うの?」
「そうさ。だってここは星だぞ。星がいつまでも同じ形でいられるはずがないだろうに。
だったら答えは簡単さ。『度重なる地震で少しずつ移動してる』とね」
「根拠のないことでよく威張れるわね。バルケミンの者はあなたみたいなので一杯か
しら?」
「礼を失する見方だな。まあ半分は合ってると言える」
「半分じゃあ正解に程遠いわ」
「婆さんは数学者じゃないんだから完璧を追い求める必要はないぞ」
「あなたに婆さん呼ばわりされる覚えはありません。とにかくあなたは黙って中心点にある小屋
に案内しなさい」
 へいへい--年に見合わず軽快な喋りをする老年。
(本当にアリスティッポス大陸は銀河連合に奪われたのか不思議なくらいに復活して
るのね。もはや全ては過去に帰結してゆくわ。体験した全てがもう体験出来なくなる
ように。それは悲しいことのようね。
 それでも私はあの方を見届けることだけは過去に帰結したくない。せめて余生だけ
でもあの方と--)
「着いたぞ、モーラという者よ」
 バルケミンの者はモーラと呼ばれる老婆を案内し終えると無言の挨拶で別れを告
げて、どこかへ去ってゆく。
 モーラは小屋を見る--それは小屋と言うよりも氷で出来た建物。
(氷で作ったら中が凍えるでしょう! 何を考えて--)
 無断で中に入ってゆくモーラ。すると中は思っていたよりも暖かな空気に包まれた。
「これ……は?」
「どうじゃ? わしの墓としては立派に出来てるじゃろう?」
 氷の小屋の住者--齢六十五になるいつ死んでも不思議ではない老年。
「やっと会えました……七様」
「ここを気付かれるとはのう。どうしてわかった?」
「わかりますわ。私はあなたを見届ける側の者ですのよ。あなたが政治の舞台から
去って十五の年。私はあなたの代わりに『新天神武』に全てを賭けました!
 任期は四の年。再選は一回まで。後は陸族院と空族院の創設。果ては三権分立。
行政府、議会府、それに軍府の創設にどれほど私の人生は費やされたかわかりま
すか!」
 わからんのう--七ははっきり答えた。
「でも、私も一の年より前に政治から身を退きました。もうあなたの代わりを務める必
要はなくなりました。責任をとって下さいね、七様」
「わしは君に頼んだ覚えはない……なんて言い訳は通じないの。
 どうじゃ? このままここで暮らすかの?」
 ええ、喜んで--モーラは眠りに就く事を受け容れた……。






『わしの物語は氷の大地で終える。その話は本当なのかそうでないのか?
                                   真実とは物語よりも奇なり』


 ICイマジナリーセンチュリー百十二年九月百二十日午後十時零分零秒。

 第四十二話 三兄弟物語 三つ星は今 完

 第四十三話 選ばれしは凡庸なり に続く……

一兆年の夜 第四十二話 三兄弟物語 三つ星は今(五)

『生命は一体どうして生きているのか? わしには科学的な事はさっぱりわからな
い。わしは寧ろどうして肉体に魂が入り込むのかについて興味がある。アリスティッ
ポス大陸で氷型銀河連合との戦いからじゃ。本来は居るはずのない者にまで魂と
は畏れ入った。普通の生命ならばあれは万物の神がどうとかで済む話じゃが、わし
は少し異なる見解じゃ。そもそも魂とはどうしてあるのか? 運命に従う為なのか?
それとも運命に立ち向かう為なのか? 勝手すぎるのう。
 そう言えばアリスティッポス大陸について話さねばのう。現在もまだ生命が住むに
は不十分じゃ。このまま二十の年になっても住めないのでは困る。確かにあの環境
は普通に考えても生命にとっては砂漠以上の厳しさじゃ。それでも住める範囲はあ
るはずじゃ。せめてその範囲だけでも生命が暮らせれば。贅沢な願いじゃな。
                        冬の時代はまだ終わらない今日この頃じゃ』

 十月二十日午後十時八分十五秒。
 場所は東藤原海洋。現在は海底火山を通過した辺り。
 天気は雨が降り始めた頃。
 美世様、どうか中へ--声をかけるのは齢二十八にして三十日目になるロディコチーター族の青年にして護衛兼偵察係のチーティス・バーバリッタは美世を気遣って比較的遅い速さで呼ぶ。
「後数分でそちらに行く。それまでにチーティスは寝て」
 でも--それでも美世を中に入れようと足を踏み出すチーティス。
「やめな。美世様は青くなりたい時期なんだ。あんなことが--」
 止めてくれない、マルメロ--感情的になってマルメロの方を向く美世。
「済みません。俺は目上には礼儀が取れない性分なんで。おい、チーティスだっけ?」
 呼び捨てするな--年下にタメ口を吐かれてムキになるチーティス。
「美世様の言う通り早く寝るんだ。これから俺が中へ入れるように説得してみせる」
 出来るのか、マルメロ--確認をとるチーティス。
「出来る。俺を誰だと思う……運命学の創始者だぞ」
 ま、まあそれならいいか--根拠はないが説得力のある言葉を出されたら去るしかないと考えたチーティスはそのまま自室へと戻ってゆく。
「また後ろ向きな話?」
「異なる。今度はどうして船に乗ってまで伝えようとする? 使者を送って伝えれば早いのに」
「あたくしの流儀よ。あね様には口で伝えないと真実と思ってくれない」
「手紙で伝える使者ばかりじゃないのに?」
「だから言ってるじゃないの。あたくしの流儀だって!」
 ふうん--心の内を探ろうとするマルメロ。
「雄が雌の心を読むなんて無理よ。あなたは雌の心が何なのか解ってないのよ」
「そっちを探ってない。俺が探ってるのは美世様がこれからどのような道を進むかというのを探ってる」
「あなたが運命学の創始者だから?」
「済まない、それが俺の進むべき道だからだ!」
「はあ、雌の心よりも先にあたくしは雄の心を知るべきだった。
 どうして雄は必要なさそうな知識を追究するのかしら?」
 趣味だからさ--これまた根拠のない凄みある説得力を持つ言葉を出すマルメロ!
「趣味……ねえ」

 十月二十一日午前六時四分二秒。
 場所は大陸藤原鎌足地方新仲麻呂町第二西地区。かつては天同星季の父星央と叔父である八弥が仲間と共に銀河連合から取り返し、十数年の内に復興させた町。かつての名前は恵美町。
 齢三十七にして三の月と十六日目になる天同星季は父星央の思いが詰まる町に滞在していた--三の日より前に美世が出した手紙を読みながら。

『--あに様の回復ぶりは凄いよ。今までひ弱だったことが本当でないようにあちこ
ち動き回るんだ。あね様も戻ってくる時元気なあに様を見て下さい。きっとあに様は
喜びのあまりあね様に飛びつくかも知れない。その時、あに様の赤子を連れてこら
れたらあに様に一度でもいいから抱かせて。
 その時にね。じゃあ六影の都で待ってるから。
                                              美世より』

「あの子がそんなに回復するなんて神様は大変な褒美を与えて下さったのね」
「ウンウン、ヨロコバシイコトハイイコトデスワ!」
 じゃあ早速、返事を書かないと--キュー次郎に運んで貰う手紙を書く用意をする星季。
「ううう、あああああ!」
「この、声はまさか清花! まだ九の月に達してないのに!」
 悲鳴を聞いた星季は急いで「乳母を連れてきて、早く」と臨兵キュー次郎に命令した!
(急いで清花の心を和らげないと……その前に--)
「カナ子居るの、返事して!」
「ハッ、星季様ですか、っと。フッ、どんな用件、って?」
「相変らず頭に来る訛りね。そんなことよりも緊急の用件よ、緊急の!
 大至急十名以上の軍者をここに集合させて!」
「フッ、どうしてでしょう、って?」
「決まってるわ! あたしの予想ではいつ銀河連合が来るかわからないもの。あたしが庇わないように軍者に守りを任せるの!」
「ヘッ、つまり……輝星様にお会いするまで死なない為の布石を造るの、って?」
 そう--星季は二の日より前から認めたくない別れを見続ける。
 内容は……天同輝星が夜中に眠るようにこの世を去ってゆくという夢。後を追わない為に彼女は自分が万が一に庇わないように軍者に警護して貰おうと考えた!
(あんな夢なんて真実じゃない。あの手紙がその証拠よ! 輝星は今も元気に活動してるのよ! 本来あるべき仙者の強さを身につけて!
 だから夢が真実でないのを証明する為にあたしは生きるのよ!)

 それから一の時と三の分が経過。合計四十二名が建物の外から清花が必死に戦う部屋の外まで四六時中休まず警戒する!
「ホッ、これなら安心ね、星季様」
「寧ろあたしが驚いてしまうくらいだわ! やっぱり本物の軍者は訳が違うわ」
「エ、イママデミテナカッタンデスカ?」
 腰を砕けてるのよ、キュー次郎--星季は安心させる為にそのような事を言っても見せる。
(自分の安心。これで--)
『姉ちゃん……本当に守るべきはそこじゃ、ない』
「幻聴、かしら?」
「ヘッ、どうしたのです、星季様?」
 聞こえてないの--星季以外の者はそんな声が聞こえるはずもなかった。
『この、ままじゃ、さや、か、が!』
「まただわ! これは幻聴じゃないわ!」
「はい? 星季様の仰ろうとされることがさっぱり--」
「あたしにしか聞こえない?」
 星季は自分がおかしくなったのではないかと感じ始めるが--
『だからさ、やかを、清花を助けてく、れ、姉ちゃん!』
(聞こえる。そう、そうよね! あたしが助けなくて……誰が助ける、の?
 あなたの思いの者を今--)
 天同星季もまた開いてしまった--想念へと導く扉を!

『ん? あれ? あたしは何をしてるのだろう?』
 確かに星季は藤原清花が苦しむ部屋に入った! 気がつくと彼女は大勢の軍者が何かを囲む姿を見ていた。
『何をしてるの? あなた達は大勢で清花を囲むのを……清花?』
 清花は星季のすぐ側で苦しんでいた--目を瞑ってはいるものの出てくる涙は苦しみを意味するものだけではなかった!
『何の涙? 悲しい? 子供が産まれるのよ。あなたと輝星の子供が産まれてくるのよ。そ、そんな涙なんて……あれ?』
 星季の体は宙に浮かぶ--部屋中にいる全てを見渡すように!
『銀河、連合は死んだの? 他には……え?』
 ようやく現実に引き戻されてゆく--彼女が見上げるのは木で出来た天井。

「遅かった、よ。ねえ、腰砕けた態度は止めて!」
「美世様。終わった命を呼び戻すのは後ろ向きになるのと同じだ。そっとするんだ」
「ねえ、あに様の子供が産声を上げてるのよ。清花ちゃんが笑顔で子供を抱いてるのよ。目を開けて」
「いや、確かに開いていた。でも、誰かが眠らせる為に閉じさせたんだよ。その意味を--」
「マルメロは黙ってて! あたくしは、あたくしは!」
「もう終わったんだ! いい加減に認めろ! あなたの姉も、あなたの兄ももう--」
「言わないでよ、マルメロ! あね様も、あに様も--」
死んだんだよ! 運命ってのは誰にでも等しく突きつける刃だ! いくら逃れようと無理なんだ! 死を宣告された者は特に!」
 そんなの認めないわ--天同美世は認めてしまった!
「だったら抗うのか? 拘るのか? それは死んでいった者に失礼だ! 彼等が何の為に死んだのかを考えれば自ずと!」
「ええ、あたくしは抗う……けれども拘ることはしない! 折角喜ばしい事が目の前にあるのに!
 喜ばないといけない。だって近くにあね様……とあに様がほら!」
 マルメロには輝星が居る事はわからない。けれども一瞬だが美世には輝星が見えた!
「心霊現象もまた己自身の運命を決める……のかな?
 なあご先祖様!」
 マルメロには先祖代々から受け継がれるモノがあった……だが、それはこの宇宙では決して出会わない存在。
「マルメロ、まさかと思うけど--」
「美世様にそれを感じるかと思ったが……見当が外れたな」
「美、世様? どう、かこの子を--」
「まさか清花ちゃん! この子は雄じゃないの?」
「雄です……そして紛れもない--」
 美世はこの後、真正神武の正統後継者を首都に連れて行く……二名の意志を継いで!

