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一兆年の夜 第十四話 銀河連合(二)

 三名はイワレノキミの言った事に一の分くらい無言だった。
「何腰砕けたこと言ってるわけ? そんな論理牙皆似納得する乃?」
 きぬ子の意見は最もだと--イワレノキミ自らは頷きながらもこう反論する。
「じゃあ聞く毛度、落ちてきたモノ端納得出来るような生命なのか?」
「納得できっこなし! あれは生命でなしっで! 命を何とも思わない血も涙もない
存在っで! 俺の先祖の従兄弟家族はあっれに食われたのさ! もう百の年より前
とはいえっだ!」
 コケートは顔を真っ赤にしながらも落ちてきたモノへの怒りを隠さなかった。
「コケートちゃんは百数十の年より前でなしに数の年より前のことに怒りが隠せなか
ろうな。僕ちゃんだってコケートちゃんみたいに過ぎ去りすぎた年のことで怒りしよ!
だけど、それであるはどう--」
「喋りすぎよ孫権! と、とにかくあの名称乃わからないモノ牙私達似礼尾欠く乃端
よくわかってるわ! だからってそんな反論らしからぬ反論出皆牙納得する?」
「しない乃端よくわかる! けど模僕端見たんだ! 三乃日より前似落ちてきたモノ
牙……いや正体不明乃銀河らしきモノ牙国家神武経斗黒い塊状似降る乃尾!」
 それを聞いて両眼を限界まで開く者がいた--孫権が口を動かす!
「僕ちゃんと同じことだろうね! 実は僕ちゃんもその日の朝に国家神武の方角辺り
で黒い塊が降られしを見られしだ! あ、あれがイワレノキミちゃんが仰る正体不明
の銀河であろうか!」
「ああ! もしも僕乃意見牙正しけれ刃恐らく端--」
「ちょ、ちょっと! みんな! 望遠鏡出私牙見る方角尾見て!」
 黄色い髪の毛を逆立たせながらもきぬ子は望遠鏡で見るように口を挟んだ!
「い、今端僕乃--」
「いいから早くしなさいよ!」
 彼女に弱いイワレノキミは仕方なく望遠鏡で例の方角へと向けて眺めた!
 すると三名の顔は恐怖心を呼び覚ますように震えた!
「あ、あ、あ、ぼ、ぼ、僕ちゃんがががが--」
「ま、ま、ま、まずっとう! 皆の者おお!
 に、にん、逃げろってええ!」
 その方角から真っ直ぐ恐怖心を呼び起こした存在が落ちてきた--四名は
コケートの号令と共に四方に分断するようにイワレノキミの家から出て行った!
「い、ででえでえ!」
「い、いたいわ!」
「僕ちゃんは飛べようから平気だだけれども!」
「俺は鳥系なのに飛べないから足が痛いってえええ!」
 四名が愚痴をこぼした瞬間、民家は轟音と共に雪崩のように壊れてゆく!
「ああ、僕乃家牙……」
「折角さと士乃為似作った望遠鏡牙……」
「そんなこと言っとるか! な、な、な、中からな、な、何かがで、で、で--」
「こ、こ、これは裸のモノ! イワレノキミちゃん風に言われると落ちてきたモノだろう
けど! あ、あ、あ、こ、こ、これでど、ど、どういか、いか--」
 四名は中から出てきた成人体型二を越える人族の形に海老族の殻のような物で
覆われた落ちてきたモノに怒りを呼び出す方法がわからずにいた!
(落ちてきたモノ牙来る! 僕端、いや僕ら端何模出来ず似死ぬ乃科!
 だ、だ、だめだだ! きき、恐怖ふ牙牙--)
 イワレノキミが恐怖心で揺さぶられる間に彼の民家前にはすでに住民二十名が
集まった!
「コノハナノ君の家が潰れってし!」
「キシェール博士! そのなかかかうに! 食いしん坊がう!」
「こ、これがきょうふしんなの?」
 暦学者キテレグ・キシェールや食通スウゾンブ・ブルホル、訛り学者日野イン子ら
二十名は互いに話し合いながらも恐怖心に囚われる!
 混合人型はゆっくりとした足取りでイワレノキミへと近付く!
(ぼ、ぼ、僕端ははし、し、死似たくない!
 死似、イテ!)
 イワレノキミは恐怖心の中でも癖だけはやめなかった--赤い身体を長い爪で
掻き毟るせいで彼は痛がる!
「また血牙出た……あ!
 み、みんな今すぐ逃げろ! 逃げるんだ! 僕牙あいつ尾引きつけて--」
 イワレノキミの叫び声に焦ったのか、混合人型は急ぎ足になる!
 成人体型一未満になると直ぐに彼の顔面に右足蹴りを与えた--イワレノキミは
鼻血を出しながら約成人体型十まで飛ばされうつむきになったまま意識を黒い空間
へと沈める!
(僕端、しぃ、ん、だ、ぁ、ぁ……)

