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一兆年の夜 第四十話 三兄弟物語 八は輝き、七は動く(六)

 三月五十一日午後一時二分十七秒。
 場所はアリスティッポス大陸ティッポス地方。
 年中吹雪が発生する地方。それ故にここに暮らす生命は一名としていない。
 ただし、他の大陸では冬は寒気に見舞われる時期もアリスティッポス大陸では比較的暖かい時期となる。この地方も例外ではないはずが--
「おかしい! 氷の世界では冬は夏のような気候じゃなかったのか!」
「どうやら銀河連合似よる操作端わしら乃予想尾超えたもの似なる! 先乃強制的奈裂け目斗いい、不可思議奈現象斗いい、そしてここ乃吹雪斗いい、こ、こ、れ端--」
 し、し、しぁ--七達が声を出す事もままならない程吹雪は強くなった!
 それは赦しすら容れる余地もなく進行部隊の体調を崩してゆく!
「どどがでででやややす--」
「マモノスすすすうッツつつつ、ささあささ--」
「シカックもも、マモリモルノスすすも、ああわあ、がが--」
「無理、されような。シカック殿も、マモノス殿も、りすこ殿も」
「と、と、とにかくオイラ達ハア、ここを制シイ、なないトオ!」
(制するなんて拙には無茶な要求に感じるっざ。特にこんな都合良く出来た現象の中でっぜ。都合良いのは本来は本当に正しい者にしか与えられないはずっじ。包丁鍛冶にしてもっぞ、服を着る順番にしてもっぜ、正しい行いをしない者には都合が良い展開はやってこないと昔から言われてきたっず。
 ところが今では銀河連合の方が都合が良いっだ。これも吉良家に代々伝わる『世界観補正』の賜物なのだがん? 拙は学者じゃないんでこれ以上は論理展開出来なっず)
 物部わに十は強烈な吹雪に耐えながらもどうやって利がない大陸を乗り切るかを思考する。
(七様が居れば不思議と乗り切れる気がしてならんっず。けれどもあの方は強くない。寧ろ鍛冶職者よりも弱いっが。寧ろここまで来た事が不思議でならないっだ。
 だが、七様だから乗り切れるとも限らんっじ。拙達が何とかしないと意味を為さないっざ。にしても止まれば余計に死は近づくっぜ、かといって進んでもしに近付くっだ。ならば進む以外にないのっざ。
 それ以外なら弱い時間帯を狙って進むしかないのかっず? まるでたたら作業だなっず。少しでも風を通す力を違うとすぐに全てが終わるっぞ。どうにもならない仕事だっじ)
 わに十はその後三の時も模索をするも全てが当てにならないと気付き、諦めた。
 一方の七は鼻水が凍り付いてもなお死んだ二名の魂を背負って進む。ただ弱音を吐くことなく進み、無言の鼓舞を皆に与えてゆく!
「わた、しは、あき、らめ、ない、か、らあ、な!」
 それから七の日が経ち、ようやく真鍋べア彦が最後に辿り着いただけで終わった難問のテオドロス地方に足を踏み入れた--アリスティッポス大陸に足を踏み入れた数の七分の二だけになりながら!

 三月五十八日午後九時十三分四十四秒。
 場所はテオドロス地方。
 気温はティッポス地方ほど急激ではない。けれども問題は--
 助けっと下さう--北条組三名は緩い氷を踏み、凍える海へと消えてゆく!
「何て事だ! じゃあ私達は大丈夫な氷とそうでないのを区別しながら進まなければいけないのか!」
「そのようとですといえるまでに。拙者の考えなことのではテオドロス地方の環境であるべきと銀河連合による都合の良い運びならです、それらが--」
「口を挟んで申しわけありませっざ、いつ現われるとも知れない銀河連合に十分注意しながら進行して下さいっず!」
 わかった--ただでさえ赤くなった顔を更に赤くする七。
(海に落ちれば冷えすぎた湯に浸かっじ、拙でも死ぬだがん。どこかに銀河連合が潜っぞ。氷の崖は少しずつ欠け落ちながらもなお奴等を隠し通すっが!)
 わに十は全周囲を隈無く見渡すものの未だに銀河連合がどこから現われるのかを予測出来ない。
(半透明の氷を寒すぎるほどの気温であっても両眼をかっ開いているってのに居ないっじ。おかしいっず! この機会を逃す程奴等は間抜けであるはずがなっざ!)
「わに十ヨオ。オイラ達の見方が違ってルウンじゃないか? 現にいくら凝視しても銀河連合ラアしき存在を確認出来ない! 奴らは必ず居るハアズだ! オイラ達ノオ勘は告げているハアずなのに!」
「五月蠅いぞ、二名! 銀河連合尾探しているようだ牙、わし端とっく乃昔似気付いたぞ!」
 何--七とわに十、それにベアレルは一斉に驚きの声を出す!
「じゃあ教えてくれ、ツクモノカミ! どこにいるんだ?」
(あの爺さんがわかるくらい当たり前の場所に潜むのがん? どこだがん? 奴等はどうやって拙達の目に幻を……幻っざ? ま、ま--)
「なあ班長ぶ。氷に出来る限り力を加えぶに渡ればいいってこぶ?」
「そうだナナ。そうして動いてゆく氷を出来る……ってなななんダダ?」
 どうし--齢二十五にして八の月と十一日目になるゲネス猪族の近藤イノ太郎の部下である豚族の班員が先に前右足を踏み出し、そのまま氷に食われ、骨にされた
「ヒイイ! 氷が、氷が!」
「落ち着いて下さいっじ、七様っが! 銀河連合はどうやらアリスティッポスの氷にまで姿を変える程にまで変異出来るようだがん!
 まさに難攻不落の地方っず! 拙達はこんなにも奴らの好き放題を受けるなんてっぜ!」
 氷型銀河連合は次々と班及び組の者達に襲いかかる!
 彼等のやりにくい所は--
「小野りすこを舐めるんな! きま……破片になっても襲い来るん!
 うわあああ!」
「りすこおおおおう!」
「そうかッツ! 奴等は氷だから水になったら水型銀河連合となって俺達をッツ!」
「ここまで我等に都合無きだとどうすればよろしいか!」
(火で燃やすしか道は無いっざ! さすがの氷型も火に炙られれば耐えがたいっじ!)
「ここは私が銀河連合に命を差し出す!」
 ななっが--わに十は一瞬、七を疑う!
「これ以上生命が死ぬのなら私が奴等の攻撃を受ける!」
「死にマアすぞ、七様!」
「大丈夫だ、ベアレル! 私は命を差し出すつもりはない! もしも危なくなったらすぐに飛び出して良いぞ!」
(だったら拙が七様の盾と成って--)
 まだ早い、わに十--ツクモノカミがわに十の歩みを止めた!
「死んだらどうすっざ! もう残るのは星季様っが、輝星様っだ、美世様っず、八里様っぞ、恵弥様しかいないのですぞっど! 責任取れるのでっざ!」
 信じるんだ、七様尾--ツクモノカミは右人差し指で七を示す。
 七は中央官邸並の体積を持つ銀河連合に身を差し出す!
「私は神武人族の長にして代々受け継ぐ仙者天同七なんだ! 天同七ならここで死ぬ事は有り得ないんだ! 私は自らの鞘から包丁を抜かない代わりに魂に於いて包丁を使う!
 自らの系譜よ、私の呼びかけに応えろ!」
 七はようやく八弥が遺した言葉の意味を理解し、左手で鞘を強く握りながら氷型に進んでゆく--兎のような目をした青年は今、瞳を煌めかす!
(ようやく八弥様が七様をこの地に連れてきた理由を納得したっが! 彼は間違いなく運命に愛されているっず!)

一兆年の夜 第四十話 三兄弟物語 八は輝き、七は動く(五後)

(わし乃名前端カゲヤマノツクモノカミ。現在七様尾お守りしつつ銀河連合尾次々斗倒してゆく。この集落出倒した銀河連合端十体似上る。この程度端朝飯前……乃はず牙右手出握る雄略包丁端所々似欠けた部分牙目立っている。やはりこの大地端銀河連合がねじ曲げている奈、事実尾!)
 ツクモノカミは未だに戦う事を躊躇う七を守りつつ、迫り来る銀河連合に余力を残しながら倒してゆく!
 あがあああがああがあ--七は八弥の叫びを聞く!
「ツクモノカミ! 兄さんが、八弥兄さんが叫んでいる!」
「けれども八弥様乃元似向かう事端……って七様!」
 にいさああああん--七は叫び声の方角に向かう!
 すると--
「あ、れは? やつ、み、にいさん?」
 右肩から先は抉るように千切られた天道八弥の姿はあまりにも無惨で、無情に映った--気がつくと七は鞘から包丁を取り出していた。
「や、やめてくれ! 八弥兄さんが居なくなると私はこれからど、どうすれ、ばば……兄さん?
 やつ、み、兄さん? ニイサン? ヤツ、ミ、にい、サン? ははは、こんなのは……こんなのは……あ、有り得ないよ。どこまでも手間をかけたんだよ? 一杯迷惑かけた八弥兄さんが? 名誉挽回も劣名返上も果たせないまま、どこかへ行ったりは、しないよね? しない、よね? ははは……や、やめてくれよ、銀河連合! 八弥兄さんはもうお爺さんなんだよ? そんな兄さんをこんなにもする意味、ある? だ、だ、か、らさあ? お願いなんだよ。しないとどうするかって? 私のお願いを聞いてくれ? 
 あ、あ、あああああ、ニイサン? やつ、みにい、さん? はは、はは、は……?
 やつみにいいいいさああああん!」
 天道八弥の物語はこうして幕を閉じた……ここから天同七の物語は動き出す!

 歪みがあればそれを修正すべく力が働く--天同七の行動は全ての事柄に未来を与える!
「私はもう迷ったりはしない! 星央兄さん! 八弥兄さん! 私にもう少しの勇気を与えてくれ!」
 指揮官型は七の動体視力で完治しない速さを以て左肺を攻撃するものの--攻撃したのは幻であった!
「止まるんじゃないよ、銀河連合! まさか私達に使ったやり方は都合良く事を運ぼうとする行為じゃないだろうな!」
 七の攻撃は指揮官型にとっては欠伸もの--避ける事は容易。
「何で当たらないんだ! 当たれよ、当たれよ、当たれよおお!」
 八弥との戦闘を経験した指揮官型にとって七の技は赤子のようなもの--けれども反撃だけはどうしても出来ずにいる様子なのか!
「七様! あなた乃技出端指揮官型似掠り傷一つ付けられない! ここ端わし牙--」
「いいや、私がする! でなければ折角八弥兄さんの見せた演舞の意味がない!
 私は思い出したいんだよ! 演舞の真実を!」
 七は全身を筋肉の痛みに苦しみながらも冷えによる皮膚の傷に耐えながらも産まれながらの呼吸法によって疲れを抑え続ける事二の時……。
「はあはあ、まだ当たらない! だけどまだやるんだ! そうでなければ--」
 七は真っ直ぐ進む--七と指揮官型との戦いは既に周りの銀河連合が七の異様な後光の元に進行部隊は歪みをものともせずに次々と押し倒し、既に優勢に傾いていた!
(指揮官型乃動き牙おかしい! 七様端どう考えて模八弥様どころ科星央様似模負ける! それなの似何一つ攻撃しない……違う! 攻撃する素振り端見せている! 牙指揮官型端自分達乃行った都合乃良い未来斗同じ状況尾見せられている! 七様端知らないだろう牙この現象端恐らく過去牙過去出あるよう似現在牙現在出ある斗いうわし出模踏み込めん学問分野似ある科模知れぬ!)
 指揮官型は周りの状況に気付いたのか、突然銀眼を光らせ、全銀河連合を撤退させた!
「はあはあ、わたしはまだまだ戦え--」
 指揮官型は足下にある氷を割り、水中に潜って撤退してゆく!
「ま、て、く、れ!」
 七は初めて命を懸けた--それはあまりにも対価を払う事になった!
(七様端結局銀河連合尾死なせる事端叶わない科。わし端今まで七様尾丹精込めて育ててきたつもりだ。ようやく動き出した斗いう乃似まだ力尾眠らせる科!)
 戦いに勝利したのかどうかは各員次第。ただはっきりする事は問題児がレテ集落で命を落としたという事実。
 しかし、彼等は後ろ向きにならなかった--寧ろ八弥の死を切欠に動き出した一つの星はアリスティッポス大陸を奪還すべく生き残った者達に勇気を与えてゆく!
「これは勝利ではない! まだ道の途中なんだ! 私は兄さん達のように強くない! 寧ろ弱いんだ! 指揮官型を倒せると思って挑んだけど掠り傷一つ付けられないんだ! だから私はどうか強くなるまでみんなを頼るつもりだ! ごめん、みんな!」
 天同七は希望の星となって今背筋を伸す!

一兆年の夜 第四十話 三兄弟物語 八は輝き、七は動く(五前)

 九月五十日午前五時七分一秒。
 場所は廃レテ集落。氷の大地であっても耐えがたい臭いは漂う。
「銀河連合さえ居なければここも神々が活き活きするのにっじ!」
 仕方ねえだろ--早口故にチーチャルの声はわに十の耳では聞き取れない。
「八弥様ですね。どうしたといえば?」
 居たのか、ワッシャン--齢二十八にして六の月と九日目になる武内鷲族の青年による応答が来るまで我を忘れる八弥。
「居たのかといわれてよりもどうして考え込んでたんですねなのか? まさかここに銀河連合がいるとですかと踏んでそんなに考えに--」
「済まないがワッシャン。鷲訛りで長く話すのはやめろ。聞いてて何喋っているのか解りづらいんだよ。
 と、とにかく俺はこれからどう進めるか考えていたんだ。先程みたいに突然口が開くような不可思議な事が起こらんでもないだろ?」
 言われてみるとですね、確かになら--ワッシャンは納得する。
「八弥様。わし端ある疑問牙浮かびました」
「言ってみろ、ツクモノカミ」
「先程乃口端明らか似自然現象出端ありません! あれ端まるで……忠言すらさせない科、銀河連合!」
 やっぱり居るんだよ、この集落に--七が見つめる先には陸、氷下、ならびに空から百を超える銀河連合が現われた!
 班長、数が多すぎる--チアンジはチーティンに寄り添うように構えた!
 いいか、二名とも--チーチャルは二名の部下にチーター班は陽動の役目を任された事を伝えた!
「兄さん、私は八弥兄さんのようには--」
「出来ない? 当たり前の事を言わすか! 俺みたいに成るんじゃないぞ、七!」
 で、でも--七は右腰に挟み込んだ神武包丁『零』を抜くのを躊躇う。
「いいか、七。包丁は抜く為にあるんじゃないぞ。演舞を見たお前ならその意味を真に理解出来る!
 けれどもお前は抜くのを躊躇っている。抜くんじゃない! 抜こうとするな! 包丁は己の魂を使う為にあると知れ!」
「意味がわかんないよ……なんて喋っている間に銀河連合が--」
 俺が抜いたのは包丁じゃない--八弥は抜き身の『星央』を左手で握り、銀河連合のど真ん中を駆け抜ける!
「包丁を抜いているじゃないか……そ、そんな事よりも刃毀れした星央兄さんの形見で戦うのは危ない過ぎる!
 ここは誰か--」
 俺達が居るんだ、だから七様は安全な場所へ--チーチャルらチーター班は人鳥型三十六体を惹き付けるが、信じられない事に距離が急激に縮まってゆく!
 は、班ちょおおおう--チアンジは二倍の速度で迫るように感じる十三体に囲まれ、全身を残らず食われた!
 チアンジイイイイ--チーティンは怒りで陽動を忘れ、目の前にいた人鳥族の襟首目掛けて急加速!
 何なんだ、あれは--チーチャルは信じられない光景を目撃!
「もう使い物に! こうなったら……でい!」
 一方の八弥は正確に斬ったはずなのに使い物にならなくなった星央を鞘に戻して徒手空拳による攻撃に移る!
(チーティンまで死ぬなんて! あれは確かに襟首に当たった……甘い!
 なのに襟首を噛み砕いたのは銀河連合の方なんて俺の目はいつからそんなに老いた? 幻を見る程までに直視の力が……それ!
 今で二体目……。右肩がまた更に重たくなったような……何?)
「とうとう出やがったナア、指揮官型メエ!」
 余裕の構えなのか、突然進行部隊のいる場所の中央の氷が突起し、下から指揮官型が全身を露にした!
「馬科鹿出端ないんだぞ! わし牙気付かないなんて一体この大地端どうなっている!」
 後は頼んだぞ、みんなアアア--自分よりも速いという有り得ない事をやる二十八体ものアザラシ型に乗っかかられ、抵抗する事もままならないまま念無き死を迎えるチーチャル!
(どきやがれ! 指揮官型は俺が相手してやる! けれども素手であいつに傷一つ--)
 八弥はある物に気付いた--それは指揮官型によって生じた氷の槍。
 だが、八弥にそれを渡さないのか指揮官型が避ける暇も与えない速度で間合いに入った!
「攻撃を避ける程俺は腰砕けにできちゃあいないぞ!」
 攻撃よりも先に左上段蹴りを指揮官型の顔面に当てた八弥は反動を利用して氷の槍まで接近--最も鋭い氷を左手で掴んで構えをしてみせる!
「冷たい! 確実に凍傷を受けたな! だが、もう関係ないぞ!」
 またしても指揮官型は八弥に避ける暇も与えず、鼻の差まで接近!
「『避けない』ってんだろ!」
 八弥は動きを読んで槍を突いた--惜しくも指揮官型の右上腕に刺さった!
 真ん中を狙ったのに--抜く反動で指揮官型の攻撃を躱す!
「次で最後だ……な?」
 八弥はそこである事実に気付いた--けれども残り時間は少なかった……!
「ぶふう! が、あ、いくら速くても、がぶうううう!」
 大量の血液を口からも右胸からも出しながら八弥は指揮官型を真っ直ぐ見つめる--歪んだ銀色の眼から何かを探るように!
「俺の、背後に、は回り、こめ、ないだろ!
 はあはあ、よう、やく、わかった、ら--」
 八弥は右裏拳で指揮官型の顔面を攻撃した--自分の首に拳を当てるように!
「がああああ! あがあああがああがあ--」
 にいさああああん--七はツクモノカミと共に八弥の所に向かう!
(や、と離せた、があああ、右手が俺を! お、ぐ、ああ、あ、あ、こんなことなあらあららあ--)
 八弥は乱す右手を止める為に右肩を刺し切り抜いた--もう一つの場所から大量の血液が放出し、体内の血液は三分の二に迫った!
(から、だ、が。こ、えがだ、ぇ、ぁ。ぉ、ぇ、ぁ、ぁ、ぁ、ぁ、ん、ぉ……)
 指揮官型が左隠し腕による攻撃で止めを刺そうとしたが、八弥に映ったものはその直前まで……ただし、耳に届いた最後の言葉は--やつみにいいいいさああああん--であった!

 長髪の男は徐々に若さを取り戻す。彼の目に移るのはイザナギ大宇宙の中心部。背負う物はなく、ただ重さすら感じない情無き冷たい世界。そこで彼は真実を目の当たりにする!
『あれが俺達を苦しめるモノか! あれこそ俺の……俺の……と、とにかく俺はあれを止めなくてはならない!
 ああやって俺達の住む宇宙を操作しようとしているのなら、俺は魂をかけてでも中断させ、ないと! あれは生命がやってはならない行為なんだ! 息年いける生命が住む宇宙にやってはいけない行為なんだ!』
 豹族の鋭い目は因果の鎖を正しく導く為に単身歪みの原因へと特攻をかけた!
『俺という存在はこの先どこにも現われない。全ては連続した血の宿命。俺と……は。俺は……の魂を動かすべく輝き続ける! 例え一時の理であろうとも俺は……を信じている! あいつならきっと……もうこれ以上は--』
 魂は輝きを見せ、あらゆる銀河に無限模様を見せる--それは天同八弥の四十と十九日目の命の輝き!
 天同八弥の物語はこうして幕を閉じた……。

一兆年の夜 第四十話 三兄弟物語 八は輝き、七は動く(四)

 寝る前に八弥は七に遺言めいた事を伝えた。
「初めに言っておくが、俺が言いたい事には論理の飛躍が結構みかけるつもりだ。それでも俺はお前には何が何でも伝えねば意味がないんだ! だからしっかり耳に入れろよ!
 俺はある夢を見た。その夢の中に出てくる世界はとても耐えがたい光景だった。それは俺達人族が他の種族を死なせ、肉や皮を口に入れ、更には栽培しているんだ! 『一体人族は何をしたんだ』と俺は感じた。いやこれは信じられないなんてものではない。この光景自体が栽培された人族の世界ではないかとも感じた。
 何せ突然として頭が吹っ飛ぶ事故や病が起こる所に何かしら知らせてはならない真実が含まれてもいた。その事故を何かの仕業にする一名の男はそんな事故と戦い、傷付き、とうとう自ら真実に取り込まれる事になった。真実に取り込まれた男は自らを精神存在へと昇華し、我々の祖先を現在のような神から離した存在へと変貌させてくれた。
 ……全く意味がわからないだろう? 言ったろう、『飛躍が結構見かける』と。あまりに意味の明らかではない世界だ。説明する方が腰砕けだ。でもな、そこに俺達生命体と銀河連合を結びつける何かが眠るんだ。いいか、よく耳に入れろよ。
 男が全ての真実を取り込んだのはいいけど、奴は徐々に生命らしさを薄めていったのさ。肩は鬼族のような角を。内臓は外に剥き出し、目は血管を見せるように。更には男の精神までも偉業のモノへと変質させたんだ。言葉も慈しむ心も全て外に出すように。やがて自我は消え、男の魂はここに幕を閉じた。
 男が生命らしさを消した反面、祖先はどうなったのか? 彼等は神々の世界で真実すら知らしめることなく今ある一生を過ごすようになったのさ。そこには衰えこそ急速であるものの平和で幸せな世界。勿論発展さえも出来ない。その必要がない世界さ。そうして世界は遠すぎる過去へと回帰できたのさ。これが創世記だ。
 一部の限界集落で代々伝わる記憶は調べれば調べる程に真実から遠い。でも幻想だからこそ今日における俺達の精神を形作るのさ。けれども平和な世界は長続きしなかった。それがおよそ四百の年より前に落ちてきた銀河連合。いくら世界を変えても必ず代価を払うのさ。それも関係ないはずの者達を巻き込んでな。
 とまあ長々しすぎるが俺は七に伝えたいのは伝える事は大切な事だというものさ。夢の内容が真実である保証はどこにも無い。第一冒頭の俺達人族が他種族を栽培する行為なんてとても信用できない。そんなものはまやかしだ! そう頭の中で整理したんだ。でも真実があるとするなら伝承だろう。例え荒唐無稽な事実であってもそれを恒久的に伝え続ける行為は耐えがたい苦痛を伴う。それはまるで七が稽古を続ける事を苦しみ、痛むように。でも、諦めずに伝えられるのならそれは巨大なものにもなる。水の惑星を一周する程の長さにもなる。お日様だって回す引力になるってさ。お日様を回せるのは銀河だけだろうが。
 だから俺はお前に実践して見せたんだ、俺の演舞を! それを『すぐに真似ろ』とも言わん。ただゆっくりでもいい。実践してみろ。残り時間少ない世の中を生き抜く為にもな……いや何でもない。
 とにかく俺もかつて兄貴の演舞を見た事あるんだ。ありゃあ今となっては堅い演舞だったよ。でも一番好きな演舞でもあったよ」

 九月四十七日午後十一時十分八秒。
 場所はアリスティッポス大陸アレテ地方アレテの口。
 その地はお日様の時間が最も長い日に必ず裂け目が生じる。口のように裂け目を開く事から『アレテの口』と命名された。
 だが、今日は月の時間が長い。なのに口を開いていた!
 どうゆうことだ、八弥--班員の半分を裂け目に呑み込まれたチーチャルは怒りをぶつけた!
「俺だってこんなのは初めてだ! 本来アレテの口は日照時間が異常な日にしか発生しないはずなんだ! しかも……何だって!」
 これは幻だよ、きっと--七が弱音を吐く程に信じられない光景が一同に心的衝撃を与えた!
 まるで八弥達を呑み込まんと裂け目は彼等の踏む位置を正確に発生--部隊の三分の一が凍り付けされてゆく!
(まだ銀河連合が現われてもいない! べア彦の遠征記録にはそんな記述はない! 裂け目だって正確に記してるんだぞ! なのにこれは一体! 何が……うわっ!
 危なかった! 後半歩近ければ真っ逆さまに冷蔵されたな!)
 銀河連合よりも先に自然界の脅威が進行部隊に大打撃を与え続けるものの徐々に避ける方向を予測してゆき、一の日をかけてようやくアレテの口を通り過ぎた--部隊の五分の二を氷の下に往かせながら!
(やっと越えた……のはまだ早いか!)
 急速がままならない彼等に襲いかかるは銀河連合--現在の部隊数の二倍は下る数。
「廃集落似まだ着かん乃科! このままわしら端消耗しきった摩摩倒される斗いう乃科!」
「弱音を吐くなんてらしくないよ、ツクモノカミ」
「レテ集落は奴等の向こう側か! 皆の者! 一点突破をかけるぞ!
 ただし、限界だと思ったら相手をするな! 何としても冷蔵された者達を背負ってる以上は生き延びろ! いいな!」
「「「「「「おおおおお!」」」」」」
 進行部隊は武器を取り、向い来る銀河連合を倒してでも一点に集中して進んでゆく! 銀河連合も一点突破に対応するように守りを固めてゆくが--
(こちらも必死だ! そっちがそう対応するならこっちは--)
 八弥の無言による指示が各班長、組長に伝わる--彼等は二手に別れるように分散し、二の時をかけて銀河連合側を囲む!
「押して進むぞ! 数が半分になったら急いでレテ集落にゆくんだ、いいな!」
 一の時かけて八弥達は銀河連合を半分にすると全員レテ集落へと逃げ込んだ--その間にアリスティッポス大陸に踏み込んだ数の七分の三にまで減った。
 その時の時間は九月五十日午前五時七分零秒。
 場所は廃レテ集落。住居はもはや残らない程廃れていた。

一兆年の夜 第四十話 三兄弟物語 八は輝き、七は動く(三)

 前方にいた百獣型は八弥の斬撃を読むように斜め上空に飛んだ--だが、それは八弥の読み通りだった!
 八弥は寸での所で振るのを止めると刃先を上向きに切り替え、姿勢をしゃがむギリギリまで落とす!
 百獣型は無理な体勢でなおかつ間合いを詰めるのが困難になる--乗っかかるような位置まで急接近しながら前足を動かす。
 けれども触れる事は叶わず、股間から口にかけて一本の線が胴体を分かつ!
 八弥が休む暇も与えず胴体の別れた所から上空に配置した百獣型が落下!
(全ては代価を払ってでもか! こちらはさすがに--)
「避けるよりも速く攻撃するぞ!」
 宣言通り八弥は柄を支点に左対空蹴りを仕掛ける--正確に顎へと直撃させ、後方にバク宙着地させた!
 休ませろ、いい加減--次は逆立ち状態から背中方角に配置する百獣型が八弥に小言を吐かせる程に隙を与えず仕掛ける!
 八弥は新たに左手を支点にさせながら右回転による右蹴りで右米神に命中--神を失うが如く八弥に背を向けながらうつ伏せになった!
 直立に戻った八弥は突如二体の百獣型に身体を掴まれた--首根っこを百獣型の両前足、腹部を別の百獣型の両前足で!
(さて、と……二体は俺を掴む為にいる。問題は前方に飛び込んだ銀河連合だな。動かすのも困難な状態からどう出よう……かな?)