一兆年の夜 第四十二話 三兄弟物語 三つ星は今(四)

『シャーク傭兵団は現在海を治める武闘派集団じゃ。わしらが陸を治める。海は泳
げる種族が限られておるからのう。何でこんな話をするか? それは近年シャーク
傭兵団が海に潜む銀河連合を倒し続けたお陰で束の間の平和が訪れようとしてる
のじゃ。これはまだ未確認の情報故、引き続き調査を擁するものじゃ。
 仮に本当だとしたらそれは大変喜ばしい事よのう。わしら全生命が夢を見ていた
平和が訪れるなんぞ。いや、まだ安心出来ないのう。わしの書類は今も混沌として
おる。仕事者にも平和が訪れて欲しいものじゃ。けれどもそれは叶わないものじゃ。
少しでも気を抜けばあちこちに穴だらけの住宅及び検問所が出来てしまう。それだ
けは避けなくてはいかん。生命一名一名の暮らしを良くしなくて何が最高政務官で
あろうか。生活水準の向上が仮にも神々の逆鱗に触れてもやらねば意味は成さな
い。これもまた銀河連合を倒し続ける行為そのモノとも思えるのう。
 例え銀河連合全てを倒して本当の平和が訪れるとしたらどれほどの理想郷と為る
のか? ひょっとしたら平和を求める事そのものが烏滸がましい想いかも知れん。
原初に還り、文明・文化をかなぐり捨てる時代に逆戻りしてゆくかも知れんのう。そ
れが良い時代は果たして訪れようか? わしらは恵まれすぎたからのう。そう言え
ば輝星は恵まれた環境で健康になっているかの?
       あやつの心身が回復している事を祈るそんな就任から八年目の朝じゃ』

 十月十一日午前九時零分六秒。
 場所は真正神武大陸藤原鎌足地方新仲麻呂町第二西地区。その中で最も大きい一階建て木造建築。
 植木鉢に囲まれた庭部屋に齢二十三にして五の月と五日目になる大陸藤原人族の女性はまん丸にお腹を出し、年に似合わず植木鉢の手入れをしていた。
「遅いですね。二の日より前に妾に伝えられたというのに輝星様はどうして遅いのかな、ねえカナ子や」
 彼女の声に応えるように齢三十にして八の月と九日目になる大陸藤原金糸雀族の熟女にして令嬢の付き者藤原カナ子が令嬢が手入れする植木鉢の頂上に乗っかる。
「ハッ、どうせ姉君に断られてるんでしょう、っさ!」
「おかしいですわね。星季様はこと恋愛では妾の両親と二の時かけて話し合われて互いの両方を得てますわ。どうしてでしょう?」
「ヘッ、まあそんなのは気にしない、っの! フッ、とにかくお嬢は第一子が出来ますから植木鉢の手入れしながらゆっくりしましょう、っよ」
「この子は天同で育てるの? それとも我が藤原一族に入れるかしら?」
 カナ子は令嬢の言葉を聞いて彼女の周りを飛びながらこう言う。
「フッ、雌が産まれるとしたら藤原で育てる、っさ。ヒッ、でも雄でなおかつ仙者であるなら……天同家に引き渡します、っし!」
「何だかお腹の子は仙者のような気がする、かな?」
「ヒッ、それは我が藤原家が絶える時です、っだ! デッ、そんなことがあっても雌だったら私達藤原家は安泰、っそ!」
 そんなに私を嫁がせたくないの、カナ子は--現在この家に住むのは令嬢と付き者のカナ子のみ。
「ウッ、両親の願いです、っし」
「父上と母上の……願い」
 空を見上げる令嬢--時がいくら遡ろうとも高貴な者達の拘りまで捨てる事は叶わない。

 午前十時十八分十五秒。
 場所は真正神武首都六影中央地区真正神武聖堂。
 『三国分領宣言』以降『古式神武』と共に建造開始した。以来八の年もかけて造り続けるが、完成の日を見ない。
 そんな未完成の建物で唯一住める空間が三つあり、どれも天同星央の三名にもなる遺児が暮らす。その中で第二子輝星の間で齢三十三にして二の月と八日目になる神武人族の中年は今にも命を散らそうといていた。
「無念……僕がこんな、こんな身体で、なけれ、ば!」
「あに様! 無理して喋ってはいけない! まだ、まだ生きられます! じ、自信を!」
 必死に説得するのは齢三十一にして五の月と二十一日目になる末っ子美世。病気に苦しむ輝星と看病する美世は共に仙者であった。
「姉ちゃんは? ど、うして姉ちゃんが、いない、の?」
「あね様は現在向かっておりますの! 新仲麻呂町に住む人族の令嬢清花様の所に!」
「清花、ちゃんの? ど、どうして--」
「あに様の代わりに産まれてくる赤子を見に!」
 輝星が新仲麻呂町の清花に会う理由--それは生まれてくる子供を見る為であった!
「ぐぐ、姉ちゃんに迷惑、かけられ、ん! 僕は、いか、ないと」
「無理しないで下さい、あに様! その身体では--」
 ぐううううう--無理して起き上がろうとした瞬間輝星の身に異変が起こった!
 左手で強く胸を押さえつけながら呼吸不全に陥る輝星!
「あに様! ど、どうしました、あに様……こうなれば!」
 美世は大声で聖堂付近にいる全ての者を呼んだ!
 どうかなされたんですか--チーター族の青年達を側まで寄せると「医者を呼んで」と命じた!
(一刻も早くあに様を助けないと! 助けないと!)
 彼女もまた輝星を助けるべく応急措置を行う!
(死なないで、死なないで! あね様いえみんなが悲しむ! あたくしが悲しむ!)
 遅れて申し訳ない--成人体型一とコンマ四もするほどの青肌の老年が輝星の下に駆けつける!
「あなたはダッジャール先生!」
「いか似模……自己紹介端後似する! 私端今すぐ輝星様……いえ患者乃容態尾触診する!」
 テネス鬼族の肌は他の鬼族と比べて滑らかで擦っても傷が付かない性質。故に鬼族の中で医者になる者が居ても不思議ではなかった--齢四十八にして七日目になる『六影一の医者』と呼ばれるギガンティック・ダッジャールは医学の道を歩んできた一族の申し子であった。
「どうです、先生!」
 静かにして下さい、美世様--上下を隔てず患者を平等に診るダッジャール。
「コラ、ジジイ! ミヨサマヘノクチノキキカタヲ--」
「いいのよ、臨兵キュー次郎さん。先生は医者の鏡なの! だから何があっても特別扱いせずにあに様を診てくれているのよ! そうだよね、先生?」
「全く美世様模困った方じゃ。私みたい奈平等主義者尾呼ぶ斗端! 優先順位牙比較的小さかった羅どうするつもりなの科?」
「それは考えられない。何故ならあに様の容態は命に関わる程なんですもの」
 彼女は誰よりも自分の兄を信じていた--だからこそ出せる言葉であった!
「……触診乃結果だ。緊急手術似入る!」
(緊急手術……そこまで深刻なの、あに様は!)
 それは医学関係者以外は全て天同輝星の間から追い出される程だった--美世は関係者故、入口で立ちつくす!
 手術はダッジャールの想定では三の時で済むはずだった。手術開始から三、四、五の時が経っても未だに終わる気配はなく、それどころか入口付近での出入りが激しくなるばかり!
(どうなってるの! こんなに時間をかけたらあに様の容態が!
 今すぐあに様を……あに様を!)
 そんなに心配なのか、輝星様のことを--どこからともなく声をかけるのは齢二十三にして二十三日目になる仁徳人族の青年にしてバルケミン出身者だ。
「あなたはマルメロ・バルケミン?」
「いかにも。俺は別に慰めもしないし、手術の行方をどうこう言えるたちじゃない。
 だが、これだけは言っておく」
 マルメロは運命学の創始者--美世にある事を告げた。
「それって何?」
「運命ってのは遅かれ早かれそう決まる。ここで仮に……だろうが待っているのは悲しみしかない。
 じゃあどうして引き延ばす?」
「決まってるわ。それが……それが--」
「勝手なことじゃないか。まあ俺が美世様を止める権限なんてない。俺は黙って手術の成功を祈るだけだ」
 勝手なのはそっちの方よ--マルメロをあまり喜ばしく思わない美世であった。
 マルメロが現れて一の時と十三の分より後、とうとう入口からダッジャールが姿を現す!
「先生! どうでしたか、あに様は!」
「……単刀直入似言おう。成功した!」
 やったああ--嬉しさのあまりダッジャールに抱きつく美世!
「た、ただし! 今後端お外似出歩く事端控えるよう似!」
「こりゃあ随分と勝手な医者だ--」
「あなたよりかはよっぽど有用です! 学者の方はこれを機に帰って下さい!」
 全く三十にも成ってまだお子ちゃまかよ--文句を言いつつマルメロは聖堂を後にしてゆく!
 美世は輝星の近くまで寄るが--
「腰砕けだ! 手術後乃患者似近付く乃端やめい、美世様!」
 そうだ、忘れていた--患者は手術する為に免疫機能を全て低下している為、少しでも健康で雑菌族に触れた者に触れるとたちまち容態が急変する為だ。
「うう、ど、うやら僕は、せいか、んしたんだ」
 ええ、そうです--マルメロの言葉を気にしつつも美世は一時の幸せを感じ合う。
(マルメロは当てずっぽうを言ってるのよ! こうしてあに様が元気になってるのにそんな後ろ向きな事を言ってあたくしを安心出来なくさせてどうしますの!)
 その後一の週より後、輝星の容態は少しづつ回復に向かってゆく……。

一兆年の夜 第四十二話 三兄弟物語 三つ星は今(三)

