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宇宙から飛来した鳩は外患誘致罪で死刑については賛成だ。

 どうも毒電波発信では恐らくクルッポーと変わらないという不安を抱えるdarkvernuです。
 早速だが時事ネタをどうぞ。

 とあるブーメラン党本部。
 そこでは今後、宇宙人鳩をどのように処置するかを検討中だった。
「サイボーグ首相みたいに関係ないで貫けたら俺達も苦労しないが」
「いやこの場合はあいつは『俺達に当てつけのつもり』であんな発言をしてきたと釈明する方が--」
「それだとまた批判くらうしな。わいなんか胡座農場の件でいろいろ足下が崩れそうだし」
「俺だって同じだぞ。この前の都議選で俺が応援演説しただけであいつらは去っていってそのままその候補が負けたんだぞ! 俺が何をしたって言うんだ?」
(いやいやいろいろ訳わからんことしてたような?)
「このままじゃ参議院選で敗北してしまう! 何とかしてあのルーピーを止めないと!」
「いっそ連邦のヌードで--」
「却下! トラウマものよ! 第一あれでは人気を取り戻せないわ!」
「じゃあ僕の女もイチコロの--」
「モナー以外の女を持てたらの話だが」
「仕方ない。俺にするか」
「「「「「どうぞ、どうぞ!」」」」」
「ちっくしょー! やってられるかあ!
 ってダチョウのU島の物真似でいけるか?」
「ならばわしの流通最強の人脈で票を集める以外にないだろ!」
「最近悪いイメージが定着してるけどね、君の親父が経営してるJASKOも」
「貴様も人が言える立場か! グーグルアースで国防全てを任せられると本気で思ってる糞野郎が!」
「あ、あれは言葉のあやだ! だ、第一必ずしもグーグレアースで守れると言ってる訳じゃ--」
「あーあ、君達にはがっかりだよ。これが希望の象徴たる責任野党だなんて絶望的だよね」
「ところでどうしてキチガイが我々の本部にいるんだ?」
「キチガイって僕のこと? ごめんごめん、僕みたいな奴が君達の本部に入って差し出がましいことを言うなんて。でも君も僕みたいなクズとは言えないけど国籍が怪しい人を外務省に招き入れたり献金貰ったりしてたけどそれも希望の為なのかな?」
「あ、あれはま、まあそうだな--」
「あっ! そうこうしているうちに帰ってきたよ。彼が来たら君達は絶望するだろうね。まあそれを乗り越えた先により強い希望が輝く為にも彼を乗り越えてみようよ!」
「おひさー! やあ元気にしてたか、みんな!
 あれ? どうしてそんな顔を……ウボァ! 止め、何、僕が、名、西多、って--」
 宇宙人鳩は自分がどれだけ酷いことをしてきたのかを全く自覚しない。故に党幹部にリンチをくらうのは必然の理。現実世界もこうなる可能性は浮上するのか?


 すまない。途中でナイフを手に取ることすら出来ない最低のヘタレを出して済まない。だってあのキャラは自分の中じゃ好きなキャラに入るくらい憎たらしいから仕方ないでしょ(苦)。
 話を戻す。今回の時事ネタは政治ネタが嫌いな人でも誰もがわかる歴代最悪の元総理大臣に振り回される自分の中では二番目に因果地平の彼方に追いやりたいブーメラン党の話でございます(一位は寄生虫にしてカルト政党頭がパーン党)。宇宙人鳩の何が最悪かは最近のクルクルパー発言ではありません。とにかく首相の座を降りても遺憾なく活動するところにあります、勿論無能という前提条件付きで! オザーリンとお遍路との総裁選でもこいつは何もわからずに二人の仲を取り持とうとして却って状況を悪化してるのにその時の事すら全く自覚がないから質が悪い!
 首相時代にしたってそうだ! こいつのせいでA国との関係が悪化したり、情緒不安定な発言ばかりをして我々に笑いと怒りを提供したり、口蹄疫でどれだけ被害が出ても自分はさも被害者であるかのように振る舞ったり、挙句の果てには陛下を政治利用したことを喜ばしい事なんて言ってのけるくらいだからもはや悪より最もドス黒い悪じゃないかと最近思うようになってきたよ(いや当たり前か)。
 なので独立総合研究所のボスが言ってるようにこんな発言ばっかして戦争でも起これば真っ先に死刑になるでしょう。つーかその前に死刑にするべきだろ! ブーメラン党とも共を道連れにな(怒)!
 話は変わりますが、ブーメラン党が政権の座に着く前の歴代最悪は眉毛です。それは誰もが不動のものだと思ってましたけど、まさか彼を上回る人材が二代立て続けに出るなんて予想できませんでしたね。それが宇宙人鳩とお遍路です。
 宇宙人鳩は散々語ったが、お遍路についても少し解説するとまあ談話でしょ! それから二年前の東日本大虐殺(天災じゃなく人災の割合が高い)! それから漁船衝突事件の隠蔽と船長釈放でしょ! まあ他にもたくさんあるけどこれくらいにしましょう。
 とにかく自分はブーメラン党と宇宙人鳩は一蓮托生でこの世から居なくなることを願いつつ時事ネタの解説を終えたいと思います。

 では二十二話の解説に入ります。今回は三部作の急に当たる話です。それゆえ進め方も終わらし方も急ぎ足です。主人公である参花を十五歳になったばかりでいきなり強くしたのはその為です。でないとどこで終わらせばいいか困りますので。
 なお参花が丸一日倒れ込むシーンは自分が倒れ込んだのとは何の関係もありません。あれにはちゃんと伏線を張っときましたので読めば倒れ込むのも当たり前です。済みません、そんなシーンだけに丸一日分を消費させて(笑)。あのシーンでは他にも複線を回収してますが、それはまあ説教臭いことなので敢えて説明しません。
 参花が異常に強くは成ってますがエピローグでも説明されているとおりあれは一日限定です。なので回復した後は元の弱い参花に戻ります。遠すぎる過去でも当たり前ですがそう簡単に強くなれたら基礎鍛錬は必要在りません(笑)。参花のことですので二十五の年には十五になったばかりの強さに近付いてるでしょう(つまりこれ以上の説明は無用なのです)。エピローグでも語るようにこれからもエリオットを目指します。
 ついでに拠点型の銀河連合はどうなったかを説明しますとあれは倒してもまた復活します。何故なら拠点型の中枢である心臓型は死ぬ前に数多の生命の雌を殺交尾し、劣化コピーや品種改良された銀河連合を産んでおります。その中で品種改良について例を挙げるなら参花の宿敵である指揮官型や百獣型がより戦闘に特化した形に産まれます。そうなるとこれから先を生きる全生命体はオカルトパワーだけに頼れなくなっていきます。奴等もまたオカルトパワーに目覚めてウェイブライダー突撃やらを出すかもわかりません(というか存在そのものがオカルトだろ!)。
 まあふざけるのは大概にしてエピローグを何故ああゆう形にしたのかを最後に説明しますね。ぶっちゃけた話面倒だったからでやったわけではありません。あれは一の次です。本当は神武人族の血統が連続し続けることで遠すぎる過去の最終局面に現われるモノを……まあ名前は出しませんが最終兵器です。その先は例えこの物語がメジャーになっても自分が墓の下に埋まるまで完結しませんので想像を大いに働かせて下さい。言いたいことはといえば神武人族が途切れることなく一兆年の先まで連続するのを表したかっただけですよ。よくわからないがそうゆう事にして下さい! え? 連続できない状況になったらどうするって? それはまずオーバータイムパラドックスにより有り得ないようになってます。以上で説明終り!
 これで第二十二話の解説を終えたいと思います。

 いやあ、三部作の癖して長い! 容量で計算したら天同生子の章を超えます。つーか進撃篇が長すぎたのが原因だ! 十一パートなんて作る羽目になった自分が悪いんだよ! つー事で次の話は五パートで納めますが、その次から三話分は九パートで納めなくちゃいけない忙しい話が続きますので次の話ではそれまでにウォーミングアップ的な意味の話になります。そこはよろしく! ちなみに主人公はいつも通り人族以外です。
 ではこれからのスケジュールを見て下さい。

 七月
 一日~六日      第二十三話 人生貸借対照表        作成日間
 八日~十三日     第二十四話 二十四時間の脱出劇     作成日間
 十五日~二十日    第二十五話 大空のトリ           作成日間
 二十二日~二十七日  第二十六話 海は広いな、大きいな    作成日間

 二十四話から二十六話は忙しいです。夏らしい忙しすぎる話になる予定。
 次はいつも通り七月七日の日曜日に更新します。では自分は明日玉砕されに行きます!
 友愛されないように夜道に気を付けて(恐)。

一兆年の夜 第二十二話 二つの星 覚醒篇(終)

 ICイマジナリーセンチュリー六十三年七月十五日午後六時二十五分七秒。
 天同参花はアラウン・アルティニムムによって救助される。奇跡でも起こったのか
心臓には命中せず、一の週の後に一命を取り留める。
(都合が良すぎる。こんな都合の良さは神様だって認めるかな?
 他にもあるとすれば僕が救助された日にボルティーニ団が大山ニャロ助率いる
烏合の衆によって何とか僕を含めて七名が生き残ることが出来たよ!
 起き上がってその話をユキから聞かされた時にはにわか信じがたいものだったよ。
まあその話の全容を知るのはもう少し後だったかな?
 ニャロ助さんがマンドロス町を置いて駆けつけたせいでまた銀河連合に食われた
からそこでもドタバタ騒ぎになってしまったよ。僕は格好の良さを見せようと回復して
すぐに戦ったけど元の弱い僕に戻ってて悔しかったな。僕は結局すぐに強くは成れ
ないって実感したよ。
 そこで僕は守の教えに戻って復習する意味を知ったよ。基礎強化は人生と同じく
終りは来ないということをね。再びマンドロス町を取り戻す戦いは一の月くらい
続いたかな? 多くの仲間が死んでいったけど『終・一に戻り順を追って繰り返す』を
実行する事で銀河連合をマンドロス町から完全に追い出すことに成功したよ。
 ありがとう、エリオット・ボルティーニ!)

 ICイマジナリーセンチュリー六十三年十月八日。
 武内人族のモルルカはボルティーニ団から脱退。
(マンドロス町を奪還する目的を完全に達成した以上仕方ないよね。それまでに
掛けた分のマンドロス硬貨をモルルカさんに渡したけど彼は亡き親友のスワンダ
さんの分を彼の実家に渡して欲しいと懇願したのよね。彼自身の足でやりたかった
けど故郷にいる病気がちな幼馴染のことが心配でそれが出来なかったので僕達に
頼んだよ。全くモルルカさんは礼に欠ける生命だよ。
 何せ彼が去った次の日に銀河連合が百以上でマンドロス町を襲撃したから
ギャレイ土さんやアラウンさんはどれほど苦労したか考えて欲しいよ。
 僕はその時、何もせずにただエリオットさんの教えに従う? いや、守と同じく
繰り返す意味を知ったよ。あれは守の教えと異なって教え通りにせずそこから
抜け出す発想を以て事に当たることを示してたという事実をね!
 だから守破離なのか? いやまだその意味を完全に理解できない。
 まだ僕はエリオットさんの強さに並んだつもりはないんだからね)

 ICイマジナリーセンチュリー六十四年十二月百二十日。
 ロージャ・メデリエーコフは参花とユキの結婚式を命を捨てて死守。その時、
齢三十五だった。
(結婚式は大変有り難いものなのにロージャさんが死ぬのは悲しい。僕は一体
どれだけの命の上に立つのだ? つくづく生き続ける辛さを感じたよ!
 ロージャさんなら仙者以外で六十まで生きるような雄だと思ったのに!
 それでも僕はロージャさんの死を大事にしないといけない! あの方は結婚式を
死んでも守ったんだ! これからもユキとは死ぬまで一緒であることを誓わないと
ロージャさん達に申しわけが着かないんだからな!
 そうか、ロージャさんはこう言いたかったんだな。
 『守とは死んだ後でも守り通す教えだ』って事をね。難しいよ、そんなの!)

 ICイマジナリーセンチュリー六十五年七月十三日。
 マンドロス町は完全に浄化された。だが真島ギャレイ土は度重なる戦いの後遺症
により三十五の若さで浄化された町を永遠に見る事は叶わなくなった。
(ギャレイ土さんはもう墓の下だ。でも彼が作った五名の子供は現在も見続ける。
 それはギャレイ土さんが最後まで突き通す想いの証だよ!
 そうか、それが破の意味だったんだね。突き通す、いや突き破るという意味。
 もしかすれば僕はこのマンドロス町を何かの切っ掛けがあれば突き破れるんじゃ
ないかな?
 町から市、そして……)

 ICイマジナリーセンチュリー六十六年一月十日午前八時五十分一秒。

 場所は大マンドロス市中央地区新神武聖堂。天同参花の間。
 齢二十五になったばかりである神武人族の青年は灰色の髪を腰まで伸ばす。
「髪を切るべきかな?」
「ええ、あたしよりも長いのは気に入らない!」
 齢二十五にして一の月と七日目になるアリスト人族の女性は肩まで伸びる水色の
髪を振り乱しながら答えた。
「あんまりカリカリしないでくれる? お腹の子が--」
 成人体型は一とコンマ三に満たず、鶏量は十七になる巨漢の青年は鳩尾に右肘
が入り、苦しそうだった。
「この感じは雄の子が出来そうだ、ね。グウグ!」
「あなたに似ていなければいいけど」
 人差し指の大きさよりも小さい両眼で青黒い瞳で女性の今にも産まれそうな腹を
見つめる青年はこう返す。
「ははは、ユキには今でも勝てないな」
「勝ってもらわないと困ります。あなたは天同の仙者ですよ!」
 鼻は今では獅子族に近いくらい剛胆な形となるものの、昔から彼の性根は弱い
ままだ。
「別に仙者のように振る舞える訳じゃないさ。生命はそう簡単に変わらないよ。
 いくら強くなっても心までは昔も今も同じさ」
 顎まで届く耳に、自分の拳が入る上下唇が小指より僅かに細い口をしながら彼は
不変の法則を信じる。
「変わらなくちゃいけない部分ってのもありますよ。例えばあなたへの呼び方とか」
「そうだな。僕は代わらないけどユキは大変だよな。生涯僕の妻だからな!」
 端整な顔立ちで妻であるユキ・ライダルの苦労を何とか察する。
「もうこんなところで喋る暇はないわ! さっさと行きましょう!」
「ああ、今日から国民と成る僕達の民が待ってるからな!」
 青年の名前は天同参花。愛する妻ユキと共に国民になる数百万もの生命の前で
こう宣言した!
「これよりマンドロス市は新国家神武として再生する!」
 国家神武の再生。水の惑星に再び国が誕生した。
『--離の教え
 初・教えから離れて自分だけの教えを築くべし。

 ここから先は守破離の教えが参花様を導く星と成りましょう。』
「……」
 参花はもう捨ててしまったエリオットの教えが詰まった紙を思い出した。
(『初・教えから離れて自分だけの教えを築くべし』を今でも実行します。
 その意味は僕なりの解釈かもしれないけど、国家神武を復活させることなのかも
知れない。
 全生命体の希望をもう一度この地に甦らせることが最後の教えによる本当の意味
かも知れない。
 いや、それしか考えられない!
 僕は命を燃やし尽くしてもこの教えを守り、突き通し、そして羽ばたかせてみせる!
 エリオット・ボルティーニという星を目指して僕は星と成る!)



 ICイマジナリーセンチュリー六十六年一月十日午前九時零分零秒。

 第二十二話 二つの星 覚醒篇 完

 第二十三話 人生貸借対照表 に続く……

一兆年の夜 第二十二話 二つの星 覚醒篇(九)

 参花はユキを抱えながら心臓型まで走り続けるが、その前に指揮官型が先回りをした!
「どうするの! 指揮官型と無数の血管。とても心臓型まで--」
「全体を観察する事は他者や銀河連合のみならず己自身の観察にも繋がる!
 僕は少し強くなったからそれを操縦する術をまだ知らないと言う事だった!
 だから--」
「そんな事言ってる……って襲ってきたわ!」
 指揮官型は逃げる以外の行動が取れない参花をユキ共々死なせようと持てる腕と足を駆使して攻撃!
 一方の参花は動きを緩める。
「ちょっ! それでは--」
 右隠し腕が参花の左脇腹に当たる瞬間--参花は流れるように左へ回避!
「ど、どう--」
 今度は左足が顔面に入った--それは幻覚だった!
「え? え? どうして指揮官型の背後に移動してるのよ!」
「こっちだ、僕達を食べたいんだろ!」
 参花は心臓型にわざと背後を取らせるように立った!
「わっ!」
「ごめん、ユキ! 指揮官型相手には姉さんの包丁で倒さないといけないんだ!」
 参花は刃の欠けた新式神武包丁を抜く!
「無理よ! 今のあたしの状態と同じよ!」
 言葉通りユキの肉体は限界を迎えた。故に立つ事さえままならない。
「だろうな! 無理だろうな!」
「『だろうな』じゃないでしょ! 本当に無理な事をするのは団長の望みなの!」
「そうだ! 僕はエリオットさんのようになる為にここまで来た!
 無理をするのは代々仙者の務め! 無理を押し通す!」
 参花は左に降ろしたユキの頭上に右手を翳す。
「何なの?」
「門忍姉さんは僕に過保護だったよ!
 いつもこんなおまじないをしたんだ!
 『頑張る事は嬉しい事。だから頑張りなさい』と。
 そしたら何故か--」
 不思議な事に限界を迎えたはずであるユキの肉体はみるみる生気を宿し、彼女は自然と立ち上がった!
「これ信じられる?」
「ほんの数の分だけだよ! それくらいなら--」
 銀河連合はそれ以上の会話を許可しなかった!
「のわっ! 身体が軽い!
 これなら--」
「さあ来い、指揮官型! 僕は敢えて利に適わない位置に立った!
 一瞬で決着をつけるぞ!」
 参花とユキは予報通りの展開を演じる!
 そして--
「もうすぐ心臓型の中に!
 けどこれが神々のお言葉だあああ!」
「ごめん、参花様!」
 ユキは何時の間にか心臓型にいる参花と指揮官型の近くまで逃げる!
 指揮官型は無数の血管に視界を阻まれ、参花の新式神武包丁を受け止める余裕を損ねた!
(気付かれた! このまま行くよ!)
 指揮官型は距離を誤った--刃の欠けた分だけ避ける間隔を外し、そのまま喉仏に刺さった!
「!
 けど、そのままああああ!」
 参花は無数の血管に絡まりながらも異常な力を最大限に発揮し、心臓型に血管ごと指揮官型をぶつけた!
 衝突した心臓型は指揮官型の隠し腕の尖った部分を含めて複数の穴を開け、そこから津波の如き血液を放出した!
「や……がああああああ!」
「参花さあああアアアアまあアアア!」
 二名は血液の津波に巻き込まれそのまま意識を暗闇へと移動させた……。

 未明。
「んん、ああ?」
 参花とユキは眩い夕日に目が眩む!
「さん、かさ、まあ」
 声が聞こえたのか参花はユキを探した!
 すると褌に両手を掴みながらうつ伏せに倒れ込むユキの姿があった。
「ユキ? 無事な、のか?」
「さんか、さ、ま?
 参花様! 生きてらし……って何変な物を掴むのよ!」
 ドワオ--という声を出しながら参花はユキに右手正拳突きを顔面に受けた!
「よ、かった。ユキが無事で!」
「よくな……あれ、力が?」
 ユキはとっくの昔に肉体の限界を迎えた為、およそ夜を過ごすまで立ち上がる事は叶わない。
「参花様。恥ずかしながらもうユキ・ライダルは立ち上がる事は叶いません!」
「済まない、ユキ。もう少し早く来ていればこんなに……え?」
「参花……様?」
 参花は目の前に倒したはずの指揮官型が両足と右手のみとなりながらも二名を死なせようと静かに歩を進めるのを!
「な、んで?」
「くっ! 残ってるのはもう使い物にならない二式雄略包丁だけか!」
 それでも参花は鞘から錆びた包丁を抜くと両手に持って最後の突きを放つ!
「うおおおおおおお!」
「あた……え?」
「う……グオ!」
 参花の突きは指揮官型の眉間に届く前に股間から隠し足で参花の鳩尾に当てた!
(ぎん、が、れん、ごうを……。
 はあいての、つ、ぎ、のこう、ど、うを、し、るこ……)
 参花の意識は地面に倒れると同時に黒くなる……はずだった!
『俺のようになるな! お前は天同参花!
 エリオット・ボルティーニでもなければ天同棟一でもない!
 離の教えを今こそ思い出せ!』
 ほんの僅かではあるが参花は見ず知らずである兄棟一の幻聴によって意識を繋げた!
 その一瞬--左手で地面を抉るように叩きつけると左手のみで指揮官型の頭上まで飛び上がる!
「天候を知る事はアアアア!」
 指揮官型は余裕を持って迎撃しようとした瞬間--お日様は参花に味方する!
「天の神々を味方につけることを意味するうううう!」
 光で視界を阻まれた指揮官型に参花は飛び脳天斬りを放ち、そのまま直撃!
「指揮官型を斬る前に包丁はあちこちにち--」
 だが、指揮官型は脳天に受けた事で先ほどまでの傷と相乗して立ち眩みした!
 参花は壊れた包丁を離すと右手を熊手状態にしながら神武包丁の刺さった咽目掛けて--
「今度こそ楽にします!」
 当てた!
「死、んだけど……参花様?」
 指揮官型は活動を停止--最後の抵抗を試みたのか隠し足は臍に、右手は左胸に刺さった!
「グアアハア!」
 参花は吐血しながらもそれぞれ引き抜くとユキの元に歩き出す。
「参花様! その傷では--」
「な、にを言うか!
 こ、れぐら、い……グブ!」
「良くないです参花様!
 このっままじゃ死んでしまいます!」
「タメ口で良いってギャレイ土さんが、ガッハ!
 言ってたじゃ、ないかあ」
 参花は血だらけになりながらもユキを抱っこすると力を振り絞って光が漏れるところまで登るとそのままユキを投げる!
「参花、様ああアアア!」
 参花は投げ終えると中に戻るように落ちてゆく……!
(これでいい。僕の命はここで尽きる。
 後、はまあ任せていいかな?
 働かない事は指揮官にとって必要な事。無闇に働くと仲間が成長しない。一命前に成れない! 僕はここでは働かずに後はアラウンさん達にユキを救助してもらおう。
 はは、何だか、さむ、くなてきたよ。これって死んでいく過程なの?
 こ、恐いよ! 暗いよ! 助けて姉さん! 門忍姉さん! 狭間姉さん! 弐高姉さん!
 僕を一名にしないでよ! お願いだから助けよ!)
 参花は迫り来る死に恐怖するが--
『折角格好が付くと思ってたけどやっぱり参花は参花なのね!
 はあ、どうしようもない弟を私は持って辛いわ!』
「こ、の声は?」
『だけど私はこの世で一番参花が好きなのよ!
 だからこそ参花には生きてお嫁さんを貰い、たくさんの子供を作り、そして私達の生きた証をこの先もこれからも受け継がないといけないのよ!
 だからあなたは生きなさい! こんな無理な状況であってもあなたは生きなさい!
 天同だからだとか仙者だからとかもうそんな事言うのはやめるから生きなさい!
 それが私、天同弐高の死んでもなお伝えたい遺言なのよ!』
「にた、かねえ、さん!」
『自分からも伝えなければならない事がある!
 自分が死んだのは心身共に目が見えなくなったからだよ!
 でも参花様はそうじゃない! あなたは見えるじゃないか!
 自分には見れないモノを! それを生かさずにどうして自分の真似事が出来る?
 あなたには自分以上のモノに自信を持ちなさい!
 それが自分の教えた離なのだから!』
「えり、お、とさ、ん?」
(それから僕はイズモノキミさん、ジンバルさん、ライ子さん、ピネラさん、リアクターさん、スワンダさん、フル太さん、里香さん、それに狭間姉さんや門忍姉さんやその他いろいろな幻聴を聞いたかな?
 そして最後に--)
『想念の海に旅立つのはまだまだ早い!
 参花は生きるのだ! 俺達以上に長生きであれ!』
(無理な相談だな……)
 参花は自然と笑みが溢れだす。
 それは生きる選択をした証……!