 午後六時三十分二十八秒。
 七とツクモノカミは齢二十四にして二十九日目になる大陸藤原闘牛族の藤原バッファ鱗率いる四名からなる藤原組と共に裏門へと向かう!
「バッファ鱗! 本当に兄さんはこの先にいるんだろうな?」
「本当っっだ! 八弥様はお一名で銀河連合百獣型と戦っておられまっっす!」
「どうして八弥様尾一名似した!」
 八弥様の命令でっっす--その言葉を聞いて納得してしまう七。
「実力尾過信しすぎだ、八弥様端! このまま出端……音牙聞こえる?」
 打撃音にしてはどうにも好きじゃない感触がするんだけど--ちょうど鉄を爪で掻くと耳に良くない鳥族のような肌を立たせる音。
「これ端……内臓似穴牙空いて中科羅飛び出す音だな。しかも記憶尾司る重要臓器乃肉牙飛び散った--」
「余計に震えるよ! ただでさえ寒くて震えそうなのに今度は別種の震え--」
「七さっっま、どうやら音は静まり……見えましっった!」
 七は見た--そこに立つのは十体もの百獣型を死なせて右肩の掠り傷らしきものを受けた天同八弥の姿を!
「来たか、七! 俺の方は羅羽承とはいかないまでも全て倒してやったぜ!
 刃毀れを二度もやっちまってもうあと一回しかまともに斬れない」
 『星央』の刃先は近くで見るとあちこちに三角形の後が点在する。
「いいって! 八弥兄さんが無事なら星央兄さんも安心してるよ!」
(兄貴。ここに眠るんだな。にしても百獣型十体は予想以上に厳しい。先祖天同生子のように掠り傷付けずに戦えたらどれほど楽な事か……掠り傷?)
「どうしたの、兄さん?」
 いや--違和感を覚えて左指で触るが、掠り傷である事を確認した八弥。
「休む暇はこのくらいにしよう! それよりも部下達を--」
 報告します、戦闘は終わりました--チーター班六名が全く同じ報告を裏門にいる全員に伝えた!
「終り? その報告は真実か?」
 真実だよ、八弥--チーチャルはため口のまま返答。
「この目出見るまでわし端信じないぞ、チーチャル」
 いや、真実だがん--チーター班の隙間から鰐班五名が顔を出す。
「わに十! という事はここを取り戻したってので良いよな? な?
 これで中継基地を--」
「喜ぶのは大陸を全て俺達の所に還ってからだ! まだここは半分にも達していない!」
 半分ではない--彼等は思い出した。アリスティッポス大陸は食われて以来、誰の力でもとり戻すのが容易じゃない氷の大地である事に……!
(右肩がまだ痺れた……ような? まさか毒を塗ったんじゃないよな?
 気のせいか?)
 右肩に掠り傷を与えた攻撃には何の毒も塗られていない--けれども傷は徐々に八弥の足下を掬いにかかる

 午後十一時七分八秒。
 場所は司令室と思われる一室。机も本棚も鳥族の羽を無理矢理集めて作った椅子も全ては神々。故に飾りと変わらない。
 そんな神々の魂たる羽がたくさん入った椅子に座る二兄弟。
「傷は大丈夫みたいだね、八弥兄さん」
「この程度なんて今後の戦闘に響くかよ!」
 本音ではなかった--包帯で巻かれているとはいえ、掠り傷部分は細胞分裂すらしない状態。
(もしかすれば『世界観補正』が銀河連合側に……飛躍しすぎか)
「どうしたの、八弥兄さん?」
「いや、それがな。未だに寝られないお前に俺から稽古を付けて寝かせようと考えている次第だよ! どうだ、やるか?」
 いいよ、痛いのは好きじゃないから--七は首を横に振りながら自らの意志を伝えた。
「だったらこれならどうだ? 俺の包丁演舞を見せるというのは?」
 見せてよ--即答する七。
「いいだろう! ただし、条件がある!」
「条件? まさか--」
「俺の見せる演舞をしっかり目に焼き付けるまで眠るんじゃないぞ!」

一兆年の夜 第四十話 三兄弟物語 八は輝き、七は動く(二)

 午後二時十一分十三秒。
 進行部隊は星央が死んだ場所に着く。
「思い出したくねえっざ。ここに星央様の魂が眠っていると考えたらだがん」
「寒さで脳の機能が正常に作動しないのかうえ? 何なら俺の綿を貸そうかうえ?」
 断るっざ、エリフィスだがん--齢三十三にして十の月と一日目になる武内山羊族の中年エリフィスの応じを断るわに十。
「へっくしょ! この地では羊毛なんかよりも脂肪を付ける方が寒さへの対策になる。手っ取り早いのが度数の大きい酒を飲む事しかないがな」
「私は未だに酒が飲めない。どうすればいいかな?」
 知るか--そう答えた後、八弥は慎重に進むように指示。
(思い出す。ここは兄貴が死んだ場所だ。今じゃあ銀河連合の連中は兄貴の死体を骨一つ残さず処分するなんて事を! 
 だが俺は容易無しに進む程頭が緩い訳じゃねえ! 礼を失するが、とらせて貰う!)
 部隊は表門入口の中に入ると八弥が一旦全ての班、組の長を呼んでおよそ二の時かけて予定を組ませる。
 なあ八弥、それでいいのか--齢三十五にして十の月と二十四日目になる雄略チーター族の雄にして現在チーター班の長を務めるチーチャル・斉藤は寒さを凌ぐ羊族から渡された綿服の内部に息を吹きかけながら問う。
「聞こえない。もう一度言ってくれるか、チーチャル?」
 この作戦でいいのか--チーチャルは先程より少し聞こえやすいように問うた。
「素速さで右に出る者が少ないチーター族のお前に合致する内容だぞ。良いに決まってるだろ!」
 速い事は常に正しい--チーチャルは通常では聞こえ辛い速度で応じた!
「わし端何て答えた科端解るぞ!」
「私はわからないよ。チーター族は早口すぎて何言ってるのか解り辛いしさ」
「お喋りはそこまでだ! 聞き耳立ててる銀河連合にこれ以上内容を教える訳にはゆかん!
 俺達進行部隊はこれより本格的な進行を開始する!」
 さっきまで本格的じゃなかったの--七がそう質問した頃には彼を除いて身体が前に向かっていた!
(やはりいるぞ、銀河連合は! けれどもこれは真実じゃない。まだ本格的な進行は始めない。読まれるのなら読まれて貰おう! それが俺のやり方だ!)
 それから一の時が経過。ついに建物内での戦闘が始まった!

 午後五時二十分二十二秒。
 武器庫と思われる巨大な部屋でチーター班六名は背後から奇襲した銀河連合十一名と戦闘を繰り広げる!
 班長、数が多い上に縞馬型です--班員である齢十九にして十一の月と十一日目になるロディコチーター族のチアンジ・バビルンバはチーター族の特性を活かしながら縞馬型の攻撃を回避し続ける!
 ならば八弥が考案した例の作戦を開始する--チーチャルは耳に響かせる音量で班員全員に伝えた!
 それは極めて簡潔でなおかつ中々実行に移すのが難い作戦--これにより僅か二の分足らずで襲撃してきた銀河連合を全滅させた!
 まさか僕達一名残らず怪我をさせずに数の多く、視野の広い縞馬型全てを死なせるなんて--齢二十二にして三の月と三日目になるチアンジの三つ年上の幼馴染であるロディコチーター族のチーティン・バーバリッタは驚きを隠せない。
 油は断てまい、俺達はすぐに別の班及び組を支援するぞ--五名の班員に伝わるような速さで知らせたチーチャル。

 午後五時三十分三十七秒。
 十部屋もの個室が左右に設置された通路。
 そこには二十二体もの銀河連合の切断死体が乱立。左側の中央に設置された個室のすぐ近くに立つのは天同七と彼の教育係を務めるカゲヤマノツクモノカミ。
「七様。わし似頼る乃端やめて頂きたい!」
「恐いから仕方ないだろ! 個室からいきなり銀河連合が出てくるんだから心臓がいつ止まるかわからなかったよ!」
「……戦場似出れば少し端肝牙据わる斗思った牙、それ端違った科」
「何か言った?」
 いえ--ツクモノカミは死体を一体ずつ綺麗に整理してゆく。

 午後五時四十二分九秒。
 毛利ベアレルにとっては忘れがたい場所の一つ。
 銀河連合は六体。対する毛利班は合計五名。ベアレルは自分以外はサシで挑むよう命令!
「弱い連中を投入しおっテエ! 二体相手は得意の差し包丁二本で何とかナアルぞ!」
 彼は攻防を使い分けながら蜂型及び丁型を一体ずつ丁寧に倒す!
「後は……何イ!」
「は、班長ウ! 援軍ガア来たよ!」
 食料庫に毛利班が戦った数の二倍でしかも種類は全く変わらない銀河連合がやってきた!
「今度は十二体イ! 弱い連中とはイエさすがに武がこっちに利無し。
 何とか扉マアデ飛び込むぞ、皆アノ者!」
 毛利班は合計三体は倒しつつ扉まで近付くと外に銀河連合がいないのを確認するとすぐに撤退した!
「弱い奴等も数を揃えレエバ強者と化す!」

 午後五時五十分二秒。
 裏門近くで天同八弥は百獣型十体に囲まれた--縦横天井にかけて!
(俺一名相手に百獣型がたったの十体か。老いぼれになったとは言え見くびられるのは好きじゃないぞ)
 八弥は右腰に掛けてある神武包丁『星央』をゆっくりと鞘から抜く。抜き終わるなり動き出したのは--
「待つのは俺の趣味じゃないぞ!」

一兆年の夜 第四十話 三兄弟物語 八は輝き、七は動く

 ICイマジナリーセンチュリー百三年九月四十五日午前九時零分零秒。

 場所はアリスティッポス大陸南エウへメロス地方廃ヘメロ港。
「変わらんな。十一の年より前からずっと」
 そうなんだ--二の腕を両手で掴みながら身体を震わす七。
「ヘックショオイ! わし尾凍え死なせる気科、この大地乃神端!」
 齢三十九にして一の月と十六日目になる神武鬼族の老年カゲヤマノツクモノカ
ミは言葉とは裏腹に震え一つ周りに見せない。
「さすがだな、ツクモノカミは!」
 他者似見せる乃端恥斗いうもの--ツクモノカミは早速左腰に掛けた雄略包丁
を鞘から抜く!
「いくら何でも早過ぎるっざ。寒すぎると今度は刃が凍り付いて切りづらくなっじ!
 抜くのは少し暖めてから時間を余り経たない時にしろがん」
 そう忠告するのは齢三十四にして十八日目になる物部鰐族の鍛治屋一族の亜流
にして全開のアリスティッポスの遠征の数少ない生き残りの一名物部わに十。
「わに十の言う通りダア、ツクモノカミ。この地デエハいつも通りの環境対策は通用し
ない! 極冠の地に応じた戦術ニイ切り替えヨオウ!」
 そう言うのは同じく生き残りであり、齢三十六にして三の月になったばかりのプロ
ティ熊族の中年毛利ベアレル。
「こいつらは生き残りだ。素直に聞くのも達者の務めだぞ、ツクモノカミ!」
「わし尾誰駄斗思っておる? カゲヤマノツクモノカミ端指揮官型似だって負け端しな
いぞ!
 けれども忠告端聞かね把死尾早める乃出奈。いいだろう、抜く乃端奴等牙来た時
似応じよう」
 言葉と同時に何時の間にか鞘に収まる雄略包丁。
「……お前らには、絶対守らなければならない事が、ある! ふうう……寒さは身体
に堪えるとは。
 いいか、よく、聞け! 必ず……はああああああう。
 必ず生きてこの大陸を我等全生命体の力で取り戻すのだ!」
「解ってるんって八弥様!」
「銀河連合にいつまでも好き勝手やらされてたまろうものでありましょうか!」
「このマモリモルノス・アダルネスはぞう、一騎当千を果たすぞう!」
「無理すんなッツ、マモノスッツ。なんなら先祖の仇討ちを目指すこのシカック・ムーシ
が助太刀致そうかッツ?」
「私は……ヘックション! 早く取り、戻せるか、な?」
(皆がやる気を出す中で七だけはこんな有様だ。けれども俺は今更訂正はしないぞ!
七を入れたのは訳がある。それを説明する前に……考える暇は与えないか!)
 前方及び水中から銀河連合が迫る!
 けれども八弥は類い稀なる戦の才をすぐに発揮--なおかつ経験則で銀河連合
が襲撃する場所を見計らって班、及び組を配置し、これを各個撃破。
「危なかったね、八弥兄さん」
「戦死者は零名。ここで『危なかった』なんて言ってたらその先の厳かな場所はもっと
危ないぞ!
 つまり、ここはまだ序の口で、しかないんだよ」
 先が思いやられる--誰もが心の中で『言える口なのか』という叫びを出すような
事を呟く七。
(兄貴が築いてきた基礎。俺はその基礎を応用へと向かわせる! そうしてここまで
来たんだ! まだここで余裕は持たねば先を進む事は容易じゃない!
 例え気合いで何とか出来てもそれが可能なのは奥深くに入ってからだ! 神々よ!
俺をどうかそこまで導かせてくれ! 俺を輝かせてくれ!)
 八弥が思う事はつまり自分が生きている間に温存し続けるという意味が含まれる。
だが、八弥の願い通りに戦況は応じてはくれない……百億光年の叫びは赦しを容れ
る事なく改竄を進めてゆく!

鬼塚英吉や前田たいそん(漢字忘れた)に憧れる子供達に告ぐ

 どうも念の為に言っておきますが良い不良も中にはいることは確かに認めますdarkvernuです。
 それじゃあタイトル通りのショートストーリーをどうぞ。

 僕は不良に憧れていた。憧れの不良になる為に遅刻したり、金髪にしたり、カツアゲしたりしてました。
 そんなある日に生徒指導の先生に呼び出しされました。ここ最近悪いことをしてない僕がどうして呼び出しを?
「あのー、先生。一体何の理由で呼び出されたんですか?」
「別に怒りに来た訳ではない。只君のような前途有望な学生に忠告しなければならないことがあって呼び出した。」
「それでどんな忠告でしょう?」
「不良なんてゴミに憧れるな! あれは漫画の世界だから許されるんだよ!」
 はあ? 何で不良に憧れるのがいけないのさ!
「『はあ? どうして目指しちゃならない』そう考えただろう?」
「わ、わかるんだ!」
「読心術を披露しに来たんじゃない。君に忠告しに来たんだよ。
 いいかね、不良は社会を腐らせる毒なんだ。君は不良なんて目指さず真面目に勤勉に生きるんだ」
「真面目に生きることなんてできないよ! 先生はただ学校に従って僕達を目の仇にしてんだろ!」
「それは表向きだ! ただなあ、君は知るべきなんだよ。不良の歴史がどれほど社会に問題を起こしているのかを」
「れきし? 何言ってるんですか! そうやって自分達の持論を展開して僕ら不良を排除しようとしてるんだろ、エ!」
「言葉の汚さはこの際不問にする。忠告しに来た以上は。
 いいかね、不良だらけの世界を想像するんだ。後は漫画『アウターゾーン』に出てくる価値観の逆転した世界の話を読んでみるんだ」
「意外と詳しいですね……ってそうじゃない!
 不良を虐めて何が楽しいんだよ!」
「話をすり替えるな! そうやって話をすり替えてくるのも不良という者がゴミのような存在であると証明するんだ。
 不良は社会を腐らせる。それはな、あのマシダシンスケという元不良で芸人を見れば明らかだろう! 奴は学生時代に度重なる非行を重ねながらヨシモトに入ってもそれは止まらず、嘘つき、アシスタントへの暴力、更には後輩芸人への生放送中の暴力、ヘキサゴンの形骸化、行列の出来る法律相談所の形骸化を進め、ありとあらゆる番組を低レベルにしながら、ありとあらゆる問題行動を起こしながらもなお反省せず、言い訳をし、厚顔無恥を貫く害悪と成った!」
「途中から作者の感情が入ってない……ってメタはいいよ!
 あのな! それはシンスケの例だけだろ! そんなんで不良の価値を決定されてどうする!」
「ノミモンタの次男はどうかな? ダルの弟はどうかな? 彼等も十分問題の連中だ。そんな連中でもまだ勝手に不良の価値を決めていると言える義理か?
 不良とは『良きにあらず』だ。君は--」
「いくら国語の教師だからってそうやって言葉巧みに僕を惑わそうったってそうはいかないぞ!
 さっきから不良の悪い所ばっかりあげつらいやがって! ヤンキー先生はどうなんだよ!」
「議員の方かね? 正直あの方も元不良らしく事実をねじ曲げるようなことを物語の中に組み込んでるんだ。足の爪をほぼ全部剥がされてマラソンだったっけ? あれは後々嘘だと判明しているぞ。それでも--」
「もういい! あんたが不良を憎いことは十分わかった!
 じゃあ何? 生真面目が良いってのか! 先公の眠い授業をいちいち聞いてノートに丁寧に書いて受験勉強をして百点満点を目指す生活が良いってのか!」
「それが本来目指すべきものだろ?」
「でもよお! そんな奴に限って官僚になったり偉そうに議員やったり、インテリ芸人だったりで結局世の中の為にならんじゃないか!」
「オウム真理教の件は情けない話だってわかるよ」
「わかるんだ! ってか初耳だよ、それ……って納得しに来たんじゃない!
 あんな机に座ってテスト勉強をしてテストの成績を上げてゆく生活のどこが格好良いんだよ!」
「『バカテス』はそうゆう題材に--」
「知るかよ! そんなのは!
 とにかく真面目に学校生活なんてシャバイことしたくない!」
「けれども真面目を貫くのは大変なものだぞ。言葉では表せない格好良さというものがある--」
「どうせ先公の言う事を『はいはい』聞くようなシャバク格好悪いことだろ!」
「そうゆう見方は良くない。『イエスマン』と言うだけでは君の言う格好悪い生徒だ。
 しかしなあ、言う事を断固として従うものの格好良さはどんな不良の下らない格好良さなんかよりも負けない大きな力を秘めていることを知るんだ!」
「訳わからんこと言ってんじゃねーよ! そうやってイエスマンの正当化まですんのかよ、やってられっか!」
「話を最後まで--」
「もうあんたに惑わされねえよ! 僕は何としても不良になってみせるさ!」
「こら、まて--」
 結局僕は先生の忠告に聞く耳を持たなかった。持っていたならどれほど辛い事じゃなかったか?
「こうして刑務所の中に閉じ込められることもなかったのに」


 最後は『一体何の悪いことをしてムショに入ったんだ』と思わせる物でした。想像にお任せします(辛)。
 さあて、高橋ヒロシや田中宏のような不良漫画は世の不良達を燃え上がらせるのに貢献しました。勿論タイトル名に書かれている登場人物が居る二作『湘南純愛組』『ろくでなしブルース』なんてのも世の不良達を憧れさせました。
 けれども不良なんて者は漫画の登場人物みたいに格好の良いわけではありません。寧ろ男の娘を過去のトラウマが原因でダンベルによる殴殺をするような奴だったり、たかが事実とは言えないゲームを鵜呑みにしてそばかす娘を呼びつけてカッとなって事前に持ってきたバットに手をやりそうになるようなクズでしかありません。そんな連中に憧れる前途有望な者達は知るべきです。不良は己自身を腐らせると。大体歴史を見ますと不良なんかが革命を起こしたり、戦争なんてものをやりたがるんですよ。何故ならいつまで経っても学生気分にうつつ抜かしていい大人になれない連中なんですよ。はっきり言って社会に出たんなら学生気分は捨てて下さい、迷惑なんだよ(怒)!
 ところが学生気分なんてものが常識だと勘違いする連中は世に溢れており、そういった連中が松本人志のような一流を引き摺ったり木村祐一の笑えない話を面白がって喋る千原ジュニアを産みます。
 何だかかんだ言いながらそれもまた歴史が正常に繰り返されている証拠でもあります。とにかく不良こそが日本赤軍というテロ組織やワットナーベ、パヤオそれにアント・スターリンを産む元凶であることを理解しよう。団塊世代があそこまで腐った世代になったことも理解しよう。若者が目座すべきはどんな腐った上司であっても上司のせいにして会社自体のせいにしない仕事熱心な人間を目指すべきです。
 以上でショートストーリーの解説を終えたいと思います。

 では第三十九話の解説に入る前に第三十八話で武内土竜族となっていたところですが正確にはセネカ土竜族の間違いでした。申しわけありません。
 では始める。今話では完全に天同八弥が主人公を務めており、彼の生き様がまざまざと表れた内容です。
 とにかくこの次男坊は破天荒すぎます。仕事放り出すのは日常茶飯事で、他者の意見を耳に傾けることにも熱心じゃない。おまけに『急がば急げ』を体現したように他者を顧みずに無茶な案を押し通そうと必死です。上手くいかないとまた逃げるように失踪するなどとても模範に成れるような存在ではありません。ですが、最後の最後でようやくマイナスからゼロに近いマイナスまで成長を果たしたと思います。全然成長したことにはならないが(笑)。
 とまあ、かなり回り道をするお話となりましたがラストでは次の話の展開が想像出来る締めとなります。この辺は第四十話で第二十九話のような濃密に描く予定です。それから今話では新たに八弥の子供達を出しましたがここに関しては星央の子供達と同じく三兄弟物語の中核になります。今のところ彼等は目立つような見せ場はありませんし、どうゆう過程にするかも定まってません。ただし、結末は決まってます。
 そんなこんなではありましたが、今話でしばらく(一年以上)行方を眩ますキャラを出しました。彼女の正体は今まで我慢して(?)読んできた方々ならお分かりですね。まあ彼女の生市は敢えて曖昧に答えときます。天同生子と同じくまた会えるかもね(笑)。ただし、あの場面は三話連続してオカルト話に成りました。まだオカルト話は終わりません。まあ、いいや(苦)。
 拙速ながら第三十九話の解説を終えました。

 今日は金曜日ではありますがどうして雑文を更新したかと言いますと明日から諸事情があって休まざる終えなくなりました。ですので早めに更新した限りです。
 では今後の予定をどうぞ。

 十月
 二十八日~十一月二日 第四十話  三兄弟物語 八は輝き、七は動く 作成日間
 十一月
 四日~九日       第四十一話 三兄弟物語 七と奈々        作成日間
 十一日~十六日    第四十二話 三兄弟物語 三つ星は今      作成日間
 十八日~二十三日   第四十三話 選ばれしは凡庸なり        作成日間

 自分が物語を書く時、結末が初めに決まっていてそこに至るまでのプロットはありません。ですので気分次第で展開が進むことを注意して下さい。
 では今日はここまで。次回の雑文更新は十一月三日となります。まあ生きていたらの話だけど(笑)。

一兆年の夜 第三十九話 三兄弟物語 無限逃走の責務(進)

『ミ、いや彼女が弥勒菩薩を求めて四の年が経つ。八弥兄さんはもう老年の時期に
入り始めた。星央兄さんでも入る事の叶わなかった老年期に。この頃になると八弥
兄さんの今までの問題行動はようやく半分を処理できたと思う。半分だよ。これがど
れだけ大変かわかるか。生命が今までの行いをいきなり改めたとしても零にさせる
事の労苦を。勿論誰だって八弥兄さんがまた問題を起こすかも知れないと四の年に
なっても注意している。注意しているだけでも八弥兄さんは大分進歩したと私は思っ
ている。
 もう兄さんは今までのような勝手振る舞う兄さんじゃなくなった。兄さんの隠し子で
ある八理と恵弥が兄さんを変えたんだとも考える。兄さんを一名の雄から一名の父
に成長させたのは間違いなく八理と恵弥のお陰だよ。
 だからといって兄さんの今までの問題行動を零には出来ない。現にログバーコフさ
んは今でも兄さんを注意するような態度で接している。簡単に零にすれば真面目な
者がわりを食らう。その事を考えてログバーコフさんは兄さんへの態度をそう簡単に
変えようとはしない。
 そう言えばこの頃八弥兄さんの事で八理と恵弥からこんな事を聞いたんだ。兄さ
んは近々アリスティッポスに向かおうとしているとか。本当なのか。
私天同七は今年で齢二十八にして九の月と三日目になった』

 ICイマジナリーセンチュリー百三年九月三十一日午後十一時十分八秒。

 場所は国家神武首都ボルティーニ中央地区神武聖堂天同六影の間。
 齢四十なったばかりの神武人族の老年天同八弥は齢六十にして十の月と九日目
になる現神武人族の仙者天同奈々と面と向かって話し合う。
「--あれから十一の年。俺はようやく決心がついたよ」
「わかっておりますの? あの地に向かえば待ち受けるのは--」
 知ってるよ--脇まで伸した白く変色した長髪を右手で払いながら八弥はそれ以
上話さないようにした。
「私は心配なのよ。老年に成るとは言えまだまだ可愛い息子なの。そんなあなたを向
かわせたら星央の時みたいに--」
「お袋は悲しかったんだな。向かわせた事で兄貴が死に、美智琉が後を追った事を。
 けど、今度はそうはならないぜ。それに七がいるんだ。あいつがいるなら--」
 何という勝手を--奈々は母性本能のままに怒りの表情になる!
「まだあいつを象徴として認めないのか?」
「当たり前です! 七は優しすぎるのです! そんな七を国民の道標にするのは荷
が重すぎます!
 なので今すぐ七をあの地に向かわせるのは--」
 それだけは断る--八弥は皺を寄せてもなお銀河連合を狙う豹族のような両眼で
怒りを鎮める。
「成長したのね、八弥。置いたとは言え、私を鎮めるなんて」
「衰えたさ。ただ、その分どうやったら相手が萎縮するかに長けだしただけさ。俺はも
うこれ以上成長しちゃくれない」
「それだけ口に出来たら成長している証拠よ。遅すぎるけどね」
「まあいい。俺はようやく兄貴の言いたい事を理解し始めたんだ。もうここからは俺が
一方的に話すぞ!」
 今回は特別よ--手を膝の上に乗せる奈々。
「えっとな。これから七を象徴にする。もうあいつは国家神武の象徴に相応しい者に
なった。俺が居ない間、あいつはつけを一身に受けて国家神武の為に尽くしてきた!
国民は今では奈々を時期象徴に相応しい仙者と考えている! それに七自身ももう
重圧に耐えられるだけの精神にまで成長したんだ。あいつなら全生命を正しく導く事
が叶えよう! 仮にお袋が納得ゆかなくともあいつを象徴にする!
 それでも反論するか?」
 いいえ、時間の浪費よ--奈々は了承した。
「そうか、それじゃあ--」
「一つ質問するわ。奈々をアリスティッポスの地に向かわせるならその間、星央の館
は誰が守るの?」
「決まってるだろ? 星季はもう十七だ。今更保護者が必要な年じゃなくなったろうに」
 そう--奈々は初孫まで自立した事に悲しそうな目をする。
「それじゃあ行くぜ。もうさよならなんて言わない。必ず戻ってくるぞ!」
 信じるわ--二度と戻らない息子を敢えて送り出す奈々。
(本当でない事を言っても見透かされるだけだ! それでもそんな事を言ったのは俺
自身に逃げる心を断つ為だ! 俺はもう逃げない! 必ず極冠の地を取り返す!
 今度は兄貴のように挑戦するのではなく命を捨ててでも取り返してやる!)