『氷の大地は何もアリスティッポスだけではない。高山の頂上へ行けば行く程氷の
大地を踏みしめるものじゃ。耳鳴りの問題は報告書によると空気の密度が原因だと
か。小難しい事を詳しくは言えんがの。とにかく耳鳴りは良いとしても他の問題が登
山者に大きくのし掛かる。
 その一つが上に登る程減少する気温じゃ。ある地点に山があるとしてその地点か
ら山を越えるまでに風は山を登る程減少し、頂上に達してから山を下りてゆくと気温
は上昇してゆき、ある地点と同じ高さまで下るとその地点の気温はある地点の気温
と全く同じじゃ。ただし、雲がなければの話じゃが。ある地点からその地点までに雲
が発生すると気温変化の幅は縮むんじゃ。そうすると本来ある地点と同じ気温にな
るはずの同じ高さのその地点の気温はある地点より高くなり、一気に暖かい空気が
その地点に流れ込む。この現象をある学者は風炎と呼ぶ。雲の発生は暖かい空気
にさせ、その地点の気温を上げるなんて自然の神々は碌な環境を作りかねんのう。
 話を戻すが、山登りは即ち空を目指すのと同じくらい厳しいものじゃ。青く輝く空は
神々が眠る場所じゃ。登れば登る程神々は怒りおる! 起こるのは高山病。わしは
医者じゃないからその症状の詳しい事はわからん。じゃが、簡単に言うならば密閉
空間で暖炉をしている部屋に一定時間居ればそやつは大量の肺を吸い、下手をす
れば魂の抜けた身体になるのう。これは生命にとって吐くべき者である奴にあるも
のが一つ足りないのが大量に充満するからこそ起こるのじゃ。それは詳しくわから
ん。学者でも研究中じゃ。
 それじゃあ高山病の話に戻す。とにかく生命の呼吸は命の証じゃ。高い所に登れ
ば登る程空気は薄まり、視界だって無事では済まない。
 何故こんな話を記すのか? それは三の日より入ってきた報告によると--古式
神武--の象徴である恵弥が若建山に登るという話を聞いて驚いたように墨を付
けて筆を進めたのじゃ。あやつも中々の雄になってきたのう。こりゃあ、八弥兄さん
に段々似てきた証じゃ。
                           ようし、わしも負けじと仕事をしてゆくぞ』

 七月九日午前十時三分十三秒。
 場所は標高成人体型四千二百三十五付近。
 五名は呼吸困難になってゆく高さを登る--すでに身体の一部が壊死を起こした者も現われる。
(左手が全く機能しなくなっても付いて行くミリッツには申し訳ない気持ちで一杯だ! たった千以上がこれほどまで僕達を苦しめるなんて!)
「はあはあ、あ、諦めたら、ど、どうよ」
「諦めるものか! 君を娶る以上はこれく、らい、で……はあはあ!
 はあはあ、くたばるものか!」
 意地っ垂らしなんだね--シャオルーは恵弥の男気が意地の表れだと感じ取る。
「恵、弥様。このままじゃ俺達は死んじゃっし! ブルブッル!」
「しっかり、しろ、コケ也! 僕だって左手ガ動かなくテ、つら、い!」
「だからって俺の、毛は、譲らんぜ、え!」
 齢二十九にして三の月と二十七日目になる武内山羊族の青年にしてエリフェイン傭兵団の団長エリフレインは傭兵らしく予め毛を与える事を断る。
「団長自らこんな山に登って死んだりしたら団のみんなは悲しっもう!」
 俺は死なんぜえ、その可能性はないうえ--自信満々に即答するエリフレイン。
「もう、すぐよ! もう、すぐ、かせ、つみ、んかをた、てられ、るば、しょ、に、着くわ!」
「見えたけど遠いな、シャオルー」
 恵弥の右手で覆える所に絶好の場所があった--けれども五名にとってはそこに辿り着くまで油を断てなかった!
(後少し……が遠い!)

 午後二時四分二秒。
 五名は体中を触診しながらどこか以上がある箇所を探った。
「僕の左手ハモウ……くうう!」
「ま、まあ大丈夫っし! と、とにかく後……成人体型どれくらいだろっさ?」
「まだ……ううえ!」
 エリフレインは目眩を起こし、コケ也にもたれ掛かる--コケ也はエリフレインの下敷きになり「重たいからっし」と叫んだ!
「大声出せるのならまだ死なないようね、あの鶏は。
 それにしても……頭が痛い。あの傭兵山羊さんが目眩を起こすのもわか、るわ」
「僕は……吐きそう、なんだけど」
 私の方に吐かないでね--シャオルーは用意してあった残り十袋しかない物を恵弥に向ける。
「ガアアア……済まない。淫らな場面を見せて!」
「内緒にしとくわ。いいね、みんな! このことをばらしたら承知しないわよ!」
「ばら、さないうえ」
「そんなことより俺を助けっし!」
「早く登り切ってサッサト空気ノ濃い場所ニ降りたい!」
(問題は銀河連合が居るかどうか! 奴らはどの辺から来る? 頂上? それとも登りの死角から? まさか雲そのものが?)
 ちいいうえ、気を引き締めるんだぜえ--エリフレインはコケ也から素早く退けると臨戦態勢に入った!
 それに合わすかのように突然恵弥の背後から仮説民家の外幕を破って何かが襲いかかる--幸いシャオルーが彼ごと寝かしつける事で即死を免れた!
「な、何だ!」
「銀河連合!」
 しかも人鳥型なんて出てくる場所が違うっせ--人鳥型は素早い動きで恵弥に狙いを付ける!
「お前の相手はこの俺だぜえ!」
 エリフレインは後ろ右足蹴りでわざと人鳥型を避けさせると、後ろ左足を支点に左回転しながら前左後ろ蹴りを浴びせる!
「まだまだうえ! 俺は傭兵団の団長を務める雄だぜえ! 仕事者らしく仕事を果たすうえ!」
 エリフレインと人鳥型の攻防は一の分続く……そして--
「許せえ。俺達は生きる為に死なせてゆくんだうえ。安心して眠るが良いぜえ」
 人鳥型を仰向けにした後、左前足で首を踏み潰す事で決着が付く!
「大丈夫、なのか?」
「大丈夫……なわけックションぜえ!
 はあはあ、外は、寒すぎるぜえ」
 エリフレインが中に入るのを確認すると急いで仮説民家の修復作業を開始し、十の分が経ち、ようやく穴が塞がれた。
「あわわっさ、これから傷だらけの仮説民家を背負って登るっさか!」
「そうみたい。まさか休んでいる所を襲うなんて!」
「油を断てられんねえ。登る度に気を引き締めるなんて大変でえい!」
「おのれ銀河連合め! 僕の左手ガ良かったラ万全ニ戦えるのに!」
 済んだことは仕方ないです、ミリッツ--そう励ます恵弥。
(後数千……ますます辛いなんて!
 でも弱気になっては八理のことを思い出してしまうんだ! 意地でも強気にならないと!)

 午後九時三分九秒。
 場所は標高成人体型四千四百四十四付近。
 も、うげんかっさ--コケ也がふらついて足を滑らそうとする!
「危ない、コケ也!」
 間一髪の所で右手を伸して彼が転がり落ちるのを防いだミリッツ!
「はあはあ……ぎゃああああああっし!」
「大声上げるなうえ! よ、けい目眩、する、だろうえ」
 ふらつきながらもギリギリで踏ん張るエリフレイン。
「はあはあ、大丈夫か、シャオルー?」
「だ、大丈夫……なわけ、無いわ。
 頭が痛いし、もっと空気を吸いたい、気分」
「君のような高山出身者でもこの高さは辛いんだね」
「当たり前よ。そ、それに--」
 シャオルーが左人差し指で示す--そこには確かに死体があった!
「このままじゃあ道標になってしまうわよ。私の父みたいに」
 あれはまさか君のパパなのか--恵弥は崖近くに埋まる人族の死体を確かめようとする。
「違うわ。あの死体は頂上を登って力尽きた別集落の者よ。私の父は上下とも一本しか歯がないわ」
 恵弥は歯を確かめる。するとこの死体には歯が五本あった。
「確かに違う。けれども死んだのはまだ最近? もしかして百の年より前の死体とか?」
「もうやめよう。死んだ者の魂をそっとさせて」
 そうだな--恵弥はこれ以上の詮索を諦めて頂上を目指す!
(山の神々は生命が上を目指すのを恐れるのか!)

 七月十日午前九時八分十五秒。
 場所は標高成人体型四千五百九十九付近。
(咽が渇いて乾いて……水がこんなにも欲しいなんて! 砂漠よりも水が必要な、場所が、あるなん、て!)
 五名はそれでも登る。渇きと寒さと呼吸困難に立ち向かいながら死んでいった者達を辿って!

 七月十一日午後零時八分七秒。
 場所は標高成人体型四千七百八十付近。
 仮説民家を作って休む五名。
「ふうううっし! 生き返っせ! でも水を溶かす為に火を起こすなんて--」
「『空気がまた薄くなる』ッテ言いたいのか? 仕方ないだろ。凍ったままジャア水分ヲ摂取する前ニ舌マデ凍傷ニなってしまうんだから」
「ねえ、大丈夫?」
「心配……してるんだ」
「そうよ。あなた中々強い雄ね」
「強くないよ。前に君が言ったように『意地っ垂らし』だよ。僕はいつだって姉に助けられたんだ。姉は本当に強かったよ」
「えっと……八理様なの?」
「うん、もう死んでしまった。昔から姉の八理よりも長く生きられる身体を持ちながらも寿命が尽きるまで一緒にいられると思っていた。いたのに……ウウ!」
「泣かないで。ここでは余計な水分の消費よ。泣くならここを無事に降りた時にしましょう。そうすれば私の胸の中で--」
「そう、だよね! そうさ! こんな所で泣いていたら叱られてしまう!」
「まさか意地で涙を拭う気?」
「そう、意地だ! それが僕の強さだ!」
「ふふ、期待するわ!」
 二名の仲が深まる様子を横目で見るエリフレイン。
「うーん、心だけで相手を選べないねえ、俺としてうえ」

 それから三の日が過ぎる……五名は四肢ともに無事で済まないにしても互いに助け合い、励まし合いながら頂上を目指す。
 そして遂に--
 七月十四日午前零時二分二秒。
 場所は標高成人体型五千四百八十八付近。雄略大陸一の山若建の頂上に五名は立つ!
「あんだけつらか、たのにっさ!」
「綺麗……左肩一本の価値ハあるよ、この眺め!」
「あれ? エリフレインは?」
「どうやら銀河連合を見つけたみたいね。私が倒しに行きましょうか?」
「いや、今は頂上でゆっくりしよう……疲れた」
 恵弥は眠る--シャオルーの胸に埋まりながら。
「はあはあ、烏型と羊型も倒したうえ!
 さあ登ろうかうえ、俺もでえ!」
(俺は強くなったのかな? もう何かに拘る必要は……なくなったよね、ママ、パパ、そして八理ちゃん)
 彼はシャオルーを連れて山を下りて一の月が経つ。彼等は正式に結婚した……。

一兆年の夜 第四十二話 三兄弟物語 三つ星は今(二)