一兆年の夜 第二十二話 二つの星 覚醒篇(八)

 未明。
 場所は拠点型心臓部。
 ユキは無言で両眼を開けた。
「……またあたしは縛られてるんだ。銀河連合に交尾させられずにそのまま」
 およそ三の日は何も食べないせいか、ライダル家伝統の威圧は出せない。
「もうすぐ死ぬのかな? だったらあたしを死なせてよ。リンボルさんを死なせたみたいに」
 ユキは生きる活力さえ湧かない。空腹がそうさせたかのように。
 ユキの言葉を聞いたのか視線の斜め右から無数にも渡る血管が激しく動く。
「ああ、あれは?」
 現われたのはシャラムを死なせた指揮官型。けれどもユキの心に怒りは湧かない。
「そうか。あたいはシャラムさんを死なせたあの銀河連合に?
 さっさとあたいを死なせて--」
『それはいけない』
「あれ?」
 ユキはエリオットの声を聞いた。
「幻聴かしら?」
『自分と始めて会った事を思い出せ、ユキよ!』
「二度目だわ! あたいはもうすぐ死ぬからまだ未練を残して--」
『他とえなにも口に出来なくても生きる希望だけは意地でも離さないと言ったのは誰なのだ?』
「もういいでしょ! 幻聴の癖にあたいにそこまで説教するなんて!
 雌は心変わりが早いのよ! 今だって生きる可能性は残って--」
「諦めるな、ユキ!」
「五月蠅いわね! あたいの頭はそこまでおかしく--」
「いや、おかしくないよ!」
 視線の斜め左から見覚えのある灰色の髪をした少年が現われた。
「まさか参花様?」
「無事だ……済まないユキ! ちゃんと確認できないよ!」
「その頼りなさそうな事言うの参花様だ!」
 ユキは手足を動かそうにも縛られて出来ない。
「あれはエリオットさんを死なせた銀河連合!
 だが今は--」
 参花は成人体型三十あるユキの所まで一瞬で駆けつけると鞘から新式神武包丁を抜き放ち、ユキを解放した!
「さ、んかさまあ!」
「恥ずかしいよ、やっぱり!」
 参花はすぐさま褌の状態になりユキに服を着せた!
「これで何とか……うっ!」
「何が何とかよ! 参花様が裸になってどうするの!
 あたしは大事な部分だけ隠せたら後は--」
「ユキ! どうやら指揮官型は僕達を--」
 ユキと戯れている隙に指揮官型は雄略包丁に似た物を握り、それを参花の頭上目掛けて振るった!
 参花は新式神武包丁で防御した!
「今日の僕は強いぞ! 今度は生かす気はない!
 『九・考えを怠るのなら守の教えに戻って復習するべし』を実行中だ!
 僕は今、考えが頭によぎらないんだよ!」
 参花は力を込めて指揮官型を吹っ飛ばす--指揮官型の左足が先に着く前に参花は飛び込み、着地と同時に攻撃を激しくする!
「狭間姉さんの形見は残り一回しか斬る事が出来ない!
 一撃で倒すぞ、指揮官型!」
 参花は防御する暇も与えず指揮官型を攻撃するが、全て果物包丁の刃先で避ける!
 参花の攻撃に隙が出来たと踏んだ指揮官型は左から隠し腕を出して心臓部目掛けて攻撃!
「当たるか!」
 参花は左逸らしに回避--同時に突きを繰り出すも指揮官型は歯で掴む!
「やるな!
 だからどうした!」
 参花は力一杯指揮官型を持ち上げると半月を描くように地面に叩きつけるが--
「そうか! ここは銀河連合!
 でも離せるなら一気に後ろに下がろう!」
 言葉通り参花は成人体型十くらい後ろに下がった!
「ユキ……!」

 一方のユキは参花が現われたところへと走る!
「これは参花様を置いていく事じゃないわ!
 安全なところに避難して参花様を見守らないと!」
 だが、そこからは無数の血管がユキを交尾しようと襲いかかる!
「わっ! ひえ!」
 ユキは思わず反対方向に逃げてゆく!
「何なのよ! 銀河連合はどこまであたしを弄べば気が済むの!
 え? まだ襲いかかるの?」
 ユキの前方に同じような血管が襲いかかる!
「こんな諺を聞いた覚えある!
『前門の虎、後門の狼』って。この場合虎も狼も銀河連合になるわ!」
 独り言を言いながらもユキは無数の血管による交尾を避け続ける!
「参花様が気になる!」
 ユキが見た参花と指揮官型の戦い--それは成人体型三十以上離れても目で追いつけないほどの攻防が繰り広げられる。
「うわっ! あひゃあ!
 参花様はいつもの参花様じゃない! もしかして……うわっ!
 このままじゃいずれあたしは!」
 ユキはそれでも回避し続けるが三の日くらい拠点型から放たれる匂いと空腹によって限界を迎えようとしていた!
「はあはあはあ」
 その時だった--ユキは自分が縛られた場所を見てある考えが浮かぶ!
「縛られた場所の近くに大きい剥き出しの心臓があったわ!
 はあはあはあはあ、も、しかした、ら……」
 ユキは走ってゆく!

 参花と指揮官型は未だに決定打を下せずにいた!
(エリオットさん! あなたはこんなに強い銀河連合と戦ってたんですね!
 ようやくわかりましたよ! 指揮官は常に強くとは部下よりも弱いと示しが付かない! だから強いんだよ、この銀河連合は!)
 参花は隙を突いて横薙ぎを仕掛けるが--右胴体より出た隠し腕と左腕で横白刃取りをするとそのまま刃を破壊した!
「そんな……」
 意気消沈した参花を見た指揮官型は包丁で参花の首を斬ろうと大きく振りかぶる!
「参花様ああ!」
「ユキ?」
 参花はユキの声を聞き、後ろに飛んだ--それを見た指揮官型は振るのをやめてゆっくりと間合いを詰める!
「ありがとう、ユキ!
 ようやくわかったよ! 仲間を元気づける事は勝ちやすい方向に転ばす為!
 勝負は心の強弱で決まるから元気付けをさせないと--」
「参花様! 指揮官型よりも先に心臓型を倒す事を……うわああ!」
「ユキ! 多数の銀河連合を相手にするな!
 一名ではどこまで強くても結局は一体しか対応できないんだ!
 何故なら心は一つしかないんだよ! 一つしかないのにどうして多数を相手にできる? 出来ないんだよ! 全ての物はそうゆう風に出来てるんだ!」
 参花は刃の欠けた新式神武包丁を鞘に戻すとユキの方にすかさず駆けつける!
「参花様! 確かにあたしは……うわあ!」
 参花はユキを仰向けの状態にしたまま両膝と右脇を通すように抱えた!
「恥ずかしいよ、参花様!」
「一つ飛ばして頭を狙う事の意味。それは頭がやられると他は統一した行動が取れなくなり散らばってゆくからだよ!
 だから僕は…・・うわ! どうわ! 血管が多いなあ!」
 あんまあり早く、うごか、ないデエ!」
「ごめん、ユキ!
 話の続きだけどだからこそ僕は指揮官型を倒す為に心臓型を倒す!」

一兆年の夜 第二十二話 二つの星 覚醒篇(七)

 十の分が経過。
(攻撃に踏み込めない? いや違うかな?
 と、とにかく言える事は踏み込めば確実に死ぬから里香さんもあの獅子型も足を出せないんだ!)
 里香は鋭棒を僅かに持ち上げる。対する百獣型は後ろ足同士を更に広げる。
(わからない。あれじゃあ動きが鈍くなる気がするんだが?)
 それから二十の分が経過。
 参花と里香は激しい匂いを気にしながら百獣型の出方を窺う。
(前の足は互いにくっつけ合うけど後ろはくの字からハの字になってるよ。
 僕ならあそこで攻めたいけど里香さんとしては攻めるべき間隔じゃないのかな?
銀河連合はいつだって何かを仕掛けるから。
 それにしても匂いがきつい! このままじゃ僕は--)
「弟君?」
 え--と参花は突然里香から話しかけられたのでどう受け答えしていいか迷う。
「ユキちゃんは必ず救うのよ!」
「はい?」
 その言葉を最後に里香は百獣型に視線を集中--そのまま肉体は前に進む!
「里香さん!」
「はあ!」
 里香は百獣型の脳天目掛けて鋭棒を押し込む--踏み込みの速さに百獣型は避ける事も叶わない!
「やった!」
 二名が思った瞬間!
「が、ああ?」
 貫かれたのは里香の方だった--百獣型に当たる寸前で鋭棒は止まり、どこからともなく運ばれてきた鋭棒が里香の右肋から左脇にかけて貫通!
「あ、あれ? 何であたいが?」
「り、か、さん?」
 里香はそのままうつ伏せの状態で倒れた!
「里香さあああん!」
 参花が里香の側に駆けつけたが、既に想念の海へと旅立った!
「里香さん! ねえ起きてくれ!
 里香さん! 里香さん!」
 里香を必死で甦らせようとする参花の前に里香を死に至らしめた血管が三本、絡みつこうとした!
 その時--三本とも横に真っ二つにされ、大量の血を周囲に放出!
「この鋭棒はリアクターさんの物。
 という事は獅子型ああ! 里香さんの代わりに僕は蘇我鋭棒をふるう!」
 参花は刃毀れを起こした雄略包丁を鞘に戻すと里香が持っていた鋭棒を両手で握ると先ほど里香がやったことと同じような構えをした!
(鋭棒の使い方はわからない! でもわからなくても僕はリアクターさん、里香さん、そして門人姉さん、狭間姉さんに弐高姉さんの仇を討つには鋭棒であの獅子型を討つしか五名の供養を! あの獅子型に死なれた多くの生命の供養が叶わないんだよ!)
 参花は百獣型に突進!
 だが、参加の頭上まで飛ぶとそのまま関節技を仕掛けた!
「ぐ、ああ、ああ!」
 両後ろ足で首を極められた参花は左手で離そうと抵抗する!
(くる、し、い! こ、の、まま……死ぬかああ!)
 参花の左手に力が込められた--それは百十型の後ろ右足を粉砕骨折させるほど異常なモノだ!
 粉砕骨折のあまり参花を話した百獣型は残りの足で参花から離れようとするが--
「逃がしてたまるか!」
 参花は振り返るなり成人体型十九まで離れた百獣型に一瞬で近付き鋭棒を脳天に放つ!
「当たらないか!」
 百獣型は右に傾く事で回避し、そのまま逆立ちで左後ろ足蹴りを放つ!
「避けるかよおお!」
 参花は左の裏拳で左後ろ脚の骨を粉砕!
 百獣型は参花の持つ異常な力に身震いをする!
「これが僕達に振ってきた力の正体だ!
 銀河連合はその力で僕達を死なせてきたんだ!
 その代価をここで僕が支払ってやるんだ!」
 参花は真っ直ぐ百獣型に鋭棒を放つ!
 百獣型は脳天から臍にかけて貫通し、参花に与えてきた悲しみの代償を払った!
「はあはあはあはあ、やっと僕は姉さん達の魂に報いる事が。
 姉さん達に報いる事が出来、たんだ、はあはあ」
 参花は涙を川の流れのように溢す。それは百獣型によって死なれた生命への鎮魂の涙と成る。
(門忍姉さん、狭間姉さん、そして弐高姉さん。
 僕はまだ戦いを終わらすわけには参りません。
 これから僕は大切なものを救うべく足を踏み出さなければなりません。
 それまで僕は姉さん達の所に参る事は叶いません。どうか見守って下さい!)
 参花は百獣型の死体と血管に一礼をし、里香の死体を仰向けにすると持っていた蘇我鋭棒とリアクターの遺品である鋭棒を斜め十字に胸に翳す。
 そして十の分の間、土下座をすると里香の死体を背に歩き出す。
(待っていろ、ユキ!
 今、必ず君を助けてみせるよ!)

一兆年の夜 第二十二話 二つの星 覚醒篇(六)

 午後二時七分七秒。
 場所は旧トガ由紀道旧国家神武前。
 真島ギャレイ土は足斧を三回取り替えながら銀河連合二体同時に相手をする!
「オラア! くうおのお!」
「ギャレイ土だ!」
「加勢すうるのかあ、アラウンん!」
「当たり前だ! 参花様の指令通りに戦うんだよだ!」
「とか言いなあがら銀河連合を増やあすんじゃないい!」
「すまないだ!」
 ギャレイ土とアラウンは指令通り有利な数になるまで退却し続ける。
 一方のモルルカとロージャは--
「ダンディイイ!」
「また一名の命が! ワシが先に行けばどれだけ--」
「勝手に死ぬのは御免だ! ところで坊主はちゃんと国家神武の中に入ったのか?」
「『坊主』じゃないだろ? 『参花様』だ!」
「だからその『参花様』はちゃんと国家神武の形をした銀河連合の中に入ったのかと聞いてる!」
 モルルカは手斧で成人体型七の所にいる燕型を狙い撃ちしながらロージャに聞く!
 ロージャは二式雄略包丁でジンバルに類似した蟷螂型と鍔迫り合いしながら--
「恐らくは……はっ!
 恐らくはユキの所に向かった!」
 一刀両断した後、包丁が使い物にならないのを確認。
「そうか! くそ!
 また刃毀れかよ!」
「ワシも同じだ! カブ助が生きてるんならあやつから取り替えないと!」
「生きてる保証はないぞ!」
 そう言いながら二名はカブ助がいると思われる方角に退却した!
 そのカブ助はフル太と共に逃げ続ける!
「いくら逃げてもね、また数を増やすね!」
「僕はもうー逃げたくーない!」
「早まるでないね、フル太殿ね!」
 古田は足を止めると背負った四足式雄略包丁を口に咥え、振り返りながら十体もの銀河連合に飛び込む!
「ウオオオオオオオオーオオオーオオ!」
「フル太殿ねえええ!」
 叫びも空しくフル太は銀河連合二体を一撃で倒すがその時に刃が折れ、残り八体に集中砲火を浴び続ける!
「がああーああー! 兄ー者の仇ーは、う、てな、くーと、もー」
 フル太の前右足と右耳は食われてもなおフル太は折れた包丁で抵抗する!
「フル太殿をやらせないねえええ!」
 カブ助は果物包丁を咥えるとフル太を救助すべく群れの中に入る!
「がああね!」
 右翼、瞼の上が傷つきながら包丁を離すとフル太の尻尾を掴み、そのまま群れの中から脱出!
「あ、ああー、カーブ、助ー?」
「うああああんんん!」
「そう、か……」
 カブ助が重傷のフル太を安全なところまで連れて行くとその場で出血の止まらない彼を横に寝かせて応急措置を開始するが--
「はあ、はーあ。た、いちょうはー?」
「喋らないね! 今フル太殿を助けるね!」
 彼の容態は重傷から重体に変わる。それでもカブ助は彼を助けようとするもののやがて--
「あ、らたーあに、じゃ。い、ぁ……」
「だから喋らないね、フル太殿ねえええ!」
 そのまま意識を向こう側へと追いやる。
「しっかりね、しっかりね、しっかりしてくれねええ!」
 傷口を防ぐものの時既に--
「ここにいたか、カブ助! 肝心な時に道具袋を置いて……まさかフル太は?」
「お、おい! フル太はどうした? 腰砕けをする雄じゃないはずだぞ!
 俺達に何とか言え!」
 ロージャとモルルカが駆けつける時、事既に切れた……。
 一方のギャレイ土とアラウンは刃毀れを起こしながらも有利に戦いを進める最中--
「んん? まさかフル太までえ!」
「……」
 フル太の死を感じた!
「もう斬るうことも出え来ないぞ!」
「また退却しな……くっだ!」
 五十を上る数に包囲された!
「俺達いの命はあここで尽きいるのおか?」
「……腰砕けなことを言っていいかだ?」
「何だあ? 言ええ!」
「里香を見かけないのだがだ?」
「!
 そう言えばあ里香はあ国家神武そのものおの銀河連合の中にい入いっていくとおころを見かけえたな!」
「それを早く言えだ!」
「為を張る口はあいい加減やめえろ!」
「ギャレイ土が言える事かだ!」
「それよりもどううする?」
「ああだ。抜けてゆくしかだ、ないなだ!」
 二名は両眼を静かに瞑る。十の秒より後、息を合わせるように同時に開く!
「「があああああ!」」
 二名それぞれが対になる方向に突撃してゆく!




 未明。
「ん?」
 参花は目を開ける。そして、ゆっくりと上体を起こして体中を触り始めた。
「服はあるし、狭間姉さんの遺品も僕の所持するものもあるな」
 そのまま両足でまっすぐ立つ!
「それにしてさっきから匂いが激しい! 一刻も早くユキを救わないと頭がおかしくなるよ!」
「同感ね!」
 里香の声がしたので振り返ると--
「うわっ!」
「そんなに驚かないの。といっても弟君を遊んだあたいが良くないけどね」
 里香は残り五本の物部刃を容れた成人体型一に満たない籠を背負って右肩に望遠刀、左手に蘇我鋭棒を持って拠点型の中に入った。
「そんなに持って動きは--」
「大丈夫よ! こう見えて中条の雌はライダルの雌に引けを取らないくらい力持ちなんだからね」
「何だか里香さんを見てると--」
「何? 何か言いたそうね」
「狭間姉さんと接してるみたいだよ!」
 里香は右眼の斜め左下にあるほくろを右指で掻いた。
「じ、実は狭間に似てると言われるのはあんまり……!
 弟君! 後ろ!」
「何? 里香さ--」
 参花に背後に百獣型が前左爪で首を掻ききろうとした!
「危ない!」
「わ!」
 里香は望遠刀を降ろしてすかさず右踵蹴りで参花を吹っ飛ばし、百獣型の前左足を右手で掴むと勢いを利用して投げ飛ばした--百獣型は捻り三回宙返りをして四本足で着地!
「運動神経が良くて怒りが湧くわ!」
「あれは……姉さん達を死なせた獅子型!」
「何故わかるの?」
「だ、だってあの銀河連合の首に掛けてある骨で出来た首飾りが証拠だよ!」
 百獣型は参花の言葉に反応するように首飾りを舐め回した!
「百獣型が狭間を……あたいの劣友を死なせたのはあんたなのね!」
 里香は籠を降ろすと鋭棒を両手に持って右側面の体勢で刃先をやや下に降ろすよう構えた!
「里香さん! 僕だって--」
「弟君! これはあたい自身の問題! あたいは一対一で百獣型を倒す!
 狭間の仇を! 劣友に今度こそ見返す為にあたいは百獣型を倒すのよ!
 手出しはしないでね!」
「里香さん……」
 里香の決意を聞いた参花は鞘から手を離した。
(それにしても気になる事がある。リアクターさんの鋭棒はあの獅子型に刺さったもののはず。なのにどうしてそれが見かけないのかな? 銀河連合は僕達の武器すらも自分の都合で使うはずなのに!)
 二名は百獣型に目が集中してるせいで気付かないが、辺り全体を眺めると血管に紛れてリアクターが持っていた蘇我鋭棒が百獣型の側に近付く……。

一兆年の夜 第二十二話 二つの星 覚醒篇(五)

 七月十五日午前六時零分零秒。
「ふああああ」
 天同参花は十五の年になった。
「おはようございますだ、参花様だ!」
「おはよう、アラウン」
 参花は元気一杯だ。
(では、ゆくぞ!)

 午前九時零分零秒。
 全ての仮設民家は畳まれた!
「お腹の虫は鳴ってないか!」
 参花は十九名全員の満腹状態を確認。
「……よし!
 ではこれよりボルティーニ団はユキ・ライダルの救助に向かう!」
「「「「「「オオオオオ!」」」」」」
 周囲成人体型十以上響く雄叫びを上げながら一行は征く!
(僕は僕の赴くままに進むんだ!
 例え僕の命が果ててもユキを救わなければならない!
 無事でいろ、ユキ!)
 ユキという星を救うべく天同参花は一日という短い時間で自らの命の炎を燃やし、星へと輝かせる!

 午後一時零分零秒。
 南から北にかけて風が強く吹く不安定な天気。
「あれえ、があ、国家神武うなのかあ?」
 二十名は国家神武の成れの果てに驚愕した--まるで生き物のように蠢く!
(恐いのはわかってる! 銀河連合は僕達の鏡!
 いつだって銀河連合は僕達の出来ないことを平然と行う鏡越しの存在!
 エリオットさん! もうすぐあなたの側に往く僕をどうかお叱りを!)
 参花は両眼を静かに閉じる。十の分経っても開けない。
「坊主! 大きすぎる銀河連合から数十が出てきたぞ!」
「中にーは……え?」
 参花以外の団員はその姿に恐怖を感じた!
「あ、あれは、何?」
「僕だって聞きたいね! あね、あね、あれは正にね、正に--」
「イズモノキミ? 何故イズモノキミがこっかに--」
「よすんだ、スワンダ!」
 参花はスワンダが見るに堪えない惨状になっても眼を閉じる。
(ごめん、スワンダ! 僕はまだ一兆年の神々の意志を聞けないんだ!
 お叱りは僕の命に代えても引き受けるから!)
「参花様だ! いつお指示を為さるのですかだ!」
 それでも参花は眼を閉じる!
(僕は未だに覚悟を決めない!
 そんな雄が仙者を務まれるか! どうか神々よ!
 あなた方の考えを僕にお聞かせ下さい!)
「こいつうううう!」
「さすがはイズモノキミ殿を真似た銀河連合! 剥き出さずにワシらとやり合おうんとは!」
「感心できる相手? あたいが相手してるのはリアクターに似た銀河連合!
 なんて棒捌きなの! どうしたらリアクターの動きを真似れるわけ?」
「スワンダの仇! 坊主が今、神々の意志を聞いてるんだ!
 ここをやらせるか!」
「うおおおおお! 真島ギャレイ土をお嘗めるうなああ!」
(みんなが戦ってるんだ! 何とか言って下さい!
 このままではみんなの為にもなりません! どうかどうかどうか……)
 その時だった--参花が見た光景は黒と灰の色から、赤く青い色、やがては想像の海である桃を超えた色に変化。そこから映し出された光景は水色が必死に赤く細い何かから逃げてゆく様子を描き、青く白い何かがそこで黒く赤い色の無数もある枝のような何かと戦い、そして--
(……これが結末? だったら、僕は神々の意志通り命を運ぶ!)
 参花は眼を力一杯開けた!
「これは……イズモノキミさんにジンバルさん! それにピネラさんや他の団員までも!」
 銀河連合は死んだ団員の姿を真似て今を生きる団員達を襲う!
(どこまで僕達を弄べば気が済む!
 だからってここで怒りに任せられるか!
 僕は……)
「僕はそれでもユキを救うんだああ!」
 参花は叫び声を上げると、国家神武に向かって進む!
「参花様だ!」
「ようやあく決意しいたのでえすね!」
「今の声はきっと狭間は喜んでるわ、落ち込みながら!」
「遅いでーすよ、参花ー様!」
「スワンダが死んだ後に決めるな、坊主!」
「参花様は覚醒成されたのね!」
「ワシらが参花様を援護するん! どうかワシらに指示を!」
「生き残ってる団員に告ぐ!
 一名で戦うな! 銀河連合一体と戦うなら二名以上で戦うんだ!
 出ないと死んでしまう!
 いいか、二名以上で銀河連合一体と戦え!
 いいな!」
「「「「「「オオオオオオオオオオ!」」」」」」
 十二名となった団員達は指示通り二対一で戦い始めた!
「一対一は僕がやらせてもらう!」
 参花の動きは徐々に加速してゆく!
「来たか!」
 六対から成る百足人型の銀河連合が地中より参花を食らおうと出てきた!
「斬りたいが、これらは姉さん達を死なせた獅子型との戦いに備えて温存する!」
 そう言いながら参花は百足人型の攻撃を避けると同時に二対目の頭上を左足で蹴り、その勢いで拠点型より成人体型十まで接近!
「イデエ! 無理はしないと書いてあるのに!」
 そう言いながら足を止めず更に加速!
「参花様だ! 我が国家神武の中まで担いで征きますだ!」
 勝手に参花の両肩を掴んだアラウンは向い風に乗って拠点型より成人体型三まで近付く!
「あれは鳥系の銀河連合達!」
 その数は三十以上!
「ここまで、のようです、ねだ!」
 力を使い果たしたのか足を離した!
「ここから先は--」
 参花は拠点型の周りにある血管に両の腕で掴むと勢いのまま登ってゆく!
「参花様だ! どうかご無事でええ--」
 アラウンは三十三もの銀河連合の群れに入ってゆく!
(アラウンも無事で!)
 参花が掴んだ血管は上下左右に揺らしながら参花を振り落とそうとする!
「うあああああ! 離して、なああるかああ!」
 参花は勢いに乗って誓うにある別の血管に飛び移る!
(今だけだ。今だけ僕は強くなる!
 ユキを助ける為なら僕は今だけ強くなってみせる!)
 血管から血管に飛び移りながら参花は拠点型の中に通じる穴を発見!
(あれなのか? もしかしたら中に入って縮むんじゃないのかな?)
 参花は銀河連合の中に入ると身体が縮む話を知っていた。
 それでも--
「それでもユキを助けるのならいつだって縮んでやるさ!」
 参花はその穴に飛び移る!
(暗い! 恐い!
 でも……『虎穴にいらずんば虎児を得ず』だ!
 ユキを救う為なら僕は銀河連合の恐ろしい体内にだって入るんだ!)
 真っ暗闇に落ちてゆく……。