一兆年の夜 第十四話 銀河連合

 ICイマジナリーセンチュリー四十二年四月六十四日午後十一時二分三十八秒。

 場所は西物部大陸応神海付近仁徳島南仁徳町第一地区二番地。三番目に小さな
民家。その屋根上。
 齢三十一にして二の月と十八日目になる仁徳鬼族の中年が星を眺めていた。
「三日前似国家神武乃方角似黒い塊牙落ちたような?
 ツル夫端大丈夫かな?」
 中年は赤い身体を瞼よりも長い爪で掻き毟っていた。当然--
「イテテ! また血牙出たぞ! ツル夫似端よく言われる!
『イワレノキミはいい加減掻き毟る癖はやめましょう! 体中が穢れるような物になら
れたらどうされるおつもりですか?』ってよう」
 イワレノキミと呼ばれる中年はそんな独り言を言いながらもなお組み立て式の
望遠鏡で星々を眺めた。
「三日前乃あれ以来ツル夫乃言う正体不明乃銀河尾見かけなくなったな。
 あれ端気味牙良くなかったぞ。本来端宇宙乃速度端我々乃想像尾超えたモノだ。
昨日望遠鏡出眺めた星端次乃日出端遠ざかる。銀河奪手赤色巨星奪手同じだ!
 なのにどうしてあの銀河岳牙近付く! 意味尾理解で--」
「オーイ! コノハナノー! 聞こえる乃ー?」
 コノハナノイワレノキミは独り言を言う暇もなく入口付近から呼びかける齢三十に
して五の月と十六日目になる仁徳鬼族の女性の方に視線を移す。
「は、恥ずかしい奈相原君! 折角独理言尾呟いていたのに」
「独理言端いけないわ。病持ち奪手思われるから」
「いいだろ、家出一名田毛いる場合端!」
「良くない端! 特似屋上出ぶつくさ話すのは」
「もういい! 相原君模よっぽど暇奈羅こっち似来い!」
 五の分より後、相原と呼ばれる女性は組み立て式望遠鏡を以て屋上に登り、急い
で立てた望遠鏡で星々を眺めた。
「見て見て、コノハナノ! 冥乃矮星端綺麗だわ!」
「だろうな、それ尾観測してるって事端主婦相原きぬ子なり似趣味乃表れ科奈?」
 イワレノキミは両眼を少し瞑るように頭を小さく下げた。
「まだ私乃こと牙諦めきれない乃? 私端この矮星乃よう似名字端移ろう乃よ!
 相原から鈴村似なった今出模」
「鈴村田斗言いにくくないかな?」
「でありましょうな! 僕ちゃんもそう思われしよ!」
 梯子の近くに立ち、二名に割り込むのは齢二十九にして十一の月と一日目になる
お喋り好きなラテス燕族の青年だ。
「こっそり出てくるな、陽君!」
 驚くイワレノキミに対して陽と呼ばれる青年のお喋りは始まる。
「こっそりなりて現われようさ! だって僕ちゃんは五月蠅く現われし蠅族たるはとて
も出来そうであろうかな! いくら話術の専門家たるこの陽孫権も静かにゆっくり
現れたりて皆を驚かせしか迷おうもの! でも結局は--」
「わかっと、孫権! お前さんっはそこまで五月蠅くないってことってな!」
 お喋りを中断するかのように齢三十三にして二十日目になるテレス鶏族の中年が
孫権の真後ろに現れた。
「あら、コケラッタ先輩! どうしてコノハナノ乃家似来た乃?」
「そりゃあ雄コケート・コケラッタはかわいい後輩の成果が見たくて来たのっさ!」
 コケートと呼ばれる中年は粟色の羽を周囲に撒き散らしながら理由を告げた。
「申し訳ないです牙、コケラッタ先輩!
 これといって良い成果端尾見つけられなくて」
 イワレノキミはコケートの目を逸らすように報告したが、孫権は見逃さない。
「イワレノキミちゃん! 良からぬ成果は見つかりしか?」
「な、何言ってる乃、陽! コノハナノ牙良くない成果なんて!」
「言ってみっし、イワレノキミ!」
 きぬ子の言葉を遮るように二名はイワレノキミを問い詰めた!
「じ、実端昨日から観測中乃正体不明乃銀河牙何なのかについてわかりました!」
 それを聞いて三名は三洋の驚きを見せた!
「な、だっと!」
「本当じゃないで庶?」
「どうどうどうなられるの? 僕ちゃんといたしては興味あられようね!」
「実尾言う斗あの銀河端落ちてきたモノだったんだ!」

過去を食い物にする国々

 どうもdarkvernuです。
 今回は時事ネタを含んだショートストーリーをどうぞ!

 ツァラトゥストラX世は自らの思想を自然に聞かせた!
「過去に囚われるな!
 過去を食い物にするモノ達はこぞってお前達に付け込む!
 奴等は過去を食い物にしてお前達までも食らおうとするからだ!
 奴等は人間ではない! 奴等は人間に似た獣だ!
 奴等に人間らしさは一欠片もない!
 一欠片もあれば今のチベットは平和だ! 今の東トルキスタンは平和だ!
 そして今の内モンゴルや奴等の国々は平和だ! でもそうではない!
 見よ! 奴等に食われた国々を!
 チベットはラマの子を政治利用して大地から消滅させようとしているではないか!
 東トルキスタンも内モンゴルもチベットと同様かそれ以上の事をされているではな
いか!
 アフリカはどうだ! 奴等のせいでアフリカはますます貧困を拡大しているでは
ないか!
 ベトナムはどうだ! 今も混血児に悩まされた国になっているではないか!
 マレーシアもシンガポールもその他大勢の国々も!
 そして日本は獣に屈したチンパンジーが大挙を為して日本を食い物にしているで
はないか!
 最後に獣共の国々を見よ! 何が人民解放軍だ! 何が偉大なる将軍様だ!
 何が五千年を騙っているのだ! 何がソビエトから解放された大国だ!
 他国を苦しめ、他国を食い物にするだけでは飽きたらず、自国の民をも苦しめ、
食い物にする国々が過去を語るなど笑止千万! いや億万だ!
 奴等は欲しいのだ! 過去という食べ物を!
 その為なら他国以上に自国の者達を人肉を食らうが如く殺し尽くす!
 皆の者よ! 過去に囚われるでない!
 過去を守り保つ為に現在と未来を助け船にせよ!」
 X世の思想は過去から現在に至るが、それは来週? 聞かせよう!