『かくして全生命の歴史上初めての政党制度が誕生した。じゃが、政党を結成しよ
うと動く者はまだ皆無じゃ。当然の事よ。政府が率先して行う政策には初めの内は
必ず反発するように政党制度を成立させてもいきなり政党を結成する動きは見られ
ない。それを解っていたのかある者が突然官僚十名を連れて辞職届を提出しおった。
 提案者のカゲヤマノスサナミキじゃ。スサナミキがこんな行動を起こすには訳があ
る。あやつは政党制度に重要性を知らしめる為に自らが政党を結成してまでそんな
行動を起こすのじゃ。じゃが、すぐに賛同する官僚が居るという事は初めからあや
つはそれを想定してたのかものう。まあ、すぐに動いてくれる生命が果たしているの
かは心配じゃ。塵を積もらす行動は急ぎ足の者には退屈で仕方のないものじゃ。わ
しだって早く作業を進めたいのう。でも、確認が不十分じゃと官房長官に送り返され
るからのう。じゃから丁寧に進めねばならない。書類を済ます作業は。
 さてと、そろそろわしの任期も七の年に入り始めた。いい加減に効果が出ても良い
頃じゃ。でないと後の者に最高政務官を引き継がせる作業に入る事が叶わないぞ。
        んで気になるのは--古式神武--は最高官制度は大丈夫かの?』

 ICイマジナリーセンチュリー百八年七月八日午前一時九分十秒。

 場所は古式神武雄略大陸大泊瀬おおはつせ地方若建わかたける山。
 現在端にしている全ての山で最も標高が最大とされる。その山の成人体型四千付
近にある集落金錯銘鉄きんさくめいてつ
(耳鳴りがまだある! どうして僕はこんな所にまで来たんだろう?)
 齢二十八にして四の月と十日目になる神武人族の青年は白い息を吐きながら父
譲りの豹族によく似た目の奥に強い光を宿してこの地に立つ。
恵弥めぐみ様。もう一度忠言しますが、何モこんな所マデ来る必要ハなかったノでは?」
 齢三十一にして四の月と十八日目になるタゴラスカンガルー族の中年にして象徴
天同恵弥の付き者ミリッツ・レヴィルビーは反対の立場であった。
「自分を強くする為なんだ、ミリッツ! いつまでも八理やつりに拘っていては弱くなるだけ
なんだ! そんなの八理が望んじゃいない!
 だからこそ僕はこの山を登る! 強くなる為に! そして死を忘れる為に最愛の者
を妻にしたいんだ! この集落には美しい雌が居ると聞く!」
 積極的なんっだな、意外っと--齢二十五にして五日目になるタゴラス鶏族にして
旧蘇我鶏族の青年で付き者の一名禾野コケ也は恵弥の行動に振り回されながら付
いて行く。
(それにしてもこの山を登る為に僕を含めて二十名いた登山者も半分の二十名に減
少した! また道標を増やしたと登山者は悲しむのか? 或は彼等の死を忘れない
為に上ることに挑戦してゆくのか?)

 午前八時九分十秒。
 場所は金錯銘鉄集落酋長邸。一階建てであるが集落一広い鉄製建物。換気は行
き届いており、密閉空間で起こる中毒死の心配は無用。
 その中で酋長室にあたる暖炉近くの空間。建物内で最も狭いが、生命一名分が寝
るにはうってつけであった。
 そこで朝食を済ましたばかりの恵弥は齢四十八にして九の月と六日目になる雄略
羊族の老年にして酋長タージカ・マハルーン十八世と会談。
「何仰いますかイー。あの子を嫁にーイ貰う気ですか?」
「はい。『古式神武』は確かに最高官が居れば政治に困ることはありません。けれど
も導き手……象徴が不在では何れ廃れる運命にあります。
 そこでマハルーン殿にお願いがあります。どうか集落一の美雌……人族の者を僕
に下さい!」
「……君はこの目でデーデ彼女を見たかの? 基準が異なルルーと美雌は違ってく
るぞ」
 あら、礼を失するわね--恵弥の後方に現われたのは集落一の美雌。
「これが……集落一美しい雌なの、か?」
 恵弥は驚く--彼の美しい基準からは離れていた!
「どう、美しいでしょ? 特に前歯が一本欠けてる所が更に私を可愛く見せる……な
んて集落中の雄が言ってるけど」
 た、確かに美しい--中心地出身の者にとっては色黒で肌の色とあまり変わらな
い下腹部を覆わんとする長い髪と上下唇とはあまりに幅の異なる両眼は美雌に程
遠い印象を与えた。
「何、その反応! まるで銀河連合を見るような目で生命を覗かないでよ!」
 だから言ったじゃアアーろうに--マハルーンは亀族に似た顔の形に驚く恵弥を見
て呟く。
(……しかし、性格はどうなんだ! この雰囲気、それに雄に勝る勢いの猛々しさ!
 八理に似ている! どうやら僕は彼女の容姿ではなく、性格に者目惚れした!)
 どうやら恵弥の好みに一致したようだ!
「えっと、名前は何て言うんだ!」
「ええ、あ……ああ。シャオルーよ。まだ名字はないけどシャオルーって呼ぶのよ、齢
は二十七にして、えっと--」
「月と日はわしが言おーオう。三の月と八日目。未だにーイ雄の誘いイーを断る続け
る困った雌じゃ……ってお主まさか!」
「ええ、そのシャオルーを僕に下さい!」
 お断りよ--即答した!
「断る……ということは妻にするには条件が必要と仰りたいのだな、シャオルー!」
「本気……なの? 都会の雄は私の容姿を見て諦めるのに、えっと名前は何て--」
「神武人族の仙者にして『古式神武』の象徴天同恵弥だ! 『恵』まれると弥生の
『弥』を足して『めぐみ』と言う名前です。齢は二十八にして四の月と十日目になりま
す。
 どうか宜しくお願いします!」
 こ、こちらこそ--突然の勢いに負けそうになるシャオルー!
「ではシャオルー! 君を娶るにはどんなことをすればいい?」
「あ、のねえ。初めからあなたの妻になるとは決めてないわ。
 そ、それでも私を連れて行きたいの、なら山の頂上にのぼ、りなさい!」
(山の頂上……ただでさえ耳鳴りと厳しい寒さでたくさんなのに!)
 恵弥は暖房の効いた空間で大量の冷や汗を至る所で流す--床に滴り落ちなが
ら!
「止めときなさいイー、恵弥様。山の頂上に到達しーイた者は現時点で一名も居なイ
イーのじゃぞ! いくら仙者とハハーいえ、下手をすれば--」
「……じゃあすぐに行こうか! たった一名の心を掴めないようで何が象徴と呼べる
か! 僕はこの山に登ったのは生半可な覚悟の為ではない! 想念の海に旅立つ
たった一名の姉に苦言を聞かされる前に行動する!」
「ほ、本当にやる気! や、止めなさい! 私の為に命を捨てるような茶が無い行動
なんて!」
「無茶も謀り無きことでもない! 僕は仙者だ! 頂上如き登れずして雄が務まる者
が居るか!」
「もしかしたら銀河連合が居るかも--」
「居たら倒す! 僕達生命体は彼等と戦う運命にあるんだ! 銀河連合を倒せない
なら僕はそれまでのこと……だが僕は雌を娶る者! 必ず生きて戻る!」
 無茶苦茶だわ--シャオルーは何時の間にか蘇我鋭棒を身に着けていた。
「君まで来る必要はない。死んでしまっては困るから--」
「私だって戦士よ! あなたがどれほど屈強かは知らないけど雄に負けるような柔な
身体じゃないわ!」
 ますます八理にそっくりだ--恐らく拳による喧嘩をすれば自分は負けると感じた
恵弥。
「シャオルーの言葉は正シシーいぞ。あやつは綱引きで十年間頂点に君臨すルルー
のじゃ。恵弥様は足手纏いーイになるぞ」
 なあに、八理に比べれば今のところ大したことないよ--死者と比べられて歯軋り
を鳴らすシャオルー。
「その……えっとあなたのお姉さんよりも強いと証明すれば私の強さを認めてくれる
かしら?」
「勿論……けど今は頂上を登るのが大事だ! 行こう、シャオルー!」
 恵弥はシャオルーのみならず、付き者のミリッツ、コケ也とエリフレインと共に標高
成人体型五千四百以上になる頂上を目指す!

一兆年の夜 第四十二話 三兄弟物語 三つ星は今

 四月三日午後十時二分十二秒。
 場所は新天神武首都ボルティーニ中央地区中央官邸。三階最高政務官室。
 旧神武の頃から変わらない部屋で天同七は残業していた。
「三つに分かれても終わらすべき案件だけは三分割されない。寧ろ増加の一途を辿るのう、モーラ?」
 齢四十七にして一日目になる神武人族の長にして最高官就任六の年目に成る天同七の問いに対して齢三十一にして四の月と二十七日目になる武内人族のモーラは--
「自分が作った業を自分自身で得るのですよ。私は秘書としては一名分以上の働きしかしません」
 と冷たい様子。
「じゃが、新たに秘書を採用するにも予算が通らないのう。財務長官デュー・ジニンは働き盛りな上にけちでのう。いくら理屈を考えても中々首を縦に振らんのう」
「当たり前です。だけども税収を増やせば良いという問題でもありません。税はお金周りが盛んな時や安定した時に増やすから意味があるの」
「しかし、お金周りは良いと言えるか? マンドロン硬貨の価値は三分割した頃と質は変わらん。じゃが、国民が一向に豊かにならないぞ。出来れば質を少し落としてでも金回りを円滑にしたいものじゃ」
「ですが、金銀を集めるにも限度があります。だから金の純度を減らした硬貨を市中に流しますわ。ですが、国民の皆さんは商いをよく知っている為、すぐに物の価値が上がります。確かに物価上昇は豊かにはしてくれますが、行き過ぎれば物々交換の時代に逆戻りもします」
「行き過ぎればの話じゃろう。けれどもわしら目上の者だって節穴じゃない。特にあのデューはしっかり見極める事に関しては信頼出来るぞ」
(はあ、毎日こんな話ばかりだわ。一向に進展しない。全くどうして七様は発想の先を考えないのかしら?)
 仕方ないじゃろ--まるで心を読むかのように呟かれて「わわ」と大声を張り上げるモーラ!
(あるとすればこうして心を勝手に読んでくる所だわ!)
「それよりもモーラ。任期の件は了承取れたかの?」
「はあ、それが交通大臣近藤イノ兵衛と防衛大臣大山ニャン太、それに自然科学長官鈴木チョウ代の反対もあって会議を開くには至りません」
「五年でも首を横に振るのか! いや、一名は左回りに飛ぶんだったな。
 と、とにかく会議を開かない事にはいつまでもわしが最高官のままになってしまうぞ!」
「その方が良いでしょ? だって国の頂点が任期満了或は任期の途中ですぐ止めて国民が混乱するよりかは遙かに--」
「あのなあ、モーラ。わしが『新天神武』という名前にしたのは他二つの国と異なり、人族以外でも頂点に立って導けるようにする為なんじゃよ。何でも天同家だけで政治を進めちゃあ前に進まないぞ、これは!」
「拘りですのね。捨てちゃえば気楽になりますよ」
「捨ててどうにか成るならいっそ……待てよ! わしもまだまだボケは進行しちゃいないのう。
 早速会議を開くぞ、モーラ!」
「明日にして下さい! 今日は遅い上にやるべき仕事がまだこんな山を築いてますわよ!」
「じゃあ気合いを入れて終わらせよう、モーラ!」
 はあ、まだまだ長生きしますね--それでも七が気になるモーラだった!
(ああゆうことを言わなければこんな目に遭わなかったのに!)