一兆年の夜 第二十二話 二つの星 覚醒篇(四)

 七月十四日午前九時二分四十二秒。
 場所は旧トガ由紀道。二十の仮設民家が平行四辺形を描くように立ち並ぶ。その中心にある独特の形をした仮設民家。
 天同参花は毛布にくるまれ、仰向けで濡れた手ぬぐいを額に当てながら寝込む。
「速くしな、いとユキが--」
「そうはいきませんだ! 参花様がそんな状態で進行すればどれだけ式に影響を及ぼすかお分かりですかだ!」
 看病をするのはアラウン・アルティニムム。他十八名は銀河連合の奇襲に備えて動きやすいように配置。
「ごめん、みんな!
 僕が雨、に打たれな、がら、身体を拭かな、かったからこ、んな事に!」
「お喋りは身体に影響しますだ!
 今は我が団長の遺言をお読みになってだ、その都度指令を下しますだ!」
「で、でもギャレイ土さんは言うこ、と聞くか、な?」
「一応だ、『周りをよく観察してくれないかだ?』と提案したら聞いてくれただ」
「よ、かった。『六・全体を観察するべし』は、実行され、てるん、だね」
「それから里香殿にはだ、『銀河連合がどうなったか見てきてくれないかだ?』と提案したら聞いてくれただ」
「『七・銀河連合の行動を観察するべし』は、実行され、てるんだ」
「お喋りはここまでにしましょうだ!
 今日中だ、参花様は寝て下さいだ!」
「そ、うしよう、かな?」
 面倒だなだ--とアラウンは小声で呟く。
「ご、めん……」
 参花は謝罪の言葉を口にするとそのまま眠りに落ちる。
(『八・働くな』を実行中。みんなを信じよう。
 でないと迷惑をかけて……)
 参花の意識は黒い穴に落下してゆく……。





 未明。
 ユキとリンボルは駆けてゆく--赤い世界を!
「はあはあ、も、もう限界が来てる、かな?」
 ユキはリンボルから落豚--右うつ伏せに倒れ込む!
「だ、だいじょう、ぶ?」
「だいじょう、ぶじゃない。お腹の虫が鳴りすぎて、も、う無理!」
 ユキの両頬は徐々に直角を描くように萎む。それはリンボルも同じだ。
「わ、わたしも、もぶ限界が」
 リンボルの前後両足にかかる筋肉は立つのも辛くなる。
「いつ、に、なったら出口が、見え、るの?」
「そ、ぶ、前にここにいぶ、心臓の銀河、れんご、うがわ、たしを」
「え? ど、ど、どうゆうこと!」
 ユキは自分の見知らぬ情報に思わず両腕を立てた!
「お腹はすきすぎてもう動けないけどそれだけは聞きたい!」
「な、何をを--」
「リンボルさん!」
 ユキは一族代々伝わる威圧感でリンボルを圧倒させた!
「ユキちゃん! まさかこの話を--」
「早くして! それを聞いたら直ぐ倒れるから早く!」
 とても倒れていた者の言葉ではない!
 とうとうリンボルは--
「わかっぶわ! この話を聞ぶど恐怖しないぶね?」
 心臓型の銀河連合に関する話を始める!
「ここは私を逃がどくれぶ者の話では拠点型銀河連合の体内。
 私達は拠点型の産む道具としぶ扱われぶわ!」
「う、む道具?」
「言葉にすぶのは気分のいい事じゃなぶ。
 でもそぶとしか考えられなぶわ! だって私達はこうしど裸にされてぶのよ!」
「ええ、成り余らない部分まで隠させないんだから!」
「恥ずかしくどお嫁に行けなぶなるわ!」
「同感!」
「そ、それよりもどうして私達を産ぶ道具にするど?
 それは推測でしかだぶけどより強い銀河連合を生み出す為なのかぶ?」
「かぶ? はっきりしないわね!」
「あまり生意気な口を利かなぶでね。好きな子に好かれなくなぶと得しだいわぶ!」
「うっ!」
「良い子。ちゃんと聞いどくれぶね」
「そ、それより話の続きを聞かせて!」
「わかっぶわ! 拠点型はいかにして私達を産む道具にすぶかをね?
 それは心臓型が--」
 それ以降リンボルが口にする事はなくなった--突如背後から血管が成り余らない部分から子宮を貫き、その勢いで口まで届く!
「あ、れ? 腰砕けたことなって?
 目を瞑ろう!」
 ユキは目の前の光景を信じないが、再度眼を開けても同じものしか映らない!
「あ、ふ、あふ!
 い、い、いま、いま、いますすぐに、に、に」
 リンボルの口から溢れんばかりの血が滝のように流れ出すのを見ながらユキは恐怖心を必死で抑えるしかなかった!
「ややや、と--」
 ユキが立ち上がるとリンボルを貫通した血管は彼女からゆっくりと離れる!
「見ちゃいけない! に、に、げないと--」
 ユキは血管に背を向けて腕立て伏せを一回した直後--飛ぶように走る!
「お腹の虫が鳴るけどど、もうそんなな、の気にしないでね!」
 独り言を呟いてでも空腹を抑えようと必死だ!
 しかしー-
「はあはあ」
 五の秒走っただけで両腕を大地につけた!
「から、だがおも、うよう、に」
 ユキは僅かな力を出して、血管の死角になる部分に隠れた。
「見ちゃ、いけ、ない。こ、の、まます、ごさ、ない、と」
 しかし、ユキは隠れながらも血管を見てしまった!
「ヒイ!」
 血管の先端から成人体型二くらいある楕円形の卵が落ちる。卵はやがて膜を破り、現われたのは--
「あ、わわわ……」
 ユキは泡を吹いて意識を向こう側にゆく……。

 七月十四日午後九時五分一秒。
 場所は旧トガ由紀道。二十の内、真ん中にある天同参花が寝る仮設民家。
(……!)
「ユキイイイイイ!」
「なだ! 何事ですかだ!」
 参花は上体を起こしながら両眼を限界まで開けた!
「ユキが、ユキが--」
「参花様だ? どうなされたのですかだ?」
 参花は立ち上がろうとするも--
「う、うう--」
 未だに熱は治らない--そのまま仰向けに倒れ込む。
「クソ! 僕が熱で倒れなければ今すぐユキの所、に--」
「参花様だ。お気持ちは痛みを発するほどわかりましただ!」
「わかって、たまるか! この痛みは僕だけで、十、分だよ!」
「いえだ、わかりますだ!
 ユキは我等ボルティーニ団にとって女房のような存在ですだ!」
「女房?」
 その言葉に参花は食らいついた。
「ええだ、ユキは八の年より前に母親を死なれただ。その時、団長に拾われて以来ずっとボルティーニ団と運命を共にしますだ!」
「ユキはずっとボルティーニ団と共に?」
「当時の我は子供だったよだ!」
「今とどう--」
「話を続けますだ。当時ボルティーニ団は結成してまだ日は少なかったよだ!
 我とギャレイ土だ、それにイズモノキミ殿にリアクター殿だ、それから里香殿と狭間様もいらしておりましたねだ」
「え? 狭間姉さんまで!」
「団長は狭間様のお話はなさらなかったのですねだ」
「知らなかったよ!」
「まあだ、狭間様は一の月の間だけ我等と共に行動しただけだよだ。
 あの方は参花様の事で夢中だったものでだ」
「良い迷惑だよ!」
「話を戻しますだ! ユキは母親譲りの大変面倒見のよい子だったよだ!
 我等を母親譲りの威圧で叱りつけると思ったらだ、身の回りの世話を懸命にこなしたよだ!」
「何だかますますユキは弐高にたか姉さんに似てるよ!
 威圧感といい、面倒見の良さといい」
「弐高様ですかだ。あの方について宜しいでしょうかだ?」
「いいよ、長くなって明日まで熱で寝込むわけにいかないよ!」
「そうですかだ。長くお話をして申しわけありませんだ、参花様だ」
「いいよ。ありがとう、アラウンさん!
 そしてお休み! 明日は元気になってみせるよ!」
「お休みだ、参花様だ」
 挨拶を交わした参花はゆっくりと眼を閉じる。
(ユキの事について少しだけわかった気がする!
 弐高姉さんが生きていたらユキは姉さんに焼いた餅を焼くようになってたかも?
 もうそんな考えはいいか。それよりも僕は!
 僕はユキを取り戻す為にも明日こそ生子様が眠る地に……銀河連合が住み着く
国家神武に乗り込んでユキを助ける!
 例えエリオットさんのように命を捨ててでもな!)
 明くる日、参花は十五の誕生日を迎える……覚醒は間近に迫る!

一兆年の夜 第二十二話 二つの星 覚醒篇(三)

 未明。
「中々固いわ。んんー、んんー!」
 齢十五にして一の月と五日目になるアリスト人族の少女が銀河連合によって全裸にされながら両手両足を縛られていた。
「丸一の日が経ったけど、お腹の虫は鳴るし疲れるし、何よりここの匂いがきつくて頭が変になりそう!」
 それでも親指と同じ大きさの両眼を開けながらも必死で両手両足を縛る縄の強度に近い血管を解こうとした!
「はあはあ、参花様! 参花様!」
 少女は愛する者の為に行動するが、どうしようもない現実を前に諦めかけようとしていた。
 その時、少女の視線の奥より齢十九にして八の月と二十七日目になるキュプロ豚族の少女が全裸になりながら逃げてきた!
「あれって?」
「はあはあはあ、こ、こにぶいた!」
「あ、なたは誰?」
「私? はあはあ私の名前はリンボル。名字はクロウッチ。キュプロ豚族の者でぶ。
 あなたはどなた様?」
「あたしの名前はユキ・ライダル。アリスト人族よ!」
「そうでぶか。と、とにかく縛っていぶ血管を解きまぶ」
 リンボルは派手血管全てを引きちぎる--千切られた際、大量の赤黒い液体を放出しながら!
「あ、有り難いけどこの液体は身体に良くなさそう!」
「私なんか口に入っど水で濯ぎだぶわ!」
 二名は液体を下に落としてゆくが、一度付いたものは中々落とせない。
「気になるけど、リンボルさんはここで--」
「そ、そうだっぶわ! 私は必死で逃げよぶとしだぶわ!
 国家神武そのものであぶ銀河連合の外へ出ぶ為に!」
「え?」
 ユキは自分が国そのものを食らった銀河連合の体内にいる事実を正確に認識できなかった!
「ユキちゃん。ここは体内ぶ。ここは国家神武の成れの果てだどよ!」
「いやいや、そもそも国家神武っていうのは代々聞いた話じゃああちこちに建物が--」
「銀河連合は全てを食だい尽くしぶこんなにしだぶよ!」
「信じられるわけないわ!」
 ユキは水色の長髪を乱しながら言い伝えとは程遠い国家神武の姿に望みを絶った!
「と、とにかく私達は一刻も早くここから出なぶと!」
「え、ええ。そ、そうですよね!」
 ユキは平常心を取り戻そうと必死だった。
「ユキちゃん! 私の背中に乗って!」
「重たくない?」
「豚族の雌を嘗めないで!」
「わかったわ!」
 ユキはリンボルの肌色な背中に乗る--リンボルはすぐさま出口を求めて走る!

 七月十三日午後六時七分二秒。
 場所は旧トガ由紀道。かつてマンドロス山の除去作業で銀河連合との戦闘で仲間を庇って死んだ陸上官藤原トガ由紀を称える道路。
 参花含む二十名のボルティーニ団はそこを通る。
(まだ国家神武が見えないなんて! そんなに遠いところにあるなんて!)
「ところでマンドロス町を取り戻したんはいいですがだ、町をどうしますかだ?」
「え? えっとそれは--」
「アラウン? 忘れたの?
 町に来る途中、キュプロ町の放浪猫、大山ニャロ助に頼んでおいたわ!」
「それが心配だ!」
「うん、行き当たりばったりだよな、僕達って!」
 参花は自分達は無計画に行動している事に少し安心できない気持ちになる。
(けれどもここで退くわけにはいかない!
 僕は指揮官だ! 『一・指揮官は常に強くあれ』を実行中!
 今は何が何でも弱いところなんて見せられるか!)
「弟君? いつだってあたいに相談しても良いのよ!」
「いつ銀河連合が現われるか分からない以上それは後にするよ!
 それに僕が強気でいかないとみんなが元気付かないよ!
 『二・仲間を元気づけろ』を実行中だからね」
「ふうん、団長の遺言は守るんだね!」
「今は突き破る時だよ!」
 参花は微笑みで返す。
「うーん、やっぱり君は誰に相談したほ……ん?」
 中条隊の隊長中条里香は前方に現われた影を発見!
「参花様あ! あの体あは剥き出あされてえいる!
 間違いいなければあ銀河連合だあ!」
「僕だってわかったよ!
 しかも数は十、二十--」
「坊主! 俺の視力と勘を駆使すれば援軍を含めて百は超えるぞ!」
「モルルカの予測を下回っともオラ達に利がないう!
 ここは--」
「わかりました!
 全軍、ここは後退だ!」
 ボルティーニ団は銀河連合との直接対決を避けるべく右回りに退却する!
(『三・多数の銀河連合に勝負するな』を実行中!
 ただでさえボルティーニ団のみんなは少ない! 国家神武跡に向かうまでに全員を何としても生き延びなければ!)
 参花は全体を眺めながら撤退戦を繰り広げる--それは正に大規模な鬼ごっこだ!
 その頃、天気は曇りとなる。
「参花様? 雨漏りはどうされ--」
「ロージャさん! 今は天気のことなんか頭に--」
「参花様だ! 急接近する銀河連合が来ますだ!」
「え?」
 それは鷲型に運ばれて高度成人体型十の高さより指揮官型が落下した!
「あれは指揮官型! エリオットさんを死なせた銀河連合!」
 参花は左腰に掛けている里香から渡された天同狭間の遺品である新式神武包丁を抜くと逃げながら構えた!
(仇は討ちたい! 怒りを出したい!
 でも指揮官型には勝てない! やり合えば必ず僕が死ぬ!
 けれども抵抗せずに死ぬのは御免だ!)
 指揮官型は大地に着地するとすかさず参花に向かって突撃する!
「ガアア! 速い! 踏み込みが速い!」
「参花様だ! お怪我は--」
「大丈夫! 守の教えに従い、怪我は少なくした!」
 参花は指揮官型の繰り出す攻撃を避けずに全て神武包丁で防御した!
(けどいつまでも防御に回れない! 狭間姉さんの遺品はそこまで僕を守れない!
 ならば--)
 参花は左手を柄から離すと右腰に掛けていた二式雄略包丁を抜いてそのまま指揮官型に斬りつける!
「外れた!
 でもそれが狙いだ!」
 指揮官型は回避した時に体勢を崩したのか次の行動に出られない--その隙を突いて参花は日本の包丁を鞘に戻すとすかさずボルティーニ団へ一斉攻撃の合図を出す!
「例え倒せなくてもいい! 銀河連合から撤退してくれたら僕達が有利となる!」
 団員は指揮官型に一斉攻撃を掛ける!
 一方の参花は空を見上げる。
(『四・天候を観察するべし』を実行中! この場合天気は僕達に利が適わない。
 だったら『五・頭を狙え』だ! 指揮官型を倒せたらいいけど撤退したらそれに釣られて他の銀河連合も撤退してくれるはず!)
 指揮官型は反撃する暇もない団員の総攻撃に状況不利と感じたか、隙を窺って素早く撤退する!
「逃がすかあ!」
「ギャレイ土隊長! 怒りをお鎮めになりましょうん!」
「くう!」
 ロージャの言葉に反応してギャレイ土は足を止める!
「おかしい光景ね。銀河連合が一斉に撤退するね」
「んー? 雨ー? 雨がー降ってーきたよ!」
 空から一滴一滴と最初は静かに、そして徐々に勢いは増し、やがて大雨となった!
「みんな! どこでもいいから雨漏りしよう!」
 ボルティーニ団は急いで仮設民家を作ってゆく!
(これは勝利じゃない! 僕達は勝負を避けていくしか今の道はない!
 ユキ。今頃どうしてるのだろう?)
 参花は自分が三十の分掛けて作った仮設民家の中で雨によって全身が濡れた状態でユキの心配をする……。

一兆年の夜 第二十二話 二つの星 覚醒篇(二)

 午前八時二分四十四秒。
 場所は廃マンドロス町中央地区開化聖堂付近。十九の仮設民家が円を描くように配置。
 天同参花は中央に立つ。
「これより我々二十名はユキ・ライダルを奪還すべく国家神武に向かう!」
 ユキは国家神武跡にいる--参花の宣言に異を唱える者はいた。
「国家神武だと! 参花の坊主!
 あの場所は危険過ぎるぞ!」
 齢十七にして三の月と五日目になる武内人族の少年は逆立てた黒髪を力強く伸ばしながら進言した!
「危険なのは僕だってわかるよ!
 昔、門忍かどに姉さんから耳が蜂の巣になるくらい聞かされたよ!
 あそこがどれほど銀河連合が一杯いるかをね」
「だったら向かうべきじゃない!
 俺の命はいつ坊主の為に捨てても構わないが、坊主は違うだろ!
 坊主が死んだら--」
「わかってるよ、モルルカさん。
 僕はそれでも大切な者を取り戻す為にも国家神武に乗り込まないと良くないん
だよ!」
「ユキちゃんの為かう。ようやく参花様は大切な者を意識すっようになったかう」
 齢二十にして五の月と二日目になるエウク牛族の青年は参加を認め始めた。
「ユキは僕にとって必要な雌だ! 彼女が居ないと僕はいつまで経ってもエリオット
さんのように強くなれないから!」
「別にエリオットのおように強おくならあなくても良おいのです!
 参花様はあ参花あ様の強さを目指してえ下さい!」
 齢二十七にして七の月と一日目になるエウク馬族の青年は参花らしい強さを
勧める。
「いやまずはエリオットさんのように強くならないと! その為に僕は--」
 参花は懐からエリオットの教えが詰まった手紙を出す。
「エリオットさんの真似をしないと!」
 手紙を大きく広げて黙読していく。
「エリオット団長は大変な置き土産を残したな」
 齢三十にして二の月と十二日目になるキュプロ栗鼠族の中年は呟いた。
「あの手紙は何ですかね?」
 齢十七にして二の月と十二日目になるアリスト鴨族の少年は齢三十にして
十八日目になる物部犬族の中年に質問する。
「白石ーカブ助殿はー相変わらず呑ー気だね。
 あれは団長ーの教えーが詰まった手ー紙だよ!」
「ありがとね、フル太さんね」
「どうーいたしまーして」
「参花様だ? 向かうのはいいとしましてもどのように向かわれますかだ?」
 八咫烏族最後の雄であるアラウン・アルティニムムの問いに手紙を黙読中の参花
は答えない。
(向かう前にしっかり読まないと!
 この手紙にはエリオットさんの魂が籠っているんだから!)
 参花は三回手紙を黙読する。
『--初めに
 この教えを大事にすれば参花様は自分以上に成れます。
 ただし、すぐに強くなれません。
 困った時でもお構いになって宜しいのです。
 なお自分の教えは三段階に分かれます。それぞれ守・破・離で分けます。
 三つはそれぞれの意味を持ちますのでそれをお踏まえになって読んで下さい。

 守の教え
 一・声を大きく。
 二・力を入れる。
 三・とにかく攻めろ。
 四・守りに入るな。
 五・強い者の戦い方を真似する。
 六・無理をしない。
 七・仲間を信じろ。
 八・けれども仲間に頼るな。
 九・心を強くする。
 終・一の方に戻り順を追って繰り返す。

 以上の十を守りましょう。
 それが出来たら次は破の教えに入ります。

 破の教え
 一・指揮官は常に強くあれ。
 二・仲間を元気づけろ。
 三・多数の銀河連合に勝負するな。
 四・天候を観察するべし。
 五・頭を狙え。
 六・全体を観察するべし。
 七・銀河連合の行動を観察するべし。
 八・働くな。
 九・考えを怠るのなら守の教えに戻って復習するべし。
 終・一に戻り順を追って繰り返す。

 以上の十を突き詰めよう。
 それが出来たら最後は離の教えに入ります。

 離の教え--』
(離の教えはいつ読んでもわからないな。
 エリオットさんは何を離という教えにしたのか意図が見えないよ)
 参花は読み終えると姿勢を整えて--
「銀河連合を発見次第僕が指令を出す!
 無理は全て僕が引き受ける!」
 行き当たりばったりの進行内容だった!

一兆年の夜 第二十二話 二つの星 覚醒篇

 ICイマジナリーセンチュリー六十三年七月十三日午前六時零分七秒。

 場所は廃マンドロス町中央地区開化聖堂天同棟一の間。
 齢十四にして十一の月と二十九日目になる神武人族の少年が座禅を組んで
瞑想中。
(ユキはどこに連れて行かれたのか? 一晩中考えを巡らしてもはっきりしないな)
 成人体型一とコンマ一続く三と四の間。鶏量は十二以上。体中の傷は普通の
生命より回復が早い。
(鷲型の銀河連合はえっと、どこに向かってユキを連れて行ったのかな?)
 灰色の髪は顎まで伸びており、前髪は僅かに睫毛より下の方まで伸びる。
(思い出した! 確か北の方角だったかな?
 んで北には何があるかな?)
 瞑想中なので両眼を閉じているものの、彼は人差し指の大きさよりも小さい。瞳
は青黒く他者を惹きつける。
(僕は地理がわからないからそこに何があるのかわからないよ!)
 鼻は兎族のように可愛らしく、未熟さを残す。
(どうしよう! いくら考えてもそこに何があるのかわかんないよ!)
 顎まで届く両耳は今にも幸せを運ぶ形をする。
(無理だ。無理だ。僕には結局ユキを助けられないんだ。どうせ)
 上下唇は小指より僅かに細い。ただし、口は自分の拳が入る大きさ。
(昨日みたいに何か幻聴が聞けたら僕も助かるのに!)
 端整な顔立ちをするものの、心は未だに成熟せず。
(あーあ、狭間はざま姉さんの自慢話を聞けたら僕も少しはこんな瞑想せずに済むのに!
 狭間姉さん? そういえば姉さんは僕をからかう時よく空から銀河連合が降る
お話をしたんだっけ? その話は国家神武が食われることと関係してたよね?
 んでその国家神武の場所が確かここから北の方角にえっと成人体型どれくらい?
うーん、わからないな)
「参花様だ?」
「うわあああああ!」
 齢十八にして一の月と二日目になる神武八咫烏族の少年の声に参花と呼ばれる
少年は思わず両眼を開き、叫んだ!
「驚かさないでよ、アラウンさん!」
「おはようございますだ。申しわけございませんだ。実はもうじき朝食のお時間に
なりますので起こしに参りましたがだ、もう参花様は起きになられていたのですねだ」
「えっと、おはよう。ま、まあユキの事で頭が一杯だったから」
「ユキかだ! あの子が無事である事を祈りましょうだ!」
「無事だし、あいつがそう簡単に死ぬかよ! 今すぐユキを--」
「おはよう弟君?」
 齢二十四にして七の月と二日目になる応神人族の女性は紫の長髪を左右に
キュプロ枝で出来た紐でくくりつけながら挨拶した。
「おはよう里香さん!」
「里香殿だ! いくら恩があるとはいえ参花様に礼を欠くぞだ!」
「いいよ、僕は気にしないから」
「弟君? いくら愛しの子が心配だからってあんまり気を張るのは良くないわよ。
 狭間のように気楽にいかないと」
「狭間姉さんはあんまり好きじゃないよ! いっつも僕をからかうから」
「それは愛があるから出来るのよ!」
「いや、そうゆう問題なの?」
「話を戻させるだ! もう朝食のお時間ですのでそろそろだ……」
「あっ、そうだった! そう言えばお腹の虫さんが五月蠅くなってるよ!
 さっさとみんながいる仮設民家に向かわないと!」
 参花はすぐに立ち上がろうとするも--
「いでで!」
 およそ三十の分くらい無理な座禅を組んだ為、足がふらつく!
「参花様だ。もう少ししっかりしましょうだ!」
「ご、ごめん」
 アラウンは飛んでユキ、参花の服の襟を掴んでしばらくの間、支えになる。
「ふふ、狭間が弟君を弄ぶ理由がわかってきたわ」
「わからなくていいよ」
 誰からも心配される少年の名前は天同参花。この物語の主人公だ!