 九月三十二日午後九時八分七秒。
 場所は中央官邸重要会議室。
 午前九時から始まったアリスティッポス奪還会議は初めこそ反対者が三分の二以
上も占めた。大多数が星央の死から奪還への希望を諦めていた。
 しかし--
「--俺が劣名返上する為に四の年も費やした! そして今なら奪還は可能だ!
 何故なら俺が押し通した案はアリスティッポスの大地で化ける! 良い方向に!
 それに今度の遠征には櫛玉地方の戦いを到着して僅か一の日もの間に終わらせ
た次期象徴七も加わる事になった! あの時がまぐれなのか本物なのかはこの一
戦で決まる!
 皆の者よ、俺はまだ劣名返上は果たしていない! アリスティッポスを取り戻す時
こそ、それが叶う! 後少しだけでいい! 皆の力を俺に分け与えるのだ!」
「成程! 名誉挽回をおお果たそうとすううるかああ! ならばああやってみいいせ
い!」
 齢四十一にして八の月と二十日目になるエウク梟族にして財務大臣シャラワウは
賛同に回った!
「老年にナアっても衰えを見せず、なおカアツ成長するか、最高官殿!」
 齢二十九にして十一の月と七日目になる神武熊族の防衛官クマソノヒコは八弥の
強さを感じ、賛同する!
「けれどもまだ信じないね。どうせまた僕達に迷惑かけるかもね」
 齢三十にして五日目になるアリスト鴨族で社会保障長官白石カブ八は八弥を認め
ないでいた。
「八弥様をまだ認めない。そりゃあ私だって同じ。しかし、アリスティッポスを見事
奪還するなら私は喜んで八弥様を称える」
 齢三十四にして二の月と二十二日目になる物部蜘蛛族で交通長官物部クモ由紀
は賛同に回った。
 それから次々と賛同に回る閣僚が増えてゆき、遂に規定数を遙かに超える賛成に
よりアリスティッポス奪還作戦案は可決された--なお反対したのは二名。
 施行されたのはそれから一の週より後の事……。

 九月三十四日午前一時八分八秒。
 場所はマンドロス山標高成人体型六百六十六付近。
 天同八弥は中条理恵と初対面した所に小さな墓を建てていた。
 墓前に立ちながらある決意を表明する。
(やっぱり俺は父親に相応しくないな。あの地へ辿り着けば待っているのは……やめ
ておこう。ただ、もう逃げるつもりもなければ簡単に死ぬ訳にもいかない! ただ、後
を継ぐ者達に見せねばならないんだ!
 『俺達はこんなにも凄い事をしたんだぜ』ってのをよ! 俺はもうこんな年だ。腰だっ
て覚束無いし、ここに来るだけでも足が固まりやすくなる! 若い時だったらこんな事
も感じなかったのにな。
 けれども俺は--)
 ここにいたんですか、八弥兄さん--七が後ろから声をかける。
「七か。よくも反対票を出したな!」
「私は反対だよ。仮に私自身を投入して何の役に立つ? 仙者の力を信じるのか?
それとも十四の年より前に私が出ただけで銀河連合が一斉に撤退したのを理由に?
都合の良い事はもう二度もない。第一私は--」
「わかってるよ。お前に武の才は付かないことくらいは。ただし、世の中を動かす才だ
けは俺も兄貴も敵わない!」
「何言ってるだか。私に世の中を動かす才? あると本気で信じますか!」
 ああ--七の方を笑顔で振り向く八弥。
「年をとるもんじゃないよ。もうすっかり八弥兄さんはおじいさんに成ってしまった。
 それなのに何だかやれそうな雰囲気なのはどうしてかな?」
「やれそうじゃないだろ! 必ずやるんだよ! 兄貴が挑戦した奪還を今度は俺達兄
弟の力で果たす! 必ず出来る材料が山程あるんだ! 無理矢理でも--」
「もう私は反対しない。一兆年の神々はそう示す!
 必ず奪還しよう! お互い生きて必ず!」
 ああ--八弥と七は兄弟で最後の握手をする!

『わしは気付くべきだった。気付いていれば……』



 ICイマジナリーセンチュリー百三年九月三十四日午前一時九分四秒。

 第三十九話 三兄弟物語 無限逃走の責務 完

 第四十話 三兄弟物語 八は輝き、七は動くに続く……

一兆年の夜 第三十九話 三兄弟物語 無限逃走の責務(六)

 未明。
「本当にこの場所で大丈夫なのかな?」
 齢三十六にして四の月と十四日目になる武内人族の名も無き熟女は秘境神武と思われる捨てられた場所に降り立つ。
「私にとって弥勒菩薩とはこの場所かもね、コブ吉さん。何故だか知りませんが今日は心の洗われる気分であります。名を捨てて国家神武の為に尽くしてきた私はようやく死へと通じる階段を下りてゆくような感じです。あなたも死の間際にこんな感じを味わったのかな?
 とまあそんなのは実際に死なないとわからないけど……何故だろう? この場所ももうすぐ死を迎えそうな感じは? あちこちの神々を見て回ったりするけど何だか知らないけど歪んでる? いやそうじゃないのかしら? どうにも揺れてる? いえ、歪むならそれは近くで火遊びが発生した場合じゃないの? それに揺れるなら今の私は立つ事も歩く事もままならないわ。
 じゃあこの感じは何なの? もしかして私の感覚そのものがおかしいとか? 弥勒菩薩へと近付くからそうゆう風に?」
 名無しの独り言はこれ以降発する事はなくなった。彼女は思い出したのである。自分が天同八弥を捜索しているという使命を!

 未明。お日様は沈み、月が目立ち始める時間。
 小さな藁小屋の近くで八弥と二名の双子が鬼ごっこをしていた。
 周りは犬族のような銅像と繋がり眉毛で角刈り髪をして火起こしの仕掛け道具を腰の熱い紐に引っかける人族の男の銅像など時代に似つかわしくない銅像が建ち並ぶ。
「そこに居たか、恵弥!」
 はずれだよ、おっちゃん--八理の声が八弥の示す方向にある十一頭身以上にもなる空中回転蹴りで球を巨大な網目籠を突き破る程の力で放てる少年の銅像に響く。
「パパと呼べ、八理!」
「だれがおじさんをぱぱとよぶかってねえ、やつりちゃん」
「そうそう、おっちゃんがいくらママのおきにいりだとしてもねえ、めぐみくん」
「だったら本気を出してお前らみたいな生意気な子供達をかぶりつくぞ!」
 やれるもんならやーい--恵弥はいかにも生意気そうな二歳児らしき人族の銅像から顔を出し、左人差し指で左眼下瞼の皮を伸ばしながら舌を出す。
「子供だからって大人を腰砕けに見やがって!」
 藁小屋の入口近くの左窓から子供達と遊ぶ八弥を眺める理恵。彼女はこの時間が永遠に続くとは思わなかった。彼女は何かに気付き始めた--藁小屋周辺が歪んでいるような奇妙な感覚に!
「やーらーれーたー。参った参った!
 パパの負けだ、八理、恵弥!」
「だれがおっちゃんをパパとよぶもんです……ってなんかへんだとおもわないめぐみくん?」
「ほんとだね。ゆがんでるよ、やつりちゃん」
 歪んでる--そう思って周囲を見渡す八弥。
(あれは……銀河連合!)
 八弥は全体の歪みよりも先に銀河連合百獣型が恵弥の背後にある犬を飼っている小太りの人族像に潜むのに気付く--百獣型は二名の子供達が景色の歪みに気をとられている隙を突いて飛び込む!
「あ、あぶないよめぐみくん!」
 え--恵弥は後ろを振り返ると大きな口が彼を食らわんと接近!
「こんな時に神武包丁を小屋に置いたままなんて--」
「御免なさい、先生!」
 突然飛来した雄略差し包丁の先端は真っ直ぐ百獣型の喉仏に命中--百獣型が痛みのあまり恵弥のすぐ手前で暴れ出していると思われる。
 その間に八弥は百獣型の間合いに入ると人差し指の第二関節を尖らせた左拳で眉間に当てる--脳への甚大な損傷によりそのまま動かなくなった模様。
「ふう、大丈夫か恵弥!」
 ぜんぜんへいき--お漏らししながら答えた。
「またけいやくんのおもらし。こわいならこわいといいなさい」
「ごめんなさい、はちりちゃん」
「済んだ事はもう良いわ。何よりも生命が守れて良かったわ。
 でも私は先生に謝らなくちゃいけないわ」
 何時の間にか環の中に入る名無しに対して八弥はある事を尋ねる。
「環の中に入る前に質問する。お前は俺を連れ戻しに来たんだろ?」
この場所に来るまではそのつもりだったわ」
「この場所に来るまで? どうゆう--」
「八弥! あなたの持参した物を持ってきたわ! 今すぐここから逃げましょう、子供達も連れて!」
「理恵か! どうゆう意味……え?」
 八弥はようやく歪みに気付いた--同時に秘境神武はこの先無限の逃走を始めようとしていた事も感じる!
(俺達がこの地を離れたせいなのか、秘境神武! それともここは永遠に秘境であり続けるというのか! そんなのが……って八理?)
 今度は八理に危機が訪れる--倒したはずの百獣型が起き上がり、右前足で手刀の構えをしながら八理の目前まで近付いた!
「はちりちゃんはぼくがまもる!」
「雌の子だけじゃなく雄の子までも命の危機にさらせる訳には--」
「八理も恵弥は命に代えてもあたいが……まも、ぶふう!」
 手刀で貫かれたのは幼い双子の母だった--皮膚に届かないギリギリの所で八理は難を逃れた!
 けれどもある者は怒りのあまり--どこまで逃げれば気が済むのだああ--と情緒が安定しない叫び声を上げながら百獣型の首を刎ねる!
「も、う、逃げる、のは、終り、ましょ?」
 仰向けに倒れた理恵。横には子供達が立つ。
「……名無し! 今すぐ理恵を助けてくれ!」
「ええ、わかったわ……と言いたいけどこのままじゃあ私達はここと運命を共にするかも知れないわ!」
 そう言えば--八弥が気付いた時には周囲はひび割れ始めた!
「ママ! あたしたちはママといっしょがいいよ」
「ごぶ……ごめん、ね。ママ、は後で、このお姉さんと一緒、に出るから……ガハア!」
「ねえおじさん! ままのくちからあかいふんすいが……っておじさん?」
 御免よ、劣親で御免--八弥は両手で八理と恵弥を抱きながら見えない所で涙を流す。
「だい、じょう、ぶよ、は、ちや? 信頼してるの、でしょ……ブウウウ!」
「喋らないでよ、えっと理恵さん?」
「理恵で、いいわ。は、はやく、い、ぃ、て」
「ママをおいていきたくない!」
「ぼくもままをおけない!」
「大丈夫よ! お姉さんがママを助けるから心配しなくていいわよ!」
「そう言ってるんだ! だから二名とも信じるんだ! お前らの母はお前らを決して置いていかないってな!」
 八弥の精一杯の言い訳であった--八弥は直感する!
「でもな。良いのかよ、理恵? 中条の血を絶やすのを避けたかったんじゃないのか? 俺が連れてゆくと流れるままに--」
「も、う、いいよ。それ、に。きめる。の、は。あの。こたち、し、だい、だわ」
「もうこれ以上は喋らないでね! これ以降は医者特権により無理矢理でも止めるわ!」
 どうなっても知らんぞ--それが二名の最後の会話となった。
「ママがどんどんはなれてゆく!」
「ままをつれてって!」
「ところで良いのか、名無し。お前がこんな目に遭う理由がわからないが--」
「目指してみたくなったわ、弥勒菩薩を探しにね」
 遥か先なんぞを求めやがって--これ以上は時間の浪費と踏んだ八弥は二名の子供達を抱えて黒き螺旋と化す秘境神武から急いで脱出してゆく!
「あの子達の父はひょっとして--」
「……」
「わかっていたわ。あなたを見たとき、もう助かる見込みは無いってね。
 でもどうして治療しようと考えたかわかる? それは私を助けてくれた先生と私のわがままを聞いてくれたお爺さん達への恩返しよ。
 だからこそ最後まで私は武内人族の--」
 空間は急激に……と心肺停止した中条理恵の体を歪ませる……。

(こうして俺の逃亡は終わりを告げる。結局俺は何も理解出来ない。愛する者の気持ちですらも子供たちの気持ちですらも才能に挑戦し続ける者達の気持ちですらもわからない故に俺は逃げてきた!
 その先が中条理恵だった。秘境神武だった。だが、それは同時に彼の現象すらも逃げ道を作るに等しかったよ! まさか秘境そのものが逃げようとしていたなんてよ! でももう秘境に逃げ場を作ることはもうない。秘境は永遠に俺達の前から姿を消したんだ! もう眠らせてやればいいんだ!
 そして愛する者をまた一名死なせる事になった。でも今度は訳が異なるな。もう何かを忘れる為に逃げる必要はなくなったんだよ。俺はもうこれから立ち向かおうと思うんだ。あの時の兄貴のように。これは別に死ぬ為じゃない。子供たちに格好の良い所を見せる為なんだ。例え誰彼から劣官の劣名を着せられても子供達の前では格好の付く親父でいたい! そう思ったまでだよ。もう逃げるのは止めにする事にしたんだ!
 だから今度こそは期待しろ! 信じろなんて都合が良過ぎる。だけど期待はしていいぞ、美弥! おっとこれじゃあ墓の下で理恵に説教を食らうな!)

一兆年の夜 第三十九話 三兄弟物語 無限逃走の責務(五)

『八弥兄さんは次から次へと案を出してはみんなの納得のゆかない形で無理矢理
逃げ道を作り、これを通してゆく。最初はそれで上手くいった。だけどそんなやり方
にとうとう重要閣僚のみならず、現場の者達からの反発が強まってきた。
 何でもツクモノカミの話によれば中間管理職の者達の葛藤が相当だとか。拙速な
更新は軍者の能力低下にも繋がり、なおかつ精神疲労を溜め、なおかつ労働時間
の拡大に繋がってゆく。更に付け加えるのなら逃げ道は割を食らう者達に多大な圧
迫を招く。それが社会問題となったのが兵力増強特別案を通して二の年より後。
 各地域で相次ぐ軍者の過労死が社会問題となった。初めは十三件だったものが
一の月を経過するごとに四十二件、六百六十六件、九千六百四十一件と拡大して
いった。とうとう私達はこの問題を受け止めるようになってゆく。
 それは同時に八弥兄さんへの明確な対立だ。それ以降八弥兄さんの案件は全て
却下され、逃げ道だって認められなくなった。八弥兄さんは半ば力尽くで案を強行し
ようとするも不服従の意志は固く、それを感じ取ったのか兄さんはそれ以上何もし
なくなった。肉親以外誰も信頼出来るものが居なくなった兄さんはまたしても職務を
放り出すようになった。
 今度の場合は他者の死からの逃亡ではなく何一つ思い通りにいかない事への逃
亡。只一点異なるといえばそれは銀河連合を倒しにゆく事もなければ雌を追いかけ
る事でもない。それは。
  御免、今日までに済まさなければならない書類は山程あるので今日はここまで』

 ICイマジナリーセンチュリー百二年九月三十日午前二時六分二秒。

 場所は国家神武首都ボルティーニ中央地区旧天同星央の館正門前。
 齢二十四にして九の月と二日目になる神武人族の青年天同七は帰宅した。
「あ、お帰り七!」
「ただいま、星季」
 彼の帰りを待つのは齢十三になったばかりの星央の第一子星季と齢九にして十一
の月と二日目になる星央の第二子輝星。
「僕達七叔父さんを待ってたの。ちゃんと待ってたの」
「ありがとう、二名とも。ところで美世はちゃんと寝かしたのか?」
「美世ちゃんならあたしが寝かしたわ! 心配無用のよう!」
「『よう』って何?」
「これはあたしの新しい口癖な--」
「もう寝ましょう、叔父さん!」
 そうだな--顔を膨らませる星季に目をやリながら七は館に入ってゆく。
「帰ってこられた科、七様」
「今日は名無しは居ないんだね」
 齢三十五にして一の月と一日目になる神武鬼族の中年カゲヤマノツクモノカミと目
を合わす。
「名無し端現在捜索中だ。八弥様尾な」
「兄さんは一体どこへ逃げたんだ!」

 未明。
 齢三十五にして十一の月と三十日目になる神武人族の中年は先祖にとって懐かし
い場所に逃げ込んだ。
(どいつもこいつも何もわかってない! 全生命が強くならなければ銀河連合との長
き戦いに終りは来ないというのに! それなのに過労死だとかそんな理由で足を進
めないなんて!
 どこまでも弱いんだな、お前達も俺と同じく!)
 とうとう全ての髪が白くなった中年天同八弥は何一つ食べず、飲まずをしてかれこ
れ一の週が経つ。彼の両頬は逆しの字が目立ち、目の隈は目の大きさを超える程
にまで進行。
 けれども彼は死のうと考えた訳ではない--寧ろ生きる為に逃亡。
(お袋や七や星季、輝星、美世達しか信頼できる者が居ないんならもう俺は逃げるし
かないだろ、理恵の所に! どこなんだ、理恵!
 俺はお前に会いたい! 今度はお前……いやお前の子供達を抱きたい!)
 八弥はそんな想いを抱きながら力なき両足で前を進む--神々が眠る先祖代々
の故郷を観光するように!
(ここは『秘境神武』なんだな。俺達の先祖が離れてもう三百の年月は経つのにまだ
ここは……ん?
 気のせいか? 誰かの視線……いや異なるな。これは--)
 条件反射なのか持参した神武包丁『星央』を抜き放ち、背後から襲いかかるモノを
下から上に正中線を沿って斬り上げた--銀河連合人型の死体左右は八弥を横切
るように滑り込む!
(刃毀れなし、と。どうやら空腹は俺にあらゆる蟠りを消してくれたのか? だったら
消してくれ! どこにいるとも知れない理恵と二名以上居ると思われる俺の子に会う
のを!)
 包丁を鞘の中に戻し、振り返り終えるとまた足を進める--逃げる事から逃げる
為に!
 それから五の時を進む。そしてうつ伏せに倒れ、夏の陣に焼け落ちた建物の前で
全身を下げるように眠る--目に涙を流しながら。
(死ぬ、のか? 俺は死にたくない。まだ理恵にも会わないまま死ぬのは御免だ!
 俺は理恵に会ってない! けれどももう心身が疲弊して思うように、おも、う、ぉ、ぉ、
ぃ……)
 意識を洞窟へ通す間に二名の小さな救世主達が八弥を見つけてそれぞれ手を
持って引き摺る--二名の母がいる小さな藁小屋に向かって。

 未明。
 天同八弥に光が差すとそこで目にしたのは--
「……べる?」
(誰だ? 幻を見ているのか?)
「……べられるの?」
(間違いない! あれは……中条理恵、なのか?)
 気苦労絶えないのか頬骨が目立ち始めはするが、彼とほぼ同じ日に生まれて、す
でに臍まで伸してはいるが紫の髪をした熟女。
「『女』は、理恵なのか?」
 『女』と呼ぶのはあなただけよ八弥--柄杓で強引に八弥の口に入れた理恵は顔
こそ老けるものの八弥との初対面と変わらない自信満々な目をする。
「ねえねえママ! このおじさんとしりあいなの?」
「もしかしてままのおとうと?」
 齢五にして三の月と十一日目になる双子の姉弟が母である理恵に尋ねる。
「理恵、この子達は?」
 理恵は二名の左右の肩を両手で掴むと八弥の前に見せながらこう答えた。
「紹介するわ、八弥。この子達はあたいの子供。
 左にいるのは第一子八理やつり。右は第二子恵弥めぐみ
 あなたと血は繋がり、天同家の正統なる後継者にもなれる子達よ」

一兆年の夜 第三十九話 三兄弟物語 無限逃走の責務(四)

『あれから三の年が経つ。八弥兄さんは随分と仕事が早くなったよ。別に星央兄さ
んのように万遍なく仕事をこなせる訳じゃない。けれども特に戦の関連では私の想
像出来ない閃きをするから驚くばかりだ。
 例えば一の年に一回は戦術・戦略の更新をする所を八弥兄さんは半年で更新す
るようにしたり、至らない箇所があれば修正するように現場監督に意見を堂々と言
えるなどあらゆる所で時代を先取りしてゆくんだよ。勿論星央兄さんのようにそんな
閃きは最初の内は閣僚全員の猛反対を受けたさ。採用されてもしばらくの間、現場
はやりにくかったという報告が山程あって処理するのに時間がかかったよ。
 でも今ではもう常識と成ってしまった八弥兄さんの閃き。私も当初は無理だと思っ
ていたのに時の流れはみんなの満足しない部分を押し流してしまうから困るな。
 時の流れで思い出したけどあのお姉さんはもう三十三になってたんだな。いい加
減に恋者を作ればいいのに。それとも恋者を作りたくない理由でもあるのかな。例
えば生涯医者として皆を助けるとかかな。まあいいけど。
 恋者で思い出したけど八弥兄さんに隠し子が居るって噂があるけど本当なのか。
仮にいても八弥兄さんは子供を天同にしないかも知れないじゃないか。その方が子
供の為になると思って。済まないけど今日はここまでだ。
                     私は今年で齢二十一と十の月と十七日目になる』

 十二月七十八日午後四時十二分一秒。
 場所は国家神武首都ボルティーニ中央地区中央官邸。三階にある中央会議室。
 円卓状の机に肘を付ける者は全て重要閣僚。その中で最も位の高い者は赤い丸模様の旗を背に受けた席へと座る。
 齢三十三にして一の月と十日目になる神武人族の中年は白い部分が広がり始める脇まで伸びる長い髪をはためかせ、更には豹族のような鋭い目をしながら自身が考案した物を通そうと訴える!
「--いいか! 銀河連合から学ばなければならないのは彼等の戦い方が時代の先を行く事だ! 昨日まで通用した戦術が今日では通じない。今日通じた戦略が明日では通じない。そうあってはならない! 俺達全生命も銀河連合に倣い、より早く技術の更新を進めなければいけない! より革を新しくした技術へと進める! でないと国家神武は食われます!」
 食われちゅねえ--齢四十一にして九の月と二十八日目になる神武鼠族の老年であり、産業長官のヤマカゼノチュミシタは賛同しようか迷う。
「それに将来の軍者育成は国家神武にとって最大の課題だ! 確かに俺は強い! けれどもいざ俺のような連中が居なくなったらどうなる! 誰か強い者を探すのか? 強い者を起用するのは誰だって出来る!
 しかし、強い者に育て上げる方が最も重要だろう! 強い者は年月が過ぎれば全て居なくなるんだよ! だからこそ兄貴もタイフェスもレオンの爺さんも真鍋べア彦もみんないなくなったんだ!
 産業長官チュミシタよ! お前だって多くの仲間の死を目撃し、なおかつ去年の夏に尊敬出来る先輩が墓の下に埋まったって聞く! お前なら俺の言いたい事は少しはわかるだろ!」
「ま、まあわかりまちゅが、それでも突然の変更で困る者の事を考えると賛同出来かねないのでちゅ」
 それは同感ダダ--齢三十八にして三日目になるゲネス猪族の老年にして交通長官近藤イノ吉はチュミシタとほぼ同じ意見だった。
「どうします、兄さん。このままじゃ規定数に達しません。
 その結果、八弥兄さんが出した案は白紙に戻るかも知れないよ」
「心配するなよ、七。たかが白紙だろ? だったら一からすらりと書いたらそれで済むじゃないか!」
 いや、そんなに簡単じゃないって--七は青く染まる短髪を右手で掻く。
「とにカアく八弥様。戦いは数デエしょう。数を量産しない事には軍者はイザアという時の物不足に困って銀河連合との戦いで勝利出来ないと考えマアスが」
 齢二十四にして十八日目になる神武熊族の若き防衛官カンナギノクマソノヒコは数の論理を主張する事で質の向上を重視する事に反対する。
「俺様が言うのおおもあれだああが、育成官はああどれくらああい回ああす?
 まさか『少ない数で大多数を教えろ』とおおか無茶な注文んんをするでええしょううか?」
 齢三十五にして十の月と一日目になるエウク梟族にして財務長官シャラワウ・シャウルルは八弥の案に反論する。
「どいつもこいつも俺の案を認めない! だったらこれならどうだ?」
 八弥は兵力増強特別案を通すべく逃げ道を駆使する--それは施行を敢えて六の年に延長させ、その間に案を改良するという物。
「五の年だ! それまでに教官軍者の数を増やし、更には国民の総数を今よりも一とコンマ一倍以上に増やす事が出来るなら教官の数不足を凌げる!
 そんな理由で案は一旦休止するんだ、いいな?」
 全閣僚は一斉に--また逃げ道を作って案を通すか--と心の中で呟く。
 その結果、兵力増強特別案は反対の数が半数に迫るものの休止させる事で半ば成立状態にさせた。
(時は一刻も争うんだ! 俺は正面から逃げてでも国家神武の軍者一名当たりの戦力を高めなければならない! そうしないと兄貴の仇討ちもアリスティッポスを俺達の力で取り返す事も叶わない!
 それに俺は子供達の為に格好良い所を見せたいんだよ!)
 彼は理恵が産んだ子供の数を二名以上と直感……!