 四月五日午前十一時五分十四秒。
 場所は中央官邸四階。四階は新天神武が誕生してから大急ぎで新設された階層。現在も工事は続けられているが、唯一出来上がった部屋がある。
 それは新たな会議室。立方体にして成人体型は三千に満たずなおかつ二千五百を超える。四階が未開発な為か、左側にある三つと七が座る席に向かって奥の三つの出入口が使用出来ない状態だ。
 今日は七の提案で会議を開く事になった--二の日より前にモーラの一言で思いついた七だったが、睡眠不足と熱の影響でずれ込んだ。
「--納得しますかね? ゥイ誇りを傷つけるということだってあると私は考えますが」
 齢二十九にして十の月になったばかりのテレス蟻族の青年にして財務大臣デュー・ジニンに同調するように齢三十八にして十八日目になるルケラオス象族にして生活安全大臣マモリネラオス・アダルネスも七の提案に難色を示す。
「軍者には軍者ぞう、官僚には官僚ぞう、そして国には国の誇りがあるぞう。今のところ我も賛同しかねおう」
「うーん、良い案だと思ったが一日ずれたのがいけなかったのかのう?」
「関係ないわ、七様」
「コラアア、モーラ殿オオ! 最高官殿に向かって『口の利き方を正せ』と何回私から言わせれば気が済ムム!」
 叱るのは齢三十六にして八の月と八日目になるゲネス猪族にして交通大臣近藤イノ兵衛。モーラとは犬と猿の仲だ。
「はあ、あなたも口の五月蠅さだけは正さないのね。全く飽きないことよ」
「モーラ殿オオ! もういっぺん--」
 止めなよス、見苦しいス--齢四十一にして十一の月になったばかりの蘇我蟷螂族にして教育長官蘇我カマ美は喧嘩を止める。
「わしの案は後回しになったとしてこれからどうするのじゃ? 任期の事でもお前達は全会一致をしてくれないからのう。三分の二以上の賛成でも納得出来ないじゃろう。どうする?」
 それ似つきまして端私科羅提案牙あります--齢十九になったばかりの若くして頭脳支援者となった神武鬼族の少年カゲヤマノスサナミキは左手を挙げた。
「何じゃ、スサナミキの小僧よ」
「政党制度尾作って端どうでしょう科?」
「政党? 何故そんなものを作るのじゃ?」
「より新たな政策尾取り入れる為です! このまま一つ乃集団出案尾出し合って模意味端為しません。なの出政党尾設ける事出各自競い合い、勝った政党牙政権尾握る斗いう政治似しましょう!」
 七を初め、この場にいる者達は良い案だと思った反面--
(経済の仕組みを政治にまで及ぼすのね。でも、それじゃあ政権を握る為に政党が産まれる事だって--)
「若造の言う事を聞いたわしが馬か鹿であったのッツ! おっとッツ、わしは鹿じゃったわッツ」
 齢四十五にして二十三日目になるエピクロ鹿族にして文化長官シカッザ・ムーシと同じ意見を出そうとする者が居た。
 あたしもそれに反対っよ、選挙目当てになっちゃうわ--齢三十二にして五日目になる鬼ヶ島兎族のイサミ・ドウワンは両耳を横に振りながら反対を表明する。
「困りました。実端七様牙出した案乃お陰出私端選挙制度似競争尾盛り込んだけど。確か似皆様乃仰る通りです。
 この案端選挙目当て乃政党牙産まれる可能性だってあります。それ牙政権尾握ったりした羅国民乃生活端良くなりません。ですが、良い案尾通す政党だって同時似産まれる乃です! 後ろ向き似考えたりしない出いい乃です! 競争端幸せ尾産む斗端限りません。どこ乃世界だって競争出割尾食らう者牙居て当然です!
 です牙、殻似閉じこもるだけ出端内向き似なるだけです! そんな理由出『新天神武』牙出来た乃です科! そうじゃないでしょ、皆さん!」
 確かに--七は呟きは一同を鎮めるのに効果が抜群だ。
(そうだわ! 七様の理念はそうゆうものだわ! 内向きとかそうゆうものは星季様、輝星様、美世様が治める『真正神武』と恵弥様が治める『古式神武』が貫いて往けばいいこと。
 けれども七様が治めておられる『新天神武』は異なるわ! 誰にでも機会があれば最高政務官になって生命を導く政策を行うこと! それが『新天神武』が進むべき道……茨に最も触れる道なの!)
「わしの出した案はいずれ時期が来ればお前達……いやお前達の意志を継ぐ者も含めて賛同する日が来よう。それまではわしが最高官で居る間に選挙制度の整備を進めねばのう。
 どうじゃ、スサナミキの案に賛同出来ない者は論を出したまえ」
 はい--手を挙げたのは右隣に座る最高政務官秘書モーラ。
「お前かの。他の大臣及び長官かと--」
「私で良くないの!」
 御免、モーラよ--七は両手を広げて苦笑いしながら謝る。
「ふう、じゃあ聞くけど選挙で七様に反対する政党が現われたとします。その政党が国民の高い支持を得たまま選挙に勝利して七様が最高官のまま政権を握るとどうやって運営してゆくのですか?」
「わしが座を降りた後になる。第一それまでの空白期間中に引き継ぎを進めるのが普通じゃ。国家神武の頃から引き継ぎを正しく行ってきたじゃろう、皆の者も!」
 確かに--訛りは異なれど納得する会議室にいる全ての大臣及び長官。
「空白ねえ。じゃあすぐには反対に回らないことでいいのかしら?」
「確かに引き継ぎは安定に最適じゃが、効率が宜しくない。けれどもいきなり角度を大きく変えた政策なんて国民及び官僚が混乱するだけじゃ!
 じゃからこそしばらくの間は最高官にとって意見の合わない者達が政権を握っても都合の宜しくないように引き継ぎ制度があるのじゃ。いいかの、モーラ」
 はいはい--目上の者に敬う事が出来ないモーラだが、七とのやりとりではこれが普通の返事だ。
「じゃあ採決を行うぞ。顔下に置かれてある白い紙を中央に寄せると賛成の意を表す。逆に自分の方に寄せれば反対の意じゃ」
 カゲヤマノスサナミキが出した案の結果は全員賛成で成立するが--
「わしの出した案も採決を行ったが、わしとモーラ、それに官房長官色葉七不思議以外は反対に回って不成立か! まだ早いんじゃのう」
「仕方ないわ。それに星季様と恵弥様が同意してくれるとも限らないんだから」
 拘りはそう簡単に捨てられんのか--七は右人差し指と親指で顎髭を弄った。
(拘り……私だって素直になりたいけどそうはいかないもの。だってこの性格は先祖代々培ってきた素直になれない遺伝子なんだよ。今更変えようにも年をとりすぎたわ!)
 『新天神武』の明日はアリスティッポスの現状と同じく吹雪の真っ直中であった……。

一兆年の夜 第四十二話 三兄弟物語 三つ星は今(零)

 ICイマジナリーセンチュリー九十九年三月三十五日午前十時零分零秒。

 場所は不明。神々が眠る地。二百の年以上もの間、生命体が離れた不定の世界。
 そこに三名の神武人族らしき若い雄達が集まる。
「星央兄さん。こんな所に連れてきてどうするの?」
「そうだぜ、兄貴! 俺は雌達と一緒に買い物にでかけてたってのに!」
「自分が仕事を放り投げて罪深いと思っていたのに八弥は!」
 真ん中にいるのは天同星央ほしお。齢二十四にして二の月と九日目になる獅子族に近
い目つきをした青年。
 星央から見て右正面に居るのは弟の天同八弥やつみ。齢二十一にして十一の月と二十
九日目になる豹族のような鋭い目つきをした青年。
 星央から見て左正面に居るのは末弟の天同なな。齢十にして九の月と一日目にな
る特殊な呼吸をする少年。
「オホン、自分がこの場所に来た理由はこれから話す」
「んで何? ここに可愛い子ちゃんが居るとか?」
「いないよ、八弥兄さん」
「まずは自分が最高官と象徴の両方を兼任する以上は一度初心に返ろうと思う」
「初心? 何でまた急に!」
「僕には何の事かわからないな」
「七はまだ成者ではない。無理して大人の世界に入らずゆっくりと階段を上ればいい」
 そうだね--七は念が残りそうな表情をする。
「気にすんな! 兄貴は昔から押しつけがましい雄だし」
「オホン、生命の上に立つ者はどうしても下々の目線より上の方に移ってしまいがち
だ。なのでまずは子供心に立ち返り、どうして全生命の希望と成るかを考えなくては
な」
「面倒だ。俺は絶対そんな考えは御免だ!」
「八弥兄さんのそんな部分が星央兄さん達に注意されるんだよ」
 五月蠅えぞ、七--七に唾を飛ばしてしまう八弥。
「いいだろ、七。基本的に自分達兄弟は同じように出来ちゃ居ない。自分にない物を
二名とも持っているのが証拠だ」
「兄貴と異なり、俺は政務をこなせんぞ」
 そうじゃないだろ--星央は首を横に振る。
「つまり星央兄さんはこう言いたいんだね。八弥兄さんは戦闘の才が優れていて、僕
は長生き出来ると」
「そうゆう事だ。羨ましい限りだぞ、そんな宝物というのは」
「俺は寧ろ兄貴を羨ましいと思ってるぜ! 何たって美智琉と性行為したんだろ?」
「恥ずかしいよ、八弥兄さん!」
「八弥……ここをどこだと思っておる! 神々が眠る場所なのだぞ!
 今度そんな淫らな言葉を出したら四六時中十名以上の付き者をお前の所にくっつ
けるぞ!」
「それはご勘弁な事だな、兄貴。今のは腰砕けな言葉だ」
「だったら言わないでよ、そんな恥ずかしいのは」
「それで何が言いたい、八弥」
「俺と違って仕事熱心で真面目な上に良い嫁さんも持ってるんだ。それに俺と違って
どんな案件にも受け答え出来るってのは--」
「それ以上言うな、八弥。自分はこう見えて無理をする雄だ。何でもしないと最高政
務官は務まらない。お前も何れ自分の後を継ぐんだ。なあに、無理だったら官房長官
や他の大臣に協力を惜しんでもいいのだぞ!」
「はあ、俺には出来ないな。応援要請なんて」
「僕は応援以前にみんなに頼ってしまうな。僕は星央兄さんのように努力する事も八
弥兄さんのように戦いが得意でもない。あるのは母の様に長く生きるだけだよ」
「十分羨ましいだろ! 俺は戦いばっかだから長く生きる自信がない」
「自分は残業ばかりしているから早く死にそうだ。仙者に産まれればどれほど弱点を
補えたかわからない物だぞ」
「そうかな? 何か気になってるけど話ずれてない?」
「そうだったな、すっかり忘れていたよ! オホン……では話の続きだ。
 自分達はいつかこの地に戻るだろう。その時はどこなのか?
 自我が溶け込んだ後なのか、逃げる事を諦めた時なのか、付き者と共に永遠の冬
眠に入る日
なのか?」
「はあ? 何だそりゃ! 兄貴の癖して何不思議話じみたこと言ってる!
 まるで俺達の未来を予言してるみたいじゃないか!」
「確かに! 達三兄弟の未来がそうなるような予言をして……あれ?
 ところで八弥兄さん? 星央兄さんは?」
「そう言えば居ないな。ここにいるのは俺と七。
 まあ気にするな。兄貴は自我を捧げた後だし、いいよ」
 良くないよ--必死な表情で八弥に問い詰める七!