選択肢のない現実だからこそ悲観する事は良くない。

 どうもdarkvernuです。
 では時事ネタをどうぞ。

 ここは神々だけが暮らす世界。
 神々は地上にいる猿共に毎日失望する。
 海外こそ理想だとか、保守がどうのこうのとか、評論家気取りが多くてことあるごとに失望する。
 その中で特に失望する二柱の神が激論を交わす。
「これだから政治は嫌なんだよ! いつだって糞な政党しかいないのに何を期待するんだよ!」
「糞でも構わないでしょ! あたしなんか吉田・鳩山党にいつだって失望してるのに今更なの?」
「このままじゃ猿の世界は滅ぶんだぞ! なのにあいつらの党はTの領有を公約に記さなかったりコミュニティを破壊するような多世界経済協定の交渉参加したり、悪名高い平蔵やミキティーを公認したりと無茶苦茶だぞ!」
「少し事実と違う事もあるけど。
 確かに眉毛談話の踏襲は駄目だわ。眉毛はタイガース・藤村大地震で多くの猿を見殺しにした罪が大きいのよ。それに彼はレーニン・スターリン党出身だから踏襲しなくても良いはずなのに大真面目に駄目な体質故踏襲したわね」
「だろ! だったらもうどこにも期待しなくていいよ。どこかはニューマーチウィンドこそ理想の党なんて言うけど隈板内閣の二の舞に成ると俺は思うぜ!」
「人間世界にある大和国の話はいいでしょ。
 今は猿の世界のお話をしよう」
「済まない。猿と同じくらい過当な人間界の話をしてしまった!
 話は戻すけどレーニン・スターリン党だろうとトロツキー・フルシチョフ党だろうとマルクス・エンゲルス党だろうとハイエク・フリードマン党だろうとロベスピエール・ナポレオン党だろうと麻原・大川党だろと池田・久本党だろうとさっき失望中の吉田・鳩山党だろうと突き詰めれば目くそ鼻くそだ! 政治に何を期待するんだ?
 こんなに選択肢がないのに政治に関心を持てるか!」
「選択肢がないんだったらいっそマックガーデン党や試される大地党とかのカルト人気溢れるところでいいでしょ!」
「嫌に決まってる! だいたい全政党で吉田・鳩山党しか選べない状況がもはや猿の世界を終わらしてくれるぞ!」
「それ一体いつまで言うの? 江戸時代の倒幕関係者も戦国時代の諸大名も同じ事言ってたような?」
「お前も人間世界の大和国関連話をすな!」
「めんごめんご。いっそ諦めて吉田・鳩山党の駄目猿と共に苦楽を共にすれば?」
「いつだってしてる! その度に俺達は失望してんだろうが!」
「失望してるわよ。
 でもね、そうゆう時こそ自らの意志で駆け抜ける以外にないわ!
 悲観からは何も生まれないし!」
「いつまで苦しめば解放されるんだ?」
「私達がゴぉDEß巣になるまで!」
「それはここで言うべきか?」
 ゴぉDEß巣は知らないが、この世界は神々だけの世界。現代の我々には決して届かない未来世界だ。
 だからこそ神々は我々が住む世界の結末をよく知り、そしてよく失望してゆく。
 この先もこれからも……。


 とりあえず言いたい事は「現実は失望やうんざりの連続ですので理想を追い求めるな!」であります。
 自分は政治屋でもなければ専門家でもないですのでその世界はどれほど非常識溢れるかは存じないけど、ただこれだけは言えます。
 政治が面白く感じないのは当たり前! 何故なら政治屋は自分達が思っているほど優秀な奴は一人も存在しない。優秀でない代わりに僕達はそいつらより度が高く成りすぎている。故に期待し過ぎる。故に選択肢がない。
 でも考えて下さい。政治屋がもしも優秀な奴等ばかりだったら世の中うまくいきますか? そもそもこんな事書く自由がありますか?
 自分はないと思います。優秀な奴等は自分達国民の自由を制限しにかかります。しかも優秀だから誰も逆らえない。選択肢すら強制される。人生全ても彼等の掌で動かされる。果たして失望する事も出来るかな? これ以上訳わからない話はやめよう(笑)。
 とにかく自分達がこうして失望できるのは政治屋共が古今東西、揃いも揃って能が低いからだよ(笑)。駄目大人党の奴等にしたって優秀さでは他の党の奴等より万倍あるけど、国内で言うならやっぱり自分達の方が優れてる以外ないんだよな(辛)。
 だって誰が見てもわかるアホな事を何もわかってない間抜けさは健在ですから。そう考えると十七年以上前の熊本のお殿様から眉毛内閣や去年まで続いた宇宙人鳩から上島のパチモノ内閣まで自分達が生き延びれたのは日本国民が予想以上に優秀だったから当時の売国政権がどんなに言論統制を進めようとしても思い通りに事が運ばなかったのが原因じゃないかな? まあグルメ哲学者やTKCやニシベマンは民主主義嫌いである以上、それは否定するだろうけど。
 まあ自分も民主主義大嫌いですよ(笑)。でもそれは海外における価値観が問題じゃないかな? そこは宗教観が絡むので詳しくわからないがね。最悪の政治制度民主主義の害悪ってのは日本ではあまり適用されないんだよね。だって日本は地震や津波、それに台風が頻繁に起こるし、国土は海で隔てられている。そうゆうところでは国民が愚か者であっても災害が罰を与えてくれる以上、自ずと国民性は高まるんじゃないかと思います。そうでなければ仁徳天皇の時代から続く上は馬鹿で下は賢いという構図は有り得ないと思うよ! え? 古事記は嘘ばかり? そんな事言うやつは日本をちゃんと理解しない愚か者だ!
 ぐだぐだしましたが、この辺で終りにしたいと思います。

 では第二十一話の解説に入ります。
 ええと、第十七話に続いて予定より一パート多く作った事を皆様にお詫びしたいと思います。自分は一話というのは最大でも十パート。最低で五パートが限度だと思います。二十パートも三十パートもあったら二話、三話に分ける方が安上がりに済むし、読む方も疲労が溜まりません(いや溜まるかな? コメントがないからわからないが)。とにかく今後は十パートを超えないように腕を磨いて参りますので再発防止に気分が乗れば全力を挙げますのでどうか宜しくお願いします(気分が乗らないとどうなるかは気にするな)。
 それじゃあ解説しますよ! 今回は三部構成の破です。ヒロインを登場させ、一応勧善懲悪物の王道をゆきます。それにより、今までヘタレ過ぎた主人公に戦う理由が確立していきます。一応確立したわけではありません。三日で確立したら成長を描く上で説得力を持たせないので。
 それから二十話における手紙を出す事で一瞬ではありますけど、主人公に劇的な成長をもたらします。
 ただし一瞬なので成長してすぐに元のヘタレ坊やに戻ります。そう簡単に人は成長しないっていうことを示したい為にね。
 今回は様々な意味で大変だったよ。序パートが予想以上に長すぎたから一パートは一補足パートとして出したり、九パートで終わらすつもりが長すぎたから終パートを出す羽目になったりと自分の能力不足が露呈しまくってます(もう既にしてるか)。
 話を戻す。今回出てきた百獣型は獅子型とどう違うかを解説します。そもそも獅子は百獣の王と呼ばれるくらい肉食獣では最も強いと言われております。それで百獣型がどうゆう銀河連合なのかはまず獅子型にはない直立立ちが可能であり、獅子型には不可能な関節技も得意とします。他にあるとすれば獅子型にはない寸剄を放つことや手刀いや足刀でビール瓶(その時代にはないけど)を切ったり、ムエタイやカポエイラ、それに柔術など何でもこなせます。まだそれを描いていないが、百獣の王に相応しい銀河連合と言えるでしょう。それでも指揮官型に比べたら大したことないけど(笑)。
 それから手紙に出てきた守破離について説明します。守破離とは元々は観阿弥・世阿弥が確立した能の基本から来てます。それは弟子を育てる上で基本と成る考え方です。遠すぎる過去の時代であってもその教えは変わりません。まあ意味を知りたければググってみよう。眼から鱗になります。
 話を戻しまして、この場合の守破離とはエリオット・ボルティーニが天同参花を本当の意味で強い者に成長させる為の教えが詰まってます。まず、守の教えで参花自身を立派な少年に成長させてゆきます。そして破の教えで優秀な指導者として成長させます。最後の離はまあ二十二話で描かれます。題名に繋がる教えと成ってます。
 とまあいつも通りの感じで第二十一話の解説を終わらしたいと思います。

 第二十二話で二つの星の話は終わります。結末はどうなるのか? 参花はエリオットのように立派になるか? ユキはどうなるのか? 指揮官型や百獣型との決着はどうするのか?
 それはまあいつも通り勢い任せで行きますよ! では今後の予定をどうぞ!

 六月
 二十四日~二十九日  第二十二話 二つの星 覚醒篇      作成日間
 七月
 一日~六日       第二十三話 人生貸借対照表        作成日間
 八日~十三日      第二十四話 二十四時間の脱出劇     作成日間
 十五日~二十日     第二十五話 大空のトリ            作成日間

 二十三話は短いですが、後の二話は長い! 目次の章がなんなのかを見れば明らかだが、開拓してゆきますので常の息切れしながら書いてゆく予定です!
 ではこの辺で! 来週は大事な用があるので今週の土曜日にまた会おう!

一兆年の夜 第二十一話 二つの星 進撃篇(終)

 午後十一時零分五十一秒。
 参花はリアクターの傷を手当てするものの、傷口は赦しを容れる事は叶わない。
「もう、いい。こ、れいじょうは、じ、かんの--」
「喋らないでくれないか、リアクターさん!
 僕が必ずリアクターさんを--」
「諦める事も大事でございますよ、弟君!」
「でも--」
 リアクターは僅かな力で参花の左手を右手で掴んだ。
「りかちゃん、のい、うと、おりよ。あきら、めて。
 わたしは、もう、つかれ、た」
「リアクターさん! こんな傷! こんな傷ウウ!」
 参花は必死に傷口を強く抑えるが、血は激流のように外へ流れてゆく!
「さ、いご、に、ゆき、ちゃん、としあ、わ、せに。
 わた、しは、いく、ね。む、ね、い、ちさ、ぁ、ぉ、ぉ……」
 その言葉と共にリアクターをゆっくりと眼を閉じた。永遠に。
「う、う、うわあああああああ!」
 参花は絶叫する--町中に響き渡るように!

 七月十二日午前十時五分四秒。
 場所は廃マンドロス町中央地区開化聖堂天同棟一の間。
 参花は塩蒔きを行っていた。
「わかったよ、エリオットさん!
 仲間に頼る事は自分に自信が持てない事を意味すると。
 だからこそ七と八の教えは仲間を死なせない為にはどれだけ自分を頼れるかということを示すんだね!」
「なあに独り言言ってるの?」
 出入り口には何時の間にか中条里香らしき女性が背中をつけて立っていた!
「あ、あなたは確か--」
「中条隊の隊長、里香よ!
 あーあ、これが狭間が楽しみにしてる弟君なのね!」
「そうだけどいまは塩蒔きで忙しいから帰ってくれない?」
「そうする!
 でも、これだけ置いて去るわ!」
 里香は手紙らしき物を床に置いて出て行く!
「狭間姉さんはよく放浪してたけど、あんなに礼を欠くのを友達に持ってるなんて!
 そんな事よりも手紙の続きを読まないと!」
 参花は手紙を取り出すが--
「これは……リアクターさんが吐いた血と昨日まで獅子型や姉さん達を死なせた獅子型との戦いでこんなに!」
 手紙は原形を留めず、内容さえ読めない状態だ!
(こんなのは罪深い! きっと棟一兄さんは僕に怒ってるよ!
 エリオットさんが命がけで考えた物を僕は無下にしたんだ!
 こんなの、こんなの!)
 参花は後悔する!
「心を強くしろとエリオットさんがいくら教えてくれても僕にはやっぱり無理だよ!
 僕はなんて弱い生命体なんだ! 天同を名乗る資格さえないよ!」
『それは思い込みだ! 俺に申し訳ないと思うなら里香が置いていった手紙を拾え!』
「え?」
 悲観的に考え込む参花に幻聴が聞こえた!
「誰の声? そ、それよりも床に置いた手紙って?」
 参花は畏れるようにその手紙を拾い、中を開けた!
「これは!」
 それは正にエリオットが渡した参花の手紙と瓜二つの手紙だった!
「まさか拾ってくれたんだね、里香さんは!」
 参花は出だしこそ異なるが、それ以降の内容は参花が持っていた物と同様だ!
『--それが出来たら次は破の教えに入ります。

 破の教え
 一・指揮官は常に強くあれ。
 二・仲間を元気づけろ。
 三・多数の銀河連合に勝負するな。
 四・天候を観察するべし。
 五・頭を狙え。
 六・全体を観察するべし。
 七・銀河連合の行動を観察するべし。
 八・働くな。
 九・考えを怠るのなら守の教えに戻って復習するべし。
 十・一の方に戻り順を追って繰り返す。

 以上の十を突き詰めよう。
 それが出来たら次は--』
 参花はそれ以降も読み続ける。
(エリオットさんの言いたい事の全体像は掴めない!
 でもこれだけは僕にもわかる!
 心を強くする事はどんなに無理な事にぶつかっても心さえ無事ならまだまだ強くなれる!
 そう僕に言いたいんだね!
 僕は弱い! 弱すぎて心まで弱くなってしまうよ!
 でも、そうじゃない! 僕は心だけは誰よりも強い!
 そう思い込んでやらないと死んでいった者達の魂を背負っていけない!
 そして--)
 参花は天井を見上げた!
「今でも僕を待つ雪を助ける事だって叶わない!
 僕は信じる! ユキはどこかで生き続けている事を!」
 参花の迷走する三日に終りを告げ、新たなる三日が始まる。







 未明。
「んん、ここは?」
 ユキが目覚めるとそこは血管が木が根を張るように乱雑した赤黒き場所。
「うう、に、匂う!
 頭が痛くなる匂い!」
 ユキは鼻を押さえようとするも手足は何かで縛られており、自由が利かない!
「コ、コノ! き、きつく縛っているわね!
 し、しかも裸にさせるなんて! 銀河連合はあたしと交尾する気?」
 腰砕けな事を混じりながらユキは必死で匂いから自らを防衛する!
「そ、それにしても無事かな? またみんなを心配させてるかな?
 早く会いたいよ! あたしはあの方の良くない部分を好んでるんだから!
 だから万物の神々よ! どうか参花様をあたしの所まで連れてってよ!」
 ユキは誰かが居なくなって始めて自分の中にある思いを打ち明ける!
 星を追い求める星と星に構いたがる星がやがて結ばれてゆくかのように……。


 ICイマジナリーセンチュリー六十三年七月十二日午前十一時零分零秒。

 第二十一話 二つの星 進撃篇 完

 第二十二話 二つの星 覚醒篇 に続く……

一兆年の夜 第二十一話 二つの星 進撃篇(九)

 午後十時三十分三十八秒。
 場所は廃マンドロス町中央地区開化聖堂付近。
 双方併せて百以上の死体が散乱!
「はあはあはあ、百獣型あ! 例え足斧おが刃毀れえしてもお前だあけには負けなあいぞ!」
 真島ギャレイ土は体中傷だらけになりながらも百獣型に向かってゆく!
「隊、長ー! 無理をーなさらーないで下ーさい!」
「百獣型は戦い慣れをしているんようだ! ワシらがこれほど傷ついておるんのにあれは無傷。当たりもしないなんてどうかしておるん!」
「だからってここで引くものかだ!」
「百獣型に勝てないようでは私達は指揮官型にも勝てないわ!
 団長や棟一様の仇を討つ為にも倒さないと!」
 隊長格の三名は百獣型に間合いを詰めてゆく!
「勝てると思うかう? オラはわかるう!」
「三名は傷だらけね! このままじゃ食われるね!」
「参花の坊主とユキはまだ来ないのか!」
 三名が隙を伺う間に南の方から大地を蹴る音が近付く!
 白石カブ助は思わず振り返る!
「あ、れはね! 参花様だね!」
「何? 参花様が来たのか!」
「本当ーだ! 参花様ーだわ!」
「ようやく来ましたかだ、参花様だ!」
 百獣型と対峙する三名以外全ての者が振り返るとそこには参花只一名が駆けつけた!
「おや? 坊主! ユキはどうした?」
「はあ、はあ、はあ、連行されたんだ!」
「もう一度聞く! ユキは--」
「銀河連合がいきなりユキを連行したんだ!」
「何ー!」
 皆は驚く!
「ど、どうゆうんこ--」
「あ、れは……どこかで?」
 参花は隊長格三名と間合いを詰める百獣型に見覚えがあった!
(知ってる? 僕はあの獅子型? に見覚えがある!
 首に掛けた骨らしきモノ! あれは間違いがなければ恐らく姉さん達の骨!
 姉さん達の命を何だと思ってるんだ!)
 参花は自然と雄略包丁を抜く!
 そしてそのまま走り出す!
「ウオオオオオオオ!
 ようやく会えたな、姉さん達を死なせた獅子型あああ!」
「お止め下さい参花様だ!
 百獣型は一対一で勝てる相手じゃ--」
「避けえろ、アラウン!」
 百獣型は余所見したアラ運に飛び込む--気付くのが速かったのか、嘴の差で斜め左に避けた!
「我はいいだ! それよりも参花様の身が危険だ!」
「百獣型! 隙を突いたのはあなただけじゃないわ!」
 リアクターは鋭棒を百獣型の後頭部めがけて遠投した!
 しかし--
「成人体型五しかない距離で避けるなんて!」
「そこの獅子型あ!
 僕がお前の相手をしてやる!」
 参花は百獣型に飛び込むが、百獣型は懐まで間合いを詰めると素早く参花の背後に回った!
「いない!
 どこ--」
「後ろでえござあいます!」
「え?」
 参花が右に振り返ると百獣型は振り返る方向に前右足による攻撃をした!
「デュウアア!」
 参花は攻撃を受ける--首を守る為に咄嗟に身体を斜め横転させながら地面に擦れるようにうつ伏せに倒れた!
「ウウ、うう、強い!」
「参花ー様!」
「よせ、ピネラちゃん!」
 百獣型は素早く参花の間合いに詰めると口を大きく開けて丸呑みした!
「私ーで我慢しーてええ!」
 それは一瞬の出来事だった--参花は起き上がるなり「間に合わない」と感じるものの白い影が参花を左に突き飛ばし、後ろ左足を遺して百獣型の腹へ放り込まれた!
「ああ、あああああ!
 ピネラさあああん!」
 百獣型は無情にもピネラと思わしき骨を吐いてはそれを前両足で踏みつけ、粉々に砕いてゆく!
「やめろ……それ以上やれば僕は感情を抑えられなくなるぞ!」
 その言葉に対する答え。それは砕いた骨を舌で舐めた!
「姉さん達の命だけでは飽き足らないかアアアア!」
 参花は暴走した!
「良くない事になっただ! 参花様は--」
「参花様! 百獣型相手にむやみに攻撃するのは--」
 参花はひたすら包丁を振るった--間合いに入っては振るう作業の繰り返しを!
 しかし、百獣型に触れる事は叶わない!
「この! この! コノ!」
 それでも参花は振るうのをやめない--先ほどまで獅子型と戦った傷が癒えない状態であっても!
「クう! このまま亜じゃあ食わあれてしまあう!」
「でもその距離では間に合わないね! このままじゃ--」
「いいえ、私なら間に合う!」
「どこが間に合うんだ! 疲れているんところを背後から食らっていくん--」
「ああああああ! 仇を討たせてくれエエエ!」
 参花は力一杯出す!
 でも刃先が百獣型に間に合う前に開いた口に呑み込まれた--かに見えた!
「アアア! はあはあ--」
「大丈夫ですか、参花様?」
 百獣型の口から鋭棒の柄が見える。
「口かあら血をお流しいている。といいう事は--」
「もう大丈夫です、参花様!
 百獣型は……え?」
 死なない--参花がそう思いを巡らす理由。それはリアクターの腹を貫通する百獣型の前右爪をその眼で見た事。
「リアクターさん?」
「ガッフ! が、ああ」
 リアクターが放った赤い液体は参花の顔面に付着!
「隊長! 大丈夫っすか、リアクター隊長!」
「リアクターの姐御!」
 モルルカとスワンダはリアクターの側まで駆けつける!
「ああ、ようやくわかったよ!
 仲間を信じる事とはいついかなる時でも仲間を死なせないというのを--」
「参花様だ! そんな事言ってる暇は--」
 百獣型はリアクターの身体ごと参花を引き裂こうとした!
「間に合あわない!」
 誰もが間に合わない!
 そう思われたが--
「中条隊はこれより百獣型に一斉攻撃する!」
 齢二十四にして七の月になったばかりの応神人族の女性の合図と共二十以上の物部刃が百獣型めがけて降り注ぐ!
「間に合ったう!」
 スワンダとモルルカは駆けつけるなり、参花とリアクターを含めて物部刃の雨に当たらないように身体を屈ませた!
 百獣型は鋭棒を呑み込んだまま、雨を避けつつ北へと去ってゆく!
「わわ、わわ! この合図はあの雌か!
 俺達に当たったら責任取れるのかよ!」
「ふう、どうやら間に合ったのかな?
 いえ、間に合わなかったみたいね」
 参花達は意外な伏兵のお陰で生き延びた……。

一兆年の夜 第二十一話 二つの星 進撃篇(八)

 場所は廃マンドロス町南地区。建物は枯れて、大地は今にも活力を失う寸前。
(これが姉さん達の言ってたマンドロス町! もはや死んだも同然じゃないか!)
 参花は聞いた話とは大きく異なった原因を知りつつ、町が枯れてゆくのを嘆く!
「参花様! もうすぐ銀河連合があたし達の前に現われます!」
 望遠刀を構えながら走ってゆくユキは参花の腰に掛けてある二式雄略包丁を右肘で叩いた!
「そう言えばユキの成人体型はどれくらいなの?」
「一とコンマ零続く六と七の間……って話してる間に来ましたわ!」
「あれは獅子型! しかも三体!」
 二名の前には右利き、左利き、そして両利きの獅子型が並ぶ!
(こ、こんな時は力を抜いて雄略包丁を抜こう!
 おっ! 抜けた!)
 ゆっくりと三体は近付く。
「狙いは定めてもこの前みたいに外すかわからないわ!」
 ユキは深夜の事で弱気になる。
 一方の参花は左手で手紙を出して何とか広げる。
(守・破・離とあるけど破・離を読む前に守をもう一度読もう。
 この場合は、うう! や、やってみようかな?)
 参花は三体の獅子型を見る。
「『三・とにかく攻めろ。 四・守りに入るな』をを。
 じ、実行する!」
 参花は手紙を素早く懐にしまうと右利きの獅子型に突撃する!
「参花様! むやみに攻めるべきじゃ--」
「『五・強い者の戦い方を真似する』を実行する!
 僕が強いと思う者はエリオット・ボルティーニだ!」
 獅子型は参花よりも速く飛び込む--参花は雄略包丁を盾にして背中を地面につけた!
「うう!」
 参花は左に三回横転した後、流れるように立ち上がると守りに入らず、攻めに入る!
「守ったらいけない! 攻めて攻めて攻めまくる!」
 またしても獅子型に先制されるが、同じように背中に打ち付けて今度は右に三回横転した後、また立ち上がる!
 一方のユキは--
「うわっ!
 参花様の所に行きたいけど、二対一じゃ距離をとれないわ!」
 反撃する暇がないほど左利きと両利きの獅子型はユキを攻めてゆく!
「参花様を発見!
 な、何だか知らないけどあの動きをどこかで見たような?」
 ユキが見た参花の姿--同じ事を繰り返すように参花は右に左と叩きつけられては流れるように横転しながら立ち上がり、また攻めてゆく!
「『六・無理はしない』を実行中!
 ユキが心配だ! 見辛いけどユキは多分二体と戦ってるんだ!
 何だか心配だよ! このままじゃ……そんな考えは吹き飛ばす!
 と、とにかく……うわっ!」
 参花はまた叩きつけられたが、今度は三回後転した後、立ち上がる!
「イデデ! このままじゃ今度こそ立ち上がれなくなるかも?
 『七・仲間を信じろ』を実行中! ユキはそれでも生きてるんだ!
 信じなくてどうする! 僕は獅子型を攻めて攻めて攻めまくる!」
 参花は攻めるが、同じ事を繰り返すように獅子型に先制され、背中を打つ--これで十三回目。
「痛くてもまた立ち上がらないと!」
 前と同じように三回後転しながら立ち上がるが、既に彼の両足は震え出す!
「はあ、はあ。まだまだ攻めないと」
 よろけ出す足を動かしながら参花は攻めるが、獅子型は先制!
 そして同じ事を繰り返す!
 それを見ていたユキは--
「どこまで心配をかければ気が済むのよ!
 いいわ! 接近戦でも構わないから二体まとめて相手してやる!」
 守りに入るのをやめた--弦を引っ張りながら両利きの獅子型に飛ぶ!
「望遠刀がいつから遠距離専門になったの!」
 地面に背中をつけながら滑り込むようにギリギリの距離に入ると迷いなく離す!
 両利きの獅子型は好機と勘違いした! ユキの真上に入り、中心部を貫通--成人体型一まで離れたところに不時着した!
「まずは一体!
 次は……も、もうこんなに!」
 左手を前右足で押さえつけた! 獅子型は前左足爪でユキの顔めがけてひっかくが--
「あっぶない! うわっ!
 痛いんだからやめて!」
 ユキは右膝蹴りを右首筋に当てる--獅子型は痛みのあまり離すが、怯んだところをユキは立ち上がり、望遠刀を構える!
「立ち上がって、銀河連合!」
 銀河連合が正面を向いて立ち上がるとすぐさま物部刃を放つ--人中に命中し、血を扇状に噴きながら死んだ!
「はあはあ、そろそろ参花様を助けないと!」
 深呼吸をした後、ユキは参花の所に向かう!
 五の分の後。参花と距離を詰めるなり--
「参花様!」
 ユキは参花を助けようと望遠刀を構えるが--
「僕を助けるな、ユキ!」
「何を言ってるのよ! もう限界でしょ!」
「限界でも僕は君を頼らない!
 何故なら『八・けれども仲間に頼るな』を実行中だ!」
 参花はエリオットの遺言を忠実に守る!
「思い出したわ! あの動きは団長の真似だったのね!
 まさかあの手紙は--」
「エリオットさんの遺言だよ!
 僕はすぐにはエリオットさんには成れない!
 すぐには--」
「参花様!」
 獅子型は同じように攻めるが、同じように守り、同じように叩きつけられ、同じように三回転がりながら立ち上がる!
 獅子型はその姿を見て恐怖を感じたのか、少し仰け反る!
「すぐには天同に成れない!
 でも『九・心を強くする』を実行中!
 心だけは上下関係なし!
 そして『終・一の方に戻り順を追って繰り返す』を実行中!
 それは……ウオオオオオオオ!」
 参花は力を入れながら獅子型に飛び込む--反応が遅れたのか今度は獅子型が後手に回る!
「声はとにかく気合いを出す為!」
 右に振ったが、左頬に掠る!
「力を入れるのはまず全力を出し切る事!」
 突きを放つが、避けられる!
「攻めに入り、守りを避けるのは攻めは簡単だが--」
 獅子型は前右爪による攻撃を放つが! 
 だが参花は流れるように獅子型の右横に避ける--同時に峰打ちを放ち、獅子型を仰け反らす!
「守りは難し!」
 参花はその間に構えを整える!
「真似をするのは強き者は戦い方を知る為!」
 獅子型は振り返るとすぐに参花に飛び込む!
 しかし--
「無理をしないのは体中の力を抜く事で綺麗に洗う為!」
 参花は獅子型のしたに潜り込む!
「そして僕は勝つ!」
 参花は獅子型の股間から唇にかけて斬りつけた!