 午後八時二分七秒。
 場所は未定。神秘的な場所で暮らす三名程の親子。
 齢三十三にして一の月と十日目になる応神人族の一名母は齢ニにして二の月と二十二日目になる雌と雄の双子に子守歌を披露する。
「ねんねん、よいこだ、ねむりのとおき。ぼうやよ、じょうよ、ねんねん、ねんねん--」
 彼女は双子の姉弟が眠りに就くのを確認すると月を眺める。
「ねえ、八弥。これで良いのかな? あたいはあなたが居ないと安心出来ない日々が続いて胸が苦しい。あなたの居ない日々はいつもあたいの死ぬ夢しか見ない。まだ幼い八理と恵弥を置いて死にたくない。けれどももし死んだ時を見越してあたいを迎えに……いいえ、八理と恵弥を迎えに来て。
 特に恵弥は仙者よ。あたいにはこの子の呼吸が他の子と異なるのを感じたわ。
 だから迎えに来て、八弥!」
 八弥と別れて二名の子を雌の手一つで育てる中条理恵であった……。

一兆年の夜 第三十九話 三兄弟物語 無限逃走の責務(三)

『えっと最近気になる事を発見。星央兄さんの遺産にもなる新たな都市建設予定の
えっと僕の命名だけどタイガーフェスティの場所で建設業者達は血の跡とかを見つ
けたとの報告が届いたんだ。すぐに交通長官メエメン・メヒイストは調査団を派遣し
て一の週くらい調べたけど、判明した事は明らかにこの現場に銀河連合が現われ
ているとの事。他にはそれを恐らくは二名から四名くらいの数で倒されていったとか
何とか。なおかつ建設予定の周囲を調査したら、一カ所だけ何回も掘り返されてい
る跡があったとの事。
 前はマンドロス山の標高が吉を吸い取られる高さに必ず一カ所に集中する地点
に銀河連合の死体が埋まっていたとの報告が合ってからもう一の月経ったかな?
ログホラーニさんが足を回した事であの場所では無断に立ち入る生命はすっかり
居なくなった。無断で堂々と入るのは八弥兄さんくらいだよ。それが居なくなるとした
ら、待てよ。
 もしかするとタイガーフェスティに無断で入ってくるのは八弥兄さんかも知れない。
それと他に誰か居るのかな。八弥兄さんは深夜に外を放浪しては銀河連合を斬っ
てゆくという習慣を持ってるけど、必ず一名で放浪するんだよ。何故なら兄さん曰く
<死なれたら困る>らしい。全く誰かの助力を借りない八弥兄さんらしいよ。
 僕が言いたいのはそうじゃないよ。あの兄さんと一緒にいるのは誰なのかって事
だよ。雄なのか、それとも雌なの。いやいや、雌は有り得ない。八弥兄さんは美弥さ
んの件もあって雌を連れて行く事は絶対無いはずだよ。だから。
                ごめん、ログホラーニさんが来そうだから今日はここまで』

 三月八十日午前一時五分九秒。
 天同八弥と中条理恵はこの場所で再会して以来、この時間になると毎日のように会っては痴話喧嘩をし、そして出現した銀河連合を倒してゆく。その結果天同六影の形見である神武包丁『六影』は使い物にならなくなり、新たに八弥は神武包丁『星央』を使用するようになった。この包丁は本来は星央に渡される予定であり、飾り同然の扱いを受ける予定だったが、彼が亡き今は母奈々による薦めで八弥に渡された。今のところ『星央』の刃は零れておらず、健在であった。
 話を戻せばどうして八弥と理恵は毎日のように会うのか?
 それは--
「『別れる』ってどうゆうつもり!」
「もうここで会う事はない。七の野郎が本格的に守りを固めに入った。明日になればこの場所もこんな時間帯に来ても軍者が子守をしていてこっそり会えなくなる」
「そんな! だったら他の場所でも会いましょう! 八弥だってあたいと別れるのは--」
「それは無理な話だ! 七は日に日に仕事をこなして来やがる! ありゃあ兄貴以上の才覚だよ、政務に関する事なら!」
「けれども弟君を黙らせれば他の場所だって--」
「やると思うか? 俺はそんな事をしたくねえよ。大体仕事を放り出した男の言葉に耳を傾ける生命がどこにいる? ましてや高い地位にいながらそれに甘んじるこの俺がよ!」
 臆病者ね、八弥は--理恵は本心ではないと気付き始める。
「どうゆう意味だ? 大体俺は七に迷惑をかけるが黙らせる事はしたくねえ! 俺はそうゆうことは好まない--」
「あたいが言いたいのはそうじゃないわ! 八弥は恐いのよ、死んだ雌の事を思い出すのが!」
 死んだ雌--紛れもなく妹分であった叶美弥。
 八弥にとっては守るべき雌だった!
「誰かは知らないけどあなたは……話の続きは銀河連合を倒してからにしましょう、ねえ八弥?」
 ああ、そうだな--八弥は蟠りを抱きながらも二体以上は居ると思われる銀河連合の前に刃を見せる!
 建設途中の建物の影に隠れながら銀色の眼を発光させる銀河連合--何かを過去に飛ばしたと推測される。
(あの光は何なんだ? けれども数はわかった! 三体だな!
 更には一体の居場所が判明したが、距離が遠すぎるな、近付いて欲しいけど奴等が応じるとは思えない。どうすれば--)
「あなたの考えは解ったわ! ここはあたいが彼等の食物になってみせるわ!」
 食物、ってオイ--八弥が叫んだ頃には理恵は位置を特定出来た銀河連合がいる場所に向かって蘇我鋭棒『入鹿』を地面と平行に構えながら腰を屈めた状態で突進する!
(やっとわかったぞ! あの女め! こうゆう時でも俺を捕えておきたいか!
 だったらやってやるよ、出来る限りなあ!)
 八弥もまた走り出す--もう一体がどこに潜んでいるかを突き止めながら!
 な、に--三体目は地面に潜っており、理恵は利き足を掴まれて顔を引き攣る!
「待ってろよ、理恵! 土竜型は斬れないが、他二体は両断してやるからな!」
 高度成人体型四百四十四くらいの高さから急降下する鷹型を迎え撃つように刃を地面に降ろす八弥!
(日に日に奴等は学習してやがる! このままじゃあ傭兵しか一体をなんなく倒せる生命がいなくなるかも知れない!
 兄貴よ、どうやら俺は戻らなくてはいけなくなるかも知れない)

 戦いは僅か二の分で決着が付き、一の時程かけて銀河連合を埋葬した二名は話の続きを始める。
「もう忘れなさい! そうすればあなたは毎日あたいと会えるわ。あたいと共にお喋りをして、共に銀河連合を--」
「無理な話だ! それに理恵も気付いてるだろ? あいつらはもう今までのやり方では倒せなくなってきているという事を!」
 使い物にならなくなった『入鹿』の事なの--背中から蘇我鋭棒を降ろして、刃を付ける先がやや曲がっている事を確認する理恵。
「刺した時に僅かだがずらしやがった。俺だってそれを思い知らされたよ、理恵と再会する時に!
 あの時は酔いと腕の低下による刃毀れかと睨んでいたが、もう一度奴等を斬った時に気付いた! 俺の太刀筋を研究してやがるってな! それから兄貴の形見に換えてからは奴等の動きに注意しながら両断したが、これは付け焼き刃に過ぎん。もう一度やり合えばまた刃毀れを起こす」
「……戻るの、政務に?」
「気付かれたか! そうだな、戻ったらどれだけ叱られるかわかんねえが、そんなのは兄貴の時から慣れっこだ。一の月が経てば文句を言う奴らは居なくなるだろう」
 本当にそれだけ--後に『女の勘』と呼ばれるものを発揮する理恵。
「どこまでも疑う女だ! いいか、理恵! あいつの代わりが務まると思うなよ!
 俺はあいつの事なんて只の妹程度に見ていたんだ! 心臓を高まらせるものだって感じないし、欲情だってしなかったはずなのに! なのに死んでからどうして締め付ける!
 教えろ、理恵! どうすれば忘れられる!」
 豹族の如き鋭い目つきは猫族のような何かに縋るような弱い目つきに変わる! 天同八弥は過去から逃げたかった! けれども過去は彼を逃がしてはくれない! その結果として彼が行う行動は更なる逃げを作る事にあった!
 そんな八弥の心情を全ては理解しなくとも愛情を持って接しようと試みる者は目の前に居た!
「もっと逃げて良いわ。ただし、あたいを抱けたらの話だけど」
 彼女は種を残すべく賭けに入った--口では運命を受け入れたつもりであった彼女も逃げを求めていた!
「雌の尻を追っかけた男が……今年で三十に成ったこの男が抱ける道理なんてあるか!」
 それは果たして一兆年の神々による導きなのか……?

 二の時が過ぎる頃、八弥は目を開けて理恵の前から姿を消した--服をしっかり着せる事で恥ずかしい姿を晒さないように。
(さよならだ。恐らく子は宿ったのだろう。雄なのか雌なのかは知らんが、俺は確信を持って言える!
 中条の血筋は今もまだ健在であると!)
 八弥が去ってすぐに理恵は起き上がる。彼女が最初に行動したのは腹を摩る事だった。

 三月八十二日午後十時七分五十六秒。
 場所は国家神武首都ボルティーニ中央地区中央官邸。
 中は今までで最も騒然と成った! 全閣僚が驚愕の余り落ち着きのない行動をしては誰かにぶつかる始末だった!
 ここ最高政務官室は現在天同七の執務室に変貌するもある者の帰還でそれは吹っ飛ぶ!
「な、な、な、な、な!」
 齢十八にして十の月と十七日目になる神武人族の少年天同七は二番目の兄八弥の政務復帰に一番驚いていた!
「相変らず優しすぎるな、七は」
「何言ってるんだ! 八弥兄さんのせいで僕はどれほど苦労したかわかってるの!
 目の隈はこんなになってるんだ! ちゃんと鏡で見たから--」
「ところで戦術・戦略に関する書類を俺に寄こせ! 今から済ませに行くぞ!」
 七の目から大粒の液体が机の上に落ちてゆく!
「やっとやる気になったんですね、兄さん!」
「ああ、俺が居ればこんなのすぐに片が付くぜ!」
 そうかな--七は十の分かけて八弥用の書類を分けてそれを纏めて八弥の両手に乗せた!
「オイ、七よ! 百枚以上ないか?」
「最後まで付き合って下さい、八弥兄さん!」
 格好付けて戻るんじゃなかったよ--八弥は後悔しながらも慣れない手つきで書類を通してゆく!
(折角全て終わらしてもログホラーニの腰砕けは約六割を返して来やがった! お陰で一日分を二の日をかけて終わらす羽目になったよ! 何で俺がこんな目に遭わなくちゃいけないんだよ!)
 それから三の年の秋が訪れようとしていた……。

一兆年の夜 第三十九話 三兄弟物語 無限逃走の責務(二)

『兄さんのせいで僕の生活に楽しみが一つもありません。書類の山は僕に赦しを受
け容れないように襲い、眠気は仕事を妨げ、時間は僕を焦らす。そして何よりも僕
が恐れるのは書類の検査だ。ログバーコフさんは僅かな箇所でも見逃さずにまた
送り返してくるんだよ。辛いよ、やり直すのは。それで今日までに終わるはずの仕事
が明日に来るんだ。もうどうにもならないよ。
 それにしても八弥兄さんはどこにいるんだ。八弥兄さんのせいで僕はこんな目に
遭ってるんだ。絶対に帰ってきたら全ての仕事を押しつけてやるんだ。何で僕が兄
さんの尻拭いしなくちゃいけないんだ。僕は仕事から離れたい。こんな事をしたくな
いんだよ。
                          いけない、日記を書いている暇がないよ』

 三月四十三日午前一時二分十一秒。
 場所はマンドロス山ボルティーニより出入口付近。
 そこには国家神武で起業する土木業者が上っていた--いつも通り山を登って銀河連合を倒しに来ていた八弥は木陰に隠れながら一部始終を目撃。
(兄貴が死んでもログバーコフの野郎は仕事しやがる! 土木業者の護衛にヤマビコノアリバルザなんて付けるとはよう! あいつが居れば十体までなら余裕だ。
 ちい、どいつもこいつも俺の楽しみ……いや苦しみを理解しやがらねえ!)
 八弥が向かう先は開発中の町タイガーフェスティ--本来の名称は西ボルティーニであったが、七の提案で今は亡きタイガーフェスティの名前が付けられた。
(大体誰だよ、名称を付けた腰砕けは! 思い出したくなってきちまうじゃねえか!)

 午前二時二十八分六秒。
 タイガーフェスティ町が完成するのは三の年より後。ここに作るように考案したのは天同星央。彼はここに新たな工業都市を開発するのが目的だ。
 現在は工事が始まる前である為、中には誰も居ない。そんな場所に八弥は土を踏む。
(無防備だな。よっぽど生命不足だな。兄貴は広げるのはいいが、それに見合うだけの生命を用意しきれてねえ。これじゃあ明日の朝に工事する者が来たら仰天するぞ!
 『銀河連合によって滅茶苦茶にされた』ってな)
 けれども八弥の顔から笑みが浮かぶ--それはこうゆう場所だからこそ現実逃避には相応しいと。
 彼は建物などを調べながら想像を膨らませてゆく--けれども神武包丁から鞘を抜いていつでも臨戦態勢をとる事を忘れずに。
(それにしたって欲張りだよな、兄貴は! そんなに武器を運ぶ費用を減らしたいとはよう。いや、この場合は資材の持ち運びをより円滑にする為にこんな場所を新たに作ると決めたんだっけ?
 まあどっちでもいいか。とにかく何もなく、荒れ地でしかない所に町を作る以上は……誰か居る!)
 気配のする方に飛び込む八弥だったが周囲を見渡すと目に飛び込んだのは一の週より前にマンドロス山で出会った成人体型一になる紫髪の女性だった。
「よっぽど暇なのか、女」
「あなたの方こそ。居場所をとられてここにやってきたの?」
 痛い所を突く前に考えろよ--右人差し指で右米神を掻く八弥。
「あーあ、覚えているなんてあたいはツキが少ない証拠ね。もっと良い雄に出会えたら良かったのに、こうゆう時に限って八弥『君』とは」
「いい加減『様』を付けろ! 俺はこう見えて最高政務官なんだぞ!」
「賢い使い方を間違ってるわよ。いくらあなたが最高官でも仕事を放り出している今では国民は誰を最高官と思ってるのかしら?」
 ぐぐ--八弥は返す言葉に悩む。
「星を図られたのね。あたいは知ってるわよ。あんたが一部ではあるけど国民に何て呼ばれているのかを--」
「言うなよ。想像出来なくなったら困るだろう。
 それよりも女もあれか?
 『ここは無防備だから銀河連合が必ず荒らしに来る』と踏んで来たんじゃないだろうな?」
 あなたもそうなの--中条は左手の平を頭の天辺に乗せながら質問で質問を返した。
「どこまでも礼が出来ない女だな。質問を質問で返すなよ」
「別に良いでしょ。どうせあなたはあたいの好みじゃないんだし」
「俺も女を好まない。ここまで目上の者に礼無きを働いちゃあ……女!」
 構えるんだね--中条は先に構えた八弥の後を追うように鋭棒を構える。
「俺の直感だが、ここには五体も居るぞ! ちゃんと新しい刃に変えたのか?」
「あたいは中条なのよ。鋭棒を使ったら右に出る者はほとんど居ないわ!」
 質問に答えろよ--両眼を閉じながら溜息をつく八弥。
 彼等が痴話喧嘩をしている内に銀河連合は姿を現す--その数は八弥が予想する数より一体少ない。
「どいつもこいつも混合型か! 百足人型だけじゃなく二頭犬型や隼蠍型に……オイオイ!
 さすがに混ぜすぎだろ! えっと蝶族と土竜族に蚯蚓族と後は--」
「他には羊族のようなふさふさな毛と……吐きそうだわ! もうさっさと倒しましょう!」
 もう踏み出すなんてどこまで礼儀のない女だ--後を追うように八弥は中条とは反対方向に足を踏み出し、二頭犬型と隼蠍型目掛けて自らの腕の太さくらいの高さで滑空をする!
(隼蠍型は飛べるようだな……って視線を移したら二頭犬型が視界から居ないだと!
 どこに……当たるか!)
 着地すると同時に二頭犬型の仕掛けた噛みつき攻撃を三回バク宙しながら避ける!
 着地した八弥の隙を突いて隼蠍型は触手による毒攻撃を仕掛けるも--
「『避ける』なんて行動をとると思ったか!」
 振り向き様に下から上へと切り上げて真っ二つにする事で触手攻撃回避した八弥!
 だが、ここで思わぬ事態に遭う!
「腕が落ちたのか! 折角刃毀れせずに持参した親父の形見に血を付けるなんて!」
 初めて刃の刃毀れを起こした八弥の隙を突くように二頭犬型は視界に入らない所まで一瞬で接近!
「しまった……訳ねえだろ!」
 八弥はまたしても刃毀れさせる--頭上に真っ直ぐ神武包丁を突き立てて二頭犬型を倒す!
(これで親父の形見は残す所あと三回。いくら長持ちさせていても包丁はいつか必ず鉄屑と化す。
 まあそんな事は後で良いか! それよりも女を助けないと!)
 八弥は中条が居る方向に視線をやるとそこには--
「しまった! このままじゃ勝てない! 急いで取りに行かないと!」
 鋭棒を百足人型の背中腰に飛ばされた中条は左に回って走り出すも百足人型に絡まれた!
「このままじゃあたいは死ぬ! あたいの代で終りたくな--」
 終わらせないよ、女--八弥は神武包丁を刃先を前に突きだして投げる!
「刺さったわ! で、でも先頭の奴だけじゃあ--」
「だからこそ俺はそいつら全員を纏めて切り倒す為に投げたんだよ!」
 中条を突き飛ばした八弥は後二回しか使えない神武包丁『六影』を両手で握ると素早く抜く--百足人型は抜く瞬間を狙って絡もうとする!
 しかし、八弥は突き出る部分の方に避けると右足を力一杯踏み出して包丁を振るった!
 し、信じられないわ--一太刀で百足人型を両断した八弥の包丁捌きに髪を逆立てる!
「見たか女! しかも今度は刃毀れ一つさせてないぞ!」
「いい加減に『女』と呼ばないでよ!
 あたいにはパパから貰った『理恵』という理の恵みがあるんだから……ってだから好かない雄と一緒にいるのは良くないのよ!」
 理恵か--何時の間にか笑顔になる八弥。

 午前四時二分九秒。
 八弥と理恵と呼ばれる女性はしばらくの間、痴話喧嘩しては銀河連合が出現すると武器を構えてそれを撃退するという事を行った。
 そして--
「そろそろ時間だ。現場監督が出て来られると俺達が居る事がばれてまた軍者を送るかも知れない。と言う訳で今日はここまで!」
「別に『八弥』とまた会うって訳じゃないんだからどうだっていいでしょ?」
 今度は呼び捨てか--八弥は真っ赤になる!
「フフ、可愛いわね! ところで酒は切れたの?」
「理恵のせいで酔いが覚めた。もうこんな所に来るなよ。俺は一名になりたいからな」
 そうかしら--子供っぽい笑顔で返す理恵。
「全く理恵は。じゃあな、今度こそさよならだ!」
「ええ、そうなると良いわね!」
 二名はそれぞれ反対の方角から帰路へと向かってゆく。
(中条理恵……美弥とは違った意味で手間がかかりそうだな)
 それでも八弥は美弥の殻から出られないでいた……。

一兆年の夜 第三十九話 三兄弟物語 無限逃走の責務

 三月三十六日午前一時七分十八秒。
 場所はマンドロス山標高成人体型六百六十六。
 齢二十九にして十一の月と二十六日目になる神武人族の青年は白い部分が目立ち始めた脇まで伸びる長髪を風に靡かせながら何かを追い求める--神武包丁『六影』を鞘から抜いて刃の光を標にしながら!
(ここは多分吉が吸い取られる標高のはず! と言う事は必ず銀河連合が潜んでいるはずだ!)
 青年は何故銀河連合を探すのか? 死ぬ為なのか、全生命の為なのか、肉親の為なのか?
(眠い。ふらつく。酒を十杯も飲むんじゃないな。頭が痛くなって来やがる! 飲むんじゃなかった? 違う!
 俺は呑まれるんだ! 酒を飲まないと夢に出ちまうんだよ! 呑まれる事でしか忘れられねえ! なのに出ちまう! 美弥が! 兄貴が! 美智琉もだ! それにアリスティッポスで死んだ連中も! それに何故か銀河連合まで俺の夢に出ちまう! 俺は忘れたい! いっそ吉が離れる標高で銀河連合によって食われたい!
 俺は、おれは、オレハ--)
 突然、青年の右肩に水のようなものが当たる。それはやがてもう片方の肩や長い髪の至る所にも落ち、大群は一体を濡らしてゆく。
(雨か。そういえば明日の天気予報を知っておくべきだったか? もう少し雌付き合いを増やすべきかな? けれどももう周辺の雌は至る所で調べ尽くした以上は次に会うのはどれも細工のない雌ばかりだ。
 だが、他種族の雌を追いかけるなんて事を俺はしたくないしな。どうしよう……かと思ったら!
 背後に美雌が入るじゃねえか!)
 青年が振り返ると確かに居た--細い木に隠れてはいるが齢二十九にして十一の月と二十六日目になる応神人族と思われる女性が。
「姿を出せ! きっと君は良い雌だぜ」
 好かない雄だけど隠れるのはあたいの趣味じゃないわ--女性は左からゆっくりと姿を現す。
「刃で明かりを点しても見えん。もう少し近くに寄らないか?」
「目が良くないの? それともあたいが黒い肌をしていると勘を外してるかしら?」
「俺を誰だと……いいか。どうせ俺の勝手だし。
 それよりも早くこっちに来るんだ。背後から銀河連合が来るとも知れんのだぞ」
 聞こえない、もう一回言って--女性は小声でそう呟く。
「その手に乗らせる気か? 生憎だが俺は雌を口説く手段なら心得てるんだよ。
 だから君から近付くんだよ」
「あらあら、あたいは『雄を誘う手段』を心得ているけど」
 わざと青年を焦らす為にある部分を強調するように声を張り上げる。
「相当神様を困らせる雌じゃねえか、お前さんは」
 そっちこそ同じじゃない--女性は普段の声量で返答。
(何なんだ? 雨で濡れているせいなのか? それとも俺自身が眠いせいなのか?
 そうだ! きっと酒に酔い潰れてこうゆう状況になったんだ! そうしよう!)
「あらあら、『臆病』じゃないの、意外と!」
「臆病? 今、俺を『臆病』って言ったか?」
 言ったわよ臆病者さん--女性は腹を通さずに青年の耳奥に届かせた!
「言ってろ! いいか、俺が臆病なら世の中の全てが臆病者の集まりだ!
 『女』! お前もその一名だぞ!」
「女? 雌とお呼びなさい! あたいはこう見えて女女してなく、雌雌してるんだから!」
 言ってろ、今の俺は冷静じゃないんだ--自然と女性へと足を動かす青年。
「近付くのね。どうやらあたいのか……ってあなたはひょっとして!」
「おれがどうかし……危ないぞ、短髪の女!」
 え--紫の短髪をした女性は後ろを振り向くとそこにはカメレオン型銀河連合が雨でようやく照らされた形で喰らおうと両前足で掴もうとしていた!
「させるか! 女の目を惑わしても包丁使いの俺の目は惑わせないんだよ!」
 青年は低姿勢で一の秒もかけずにカメレオン型の間合いに接近すると素早く上から下に振り下ろす!
「は、早い! しかも綺麗な太刀筋ね!」
 カメレオン型は血を流すのを忘れて絶命--素早く鞘に収める事で刃に血が付着するのを防ぐ青年!
「やっぱり出やがったな! この標高は数字の吉が良くないから奴等が寄りつくにはちょうど良いと踏んだがどうやら正解だったな、えっと名前は何だ?」
「あたいの名前を知りたい、天同八弥君?」
「俺の名前を知ってるんだ……って礼を失するぞ、女!」
「別に良いでしょ? どうせあなたは……今度はあたいがお礼をする番よ!」
 まだ居たのか--八弥と呼ばれる青年は背後に子守熊型銀河連合が居る事に気付いていた。
 けれども八弥は敢えて動かず、背中から蘇我鋭棒『入鹿』を取り出して構える女性に任せる。子守熊型は真っ直ぐ八弥の頭を食らいに飛び込んだ!
 見なさい銀河連合--女性は雨水を切り裂かんとばかりに飛び込み、子守熊型の左眼ごと頭を貫通させた!
「さすがだな。この棒捌きは知っている気がする。かつて傭兵団のところでお世話になった事があるんだが、名前は確か……忘れた!」
 八弥君は馬なの、鹿なの--女性は子守熊型の死体から鋭棒を抜くと腰に巻いた白い布を取り出して丁寧に刃先に付いた血を拭きながら両眼を閉じて溜息を吐いた。
「そうだ! 確か応神諸島で暮らす人族の中に鋭棒使いが居たな!
 名字は確か『中条』だな。
 お前は中条定雄の孫だろ?」
 残念ながら定雄大叔父さんとは関係ないわ--恐らく中条と思われる女性は舌を見せながら返答する。
「でも合ってるだろ、名字は?」
「合ってるわね。まあ中条はもうあたいで途絶える予定だけど」
 知らなかった--八弥は悲しそうな表情を見せる。
「でも後悔しないわ。これも増えすぎた生命を一括化する為の運めだとあたいは思ってるの。何たってそれだけは真実じゃないの? その為に銀河連合は四百もの昔にこの星に降ってきたんだし」
「言うな! それを認めたら死んだ連中に申し訳ないだろ!」
「あら、怒った? 八弥君にとっては認めたくない事実のようね。
 でも認めないと前へ進めないわ。だから認めなさい!」
 俺に命令して良いのは兄貴とお袋と親父だけだ--八弥は目を逸らしながら拒む。
「でも命令出来る者はもうあなたの母である奈々様だけよ。星央様はアリスティッポスで--」
「兄貴の事は知ってる! 今更言うな、中条の女!
 それよりもいい加減教えろ! 女の名前を!」
「逃げた。あなたは逃げるのが得意なのね」
「質問に答えろ! 女の名前は何て言うんだ!」
「残念だけど答える義理はないよ。だってあなたはあたいの好みじゃないから」
 中条と呼ばれる女性は鋭棒を背中に持ち直すと八弥に背中を向けながら四足の構えをする。そして、大地を蹴って走り去ってゆく!
(俺だって女を好まねえ。このまま追ってもいいけど、好かない女の尻を追いかける趣味は俺にはない。
 ちい、折角呑んだくれていたのに女と出会ったせいで覚めちまったじゃねえか! もう一回飲み直そう!)
 八弥は気付いていなかった--この出会いこそ彼を再びアリスティッポスの大地に立たせる事にさせるとは……!

一兆年の夜 第三十九話 三兄弟物語 無限逃走の責務(零)

 ICイマジナリーセンチュリー九十六年十二月百八日午後九時五分零秒。

 場所は大陸藤原鎌足地方廃恵美町第二西地区。一階建ての藁家が押し並ぶ住宅
通り。
 齢十五にして四の月と二十五日目になる神武人族の少年は齢十三にして二の月
と十六日目になる神武人族の青年を庇う為に指揮官型の攻撃を顔面に受ける!
「兄貴いいいい!」
「今だ、八弥やつみイイイイ!」
 けれども八弥と呼ばれる少年は目の前で兄が自分を庇ったことで身動き一つとれ
ない!
「グウウ、どうした、八弥! 自分より戦闘の才を持ってるお前らしくないぞ!
 指揮官型を倒すのは今がその時だ! でないと……間、に合わない!」
 額に十字傷を受けたばかりの少年はすぐ目の前にある死を受け入れる体勢では
なかった--恐怖を引き摺ったまま指揮官型の左隠し腕から放たれる斬撃を心臓
目掛けて受けようとしていた!
(このままじゃ兄貴が死んでしまう! で、でも恐くて俺は--)
 不思議な事に世の中は案外都合が良かった--指揮官型は背後に迫る齢三十
三にして十一の月と二十五日目になるルケラオス虎族の中年が徒足空脚を仕掛け
る!
「避けたかアアス! だが俺を誰だと思う次第かアアス!」
 中年は指揮官型の風をも越えかねない素早い太刀筋を掠り傷で抑えながらも前足
による攻撃で相手の隙を狙う!
 しかし、指揮官型は隙を作らずとうとう中年は左前足の平に右手で仕掛けた突きを
受けた!
「タイフェス殿お!」
「爺さんでも勝てないのか! だったらもう--」
「諦めるるものではなかろう! このシュトラアタ・ベンデルウムもいることを忘れない
で頂こうか!」
「レオン・キングレイ……参る!」
「イタラスっこ! 星央ほしお様とっこ八弥様を死なせないでっあ欲しい! 頼むっこ!」
「言われなくてもそのつもりっち!」
「全くはるばる遠征したのにわしは星央様の大事な額に傷を付けるなんて部隊長の
資格無しじい!」
「拙者は何やってるんだ! お目付役として八弥様を守るん役目を放り出すんなぞ!
面を上げきるんばかりだぞ!」
「気にするうんじゃないぞお、ログホラーニ! わしだあって同罪なんだぞお!」
 三名に助太刀すべくゼノン燕族のシュトラアタ・ベンデルウムにアリスト人族のレオ
ン・キングレイ、武内子守熊族の超巨漢コアックラウと彼に頼まれて助太刀したルケ
ラオス鼬族のイタラス・ジャレモンドにコアックラウとイタラスの上司であるタゴラス駱
駝族の中年林原コブ吉と八弥のお目付のキュプロ栗鼠族のログホラ-ニ・メデリ
エーコフと星央のお目付であるエウク馬族の真島ギャラ蔵が駆けつけた!
「この七名だったら指揮官型だ……え?
 何なんだよ、あいつは!」
 一名で二十体から三十体を相手出来る七名がそれぞれの部位に刺し傷または切
り傷を受ける!
「ぐぐ、このままじゃあの方達が死んでしまう! 自分達も加勢しよう!」
「兄貴! 無茶だ! あいつらが集まっても平然としてる指揮官型に--」
「腰砕けを言うなアアス! 俺も加勢するんだアアス! 八弥様はもっと仲間の力と
自分自身の心の力を信じるんだアアス!」
(自分自身の心? どうしてそんな事を?
 いや、ここまで来たらもうどうにでも成ってやるさ!
 兄貴を守る為なんだ! 兄貴さえ無事なら俺は、俺は!)
 この時から少年天同八弥は己の意志で進む事から逃げる--流れに任せて仲間
と共に指揮官型と戦った!
 そして……!