 勿論時事ネタではありますが、一種の思想話でもあります。
 今回は全三回予定のショートストーリー。その過去篇で御座います。
 というよりもこのショートストーリーはかの超人間ことフリードリヒ・ニーチェのツァラトゥストラはかく語りきのパクリで御座います。まあツァラトゥストラも元々はゾロアスター教の開祖のパクリではあります。しかも悪質な事に思想から何から何まで別物にする事で気付かせないようにしています。ニーチェの悪口はこの辺にしとこう。
 さて、今回のショートストーリーで主に批判しているのは保守論客やネトウヨ呼ばわりされた高性能集団の第一の敵であるアジア各国(笑)でございます。というか自分もこの連中は滅ぼすべき敵だと思います!
 吐き気催すぐらいに(怒)。何が吐き気催すかと言いますと、まずウン千年もの歴史を持つC国からいきましょう!
 まずあそこは言論の自由が一切ありません。国民と呼ばれる者は一人もいません。盗聴だって大気汚染だって人民だってお構いなしにやったり、虐殺したりします。犯罪は不公平に取り締まります。弱い者はぶち込まれ、強い者は肥え太ります。そのくせ肥え太った者同士で殺し合いだってします。ウン千年から続く伝統として。そして滅ぼした者の歴史は悪の歴史として処断されます。ここまでにしとこうか(疲)。
 続いては南北K国をまとめていきます。あそこはC国のミニサイズです。しかも下劣さはC国以上で御座います。恩を仇で返します。日本が敗れた後、奴等は何をしたかを見れば一目瞭然で御座います。強い国には媚びへつらいます。スネ夫以上に。そしてパクリ、レイプは日常茶飯事。集団に紛れないと何も出来ないヘタレっぷり。さらには火を噴くように怒る病を抱えます。あまりのヘタレなのか整形大国になってしまいました。そして寄生虫。なのでC国以上に吐き気を催せるかも(怒)。
 最後にR国に入りますね。あそこはソビエトの時代から、いやソビエトの前のイヴァン皇帝の頃からの伝統なのかな? 民主主義にはほど遠い国となります。折角エリツィンさんが頑張ってもこの有様。デスノートを発禁処分とかどこの共産主義国家ですか? おまけに選挙の自由も保障されないわ、政権に敵対した人を粛清するとかよ。まだ先に紹介した国々の民度としてはマシかも知れないけど、未だにチェチェンやグルジアを侵略したり、北方領土を不法に占拠したりと先に紹介した国々以上に前時代的な事を平気でやらかします。この国もそういった事を食い物にしている時点で吐き気を催します。
 とまあ日本にとっての第一の敵国については紹介していきました。ほぼ相反する彼等が共通する点は過去を食い物にしているという点です。なので彼等と戦う時は過去でぶつかるのにならず、現在と未来も一緒になってぶつからなければ討ち滅ぼす事は叶わないとX世は仰ってます。
 ですが、X世はまだ言いたい事があります。それが来週か或いは一年後くらいに出すかも知れませんね。それが現在問題となるTPPや市場原理主義、新自由主義、グローバル資本といった現在を破壊し続ける最悪の奴等のことです。
 以上でショートストーリーの解説を終わります。

 では十三話について解説します。
 ようやく天同生子のお話は終わりました。予想通りバッドエンディングになりましたが、最後の所だけは僅かにでも再登場を匂わせました。まあ、いつになるのやら(笑)。
 とにかく今回は起承転結の結である十三話で御座います。しかも十話並みの長さです。というか、しばらくは十話、十三話並みの長さの話を量産したいと思います。疲れるのは嫌だから。
 話を戻します。十三話を読まれた方の中にはこれがどうして現代の軍事力でも無理なのかを説明します。そもそも、現代の軍事力は地球圏内での戦いにしか対応出来ません。例えばミサイルが宇宙に出て、その後目標である国の上空へと落下して攻撃するとかいったのならアメリカであれNATOであれ対応は出来ると自分は思います。ただし、あくまで自国への被害を防ぐという場合に限っての事ですが。
 ところが宇宙から降ってきた物にたいして防げるかという話に移りますと自分は無理だと思います。
 何故なら現在の軍事戦略は地球圏内にしか目が向いておりません。地球外よりも地球内の敵の方にしか目が生きません。そんな状況で対応出来るはずがありません。
 もう一つ付け加えるなら現在の国々は宇宙戦争を一回も経験しておりません。映画を見ただけで出来るとかそんな万年野党を務めるお笑い芸人顔負けの奴等の言葉はふざけすぎです。いくらシミュレーションしようが、一回の経験の前では無残な物です。その為、第十三話でのあれをやられた日には例え全滅を免れたとしても国家の崩壊だけは免れないでしょう。というよりも免れるのはしょっちゅう地震や台風やらで被害を受け続けてるのに未だに滅ばない例の国くらいだろ! 冗談はこのくらいにしときましょう(笑)。
 ちなみに自分の文章が小学生顔負けの稚拙で申し訳ないですが、どうゆう風に攻めたのかを解説しますと奴等の周りに覆われている物は一種のバリアになっております。その為、大気圏突入や宇宙空間で凍えたりするのをある程度防ぎます。もう一つはに三体くっついたままで大気圏を突入する事で仮に外側がやられても自分が無事なら目的は達成出来ます。それに付け加えるなら仲間を盾にしてでも大気圏を突入するといういとも容易く行われるえげつない行為ですかね?
 そんな形で落下しますと例え飛び道具で対応しようが、建物に隠れるといった事は意味を為さない。作中の描写通り無残な事になります。だって落下速度とかはいくら空気抵抗があっても物凄いんだぜ! 以上でございます。
 そんじゃあ雄略包丁、神武包丁について説明します。あれはいわば現在に至る日本刀の前身で御座います。例えば古事記ではイザナギがカグツチを殺す時に使った十拳の剣や八岐大蛇の体内から出た草薙の剣がそれです。ちゃんと十話あたりに書いてますよ。ですが、果物包丁と同じく長く使い続けるのは無理です。何せ人を斬った剣はどうゆう切り方であれ刃毀れしていき、わずか三回程度で錆びます。そうゆう意味では現実性を帯びた包丁だと言っていいでしょう。以上で納得出来たのかは自信ないけど二つの包丁についての説明を終えますね。
 最後にマンドロス村の復旧状態を知らせますね。あくまで生命が普通に住める程度には浄化されました。
 けれども空気は未だに臭く、農作物を育てるのに必要な土壌まで回復はしておりません。それだけです。
 ですが、もしエピローグがあるなら生子の養子となった壱生が成者になる頃には自然豊かな村になっているでしょう。まあ十四話以降はしばらく人族以外の主人公を描きますのでその辺は想像にお任せします(苦)。
 以上で十三話の解説を終えたいと思います。