 午後九時三十五分五秒。
 参花とユキは三体の銀河連合の供養を終えた!
「死なせて申しわけありません!
 償いは町を取り戻す事で払います!」
 二名は一の分の間お辞儀をした!
「悲しいけどこれが戦いなのよ!」
「うん」
「『うん』じゃない! 『はい』でしょ!
 さっきまで格好良かったのはどこに行ったの?」
「ごめん!
 あれはエリオットさんの真似をしただけだよ!
 あの方ならこんな言い方だと思って!」
 参花は元の頼りない少年の笑顔に戻った!
「あの手紙は効果を発揮したって事でいいの?
 とにかく行きましょう! 真島隊長やアラウンさんが奥まで先行してるんだから!」
「そうだね。じゃあそろそ……え?」
「どうし--」
 突然の出来事だった!
「な、何よ! 離してよ!」
「ま、待って、く、れ!」
 ユキは北側より颯爽と現れた成人体型三は満たない鷲型に望遠等も物部刃の入った籠も背負わずに両肩を掴まれてそのまま北の方へと連行される--参花を追おうとするものの先ほど獅子型との戦闘で受けた傷が完治しないのか、満足に動く事も出来ない!
(動け! ユキが連れて行かれるのにどうして動けない!
 動いてくれ、僕の体ああ!)
 心の叫びは空しく、ユキは北の方へと連行された!
「ち、くしょおおおおお!」
 参花は体が動けるまで叫び続けた!

一兆年の夜 第二十一話 二つの星 進撃篇(七)

 天同参花は懐から手紙を取り出す。
(やっぱり入ってた! 少し皺が寄ってるけどちゃんと読める!
 けど、どうして誰も手紙を漁らなかったんだろう?)
 それは全生命体がそうゆうことをするのを戸惑うという真実には届く事はない。何故なら遠すぎる過去の出来事。
 そんな現在や未来はともかく参花はエリオットがイズモノキミに書かせた遺言を読んでゆく!
『参花様へ

 この手紙を読まれたということはもう自分は想念の海へと旅立ったという事ですね。当然の帰結でしょう。何故なら自分は棟一様に礼を欠く行為をしたものですから。
 その話はここで記すものじゃないな。それよりも参花様が読み上げる頃にはボルティーニ団はマンドロス町に進撃しようとしているな。多分--』
(え? ここまで予想なされたのですか! やっぱりエリオットさんは凄いよ!)
 改めてエリオットに驚愕する最中、アラウンから催促される。
「そろそろお時間になりますだ。我々ボルティーニ団はそろそろ町に突入しましょうだ!
 参花様だ、どうか指令をだ!」
「えっとそうだったね。もうお日様が沈んだし。
 少し待ってね!」
「何が少しなの? 手紙を読む時間が欲しいでしょ?」
 呆れた口調をしながらユキは参花の勝手を認める。
(続きを少し読まないと!)
『--アラウンが五月蠅く催促してるだろな。
 それは置いといて、まず参花様にはエリオット・ボルティーニの教えを授ける!

 初めに
 この教えを大事にすれば参花様は自分以上に成れます。
 ただし、すぐには強くなれません。
 困った時でも構いません。その時は自分の教えを反復しながらお読み下さい。
 なお自分の教えは三段階に分かれます。それぞれ守・破・離で分割。
 三つはそれぞれの意味を持ちます。それを踏まえた上でお読み下さい。

 守の教え
 一:声を大きく。
 二:力を入れる。
 三:とにかく攻めろ。
 四:守りに入るな。
 五:強い者の戦い方を真似する。
 六:無理をしない。
 七:仲間を信じろ。
 八:けれども仲間に頼るな。
 九:心を強くする。
 終:一の方に戻り順を追って繰り返す。

 以上の十を守りましょう。
 それが出来たら--』
「何をしてますだ! 速く指令をだ!」
「そ、そうだった! えっと……」
 参花はもう一度守の教えを読んだ。
 そして大きく深呼吸をした後--
「日は沈んだ!
 こ、ここれよよより! ボルティてぃにん団はマンドロス町にし進こ行するる!」
「「「「「「おお、う……」」」」」」
 団員はいきなり大声を出して指令した参花に戸惑いながらも気合いを入れて駆けてゆく!
「え、えーと。声が大きいってのはいい事ですよ、参花様」
「はは、ありがと、う」
 参花とユキも戸惑いながらマンドロス町奪還すべく走り出す!
(続き? いえ、まだやってない事も読んでおかないと!
 えっと--)
 参花は力む!
「えっと……ウオオオオオ!」
 そして大声を出しながら走ってゆくが--
「ワア!」
 躓いて顎を地面に叩きつけた瞬間、大きく前転して仰向けになりながら雪崩れるように滑った!
「あーあ」
「イテテ! 背中が痛くて困るよ!」
 参花は一の分くらいしばらく起き上がれなかった。
「参花様。格好は良くないけど、その調子ですよ!」
「ありがとう、励ましてくれて!」
「おかしいわ!
 励ましたつもりなかったのに!」
 ICイマジナリーセンチュリー六十三年七月十一日午後六時十分十秒。
 ボルティーニ団はエリオット・ボルティーニの依頼でマンドロス町奪還任務を開始!

一兆年の夜 第二十一話 二つの星 進撃篇(六)

 午後四時三十分八秒。
 場所は廃マンドロス町南付近。そこから成人体型六十七の距離に十四の仮設民家が建てられる。
 天同参花は未だに仮設民家を作っていた。
「もうすぐ一の時が過ぎそうかな?
 ユキ?」
「何でしょう?」
「お日様が沈み次第、僕達は町に入るんだよね?」
「そうよ。それまでに雄略包丁を研がないと良くないわ」
「そうは言っても中々仮設民家が作れなくて--」
「はあ、参花様がもう少し才能の神様に恵まれたのならあたしも苦労しないのに」
「ごめん」
「謝る理由なの?」
 それから十二分の間、参花とユキは少年少女らしい会話をした。
 そしてついに参花は自分の仮設民家を完成する。
「やっと出来た!」
「うん、出来は良いとは言えないけど」
 少年少女らしい会話をする二名の前に齢十七にして三の月と三日目になる武内人族の少年が左右の腰に武内包丁を引っ提げて現われる。
「仲良いね、君達は!」
「あたしはいいけど、参花様に『君』というのは止して下さい!」
「えっと、あなたの名前はなんて言うんですか?」
 成人体型一とコンマ二続き一と二の間くらいの大きさはある少年は逆立てた黒髪を左右に揺らしながらこう答える。
「俺はキングレイ隊の雄だ。なので自己紹介をしたけりゃリアクターの姐御に頼むんだな!」
「礼を欠くぞだ、モルルカだ!」
「けえ、先に本名を言われたか!」
 野次者のようにアラウンがやって来た!
「えっとモルルカさんで良いんですね。じゃ、じゃあ名字は?」
「知らないか? 武内族には名字はない。
 なので俺を呼ぶ時はモルルカと呼べ、参花の坊主!」
「『参花様』と呼びなさい、モルルカさん!」
「始めに言っとくべきだったかな?
 俺は認めた雄でないと敬語も敬意も払わねえんだ!
 なので坊主がどんなに周りから持ち上げられても敬意を払うにはまだ足りないな」
「相変わらずだう。それじゃあ他者に好かれなっべ」
 もう一名、齢二十にして五の月になったばかりのエウク牛族の青年が野次者のように現われた。
「スワンダだったな?」
「同じ隊であるう者の名前を忘れてどうすうる?」
「名前を覚えるのは得意じゃないし」
「あなたの名前は聞いた事があります。確かエウク牛族のスワンダ・ブブルルさんだったね」
「そうそう。オラは参花様とお話がしたんて近付きまった!」
「本当じゃないだろ? どんなものかを知りたくて会うんだろ?」
「五月蠅いなう、モルルカ!
 どっちも本当のことだう!」
「参花様?」
「何さ、左耳に聞こえるような声で?」
「スワンダさんは試したがり屋ですのでここは自信を持って望まないともしかしたら相手にされないかも知れませんよ!」
「え! それは良くないよ!」
「こそこそ話は良くなうな。堂々と会話を披露したうらいいのに!」
「済みません、スワンダさん」
「けえ、どうにも頼りにならねえな。
 オイ、スワンダ! もしかしたら参花の坊主は--」
「五月蠅いと言ってっだろ、モルルカ!
 決めっのはオラだう!」
「はいはい」
「『はい』は一回だう!」
「あ、あのどんな事をするんですか?」
「どんな事?
 そうだな、まずは参花様はユキちゃんの事をどう思う?」
「出た! スワンダ伝家の宝刀!」
「もう口を閉じう、モルルカ!」
 それを聞いた二名の顔は少し赤くなった。
(ユキの事なんていきなり言われてもわからないよ!
 というかユキとはまだ二の日しか過ごしてないんだよ!
 だからユキとは--)
「参花様とは主と仕える者の関係以外見あたりませんが!」
「君に聞いてなう!」
 何故か参花を気にするようにユキが答えるが--
「それよりも参花様はどう思われるうかな?」
「ど、どうって言われても--」
「はっきり言って参花様とは--」
「君は黙ってろう! オラは参花様に聞いてるんだう!」
「うっ!」
 ユキはこれ以上口を挟めなくなった。
(ここはこう答えるべきかな?)
「え、とユキとはまだ二の日しか過ごしてないのではっきりと答えられません。
 だからこの質問の続きは僕がもう少し強くなってから答える事にします」
 参花は曖昧な答えを返した!
「うーん、それでいいのかう?」
「えっ?」
「どうやらオラが参花様を見込んむのは時を経なっとわかっないなう。
 なのでこれかっも参花様とはあまり踏み込まずうに見届けたっと思いまう」
 スワンダは溜息をついた後、参花に背を向けながら去ってゆく。
「ぼ、僕って何か良くない事言ったかな?」
「自覚しろ! あれは『見込みは足りなかったな』と呆れてるんだぞ!
 俺は良いけど、スワンダは本気で支えるつもりだったからな!」
「で、でも僕はそこまで気を下げるような--」
「じゃあな! 俺達に認められたいのならもう少し自信を持て!」
 励ましに聞こえる事を言ったモルルカはスワンダの所に向かってゆく。
「参花様が立派になるのはいつだろうかだ?」
 そんな呟きをしながらアラウンはモルルカ達とは別の方向に去った。
「参花様。今はマンドロス町を取り戻すことを考えましょう!」
 落ち込む参花をユキは軽く励ます。
「ありがとうユキ!」
「どういたしまして!」
 二名は一の時を経るまで会話を楽しんだ。
(エリオットさん! 僕はどこまであなたに近付けるのでしょうか?
 あなたという星はどこまでも僕の届かないところにいます!
 真似をすれば近付けるのでしょうか? 真似?
 そうだ! エリオットさんから渡されたあの手紙を読まないと!)
 会話中に参花はエリオットから手渡しされた物に気付く!

一兆年の夜 第二十一話 二つの星 進撃篇(五)

 午前十時二十五分九秒。
 場所は天同読四道。マンドロス町に発展させた初代町長天同読四よみしにちなんだ道路。
 参花達現在十五名になるボルティーニ団本隊はマンドロス町目指して進軍中。
(眠い。もうすぐ昼ご飯だけど、食糧は大丈夫かな?)
 現在の食糧状況は芳しいものではない。全員分を計算しても残り一日分しかない。
そんな状況であっても彼等は希望の光を目指してただ進む。
「ギャレイ土君?」
「何の用うだ、リアクター?」
 いつ襲われても大丈夫なように蘇我鋭棒を構えながらギャレイ土に話しかける。
「報告したから皆までは言わないけど、残っているボルティーニ団は三十名を下回る
わ。ほとんどは例の指揮官型と百獣型にやられたわ!」
「指揮官型はあ一度手え合わせしいた! あれえは強すぎいる!
 エリオットがやられたあのも無理いはないくらあいだ!」
 ギャレイ土は斜め十字傷を歪めながら指揮官型の強さを恐れる!
「だからって私はあいつを倒すのを諦めないわ!
 あいつは、あいつは--」
「私の心おをああまり出あし過ぎるうな!
 俺達は硬貨あを貰いにいマンドロス町いを取りい戻すんだ!
 わかあるな?」
「わかってるわ!
 けれどもあいつに関しては私の手で決着をつけないと!」
 リアクターは険しい表情をしながら指揮官型に怒りの炎を燃やす!
 その様子を間近で見た参花は--
(リアクター・キングレイ?
 ユキから聞かされた話によると棟一兄さんの幼馴染だったっけ?
 もしかしたらリアクターさんから棟一兄さんの実像がわかるかも知れないな)
 参花はそう思いながらも今のリアクターに話しかけるのを止した。
 一行は読四道からピート橋へと進む。

 午後零時零分十一秒。
 場所はピート橋。かつて国家神武で偵察大臣、国家防衛間を務めたピート・プート。
ピネラ・プートの曾祖父に当たる者を称える橋。
 一行は昼飯である五穀おにぎりをよく噛んで食べていた。
「たったこれだけしかないのは辛い!」
「贅沢は言わないの! あたしだってお腹いっぱい食べたいわよ!
 おにぎり以外の料理を!」
「うう、食べるのがこんなに有り難いなんて!」
 参花とユキが並んでおにぎりを食べる間に一名の女性が参花の隣に近付く。
「参花様? 横で良いかしら?」
「え? いいけど」
 深紅の短髪をした女性は参加に気を遣うようにゆっくりと正座した。
「えっと--」
「リアクター・キングレイ。二回も自己紹介をしたわ」
「そ、そうだったね、ははは--」
「『ははは』じゃないでしょ!」
 ユキは右手の親指と人差し指で参花の左頬を横に抓った!
「イタタアタ!」
「フフ」
「何がおかしいのですか、リアクターさん!」
「いえ、微笑ましいと思ってね」
「そ、そう?」
 ユキの顔は少し赤くなった。
「どうし、ギャ!」
「変な事を言わないで! 思わず力が入ったわよ!」
「ユキ! あまり参花様に例を欠く事はしないでね!」
「は、はい」
 リアクターに注意されたユキは参花の頬から離すと顔を少し下向きにする。
「と、ところで僕に用があるんですか、リアクターさん」
 リアクターは参花の両眼を見つめる!
「は、恥ずかしいよ!」
「申しわけありません、参花様。
 でも似てるわね」
「似てるって? 誰に?」
「勿論、天同棟一よ!」
 リアクターは参花の兄、棟一の名前を出すと--
「あ、あの。兄さんとど--」
「棟一様とは只の幼馴染。そう、只の幼馴染。
 そして只の友達でもあった」
 棟一との思い出話を語り始める。
「あの方とは物心着く前から一緒に遊んだ。一緒に笑った。一緒に泣いた。
 そんな関係なのよ、棟一様とは」
 リアクターはまるで自分の弟に話をする嬉しさから出た笑顔をした!
(リアクターさんは似てる! 確か--)
「意識をし始めたのは棟一様後共に銀河連合を倒しに行った頃だわ。
 確かその時はちょうど反抗期に入る前だったかしら?
 その頃に私は棟一様の強さに対抗意識が芽生え始めたわ!」
 リアクターの表情から笑顔が消え、眼差しが強く輝き始める!
(そうだ! 兄さんに憧れる事はあまりしないがこの感じは--)
「それから私は努力したわ! 棟一様のように強くなる為に蘇我鋭棒を初めとした
多種多様の物で来る日も来る日も強くなろうと努力した!
 でも棟一様はその度により高みへと登っていくわ! 私がどんなに努力しても!」
 リアクターの表情は険しく、そして羨望の眼差しへ変化!
(門忍姉さんだ!
 姉さんは普段、抱擁溢れるけど、銀河連合の話をしたら真逆になる!
 リアクターさんは門忍姉さんに--)
「それでも私は努力した! 例え超える事は叶わないと思っても!
 けれども超える事は永遠に叶わなくなったわ。この気持ちは団長とは異なるけど」
 リアクター悲嘆する--愛する者を二度と相見えない嘆きを表現するように!
(全てを背負い込むところが門忍姉さんそのものだ!
 リアクターさんも辛いんだね!)
「棟一様!
 でも今は幸せで溢れてます!
 何故ならここにあなたの弟君がいるのですから!」
 参花が気付く頃にはリアクターの瞼から溢れんばかりの涙が流れる!
「あ、あの。あたしの持っている風呂敷で拭きますか?」
「いいわ! 自分の手で洗うから」
 リアクターは涙を拭くと参花を見つめながら立ち上がる!
「参花様、ありがとうございます!
 お陰で自分の中で溜めたモノを吐き出せました!」
「べ、別に僕は何も--」
「何もしない?
 それで良いのですよ、参花様!
 あなたは何もしないからこそ私達の希望になれます!」
 その言葉に参花とユキは瞬きを繰り返す。
「その意味……いずれわかる日が訪れます!
 私は周囲に銀河連合が居ないかを確かめに参ります」
 そう言ってリアクターは参花の元を離れていった。
(わかる日? 無理だよ!
 何もしない事でみんなに余計迷惑をかけるよ!)
「はあ、肝心の参花様はこんな調子で大丈夫かな?」
 そう言いながらも心配なのか参花を見つめ続けるのであった。

一兆年の夜 第二十一話 二つの星 進撃篇(四)

「えい!」
 ユキは右から二番目の獅子型に物部刃を放つ--まるで軌道がわかるように左へ逸らすように避ける!
「どうして! 最小限の動きが出来るのよ!」
「ユキをやらせるか!」
 参花はさっきの獅子型を倒したように息遣いを整えるも--
「あれ? さっきはどうしてあんな動き出来たのかな?」
 動きは元に戻る。
「わっ! 間一髪だったわ!」
 ユキは構える暇もなく右側の獅子型二体から次々と繰り出す攻撃を避けるしかなかった!
「二体だけ……この間に参花様の身に何かあったらどうしよう!」
 ユキの予想通り--残りの三体は参花に襲いかかる!
「門忍姉さんには良くないけど、一対三は僕にはどう考えても無理!
 何とかユキを連れてここから逃げないと!」
 参花は出入り口を目指して逃走する!
「ユキ! どう考えても二対五では僕らに利はない!
 ここから逃げよう!」
「わかってるけど、二体の銀河連合はあたしを逃がさないわ!」
「僕は三体もいる!
 いくら狭間姉さんに鬼ごっこで鍛えられてもこれじゃあ捕まるよ!」
「これが鬼ごっこなら捕まると死ぬわ!
 銀河連合はあたし達を何とも思わないんだから!」
「そうだよ……イデ!」
「参花様!」
 参花は俯きに転んだ--好機と捉えた三体の獅子型は一斉に食らいつく!
 参花が起き上がる頃には眼前に迫った!
「うわあああああ!」
「参花様ああ!」
 不思議な事が発生する--三体は接近しすぎた為、それぞれ側面衝突した!
「良かった……いや良くない!
 この間に逃げよう!」
 参花が再び逃げ出す頃には三体は立ち上がるものの互いに獲物を食らおうと同族争いを始めた!
「あ、あいつらは何をしてるの?
 味方が味方を食らうなんてどうかしている!」
 ユキが二体に追われながら三体の獅子型が不毛な同族争いを眺める。その間に参花と合流!
「お待たせ!」
「お待たせじゃないわ! ここから逃げようと思ったけど--」
「ど、どうしたの? 逃げないと--」
「三体の銀河連合が争う間にあたし達で二体を倒さない?
 一対一なわけだから!」
「そんなこ、うわ!
 無理だよ! 獅子型だよ! 強いよ!」
 泣き言を吐く参花に望遠刀を抱えたまま右手の裏拳を左頬に当てる--頬は青黒く腫れた!
「痛いよ! ユキは力を暴れさせるからやめようよ!」
「もう一度殴られてみる?」
「はい」
 参花は返す言葉を出せなかった。
「と、ところで、ウイ!
 ど、どの銀河連合と戦えばいいの?」
「ヒャッ!
 あたしは右と戦う!」
 そう言いながらユキは振り返るなり、右側にいる獅子型の前右足に右足の払いをする--獅子型は転びそうになりながらも左側転して元の体勢で着地!
「もう足払いは出来ない! 勝負よ、右の銀河連合!」
 一方の参花は残った獅子型から逃げる!
(一対一でも勝てそうじゃない! ここは逃げあるのみ!
 でも必ずユキは助けないと!)
 そのまま天同門忍の間から出て行く!

 午前二時二十分二秒
 場所は廃崇神聖堂。奥より右横にある天同狭間の間。
「行き止まり。狭間姉さんの間も窓枠はなかったよね!
 という事は結構危険な状態?」
 出入り口の反対側にある行き止まりを背もたれしながら参花は迫り来る獅子型と相打ちする覚悟を決めようか迷う。
「来るな! 僕はただじゃ死なないよ!
 た、だだっじゃじゃ、な! ほら! 包丁だって構えてるんだからな!
 み、いみてよ! はここぼぼれええなななんて、ってどうしよう!」
 恐怖のあまり身体を震わせる!
 次の瞬間、獅子型は飛び上がった--
「うううううああああ!」
 参花は思わず目を瞑るが--
(死んだな? あれ?
 痛いんじゃないの? 死んだら痛み出すって僕は決めたんだけどな?
 決めた? そ、それより目を開けようかな?)
 参花はゆっくり瞼を開けるとそこに映し出された光景は心の臟に向かって一直線に鋭棒を地面ごと貫通して、円を描くように血溜りを出し続ける獅子型の死体。少し左向い側に齢二十九にして一の月になったばかりの顎まで届く深紅の髪を揺らすアリスト人族の女性が立つ。
「だ、誰?」
 参花が疑問をする間に--
「ここにいましたね! 無事でしたね!」
「ワイは死にかけタヨ! アイツラが同士討ちをする振りをしてワイ達に襲いかかるなんて聞いてなイゾ!」
「参花様! 無事で良かった!
 ってあなたはキングレイ隊のリアクターさん?」
 獅子型四体を倒し終えてアラウンが派遣した二名と共にユキが駆けつける!
「やはりこの方が天同参花!
 初めまして、私の名前はリアクター・キングレイ。アリスト人族にして現在はボルティーニ団のキングレイ隊を率いる物でございます」
「こ、こちらこそ。僕は天同参花って言う」
「参花様! そこを適当にしてどうするの!」
 参花達はキングレイ隊五名と合流し、三の時を満たない急ぎ足で下り、ギャレイ土達のいる仮設民家群に戻った!
(そこから先の事は何故かユキにこっぴどく叱られ、睡眠時間を取る間もなく出発したよ!)