 午後十時二十八分十五秒。
 星央と呼ばれる少年の顔面には視界が覆わないギリギリの所まで包帯が巻かれ
た! 八弥は折れた右腕を包帯で固定されながら星央にこう言った。
「もう兄貴に危険な目に遭わせない! 俺が才に甘んじてたった一名で指揮官型と
戦ったせいで--」
 気にするな--星央は右手で八弥の頭を撫でる。
「でも俺は--」
「心配するな! 自分は八弥を含めた全生命が守れるなら喜んで命を投げ出す覚悟
はある!
 それに後悔してるだろう?」
 え-ー八弥は星央が言いたい事を理解しかねる。
「『覚悟しきれない自分自身に』って事だよ! 勿論自分も同じだ!
 あの時に八弥を助けたのにその後に繰り出される指揮官型の攻撃で死ぬとは思
わないので全然覚悟する事を忘れたよ。自分もまだまだ修行が足らない事を痛感し
たものよ!」
「そ、それでも俺よりかは十分己自身を入ってるじゃないか!
 俺なんて、俺なんて!」
「そんなに許せないのならもっと強くなれ! 自分よりも強く、あの天同生子よりも強く
なってみるんだ! お前なら出来るはずだ!
 何故ならお前は自分よりも包丁捌きの才能に溢れているんだからな!」
「……わかったよ兄貴! 絶対に強くなるさ!
 いつだって兄貴の命を救える……いや大切なものを守れる程強い雄に俺は成って
みせるさ!
 俺は神武人族の天同八弥! 誰よりも、仙者よりも強い生命として!」
(格好付けたのはいいが、強くなる内に痛感させられたよ!
 『強いだけじゃあ誰も守れないんではないか』ってな! そうだよ、あの時だって俺
は守れなかった! 大事な雌だと気付いた美弥も……!
 そして--)

 ICイマジナリーセンチュリー百年十二月七十九日午後八時四分二秒。

 場所はアリスティッポス大陸エウへメロス地方中継基地正門入口内。
 白熊型を倒し、プロティ熊族の毛利ベアレルの応急措置を済ませた八弥はレイン
ズ・キングレイと合流。そこで星央がたった一名で銀河連合指揮官型と対峙している
事を知り、急いで駆けつけるも--
「ああ! どうして俺を呼ばない! 呼んでくれれば死ななかったというのに!
 どうして運命を簡単に受け入れたんだよ、兄貴イイイイイイ!」
 八弥が見たのは左腕の肉全てを剥ぎ取られ、両眼の光を暗闇にされ、左耳朶を切
り取られ、全身無数に切り傷を受け、最後に全身滅多刺しになりながら刃渡りを十分
の一まで折られた雄略包丁を指揮官型の胸に当てる星央の無残な姿
であった!
(それから先はもう思い出せない。俺はもう強くなる事を放り出した。大事な者を二名
も守れない強さに何の価値があるんだよ!
 俺は忘れるように雌の尻を追い求め、忘れるように酒に呑んだくれ、忘れるように
銀河連合を見つけては勝負を挑んで生き残ってゆく!
 美弥が側にいてくれたらどれだけ良かったかな? ああ、そうだ!
 もうあいつは想念の海に旅立ったんだっけ? 兄貴よりも先に、美智琉よりも先に!
そういや美智琉で思い出したんだけど、あいつも死んだな。兄貴が死んで一の月よ
り後に。全くどいつもこいつも勝手に死にやがって! もう俺の肉親は死んだ二名が
遺した星季、輝星、美世。そしてどうしようもない弟であるななしかいない。おっとお袋
の奈々を忘れていたよ。全くお袋はしっかりしているな! 息子が一名死んでも生き
る事に懸命なんだからな!
 えっと現在は俺の年齢はいくつだった? ああ、そうだ! 二十九になったっけ?
後で七に聞いてみるか)

『僕は今年で十八になる。母の薦めで八弥兄さんは最高政務官に、僕はそれを支え
る摂政になったよ。当然ながら象徴は空席。母は僕を象徴にしてくれはしない。あれ
だけログホラーニさん達の薦めがあっても頑なに。
 摂政と言ってるけど実際は最高官の仕事を全部僕がやってるんだよ。全くどうしよ
うもない兄を持って苦労するよ。まさか八弥兄さんがここまで仕事を放り出すなんて。
毎日八弥兄さんがやるべき仕事に追われるから肩が凝ったり目が虚ろになったり、
身体がふらついて困る。いくらログホラーニさんが支えても間に合わないよ。
 えっと星央兄さんと美智琉姉さんが遺した三名の子はミ、いや名無しさんとツクモ
ノカミがお守りしてくれるお陰ですくすく成長するけど、三名それぞれ悲しみを抱えて
いて辛く思う。まだ美世はいいけど、星季と輝星は早くから両親を先立たれて立ち直
るには時間が必要だよ。本来はこの歳の子供は親が死んでも悲しみはまり抱え込ま
ないはずなんだけど、星央兄さんも美智琉姉さんも大切に育てすぎたから悲しみを
抱え込んでしまったよ。特に心の傷が大きい輝星は余計に。
       もうこんな時間だ。早く今日分の書類に判子を押さないと間に合わない』

 七が日記を書いている時間はちょうどICイマジナリーセンチュリー百一年三月三十五日午後十一時二十七分七秒であった……。

諸悪の権化M・S・K・M

 どうもそんなタイトルを出しながらK・Y新聞の一面を見てるdarkvernuです。
 時事ネタを始める前に『格付けの旅』が数行程更新されましたので読まれたい方はカテゴリ覧の<格付けの旅>をクリックして下さい。
 さあてと、故人に哀悼の意を捧げる仕方が下手な自分はとりあえず三つ子の悪である連中に嫌がらせのつもりでショートストーリーを書きますぜ!

 東京ドームの地下にある闘技場で最強を決めるトーナメントが開催されようとしていた!
「さあ始まりました! 最強のマスゴミは誰か!
 全マスコミ入場!

 ワットナーベの為なら巨人も大連立もナンボのもん!
 かつては右だったゴミウリ新聞!

 説明不要のアサヒりぶり!
 御存知通名報道のK・Y新聞!

 変態記事を全世界に垂れ流して昇進?
 在日の巣窟なら変態新聞!

 保守の為ならスカトロ呼ばわり!
 けれども全新聞社ではましな部類に入る計算新聞!

 数多くの中小企業の社員を地獄に叩き落とす経済音痴!
 名前負けもよいところだニッケイ新聞!

 ガクブルな組織によるガクブルな記事!
 何が面白いのかわからない四コマが載るピューリタった新聞!

 こと経済に関してはまともな事を言う政党による機関誌!
 だが油断は禁物だ新聞エンゲルス!

 扇動政治の恐怖体験からして気がかり?
 地方新聞界からネルフ新聞のご登場だ!

 アベするを流行語?
 地方新聞界のドラゴンチューニチ新聞だあ!

 集団自決はここから始まった……
 御存知洗脳記事オンパレードなゴーヤータイムス!

 ジェネラル・ヘッド・クォーターも恐れる保守力!
 草の根の活動が今ここにタケルノミコト新聞!

 椿事件は現在も続く……
 御存知ウソバスターな嘘を吐くテロ朝のご登場だああ!

 オウムも亀田もこいつらが仕掛けた!
 あの温泉街発言をした哲也の魂が今も蠢くツイン・バード・ストライクがやってきた!

 会長はもはや第二の電通豊!
 K国に魂を売り、視聴者総スカンな蛆テレビ!

 辛抱次郎も募金詐欺もお手の物!
 中川昭一を殺した真犯人Nテレのお通りだ!

 海老ジョンイル死すとも反日死せず!
 受信料をテロ報道に使う反逆放送局日本引きこもり協会が来るなんて!

 ここも緊急特番すれば日本崩壊のシグナル!
 高橋名人を普通にインタビューさせることに定評なテレっ東!

 保守と騙れば何をやっても許される?
 柔道の黒帯を持つと噂されるワンマン社長率いるちゃんねるチェリーが緊急参戦!

 ジブリ社長が虎視眈々と乗っ取り始める……
 けれどもユーザーの七割以上がエア本信者なエガエガ動画!

 たらこに始まり、たらこに終わる!
 小林よしのりから頭がパーンまでを網羅する日本の影なる支配者ツーちゃんねる!

 済みませんが全マスコミを出すおつもりが作者の知欠により主な数社しか出せませんでした! それらは後日リサーバーとして出場する予定で御座います!
 気を取り直して全二十社がいかにアサヒ技とごり押し力と報道しない自由な心を駆使して相手を降すことにかかります!
 解説は二名おりましてマスコミ殲滅計画を推進中のテロリストただものさんとマスコミを我が物にせんと陰謀を働いておりますニートのおかもとさんです! 二名ともどうか宜しくお願いします!
 それからゲストも二名おりましてソレスタルビーイングのように紛争根絶を掲げる正義のヒーロージョニーマンさんと未だに出すタイミングがわからないどうでもいい事で無名な北川某さんです! 二名もどうか宜しくお願いします!

 でゃ早速一回戦の第一試合K・Y新聞対計算新聞を始めるようです!」

 トーナメントの結果はどうなったかは千年後に改めて記されるであろう……


 つまりどうでも良いってことですよ(笑)。とりあえず解説をしますよ。
 そもそもどうして今更諸悪の権化たるマスゴミをネタにするかは台風の被害で伊豆諸島に住む住民が数十人死亡したりするニュースがありました。実は台風の被害も凄いけどそれ以上に救助活動を堂々と妨害するマスゴミのせいで死者が増えたと言っても過言じゃありません。本来は救助に当たって住民の声とかを聞き取って位置特定しなきゃならないのにマスゴミは温泉街発言からさっぱり成長せずに堂々と妨害してやがってます。本当にあの悪名高きツイン・バード・ストライクの悪名高きネウス23の哲也が墓の下に埋まってもテロリスト根性は死なないとはもはや話になりません(怒)!
 まあ実際は話解かないといけないのが自分達の辛い所ですよ。まあ愚痴はここまでにしましょう。
 さてと、そもそも何故マスゴミが三つ子の悪かを説明する前に三つ子の悪について改めて説明します。ちなみにこれは自分自身の思想が結構に含まれますのであまり鵜呑みにしないように。
 まずは過去を喰らう悪から説明しましょう。過去を喰らう連中とは過去を蔑ろにし、自分達を正当化することの熱心な豚共です。思想を挙げるなら稀代の変態ルソーと頭が良すぎた髭親父マルクスの思想。実行者は有名な奴等を挙げるならジャコバンのロベスピエール、ソ連のレーニンとスターリン、C国のマオさんと嫁含む四人組、クメール・ルージュの細菌兵器使いで旧名サロット・サル、そしてブーメラン党の下衆共と旧社会党の一味、そして赤軍の森恒夫と永田洋子、それと南北K国全て。ジョージ・オーウェルが最も嫌う連中ですよ。
 次に現在を破壊する悪について説明しましょう。こちらはいわば無駄絶対悪の思考と借金絶対悪の思考、それと公共投資絶対悪と民間全肯定などが重なってアカと双子の兄弟のようなイカレタ思想に成ってくれます。主な思想を挙げるなら新自由主義しかもフリードマンらシカゴ学派寄りの。江戸時代の自称インテリである新井白石や暴れん坊将軍の孫だけど尊敬出来ない駄目老中定信に家斉のせいでつけを払わされた苦労人水野忠邦にアメリカ国民を虐殺したと言って良い悪名高き財務大臣アンドリュー・メロンに青年将校を生んだ原因を作った嘘つき礼次郎に井上準之助、それとアカを盾に新自由主義を押しつけたミルトンさんと考えは共感出来るが新自由主義の欠点をもう少し説明しておくべきだったフリードリヒ・アウグストさんに財政危機を煽る切っ掛けを作った社会党のスパイ鈴木のおっさんに新自由主義を輸入したヤスバーロやヨーロッパの優れない部分が仇となって現在を苦しめるEUのシステムに森元さん率いる清和会系の流れを汲む政治屋共と大阪市長であるツイッターのマスタークラスにTPP賛成する保守を騙る愚か者達に渡邊らブラック企業系の人でなし。こちらもオーウェルは嫌います。彼の著作を少し囓ればそれは本当だと解ります。
 最後に未来を奪う悪について説明しましょう。これは一見すると真実は正しいように感じます。ですが、限度はあります。フィクション作品で現実と同じような物語を読んで子供は楽しむでしょうか。或はケネディ暗殺の極秘文章を今から国民に知らせてアメリカは一致団結しますか? しないでしょう! それが真実の欠点のですよ。それを解らずに核持ち込みの文書を公開して大はしゃぎしたフランケンさんはもはや話になりません。まあフラン圏と構え通行許可証さんとか光のグーグルアースツイッター戦士さんとかあぐらのカイエーダとかもう誰も相手しないでしょう(笑)。脱線はここまでにしてとにかく日本書紀が偽りとか日本の歴史は二千年に王者にとかを国民に知らせても喜ぶのは一部の考古学マニアだけです。そうゆうもんですよ、真実の行き着く所は! ちなみにこの悪だけは解るように説明出来ないのであまり鵜呑みにしないように!
 三つを簡単に説明しましたが、マスゴミは三つ全てを内包します! 特に我が国のマスコミはヒドイなんてレベルじゃない! まずは南京大虐殺から従軍慰安婦に至るまでかの悪名高きK・Y新聞は平然と本当のように伝えます! ここに過去を喰らう悪が内包します。
 次に日本経済を崩壊させようと企む財務省の連中による借金大国のフレーズ、そして増税。このせいで日本は回復に向かうはずが奈落へと突き進んでゆきます。お金だけでなく労働環境までも! それにも拘わらず奴らは財務省の企みに乗って回復から遠ざけようと煽ってゆきます! ここに現在を破壊する悪が内包してます!
 最後は真実でしょう。本来は三つ内包なんてどこか一つと辻褄が合わなくなって有り得ないはずなのにマスゴミは核密約暴露とか汚染区域がどうたらこうたらとかの真実を考えずに国民に垂れ流し、国民の不安を煽りまくる! ここにこそ未来を奪う悪が内包します。
 正直言って自分はマスゴミの各社にのみ大地震がやってきて全員痛い目にあったらどうかと思ってる次第ですよ! まあ八百万の神々は連帯感を日本人に教え込む以上は都合の良い自身が起こるはずがないのが残念ですが。取り敢えず自分としてはツーちゃんねるとかタケルノミコト新聞とかエガエガ動画とかテレっ東があれば後はほぼ気に入らんので会社と社員全員を乗せて因果地平の彼方に旅してればいいと考える次第だよ(怒)。
 と言う訳で熱くなりすぎたのでここで終わります。

 では第三十八話の解説を短く纏めたいと思う次第だ! 今話では長男の星央が主人公を務めます。
 とにかく星央は二名の弟達と違って普通です。普通だからこそ家族を持ったり、仕事に励んだり、家族の為に領土の幅を広げてゆきます。ただし、普通故に彼は無謀なる挑戦をして最後はああゆう風になりました。
 ですが、彼の物語は終わっても本来の物語はまだ終わりません。星央の後を継ぐのは直ぐ下の弟八弥です。こちらは星央と違い、素行に問題の有り過ぎる男です。彼が星央の意志をどう継いでゆくのかが第三十九話で描けたらいいかと考え中! ってどこまで自分は無計画なんだろう? まあ教えちゃくれんわな。
 とにかく今話では一番下の弟七の日記と同時並行で進む形にしました。よって七の位置は今のところ深く関わらないようにしてます。彼を関わらせるのは三十九話になってもしないつもりでいます、多分(焦)。
 とまあこんな感じですが今話も前話と同じくオカルトチックな話をしてしまって申しわけありません。正直あれは勢いを出し過ぎた為にあんな描写になりました。なので今後あんな意味不明な描写があったら目障りと思ったなら下に素早くスクロールするか、もしくは……記さなくても良いね、それ(汗)。
 と勢い余って第三十八話の解説を終えたいと思います。

 いやあ時事ネタの元ネタを言うとケンガンアシュラの先輩に当たる格闘ギャグ漫画になってしまった『グラップラー刃牙』の最大トーナメント篇ですよ。あの入場の実況は漫画誌に残る名場面で今でもネット上ではコピペの参考にされてますね。まあ自分はいざ真似ようとすればどうしても自分の主張が前に出すぎる嫌いがあるんだから成長が期待出来ないよ(笑)。
 とまあそんな感じで予定をどうぞ。

 十月
 二十一日~二十六日   第三十九話 三兄弟物語 無限逃走の責務   作成日間
 二十八日~十一月二日 第四十話  三兄弟物語 八は輝き、七は動く  作成日間
 十一月
 四日~九日        第四十一話 三兄弟物語 七と奈々        作成日間
 十一日~十六日     第四十二話 三兄弟物語 三つ星は今      作成日間

 第三十九話から八弥が主人公をします。題名でもわかる通り彼は逃げてゆきます。ただし、逃げ方は一般見解で考えないで下さい。
 それじゃあここまで! 次回は都合により金曜に更新するよ!

一兆年の夜 第三十八話 三兄弟物語 星々が輝く世で(終)

 午後六時十八分三十八秒。
 場所はアリスティッポス大陸エウへメロス地方。
 突然の襲撃もあり、予定より八分の三まで数を減らした進行部隊は神々の意志が宿す仕掛けだらけの建物に到着した。
「兄貴、ここの建物は確か真鍋べア彦の遠征記録では中継として使ってたって記されてたな?」
「ああ、何しろここは鬼ヶ島の地下にある神々が宿す仕掛けだらけの船と同じように自分達の想像を超える!」
「けれども使い方もわかんねえ上にましてや使えるのか? イタラスの作った飾り物斬り包丁みたいにあるだけじゃねえのか?」
 そうかもしれない--星央はとある一室の奥にある鍵盤を触りながら只の飾りである事を確認。
 ここにいましたか--兄弟二名に割り込むように齢三十にして九の月と八日目になるアリスト人族の中年レインズ・キングレイが部屋に入る。
「レインズか。用件は何だ?」
「大変なんだ。また銀河連合が襲撃したぞ、しかも白熊型を連れて!」
「「何!」」
「この建物の裏口からあいつは侵入した! 現在我等は最高官の命令に従って強すぎる相手とは戦わないように有利な条件になるまで退いてますが、それにも限度があります!
 どうかお願いします!」
 二兄弟はすぐさま白熊型が居ると思われる場所に案内するようにレインズに頼んだ!
「代えの包丁は斬れやすそうか、兄貴!」
「『わに兵衛』に比べると重く感じる!」
「そうか。けれども必要になったら俺の『六影』を貸しても良いぞ!」
 持ち廃れさせる気か--すんなりと断った星央。
(白熊型だけ? もしや--)
「どうしたんだ兄貴?」
「八弥、白熊型の所に着く前に自分の頼みを聞いてくれるか?」

 午後六時五十八分五十七秒。
 食料庫と思われる部屋。かつてアリスティッポスを遠征した者達はこの部屋を寝床にした。理由は食糧を置く為に使われる棚がちょうど軍者達の体型にほぼ合ってるからであった。ただし、小さい種族達は除くものとする。
 そんな場所で毛利ベアレルは二度も部下全員の死を見る事になった!
「はあハア、オイラだって熊なんダアぞ!」
 相手は白熊型。物斬り包丁、望遠刀、蘇我鋭棒、徒手空拳を得意とした軍者が次々と白熊型の前に骨となった。残ったベアレルは左肩を脱臼し、右後ろ足は踵より少し上の部分を骨折し、後ろ両足で立つ事もままならない。おまけに持参した二本の雄略差し包丁は折れ曲がり、使い物にならない!
 その為ベアレルは四足歩行の体勢から動かせる足のみで白熊型の後ろ足を掴んで仰向けに倒そう飛ぶ!
 が、信じられない事に白熊型はまるで人型や鬼型のように後ろ右足でベアレルの顎を蹴り飛ばした--成人体型一とコンマ四もあるベアレルを一回転させる程の脚力で!
 うつ伏せに倒れたベアレルは気を失う。その隙に白熊型はこの部屋に残った最後の軍者に足をかけようとしたが--
「ベアレルから離れろ白熊型!」
 成人体型一とコンマ二以上あり、脇まで伸びる長い青髪を美しく乱れながら部屋の外まで聞こえる叫び声を出しながら白熊型を振り向かせた天同八弥が部屋の中へと入った!
 白熊型は本来無視しようとする素振りを見せているらしかったが、八弥をよく見て無視出来る相手ではない事を感じる素振りだった。
「ベアレルを弄ばないのか……つまりそれだけ強い相手である事を理解してるんだな、お前は!」
 同時に--こいつはまともに斬らしてくれない--と直感!
 それでも全生命の為に、美弥の念無きを晴らす為に八弥は突きの構えを保ちながら白熊型に飛び込む!
 白熊型は八弥が間合いに近付くとすぐに身体を動かす--右に動かしながら首根っこに噛みつくという返し技で死なせる為に!
 首ならくれてやる--八弥は包丁を左に寝かす!
 勝負は一瞬で決まった--二つの中心で赤黒い血が天井まで届かんと飛び散る!

 午後七時五十二分二秒。
 表門前には無数の死体があった--生命と銀河連合が混じり合うように!
 星央とレインズはその場で強者と出会う!
「援護しましょうか? その方が少しは--」
「付け焼き刃にもならない。ましてや相手が指揮官型となれば尚更だ!」
 星央は今まで二度も指揮官型と戦い、辛勝してきた。
 一つ目は八弥の初陣の時でその戦いでは眉間に十字傷を受けながら十名掛かりで倒した。
 もう一つは四の年より前の東海洋藤原で羽根付きとの戦い。この戦いでは八弥こそ参加しないものの十名以上かかっても相手に成らず、もう少しで自分自身が死にそうな所を駆けつけたツクモノカミの協力もあってこれを倒した。
 だが、今度の指揮官型は一目見て今までとは大きく異なると直感!
(何よりもこの凍えるような環境であるアリスティッポスに住む以上は一体どうゆう戦い方をするかわかったものではない!
 とにかく八弥を離して良かったのかも知れない。あいつを加えても勝てる気がしない!)
 それでも星央は歩を進める--レインズには無言で退却するように指示しながら!
(レインズは生存者を捜しに向かったのか? いずれにしろ無意味に死者を出すくらいなら自分が足を止めてやらないといけない! 勝てる勝てないなんて問題ではない! 自分はこうして自らの人生を記してきたんだからなあ!)
 星央は指揮官型に無謀な挑戦を開始!
(まずは……思考する間もないくらい速いのか!
 それでも……隠し腕なんてどうだっていうんだ! 大事な……ドウワット!
 首を持って行かれるとこ……グウウ! たかが左腕一本くらい食え……何、当たらないだと!
 肘から先が骨になってまで狙った攻撃が……ガア! 今度は左肩の肉を裂かれるなんぞ!
 血は……虚仮威しなんぞ受け取る! 自分は貴様に勝つつもりはない! 勝つつも……リリイイイイイ!
 息ぐる、しい! 右の肺を、やられ……今度は、胃に穴が空いて、グウウ!
 全ての、攻撃は、寒さ、も。肉体、から出る、血も。じぶ、んは、たた、戦うしか……目があああ!
 く、暗い、か。真っ暗な、はず、じゃ? こ、れが盲目なる者の世界……左耳の感触がおかしい?
 どう、やら左耳朶は斬られる事で、すん、だか? だが不思議な感じ、だな! 死を感じるというのに……ここに、そこに、あっちに! 感じてくる! 指揮官型の攻撃が解るような感じは変かも知れん!
 けれどももうすぐ指揮官型に攻撃を当てられるかも知れ……ググウウウ!
 咽を掻き切られたような? 声も出ない? 声……アガアアアア!
 今度は五カ所、以上、も突き刺さる痛み? もはや痛みすら自分に……寒い。
 血を出しすぎて寒くな、る、かな? 左腕……は肘より先、は骨だら、け。右手の感覚は、もう、な。死を感じるのは良い気分じゃないと思っていたのに、お、も、ぉ、ぇ……あれ?
 声がすぅ? や、ぁ、う、ぅ、ぃ? ぁ、ぁ……)

 男は起き上がる。
『ここはどこ? 自分はなんだ? 何の為にここにいる?』
 男は全身が光の玉で構成された存在。記憶もなければ肉体もない。ましてや重さだって存在しない。只はっきりする事は自分は魂だけの存在であり、自分は僅かな時間を懸命に生き、僅かな大地を開拓してゆき、僅かな数の部下を持ち、僅かな力と知恵で支え合い、僅かな魂を脅かす僅かな者達を倒し、僅かしかない存在に、僅かな理由で死を迎えた。長く生きたつもりでも結局は僅かしか進歩しない。それだけの魂である事を理解しては忘れてゆく……。
『帰りたい理由があったはずだが、忘れてしまうとは。そうか。魂だけでは記憶は保存出来ないのか。あれ? 何を考えた?
 まあいいか。死んでしまった以上はもう自分が生者の居る世界に戻る訳にも? 何だろう? 叫び声が届く? 誰の叫び? 女の叫び? 赤ん坊の叫び? 子供達の叫び? 他にも少年と青年の叫びもあったかな?
 何を考えていたっけ? もう思い出せない以上は悠久を彷徨うしかないよな?』
 男は想念の海を漂い、やがて同化して個性の全てを預ける事になった……。









『アリスティッポス大陸進行作戦は大方の予想通りの結果となった。だから何。止
めとけば良かったのか。あいつらはみんなして星央兄さんへの責任を。
 第一そんなに悲しいのか。そんなに悔しいのか。そんなに辛いのか。苦しいのか。
僕にはその答えを出せない。美智琉さんにどうやっても答える事が出来ない。僕の
限界だよ。
 僕は遺された者達を慰める資格はなかった。特に八弥兄さんと輝星の心は修復
なんて出来る訳がない。あれだけ仲が良くなかった八弥兄さんも余計に酒への依存
を強め、輝星は余計に口の聞かない子供となってゆく。そして国自身もここへ来て
大きく揺れ始める。
 僕には感じるんだ。僕達兄弟は国その者に個性を与えようとしているんだと感じ
るんだ。星々が数億もの個性を見出すように僕達三名の舵取りもまた三つの個性
を出してゆくように。星央兄さんはいろいろと働きすぎたんだよ。でないと僕は関係
ないで済まされなくなってきてるよ。
 <何を訳の辿れない事なんか言ってる>って。いつもの事だよ。僕はこうして変わら
ない暮らしをしてるんだけどね。けど、八弥兄さんが政治に口出し始めたらもう関係
なくない。八弥兄さんはいつも通り仕事を放り出すんだよ。
 長くなりすぎたので今回の日記はここまで。いや違うか。この場合は星央兄さんの
話はここまでって事なのかな。もういいや。次からは八弥兄さんの話に移るよ。
 星々を輝かせる世から無限に広がる逃げ道ヘの答えが待ってるみたいに。
                    もうすぐICは数字が変わるかも知れない時期かな』


 ICイマジナリーセンチュリー百年十二月百八日午前八時十分八秒。

 第三十八話 三兄弟物語 星々が輝く世で 完

 第三十九話 三兄弟物語 無限逃走の責務 に続く……

一兆年の夜 第三十八話 三兄弟物語 星々が輝く世で(八)

 三月六十八日午前五時二分四秒。
 場所は国家神武首都ボルティーニ中央地区天同星央の館正門前。
「今回は僕の参加はないんだね」
「万が一の事があれば美智琉、それに星季、輝星、美世の身を守れない。だから七が自分の代わりに死守しろ!」
 『死んでも守れ』って--七は右こめかみ辺りから汗を流す。
「心配無用よ七様! 家族を死守する七様を死守する二名の頼れる部下が居るんだから安心しなさい!」
「わし端死なん! 逆似全て死体似する!」
 はは、おっかない--さっきとは逆方向辺りから汗を出す七。
「あなた、無事に帰られるの?」
「ん? 心配か、そうだな。五体満足とはいかないまでも必ずここに帰る!
 だな、八弥!」
 やつみくんはいないけど--星季はさっきまで星央の後ろにいた八弥の方向に左中指で示す。
「黙って先に向かうとは。まあいい!」
「と、とにかく輝星の事とかは僕が頑張って癒すから心配無用だよ、星央兄さん!」
 期待してるぞ--星央は口も利けない程の傷を抱える輝星の頭を撫でる。
「あなた、絶対に帰ってきてね!」
 ああ、必ずな--星央は美世の右頬を右人差し指で触れた後、美智琉の唇に自分の唇をおよそ一の分かけて触れた。
 そして旅立つ--新天地に想いを馳せて!