 さて十四話から長い迷走に入らせて貰います。ここからはようやく奴等の名称が発表されます。ちゃんとツル夫が言いかけてますのですぐにわかりますよ!
 じゃあこれからの予定を下記に載せますね。

 四月
 二十九日~五月四日  第十四話 ????           作成日間
 五月
 六日~十一日     第十五話 物々交換から貨幣へ      作成日間
 十三日~十八日    第十六話 語り継がれる物語       作成日間
 二十日~二十五日   第十七話 猫と鼠             作成日間

 一クールは終えて、次は二クール目に入ります。まあアニメだったらこの作品は一クールすら与えられないかもな(笑)。
 それじゃあこの辺で、また来週!

HP版の更新について追記

 どうもdarkuverunuでございます。
 すみませんが、毎週HP版を更新するとはいえ、それでも作者の限界があるます。
 なのでその時に備えてもしかしたら二週に一度、または一ヶ月に一度、あるいは一年に一度になると思います。
 ですので、どうか申し訳ないのですが、毎週必ず最新話が更新されると思わないで下さい。お願いします。
 ちなみに今日は第六話公開とキャラ辞典が更新されてます。
 よろしかったら下記の
 http://ragdoraidsdevidroaneijiwancum.web.fc2.com/trillionyear.html
 に飛んで下さい!
 ではこれにてまた明日!

一兆年の夜 第十三話 天同生子 継承篇(終)

 午後五時三十分一秒。
 場所は首都四門零の丘。破壊された構造物がちょうど三角形で生命二名分
隠れる場所。
 そこに無傷の生子と全身傷だらけのアンジェルは避難していた。
「わ、わた、しだ、は、もう」
「済まない! 私がもっと力があったならアンジェルをこんな目には--」
「がああだ! あなただは、自惚れるなあだ! ググウウウだ!」
「アンジェル! これ以上無理をすれば--」
 アンジェルは生子の忠告を無視するように力一杯肺を動かす!
「私は楽だに死にたいんだよだ! グアアアダ!
 あなただは生きて下さいだ! ガドビャアアダ!
 た、と、え、か、さ、にー-」
「もうまともに喋る事が出来ないのに! まだ肺を動かすか!」
「い、き、う、ん、ぁ……」
 アンジェルは想念の海に旅立った! 生子は左手でアンジェルの両瞼を静かに
閉じた。
(『生きろ!』とアンジェルが言うのだな。
 わかったわ。あなたの言うとおりもう少し生きてみるわ!)
 生子はアンジェルの死体に一礼をした後、三角形状の瓦礫の外に出た!
(この速さは! 私達を待ち構えていたのね。
 いいわ! 最後の神武包丁……抜かせて頂くわ!)
 そう言って左腰に掛けていた包丁を鞘から抜くとものの数秒で三体を横、縦、右斜
め上に一刀両断した!
(刃はもう毀れたわ。
 けれども、肉体がその代わりを担うわ!)
 数百程いるおぞましきモノ達の猛攻を一切の無駄をせずに反動を上手く利用して
対処! 始めに神武包丁を先頭から三番目にいる鹿型に投げつけると同時に先頭
を走る豚型に右後ろ足で頸椎を粉砕! そして粉砕した相手の頭上に乗っかり、
生子の心臓めがけて食らおうとする猿型を親指だけ曲げた状態の右手を包丁の
ように眉間を刺し貫く! 刺さった状態の右手首に気を取られたと感じてか、人型は
後頭部めがけて雄略包丁に似た物で振り下ろす! だが、生子は貫通してもなお
勢い任せに避けると同時に左足を包丁の形にして人型の首を刎ね、その反動で
詰まった右手を猿型の死体から抜く! その間にキュプロ枝で出来た縄が生子の
首、左手、右足に向かって巻き付こうとした! 生子は敢えて巻き付かれながらも
持ち主である三体の力を利用して遠心力で周囲の者達を巻き込みながらそれを
対処! 今度は巻き付いた縄を刃毀れした神武包丁と鞘にくくりつけて周囲直径
成人体型六まで振り回す!
「私は仙者よ!
 私は天同家の長にして全生命の希望を背負う者!
 神々のお意志を背負う者!
 私はもう少し生きてみるわ!」
 生子は戦い続ける……