一兆年の夜 第二十一話 二つの星 進撃篇(三)

 午後六時零分零秒。
 場所はマンドロス山北出入り口。
 マンドロス山を下りた十名はそれぞれ晩御飯と仮設民家作りに勤しむ。その中でただ一名は迷いを払拭すべくある行動に出ようとしていた。
(マンドロス山は下りたのは良いけど、このまま僕はマンドロス町奪還に足を踏み出していいのかな?
 みんなの足手まといになってばかりじゃ門忍姉さん、狭間はざま姉さん、それに弐高にたか姉さんにも申しわけがない。
 だからってこんなに迷ってばかりじゃいつユキに怒鳴られるかわかんないよ!
 そんなのを避ける為にも真夜中にもう一度この山を登ろう! ここから確か南西に
向かって上れば僕が姉さん達と一緒に住んでいた建物に着くかな?
 いや着くよ! 必ず--)
「参花様!」
 ユキに話しかけられたのか、参花は全ての毛を逆立てた!
「お、お、脅かさないでくれない? 思わず心の臟が口から出そうだったよ!」
「まあた悩んでいたでしょう! 良くないですよ!
 参花様はもっと胸を張ってもらわないとみんなに示しが付かないよ!」
「そうは言われても困るよ」
「困ってる暇があるなら行動あるのみ! この言葉はあたしの母が生前耳の中が蜂
の巣になるくらい言われて辛かったわ!」
「母って?」
「母はイチゴ・ライダル! 元々あたしの家系は雌系なの!
 代々ライダル家は良家に使える一族故、雌が当主になるしきたりがあるのよ!
 まあそこの所は他の一族と異なるわ」
「それじゃあ君の父親は誰なの?」
「父は飛遊家から婿養子としてきたわ。名前はもうわからない。あたしが物心着く前
に亡くなったから」
「そうなんだ」
「何よ! 同情しないでよ! こう見えてあたしはしっかりしてるんだから同情される
と却って頼ってしまうわ!」
「むしろ僕は君に頼られるようになってないけど」
「頼りになるくらい胸を張ったらどうなの?」
「それは明日の朝になったらするよ!」
 はあ--とユキは溜息をつく。
「そんなに呆れなくても」
「そんな言葉を言う方は明日になっても言葉通りの事は出来ないのよ!
 だから溜息をついたのよ」
「うう! 僕ってそんなに期待されないんだ!」
「そうよ!」
 参花は落ち込んだ!
(辛いよ! やっぱりエリオットさんみたいになるにはまだまだかかるのかな?
 それにしてもユキを見ていると弐高姉さんとお話をしてるみたいで困るよ。
 ああ、登るべきかな? 銀河連合がいつ現われるかも知れないこの山に)
 迷いを抱えながら五の時が経過。

 午後十一時十分八秒。
 ユキは寝る前に参花の様子を見に彼のいる仮設民家へと足を運ぶ。
「はあ、あの方の作った仮設民家は良くない出来!
 それよりも中を!
 ええ、と。ユキ・ライダルです! 中に入って良いでしょうか?」
 ユキが小さな声で参花を呼ぶがうんともすんとも言わない。
「もう一度。ユキ・ライダルです。起こして申しわけありませんが、中をよろしいでしょう
か?」
 それでも反応しない。
「三度目の正直! ユキ・ライダルです。いい加減--」
「参花様はここにはおりませんだ」
 え--とユキは突如話しかけてきたアラウンに驚く!
「参花様ならだいたい二十の分より前にマンドロス山に登ったよだ」
「本当ですか?」
 疑いながらユキは仮設民家の中へ入るとそこに参花が居ない事に気付く。
「もうどうしてこんなに手間がかかるのよ!」
「仕方がないだろだ! これも生子様より続く天同家の伝統だ!」
「天同家は関係ないと思う!」
 そう言ってユキは自分の仮設民家に戻るなり、補充し終えたばかりの物部刃の
入った籠と手入れが完了したての望遠刀を背負ってマンドロス山へ登り始めた!
「やれやれだなだ。ただ、二名ばかりに勝手な行動をされては折角の報奨金である
五万マンドロン硬貨がただの金属になるだ! 誰か二名だけでも様子見に派遣しな
いとなだ!」

 午後十一時五十分八秒。
 場所はマンドロス山標高成人体型百八付近。
「イデ! いたた。どうして僕がこんな事してるんだろう?」
 参花は登り始めて五度も躓く。
(そもそもエリオットと会う前、どうして僕はマンドロス山を目指したんだ? 忘れたよ。
どうして目指したんだろう? あっ! そうだ!
 僕は港の者達から逃げたくてここまで来たんだ! いつまでも天同という名字から
離れたくて!
 でも無理だった! 今度はマンドロス町を奪還する為にこんな所まで!
 やっぱり僕には無理なんだ! 天同の家を継ぐなんて! 無理な事をどうして出来
るか!)
 悩みながらも参花は自分がかつて暮らしていた聖堂に戻ろうとまた走り出す!
 それから二の時が経過。

 七月十一日午前二時零分四十四秒。
 場所は廃崇神聖堂。正門より一番奥にある天同門忍の間。
「骨がまだある」
 そこには天同門忍の亡骸と思われる首だけの骨があった。
「えっと、ちゃんと二式雄略包丁はあるよな」
 彼は昨日とは異なり、鞘から包丁を抜けるようになった。
「いるんだろ!
 いるなら返事をしろ、銀河連合!」
「返事をしないわよ!」
 うわ--と参花は叫んだ!
「だから脅かさないでよ、ユキ!」
「勝手にここに来た参花様が良くないんでしょ!」
 参花の下半身はあまりに驚いた為、湿っていた。
「参花様。この件は報告しませんのでどうかここから戻りましょう!」
「また漏らした! こんな状態でそうやって戻れば良いんだ!」
「だからあたしが秘密にしますのでどうか--」
 参花は気付いた--ユキの背後に獅子型らしき影が襲いかかるのを!
「危ない、ユキ!」
「え?」
 ユキは振り返った!
 すると--
「あああああ!」
「させるかあああ!」
 食われる寸前で参花はユキを後ろに吹き飛ばす--同時に口から肛門まで貫く
ように二式雄略包丁を刺した!
「やらせてたまるか!」
 さっきまでお漏らしをしていた少年とは思えない行動と息遣い。
「ど、どうしてそんなに速く動けたの?」
 さっきまで二名との距離は成人体型およそ二十。そこから間に合うには遠すぎる
距離。
「あ、あ、危なかった……」
「参花様?」
 元の参花に戻った。
「ありがとう。お陰で助かったわ」
「ごめん。何だか恐怖のあまりまた漏れそうだよ!」
「はあ。見直した途端これだもん!
 さっさとここから出ま……え?」
「どうし……何でまた獅子型が!」
 唯一の出入り口よりさっき倒したモノと同じ体型の獅子型が五体、入ってきた!
「構えて、参花様!」
「あっ! そう言えば雄略包丁はさっき死なせた銀河連合に刺さったままだったよ!」
 参花はゆっくりと抜く。
「あんまり血に付けないで! 刃毀れが激しくなるんだから!」
「ごめん」
 二名は五体の獅子型と対峙する!

一兆年の夜 第二十一話 二つの星 進撃篇(二)

 午前九時三十分二十一秒。
 五つの仮設民家が五角形に並んでいる場所の中央には天同参花が立つ。
(いいのかな? 僕みたいなのが勝手に指揮官になるのは?)
 参花は自分に自信を持てない。その為なのか、背筋が猫族のように曲がる。
「背筋は真っ直ぐにして!」
 左横についたユキは参花を注意した!
「こ、これでいいかな?」
「『これでいいかな』じゃないでしょ!
 一応参花様には対等に話すよう隊長に命令されたよ!
 だったらそんな弱々しい喋り方は修正して!」
「助けてよ、ギャレイ土さん!」
 参花は助けを乞うもギャレイ土は首を横に振る。
「それはあ無理なごお相談でああります、参花様!
 いい加減ん諦めてえ我々真島隊にい指令を与ええて下さあい!」
「そうですんぞ、参花様!
 エリオット団長が亡き今、ボルティーニ団を率いるんのは参花様のお務めで御座いますん!
 どうか指令を!」
 前にいる三名は参花に土下座した!
(そうだった! エリオットさんはもういない。
 あの方が亡き今、この方達を率いるのが僕の務め!
 でも--)
「なあに考え込んでるのよ、参花様!
 ここは適当に下しても良いのよ!
 適当に!」
 ユキは左手で隠すように参花の左耳にのみ聞こえるような声で助言した!
「いいの?」
「『いいの』じゃない!
 『良い』っていいなさい!」
「わ、わかったよ!」
 代々続くライダル家の雌にだけ与えられし気迫に圧倒された参花は右手をお椀状の形に握り、口に当てて咳き込む!
「えーと、これから真島隊は山を下りて全ての部隊と集結します。
 えーと以上です」
「まあー参花様はー初めてなのーでこのくーらいは想定内ーだわ」
 四名は適当すぎる指令に少々呆れた!
(無理だよ、エリオットさん!
 みんなの表情が良くないよ! 明らかに僕に呆れている証拠だよ!)
 直ぐ考え込む参花に我慢出来ないのかユキは参花の左膝左横に右足による直角蹴りを叩き込む!
「イタイ! いあたあた!
 何するんだ!」
「しっかりしなさい! 考えてる暇があるならさっさと身体を動かしなさい!」
「はい……」
 参花は尻に敷かれる運命であった!

 午後零時七分三秒。
 場所はマンドロス山標高成人体型二百付近。
 五名は昼飯の五穀おにぎりを食べていた。
「あれが僕の姉さん達が言ってたマンドロス町。
 エリオットさんはこれを取り戻そうと命を懸けてたんだね……うっ!」
 二十回未満で胃の中に放り込んだ参花は咽を詰まらす!
 ユキは参花の背中を両握り拳で数回叩く!
「だから言ったじゃない! ちゃんと噛みましょうって!」
「ごめん!」
 ギャレイ土達三名はそんな二名のやりとりを微笑ましく感じる。
「まだまだ青いな、二名ともえ!」
「よく言ううよ! ロージャもお参花あ様達の年くらあいはそんなあ感じだった癖にい!」
「隊長はお生命が良くんないよ! ワシはユキちゃんくらいの頃は祖母の語りで夢中だよ!
 まあどの年か分からんけどリザヴェルタおばあさんは死んでしまわれたけど」
「ロージャさんーも何気に凄ーい方をお祖母ーさんに持って!
 あーあ、私もプート家に少しーでも優れーたのが居ーたら……何かー来るー!」
 参花とユキ以外の者は武器を持って臨戦態勢に入った!
「ど、どうし--」
「何してるのよ! さっさと腰に付けた物を抜きなさい!」
 ユキが望遠刀を構えた頃にはすでに彼等の死角から五体の銀河連合が現われた!
「銀河連合!
 って何で抜けないのさ! 昨日までは抜けたのに!」
 参花が二式雄略包丁と格闘している間に左から二番目に配置した銀河連合蜥蜴型が飛んできた!
「わあああ!」
 参花が悲鳴を上げるが、蜥蜴型が参花に届く間もなく、右肩から尻尾の付け根まで物部刃が貫通し、そのまま地面の上で痛がった!
「楽に死なせなくてごめんなさい!
 それよりも参花様! 雄略包丁を抜く時は力を込めないで下さい!」
「そ、それをやってるんだけどどうしても--」
「ちょっと貸しなさい!」
 ユキは参花から強引に雄略包丁を取ると、すぐさま鞘から抜いて参花の右手に握らせた!
「これでいいでしょ?」
「ありがとう、ユキ!」
「和んでえいるう場合じゃあありません!
 木の陰から銀河連合が現われてきたぞ!」
「え? そ、そんな!
 数えたら六、九! うわっ、十三もいる!」
「いえ、十四、十五になってしまったよ!
 ワシもさすがに手斧が持つのか心配になってきたよ!」
 ロージャはピネラに乗っかりながら増援として駆けつけた鹿型、鰐型を次々と急所に手斧を叩きつける!
「え! 今度はー混ぜ物の銀河ー連合まで増ー援に来るなーんて聞いてーない!」
 マンドロス町から飛んでくるように鷲型と蟹型が合わさった銀河連合が増援として駆けつける!
「も、もう良くない!」
「ここで弱気になら……無い!
 物部刃がもう尽きた!」
 ユキはそう言いながらも籠の中にあると信じて物部刃を手探りする!
「俺のお方も危険んだ!
 足斧の刃毀れえが深刻で叩きいつける以外のお使い道しいか無くなあったぞ!」
「ワシとピネラちゃんも同様だ!
 このままじゃ物量であいつらに食われてしまうん!」
「頼るのは、僕?
 無理無理! 僕じゃあいつに勝てないって!」
 参花達五名は死ぬ覚悟を固めようとしたその時--
「死んではなりませんだ!
 我達がいる限り神々の恩恵は我々に与え続けるでしょうだ!」
 齢十八にして三十日目になる神武八咫烏族最後の雄と思われるアラウン・アルティニムムが五名の後方より四名の雛鳥を連れて駆けつけた!
「あれはあアラウン! 遅いぞお!」
「我に説教していいのは狭間様だけだ!」
 アラウンは鷲蟹型に成人体型十まで詰めると背負っていた翼持刀を構えた!
「隊長ね! 僕はどうするね?」
 齢十七にして二の月と九日目になるアリスト鴨族の雛鳥はアラウンに問う!
「ここは我に任せろだ! カブ助達四名は真島隊の救援に向かえだ!」
「「「「は!」」」」
 四名の雛鳥は翼持刀を構えて襲い来る銀河連合を次々と打ち落とす!
 その間にアラウンと鷲蟹型との距離は五まで近付く!
 そして翼持刀の弦は自らの骨に衝撃を伝えるように弾く--放たれた物部刃は見事中央に命中し、鷲蟹型は血を出しながら落ちてゆく!
「すごい! これがボルティーニ団の方々の強さなのか!」
「はあ、こんなのが天同だとあたしはどこまで着いてこれるかな?」
 ユキが満足しない呟きをする間に戦いは終わった!
「運が良いいのかわかあらないが、俺達誰え一名も怪我をおするこおとなく戦いはあ終わったな!良いこおとだ!」
 真島隊とアルティニムム隊は銀河連合の死体を弔ってゆく。ただ一名を除いて!
(無力だ! あの方達とこれほどの差があるなんて!
 僕はどうすればエリオットさんに成れる?
 無理だよ、そんなの!)
 参花は未だに迷いの中に嵌る……。

一兆年の夜 第二十一話 二つの星 進撃篇(一補)

 午前三時五十分五十七秒。
 場所はマンドロス山標高成人体型六百六十八。
 五名が見た光景、それは数十の銀河連合の死体--その中央にカゲヤマノイズモノキミが立ったまま死んだ姿。
「本当じゃないよね? イズモノキミさんはこんなに身体がおかしくなっても笑ってあたし達を迎えるはずなのに!」
 ユキは手首の付け根の幅より少し小さな目から水滴のように涙を流す。
「死んでしまあった者はあもう神様だあって送り返さないさ。
 とおにかあく俺達は往うかないといいけない!
 イズモノキミはあ後ほおど供う養すればいい話いだ」
 ギャレイ土は心なく聞こえる事を言った為、ユキはギャレイ土を睨む。
「行きましょうん、ユキちゃん!
 今は生きているん者の手助けをしないと良くんないよ」
 そんなユキの気持ちを察したのか栗鼠族の中年は右手でお尻を触りながら慰める。
 しかし、それは--
「グオン!」
「いくら他種族とはいえ雌のお尻を触るのは倫理的に問題よ!」
 立派な猥褻行為だった!
「あーあー。ロージャさんはーどうしーてそんなことすーんのかな?
 いーくら慰めーるつもりでーあったーとしても」
「いいじゃああなああい、ピネラ!
 とこおおろで泣あき止んんだああ、ユキ?」
 シャラムがそう言うとユキの目はすっかり綺麗になった!
「ありがとうみんな!」
「……じゃあ行いこうかあ!」
 五名はイズモノキミを背に駆け抜ける!

 午後五時四十二分四十八秒。
「あれええは!」
 シャルムは見た--エリオット・ボルティーニが絶命し、四股の全てを引き裂かれる光景を!
「何かあ見えたあか、シャラム!」
「あああ! エリオット団長がああ!」
「団長がどうしたって? わかるんのか、シャルムちゃん?」
「エリオット団長はああ死んだああ!
 シャラムは大地に足を付けた後、淡々と答えた!
「え? 腰砕けたことは言わないでよ、シャラム?」
「そうよ! 団長はむっちゃ強いのよ! そんな団長が死んだなんて--」
「いや、俺もおそれが本当うかどううかこの眼えで確かめたあところどおう見てもエリオットがやあられてい……いや、急げ皆の者お!」
 ギャレイ土の足は速さを求めるかのように大地を強く蹴り続けた--エリオットの死体がある方に駆け抜ける!
「隊長ー! あたし達ーを置いていーかないの!」
 それに続くように四名も足や翼に血液を流し込みながらより速く駆ける--只一名は少しで遅れるように!
「みんな速いよ! あたしは人族だからそんなに速く走れないよ~!」

 午後五時四十四分五秒。
 場所はマンドロス山標高成人体型六百六十六。
「んんん、え、ぃ、お、ぉ、ぉ、ぁ……」
 齢十四にして十一の月と二十五日目になる神武人族の少年は銀河連合指揮官型の右拳を顎もとに受け、宙返りしながら地面に口づけしていた。
(僕は、このまま……)
 少年の意識は洞窟の中へと誘われる。それを確かめた指揮官型は少年を食らおうと左手を伸ばす。
「させえるかああああ!」
 ギャレイ土は指揮官の頭上より少し上まで飛び上がり、前右足で蹴った--指揮官型は反動で後ろに飛ばされた!
「よおし! 今だあ三名!
 至急こおの少年を俺達のお仮設民家まあで運ぶぞ!」
 ギャレイ土の合図と共にシャラム、ピネラ、ロージャの三名は少年の服を掴むと急いで指揮官型から離れて行く!
「遅れて申しわけ……って何して--」
 遅れてきたユキは三名が一名の少年を運んでいる様子を見て尋ねようとしたが、その隙を突くように指揮官型はユキに襲いかかる!
「しまあった!」
 ギャレイ土は予想以上に速い指揮官型の動きに驚愕と同時に咄嗟の反応出来ない!
「うわああああ!」
 指揮官型の左隠し腕から放たれる突きを見てユキは叫ぶしか行動できない!
 突きはそのままユキの身体に命中……しなかった!
 それはシャラムの心の部分を貫通したが、僅かであるがユキの身体に触れる事はなかった!
「え? シャラムさん?」
「ああ、だい、じょ……」
 シャルムはそのまま目を閉じた--永遠に!
「あーれ、シャルムーは?
 え! 何でシャルムがー?」
「シャラムちゃん! 君の死を忘れない!」
 二名はそれぞれの反応を示しながらシャラムに一の秒くらい黙祷した!
「シャラムさん? あ、あたしはどう--」
 悲しみのユキを好機と踏んだ指揮官型はシャラムの身体ごと貫こうとした!
 だが、それを阻むようにギャレイ土は飛び後ろ右足で指揮官型の顔を蹴った!
「逃げるうぞ、ユキ!
 今の俺達いではあいつにい勝てなあいかも知れない!
 悔しいけえど、あいつのお動きを見ればあすぐにわかあった!」
 口でユキの襟を掴んで自分の背中に乗せたギャレイ土はすぐさま指揮官型から全力で離れて行く!
「許さないわ、あいつ!」
「許さなあいのはこおっちも同じだあ!
 だが、今は戦うべえきではなあい!
 死んだあエリオットなあらそう俺達いに告うげたはあずだ!」
 四名はそれぞれの思いを胸に自分達のいる仮設民家へと逃げ込んだ!
 あれから一の日が経つ……。

 ICイマジナリーセンチュリー六十三年七月十日八時三十分一秒。

 場所はマンドロス山標高成人体型五百付近。ボルティーニ団真島隊の仮設民家。
五角形の右奥にあるユキ・ライダルの仮設民家。
「美味いよ、このご飯!」
 成人体型が一とコンマ一続く三と四の間。鶏量十二以上の少年は茶碗一杯まで
入ったマンドロス五穀ご飯を行儀の宜しくない状態で食べる!
「ご飯粒付いてるよ、君!」
「ありがと、君。何か可愛い子見ると僕は嬉しくて堪らないよ!」
 灰色の髪は顎まで伸び、前髪は睫毛より僅かだが下まで伸びる。
「やだ! 恥ずかしい!
 私の一族は代々細工無き顔とか言われて自信なかったのに!」
「そういや門忍かどに姉さんからライダルの一族はみんな頭が八つ分の身体をしていて、
綺麗に程遠いって言ってたのを聞いたことあるよ」
 両眼は人差し指の大きさより小さいが、瞳は青黒い。そんな瞳でユキを見つめ
ながら少年は姉の話をした。
「門忍? どこかで聞いたことあるような?」
「えっと僕には三名の姉がいたんだよ!」
 鼻は兎族のように母性をくすぐられるものだ。
「三名の姉? えっと君はひょっとして一番上に兄がいるでしょ?」
「兄? 物心つく頃になくなってるから詳しくはわからないけど棟一って言う兄は
いたんだよ!」
 幸福そうな伸ばすと顎まで着く両耳がある。
「んん! ま、まさか君の名前ってなんて言うの?」
「僕? そう言えば自己紹介する前に君に気絶させられたんだっけ?」
 上下唇は小指より僅かだが細く、拳が入るくらい口は大きい。そんな口で少年は
自己紹介を始める。
「僕の名前は参花さんか。名字は天同だけど、今はもう意味は成さないよ」
 端整な顔立ちで参花と呼ばれる少年はほぼ同じ年齢の少女ユキに満面の笑み
を浮かべた。
「天同?
 えっと、それって、つまりあたしはその天同という君に鳩尾に深く右手をあげたの?
 うう……申しわけありません参花様!」
「い、いきなり土下座しなくて良いのに!」
 天同参花。この物語の主人公である。

一兆年の夜 第二十一話 二つの星 進撃篇(序)

 ICイマジナリーセンチュリー六十三年七月九日午前零時一分六秒。

 場所はマンドロス山標高成人体型六百六十八。
「行かれました科、エリオット団長模よほど参花様乃事牙心配乃ようだ」
 齢三十五にして四の月と四日目になる成人体型一とコンマ四はある神武鬼族の
中年カゲヤマノイズモノキミはエリオットの後ろ姿が見えなくなるまで見つめる。
「参花様は本当に天同の雄ですかス?
 どうして俺達の心配ばっかりかけるス!」
 齢十八にして三の月と二十五日目になるメデス蟷螂族のジンバル・ムシャリーニ
は参花の情けない姿ばかり見ていたので少々呆れていた。
「間違いなく、天同の者です。
 でも、あの方は、その事に、気付かないわ」
 齢二十三にして一の月と三日目になるクレイトス飛蝗族のライ子来栖は弁護した。
「とにかくエリオット殿牙行かれた以上、後端……何だ?
 あれ端、銀河連合!」
「本当だス! しかも四方八方とこちらに向かっているス!」
「という事は、二名の身が、危ない!
 私は今すぐ、参花様と、団長のところに、向かう!」
 そう言ってライ子はエリオットが向かった方角へと飛び足で素早く駆ける!
「ジンバル!」
「何でしょうス、イズモノキミさんス?」
「君端今すぐ別乃隊似伝えてくれない科?
 もしかする斗俺達だけ出端防ぎきれない可能性牙出て来る乃出奈!」
 イズモノキミがそう告げた頃には周囲成人体型五まで迫っていた!
 その数は二十に上る!
「良いのですかス? この数ではさすがのイズモノキミさんでも--」
「行け! このくらい尾相手似出来なくて何牙鬼族だ!
 ここから奈羅多分神武最後乃生き残り出ある八咫烏族アラウン・アルティニムム
乃部隊牙いるはず!」
「方角は気にしないス! なるように神様が導いてくれる事を願うス!」
 イズモノキミは北東に位置する飛蝗型を右手に持ったこん棒で全身を打ちつける
と、左手でジンバルを放り投げた--成人体型およそ二十九まで飛ばされた
ジンバルは十回転しながら両足で綺麗に着地すると、すぐに走ってゆく!
「ここから先端行かせん!
 行きたけれ葉俺尾食らう牙いい! 美味しそうだろ?」
 イズモノキミの周囲に集まり、まるで合図があるかのように一斉に突撃してゆく!