 三月七十七日午後十一時七分五十九秒。
 場所は北蘇我大陸石川麻呂地方防波堤跡。現在は真鍋傭兵団専用の村が建設予定。
 責命者は齢四十九にして三の月と五日目になるいつ引退しても不思議ではない応神鰐族の老兵ヤマビコノアリゲルダ。天同星央は老年アリゲルダと酒を飲み交わす。
「ハハハがん! 酒飲んで次の日に船で向かおうなんてどこまで忙しい雄っざ!」
「フフ、そうゆうアリゲルダ殿もこんな年齢になってまで現役を続けるなんて相当な冒険家ですね!」
「臆病なだけがん! わしは筋肉鍛錬と同様に生涯仕事を続けるのだがん! それはそれは大変苦しくて楽しいものっざん!」
「要点は異なりますが自分と共通しますね! ハハ、ハ!
 自分もまた臆病故に仕事や自己練習に身を削っておる次第、らよ!」
「おうおうっざ。そこまで呂律が回らなくなるまで酒飲んでいいが、がん?」
 あらたの方おそ--星央はそれでも酒に咽を通しながらアリゲルダに肩車する!
 暴れてもいらっだ--対するアリゲルダも同様に肩車しながら眠りに就くまで腰を砕けた騒ぎをした!
(一応念の為だが、自分がここへ来たのは船で行くと大地以上に条件が厳しい海では様々な要素が重なってアリスティッポスに到着する前に予定の半分近い兵力になる恐れがある。それを防ぐ為にはるばる大陸から大陸、島から島への経由でこの防波堤跡まで足を運んだ! それだけじゃない。
 もう一つあるとすれば、各地を見て回る事で各地の通信員に調査報告書を中央官邸で自分の代わりに政務を執る官房長官ログホラーニに送るんだ。そうすれば今後の政務に支障がきたさなくて済む!
 そして、この防波堤跡。現在は真鍋傭兵団が新たな訓練施設建設の為に村へと変わろうとしている。その為の助言をアリゲルダ殿におよそ二の時より前に伝えたばかりだ! 跡は自分の助言がどれほど組み込まれているかを随時報告するだけ。
 さて……美智琉は今も三名の子供を寝かしつけてるのかな?)

 七十九日午後零時十分八秒。
 場所はアリスティッポス大陸南エウへメロス地方廃ヘメロ港。
 息も凍り付く気温。この地を訪れない者にとっては命に関わる程の荒れた天候。
 すでにこの近くまでに体調を砕いた軍者は六分の一に上る。
「ただでさえ、さ、あさ、さ--」
 酒で体温を暖め続けた八弥でさえ極冠の大地は身体に堪えた!
「あまり無理して喋るな。はあはあ、真鍋べア彦の遠征記録を基に進まなければなら、ない。ふうふう……この天候では却って危険だ! ふっっふうふっっふう、もう少しましになるまでは遠征隊が作ってくれた鎌倉で暖をするぞ」
 大声で指令を下せない星央--それに代わって伝達者が各班に指令を送ってゆく。
「あに、き。酒は、どれくらい、飲めば、良い?」
「ふうふう、酔わない程度に飲め! はふうはふう……酔えば銀河連合との戦闘に影響する!」
 ひ、とこ、と、よけい--寒さに堪えながらも返し言葉を吐く八弥。
(この地に留まれるのは先程の二日分を引くと後二の週。いくら進んでも撤退すればすぐに元通りだ!
 さ、寒い! ここまで冷えるとは思わなかった! 想像はこれ以上現実と一致してくれはしない! なればこそ自分は真鍋べア彦が遺した遠征記録を参考に進んでゆくしかない!
 こ、これは勝ち負けの問題ではない! 自分達が進まない限り銀河連合との長き戦いに終止符を打てない! 山を破るには小石で三井から少しずつ削る以外に道は無いのと同様なんだ!)

 午後一時五十七分四十二秒。
 熊族だけの班。班長は齢二十五にして四の月と二日目になるプロティ熊族の毛利ベアレル。班員は最大五名。班長含め全員が新米だった。そんな彼等がどうしてアリスティッポス進行作戦に参加出来たか?
 それは--
「--オイラを含メエテ全員熊だ! 白熊が住めるんダア! オイラ達が住めナアイ道理があるか!」
 ベアレルは班員を鼓舞した!
「んン? 何ダアろう?
 ネエ班長!」
「どうしたマウグスタヨオ。何か……アアレは?」
 誰が見てもわかる銀河連合--人鳥型--が南東より滑走して接近中!
「人鳥族に似タア銀河連合! たかが一体如きで俺達を--」
「腰砕ケエを言うな! 銀河連合は『正々堂々』と言う四字熟語を知らないんダアゾ!」
 だっタラら僕は--班の一名は油を断ってアリスティッポスの氷を踏みしめる事になった!
「足下に気を……え?」
 前に出た班員はそのまま食われてしまった--氷を突き破って出現したアザラシ型によって!
「二体……いやもっといるかも知れナアイ! お前ら全員星央様らの居る所マアデ撤退するぞオオ!」
 命令を出すのがもっと早ければもう一名が死ぬ事もなかったのだろうか--人鳥型によって攻撃する暇も与えずに班員がまた一名骨になった!
「ヘクッショオ! この寒さなんて克服してヤアルんだああ!」

 午後二時五分九秒。
「だあ! これで二体目……残り一回となった!」
 星央は齢四十八にして十の月と二十六日目になるルケラオス虎族にして副司令官を務める老兵タイガーフェスティ・佐々木と背中合わせになりながら襲い来る銀河連合十体中四体を倒したばかりであった。
「わしがもう少し若ければペンギン野郎に手こずる事もなかろうにイイス!」
「年は関係な、にスックショ! はあはあはあはあ、この程度の動きで、つつかれちゃあうとは!」
 二名とも鼻水がつらら状に凍る。呼吸をしやすいようにつららを落としてゆくが次から次へと外に出るつららと残り六体の銀河連合相手に苦戦を強いられる!
「でえいイイス! 頸動脈を斬って持ちが勢いよく出な……ガアアア!」
 タイフェス翁ああ--叫んだ相手は氷を突き破って現われた銀河連合アザラシ型によって左前足を骨ごと喰われた!
 左前足を喰われた反動で蹌踉けるタイフェスの隙を突いて今度は右後ろ足を喰らおうと人鳥型が氷を滑走して大きく口を開くが--
「自分を無視して老兵に襲いかかるな!」
 星央は『わに兵衛』で口を開かせたまま両断した--物部わに兵衛から貰い受けた物切り包丁をまた一つ使えなくした。
(後五体! もうタイフェス翁に残された時間は少ない! それでも自分は錆びた愛刃で銀河連合を慎重に斬ってみせる!)
 星央は思った通りに錆びた『わに兵衛』で銀河連合の頭部や中心点を打撃してゆく!
 しかし、倒せたのは僅か一体。後は刃が折れ、星央の肉体に数十カ所もの掠り傷が形成されてゆくだけだった!
「はあはアアス、わしは、も、う--」
 タイフェスの体力は限界を迎えようとしていた! 自分自身がわかる老兵だけでなく星央もまたタイガーフェスティ・佐々木は仮に凄い医者に治療されても助かる事は有り得ないと断定した!
「最後に大きな花火……は控えて下さい! 残り四体は自分が片付けます!」
 そうは、いか、ウウス--タイフェスは三本足で立ち上がった!
「助けられますか?」
「こと、わる、ウウ、ス。これ、がやり、たか、た……」
 タイフェスの心臓は永遠に止まった……
 意地を見届けた星央は十の秒両眼を閉じた--隙と見た残り四体の銀河連合は一斉に星央に襲いかかる!
「星央様をやらセエルか!」
 毛利班只一名の生き残りになったベアレルは星央を死守すべく二本の雄略差し包丁で攻防を分けた使用法で銀河連合の一体を倒す!
「援護するぞ、兄貴!」
 ベアレルよりも遅れて駆けつけた八弥は『六影』で二の秒もの間に綺麗な包丁捌きで二体とも正中線に沿って両断した--勿論刃毀れを起こさない程の華麗さで!
 残り一体は全速力で星央を突き飛ばそうと突進!
「間に合わナアイ--」
「もっと早ければ--」
 間合いに半分まで入った瞬間十秒経った--星央の両眼は力強い楕円を描くように開き、前のめりする!
 両足を力強く踏みしめて両の手は寂れて折れた包丁を突き出すように構えながら銀河連合の死がある部分に倒す!
 星央自身は全身に力を入れる事で衝撃の大半を下に流した--氷は大きくひび割れ、今にも星央を落とすかわからない状態であった!
 一方の銀河連合は突き刺さる事はなかったものの自身の突進による衝撃と星央による突きの衝撃を心がある部分に受けて口の内から赤い嘔吐物を外に出してそのまま息を引き取る!
 血を浴びながらも五体無事に生き残った星央はタイフェスの死体を見届けた--老兵がいる場所の氷は割れ、彼を埋葬するように沈めてゆく……。
(さよなら、タイガーフェスティ・佐々木。自分は一生あなたの事を忘れない……)
 タイフェスが眠る氷の大地だけでなく、星央が立つ大地も割れた--間一髪のところで八弥が拾い上げたお陰で一命を長引かせた……。

一兆年の夜 第三十八話 三兄弟物語 星々が輝く世で(七)

『何だか知らないけど母に勧められて僕は星央兄さんの家に住み込むようになっ
た。理由は銀河連合の襲来で美弥さんが死に、死を二度も目撃して心に傷を受け
た甥っ子の輝星、それに美智琉姉さんの心を癒す為だけじゃないみたいだよ。何で
も先輩仙者として心に傷を受けた輝星、それに今は赤ん坊同然の姪っ子美世を指
導させる事も目的みたい。
 正直僕は二名に教える事といっても遊びとか絵本を読ませる以外にあるかな。羽
子板遊びだって星央兄さんならわかる遊びだし、札遊びは仙者抜き以外は得意じゃ
ないからね。後は、思いつかない。とにかく寝転んだり、高い高いするくらいだね。
 住み込んだのは何も僕だけじゃなくツクモノカミも同様だった。稽古は辛いよ。でも
今までみたいに脱走が難しくなって困ってるよ。
                 星季に日記作成を阻まれながらも頑張る齢十七の僕だ』

 十二月六十六日午後九時二分一秒。
 場所は国家神武首都ボルティーニ中央地区中央官邸最高政務官室。
 館襲撃事件からおよそ一の月が経った。銀河連合の侵入経路ははっきりしており、大胆にも流れ星に紛れて侵入したとの調査結果が示された--調査結果自体は事件から一の週より後に中央官邸へ直接届いた。
 彼は事件に大変な衝撃を受ける事となった。
(こうして仕事を増やす事にしたのも心の傷を覆う為だ! 特に八弥なんかは雌だけじゃなくなった。とうとう酒にまで手を出して余計に迷惑をかけるようになった! どこまでも心だけは強くならない雄だ! けれども自分が八弥をどうこう言う資格があるというのか!
 現に自分はたった一名の息子である輝星の傷を埋める役目を七に押しつけた! 道徳的な理由という名目で! こんなのは八つ当たりだ! これで一体どこに家族を守れるというのだ!
 今日もヤケ仕事だな! えっと……そう言えばこの書類は?)
 星央の目に留まった書類--海洋藤原探索部による調査報告書--には驚くべき内容が記されていた!
『東藤原海洋を入念に探索した結果、珊瑚で埋め尽くされた島を発見。
 シャーキングら六名はすぐさま島を調査した。結果はそこには生命が生活した跡
を発見。肝心の生命は発見出来なかったが、墓と思わしき珊瑚の墓標を次々と発
見。ただ、掘り返すと神様に叱られる為、墓標に関する調査はここで終了。
 珊瑚島に関して判明した事実はこの島に住んでいた住者は我々生命と同等かも
しかするとそれ以上かも知れない知能を持つ。何しろ薄れているとはいえアマテラ
ス文字と思わしき文字を一体どこで覚えたのか。
 ひょっとするとここに海洋藤原一族が子供達に希望を託しながら遺書を記したの
かも知れない。今は憶測だけが一人泳ぎ中。後日調査報告書を提出する予定』
(はっきりしない。けれどもこれだけは明らかだ! 藤原マス太の血筋は絶えていないと! 彼等は新天地に旅立ったのかも知れない……絶対そうに違いない!
 ……恥ずかしいな。だけど自分の心に少しでも明かりは点いたかも知れないかな?)
 星央はまだまだ子供心を理解する探検精神がある事を知り、あの事件を払拭する方法を閃き出す!
 だがそれは同時に--
(難攻不落の大地に降り立つんだ! あっちが攻めてきたんならこちらも攻めないでどうする……とはいえ勝算が少なすぎる!
 気合いでは押し通せないのは目に見える……違う! 訴えないといけない! ここで自分があの地に降り立たないとこの先もあの地に立つ者は永遠に現われなくなる! そんなのは逃げと全く同じだ!
 だから、だから自分はあの地に立つ! 勝てるとか勝てないとかそんな理由じゃない! ここで立たなければ--)
 舞台は六十七日午後二時十八分二秒経った重要会議室内へと移る。
「--全生命は何年経っても銀河連合と分かり合えないのかもしれないんだぞ!」
 星央は約三の時かけてアリスティッポス進撃作戦の重要性を訴えた! 席に座る者の中には朝から酒を持ち込んでは飲んだくれて潰れそうになる八弥が居た。
「へへ、いいらえうか! こんおはかならうみいあのかたいをふっとあゆー!」
「退席しても構わないね! こんなに酔い潰れたらまともに評決出来ないね」
 齢四十にして六の月と八日目になるアリスト鴨族の老年にして社会保障長官白石カブ也は八弥を心配する。
「ほっとくのが優しさだ、白石殿。戦いになれば少しは心の傷を癒せるかもしれん。それにいざとなれば自分が八弥の盾となる!」
 は--八弥は酔いが回っても星央が宣言した意味をどこかで気付く!
「どうした? 少し酔いを覚ましてしまったか?」
 何でもない--星央に気付かれないように顔を背けた!

『僕はこの場には居ない。けれどもミス、いや美雌のお姉さんから聞いた内容を基
に僕なりの解釈をしたが、どう修正しても八弥兄さんが星央兄さんの意味深な言葉
を真面目に受け取る以外に解釈しようがないんだよ。
 いや、僕は気付いたんだよ。こんな事は気付いてはいけないのにどうして神々は
僕達兄弟にそんな運命を背負わせるんだ。ボク達はこの先もこれからも三名四脚
で進んできたんじゃなかったのか。
                            日記で八つ当たりするのは僕天同七』

一兆年の夜 第三十八話 三兄弟物語 星々が輝く世で(六)

『星央兄さんの家族は増える一方だね。今年でもう第三子目だよ。名前はえっと
確か、忘れた。
 多分名付けるのは後だろうね。それからこの子は僕の二番目の姪っ子なんだね。
姪っ子が二名も出来るなんて僕もすっかり姪っ子命になりそう。何書いてるんだか。
 それにしても八弥兄さんはいつになったら美弥さんと結婚するんだろう。いつまで
雌の尻を追っかけるんだろう。僕は八弥兄さんが心配で堪らないよ。堪らなすぎて
稽古から脱走してしまったよ。
          と言う事で僕は現在十七の年になる。一体どこへ向かうんだろうか』

 十二月三十日午後十時六分九秒。
 場所は国家神武首都ボルティーニ中央地区神武聖堂六影の間。
「--そうですのね、星央。あなたは二名も仙者を抱える事になろうとは」
 齢四十九にして十の月と六日目になる現神武人族の老婆の名前は天同奈々。叶家で二名目となる仙者であり、星央、八弥、七の母である。後ろに括った腰まで伸びる茶色い髪と三十代半ばにしか見えない素顔。何よりも他者を圧倒する仙者独特の神々しさ。奈々を仙者たらしめるのに十分であった。
「美世もまた輝星に勝るとも劣らない仙者。まさか二名の夫婦から二名以上の仙者が生まれるなんて予想外でした」
 齢三十一にして二の月と八日目になる神武人族の中年天同星央は正座しながら面と向かって話し合う。
「三名目の孫なのにまさか二名も仙者が産まれてくるなんて歴史上初めての出来事ね。六影がもしも生きていたならどう思っていただろうね?」
 奈々は六影の肖像画に目を移す。六影の肖像画を描いたのは奈々。老婆は昔から絵を描くのが好きな女。許嫁とは言え、老婆の夫六影はそれでも彼女を愛する。奈々が描く神々しい絵と共に。結婚した後も六映画死んだ後もなお奈々は絵を描き続ける。
「ところで母上。いつになったら国民の前で絵を公開するのですか? 母上の描いた絵は誰が見ても素晴らしい物なのに」
「絵は売り物じゃないわ。私は商売が好きじゃないの。特にこんな地位にいる者が民からマンドロンの札を取り上げるなんて事が許されますか!」
 奈々が絵を描くのはあくまで趣味--他者に売る為に描かないのを誇りとする。
「この齢になってもそれじゃあ説得は意味ないか。
 では話題を変えましょう。いつになったら許可出来るのですか?」
 何の話なの--奈々は左中指で下唇を触りながら惚ける。
「七の件です。自分がもしも死んだ場合は最高政務官には八弥。そして象徴は七でなければ国家神武の団結は脆い物となるでしょう!」
 七は絶対に象徴にさせないわ--奈々は頑なに意志を曲げない。
「どうしてです! 確かに七は武の才能はありませんし、皆を導くだけの何かを持ち合わせてもいません!
 けれども七は母上と同じ仙者なのですよ! 仙者である以上は秘境神武からの掟に従わなければ意味がないではないでしょうか!」
「掟は叶家に仙者が誕生した頃から破れ始めたのよ。第一に七は優しすぎるのよ。あなたや八弥と異なり、あの子は優しすぎる子なの。象徴たる者はそうゆう者であってはいけないのよ。特に優しすぎる者には」
 優しすぎる--星央は優しさこそ全生命の力の源である事は凡庸な己自身であってもわかる理屈だった。
 けれども奈々の言いたい七の優しさは星央が思っている優しさとは何かが異なった。それが奈々の七を象徴にさせない理由だと推測。
「……話を少し変えましょう。仮に七を象徴にしないのなら自分の二名の子を象徴にする事を許可するのですか?」
 それなら構わないわ--迷わずに解答。
「そんなあっさりと! ただし、二名を象徴にする事を許可するのなら必ず第一子星季が困るな。何しろ己にはない呼吸が出来る以上は見えない所で羨みます。自分が二名の弟を羨むようにね」
 そうかもね--奈々は右薬指の爪表面で上唇を触りながら納得する。
「一般の生命と仙者の生命は寿命に違いがあれば能力も必ず違いが出ます。そうなるとどちらか一方は必ずそれに苦しみます。ですから自分の子供達を上に据える場合は同時にやらねば心の平穏に繋がりません!
 なので--」
 話を遮るように奈々の左方にある障子一枚を破って、そこから齢二十八にして十一の月と二十五日目になる神武人族の青年八弥が現われる!
「お袋に兄貴! 何こんな所で油売りの真似事をしている!」
「小誌を破るんじゃないぞ八弥!」
「それは後で謝る……ってそんなんじゃねえ!
 さっさと兄貴は美智琉の所に戻れよ!」
(美智琉……? 一体何が--)
「状況が解りかねますわ。八弥、どうゆう事か説明して--」
「説明できるほど頭は良くないんだよ!
 ただ言える事は……」
「……まさか銀河連合が侵入したというのか!」
 その通りだ--八弥は脇まで伸す黒髪を右指でいじる。
「だ、大丈夫なの? 館には強い者が居るのかね?」
「今のところ色葉七不思議が戦っているが……相手は百獣型なんだよ!」
「百獣型だと! それじゃあ急がないと!」
「行くのですね、星央!」
「行くぞ八弥!」
「行くぞ……ってどうして俺も一緒だ?」
「美弥君を置いてどうするんだ八弥!」
 どうして美弥が--言われるがままに八弥は星央と共に中央地区にある天同星央の館に直行する!
「行ってしまうとは。けれども良かったのでしょうか、六影。八弥に待っている運命を告げなかった事を。
 いえ運命を無理にねじ曲げるのは運命をより厳かにする行為よ」
 奈々は既に一兆年の神々からの意志を受け取ったばかりであった……。

 午後十時三十二分八秒。
 場所は天同星央の館。裏門前。
 一階で齢十九にして二の月と一日目になるクレイトス人族の少年色葉七不思議は雄略包丁『風上』で侵入経路の不明な銀河連合百獣型と鍔迫り合いを演じる!
「検問制度が出来たのにどうして簡単に銀河連合が侵入出来る!
 くそ! こ、どわ! や……危ない!」
 戦況は七不思議が不利であった。その様子を二階の窓から眺めるのは齢二十八にして二十九日目になる現神武人族の天同美智琉--生後二の月と十五日目になったばかりの第三子美世を抱えながら!
 側には齢二十一にして九の月と二十六日目になる血の繋がった妹である叶美弥が居る。
「七不思議君に利がないわ。母親に成ったとはいえ戦いを知っている私にはよくわかるわ」
「姉さん。で、でもきっと来るわよ旦那様が! 八弥お兄は雌たらしだけど神武聖堂に無断で入ることができる数少ない生命だからきっともうすぐ--」
「美弥……さっきから輝星を見かけないんだけど。ちゃんと見てくれたの?」
 あ--美弥は美智琉の三名の子を確認する。
「みやちゃん? え、きせいちゃん? きせいちゃんならおりていったわよ」
 蹴鞠で遊ぶ齢五にして十一の月と二十九日目になる星季から輝星の行方を知った美弥は顔を青くした!
 それに反応するかのように美智琉も--
「あ、あ、あの子の命が危ない! き、い、せい、いはわ、わ、わ--」
「落ち着いて下さい姉さん……いえ奥様!
 輝星お坊ちゃまは……お坊ちゃまは必ず私が助けます!」
 一の分かけて美弥は美智琉を励ます。少し落ち着いた美智琉は美弥を頼りにする。
「必ず私が……命に代えても助けてみせるわ!」
「……お願いして御免、美弥」
 どうしたの--美智琉の顔を覗き込む美弥。
 当の美智琉は--平気よ--と作り笑顔で返した。
「行ってきます……美智琉姉さん」
 行ってらっしゃい美弥--それが姉妹による最後の会話になるとは誰が想像出来よう……!

 午後十時五十八分八秒。
「七不思議! 大丈夫か!」
 星央と八弥は色葉七不思議に近付くと脇腹の切り傷から血が流れているのを確認!
「百獣型にやられたのか! 急いで俺は--」
 八弥は見てはならないモノを見てしまった--映ったのは輝星を庇って胸に深々と雄略包丁に似た何かを受ける叶美弥の姿であった!
「あ、あ、やっと、ぉ、ぃ、ぇ、く……」
 ああああ--音に出ない叫び声を上げる八弥。
 百獣型は絶命寸前の美弥をまるで弄ぶかのように首を百八十度曲げて八弥の視界が映らないようにした!
「おのれはどこまで--」
 ユルサンゾオオオオギンガレンゴオオオオウ--星央が話し終えるよりも先に八弥は神武包丁『六影』を抜く!
 百獣型は美弥の死体を八弥に投げる!
 美弥--八弥が右腕で死体を抱えた瞬間を狙うように百獣型は中心部目掛けてモノを突き出す!
 アタルカアア--右足で柄のようなモノをしたから上に蹴り上げ、上げた右足で大地を強く蹴りつけると美弥を抱えたまま下から上に弧を描くように首を刎ねた!
 百獣型の首は美智琉と星季、美世の居る二階にまで飛んだ!
「あ、あ、あ、あ」
 三度も凄惨な場面を目撃した輝星の心に光のない洞窟が出来る--彼は死を恐れるようになった!
「御免、七不思議君に美弥君に輝星……自分はどこまでも父親に相応しくない雄だ!」
 星央と八弥が涙を流す頃には騒ぎを聞いた十名以上の都民が駆けつけた!
 幸い色葉七不思議の一名はとりとめたものの、明日明後日になっても関係者の心が落ち着く気配はなかった。
 特に妹分が死んだ八弥の心は言える気配は一向に見えない……!
(輝星の心に凝りを生んだのは自分だ! 自分はどこまで家族を蔑ろにすればいい? このまま仕事に没頭して心を落ち着かせる以外にないのか!)