 四月六十二日午後五時三分二秒。
 場所は中央官邸跡。瓦礫の山で埋め尽くされていた。
 天同生子は飲まず食わずで戦い続けて一の日が過ぎた。
 彼女の肉体は無傷だ。だが、衣服は生命外れした動きに耐えきれず、数十カ所も
の穴が点在。秘部の露出を抑えようと何度も破いてはそれらを継ぎ接ぎ状にする事
で覆い隠す。
 そんな状態の彼女は今、生存者を捜して歩き続ける。
(ピートも、エウミョウルも、シュルターも死んだ。私はこの目で確認した。
 けれども、彼等の死を無意味にしない為にも私は……ん?)
 生子は中央地区で無事な真ん中より三番目に小さな民家の玄関口で横たわる
人族の兵を見つけた!
「そこの者! 口は動かせるか?」
 兵は息が絶え絶えな状態で生子の問いに答える。
「は、あ。生き、てたのです、ね。せ、せい、こ、様」
 生子は兵の言いたい事を理解出来ない。
「どうゆう意味だ?」
「て、き、りし、んだのか、と……」
 兵は息を引き取った。
(理解出来ない。彼は何を言おうとしているのかを!)
「済まないが、この包丁は刃毀れが少ないようだな。
 後でちゃんと返すわ!」
 生子は兵が持っていた雄略包丁を鞘から外して右手で構えながら、他に生存者が
居ないかを確かめる為にその民家の中へと入ってゆく。
 そして中を慎重に歩いて行く。
(ここだけ無事なんてどう考えてもおかしいね! 何か仕組まれてい……!
 仕組まれていると言えばこの襲撃!
 もしかして神々が言おうとした未来から過去に誘われるってのは!
 ようやくり--)
 その考えをする暇もなく人型が障子を何かで突き破って聖子に襲いかかるが、
生子は冷静に首を刎ねる!
「危なかったわ! そ、それにしてもこの人型? どうして成り余る物で障子を?
 そんな事よりも中の様子を見ないと!」
 生子が障子の先を見ると、そこには人族の女性が衣服を乱し、両眼に大粒の涙を
流したまま、仰向けになっていた。
 生子は直ぐに駆け寄り、女性を安心させようとする!
「もう大丈夫。私が直ぐにあなたを--」
「だ、駄目よ! せ、生子さ、様!
 わ、わ、私ははは、あれれにおかかかささされ、ももう--」
 女性は激しく錯乱する! 生子はそれでも彼女を宥めた!
「身の穢れは全て私が背負うわ! だから--」
「ち、違いいままます! そ、そそそうじぁああああ!
 アグベエエエジュアアエ!」
 またもや光景は一巡する!
「! これ……は」
 女性は爆発するような吐血をすると同時に腹からおぞましきモノが生子の心臓
めがけて突き抜ける--生子は避ける間もなくそれを鳩尾に受けた!
「グゥ! あ? これ、は」
 生子は心臓を食われる感覚に襲われる! そして--
「ああ! せ、生子様が、ああああ!」
「? ああ、そうな、のね。これ、があなたの、言い、たい事、だったの、ね」
 死んでいるはずの兵を目撃! 彼はその場を逃げた!
「ギャアアアアア!」
 兵の悲鳴が聞こえた! それは障子を成り余る物で突き破った人型に左手をもぎ
取られた時に襲い来る痛みへの悲鳴だった! そして光景が変化して元の光景に
修正された!
(全身の感覚が無くなりそうだわ。これが死ぬと言う事なの?
 これが父や母、それに零やその他大勢の土に還りし生命が死ぬ時に受ける感覚
なの?
 ならばどうやって死を受け入れよう?)
 生子は無くなってゆく感覚と戦いながら立ち上がり、自らの思いを口にする!
「物の語りは突然に始まる……
 生命の誕生よりも。
 生命の経過より。
 そして経過から始まり、経過に終る物の語り。
 されども経過に抗い、結末に終わる物の語り。
 私はどう成り果てよう? 成り果てる?
 私は継ぎ接ぎだらけと成り、これからも生き続ける。
 この衣服のように生き続ける、この存じ在るべき者として。
 私は居なくなる。だけどまた会える私。
 それが一兆年の夜空を駆けるべき生命となりて。
 物の語りは突然に終わる……」
 生子は人生最後の歌の形を留めない歌を歌い、天井にまで届く吐血をしながら
仰向けに倒れた!
(壱生。いっせ、い。あ、れ? だ、れ、なの?
 そう、ね。わ、た、しはそこ、に……い、たのね)
 天同生子は齢三十の短い生涯を閉じた。



 また会える日を願いながら……


 ICイマジナリーセンチュリー四十二年四月六十三日午前零時零分零秒。

 第十三話 天同生子 継承篇 完

 第十四話 ???? に続く……

一兆年の夜 第十三話 天同生子 継承篇(三)

 四月六十一日午前六時零分十三秒。
 場所は首都四門中央地区神武聖堂儀式の間。
 天同生子は中央で座禅を組み、予報を始めた!
(彼方より出づるモノ達……それらを打ち倒せるのか?
 その為にはこれからの国家神武は吉と成るのか?
 それともこのまま国家神武を捨てる事は吉と成るのか?
 私にはもう時は無くなりつつある。もはや神々の意志を正確に汲み取る智慧も
無い。
 それでも私は最後の予報を! 神々の意志を聞かなくてはならない!)
 生子の両眼はかつての輝きに戻りつつあった!
 彼女は自らの運命をもう一度従い始めた!
(水の、大地の、山の、火の、風の、空の、重力の、そして宇宙に生きる一兆年にも
及ぶ神々よ! 何を想い、何を為し、そして何を視ますの?
 私達全生命体に神々の意志をお教え下さいませ! 私はその代わりとして命を
捧げます!
 なのでどうかどうかどうか……)
 彼女の言の葉は変化--彼女の命は決められた!
 生子の瞳に映る映像は黒と灰という色から、赤く青い色、やがては想像の海で
ある桃を越えた色に変化。そこから映し出されたのはおぞましく黒く、そして異形の
形をした顔が虹色の色を一瞬で食らうもの!
(!
 あの形はおぞましきモノ! ならば国家神武は--)
 一つしかない門から三本足をばたつかせる者が報告しに駆けつける!
「生子様だ! た、た、大変な事だになっただ!」
「予報は、終わったところだけど何かしら?」
「お外だへ出てみればわかりますだ!」
 アンジェルに言われるがままに生子は神武聖堂正門を出た。
 すると、生子はアンジェルが言おうとする前に空を見た!
「こ、これは!」
 生子が見たモノとは、空一面を埋め尽くすかのようにおぞましきモノ達が国家神武
に降下してゆく光景だ!


 午前六時十分二秒。
 場所は中央地区国家防衛官邸。その正門前。
 国防官ピート・プートはすでに全軍に臨戦態勢を敷く。
「いいーか! 空ーから降ーるのは得ー体の知れなーいモノー!
 我々ーは今ーは亡き真島ー殿の戦術ー書通りにー望遠ー刀によーる総攻ー撃を
開始すーる! 
 準備はーいいーか!」
「「「「「オオオオ!」」」」」
 国防官邸前に囲むように待機する本隊千余は望遠刀を構えた。空に向けていつ
でも物部刃を打てるようにキュプロ枝の引く力を強めた!
「いくら数ーが多ーくてーもここーへ落ちーるまでーに撃ーちおと--」
 風が強く抵抗していく音と共に空から来るモノは物部刃を放つ指令を与える間も
なく、建物ごと押し潰す!