 ICイマジナリーセンチュリー百三年九月三十四日午前一時九分五秒。

「それに俺は感謝してるぜ。あの時兄貴がそんな予言をしてくれなかったら俺はこう
して迷う事すら叶わなかったんだから」
「兄さん、何だか話の前後が繋がってないような?」
「ああ、繋がらないってのは当たり前じゃないか!
 何たってここは……やめよう。理恵の墓がある前でそんな訳わからん事は」
「そうか。ここが八弥兄さんの思い者との出会い場所か!」
「今でも美弥には未練はあると思うが、理恵と出会わなかったらこうして父親をやって
いたかもわからない」
「はは、確かにそうかもしれないね」
 笑うなよ、恥ずかしいだろ--八弥は上唇近くに生える髭を左人差し指で触って照
れ隠しをする。
「星央兄さんは見守っているかな?」
「兄貴の話を聞かなかったか? 俺は今でも覚えてるぜ。自我を捧げたんだよ」
「そうだったね……ふあああ。
 もうそろそろ寝ないといけないよ。じゃあ僕は--」
「待て、七! 帰る前にこれだけは伝えたい!」
 僕も暇じゃないんだから手短に言って--七は足を動かそうと震わせる!
「手短には言えんが伝えるぞ!
 兄貴の子供達が作った世界俺の子供達が作った世界七が作った世界。どれに
集合するんだ?」
「何言ってるんだよ、八弥兄さん。私にそんな事聞かれても答えられる訳があるわけ
ないよ! 第一……ヘクっしょい!
 寒いんだか……ら?」
 七は自分がどうしてアリスティッポス大陸中心点にいるのかわからなかった!

 九月七十七日午後十一時十三分十七秒。
「そうか。思い出したんだ。私は死んでいった者達の遺志を受け継いで全生命を導く
事を誓ったんだよ! 星央兄さんと八弥兄さんが死んだこの地で!
 子供達はこの先、私より早く死ぬ者も遅く死ぬ者も平等に茨の道を進んでゆく。そ
れは果たして全生命体にとっての希んだ望みなのか? それとも勝手気ままな選択
をした絶たれた望みなのか?
 わしはまだまだ未熟じゃ……記憶に振り回されてこんな夢を見るなんて」
 七は目を覚ますと付き者に布団をしまわせた後、居間で一名になった。

 ICイマジナリーセンチュリー百八年四月一日午後十一時四十五分三十六秒。

 机の前に座り、日記を書き始めた。
『三兄弟の物語も今回で最後になる。じゃから最後まで読みたいのなら是非付きおう
て欲しい。三つの道が軌道に乗る所をよおく読むのじゃ。いや、無理な話かの』

通名といい他所様にいって悪口といい、奴等は本当にどうしようもない

 どうもdarkvernuです。
 時事ネタ始める前に『格付けの旅』が数行程更新されたので読まれたい方はカテゴリ覧の<格付けの旅>をクリックして下さい。
 それじゃあ何回ネタにすればいいかわからんが、クネクネを擁するあの国への嫌がらせの為にまた時事ネタやります。

 俺の名はない。
 いっつも俺は名前を変えて生活してる。今日は『桜坂真』という名前に変えようとブローカーに頼んでみたが--
「ああ! てめえそれ、どうゆうこっちゃ!」
「無理なんだ! 団体の力が急速に弱まったせいで『桜坂真』どころか『桜木花道』という名前さえ変える事が出来なくなったよ!」
「ディスってんじゃねえよ! いつも通り区役所に脅せば済むだろ!」
「それがそこの地域の区長が俺達に厳しいのがなってやりづらくなってしまった!」
「じゃ、じゃあ『中井貴一』で通れば--」
「昔、『福山雅治』の通名を使った奴が逮捕されただろ。あれのせいで有名人の通名が使いづらいんだ!」
「ふっざけんだ、バッカドー! 爆弾で脅せば--」
「だから無理だって言ってんだろ! 区役所にそんな事をしたらまた俺達の評判が--」
「たかが日本人から評判悪かろうと大した事ねえんだぼ! 日本は世界から--」
「それは逆だ! 寧ろ俺達の方が世界から--」
「大統領の尽力をディスるなよ! EUで日本の悪事を証明し続けてんだろうが!」
「それは違うぞ! ヨーロッパに行ってまで日本の悪事を言って彼等が納得するはずが--」
「もういい! テメエは国賊だ!」
「は、早まるな! また--」
 『桜坂真』本名不定の男はブローカーを鋭利な刃物で刺し、殺害。その後、区役所で時限爆弾を仕掛けようとした所を通りがかった警察官に取り押さえられ、逮捕。
 調べに対して男は「通名を変えようとしただけなのにあの役立たずは拒否したから殺したんだ! 悪気なんてねえよ!」と供述。時限爆弾設置については「区役所を脅せば通名が使えると思ったんだ。殺すつもりなんてねえよ!」と供述した。


 とまあフィクションはバッドエンドに終わりましたが、奴等はこんなフィクション物の事を平気でやります。何回もネタにしたくないのにまたネタにしてしまう自分も奴等を悪く言える立場ではない。けれども嫌がらせをした以上は説明するしかありません。どうしてネタにしたかを。
 えっとまあ旧宮家の人が許さんぞおの会を一部擁護しただけなのに叩く馬鹿野郎に対して少し怒りが湧いたのと、後は通名を使って詐欺をした奴が逮捕された事やクネクネが他所様に言って日本の悪口しか言わん事への怒りがあったのでネタにしました。
 旧宮家の人については原発への姿勢やその他一部で自分とは一致しない部分はありますが、基本的にあの方は正しい事を言います。なのでそれを批判するんだったらよしふ・スターリンが擁護するテロレイシスト集団の行動はどうなんだよ、と言いたい訳! あいつらは「仲良くしようぜ」と言いながら中指立てて舌出すような下劣な行為のみならず、手を出すという法を平気で無視する事までやります。そんな連中の方こそ許さんぞおの会よりもゲスでしかありません。まあ許さんぞおの会がどうなろうと自分は知りませんが、無くなりそうなのは寂しい限りです。
 次に通名による犯罪についてですが、この場合は通名に関する事について自分なりの考えを表明します。とにかくKY新聞やテロ朝を中心とした報道テロリスト共は全ての外国人犯罪者に対して本名で報道しないといけないと思います。通名で報道すれば必ず割を食らうのは日本人です。確かに日本人で凶悪犯罪を犯す物が居るのは仕方ありません。人間誰しもサイコパスになります。自分だってアニメ『サイコパス』の槙島のような犯罪者になるか、映画『悪の教典』で伊藤英明が演じる蓮実聖司のような快楽殺人犯になるやも知れない。それくらい人は犯罪者に成りやすいのです。
 話を戻して何故通名は日本人が割を食らうのかについて説明すると、かのルーシー・ブラックマン事件で逮捕された容疑者織原城二は日本人ではありません。なのに日本国内では一部を除いて全ての報道機関が通名で報道してます。こんなので割を食らわないとしたらどこで割を食らうと言えますか? 正直むかっ腹に来ます!
 通名は別に名乗っても良いですが、罪を犯してまで通名でいこうとする連中は世程日本を貶めたい連中だよ。そうゆう連中が居るからこそ最近通名を使った詐欺事件が起こったと言えるでしょう。
 自分なりに考えるなら通名報道はそいつ自身や国の為にもならないので止めて欲しいと思います。つーか、犯罪者の権利は弁護士呼ぶかその他限られた行為しかないだろ! 遺族が可哀想だよ。
 最後にクネクネの悪口外交について短く纏めます。とにかく悪口言う前に国を何とかしろって話。何とか出来ないからこそ伝統芸能の悪口外交に傾くんだろうね(悲)。
 以上で時事ネタの説明を終えます。

 じゃあ四十一話の解説に入ります。今回は四十話に比べて緩い話になりました。
 前話まで名前以下登場しなかった美世がどんなキャラなのかを表したり、星季と恵弥の対立を明確に示したりと読者にとってはいつもの退屈な話運びになります。ただ、全てが退屈でもありません。二つの別離という物も描かれており、その影響は後々にして七達を動かしてゆきます。
 ちなみに三つの国家は現代のように同族争いをする為に興しておりません。遠い過去ではいずれ一つに纏まる為に敢えて三つに分かれております。彼等が武器を向けるべき相手は三つに分断されても変わらず銀河連合なのです。同族に対しては決して矛を向けません。何故なら彼等はそうゆう風に産まれた時から出来てます。それが遠い過去の常識なのです。
 それから三つの国家形態について参考にした国があるとすれば『真正神武』の方は知らないうちに参考にしているかもしれませんが思いつかない。『古式神武』は今の日本やイギリスの政治体型を参考にしてます。ただし、日本やイギリスと違って首相にあたる最高官になるのが非常に大変な登り道となります。『新天神武』は勿論アメリカの政治体型が基になってます。ただし、三つ目の関門だけは大きく異なっていてアメリカでそんな事をすれば予算がいくらあっても足りません。なので三番目の存在は最高官になるのを険しくさせます。
 ただし、『真正神武』と『古式神武』に於いて共通する事は最高官及び象徴は男系となります。女性が象徴になる場合は中継ぎでないと意味を為さない。その辺はイギリスの国王制度と違います。
 まあこんな感じで第四十一話の解説を終えたいと思います。

 未だに『格付けの旅』はプロローグを終えないでいるよ。そろそろ深夜でもいいから終わらしにいこう。ただし、気が向いたらね。
 んで三兄弟物語は次で終わります。これ以降は作者自身長い冬眠生活に向けて話を作って参ります。それじゃあ今後の予定をどうぞ!