一兆年の夜 第三十八話 三兄弟物語 星々が輝く世で(五)

『僕は助かったのか。それとも助けられたのか。どうして僕が出たらあいつらは逃げ
ていったのかがわからない。僕はそんな事を考えて二の年を迎えた。
 武は一向に上達しない。僕には武よりも本を読んでいる方がお似合いだ。
 そうだ。この際だから武の練習から逃げて本屋のある地区へ向かおう。
                         今年で十六に成る天同七が日記を記す。』

 九月二十八日午前二時十一分五十三秒。
 場所は西物部大陸プラトン地方国家神武首都ボルティーニ中央地区中央官邸。
 三階にある最高政務官室。部屋に入るとそこには歴代仙者及び最高官の肖像画が横並びに飾られる。
 肖像画よりやや下にある執務席に座るのは齢三十にして二の月と八日目になる神武人族にして国家神武象徴天同星央。
(あれから二の年が経つ。砂丘の戦いは結局解けない謎だ。何故七が来たら撤退したのか? 誰もが首を傾げる。
 様々な説が飛び交ってはいるがいちいち調べるのは面倒事。最高官は国の頂点らしく余計な事はあまり考えるものじゃない。自分はそうして進んできたのだからな)
 成人体型一とコンマ三に満たない巨漢でありながら更には獅子族のような剛胆な目つきと眉間に広がる十字傷が一層彼の威厳を強める。
(それにしても忙しい。もうすぐ美智琉は第三子を産もうって時に肝心の自分は政務に追われる毎日。とことん父親の資格がないぞ。これじゃあ星季のみならず輝星にも申しわけがつくまい! こんな所まで亡き父上に似てきたかもしれない。
 きっと十代半ばだった自分のように父に反抗するかも知れないぞ。こんな毎日を送り続けたら)
 後ろ向きな事を考えながらも今日中に全ての書類に目を通す勢いだ!
(どうやら雄略大陸では材料生産が軌道に乗り出そうとしているな。様々な発明家がここで生まれてきてるな。それだけじゃなく新たな理論である地動説が天動説に取って代わろうとしているのか。ここはさっぱり解らないな。やはりこうゆうのは専門家に任せるしかないな)
 右手が墨に染み込まれてもなおも許可及び却下の理由を書き記す星央。
 政務で忙しい星央を困らせるように齢二十八にして四の月と六日目になる武内人族の女性が耳に響く音で扉を開ける!
「静かにしろ! ここは一応--」
「大変です星央様! 七様がツクモノカミの稽古から逃亡してどこかへ眩ました模様です!」
 またか--両手に付けて立ち上がる星央!
「どこに行きましたの、七様は?」
「そんなの決まってる! 大きな本屋のある弐高市第二西地区だ!
 あいつは本を読むのが大好きだからな! まずはそこに行け!
 見つからないのであれば次に大きい本屋のある狭間町第三南地区に足を踏み出せ! いいな?」
 了解--名も無き医療班の女性は星央に言われた市町村へと足を踏み出す!
 七の脱走癖に困りながらも椅子に座って政務を続行する星央。
(七も大分八弥に似てきたな。者様に迷惑をかける部分といい。いや十代半ばなら当然の行為なのかもしれん。
 只、自分の場合は稽古から脱走した記憶がない以上、二名の気持ちがわからない。ずっと普通にこなしてきたからな。反抗的な時代もあったが、それでも包丁の稽古を怠らなかった次第だよ)
 星央は自分自身が思っている程に特別さを持たない事を改めて知る。彼の生涯は全てが働く事以外の楽しみが少なく、面白味に欠ける部分が強い。
(だからこそ余計に八弥と七が羨ましいと言える。あいつらには自分にはない--)
 またしても困らせるように齢十九にして三日目になるアリスト鴨族の白石カブ家が羽音を出しながら扉を開けて入ってゆく!
「三回叩いてから入れカブ家よ!」
「申し訳ないね。実はまたしても八弥様が市町村にいる十代終盤から三十代中盤にかけた人族の雌にちょっかい出している模様ね!」
 あの腰砕けエエ--星央は部屋全体を揺らす程の叫び声を上げた!
「ヒイイイね! 落ち着いて下さいね、最高官殿ね!」
「ふむ。それで今どこにいるんだ、八弥は?」
「それがね、見失いましたね」
 すぐに連れてこい--カブ家を怒鳴り散らす星央!
 カブ家は恐怖のあまり大量の羽を落として部屋から出て行った!
 ふう--カブ家が部屋にいないのを確認すると星央は溜息をついた。
(八弥の件は後でみっちり叱らないと!
 『いつまで結婚しないつもりなんだ。早く--』とな。
 さて、と。政務を続けるか……おや?)
 星央はある書類を見て興味を抱く。
(『海洋藤原一族捜索部』? 海洋藤原一族はおよそ五十二の年より前に起きた海底火山噴火で絶えたはずじゃないのか?
 なのにこの本部を立ち上げようと国家神武に頼む武内鮫族のシャーキングらはどうして生き残りが居ると断言する? 至急セネカ秋刀魚族の明石サン太郎を中心とした調査団を派遣しないといけない。
 えっと……東武内海にシャーキングは居るんだな。よし--)
 星央は書類の空白に詳細を記してそれを一の時に報告すべくやって来た官房長官ログホラーに・メデリエーコフに渡す。
(後は結果を待つだけ。果たして海洋藤原一族の生き残りは本当にいるのか?
 その間自分は今日中に全ての書類を済ませないと……こんだけ済ましても後千枚。明日に持ち越せば終わるに終わらんな)
 結局星央は残り六百五十二枚を明日に持ち越し、明日する分を増やす羽目となった……。

一兆年の夜 第三十八話 三兄弟物語 星々が輝く世で(四)

『予定外だよ。何で僕が戦わなくちゃいけない。訳わからない。戦える者は他にも居
るのにどうして僕なんだ。僕はそれが満足出来なくて困っている。あーあ、戦いなん
て兄さん達だけでやればいいのに何で僕なんだろう。やるしかないのかな。何の役
にも立たないこの僕が。親友の七不思議も雌友達であるバレッタも今も戦ってるか
な。いやバレッタは画家だから戦いはあまりしないはず。多分しないはず。だって
彼女は学者一族バルケミンの者さ。あ、こんな恥ずかしい事何書いてるんだろうか
な、僕。あーあ戦場に来たらさっさと逃げようかな』

 三月六十三日午前五時六分七秒。
 場所は西物部大陸ニギハヤヒ地方櫛玉砂丘。総司令天同星央が居る陣。
 椅子の前で両眼を瞑り座禅を組む星央の前に齢二十にして十一の月と六日目になる雄略チーター族のチーチャル・斉藤が風を切る勢いで報告に入る!
「何だ、偵察員チーチャル?」
 七様が来ました--早口言葉で報告する!
「という事はツクモノカミも来ているんだな」
 それが、医療班の名無しと共にここへ来た模様--早口言葉で三名連れで来た事を伝える。
「済まない。もう一度説明してくれ。今度は解るように分解して」
 医療班含めて三名--早口言葉でまず一つ。
 ここへ来た模様--早口言葉で二つ目を伝える。
「有り難う。どうやら七も思春期真っ盛りのよう……済まない事をした、七よ」
 七は左に名無し、右にツクモノカミを連れて星央の前に立つ--先程まで前に構えていたチーチャルは素早く去った。
「星央兄さん。無事で何よりです。えっとこの度はおはよう御座い--」
「七様。お話牙出来ない乃出したら『出来ない』斗仰いましょう。
 ここはわしが代わりに話す」
 いや、この際だから--名無しに口を抑えられる七。
「七は他者と上手くお喋りが出来ない。だったらこの際ツクモノカミが代弁してくれ」
「了解した。わし端代弁出来る範囲出話せばいい。そうだな、『どうして七様自身を戦場に送る?』尾。
 答えて下さい総司令官」
 星央は椅子に腰掛けると何の仕種もせず自然に答え始める。
「戦いは現在も行われている。そして我々国家神武はアリスティッポスから来た銀河連合に押されているのだよ! 今は膠着状態で何とか持ち堪えてはいるものの、いずれこちらは全滅する。時間と共に!」
「時間斗共似。真鍋傭兵団尾使って模不利端変わらない斗端!」
「本当はもっと軍者を送りたい! 性能の良い包丁や望遠刀を使いたい!
 けれども時間はそう簡単に自分達を潤してはくれない! だったら自分達が決定した事は--」
「戦意高揚尾兼ねて七様尾出す乃科」
「そうゆう事だ。七は誰もが認める仙者。そして誰もが認める際に乏しい雄。
 普通の判断なら自分だって七を送らない。その意味を理解出来たか?」
 出来ないけど--七の口を抑えながら名無しは呟く。
「成る程。だから逃げ道を塞ぐ準備まで」
 え--塞ぎきれない部分から七の驚きが漏れる。
「『え』じゃないだろ! どうせお前はここから逃げるつもりでいたのだろう? だったらこちらからそれを塞げば死ぬ気になれるじゃないか」
 腰砕けにならないよ--名無しの手を振り解いて両手を広げながら星央に詰め寄る七!
「自分はいつだって本気だ! 『最初から背水の陣をやらない』という質問に答えてやる!
 お前のお陰だ、七!」
 それは言えてるんだよな--七以外全員はその場で何故か納得
「僕は戦うくらいなら--」
「それ以外思いつかないお前にこれ以上話し合いをしない。
 とにかく自分が命令する! これから自分も含めて全員銀河連合全てを倒すまで前進するぞ!
 いいな?」
「「「「「「おおう!」」」」」」
「僕は絶対戦わないぞ!」
 星央は齢二十九にして六日目になるアリスト犬族のピーター・プートから渡された神武包丁『わに兵衛』を左腰に掛けて陣へ出ようとしたが--
「大変でえ! 最高官天同星央様はいるでろう!」
 齢二十三にして二の月と二十二日目になるエピクロ隼族のハヤッタ・ハルトマンは頭上より斜め上まで近付く!
「ここにいる! どうしたハヤッタ! 血相変えてまでここに来るという事は何かあったのか!」
「実はレインズ・キングレイ経由で伝えなくてはならないことがあろう!」
 早く言え--催促する星央!
「美智琉様の陣痛が始まったんでえ!」
 何--両眼を可能な限り広げる星央!
「真実か?」
「あっしの言葉が信じられないのなら直接会って下せえ! 美智琉様は星央様が来ることを望んでませえ!」
(行くべきか? けれどもここを離れて万が一にも八弥と七を危険に晒せば--)
「聞いたぞ兄貴。さっさと美智琉の所に行けって!
 後は俺と七、それにツクモノカミが全て倒してみせるからさ!」
 そう言って星央の前に現われた八弥。
「八弥兄さん! ここに来て大丈夫なの!」
 お前が言える口か、七--右拳で頭を小突く八弥。
「全くこうゆう時に限って……いいだろう。
 ただし、必ず生きて帰れよ!」
 星央はそう告げるとハヤッタの両足に掴まる--重そうにしながらもハヤッタは首都ボルティーニへと羽を伸す!
「そう言えば背水の陣になってたね。で、でもハヤッタの力じゃあ墜落するわ!」
「心配無用だアアス。こんな事もあろうかとわしは戦場で支援を行う武内鷲族のワッシンに命令したアアス」
 八弥が現われた所から顔を出すタイガーフェスティ。
「じいちゃん何やってるの! ってか本当にワッシンおじさんが来る訳--」
 その時、ハヤッタの後ろを追う一羽の鳥が現る--齢三十九にして二十九日目になる武内鷲族のワッシンがハヤッタを助けるべく星央の両肩に両足で掴む!
 ワッシンとハヤッタ--二名の共同作業で星央は愛する妻の居る首都ボルティーニへと飛んでゆく!
(二名がいても到着するまで短くて一日と十の時はかかる! けれども妻は向かっている時でも苦しんでいる! 早く自分が来て慰めないと!)

 三月六十五日午後六時零分十二秒。
 場所は国家神武首都ボルティーニ中央地区天同星央の館。
 星央はワッシン及びハヤッタと別れるとそのまま美智琉の居る寝室へと五月蠅く飛び込んだ!
 すると--
「美智琉!」
 そこには元気な赤ん坊に母乳をやる美智琉の姿があった。
「旦那様! ご、ご無事で何よりです!」
「自分はいい! それに何よりも美智琉が無事な事と元気な子が出来て嬉しい限りだ!」
 おとっさあ--星季は跳ねながら星央を呼ぶ。
「元気なえっと……この子は--」
 雄の子よ、あなた--美智琉は微笑みながら星央に伝える。
「そうか。やはりこの子は……仙者だな。
 えっと雄の子なら名前は自分が決めても……良かったかな?」
「雌雄関係なくこの子の名前を決めると言ったのはあなたじゃないの?
 だったら決めてね。別に仙者とかそうゆうのに偏らず」
 星央は星季を抱きながら名前を考える。
(『星風』? 『星晃』、何かしっくり来ない。どうする? この際『星王』でもいいか? それでは母上と七の二の舞いだな。
 うーん、うーん……そうだ!)
 星季を抱きかかえながら星央は--
「『輝星』……自分はこの子を『輝星』と名付ける!」
 この星に新たな仙者が誕生--その名は輝星きせい
「『輝星』……『輝く星』という意味かしら?」
「勢い余って名付けてしまったよ。本当は君の名前も含めたかったよ。どうやら戦場
が心配でついつい--」
「気にしなくていいわ。それに『輝星』はそんな名前を付けられて喜んでるわ、ほら!」
 美智琉は母乳を飲み終えて眠りに就く輝星を見せた--まるで星々を輝かせるか
のような寝顔だ!
「きせー、きせー」
「合ってるぞ星季。この子の名前は輝星だ!」
 星央はこのままここに留まる気でいたが、砂丘で戦う者達の心配のようだ。
「済まないが美智琉、星季、それに輝星。自分はこれより--」
「口を挟んで申しわけありませんが、旦那様の部下であられるワッシン様からの伝言
を承りました」
 何--星季を降ろして美弥の方に振り向く星央。
「『櫛玉砂丘の戦いは終わりました』との伝えを」
 本当なのか--星央は近くにワッシンが居ると感じて裏門より出る!
「ワッシン殿! 居たら返事してくれ!」
 すると本来は戦場に戻っているはずのワッシンが星央の目の前まで降下する。
「本当だっし。わしは信じられない想いじゃっし。経由は飛遊雪穂より弟の飛遊悠輝
に伝わる故信頼性に欠けるが」
 ワッシンも星央同様に情報を疑う--自分が離れて一日足らずで戦いが終わる
はずはないと踏んでいた。
「済まないが自分はこれより中央官邸へと向かう! そこなら情報が纏まるからな!」
 送りまっし--星央はワッシンの気遣いに首を横に振る。
(その後自分は中央官邸に向かうと官房長官ログホラーニ・メデリエーコフから戦闘
終了が真実である事を改めて確認出来た。それによると銀河連合は一体どうゆう
理由かは定かではないが七が出撃するのと同時に撤退をした。これを意味する所
は戦場にいる全ての者が疑問文を出す程だ。勿論バルケミンの娘も同様だ。
 まあ後で考えるか。今の自分は探訪の息子が出来て胸が躍るんだしな! 自分
はこの幸せを大事にしないといけない!)

一兆年の夜 第三十八話 三兄弟物語 星々が輝く世で(三)

『アリスティッポス大陸。それは国家神武にとって最も取り返したい場所。あの大地
が銀河連合の物になったのはいつだろうか。母に聞いても曖昧に答えが返ってくる
だけ。僕にはさっぱりだよ。だから僕はこう想像してみるよ。あそこは僕達の先祖の
姉、生子様が死んだのと同時に銀河連合に渡ってしまったと。うーん、この場合は
学者一族の一つであるバルケミンから聞いてみよっかな。あそこには僕の友者も居
る事だし。そうそう思い出したんだけど僕の親友である色葉七不思議がアリスティッ
ポス大陸からやって来た銀河連合を倒すのに参加してるらしいんだ。僕よりも二つ
年上でなおかつ先祖代々から続く望遠刀の名手なんだ。いやこの場合は武器使い
の名手の方が正解かな。どうでもいいか。とにかく僕は兄さん達が無事に帰ってくる
事を願う。でないと母が悲しむし、美智琉姉さんや美弥さん、それに姪っ子の星季
ちゃんや今度産まれてくる甥っ子が悲しんじゃうしね。僕は安全な場所からこんな事
書いていいのかな』

 三月五十九日午後十時七分八秒。
 場所は西物部大陸ニギハヤヒ地方櫛玉砂丘。西物部大陸で唯一の砂場。
 本来なら極冠の大地からはるばる上陸する銀河連合の方が圧倒的不利と考察される戦場。
 ところが戦況は大きく異なり、こっか神武側の死者が多数を占め、戦いは二十四日目の夜を迎える事になった。
 この日の天気は雨で足場は更に安定しない状態であった。
(この大地に上陸する銀河連合はほぼ全てが種子型。奴等のやり方は時を追うごとに巧妙化が進んでゆく。自分がこの戦場に来れば士気の高揚で少しは良くなると期待していたが、付け焼き刃でしかなかったとは!)
 面積にして成人体型にしておよそ二百の陣幕が張られた陣の最奥で鉄製の椅子に腰掛ける指導者--国家神武最高官天同星央は右手親指の爪の甲を顎に付けながら悩む。
 その様子を右横に座って見守る副司令官--齢四十五にして十の月と二日目になるルケラオス虎族の老年が口を開く。
「総司令イイス。各地域に配属されておられる鬼族の者全員を招集するべきじゃないでしょうかアアス?」
 遠すぎよう--左横に座る齢二十四にして七の月になるゼノン燕族にして参謀総長シュトラウス・ベンデルウムが反論。
「でもオオス、このまま膠着状態が続けば確実にわしらは全滅するウウス。わしがもっと若ければ種子型の一体や二体なんて--」
「タイガーフェスティ殿。過去の自分を誉めても戦況は変わりません。それは即ちこの場に『自分の先祖の姉君であられる生子様が入れば数の問題はすぐに解決出来る』と言っているに等しい。なので自分達は時間と共に進む以上は時間が進む内に銀河連合を倒してゆくいかないのですよ」
「その通りであられる。タイフェス翁、ここで私はある提案をされよう所存で御座いましょう」
 提案--その場にいた二名はどんな話か耳を近付ける。
「そろそろ七様を戦場に送られては如何でしょう?」
 七を戦場に送る--分け隔てのない星央はさすがのシュトラウスの提案には耳を疑う。
「参謀総長シュトラウス、もう一度聞く。何て提案した? それに理由も平行に聞かせるんだ!」
 今にも羽ぐらを掴みそうな勢いの星央はシュトラウスに迫る!
「仙者である七様は現在神武鬼族のカゲヤマノツクモノカミから包丁捌きや棍棒捌きの手ほどきを受けておられよう。よろしくて弱い銀河連合二体ぐらいなれよう初陣の七様であれば倒せるでしょう。それに七様が初陣なされる以上兄君であろう八弥様……いえ副防衛官も戦場で七様を死守するるべく奮闘してくれましょう。
 生意気で罪深い事は覚悟の上でろう! よろしくて、星央様に殴られるのを承知で提案されよう!」
 シュトラウスの覚悟ある提案にはタイガーフェスティ・佐々木のみならず星央も爆笑した!
「何がおかしいのでしょうか?」
「いや、参謀総長に一本とられたから笑った。自分もまだまだ、あ、甘いんだなあと自覚された! 見事だよ、シュトラウス殿。
 だがこれだけは真面目に言っておく。七を戦場に送った以上はこちらも手を打たねばならなくてはいけなくなった!」
 手を--どうゆう事をするかを質問しようとするシュトラウスだった。
「これはわしが若い頃から行ってきた馬なのか鹿なのかわからん戦術じゃアアス。いいかアアス、こうゆう事じゃアアス。
 まずは--」
 成る程--シュトラウスは納得する。
 こうして三名は一刻も早く戦いを終わらせるべく行動を開始。
(速く伝えるものを三名程呼ばないと! 生きてるか、ハヤッタにチーチャル、それにモグ正殿!)

 三月六十日午後十時八分八秒。
 場所は西物部大陸プラトン地方国家神武五生市第三西地区鬼通り。その中で一番大きな一階建ての木造建築。
 そこでは神武人族の天同七が齢二十五にして一の月と二十五日目になる神武鬼族のカゲヤマノツクモノカミから三の時もかけて稽古を受けた。
「づか、でだ……」
「今日端ここまでじゃ。それにしても七様端いつ似なったら上達乃芽牙出る乃出しょう科?」
 呆れ顔になりながらツクモノカミは七を心配する。
「多分、明日、には--」
「今似して下さい。成長端生命それぞれです牙、七様乃場合端わし乃修行尾受けて十乃年。七様乃現在出いう齢くらい科羅稽古尾付けている乃似成長しません。このまま出……ん?」
 正門へと入る音に気付いたツクモノカミは背中に背負っていた金棒を右手に構えた!
 誰だ--それに応えるようにツクモノカミの正面より人族の雄が二名分入る位置に齢二十六にして五の月にして二日目になる武内人族の名無しの女性が身体を屈めていた!
「お前端医療班乃者科!」
「年上の者に『お前』呼ばわりなんて礼の欠く雄ね。私は総司令からの命令を伝えに来ました!」
 命令--七とツクモノカミはどうして総司令官天同星央が蚊帳の外である自分達に命令するのかを理解出来ないでいた。
「天同七様及びカゲヤマノツクモノカミには一秒でも早く櫛玉砂丘にある司令部まで来て下さい!
 これは最高官及び象徴である星央様の緊急招集で御座います!」
 ええ--七はどうして自分が戦場に向かわなければならないかを理解出来ない。
「あ、あの、櫛玉砂丘ってどこ?」
「その質問似答える前似まず端名無し余。どうしてわしだけ出なく七様尾戦場似出そう斗お考え科奈?」
「さあ? 私は武内土竜族の美堂モグ正さんを経由してここまで命令を伝えたんだよ。訳を聞きたいならモグ正さんに会うか、そうでないなら直接総司令官に会うしかないわ!
 以上なので私は元の配置場所に戻るわ!」
 名無しが振り返ろうと身体を動かす前に七が口を動かす。
「御免、美女のお姉さん。僕はツクモノカミだけじゃあ安心出来なくて仕方ないんだよ。だからせめて星央兄さんに会えるまで一緒に付いてきて欲しいよ」
 は--七の意外な言葉に名無しは返答に困る。
「済まない奈、名無し余。七様端突然言い出す癖牙あって困るだな。
 けれども一理端あるだろう?」
 一理--名無しは高貴な者とはいえ七に対して何かしらの心配を持った。
「ま、まあ七様の齢から考えれば突飛な事を言い出さないともわからないし……もういい!
 じゃあ私も同行するわ! で、でもこれだけは覚えてね! 総司令官に会うまでだからね!」
 わかった--七は満面の笑顔で答えた。
 こうして七は武の師匠であり、付き者であるカゲヤマノツクモノカミと医療班にして名を捨てた女性と共に二名の兄が今も戦う櫛玉砂丘へと足を進めた……!

一兆年の夜 第三十八話 三兄弟物語 星々が輝く世で(二)

 三月三十六日午後十一時七分十六秒。
 場所は首都ボルティーニ中央地区天同星央の館。二体の狛犬族の銅像が左右にある正門前。
 成人体型一とコンマ三に満たない巨漢の青年が帰宅。
「お帰りなさいませ旦那様」
 彼の帰りを待ち受けるのは齢十八にして九の月と二十八日目になるラテス人族の少女にして女中である叶美弥。八弥に密かな思いを寄せる者。
「ただいま美弥君。美智琉のお腹は元気か?」
「姉……いえ奥様の第二子は元気に育ってますわ。ですのでどうぞ鎧をお脱ぎ下さい」
 頼むぞ--星央は鎧を足下に置くと鉄靴を脱いで速い足取りになりながら妻である美智琉と第一子星季の眠る二階寝室へ向かう。
(包丁になっていこう自分は美智琉と星季、それに女中の美弥君に迷惑ばかりかける! 深夜になっても帰れない事は日常的。なおかつ愛を育む事も肌で触れあう事も段々少なくなってくる。父親の資格がないに等しい!
 だがそれでも--)
 ほんの少しでも父親の義務を果たさねば--そんな想いを抱きながら寝室に入る。
 すると--
「あらお帰りあなた」
 妊娠七の月になったばかりの赤子を腹に宿す妻--齢二十五にして一の月になったばかりのラテス人族の女性叶美智琉は齢三になったばかりの第一子星季を寝かし終えたばかりであった。
「ただいま美智琉。星季は大変活動的な娘で困るな!」
「あなたのせいよ。お母様の言いつけを難なく引き受けて只でさえ多忙な日々を更に多忙にしちゃったんだから星季もそれを真似して私をこんなにも困らせるんだもの」
「元気があっていいではないか。自分は成長してゆく娘の姿を見るのも楽しみなんだ。いつか自分達の大きさまで成長してくれたら父親として誇れるよ!」
「その頃まで長生きできることを願うわ」
「それも叶わないんだろうがな。自分はこう言っちゃ何だが働きすぎる質でな」
 普段は陽気な性格である美智琉ではあったが『働きすぎる』という言葉には真っ白な肌に似つかない顔色を浮かべる。
「……強がる美智琉でも隠し通せない部分はある。今は星季も寝ついてるんだから思う存分--」
 いいわ、いつも通り強がるから--嫁入りしたとはいえ叶家の第一子としての誇りなのか強がりを押し通す!
(全く美智琉ってのは。でもそこが自分と一致する部分なんだよな)
「あら? むきになって怒鳴りにいくと思ったけどいつも通りね」
「怒鳴っても美智琉には負ける。ならば怒鳴らずにそのままにする方がいいだろう」
「あなたも相当強がってるのね。まあいいわ。きっと産まれてくるこの子もそうゆう風に育つんだわ」
 かもな--星央は美智琉の側により、美智琉の首に巻き付くように右腕を回す。
「子作りは今度生まれてくる子が歩けるようになってからよ」
「わかってるよ、そんな事は。只自分は美智琉に慰めて欲しいんだ。あらゆる事全てから」
 星央は心の重荷から解放されたがっていた--その手伝いを愛する妻に乞う程にまで。
 星嘔吐美智琉は同じ寝床で抱きつくように眠った--お腹の子供への重荷を出来る限り抑えるように。
(感じるよ美智琉。お腹の子はきっと仙者だ。腹の中から伝わる音に便乗するようなしゃっくり……これは星季にはないしゃっくりだ。どうやらこの先の国家神武は安泰だ。自分の子が将来象徴になるんだからこれほど嬉しい事はないさ!
 だから……)

 三十七日午前二時八分六秒。
 星央の館裏門に近付く影有り。それは雄略包丁を右腰に掛けて成人体型六十七を九秒台ギリギリで届く速さで走りながら!
 裏門を飛び越えると急いで星央夫妻にいる寝室の窓によじ登ろうとしたが--
「あなたは八弥お兄! 何やってるの?」
 女中の美弥に見つかる八弥は成人体型一コンマ二以上もある巨体で近付く。
「美弥……また成長したな」
 腰を砕けないでよ--言葉と共に左頬を右手甲でひっぱたく美弥。
「そんなことはいいとして兄貴に伝えなくちゃいけないことが発生したんだ!」
「何なの、その『伝えなくてはいけないこと』って?」
 アリスティッポスの軍勢が真っ直ぐこっちに向かってくるんだ--美弥の両肩を掴みながら伝えたい事を言う八弥。
「アリスティッポス……誰経由なのお兄?」
「レインズ・キングレイからだ! ちゃんと伝えろよ美弥!」
 じゃあ戦場に戻る--そう言って八弥は来た道を真っ直ぐ戻ってゆく!
「出来ればお兄に私の気持ちを伝えたかったよ」

 午前七時十分十秒。
 成人体型一とコンマ四もある木刀で素振りしながら朝練をする星央に届いたのは五の時より前に八弥が届けた伝言であった。
「何! アリスティッポスの銀河連合がこちらに向かっているだと!」
「御免なさい旦那様! お兄……いえ八弥様からの情報を今になって報告して申しわけ--」
「謝らんでいい! それで誰経由だった?」
「えっとレインズ・キングレイだったわ。アリスト人族の」
 レインズか--星央はレインズ経由なら信頼足り得ると判断。
「今日の素振りはここまでだ。美弥君。木刀を片付けてくれないか?」
 わかりました--美弥は綺麗に置かれた木刀を両手で拾い上げる。
(また美智琉と星季には迷惑をかけるな。どこまでも父親の資格がないぞ、自分は。
 けれども仲間を見捨てるなんて行動を自分は出来ない! 自分は指揮官なんだ! 最高官にして象徴T琉天同星央の名が泣いては神々に申しわけがつくまい!
 よってこのまま迷惑をかけるぞ、みんな!)
 朝食を済ませた星央は愛する妻の唇に自分の唇を丁寧に触れ、愛する娘星季には思う存分抱っこをした後、戦場へと足を踏み出す!
「じゃあ行ってくるよ美智琉!」
「行ってらっしゃいあなた」
「いってらしゃあ!」

一兆年の夜 第三十八話 三兄弟物語 星々が輝く世で

『国家神武。そこは僕の生まれ故郷でもあり、全生命の希望が集まる場所。希望が
集まる由縁は僕自身の言葉では説明出来ない。多分指導者と同一いやそれ以上
の地位にある象徴が希望を与えてるんだろうなあとしか言えない。母や星央兄さん
に聞いてみない事にはわからない疑問だよ。まあ聞こうとする機会があっても忘れ
ているから無理だろうけど。そんな事よりも僕が今注目している事があるんだ。何と
星央兄さんは国が支配する地域を今知られている大陸、地方全てに広げるんらし
い。無茶苦茶だよ。僕は運動自体今一だけど統治の難しさならわかる気がするん
だ。統治ってのは一つの集落を一名で支配するには楽だけどその集落が広くなり
或は村にまで大きくなったりすると一名では労働時間の単位が大きくなって身体へ
の重荷が大変になるんだ。だから者手または者足を増やして一単位当たりの労働
時間を短縮しなくちゃいけなくなるんだよ。まさか星央兄さんはそんな事まで考えて
るのかな。気合いで何とかしろといっても無理な事は世の中たくさんあるんだし、ど
うするんだろうか。今こうして書いている僕は今年で十四にして九の月になったばか
り。この時期は母の話では意地を張りたがるそうだって』