 午前七時三分二秒。
 場所は中央地区中央官邸。三階生活安全官室。
 生活安全官エウミョウル・ムルリリウームは机の下に避難していた!
「この建物は神様を模っして建てられった物。この下にいればあ--」
 それは幻想だった--建物は石が軋む音と同時にたちまち天井は崩れ、中に
居るあらゆるものを深淵に落とす!


 午前八時一分四十二秒。
 場所は南アリスト町一番地区。
 住民達は逃げる! 空から降り注ぐおぞましきモノから!
「に、逃げろっと! にげぎゃああああ!」
「お、そさないで! じゅんばんににげ--」
「わあああああ! く、来るにゃあああ!」
「い、いあちよう。た、く、げ、ぇ・・・・・・」
 建物は泥のように脆く、住民は食べるように命を散らす。
「あ、あ、あああああ! こ、こ、これが、これが、これが、アアアアア!」
 町は火で包まれ、生命は逃げ場無き場所で逃げ惑い、やがては食事となり
果てる!


 午前零時十三分五十三秒。
 場所は東アリスト町第二地区二番地。
 燃えさかる町の中でうつ伏せに右翼をもぎ取られて倒れた天体観測家。
板垣ツル夫の命は消えかかっていた。
「さ、さい、しん、ぎ、の、を、ぶつ、て、ご、さい」
 ツル夫は最新型の望遠鏡でおぞましきモノを叩いた事を悔いた。
「や、と、わか、た。あ、れ、は」
 燃えさかる炎の中でツル夫は生命の影を見た。
「い、た、し、も、てん、そく、なず」
 もはや言葉になら無い状態であっても僅かな希望をその影に託そうとした!
「き、か? お、えるぞ。おち、はぎ、ん、が……」
 最後の言葉は彼の大好きな銀河にちなんだ名称だった!

一兆年の夜 第十三話 天同生子 継承篇(二)

 四月五十七日午後十一時二分四十秒。
 場所は国家神武東アリスト町第二地区二番地。その中で二番目に小さな民家。
 齢三十一にして一の月と二十六日目になるアリスト鶴族の中年板垣ツル夫は
最新型の望遠鏡を使い、今日もまた星々を観察する。
「何といえようか? 星々や銀河よりも正体不明の何かが気になりましょう!
 といわれるよりも、もうすぐここに来られるかもしれない?」
 ツル夫は日に日に近付いてくる銀河に恐怖を抱いていた。真っ白な体毛を逆立て
ながらも。
「こ、これは早く政府に報せなければ大変な事になりましょう!
 足遅れになられようものなら国民の恥でよろしいかと! は、早足でよろしい!」
 ツル夫は両翼を風に乗せて、中央官邸の方に真っ直ぐ飛んでゆく!

 四月五十八日午前一時二分二秒。
 場所は首都四門中央地区中央官邸国家最高官執務室。
 急いで駆けつけたツル夫に国家最高官天同読四は質問した。
「そ、空から銀河が降りてこられます!」
「は? 何を言ってるのだ、板垣殿?」
「でありましょうか空からもうすぐ銀河が降りてきます!」
 読四はツル夫に言いたい事が何なのかわからなかった。
「銀河が降るなら水の惑星は潰れてるだろ? 確かに大変な事だな」
「そ、そうゆう意味で申されておりませぬ!
 僕は正体不明の銀河が観測しうるごとに水の惑星に近付かれまして気味の良か
らぬ物と感じまして観測より八の年が過ぎさりました。
 そ、そうしましたら!」
「そしたら、どうなんだ?」
 ツル夫は読み四に向かって大声で結論を言う!
「あれは四か五の日に国家神武の中心に降り注がれるでありましょう!」
 それでも読四はツル夫に言いたい事は理解出来なかった。
「成程。では被害を最小限にするためにも我々は浄化し終えたばかりの
マンドロス村に退避してみようか。いや、むしろ明日は私自らマンドロス村に一の週
は滞在する予定だからな」
「あ、あのー?」
「何か言いたいそうだが、心配は無用だ。国家神武は不滅だ!
 何せ姉上がいるのだからな。私は自らの命を懸けるつもりでいる。
 土に還った弟零のように!」
「は、はあ。で、でもいつ落ちてこられるモノに襲いこられるか--」
「だからこそ私自ら命を懸けるのだよ! さっき言っただろ?
 もうこの話は止めだ! 明日、いや今日は眠れ! 私はこれから眠りに就かなけ
ればならない! 今日は早いんだからな!」
「で、でも--」
「もういい! 早く帰れ、板垣ツル夫殿!」
 読四はツル夫を帰らせた!
 帰り道の上空、ツル夫は空を眺めた。
「生子様であられるなら僕の言おうとされる事を理解出来ましょうに」
 そう呟いて自宅に帰って行く。