 午前零時四十七分五十八秒。
 場所はマンドロス山標高成人体型五百九十付近。ジンバルの目の前には五つの
仮設民家が正五角形を描くように並んでいた。
「見つけたス! あの紋様は八咫烏族のアラウンさんの物じゃないス。
 けどエウク馬族の真島さんならきっと--」
「あらら? どうしたの、ジンバルさん?」
「うわス! ユキちゃんス! 後ろから声をかけないでくれないかス!」
 齢十五にして一の月と一日目になるアリスト人族の少女ユキは瞼が半開きの
ままジンバルに話しかけたため、叫び声を響かせた--それを聞きつけるように
中央の仮設民家から齢二十七にして六の月と二十八日目になるエウク馬族の青年
が、左奥からは齢二十二にして三日目になるアリスト犬族の女性が、左手前から
齢二十一にして九の月と五日目になるエウク梟族の女性が、最後に右手前から
齢三十にして二の月と八日目になるキュプロ栗鼠族の中年が出てきた!
「何のさわ……ってジンバルじゃあないかあ!
 エリオットやあイズモノキミとお一緒じゃあないのか?」
 すぐさまジンバルのところに駆け付けた真島と思われる青年は疑問をぶつけた!
「実は俺達のいる仮設民家に銀河連合が襲撃してるんだス!
 真島ギャレイ土さんス! どうかか--」
「言われなあくてもそおうすうる! これはあ我が先祖真島ギャラッ都のお頃から
受けえ継がれえてきた真島のお心が決めてああるう!
 皆の者お、行くぞお!」
「「「オオ!」」
「え? 隊長! いきなり向かうんですか?
 場所がどこにあ--」
 ギャレイ土と呼ばれる青年とジンバルを含めた四名はすぐさまジンバルが走って
きた道を辿る様に駆けてゆく!
「ってまたあたしが居残りなの! どうして雄達はいつも勝手なのよ!
 いいわよ! ただし帰ってきてもお迎えしないんだから!」
 雪と呼ばれる少女は水色の長髪で馬族の形をした髪型を左右に乱しながら均等
な配分をした顔を赤くしながら右奥の仮設民家へと帰った!

 午前零時五十九分四十一秒。
 場所はマンドロス山標高成人体型六百十付近。
 五名はイズモノキミが戦っている場所に向かっていた!
「隊長おお!」
「話しかけるうな! 息があ荒げえるだ--」
「右方よおおり成人体型百を見たところなにやら人族らああしきいん影が二つ
ほおど見えまああすが?」
「本当なあのかあ、シャラム?
 本当なら見下ろおすようにい見えるうのか?
 それとも見い上げるよおうにい見えるのおか?」
 ギャレイ土の問いにシャラムと呼ばれる女性は一の分眺めてこう答える!
「見上げるううよおおうに! どおおうしま--」
「シャラムちゃんには良くんないけど、銀河連合がワシらを囲んだよ!」
 十六体の銀河連合は二組ずつ八方に五名を囲んだ--その中には空戦に
長けたモノはいない!
「ギャレイ土さんス!」
「何いかな、ジンバル?」
「是非ス、俺を二名の所に連れてってくれないでしょうかス?」
 四名はそれを聞いて『はあ?』と声を揃える!
「坊やはーよっぽーど危なーい目に遭いたーいでしょ?」
「そうじゃないス!
 これはよくわからないけど俺自身が決めた命運びのような気がするんだス!」
 こうしてジンバルの運命は決定された!
「……わかったあ!」
「隊長! いくら何でも--」
「行かあせろお! そいつはあ今、命をお賭してえるんだ!
 何かを得るうのなあらそれに越したことおはなあい!」
 ギャレイ土は力業で三名を納得させた--その内の一名シャラム・シャウルル
は諦めるようにジンバルに右翼を差し伸べる!
「私にいい捕まあありなさああい!」
「ありがとうス、シャラムさんス!」
 右刃を差し出したジンバルは傷つけないように握手した後、すぐさま彼女の背中
に乗った!
「隊長おお! 無事運んんでええ行きまああす!」
「行ってーらっしゃーい、こーっちは私ー達で何とかしーとく!」
「必ず生きて戻りまス!」
 その言葉を境にジンバルは二度とギャレイ土達三名に生きて会う事は叶わなく
なった!
「来るん!」
「たあかが馬型でええ!」
 ギャレイ土は馬型が前右足に装着した二式足斧に類似した物を懐に飛び込む事
で回避--すかさず前左足に装着した二式足斧で胸から正中線を通るように頭上
まで切り上げて倒す!
「真島ギャレイ土をお甘く見なあいこおとだ!」
 ギャレイ土と二名は残り十五体を相手におよそ一の時をかけて戦う!

 午前二時一分八秒。シャラムが戻って四十五の分が経過。
 銀河連合は残り十八体。
「刃毀れーが激しーい! 何で援軍がー大量にー来るのーさ!」
「望遠刀もおお残おおり少なああい!
 こおおのままあじゃ翼持いい刀がお飾あありになあるわああ!」
「そんな事いわ……しまった!」
 栗鼠族の中年は背後に羊型の接近に気付くのが遅すぎた!
 しかし--
「こ、これは望遠刀?」
 食らう後一歩のところで羊型は背中からのど仏を貫通するように物部刃が刺さり、
口から赤黒い血液垂れ流しながら息絶える。
「ふあああ! 眠いけどあたしの腕は眠ってないわよ!」
 人影の方向に身体を向ける四名より成人体型二十離れた場所に水色の長髪を
左手方向に揺らしながら望遠刀を右手に、物部刃を左手に持ったアリスト人族の
少女が月を背景に立つ!
「いいかあらさあっさと援護おしろ、ユキ!」
「ブーだ!」
 ギャレイ土に向かって舌を出しながらユキは残り九本の物部刃を的確に銀河連合
一体ずつ当ててゆく!
 ユキが駆けつけて一の時が経過。
 ようやく全ての銀河連合を倒した!
「やったわ!」
「喜ぶのおはまあだ早あい!
 俺達はシャルムが見つけた方角へと向かうぞ!」
「えっ! って待ってよお!」
 四名はまたしてもユキを置いて駆け抜ける!

売国奴は自分しか考えないか、思考停止した奴だ

 どうもタイトル名が稚拙すぎて「こいつ何言ってんだ?」と思われてますdarkvernuです。
 早速ですがそんなタイトル名にちなんだ時事ネタをどうぞ!

 時は2019年X月Y日。
 平成の御代は終り、時の官房長官は『安寧』という年号を定めた。

 それまで日本はC国の核による総攻撃を受けて、焼け野原になる(平成二十七年の出来事)。
 K国出身の初めてとなる総理大臣の就任により、日本人差別の激化(平成二十八年の出来事)。
 A国による自由化の要請を受けて皇室から思想までの自由化。これによりモラルは崩壊(平成二十九年の出来事)。
 平成の三大震災によって国土は三分割され、特定アジア国家群による支配を実現した関西中華の建国、グローバル資本による支配を実現した関東経済の建国、アイヌによる国家と見せかけた特定宗教団体による支配を実現した蝦夷革命の建国(平成三十年の出来事)。
 そして現在--

「僕の愛した日本はもう無い!
 自然溢れる大地も八百万の神も現人神たる天皇陛下も地上から消えた!
 誰のせいでこうなった! 社会主義か! 新自由主義か! 考古学か!
 いいや違う! 売国奴だ!
 売国奴のせいで日本は消えた! 愛すべき日本国民はもう僕一人だけとなった!
 奴等は自分のエゴで満足し、なおかつ他者を顧みようとしない奴か!
 あるいは自分が正しいと思い込んで他者にエゴを押しつける奴か!
 いずれにしろ売国奴は日本を滅ぼしたんだ!
 奴等は日本人じゃない! ましてや外国人でもない! それ以前に人間ではないのだ!
 自分の故郷を顧みず、国を売る為なら何でも壊し、食らい、そして奪う!
 奴等はその為なら甘い言葉で僕達日本人を騙す! 革命だって唱える! 保守だって騙る! レッテルなんて息を吐くように貼る! 心身を傷つける事も伝統・文化を捨てる事も何でもする!
 残ったのは僕一人だけ。
 この大地で僕はただ死んでゆくのか!」

 神の国日本は安らかに息を引き取る(安寧元年)。


 とまあ未来の日本を後ろ向きに描いたものです。というかこんな未来は御免被る!
 とにかくこんな話を作った理由はかの駄目大人党に所属していた党で一、二を争う売国奴ノナーへの怒りをぶつけました。「つーか角栄を捏造するな、痴呆老人が!」とか言うレッテルを貼りました! レッテルを貼る者は自分の主張を通したいが為に貼ります!
 話は戻します。ノナーの売国実績を調べたい方はどうぞ調べて下さい。つい最近のように棚上げ論だけじゃないですよ! 例を出すなら北のK国の拉致被害者の訴えを退ける。または北のK国を崇める。拉致被害者五人を北のK国に返そうとした!
 とにかくノナーは紅の傭兵、カトオオオオ! エロタクパンさん、悪い方の中川、マキの旦那、嬉しくない太郎、こんにゃく利権のNという人、元ミス日本のミスリードさん、二階建ての人、サブカル以外愛国者のサナ何とかさん、そして議員ではないがアメリカ国民平蔵ら駄目大人党の売国メンバー共々弾避けとして使いたい気分だ! そいつらの人権を無視できるならな(怒)!
 まあ自分自身もこんな事を書いていてもどこかで日本を売りつける行為に走るかもわかりません。何しろ題名にも書いてあるとおり自分しか考えないか、思考停止したか? 自分は圧倒的に後者に偏って日本どころか地球だって売り飛ばすかも知れません。忍者戦士飛影のハザード・パシャみたいに(笑)。
 とにかくこれだけは頭に入れといて下さい! どんなに国を守る思想があっても最終的には国そのものを滅ぼす思想に成るということを! これは社会主義とか新自由主義とかそんなありきたりなものじゃありません。思想なんてどこまで行っても少数単位でのみ力を発揮するのであって大多数では様々な弊害を生み、戦争だって起こせます。なので自分の信じたものが本当に正しい事をやってるのかを自分自身の心の均衡が揺れないギリギリのところで冷徹に判断していかないと手痛いしっぺ返しを食らいます。ほらあるじゃないですか、ちょうど駄目大人党みたいにあらゆる局面で失望するように(苦)!
 堅苦しい話はここまでにしましょう。以上で時事ネタの解説を終了します。

 では第二十話の解説に入ります。
 今回は三部構成の序。主人公は天同参花。れっきとした天同の仙者。
 彼の物語はまだ始まったばかりですので弱々しい上、物覚えが悪いなんてのは当たり前です。
 そういった部分を補う形でエリオットという青年が少年を導きます。エリオットは真逆に位置するようにとにかく強い。物真似一族だから強いという一面もありますが、それだけじゃありません。エリオットの強さを支える部分には参花にはない経験則、盲目が却って他所の部分に集中した事で動きが磨かれる、心が強い、それがエリオットの強さを支えてます。
 だが、そんなに強いエリオットにも限界が訪れます。久方ぶりに登場の指揮官型です。結果はまあ内容を見れば明らかです。
 当然指揮官型は勝てるのかという思いはあるかも知れませんが、この中編は三部構成とは謳ってますが、それぞれ合わせても展開は早いです。何せ合計九日間のお話になってますので残り六日で怒濤の如き決着を表現しますので期待して下さい! たぶん納得させられんだろうけど(辛い)。
 話は変わりまして、仮設民家とはどんなものかについて説明します。これは一言で表すならテントです!
 しかも遊牧民が使うテントに近い。なので現代のように簡単に出来るテントではありませんので組み立てには技術がいります。
 続いて鋭棒について説明するよ。これは槍です。しかも最初ですので原始的な構造の槍です。なので近代戦に使われるやり見たいにとり回しや貫通性に優れているわけではありません。
 それから最後に傭兵集団について説明します。遠すぎる過去の傭兵はただ戦いだけの傭兵という概念じゃありません。日常生活の支援や公共事業の助け船、それだけじゃなく技術支援といった住民の支援が中心になってます。ただし、傭兵である以上は無償でやってくれるとは限りませんのでその部分はシビアにやりますよ。まあ無償でやる者が大多数だけど(笑)。
 以上で第二十話の解説を終えたいと思います。

 それじゃあ今後の予定を載せますね。

 六月
 十七日~二十二日   第二十一話 二つの星 進撃篇      作成日間
 二十四日~二十九日  第二十二話 二つの星 覚醒篇      作成日間
 七月
 一日~六日        第二十三話 人生貸借対照表       作成日間
 八日~十三日       第二十四話 二十四時間の脱出劇    作成日間

 参花はこれからどのように成長するかは読んでのお楽しみですぜ!
 一応これだけははっきりします。二十一話で才能が開花し、二十二話で覚醒します。しかも六日の内に!
 まあそれだけを頭に入れてください。ではこの辺でさいなら~。

一兆年の夜 第二十話 二つの星 接触篇(八)

 午前四時五十三分三秒。
 場所はマンドロス山標高成人体型六百六十六。
「鋭棒が!」
 エリオットが放った突きは第二左隠し腕で掴まされ、右腕で雑巾絞りの如く壊された!
「強い! 自分は指揮官型を倒す為にここまで強く成れた!
 だが、お前もまた自分が強くなる間に強くなっていたのか!」
 エリオットからの質問に対する指揮官型の答えは左飛び膝蹴りによる攻撃だった!
「当たら……ガァア!」
 エリオットは指揮官型の左つま先を右こめかみに受ける--とっさに前受け身する事で衝撃を和らげるも指揮官型は反撃の機会を与えずに追撃して行く!
「銀河、連合が自分達と同じように学んでゆくことは知っていた!
 それでも自分と同じように五感の全てを駆使するなんて予想できない!」
 エリオットは追撃を躱しながら己自身の心が徐々に押されていることに気付かない!
「自分は棟一様の物真似でここまで強く成れた!
 今度こそお前に勝てると思っていたのに!」
 指揮官型に勝つという地震が徐々になくなってゆく--身体捌きで指揮官型の攻撃を躱しながら反撃の機会を伺いながら!
「自分は、自分はエリオット・ボルティーニ!
 ボルティーニ家最後の雄として今度こそ逃げずに銀河連合と立ち向かうんだよ!
 今度こそなあ!」
 指揮官型が第三左隠し腕による右斜め上による薙ぎ払いで隙が出来たと睨んだエリオットは左足に力を込めて懐まで近付く!
 そして、鳩尾に向かって右肘撃ちによる攻撃を放つ!
「今度こそ……ガ、アァ!」
 エリオットは何が起こったのか理解できない--鳩尾に衝撃を受けたのは指揮官型ではなくエリオット自身だった!
「ま、さ、か、腕だけじゃ、ない、のか?」
 指揮官型は足にまで隠してあった--股間から生えた隠し足による膝蹴りを鳩尾に受けたエリオットは口から茶碗一杯分の血液を空に向けて吐く!
「死、ぬのか? こ、のま--」

 午前五時二十分二十一秒。
 参花は転んだ!
「イデエ! ま、また擦り傷が!」
 以前と異なり、血が出ただけで泣き叫ぶ彼ではなかった!
「僕はやっと雄略包丁を抜くことが出来たんだ!
 だからこそエリオットの加勢に向かわ……ってあれはジンバルさんを死なせた銀河連合!」
 蜂型は参花に向かってくる!
「力を入れるんじゃない。流れの赴くままに抜くんだ!」
 イズモノキミの遺言に従い、参花はゆっくりと雄略包丁を抜き放ち、そして--
「ジンバルさんの切り方を真似てみるよ!」
 左斜め切りを放つ--蜂型は左前羽を切られたがそのまま突撃してゆく!
 参花はそのまま上から下に真っ直ぐ振り下ろす--ほんの僅かだけずれるも蜂型はやや斜め下に両断された!
「はあはあはあ。やったよ!
 僕だってやれば出来るんだ!」
 両手を上に上げながら喜びを表現した!
「でもこれで僕も神様に申しわけ立たなくなったよね!
 生命体を死なせたんだから」
 その後、顔と両手を地面の方に向けて後悔した!
「はあ。僕はこれからどうすればいいのかな?」
 参花はしばらくそのままの状態で考えた。
(銀河連合を死なせる事がこれほどまで、心に響くなんて!
 でも、僕はそれ以外にも……あ! そうだ!
 エリオットさんの所に向かわないと!)
 何の為にここまで来たのかを思い出した。
 そして、天同参花は走り出す!
「待ってて下さい、エリオットさん!」
 刻一刻と激しくなる雨の中を!

 午後五時四十二分四十二秒。
 場所はマンドロス山標高成人体型六百六十六。
 雷が周囲より一番大きな木の上に落ちた--雷光は直立立ちした指揮官型が全ての隠し腕をエリオットの身体数箇所に刺したのを鮮明に映し出す!
「エ、リオットさん?」
 参花はこの光景を死ぬまで刻みつける--ボルティーニ家最後の雄にして参花にとって届かない星であったエリオットの姿を!
「エリオットさああああん!」
 絶命したエリオットを指揮官型は四股を分解してゆく!
「もうやめろ!」
 参花の訴えなど聞く耳を持たないのか、今度はエリオットの心臓、左眼、脳と言ったあらゆる器官をほじくり返してはそれを参花に返してゆく!
 当然参花の心には怒りで満たされてゆく!
「こんな事は、こんな事は生命のする事かあああ!」
 参花は鞘から雄略包丁を抜くと怒りにまかせて指揮官型へと突撃する!
「え?」
 指揮官型は参花の予想よりも早く懐に飛び込み、顎元に右拳を振り上げる--参花は高度成人体型二ほど飛び、そのままうつ伏せに倒れた!
(こ、ん、な、に、ゥォ……)
 参花の意識は洞窟の中へと誘われる。

 未明。
「ん? ここは--」
「起きたかしら?」
 参花の眼はゆっくりと開く。
「だ、れ?」
「あたしの事? あたしはユキ。アリスト人族のイチゴ・ライダルの第三子よ!」
 齢十五にして一の月と二日目になる水髪をした長髪の後ろ髪をキュプロ枝に似た紐で括った少女ユキを見て参花は暗い顔をする。
「何なの? 何暗そうなのよ!」
「だってここはあの世だと思って後悔してるんだ」
 参花は鳩尾に右拳が入るのを感じ、意識が朦朧とし始める!
「礼を欠く雄ね! ここはれっきと--」
 参花はそれ以降の記憶はないが、少なくともこれだけは確信した!
(僕は生きてるんだ! 生きなきゃエリオットさん達に申し訳が立たない!
 僕はエリオットさんがやれなかったマンドロス町奪還と棟一兄さんを死なせた銀河連合を必ず倒す!
 それが僕に出来るエリオットさんへの弔いだ!)
 こうしてエリオットとの三日に終りを告げ、新たなる三日が始まる。
 それは二つの星が銀河連合への反撃の狼煙を上げて国家神武への弔い合戦をするように……。


 ICイマジナリーセンチュリー六十三年七月十日午前六時二十五分五十八秒。

 第二十話 二つの星 接触篇 完

 第二十一話 二つの星 進撃篇 に続く……

一兆年の夜 第二十話 二つの星 接触篇(七)

 エリオットは鋭棒の半径より三分の一まで指揮官型が入ると、すぐさま突きを放つ!
「当たった!」
 それは参花が見た幻だ--右寄り中指ほどの長さをもって指揮官型は避けた!
「感触がない!
 しかし一打目は想定内だ!」
 エリオットの予想は的中した--故に奥深くまで突きを入れることなく鋭棒を引っ込めた!
 その隙を突くように指揮官型は雄略包丁に類似した物を握った右手で甲を下にした状態で横薙ぎをする!
「槍を横にして受け流したの!」
 反動を応用しながらエリオットは尻部で指揮官型の喉仏を攻撃!
「掴んだ! どうして右手で掴める! あれはさっき……あれ?」
「隠し腕……知ってたよ!」
 エリオットはそこまで想定した--掴んだ時の流れに赴くまま左足を指揮官型の左足首に引っかけて背負い投げをした!
「また隠し腕……うわ!」
 今度はエリオットが同様の方法で投げられたが--
「いつまで投げの応酬を繰り返す!
 その度にエリオットさんとあの指揮官型は強打を避け続けるなんて--」
「何をなされてますか参花様ス! 指揮官型の狙いは参花様でス!」
 エリオット達が戦いを繰り広げるところを横切るようにジンバルは参花の正面に立つ!
「どうゆう--」
「危ないス!」
 参花の真上より蛇型が来襲--ジンバルは傘下の両肩に乗ると蛇型の首を切り落とした!
「わああ! 血、が出たああ!」
「それは銀河連合の血だス!
 さあ行きましょう参花様ス!」
「行くってエリオ--痛いって! 前足をひっかけないでよ!」
 雄略包丁の刃に当たらないよう、ジンバルは前右足で参花の右手を絡めながらエリオットが戦っている周囲から離れてゆく!
「来たぞス、来たぞス!
 銀河連合はライ子さんを死なせるだけでは足りないのかス!」
 二名の全周囲より八体の銀河連合が参花を食らいに襲いかかる!
「も、もう絡めないでも平気だよ! 僕だって雄だ!
 このまま戦わないなんて死んでいった姉さん達に申し訳がつかない!」
 前足を強引に離すと、参花は左腰に掛けた錦雄略包丁を鞘から抜こうと引っ張るが--
「どうして抜けない! やっぱり力が必要なのか!」
 もがく参花の背後に蟷螂型が両刃を振り下ろす!
「させるかス!」
 ジンバルは両刃を切り落とすとそのまま脇腹に刃をめり込む--蟷螂型は黄緑色の体液を吐き出した!
「ありがとう、ジンバルさん!」
「礼を言うのは最後まで銀河連合を倒した後にしてくださいス!」
 参花とジンバルの二名はエリオットと離れながらもそれぞれ足を止めない!
 一方は鞘から包丁を抜こうと力を込める!
 もう一方は刃毀れを起こしても一体ずつ銀河連合を倒してゆくが--
「お前で最後だス!」
 ジンバルは最後の一体である蜂型に両刃による横薙ぎを放つ--下に避けるという予想外の行動をとられたジンバルに隙ができた!
「何だス! うわあああ--」
 ジンバルは股間をくらい、そのまま全体を食われてゆく!
 その光景を見た参花は思わず--
「ジンバルさあああん!」
 叫び声とともにジンバルの死体に背を向けながらそのままの状態で走ってゆく!