 ICイマジナリーセンチュリー百年三月三十四日午前十一時三十二分四十三秒。

 場所は国家神武首都ボルティーニ中央地区中央官邸。神武聖堂から北へ成人体
型およそ六百八十の所にある白く塗られた建物。
 その中の三階にある中央会議室。立方体にして成人体型およそ三千。出入口は
建物の南口に向かう所に三つずつ均等に配置。机は円卓と成り、中でも赤い丸模
様の旗より前にある席は特別だ。
 座れるのは国家神武指導者--最高政務官天同星央のみ。齢二十八にして二の
月と八日目になる神武族の長を継ぐ者。
 彼は獅子族のような剛胆な目つきと眉間に広がる十字傷で座る者全てを威圧。
「--よって国家神武が受け持つ領地を武内大陸より先の雄略大陸にまで広げる。
 異論がある者は言いたまえ!」
 異論を挟む者は二名。齢二十五にして十一の月と二十五日目になる若き防衛副
官にして星央の弟である八弥と齢三十一にして八日目になるラテス蜻蛉族の中年
にして真鍋傭兵団から派遣された傭兵。
「正岡シ数ならともかくまた八弥か!」
「『また』は余計だろ兄貴! あそこは雄略包丁製作場所だろ。あんな所に生命を
送ったら楽に包丁を製作出来ないだろうが!」
「銀河連合に食われたら更に製作出来ないだろ? だったら少しくらい生命送っても
問題はあるまい」
 練度が下がっても知らんぞ--そう呟いて顔を背ける八弥。
「シ数殿。どのように反論なさるのです?」
「何て言うかい、少し広げすぎではないかと思ってねい。広げれば広げる程一単位
当たりの労働量を増やす事になりませんかい?」
「一地域への軍者の数を減らせば減らす程残業代が増えて社会保障が増す事を心
配なさる……と?
 いえ、それだけじゃあないでしょう、シ数殿」
「私に言わせないで下さい。私はあくまで客ですのでい」
 でも言わないとワテにもわからないね--齢三十七にして五の月と一日目になる
アリスト鴨族の中年にして社会保障長官白石カブ也がシ数に促す。
「戦いは質ではなく量が全てですい。広げれば広げる程一地域への軍者が減って
銀河連合の大群が来たらあっという間に食われる事になりますい。
 その時どう責任をとるおつもりでしょうい?」
 シ数に指摘されながらも星央の表情は余裕だ--何かしらの対策を考えているか
のように。
「これ以上の志願呼びかけも各大陸地方、島では一杯一杯。その事実は我が父
六影の頃からわかっていた。
 なればこそ自分は雄略大陸を支配下に置こうと決めていたんだよ!」
「言ってる意味を理解出来かねますい。一体何をするお考えなのですかい?」
「それはな……作るんだよ」
 作る--その言葉に齢四十八にして二十三日目になるエウク馬族の老年にして
交通長官真島ギャラ蔵以外の者は首(触角)を傾げる。
「まさあか設備投資だなあ、星央様あ」
「そうだ。他の大陸や地域では要塞を建てたり武器を作ったりする技術は易くない。
 だったらそれを大々的に行える雄略大陸で円滑に高い技術を得られれば軍者
一名当たりの重荷も軽くなろう。
 その為に自分は雄略大陸にまで広げるんだ! まだ反論されるならばもう応えら
れはしないが、どうだろう?」
 それでも反論する者は必ず居る。
「何年かかるんだ? 全ての地域を要塞化するのに?」
「またお前か。残念ながらもう応えられはしない。これから採決を始めるんだ。
 投票は顔下に置かれてある白い紙を中央に寄せる事で賛成を表せる。反対なら
自分の方に寄せるんだ」
 議論は靄のかかる状態で終了。これから投票が始まる。
 結果は--
「反対票は四名か。今ここにいる者は二十名である以上自分が出した案は規定数
同意。よって領地拡大案はこれにて成立!
 朝の重要会議はこれにて終了! 閣僚の皆様及び真鍋傭兵団からはるばる来て
下さった二名もわざわざ席に着かれてどうも有り難う御座います!」
 反対票の内、一名は星央の弟八弥の物だった。星央は八弥との仲が芳しくない
模様。
「八弥。わかっていると思うが自分の足だけは引っ張るな! お前の勝手さは全生
命の身を危険に晒しかねない事だってあるんだからな!」
 言ってろ--八弥は星央に満足ゆかない態度をとりながら脇まで届く長い髪を
揺らしながら左出入口から出て行く。
(全く八弥と来たらどこまでも勝手だな。戦闘ではあいつより優れているのは神武鬼
族のカゲヤマノツクモノカミ以外知らない。それくらい強い。仙者ではないのにな。
 ただ、あいつの性格が問題だ。遅刻・欠勤は日常茶飯事。例え戦闘に参加しても
命令を無視して陣地に突っ込んでゆくのは恒例行事だ。眉間の傷はその内の一つ。
どこの戦いだったかはもう忘れてしまったが。だからこそ自分はあいつが心配だ。
 いつかそれが原因で死地に赴くのではないかと心配するんだ。だが、自分が目を
光らせている内はそうさせん! それは七にも言える事だ!)
 最後に残った星央は十字傷を右人差し指で触りながら自分自身の未来がどうなる
かを予見。それが終わると中央出入口から出て行く。

『二名の兄さん。兄さん達は互いに性格が異なる。星央兄さんは真面目で勤勉で無
理を押し通す性格。僕にとっては目指すべき生格者。一方の八弥兄さんは雌垂らし
で明日を考えないどうしようもない方。でも運動神経は非常に良く、力仕事では頼り
になるんだな。肝心の僕は星央兄さんみたいな誰にでも尊敬される部分もなければ
八弥兄さんのように社交的でなおかつ体操が出来る訳でもない。ただ積み木や蹴
鞠をいじくるしか脳がない。そんな兄さん達を前にしたら僕自身の無力さを痛感され
るよ。少しでもいいから分け与えてくれたら苦労しないのに』

一兆年の夜 第三十八話 三兄弟物語 星々が輝く世で(零)

『僕が生まれた日。それは父が死んだ日と重なる。僕は生まれた頃から父の素性
がわからない。覚えているのは父の名前が天同六影。神武人族の長にして国家神
武の象徴である事。父の享年は確か母から聞いたことなんだけど三十七だったよ
うな。父が死んでいる事に悲しみなんてない。覚えていないものを悲しむなんて僕
には出来ない。けれども忍挟にはざ大伯母様が死んだ時は僕にはある種の悲しみを感じ
たよ。生命はいずれ死ぬという幼い僕にはどうすればいいかわからない悲しみが。
あれだけ長生きした大伯母様の死は僕に死ぬ事とは何かを伝えた。僕もいずれそ
うなるのかな。星央ほしお兄さんのように覚悟もない僕に死を覚悟出来るかな。八弥やつみ兄さんのように何でもそつなくこなせる訳でもない僕にこれから先を生きる術はあ
るのかな。僕には二名の兄さんと異なり何かしら特別な扱いを受けている。末っ子
だからなのか。僕にはわからない。今こうして書いている時は僕の齢は十。月と日
は後で母から聞いてみるよ』

 ICイマジナリーセンチュリー九十九年三月三十四日午前九時四十八分五十七秒。

 場所は国家神武首都ボルティーニ中央地区神武聖堂天同六影の間。
 参加を初めとした新国家神武の象徴及び指導者の肖像画が並ぶ。肖像画を描い
た者は時代ごとに異なるものの唯一有名な者は六影を描いたのは叶奈々。現在の
天同奈々その者。その肖像画の前に齢四十二にして十の月と六日目になる旧ラテ
ス人族の老婆が肖像画に勝るとも劣らない威風堂々とした面構えで三名の雄を
圧倒する。
「--以上で今日から星央。あなたが国家神武の象徴を務めなさい」
 後ろに括った腰まで伸びる茶髪をした老婆より正面から中央に座る齢二十四にし
て二の月と八日目になる神武人族の青年星央と呼ばれる者は言葉に詰まる。
「どうしたの星央? 指導者と象徴の両方を継ぐ事に反対でありますの?」
「い、いえそうではありません! 自分はいくら説明を聞いても納得ゆかないので
御座います!
 母上! どうして象徴は七ではないのですか!」
「七はまだ幼い。それにこの子には国の象徴というのは重荷でしかないわ。父を見
る事もなく生を受けたこの子にはもっと広い視野で育って欲しいと私は願うんです
もの」
 『願うんですもの』って、オイオイ--齢二十一にして十一の月と二十八日目になる
神武人族の青年は星央よりやや後ろ右に右肘付けて寝転がりながら呟く。
「八弥に呆れさせるのはわかってるわ。私がどれほどあなた達に我儘を言い続けた
かは当の私でもわからない。それでも私は自らの存在を思って七ではなく第一子で
しっかり者の星央に頼むの。星央は大変努力をして国家神武の政務を休む事なく
こなしていると聞く訳ですので」
「勝手だな。お袋のごり押しに俺は賛成出来ない。じゃあ兄貴がいなかったらどう
すんだ? しっかり者でない俺に頼むんか、そんな面倒な役を?」
 そうよ--脇まで髪を伸す青年八弥の質問に対して奈々は素早く返答。
「やっぱり反対だ! 俺は兄貴を過労死させるような真似をさせないぞ!」
「黙れ八弥! お前に自分の仕事をとやかく言う資格はないぞ!」
 心配しているってのに--豹族の鋭い目をした八弥は星央の胸ぐらを掴みに立ち上がる!
「止めなさい八弥! 七がびっくりしたらどうするのですか!」
「びっくり? びっくりも何も--」
 七は熟睡中です母上--獅子族の頑強な目をした星央はやや後ろ左に座りなが
ら目を閉じる齢十にして九の月になったばかりの神武人族の少年七を左指さす。
「自分の調子だけは崩さない子ね、七は。それならばこの子もあまり重荷を背負わ
なくて済みますね。
 では星央。象徴を引き受けますの? 出来ないのでしたら八弥にでも--」
「俺がいつ象徴になりたいと言っ--」
「いいでしょう。八弥にやらせるくらいなら自分が引き受けましょう。それに大伯母様
亡き後いつまでも空席となっている象徴の椅子にはいずれ誰かが座らねばいけなく
なる。
 だったらその椅子を自分が座ろう」
 青い髪を逆立てる青年星央は母である天同奈々の期待に応える形で象徴を引き
受ける--立ち上がり、右手を広げて左胸に当てながら!
「二対一かよ! でもな、お袋! 二対一では決まった事にならないぞ!
 この事を後ほど全閣僚を呼んで三分の二以上の合意だったっけ?
 それくらいないと決定されないぞ!」
「わかってますわ八弥。星央、そろそろ行きましょう」
「ええ。ところで七は起こしましょうか?」
 寝室に運びなさい--奈々はそう答えた。
(合意は困難を極めるものだと自分では思っていたが思いの外すんなりと進んだ。
そして採決の結果は三分の二以上の合意が成立し、ここに自分天同星央は指導者
兼象徴となった。
 自分はこれから全生命を正しく導かなくてはならない! 自分には母上のように予
報も出来ない。八弥のような戦闘の才もない。かといって奈々のように長く生きられ
ない。ならば答えは決まる! 自分は普段と変わらない振る舞いをすれば良いだけ
の話。
 それが天同星央の生きる道……)
 それから四の年が過ぎた……。

ロベスピエール:全ては王妃のせいだ!(後篇)

 どうも早速誰だかわからない陰謀のせいにしてきたdarkvernuです。
 長すぎたので記事を二つにしました。
 えっと、まあとりあえずアカとかフランス革命とか魔女裁判をネタにしたのは一重にやっくんの死の原因を無理矢理放射能のせいにする馬鹿共への嫌がらせだと思って下さい。自分はそうゆうのは心底やってはならない事だと感じますので(怒)。
 さらっと解説すると放射能の件にしたって自分は別に原子力以外の道は風力や太陽光といったお花畑エネルギー以外なら認めるよ。その事なら過去の記事を見れば明らかですので。ただし、放射能を目の仇にしたりとか染色体云々なんて事を言い出す輩は心底放射能汚染以上に胸くそ悪い連中と見てます。というよりもいくら福島が汚染されてるからって人が住めないとか言えるタチかと(怒)。第一に染色体云々言ってるけど結局そんな事言う輩は安全な場所で知ったかぶりに語ってるだけだろうに。そんなに放射能が嫌いなら空間転移して放射能または放射線が全くない世界でも飛べばいいんだよ! そんなファンタジーなこと出来るはずもない癖にな。まあとりあえず自分は反原発連中の大半をこういった理由で嫌ってます。
 ただし、過去の記事でも書いたように原発推進派もまた大半は偽善に満ちていると自分は思ってるつもりです。というのも彼等はまるで原子力無しでは日本はエネルギー事情を改善出来ないよう喧伝しているのが正直肌に受け付けない。大体日本には日本の目指すエネルギーはあって然るべきですよ。潮力や地熱、それにいっそのことアニメや漫画に出てくる光子力エネルギーやゲッター線といった有り得なさそうなエネルギーを求めても良いんですよ。何も原子力に依存するのは正直言って視野が狭いと今でも自分は思っているよ。まあ実現するまでの内なら太陽光とか風力なんて日本の環境に合わない物は主力にするべきじゃないのです。それならば原子力を中心とした効率の良いエネルギーが割に適ってますからな。
 なお放射能とか汚染が何たらこうたらとか言うのが居たらそいつら全員原子力以上に汚染の高い宇宙空間に放り込んで良いと自分では思います。何故なら宇宙は銀河宇宙線(?)と呼ばれる高濃度の放射線(?)が年中無休で放射されますので。そしたら彼等もいい加減そうゆう寝言を吐かなくて済むかも知れません。ちなみに自分も安全な場所からこうゆう事を書いている事をここに宣言しときます(笑)。
 さてとショートストーリーの解説を今度こそやりたいと思います。解説する前に謝っておきます。いくらアカとかが憎いからって実在の人物をやるおにしたり、関西弁言わせたりホモ野郎にしたり、狛枝凪斗などにした事は大変申しわけありません。正直熱くなりすぎたという言い訳では済まないと思います。全部調子に乗った自分が悪う御座いました!
 解説に移りますね。題名通り何か良くない事があるとすぐに誰かのせいにする者全員に向けてわかりやすいように歴史を振り返ってみました。正直ふざけすぎた事は良くなかったな(辛)。出来ればローマ帝国芸術帝ネロの方まで遡れば良かったのか正直悩むな。まあ済んだ事だし、この際説明するとジャコバン派によるマリー・アントワネットの処刑もレーニンの考案した密告制度もスターリンがトロツキーを踏み絵にする事も毛沢東が文化大革命をした事もポル・ポトのメガネ族粛清も森恒夫や永田洋子が総括という名の虐殺も遡れば悪名高き魔女裁判に繋がります。
 魔女裁判の何が酷いか。それは裁判官全員がミズポやドラえもん弁護士みたいな連中だと言う事ですよ。とにかく反証が全く成されないなんてレベルじゃない。ショートストーリー内の話は一部でしかなく、もっと酷い時は多数決無しで目撃者の少女一人で全ての裁判内容が左右されるという素人でもおかしい事例が山程だよ。正直ミズポやドラえもん弁護士はこの時代に生まれてくれば活躍出来たというのに残念だよ(悲)。
 とりあえずフィクションなのはマイオスだけだよ。というかロスチャイルドやロックフェラー、それにコミンテルンからの派生系共産組織よりも陰謀を企てる奴がいてたまるかと! ですのでサイボーグ総理やチェンジ、それにイスラエルを真に操るフィクサーはマイオスだと思わないで下さい。政治的判断だけでは世界は動きませんので。
 以上で時事ネタの解説を終えたいと思います。

 やっとこさ第三十七話の解説に入るよ。今回は今までと比べて話の量は短くなったと思います。とはいっても一パート一パートはやや長いけどね。それから今回は未熟な包丁鍛冶の鼬が主人公を務めますがこの鼬は藤岡弘、も真っ青な包丁捌きをします。つーか鼬で綺麗な太刀筋を披露しないでくれよ。綺麗にに斬れない……ここは調子に乗りすぎるな。
 えっと話を変えますよ。今回は刀鍛冶の大変さと鼬が辛い仕事をしていく内に心が鍛えられてゆく描写を示しております。友達がいないと思っていた彼だったが実は信頼出来る友達がいて、その友達によって最終的には助けられるという感じですよ。まあ内容をあまりネタ晴らししないけど。只残念なのは自分の悪い癖だけど、途中から電波丸出しになったのは残念で仕方ない。まあ自分が読者に近付く程大きくなってない証拠だな(笑)。
 三十七話もいつか内容を付け足して電波部分を少しでも改善出来たらいいな。まあそん時になると大抵忘れてそのままにしてしまうんだよな(悲)。後ろ向きになりながらも第三十七話の解説を終えます。

 最近の日曜は時間がない。なので不定期で更新する方もあんまり進んじゃいないんだよな。もう少し時間を大切にするべきかな? まあ甘ったれた考えでしかないしな(辛)。そんじゃあ今後の予定をいつも通りのコピー&ペーストで

 十月
 十四日~十九日     第三十八話 三兄弟物語 星々が輝く世で    作成日間
 二十一日~二十六日  第三十九話 三兄弟物語 無限逃走の責務   作成日間
 二十八日~十一月二日 第四十話  三兄弟物語 八は輝き、七は動く 作成日間
 十一月
 四日~九日        第四十一話 三兄弟物語 七と奈々       作成日間

 ちなみに第四十一話を間違ってもSM漫画のあれをパクッたなどと思わないように。余計だったかな? そんな想像する自分の頭がおかしい証拠かな?
 話を変えます。次の話から久々の中編物になります。主人公は題名通り三兄弟で五部構成になってます。
 それじゃあ今日はここまで。政治的判断を以て逃走しますぜ!

ロベスピエール:全ては王妃のせいだ!(前篇)

 どうも人のせいにしたい気持ちもわからなくないdarkvernuです。
 時事ネタを始める前に『格付けの旅』が数行程更新しましたので読みたい方はカテゴリ覧の<格付けの旅>をクリックして下さい。
 じゃあ早速自分が運悪いのは謎のせいにして時事ネタを始めたいと思います。

 人類は誰かを生け贄にしないと生きていけない欠陥だらけの存在なのだよ。
 おや、わしか? わしは言うなれば闇のフィクサーと呼ばれる存在だ。かつては仏教の開祖ゴーダマ・シッタルーダとは盟友の間柄であったな。一応奴の思想を自分の私利私欲の為に利用して貰ったがな、フフフ。
 話は人類の欠陥に戻る。別に人類が生け贄を欲するのは現代だけではなかろう。中世ヨーロッパで流行った魔女裁判もそうであったなあ?

 とある村で一人の女性が魔女に仕立てられようとしていた。
「君に魔女の嫌疑がかかってるがどうかな?」
「私は魔女じゃありません! そんなの迷信では--」
 突然子供達が発狂--白目を剥く。
「ああ、どうしたの?」
 子供達は何事もなかったかのように立ち上がり、女性を問い詰める!
「お前が魔女だ!」
「魔女だ魔女だ!」
「ち、違います! 私は--」
「子供達の言う事が正しい。よって君、魔女で決定だよ」
「そんな……」

 フフフ、ここには低俗ではあるが政治的判断が織りなされておるな。実際にはそんな裁判は現代では認められんよ。魔女裁判はあらゆるゴミを処理するのに最適だったな。お陰でヨーロッパの人口を減らすのに貢献してくれたよのう。
 話はフランス革命に移る。革命家共がいかに首を欲したかが伺えるよ。

 とある革命政府本部。そこにはロベスピエールを初めとした革命家が自分達の威信をいかに守るかを議論していた。
「マックス! このままじゃやばいよ! いくらルイの首を取っても状況が一向に改善しないんだけど!」
「何を言うか! 俺だって必死で頑張ってるんだぞ!」
「だからどうしたってんだよロベス! お前がフランスの財政はすぐ立て直せると言った癖して!」
「五月蠅いぞ! 首を落とすぞ!」
「鎮まれって! 言い方が悪かったよ。
 ……そうだ! この際あのオーストリア女をやってしまえばどうかな?」
「……その手があったか! 君を良い位に上げてやるぞ」
 そしてロベスピエールはマリー・アントワネットの首を落とした。けれどもそれは彼の寿命を縮める事に繋がろうとはこの時誰も想像出来なかった……

 マリーの首でどうにかなるのなら初めからルイの十六代目の首を刎ねる事もなかろう。全てはおのれらの無能さと稚拙な政治的判断が招いた物よ。その後は解るな? 奴等は更なる事態収拾の為に首を欲し、とうとう奴ら自身も首になったのう。
 次はエリック・アーサー・ブレアの描いた二作が主に批判したソビエトがいかに血を欲したのかを話そう。

 レーニンは危機的状況に立たされていた! ロシア皇帝一家を全て骸にしてもスターリンを初めとした権謀術中に長けた連中を黙らす口実が見つからない事に。
「ヨシフやレフはいつわしの首を取るかわかった物じゃない! このままではわしが折角とった椅子が奪われてしまう!
 ……そうだ! 奴等を黙らせるためにあることを閃いた!」
 後のチェーカー(秘密警察)--本来はレーニンのレーニンによるレーニンの為の非合法組織。
 彼等に聞かれたら最後、死ぬ時まで強制収容所或は見せしめに処刑される為の道標。
 レーニン亡き後は権力争いに勝利したスターリンが--
「ああ、トロツキー恐いお。周り恐いお。ボクチンどうすればいいかな……そうだ!
 いっそのこと全ての悪行はトロツキーが陰謀を巡らせて起こした事件にすればいいお! ボクチン頭良い!」
 レーニン以上に密告が強化され、なおかつトロツキーは党の体制を維持する為の生け贄となる。
 一方のトロツキーは--
「ヨシフめ! 能なしの癖して権力を我が物顔で! まあいいさ。いずれわいは返り咲いたるわ! 息子は死んだけどわいさえいればいくらでも代わりは……おや?
 誰か来たようだな、誰かな?」
 暗殺された!

 正に『動物農場』と『1984年』だな。ただ、エリックは知らないだろうが、トロツキーもレーニンも出来の良い指導者でない事だけは知れ。奴等も権力に取り憑かれればスターリンより僅かにましか或はもっと酷い事をやってのけるだけの政治的判断を下す者共よ。
 次は捏造だらけの中華思想国に話は移る。こちらは共産体制時代で十分だろう。

 毛沢東は蒋介石との内戦に勝利し、権力を握るもあまりの無茶苦茶な政策をし過ぎて多くの餓死者を出し、なおかつその後に起こった権力争いにとうとう敗北して国家主席の座から引きずり下ろされた!
「おのれ劉少奇め! 我が輩のお陰でお前は現在の位置にいるというのにわしの功績をこき下ろしてえ! このままじゃあわしは劉のアンポンタンに殺される……閃いた!
 若者を扇動しよう! 早速嫁と林彪ちゃんに相談しようっと!」
 後の文化大革命と呼ばれるジェノサイドであった。

 毛沢東の場合、生け贄を劉少奇ら反対派のみならず、あらゆる文化遺産までにも広げたのう。さすが政治的判断が豪快な支那大陸の伝統だ。わしは奴らが大好きだ。思うがままに馬鹿をさらせる部分は日本も見習うべきだな。
 次は毛沢東に憧れたポル・ポトの話に移ろう。

 権力を握ったサロット・サルはポル・ポトと改名し、国名を『民主カンプチア』にした。だが、彼もまたロン・ノルのみならずノロドム・シハヌークまでも生け贄にする事で権力維持に努めようとするが--
「朕がここまで頑張ってるのにあいつらはまた文句を言い寄る! 憧れの沢東ちゃんの愛に応えてやってるというのに! こんな事ならいっそ眼鏡をかち割って……その手があったか!」
 ポトらクメール・ルージュはとうとう頭の出来た者達にまで生け贄にするようになった……

 インテリ共を呼び戻しては虐殺してゆく。眼鏡をかけた者のみならず、本を読んだ者、少し太ってる者も粛清対象だったな。呆れても物も言えん政治的判断じゃ。わしはそんな事をやるくらいなら逆にポトの若造を骨にする方が先決だな。
 最後に日本の山岳ベース事件の話に移ろう。

 浅間山荘事件の後に逮捕された赤軍メンバーの証言で明らかになった内ゲバ。
 証言を基に当時の状況を追う。
「な、何を言って--」
「総括されなさい! あんた顔が良いからって怠けてるんじゃないでしょうね?
 みんなあ、この場か女を総括しなさい!」
「ぐへへ、良い身体してんじゃないか」
「いやあああああ!」
「恒夫! また総括の犠牲者が出ましたがどうします?」
「絶望的だね。彼女は立派な革命戦士だった。生き残れなかったのは総括に耐えうるだけの精神力が満ちていなかったんだね。彼女は結局我々の希望ではなかったんだよ。
 じゃあ気を取り直して総括を続ける事にするよ。じゃあ誰にしようかな?」
 彼等は生け贄を求めて総括という名の虐殺を続けた。ある者は私欲を満たす為、ある者は己自身が悪と気付かない程にまで……

 だからわしは日本が憎い! どこまでも八百万の神が日本を正しく導く! いくら道鏡や小林よしのりを送ってもそれをはじき返す何かのせいで日本は沈まない!
 フフフ、話は終わった。このように人類は生け贄を欲するのだよ。それは大変な欠陥を抱えているが故にな。
 またわしの事を聞くか? そうだな、わしの名前はマイオス。地球上にある全ての国々の影の支配者なのだよ。例え神であってもわしを倒す事は叶わぬものよ、フフフ……


 長くなりすぎたので後半に行きますね。時間を大分置いて。

一兆年の夜 第三十七話 鼬ごっこの世(終)

『あれから三の年になるのか? 都合良く生き残ったコアックラウが間一髪の所で俺を引き上げていなかったらこうして包丁を造ってない。銀河連合との戦いで生き残ったの
はいいが右後ろ足を切断してしまうとは。一時期は五体の一部がなくなって後ろ向き
になったさ。人生を共にする物を取り除かれたなんて耐えられると思うか。けれどもコ
アックラウや後に結婚するイタネの励ましや支えのお陰で完全とはいえなくともこうし
て鍛冶仕事をやれるんだから感謝しても仕切れない。
 それにしても俺は妙な体験をしたな。あれは何だった。時が経てば断つ程夢の世界
の話だと思ってな。どうにも思い出せなくなってきている。恐らく俺の脳が防衛反応を
示してそうしているんじゃないか。考えすぎだな。もはや信じられない経験だ。
 そんな事よりも右後ろ足を切断以来俺はどうやって生計を立てているか知りたいか。
コアックラウやイタネによる稼ぎで賄いはしているが俺だって稼いでいるさ。物斬り包
丁でな。
 と言っても戦場で使う為の物じゃない。俺が目指す飾りだけの物斬り包丁さ。戦いが
好きじゃないなら果物包丁や野菜包丁を造ればいいとお考えの者もいるだろうが俺は
初めから飾りだけの物斬り包丁製作の為にこれからの人生を全うすると決めてる。
 俺は軍者時代に多くの銀河連合を斬り、自衛の為とはいえその後の人生においても
銀河連合を斬る運命から逃れる事は叶わない。三の年より前に右後ろ足を切断する
まで俺は穢れを浴び続けた。俺はそんな穢れを祓う為に包丁を造り続ける事にした
のだ。自らの罪を償う為に。
 話が長すぎるな。こんな事は滅多に有り得ないのに。どうやら包丁鍛冶が上手くなる
のに比例して日記まで長々と書けるようになったかな。長々--』
(いけないっち! 炉の温度上がりすぎてるかも知れんっち!)
 彼の名前はイタラス・ジャレモンド。齢三十三になったばかりのルケラオス鼬族の中年。かつては国家神武の軍者であり、軍者内では『歩く物斬り包丁』と謳われる程にまで類い稀なる包丁捌きの持ち主。七の年より前に穢れを祓う為に軍者を引退。その後高名な物斬り包丁鍛冶の物部わに兵衛に弟子入り。わに兵衛の死後は独立して現在の廃れた小屋で包丁製作に励む。独立して初めて完成させた物斬り包丁の銘を刻んだ矢先に銀河連合が襲撃。それにより彼は右後ろ足を切断する事になった。だが、これが切っ掛けとなり当時高名な医者だったエピクロ鼬族のイタネ・ポリトネンコと運命の出会いを果たし、一の年より後に結婚。子供こそまだいないがいつか作る予定である。
 話は変わってイタラスの作り上げた飾りだけの物斬り包丁は彼の死後百の年が経過して骨董品収集家の間で高額な値が付くようになる。それは鼬ごっこしか有り得ない世の中で唯一彼が示した飾りだけの物斬り包丁がようやく日の目を見た瞬間である事を忘れてはならない……。
「人生は本者に都合良く出来ていないように見えてっち、実は全体としては上手く出来てるんだっち!」



 ICイマジナリーセンチュリー九十九年十二月十二日午前八時二十四分三十七秒。

 第三十七話 鼬ごっこの世 完

 第三十八話 三兄弟物語 星々が輝く世で に続く……
プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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