 
 十一月
 十一日~十六日     第四十二話 三兄弟物語 三つ星は今      作成日間
 十八日~二十三日   第四十三話 選ばれしは凡庸なり         作成日間
 二十五日~三十日   第四十四話 コペルニクス・ガリレオ・ケプラー  作成日間
 十二月
 二日~七日       第四十五話 フェルマーは笑う           作成日間

 自分は何かに嵌るとそれをパクッてゆきます。そして現在は数学に嵌ってますので数学的な無駄知識で物語を作る予定です。ただし、プロやアマチュアのような難解な方ではなく、簡単な数学なので宜しくお願いします。
 じゃあ、これにて。ワイルズは本当に偉大な数学者だよ。

一兆年の夜 第四十一話 三兄弟物語 七と奈々(七)

『あれから七の年が過ぎた。あの宣言から一の年までに多くの生命は迷い、悩み、
そして進んでいった。血の正当性を求めるならば--真正神武--へ国籍を置く生
命もおれば、古き良き物を大事にするならば--古式神武--へ国籍を置く者も居
る。国籍? ああ、説明するのを忘れておったわい。
 国籍とは一の年までに説明が為された国に住む為に必要な印じゃ。これがないと
家を持つ事のみならず、議員になる事さえ出来んのじゃ。まだまだ出来上がったば
かりの制度じゃから現時点でも抜け穴がいくつか点在しとるのう。
 話を戻すぞ。新しい物を求める生命は--新天神武--へ国籍を置くのう。そう
して生命は三つの道を進み始めた。それが猶予までの一の年の間の出来事じゃ。
 次に猶予から一の年までの出来事を説明する前にまずそれぞれの国について補
足しないとの。初めに--真正神武--じゃが、最高官は天同輝星。副最高官に
天同美世、摂政に天同星季の二名で心身共に齢最高官を支え合うのじゃ。
 次に--古式神武--じゃが、最高官には今まで国家神武の官房長官を務めた
神武鼠族のヤマカゼノチュミノカゼが成る。そんで象徴は天同恵弥。上官だった者
に恵弥は支えられる。
 最後に--新天神武--についてじゃが、最高官はわしじゃ。今のところ選定制
度はわしが最高官で居る間に様々な議論を交わす以上は日記を書いている現在で
も完成しとらん。まあ未完のまま施行されるのはいつの世でも同じじゃ。けれどもわ
しが居る間には皆が安心出来る制度に補強しないといかんのう。
 それじゃあ猶予から一の年までの出来事を説明するぞ。といってもわしが最高官
の--新天神武--についてしか説明せん。他二つは詳しく書けん以上、省くぞ。
いいかの、最初の一年は大変じゃ。何しろ折角判子を押すべき書類が三分の一に
なると思ったら大きな間違いじゃ。至る所で調査に告ぐ調査、公共整備にかけるお
金の捻出、用材不足、なおかつ打撃的なのは三国分領宣言後は新たに傭兵組織
があちこちに出来上がってのう。そのせいで自主退役する軍者が増えて困ったわ
い。全く最近の若い者はどうしてそんなに発想豊かなんじゃ。わしにも発想の一つ
や二つくれれば仕事に追われる毎日も軽減出来るのに、羨ましいぞ。何て若者を嫉
妬してもしょうがないのう。
 二、三の年では新しい国に住むのが耐えられず--古式神武--に引っ越す者
をどうするかで悩んだのう。あそこは二頭体制であり、なおかつ技術が一点に集ま
る以上は暮らしやすいのじゃ。更には税金も軽くてわしの国に比べれば暮らしやす
いのは一目瞭然じゃ。だからこそわしらは困ったのじゃ。強制するのは却って若者
達を窮屈にさせる。かといって自由にさせすぎると老年しか住む者が居なくなる。行
き合ったりばったりで対策を執りながら聞き取り調査をしてゆくしかなかったのう。
 そんで対策が功を奏する四、五の年ではようやく流出は収まったが、ここからが大
変じゃ。わしも含めていかにして国から若者の流出を減らす作業と若者を呼び寄せ
る政策で話し合ったのう。わしらも大変なら星季達が舵取りする--真正神武--
だって大変じゃ。聞いた話ではそれまでの間に輝星はある令嬢に恋をしていていろ
いろと星季や美世に相談を持ちかけてるとの事じゃ。更には競い相手--古式神
武--の所に生命が流れるのを少しでも防ごうといろいろ政策を行ってるとの事
じゃ。あっちの国では学問分野の発展は著しいものの、それ以外での分野が遅れ
ておるから負けじと進めていっとるのう。予算は大丈夫かの?
 話を戻すが、わしらの国--新天神武--は二つの国との競争に負けじと若い
衆の意見のみならず、わしみたいな年寄りの意見も出来れば組み込んでいっとる。
じゃが、上手くいくかどうかは年を重ねないと効果が出ない。どの政策も最初の内に
は必ず反発するのじゃ。そんな声を聞く度に疲れが溜まりやすくて困るのう。
                 そんな感じで現在六の年に入った。今わしが居るのは』

 ICイマジナリーセンチュリー百八年四月二日午前零時二分四秒。

 場所は新天神武首都ボルティーニ中央地区神武聖堂天同七の間。かつては天同
六影の間と呼ばれた居間。
 齢四十七になったばかりの神武人族の老年天同七は座禅を組みながら黙想する。
代々仙者にのみ可能な予報を始めていた--本来は朝に行われるものだ。
 七は今は亡き七に直接会う為に深夜に予報を始めた。彼の様子を正座しながら正
面で確認するのは齢三十一にして四の月と二十六日目になる武内人族の熟女。
(全く七様の行動は読めない。仕事終りに死んだ母親に会いにゆくなんてどうかして
るわ! 奈々様の自我が必ずしも残っている保証なんてあるの? 私には信じられ
ないわ!)
 熟女の名前はモーラ。武内族に名字はない。あるのは名前がややこしくても出身
が解れば名字の必要はないからだ。
(まだかかるわけ? 困った生命ね。ちゃっちゃと済ませばいいのに!)
 モーラは現在も七の秘書を務める。理由は七の指名だけではなかった。
(あれから二の時が経ったわ。あーあ、自分の意志で七様を見届けるんじゃなかった
わ! こんなにも退屈にならずに済んだのに! これだから雄の者は困るのよ! い
つだって雌の心を解ってくれないんだから!)
 満足しない呟きが出そうになりながらもそれから一と二十五の分も待つ。
 ようやく七の目は開く。
「あんまり私を待たせないでね、七様」
「もう少し目上の者への言葉を選ぶのじゃ、モーラ。全くお前さんの一族は代々礼儀
の知らん連中ばかりで困るぞ!」
「そんなことは後で良いからさっさと言ってよ! 奈々様に会えたの?」
 七は首を横に振る。
「そう、やっぱり自我は融けたのね」
「わしとモーラも死んだら母の様に成ろう。じゃからこそ確かめたかった!
 母が死ぬ直前にどうして故郷に帰ったのかを!」
「結局返ってきたのは今後の予報なわけね。どうだったのよ?」
「言葉を選ぶのじゃ、少しはの。
 実は--」
(……『空が落ちる』? 何なの、それ!)
「大分先の未来図じゃ。いつ訪れるかは定かではない。逃れられぬ運命ならばその
間に対策は執れよう。わしらの自我が溶け込んだ先であってもの」
 七は亡き母が描いた六影の肖像画に目を向けた。
(三つに道は分かれたわ。でも七様はこう思っているはずだわ。いずれ予言の日ま
でに三つの道は一つに戻る。『奈々様が最後にとった故郷へと帰る行動はそんな予
言を表していたのかも知れない。後ろ向きな考えなら最後に故郷の土を触りたかっ
た』なんてね。
 今となっては当時の奈々様にしかわからない心情だわ。いくら雌の私でも雌の考え
はわからないわ。雌ってのは雄乗りそうとする像と異なり、感情に左右されやすい訳
じゃないの。時として理知的な行動を躊躇なく行っても見せるんだから!)
 国家神武は今、三つの道を進んでゆく……けれども、三兄弟の物語は続く。





 ICイマジナリーセンチュリー百八年四月二日午前三時二十分一秒。

 第四十一話 三兄弟物語 七と奈々 完

 第四十二話 三兄弟物語 三つ星は今 に続く……

一兆年の夜 第四十一話 三兄弟物語 七と奈々(六)

『間に合わなかった。わしは運命にこれほどまで怒りをぶつけたくなった事は一度も
なかった。だが、いくら死を回避しても待っているのは将来の死。わしがもっと早く現
場に駆けつける事が出来たのなら姪っ子一名をあの世に送る事も流れ星への警戒
を怠らないようにする事だって出来たのに。
 三度の流れ星は三体もの銀河連合が現われる合図。一つ目が囮なら二つ目以降
は八理を死へ導く為の合図。それも高度に計算されたものじゃ。それは一重に銀河
連合の仕業ではない。未来がそう決めてしまった以上は手が打てんのじゃ。
 手が打てない。他にもあったのう。八理の死を切欠に二名の喧嘩もそろそろ抑え
る者が居なくてどうしたものか。特に恵弥は八弥兄さんに似ている分、いつ逃げても
不思議ではなかった。じゃが、わしはそんな事はさせまい。あやつにはこれからの
国家神武に必要な導き手じゃ。例え神々に叱られてもあやつには八弥兄さんの道を
進ませまい。あやつはあやつ、八弥兄さんは八弥兄さんの道がある。これも大人の
勝手な振る舞い。けれどもわしはわしの勝手を貫く。
 それは恵弥のみならず星季、輝星、美世にも言えるのじゃ。あの三名にもそれぞ
れの道がある。それぞれの道を進んで欲しい故にわしは母のように大人の勝手さ
を行使する。わしは年をとって母に似たのじゃ。じゃが、母のような道を進む気はな
い。ボケの進行が早まる前に手を打つのがわしの道。
 それが天同七の進むべき道じゃ。
                                  あの世で見ているか、母よ』

 七月三日午前九時三十七分三十九秒。
 場所は国家神武首都ボルティーニ中央地区神武聖堂前。
 大雨の中、数十万もの生命が今か今かと七の宣言に聞き入った。
「しかし本当に分裂するんのか?」
「星季ー様と恵ー弥様の中がすーんごく恐い状ー態だったーから仕方ーないだーろ!」
「空が落ちる日を生き延びるた家計である僕達はまた離ればなれるに?」
「お祖父ちゃんはこんな事を望むのかアアス?」
 アリスティッポスで死んだ兄も同じ気持ちかな--チアンジとは三つも年が離れた弟チアンダは早口言葉で心境を読もうとした。
「わしはどこへ行かれようが筋トレ出来れるるばいいであろう、フン!」
 群衆はお喋りをしながらも今後を安心出来ない--三つの分断されようとする国家神武の将来に自信を持てず、少しでも気を紛らわそうと必死だ。
 七の宣言は後半にさしかかった!
「--天同恵弥が示す国家像についての説明は終了する。
 これよりわし自らの国家像について説明する。初めにわしは国の指導者を決める制度についてじゃが、これには国民全てが成れる機会を与える。もう一度言う。国の指導者を決めるに当たって国民全てが成れる機会を与えるのじゃ!」
「え? え? 何て言ったにゃ?」
「俺達に舵取りイーをしろって言いたいーイの?」
「正気、七様!」
「随分と大胆う! 星季様よりも挑戦的う!」
 自分達でも機会があれば頂点に立てる--群衆は夢のような制度に喜びもしたが、一部では安じ得ない心境に成る者も現われる。
「--よって誰でも簡単に最高官に成れるものではない。そうなってしまうと政務を知らない人気車なら誰でも最高官に成ってしまう。それを防ぐべく、最初の最高官にはわし自ら成ろう。そうする事で後に続くものに指針が出来るじゃろう。そうなれば必ず『結局七様一名の好き放題じゃないの』という事に成るだろうが心配はいらない。そうならない為に--」
 七の話を後ろ側で聞く齢五十一にして二の月と二日目になる隻腕の杖つき老年カゲヤマノツクモノカミと七の秘書になったモーラはお喋りをする。
「本当に七様は権利を手放すと思うの?」
「思う。何故奈羅あの方端優しすぎる。三つ似別れさせるなんて七様だからやった事なのだ。星央様模八弥様模やらない。何故奈羅一つ似纏める事似精尾出す以上端。
 七様端優しすぎる。なの出権力尾手放す事だってやる」
 そうなの--モーラは七の方に目を傾ける。
「--以上でわしの国家像について説明を終える。
 これから先は皆もわかる通り、国家神武は三つに分断しよう!」
 七は三つの国家について説明してゆく。
 一つ目が天同星央の子供達が六影県を中心に北へ広がる国『真正神武』。
 仁徳島のみならず藤原大陸全てを包む領地。最高指導者は必ず仙者でなければならず、生者に到達しない場合は天同家の血を引く者が摂政を務めるか、或は中継ぎの仙者と成って幼少の仙者を補佐する。なお最高指導者は中継ぎを除いて必ず雄でなければならない。
 これが『真正神武』の簡単な概要。
 次に説明するのはタイガーフェスティ町を中心にやや南西に広がる国『古式神武』。
 ラテス島のみならず西物部大陸から現在最南端に位置する雄略大陸まで覆う領地。二頭体勢による政治体型と成り、従来の国家神武と同様に象徴と最高官が頂点に立つ。ただ異なるのは象徴は必ず天同家の男系が務め、最高官は従来に比べて門戸が狭く、国民による投票で選ばれても大臣選びで最高官による任命を経なければならない。それが通った後、大臣内で三分の二以上による投票を通す事で初めて最高官に指名され、象徴による任命を経て最高官に成る仕組みだ。故に今までのように象徴及び最高官の気分次第で選挙をしたり勝手に決める事が容易ではなくなる。なお最高官は天同家以外でも成れる模様。
 これが『古式神武』の主な概要。
 最後に説明するのは首都ボルティーニを中心にやや東に広がる国『新天神武』。
 東物部大陸から鬼ヶ島、エピクロス島、北蘇我大陸及びアリスティッポス大陸全てを領土とする。最高官は一定年齢に達すると全ての種族が成れる。ただし、一定年齢に達した国民全ての得票であっても各地域で当選した議員数に応じて最多得票数を獲得してなおかつ決選投票と呼ばれるもので最多得票を獲得出来た者が成るというもの。なお二つを通過しても決選投票で最多得票を獲得出来ない場合は一からやり直すという非常に厳しい選定制度である。初めの内は最高官の席に座るのは天同七。時期が迫ると制度は施行される。
 これが『新天神武』の示す概要。
「仙者のみが最高官に成れる『真正神武』。
 象徴は天同家だが、最高官は厳しい関門を通った者だけが成れる『古式神武』。
 そして、わしが示す『新天神武』……。
 猶予は一の年はある。それまでに往くべき道を進むのだ! 時間ある者は進むべき道の為に悩み抜け! 時間なき者は死に場所を求めて踏み出すのじゃ! そのどちらでもない者が居るならば猶予までに迷うのだ! わしは君達の中にある心を信じる。強くあろうとする精神を信じる。君達ならば進むべき道を踏み外さないとわかるのだから!」
 それは七自身に向けた試練でもある--己の道が適切なのかを知る術は遙か未来でしかない!
 大きな賭はいつだって幸せを逃がしてゆく。七の示した道は希望を突き放す賭けでしかない……それでも七は茨を裸足で踏む道を進んだ!
「--以上がわしの三国分領宣言である!」