 午前三時一分二十五秒。
 場所は標高成人体型六百六十八。ボルティーニ団の本組が寝床に使う仮設民家が建てられた場所。
 参花が戻った頃には--
「僕の仮設民家が! それにみんなの物まで!」
 風景は大きく異なっていた--倒壊した仮設民家には数十もの銀河連合の死体があった!
 その中央に一名の生命が体中傷を受けながら立っていた!
「イズモノキミさん! 無事だったんだね!」
 参花はイズモノキミに駆け寄った--彼は気付いてしまった!
(ああ、左目が飛び出して、右手が千切れるように外れそう!
 それにこんなに血が出たら--)
「参花様。未だ似包丁乃抜き方牙わからぬようですね」
「あ!」
 参花は今まで右手で鞘を抜こうとした状態で動いていた事に気付く!
「いいです科。包丁尾抜くとき端力出抜く乃端いけない事奈乃です。
 鞘乃神様端力出引っこ抜く乃尾好みません」
「な、何を言ってるんだ! そんなことよりも包帯を--」
「流れ乃赴くまま似抜いてみてください!
 そうすれば……」
 イズモノキミは雄略包丁の抜き方を教えたまま生命活動を停止した!
「イズモノキミ。
 だから言ったじゃないか!」
 参花がイズモノキミの死を悼む間、静かに鞘から二式雄略包丁が抜かれてゆく。
「やっと抜けたよ! でも抜いたのにどうしてこんなに悲しいんだ!」
 参花の上空より雨が降り始めた。
(ライ子来栖さん! ジンバル・ムシャリーニさん!
 そして、カゲヤマノイズモノキミさん!
 僕はどこを目指せば……目指す星はまだあるよ!)
「包丁が抜けた今、エリオットさんを助けないと!」
 参花はイズモノキミの亡骸を背にエリオットがいる標高成人体型六百六十六へと向かった!
「雨が止めばもっと見えるのに!」
 今はまだ雨は勢いをつけたばかりだ……。

一兆年の夜 第二十話 二つの星 接触篇(六)

 午後十一時三十分二秒。
 場所はマンドロス山標高成人体型六百六十八。
「完成した! 今日は最短記録をたたき出したぞ!」
 彼は一の時と二十の分かけて仮設民家を完成させた。
「ふあああ。そろそろ寝ないといけないよ。僕は銀河連合の死体に直接触れることが出来ない代わりに全ての死体に塩を撒くので大変だったから疲れたよ」
 参花は自分が作った仮設民家の中に入ろうとした。
「あれ、はイズモノキミさん?」
 イズモノキミがエリオットがいる仮設民家に入ってゆく。
「あんなに大きい身体で二名一緒だと寝にくいよ」
 そう言いながらも参花はエリオットの仮設民家に気付かれないように近付き、中を覗く。
「……つまりメッサーシュミット組斗合流する頃似端棍棒以外乃武器端使い物似ならなくなる訳か!」
「銀河連合のやり方は徹底している! 相手を追い詰める為なら仲間を捨てることさえ平然とやれる!
 このままじゃ間違いなく次で自分達の誰かが死ぬ!」
(僕達の誰かが! 本当、じゃないよね?)
 参花はその話を信じない--彼の中ではエリオット達は不動の存在だ!
「だが、こんな所で死ぬのは御免だ!
 死んでいった彼等の為にも自分がどう足掻いても届かない星をマンドロス町に連れて行かないと!」
(星? 誰なんだろう?)
「あの方端そこまで大きくなれる存在なのか?
 確か似俺達斗端明らか似異なる呼吸尾している斗端いえそんな似早く成長できる斗端思えないが」
「イズモノキミ殿! あなたなら天同生子の逸話を知っているはずだ!」
「天同生子? ああ、国家神武尾建国なされた歴代出最模強い斗謳われる仙者乃事かね?
 参花様端その方斗端系図上乃繋がり端ある似しても--」
「参花様は壱生様の孫だ!
 その壱生様を自分の子に成された理由を御存知か?」
「それ端知らないぞ。どういった経緯なのだ?」
「壱生様がお生まれになられた日はな。同時に生子様にとっては肉親を死なれた日でもある。
 そんな悲しみに暮れる生子様を壱生様は生後間もないというのにお励ましになられたのだよ!」
「それ端どこまで色牙ついた話科端わかりません。
 ただ言える事端壱生様似関する生前乃お話端多すぎます。そんな話牙あっても不思議出端ないですね」
「壱生様は素晴らしい御方だよ! 彼がいたからこそマンドロス町は大きく成れた!
 そんなマンドロス町だからこそ天同棟一は死んだ今でも取り戻したいと願う!」
「そこまで棟一様牙お考え似なられた科端計り知れません。
 死者端生者似言葉尾交わす事端永遠似訪れない乃ですから」
(死者は成者に言葉を交わさない? 姉さん達がそうであるように!)
「でも遺す事なら出来る! 今でも参花様の懐にイズモノキミ殿が渡した手紙があるはずだろ?」
(手紙? あ! 無い!)
 参花は手紙を置いていった事に気付く!
「あの手紙端確かエリオット殿乃言葉尾聞きながら俺牙書いたな!
 それ牙どう……まさかあなた端--」
「大丈夫だ! 自分はそう簡単に……ん?
 そこに居たはずなのにどうした!」
 エリオットは初めから参花が覗いている事に気付いていた。
「まさか参花様端俺達乃話尾こっそり聞いていらしたなんて気づき模しませんでした!」
「今すぐ参花様を連れ戻さないと! あの方は手紙をお探しに戻っているぞ!」
 エリオットは勢いよく仮設民家を出るとライ子とジンバルを叩き起こして参花の捜索を命じた!

 七月九日午前一時二分四秒。
 場所はマンドロス山標高成人体型六百六十六。その標高はかつて天同弐高が銀河連合に食われた高さ。
「イデ! うわああ! 擦り傷が!」
 十四に成ろうとも怪我をしただけで泣き叫ぶ姿に変化はない。
「血は良くないよ! 助けて、弐高姉さん、狭間姉さん、門忍姉さん!」
 死者は生者を助ける事はない。
「……そうだよな。ヒック。僕が泣いても三名は来てくれないよね。
 だって三名は--」
「いや、生きてるだろ? 参花様が生き続ける限りは!」
 参花が振り向くとそこにはエリオットが立っていた!
「エリオットさん! どうしてここがわかったのですか!」
 その問いに答えず、左手で手紙を渡した!
「新しく書きました! イズモノキミだってお暇じゃありませんよ!」
「あ、有り難う! こ、今度は大事にするよ!」
 参花は急いで自分の懐にしまった!
「さあ帰りましょう! 夜は自分達を暗くします!」
 エリオットが右手を差し伸べようとしたその時だった!
「大変です! ぎ、銀河--」
 ライ子からそれ以上の言葉を出す事は叶わない--真っ二つにされた以上は!
「ああ、ああ、ああああああ!」
 ライ子の死を目撃した参花は周囲成人体型七まで届く叫び声を上げた!
「お前は知ってるぞ! お前が、お前こそが棟一様を死なせたんだという事を!」
 エリオットは蘇我鋭棒を両手に握り、そして突きの構えをした!
「棟一兄さんを? 知ってるの、エリオットさん!」
 天同棟一をやったと思われる銀河連合--成人体型は一とコンマ四を超え、体型こそ人族であるが、胴体の所々に何かを出しそうな跡がある。
「そいつはかつてマンドロス村に駐屯していた指揮官型だ!
 自分達の星にはいない形をした銀河連合!
 そして盟友である天同棟一を死なせた銀河連合なのだよ!」
 エリオットは距離を詰めてゆき、周囲で六番目に小さな木から垂れ落ちる葉が地面についた瞬間--大地を蹴った!

一兆年の夜 第二十話 二つの星 接触篇(五)

 午前十一時五分三秒。
「ふわああ、ようやく……ってあれ!」
 参花は自分が丹精込めて作った仮設民家を解体されるところを見た!
「な、な、な、何してるんですか!」
「何ってス? 出発する為に皆の仮設民家を折り畳んでるス」
 参花は起きたてなのに急に眠くなった--一生懸命作った物を僅か七の時足らずで解体されるところを見て落ち込んだ!
「仕方乃ない物です、参花様!
 俺達端マンドロス町尾取り戻す為似模一乃秒出模大切似しない斗ならない乃だから!
 おにぎり尾どうぞ!」
 イズモノキミ乃左手より差し出されたおにぎりを右手で茫然自失になりながら捕ると静かに食べ始める。
(やっぱり僕には無理だったんだよ! だからジンバルさんは解体していくんだ!)
 参花は少々後ろ向きになっていた。
「気に、しない事、ですよ、参花様! 世の中とは、そう簡単に、運ばないモノです!
 なので、前に、進んで、いきましょう!」
 ライ子は出来る限り参花を励ますが、効果は薄い。
「全て畳んだな! じゃあ行くぞ皆の者!」
「「「オオ!」」」
 エリオット達はマンドロス町に向けて歩を進めて行く!
「あ! このままじゃ置いてかれてしまう!」
 参花は彼等の後に続くように歩を進めた--後ろ向きなまま!

 午後七時八分三秒。
 場所はマンドロス山標高成人体型五百十二。ちょうど廃テレス村が見える位置。
「山登りがこんなに辛いなんて!」
 未だに参花の足はマンドロス山に慣れない。
「おかしいわね。一の年より、前までは、この山で、暮らしてた、参花様、らしくないわ!」
「暮らしてたけど、実際には山をうろついたこと無いんだよ!
 門忍姉さんは外に出るのを許可してくれないし!」
「本当にこの方は天同なのだろうかス?」
「いいよ。天同であってもう天同じゃないんだよ、僕は!」
 参花は何が何でも『天同』という運命から逃れたかった!
「しかし、あなた端天同参花出ありますぞ!
 どう足掻いたところ出血端あなた尾離して端くれない乃です」
「わかるかよ、イズモノキミさんに!」
「わかるさ!」
 そう言葉を返すと、イズモノキミは参花に近付き、参花の顔を覆えるくらい大きい両手で参花の左手を包む!
「な、何を--」
「まさかイズモノキミ殿! それはまだ--」
「参花様! どうかこれ尾大事似お持ちなされて下さい!」
「これは?」
 参花は左手に握られた一通の手紙を見ようとしたが--
「!
 どうやらそれはこの戦いが終わるまで懐にしまわれて下さい、参花様!」
 エリオットは背中に担いだ蘇我鋭棒を両手で握ると周囲に気配りする!
「また銀河連合! 狙いは、参花様、なの?」
 ライ子もまた周囲を警戒した!
「来るス! しかも前の日より倍だス!」
 ジンバルの想定通り、銀河連合は空と大地より十七の数で迫り来る!
「数端十七? いや十九だ!」
 イズモノキミの足した数よりも三多い五体の銀河連合が四方より加わった!
「え? え? こ、この場合抜けばいい?」
 参花は二式雄略包丁を抜こうとするものの--
「あれ? 堅いな! エイ! こりゃ!」
「どこまでも手間をかけるな、棟一!」
 エリオットは今は亡き棟一を呼び捨てにしながらも参花を守るように後ろをとる!
「ぼ、僕はどう、ど、ど--」
「自分がお守りします! どうかじっとして下さい!」
「で、でも--」
「甘ったれるな! 本当はあなたみたいなのはここで捨ててでも戦います!
 けど、自分は天同棟一の意志を捨てたくないのです!
 だからあなたは余計なことはせず、そこで自分が戦う姿を見て下さい!」
「ヒ! は、はい!」
 エリオットの圧倒されるように参花は二式雄略包丁を静かに離すと、なだれ込むように地面に尻を付けた!
「あなたと話している間に来たか、銀河連合!」
 エリオット達四名は迎撃を開始!
「俺自身、怒り端湧かない!
 だが、先祖端カゲヤマノタケルノキミ! 先祖乃怒りだけ端受けてもらうぞ!」
 イズモノキミは鶏型、烏型、インコ型が棍棒を持った半径に入るとすぐさま円を描くように振り回す--鶏型以外は回避したものの、インコ型は体勢を崩したところをイズモノキミの突きを首に受け、口から茶色い血を吐き出してそのまま崖から身を投げ出すように落ちてゆく!
「私は、引きつける、為に、いる! でも簡単に、死なない事を、知りなさい!」
 ライ子は蛇型相手に逃げ回る--と見せかけつつ、崖に背もたれしながら蛇型を引きつけると飛蝗族の跳躍を生かして食われる寸前で飛ぶ!
「武器を、持たなくても、私は、あなた達を、死なせる事は、出来る!」
 蛇型が寸前で止まると、それを逃さずライ子は顔面に体当たりをし、勢いのまま落とす!
「枝に、刺さってる! 後で、弔いますので、どうか、楽に、しなさい!」
 一方のジンバルは五体の銀河連合相手に近接戦闘を繰り広げる!
「蟷螂族はもう少し身体が大きいなら熊族にだって負けはしないス!」
 成人体型一に満たないジンバルは一以上の鼠型、猫型、犬型との力比べで三体を全て地面に口づけさせると、今度は成人体型一とコンマ二以上ある蠍型、ゴキブリ型相手にも毒の尾や触角攻撃を両刃で受け流すと同時に急所を突いて悶絶させた!
「今頃団長はどうしてるかなス?」
 エリオットは十体以上の銀河連合を相手に傷一つない--それどころか一体ずつ綺麗に倒してゆく!
(眼が見えないのに何であんなに戦える! まるで次の攻撃を予測する?
 いやいやそれでも疲れて避けるのなんて大変だよ! なのにどうしてあんな動きが出来るの?)
 エリオットは残りの五感を使いながら銀河連合の動きを予想--予想に合わせながら最小限の動きになるような配置につく!
 そうする事で体力の消耗と余分な動きをなくす戦いをすることで十体以上の銀河連合を少しずつ倒す!
「十の年より以て上! それは苦しかったぞ! 眼が見えないということは今までの世界がわからないのと同じ事! それを自らものにするのに何をしたか分かるか!
 物真似をしてやったんだ! 盟友である天同棟一の物真似を!
 自分はボルティーニ最後の雄だからこそ出来た芸当だ! 自ら好きじゃなくなっていた物真似を命がけでしたからこそ自分はここまで強く成れた!
 そう簡単にお前達には食われないぞ!」
 エリオットは最後の一体である獅子型と取っ組み合いになった!
「無理だよ! 獅子族は昔から百獣の頂点にいる種族!
 それの形をした銀河連合にはさすがのエリオットさんでも--」
 そんな心配はまるで本当でないようにエリオットは転がるように獅子型を後方に投げる--獅子型は飛ばされた場所にいるイズモノキミに棍棒で股間を砕かれ、息絶えた!
「はあはあ、これがエリオット・ボルティーニだ!」
 天同参花の眼にはエリオットがまるで光り輝く星のように感じた!
(勝てない! 僕はどう頑張ってもエリオットさんには勝てない!
 こんな動きは真似できないよ! こんなにも、こんなにも届かない星があるなんて! 僕はなんて弱いんだ!)
「どうやら銀河連合は全て倒したな!
 皆の者よ、彼等を弔おう!」
「「「オオ!」」」
 参花は眺めるように作業を進めるエリオットを見続けた!
(もしもエリオットさんの話が本当なら棟一兄さんはもっと強かったのか!
 だとしたら僕は何の為に産まれてきたかわからないよ!)
 エリオットと出会って二日目。参花は自分の無力さを痛いほど感じた……。

一兆年の夜 第二十話 二つの星 接触篇(四)

 午後八時十一分五十八秒。
 場所はマンドロス山標高成人体型六百五十七。
 エリオット達五名は寝る準備を始めていた。
「仮設民家を作るのは大変だよ。骨が柔らかいと直ぐ壊れて怪我するし!」
 そう言いながら参花は四名よりも遅く成人体型一の者が楽して寝られる大きさの仮設民家を作っていた。
(やっぱりみんなは凄いよ! 僕なんかは仮設民家を作るのに二の時をかけてるのにまだ出来ないよ)
 参花は生命よりもうまく出来る者ではなかった。幼少の頃から言葉を話すのに三の年をかけるくらい物覚えが良くない。走る事も一般の人族より三の年くらい遅く、算数の基本である加減乗除が出来たのは三の月より前だ。
 それくらい何もかも上達に時をかける少年だ。
「やっと、出来たよ!」
 手間のかかる雄故、幼い頃から三名の姉に可愛がられながら育った。
「やっと出来ましたか! どうやら棟一の話は本当らしいな!」
 参花が作った仮設民家より最も遠いところに作られた仮設民家からエリオットが顔を出した。
「エリオットさん! どうですか、僕が丹精込めて作った物は!」
 エリオットは参花の側まで近付き、溜息をついた。
「えっと、エリオットさん?」
「最初からやり直そう。これじゃ、翌の日には参花様は下敷きになられます!」
「そんな!」
 参花は両手を地面に付ながら顔を埋めた!
「あなたは棟一様との思い出がないから彼を知らないでしょうが、彼は何でもこなすくらい優れた御方でした!」
 エリオットは木陰に僅かながら映る星々を眺めながら棟一の話を始めた。
「それは僕への当てつけですか?」
「不正解! 自分は参花様には是非とも棟一様がどんな御方なのかを知って貰いたくてお話をします!」
「棟一兄さんの事は一番自慢してた弐高姉さんから散々聞いたよ!」
「弐高様以外からも話を聞いて下さい!
 そしたら棟一様の印象は変わります!」
「そうなの?」
 参花はエリオットの方に顔を向ける。
「そうなのです!」
 そう言われた参花は立ち上がり、背筋を伸ばしながらエリオットの方に眼を向けた!
「やはり棟一様に似ておられる!」
「兄さんに似てるとかいうのはいいよ! それよりも兄さんについてどれくらい知ってるか聞きたいよ!」
「わかった!
 天同棟一について自分が知ってるのはあの者と初めてであった印象はなんて言うかとても気分の良くないモノだったよ! 何を言うにも綺麗すぎる事を吐き、何をしてもそつなくこなす! 才色兼備にして高貴すぎる雄だったよ!」
「な、何か兄さんのことが好きでない印象だけど?」
「ああ、天同棟一のことが銀河連合の次に好きじゃないさ! 何しろ自分とは生き方も何もかも異なりすぎて気分に良くない!」
「そ、そんなに快く思わないなら無理をしなくても--」
「無理? 何を言われますか! 好きじゃないからこそ自分はあの雄に憧れた!
 自分がいくら背伸びをしたってあの雄は常に高みを上り詰める! 死んでもなお自慢の弟を持ってるのだからな!」
「それはおかしい! 僕のどこが自慢できるの!」
「わからないのですか?
 何故自分があなた様が参花様だとおわかりになった理由。それは……いや今は寝ることにしよう!」
 エリオットは話の途中で自分の仮設民家に帰ろうとした。
「あ、あの待って下さい! 棟一兄さんとはどれくらいの付き合いですか!
 続きは翌の日でもいいですのでそれだけでも聞きたい--」
「三日だ! 自分が棟一様と過ごされた期間は!
 それよりも参花様はいい加減、仮設民家を完成させるべきです!」
 そう忠告したエリオットは自分の所に戻っていった。
「三日。たったそれだけで兄さんの何がわかるんだ!」
 参花はエリオットに忠告されたのに立腹する!
(はあ。やり直しなんて面倒なことをさせるエリオットなんか好きになれるか!
 いいよ! 僕は翌の朝には大層立派な仮設民家を作ってやるんだから!)

 七月八日午前六時二分七秒。
 参花は眠っていた。
「これは!」
 エリオットは翌の三時まで意地を張って作った仮設民家を感じて驚く!
「おはようございまス、エリオット団長……っうえス!
 何ですかス、これス!」
 参花の眠る直ぐ側に作った仮設民家で寝いていたジンバルは外を出るなり、参花の作った物に驚く!
「おはよう、ございます! んん? これって、何?」
 参花の仮設民家よりも遠くに作ったライ子は顔を出すなり、両目の焦点が合わない。
「おはようございます! まあ参花様乃お作り似なられた物乃話題端後似しましょう!
 それより模五名分乃おにぎり尾作りました。ちゃんとお噛み似なりましょう!」
 イズモノキミは何食わぬ顔をしながら三名に朝ご飯を配った!
「目は見えなくとも風の音と触感を総合すれば何を作られたのかはわかります!
 才能をもう少し上手く使いましょう、参花様!」
 参花の作った物とは仮設民家の姿から離れたエリオット・ボルティーニの似顔絵だった!
(これで少しはエリオットも僕を見直してくれるだろ!
 僕だってやれば出来るってことを!)
 参花は自分が仮設民家を上手く完成させたと思い込みながら夢の中でエリオットが土下座しながら謝る姿を見ていた!

一兆年の夜 第二十話 二つの星 接触篇(三)

 午後零時三十分八秒。
 場所はマンドロス山南出入り口。
 ボルティーニ団はマンドロス硬貨さえあればどんな依頼もこなす傭兵集団。
 例えば山の掃除、各民家の清掃、配達任務、配膳係、食器洗い等数え上げればきりがない。
 ただし、主な任務は主に村長や町長、酋長から依頼された銀河連合の打倒だ!
(けれども依頼したのは誰なんだ?
 どうしてマンドロス町を取り戻そうとするんだ?)
 参花はそれだけはわからない。彼は流されるままにボルティーニ団に加わった者。自らの意志というモノをまだ持てないでいた。
「参花様。私達五名で、マンドロス町は、取り戻せない。それは、わかるよね?」
「はい。という事はどこかで仲間と合流するの?」
「そうゆうことになるス。何せボルティーニ団は全部数えたら百名は軽く超えまス。
 けどス、傭兵団なんで各組に別れて行動してるス。
 俺達は本組ですがス、それでも五名しかいないス」
「それで大丈夫かな?」
「大丈夫、出済むかな? 相手端銀河連合。利似適わない斗見たらいつ出模逃げる準備模しない斗奈、エリオット殿」
「初めから逃げる気でいるな! 自分達はマンドロス町を個の手で取り戻す事つもりでいるんだ!」
 エリオットは組員を鼓舞した! 一方の参花はその中の一名でいられない。
(僕はこのままでいいのかな? 姉さん達の為とか思ってもやっぱり無理だよ、こんなの!)
「まだ迷ってるな! 普通の生命だったらここで「逃げろ!」と言うだろう。
 しかし、あなたは天同の者だ! 天同の者にはいい加減、覚悟をお決めになられないと困ります!」
「そんな事言われても僕には--」
「時間を浪費する暇はない。行きましょう!」
 エリオット達四名は山を登り始めた!
「ま、待ってよ!」
 流されるように参花もまた山を登り始める。

 午後二時十八分三十六秒。
 場所はマンドロス山標高成人体型三百十一。
「待ってよ!」
 エリオット達は真島ベロウ都が取り戻した山道を進んでいた!
「みんな早すぎるよ! 僕の足が今にも動かなくなりそうだよ!」
 参花はエリオット達に着いていくので必死だった!
「ライ子さんス? 本当にあの御方は天同の者なのですかス?」
 それを見たジンバルは心配そうな事を呟いた。
「私も今、それを、思った。天同の、者は、あそこまで、腰が、抜けた者、でしょうか?」
 ライ子も釣られるように心配事を言った。
「いや天同だよ、あの御方は! それが分かるモノを彼は無意識のうちに放っているのだ!」
 そんな二名に対してエリオットは反論した。
「無意識のうちに放ったモノがス? それってどんなモノでス?」
「さあ、私にも、何かは、わからないわ」
「確か似放っているな!」
 イズモノキミは何かわかるようだ。
「そ、それって何ス?」
「それ端奈……ム! この音端!」
 イズモノキミは背中に背負った成人体型一とコンマ三はある棍棒を右手に持ち、臨戦態勢に入った!
 それに続くようにジンバルは蟷螂式雄略包丁を両刃に装着し、ライ子は周囲を見渡した!
「はあはあ、な、何構えてる…・・・ってウワ!」
 参花の眼前に突如として銀河連合蜘蛛型が垂れてきた!
「しまった! 狙い端参花様か!」
「間に、あわ--」
「いや、合わせる!」
 蜘蛛型が食らおうとした瞬間、それは真っ二つに分かれた!
「ああ、し、死ぬかと思ったよ!」
 参花は恐怖のあまり、足を崩し、両手をついた--不純物を排出するモノを漏らすように!
「漏らすのは後にして下さい! 銀河連合は後五体潜んでおられます!」
 エリオットの言う通り、銀河連合は参花の真後ろにある木陰が生い茂る地面からも周囲で三番目に小さな木の頂上からもイズモノキミ達三名がいる上空からも更には五名の左右からも生命を食らわんと襲い来る!
「地中から、土竜型! 空中から、鷹型! 木の、頂上から、熊型! そして、右方より、虎型! 左方より、縞馬型が、迫ってるわ!」
「木登りは猿族のお家芸だろス!」
「泣き言端後似しろ! 俺達端迎撃するのみ!」
「行くぞ野郎共!」
「「「オオ!」」」
 四名は参花を尻目に迫り来る銀河連合を迎撃してゆく!
(ど、どうしてこんなに戦えるんだ! というかみんな強くない?
 イズモノキミさんはあの熊型相手に力で圧倒したと思ったら数多をかち割ってるし! ライ子さんとジンバルさんはお互いに協力し合って鷹型と縞馬型をライ子さんが引きつけたと思ったら隙を突いてジンバル産が両刃で切り裂いてる!
 も、もっと凄いのがエリオットさんだ! め、眼が見えないのにどうして土竜型の攻撃を回避できるの? 耳なの? それとも--)
「何をしてますか参花様! 座り込む暇があるのなら自分がお渡しした二式雄略包丁を抜いて構えたらどうですか!」
 エリオットは土竜型が顔を出す前に位置を特定して持っていた蘇我鋭棒を地面に突き刺しながら参花に戦うように促す!
「む、無理だよ! 僕は今の今まで雄略包丁を使った事が--」
「握るだけでいい! 今は自分達が銀河連合を倒してゆきますから!」
 エリオットは周囲で五番目に大きな木の死角から飛び出した虎型の前右爪攻撃を避けると、流れるように右回転で虎型の口めがけて棒を突き刺した--虎型はそのまま事切れた!
「に、握る前にみんな倒れたんだけど」
 四名は銀河連合に痛手を被ることなく全滅させた!
「自分達は強い! そうでないとマンドロス町を取り戻す事は叶わない!」
「このくらい端朝飯前似済まさない斗奈!」
「こんな事って、罪深い、のよ!」
「罪深くて何が傭兵かス!」
「これがボルティーニ団な、のか!」
 参花はただ驚くばかりであった!
「参花様や仲間達が無事ならそれで良いじゃないか。
 銀河連合を弔ったら先へ進むぞ!」
 エリオット達四名はまたも参花を尻目にして作業をしてゆく。
(やっぱり無理だ! 弐高姉さん、狭間姉さん、それに門忍姉さん!
 僕には天同は務まらないよ! こんなに弱い僕には絶対無理なんだよ!)
 天同参花は未だに自信を持てないでいた……。
プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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