 午前九時五十分二十三秒。
 場所は東テレス町三番地区第三東門。
 出発の時が迫っていた。浄化されたマンドロス村に移住する者達は天同読四、
ライッダ・来栖、ユーミ・ライダル、リムーバ・キングレイ、そして天同壱生を含む
二千名だ。皆は残った者達に言葉を交わしてゆく。勿論、齢三にして十の月と十四
日目になる壱生も養母との出発の言葉を交わす。
「やっぱ、ははうえのところにのこりとうございます!」
「出来ないわ。あなたはその村でユーミやリムーバと行くのよ。二名は命を込めて、
あなたを守るわ」
「でもははうえでないとよくないよ。ははうえでないと!」
「我儘を言うものじゃないわ、壱生」
「どうしてははうえはいかないの?」
 壱生は首を左にかしげて生子に質問をぶつけた。
「実はこれから母上は空から降ってくるモノ達を倒しに行くのよ。そしたら、壱生の所
に迎えに行くわ。約束よ!」
 生子は意味深な言葉を壱生に送る。本来ならこの意味を齢三の子供はわからな
い。大人が吐く真実味のない言葉だと思って聞き流すもの。
 しかし、壱生は他の子供とは異なる存在であった。
「まさか、ははうえは……そんなのはほんとうだよね?」
(やはりこの子は仙者だわ! この子を育てた私はわかる。
 産まれた時から凡庸でない呼吸の仕方をしていたけど、それは大きくなれば凡庸
になるはずだと思って育てたけど、三の年になってもこの呼吸法は続く。
 それに拍車を掛けるようにこの間の鋭さ……間違いなく仙者よ!
 やはり私達は秘境神武を終わらしても神武人族の長だけは終わらないわね!)
 生子は壱生の底知れぬモノを感じ、微笑みを見せた。
「どうしたの? うれしいことなの?」
「いえ、壱生が御利口だったので母上は大層喜んだのよ!」
「そう、ぼくとってもうれしい!」
 壱生は両手を天高く上げて喜んだ!
「そろそろ十の時だわ。壱生! 出発前にこんな事を言うべきかどうか迷いを生じる
事だけど。実は私は--」
 生子は真実を話そうとしていた!
 しかし--
「ぼく、はじめからわかってるよ! でもそれでもははうえはぼくのははうえだよ!」
 壱生は齢三の子供とは思えない事を生子に告げた!
「そう、そうしておくわ! 私は必ずあなたの元へ行くわ。
 改めて言うけど、約束よ!」
「やくそくははたされますように、ははうえ!」
 それが二名の血が繋がらない親子、最後の会話だった。
 そして壱生を含む二千名は第三東門より東へ成人体型五千離れたマンドロス村
へと足を踏み出してゆく!

一兆年の夜 第十三話 天同生子 継承篇

 ICイマジナリーセンチュリー四十二年四月五十四日午前二時二分一秒。

 場所は国家神武首都四門中央地区中央官邸重要会議室。
 そこにいる誰もが覇気を無くしていた。理由はお日様を表す赤丸模様の旗を背に
座る者がもはや生気が無かった。齢は一の週が過ぎれば三十になろうとしている肩
まで伸びる黒髪で均整のとれた顔付きである。
 けれども--
(私はもう美しくない。壱生を養子にしてからの一の年は幸せだった。その頃までは
美しかった。
 けれども心のどこかで零とリモートを死なせた罪と壱生を勝手に自分の子にした罪
で自ら戒めたわ。それがその後から続く二の年。私達国家神武に暮らす者達に降り
かかったわ!
 私が齢二八だった頃、セミ族が殻を破る季節だわね。マンドロス山の除去作業で
おぞましきモノ達が襲来。国防官真島ベロウ都もこれを倒しに出撃した。結果は軍の
勝利だったけど、真島国防官と陸上官藤原トガ由紀を含む五百以上の兵士が土に
還ったわ。
 同じ年、雪が積もる季節だったわね。国家神武の全ての北門でおぞましきモノ達が
襲来。防衛にあたった兵五十名が食われたわ。幸い本隊が駆けつけたお陰で
おぞましきモノ達は倒せたけど、こんな勝利は空しいわ。
 私が齢二十九になった頃、桜咲く季節だわ。国家神武の南以外全ての門で
おぞましきモノ達が上空から地中まであらゆる手段で襲撃。防衛にあたる者、援軍と
して駆けつける者、そして国民による団結でこれを全て倒した。
 でも、三千名に上る者の命は旅立ったわ。想念の世界へと。その中には国防官
モンデ・メエフィン、上空偵察大臣白石カブ朗、陸上副官上山ブル彦もいたわ。
 戦いは私の予報が正確だったから良いけど、皆を死なせずに予報する事はもう私
には出来ないわ。最愛の劣弟零を死なせたあの頃から。
 もう私には何が残るの? 教えて、誰か!)
 両眼の大きさは変わらず中庸。
 だが、その眼にはもはや当時の強い光は出ない。それに合わせてか、鼻も唇も
弱々しい印象を皆に与えてゆく。
(私はもう国家神武の象徴ではない。今は何も救えないただ一名の生命そのものよ。
 こんな私に何をすればいいの? 何もしない事は象徴たる私の役目。
 けれども、国民を活気づけたり、予報をしたり、任命権を行使するのも私の役目。
 でももうそれらも何の意味を成さないわ。何の--)
「しっかりなさいませぬかだ、生子様だ!」
「! ア、アンジェル?」
 そんな彼女でも励まされる事だけは変わらなかった。齢二十五にして三の月と
三日目になる神武八咫烏族にして官房官を務めるアンジェル・アルティニムムは
父親譲りの現実主義思考で生子と呼ばれる仙者を渇を入れた!
「あなたは何者だなのですだ? 国家神武だの象徴だではありませぬかだ!
 こんな姿だを見て国民だは喜びますかだ! あなたの第一子だである壱生様だが
お喜びだになられますかだ! 答えて下さいだ!」
 アンジェルは必死に生子を奮い立たせようとしたが--
「もういい。何回言われようとも私にはもう何も無い。
 かつては仙者と呼ばれた天同生子は死んだのよ。四の年より前に零を死なせた
その時から」
「で、ですーが、零ー様の後ーを継いだー真島殿ーやメエフィンー殿だーって死んだ
はーずの生子ー様を支ーえたじゃありーませんか!
 今ではー国防官にーなった僕ーは必死でー生子様やあなーた様が御ー守りになら
れーる国民ー、それーに僕のー可愛いー兵士ー達をお守りになーってるのーです
よ! こーんな弱ー々しく、偵察ー以外に能ーのない僕ーにだってー!」
 齢三十一にして十二日目になったばかりのアリスト犬族の中年は気苦労のせいで
両耳の部分が灰色になった体毛を周囲に散らしながらも生子を説き得ようとした!
「ありがとう、ピート。あなたの励ましは聞いたわ。
 けど、もういいのよ。あなた達は私の事はもう無視しても良いわ。もう私は何も
視たくないのよ」
「せ、生ー子様……」
 生子はもはや誰の耳も聞き入れない深刻な状態だ。それは唯一の弟となった同じ
年である国家最高官の言葉も届かない。
「姉上の言うとおりだ。もはや今の姉上には誰の言葉も動かすには至らなくなった。
 こうなってはいつも通り我々独自で勧めるしかない。その後に象徴である姉上の
任命権を行使して貰えばいいではないか」
「嘆かわしっい。私めが強っければ零様やリモート様っを!」
 齢四十一にして四の月と三十日目になるアリスト猿族にして生活安全官である
老年は二名を救えなかった事を嘆いた。
「それは、私も、同じ! このライッダ・来栖は、どう、出来る!
 これも、命の、運びよ」
 齢三十五にして六の月と二日目になるクレイトス飛蝗族にして文部官ライッダは
詩的な事を言った。
「もういいだろ! ここからは私が場を取り仕切るぞ! と言っても私も寂しい限りだ。
もうあいつと喧嘩出来ないとなれば、な。とにかく重要課題から先に出す!
 えっとだな、マンドロス村がようやく生命が住める地になった件についてだが……」
 国家最高官を中心に重要課題について進められてゆく。そえれをただ聞いている
だけしか出来なくなった生子は自らの殻に閉じこもりながらもなお諦めきれない思い
を巡らす。
(マンドロス村……そうだわ! あそこを壱生の故郷にすればいいわ。
 そうすれば壱生も私のように象徴として振る舞わなくて済むわ。
 いいえ、そうじゃないわ。私の魂は死んではいない。
 何故ならまだ希望の眼が残っているもの。我が子のように育てた壱生という希望の
芽を。まだあの子を育てたい。
 でも無理だわ! 私は自らの未来を見たわ! 私は三十に成れば境界の外に旅立
たなくては行けない
! 私は一兆年の神々と共に向かわなければいけないわ。
 だから壱生の面倒を誰に見ないとならないか。乳母のユーミ? いえ彼女では心細
い。他にいるとするなら。そう、いるわ。リムーバにも面倒を見させよう。
 ふふ、私もまだまだ勝手ね。最愛の子にここまでやろうと考えるなんて。
 でもリムーバを付けて大丈夫かな? あの子は恥ずかしがるかもね。
 壱生は雄の子だから)