一兆年の夜 第四十一話 三兄弟物語 七と奈々(五)

『わしが八理の言葉に引っかかりを覚えて一の週が経つ。もうじき大晦日が迫る。
除夜の鐘は準備が整い、煩悩を捨てるには十分な体勢を築く雪積もる冬。
 雪か。子供の頃は母と星央兄さん、それに八弥兄さんと雪合戦をしたなあ。実在
が確認されない雪達磨族の像を作るのも楽しみの一つじゃ。けれども戻れない。わ
しらはあの頃に戻る事は叶わない。それは八弥兄さんの子供達も同じ。二名は赤
ん坊の頃からずっと一緒だと聞く。だからこそ二名は惹かれ合う--その様はまる
で姉弟と言うよりも幼馴染のように--な。わしの幼馴染は全て想念の海に旅立っ
たというのに。
 わしはいいか。そんな事よりもあの二名だ。こうゆう事態に限って必ず銀河連合は
来る。今は数多く倒されて更には海にいる軍者一同が銀河連合との戦いに精を尽
くす日々。けれども問題はそらだ! この場合そらとは雲の上からやや下までの範
囲じゃない。青くかかった向こう側の事だ。
 かつての国家神武が食われたのはそらから落ちてきた銀河連合の大群は瞬く間
にその地を不毛へと変えた。現在では年月をかけてようやく住めるに十分な状態ま
で回復してもじゃ。
 間違いなく来る。わしは何としても八理を守らないといけない。
           けれども仕事に追われてその任をチーティスに預ける事を決めた』

 六月九十六日午後十一時六分七秒。
 場所はタイガーフェスティ町未開発地域。
 八の年より前、貸借対照宇宙論に群がる擬似科学者達が結成した団体『メヒイスタ』は瞬く間に信者を集めて開発費の増額に迫った結果、要望に応える形でタイガーフェスティの拡張が始まった。
(腰砕けすぎて何とも馬か鹿な要望に応えた私達も同罪だね!
 そもそも『メヒイスタ』の連中は何がやりたくて結成したの、パパとママの思い出深い地に!)
 中条理恵に瓜二つとなった女性天同八理は背中に着けた蘇我鋭棒『石川麻呂』を輝かせながら!
(誰もいない。当然かしら。もう銀河連合を心配する必要ないもの。今では海だけに銀河連合が……いいえ、大空にもかな? 私は頭が良くないもんね、恵弥君と違って)
 そんな彼女がどうしてこの地にいるのか? それは--
「はあはあ……今日は珍しく仕事が早く終わったよ、八理ちゃん!」
 彼女の前に現れたのは天同八夜に瓜二つの面持ちである天同恵弥、八理の弟。
「やっと一緒に見れるんだね、ここで!」
 ああ--星空を見上げる恵弥。
「見て見て、恵弥君! あの星が流れるわ! 絶対あの星は私たちの太陽系からすぐ近くなんだわ!」
「どうかな? 案外ご先祖様が生まれる前に流れた星かもしれないよ。だって遠い星は『光年』と呼ばれる距離で測られるんだからさ! 一光年なら一の年より前に光った星って事だろ?」
「でもそれじゃああの星が流れるのはつい数の年より前じゃない? 私たちのご先祖様が生まれる前だったら絶対ゆっくりと流れるって!」
「知ってるよ。わざと言ったんだよ、八理ちゃんには」
 生意気な弟ね--恵弥を左手で右肩を掴み、右拳で米神に軽く押す八理。
「痛いよ八理ちゃん! 相変わらず腕っ節だけはパパとママ譲りなんだから!」
「そんなパパとママの良いところを受け継がなかった恵弥君は仙者になったのよ。それは素晴らしい事なのよ!」
 どこが素晴らしいのさ--恵弥は下を向く。
(ごめんね、恵弥君。こんなお姉ちゃんでごめんね! 本当なら死ぬまでずっと一緒と約束したのに私は一生命として寿命は残り二十の年しかないもん。一方で二倍以上ある残り寿命を持つ弟。恵弥君が俯くなんて無理ないもん)
「僕の方こそごめん、八理ちゃん」
「いきなりどうしたの? まだ口に出して--」
「僕は仙者であることを誇りに持てないんだ。いつだって夢に出て来るんだ。一緒だったはずの者が突然僕から消えてゆくのを! 恐いんだ、仙者である事が!」
 ごめんなさい、恵弥君--許されるはずのない想いを抱く八理は優しく抱いた。
 そこには姉弟だからこそ味わえる生命の温かさを共有してゆく--どんなに辛い現実が待ち構えても抱き合う事でそれを払拭する。
 仮に八理の背後から母の命を食らった百獣型が牙を突きたてようとしても!
 都合良くやらせないぞ、銀河連合--流れ星がまた一つ流れるのを背景にチーター族の少年は寸前で右に突き飛ばした!
「この音は……逃げて恵弥君!」
 恵弥を百獣型から離すように後方に左後ろ脚で蹴り飛ばす八理--同時に鋭棒を抜き、構えに入る。
 気を付けてください、八理様--百獣型に飛び込んだチーティス!
「全く私がやられると本気で思うの? こう見えてあなたよりかは技術では負けないのよ!」
 百獣型はチーティスの攻撃を捌いた後、寝技に掛けた!
 うぎぎ、逃げてください--二名を逃がそうと大音量で叫ぶ!
「じっとしてなさい、チーティス! 今……助ける!」
 頸動脈を締め付ける百獣型は左右に巧みな動きをしながら攻撃を躊躇わそうとする!
「うぐぐ、八理ちゃん。こ、んのままじゃ--」
 静かにしなさい、恵弥君--自信満々の表情で間合いを詰めてゆく八理。
(確かにこのままではチーティスに当たる……私以外なら!)
 それは一の秒という僅かな時間--鋭棒の動きを読んだはずの百獣型は右に揺らしたと思ったら綺麗に眉間を貫かれた!
 はあはあ、まさか--相手を思い通りの方向に動かす技術に瞬きが止まらないチーティス。
「さす、が八理ちゃんだ!」
 いまさら何言ってるのよ、恵弥君--恵弥に振り向き、両目を閉じて唇を歪ませる八理。
(これが本当の勝利……のわけが--)
 このままじゃ、恵弥様が--毛動脈を絞められていたのでうまく血液が回らないチーティスは素早い助走が出来ない!
「どうしたの? 後ろに何かい……る?」
 振り向くとそこにはもう一体百獣型が--それは真っ直ぐ左前足爪で恵弥の顔面めがけて振り下ろされる!
 させないわ--彼女の頭上に流れ星が落ちる時、百獣型は『石川麻呂』の一撃を心の臓に穴を開けた!
 それでも振り落とそうと爪を突くが、時間切れだった--口から赤黒いものを満点の空めがけて放ち、活動を終える。
「た、助かった。生きてる、の?」
 もう、可愛いんだから--尿を漏らす恵弥に笑顔で近付く八理。
 どうやら今度こそ自分達は助かったのですね--何言ってるのかわからない速度で喋るチーティス。
「恥ずかしい、うう。こんなのは絶対秘密にしてくれ、二名とも!」
「案外器の小さい恵弥君! でもそこが気に入ってるのよ!」
 利き手で恵弥の頭を撫でる八理。場が違うと考えて去ろうとするチーティス……だったが--
「感じる……これは!」
 チーティスに訪れる刃--身体全体で彼を庇う恵弥!
(でも……あああああああ!)
 八理は見た--赤いものが飛び散る中、アリスティッポスの生還者であり自分の父の弟七の姿を!

 六月九十七日午前零時零分四秒。
(泣いてる? 恵弥君が泣いてる? なんで恵弥君に抱きつかれてるのに温かさを感じないの? めぐみくん? だれ? あれ? だれなのかな? だきつくもののほかにちーたーがいちめい。あとはあのおじいさん? あれ? おじいさんって? ってってなに? つめたい……つめたいってなに? なに? って? あ、ああ、あ……)
 八理は頭に刃を刺されて海馬が傷ついた模様--故に急激な記憶の流出が発生!
(あわああわあ、あアイワ、ぇゥゥぃ……)
 彼女は恵弥が何を言ってるのかかろうじで聞こえる--聞こえても通じる事はない。
(ァゥ、ぅぅぉぉ……)
 海馬の傷は八理自身の生きる気力まで流出。やがて彼女は冷たい通路へ向かってゆく--言葉も意味もわからずただひたすらに……!
 天同八理は僅か二十年の短き人生を終えた……最愛の弟の腕に包まれながら。
プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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