一兆年の夜 第十三話 天同生子 継承篇(零)  

 ICイマジナリーセンチュリー三十九年三月七十八日午後四時五十分二秒。

 場所は秘境神武入口。
 齢十七にして九の月と三日目になる少女と少年が二名。お別れの挨拶を言った。
「お達者で姉上。私は外の世界へ行き、この目で世界を見てくるよ」
「気を付けてね、読四。おぞましきモノはいつどこに現われるかわからないわ」
「その為似我等神武鬼族乃者牙付いておりますぞ。齢二十三似志手四乃月斗
二十六日目似成留このカゲヤマノタケルノキミ牙付いております故」
 タケルノキミは青く剛胆な筋肉を見せつける事で生子への案じ得ぬ心を払拭させて
みせる。それを見た少女は肩まで伸びる髪を左手で後ろに払う仕草をしながら口元
を微笑ませた。
「お、おかしいのですか、姉上?」
「いいえ、タケルノキミがあまりに頼もしいと思って安心したのよ」
「はは! 有吏難機御言葉を真似ありがとうございます! 生子様乃御言葉端我似
とって端最高乃宝出御座います!」
「大袈裟だよ、タケルノキミ!
 では姉上。改めてお元気で! それと零には伝えてもらえないでしょうか?
 あんまり姉上を困らせるな、という言葉を!」
 そう言って読四は腰まで伸びる長い髪を肩まで大きく浮かせながら生子に背を向け
た--タケルノキミと共に外の世界へと旅立つ!
「あなたは必ず生きるのよ、読四」
 生子がそう言った時に背後から者が壊れる音がした--振り向くとそこには急い
で駆けつけたせいで足元をよく見ず、陶器を強く踏んで割った成人体型一とコンマ二
を越える人族の大柄な少年が立っていた。
「はあ、はあ! あの能なしめ! 俺を待たずして外へ出て行くなんてよ!」
「能なしとは礼を欠くわ。読四は私達と違って凡庸な者の気持ちを理解出来るわ」
「はあ、はあ! そうじゃねえだろ! 俺は十五になったばっかりなんだぞ!
 先祖ろうの御陵にある舞台を飛ぶ儀式だったんだぞ!
 しかも正午から始まったんだぞ! 俺は一番後ろの方だったんだぞ! それであれ
やこれやといろいろあって飛んだのがすでに日が沈もうとしてる時だったんだよ!
 はあはあ、かなり遅れて仕方ねえだろうが!」
 少年は息を荒げながらも言い訳をした。
「ごめんなさい、零。もう少し私が読四を引き留めていればあなたと共に旅立ちの
言葉を贈れたのに」
「気にすんな! どうせ兄貴のことだし! それよりも姉貴はどうするんだ?
 ここは親父の遺言でいずれは--」
「わかってるわ、零。秘境神武もいずれこの夕日のように沈む日が訪れるわ」
 生子は太陽に向かって言った。
(その日になれば私も全てを投げ打つ時が来るの?
 それとも--)
「辛そうな顔は似合わないぜ、姉貴!
 どうせここを秘境そのものにしても俺達まで秘境そのものにならないんだからよ!
 むしろ、そこから俺達の物語は始まる気がするんだ!
 俺はそう思ってるぜ!」
 零は笑顔でそう言った。
「ふふ、そうね。
 だからこそ読み四は外の世界へと旅立ったのね」
「兄貴はいいだろ! んなことよりも俺達はどうする?」
 零の言葉に生子はまた夕日を眺めた。
(始まる物語はいずれ終りを迎える。その物語は終わったらどうするの?
 何も残さないまま終わるだけ?
 いいえ、それは悲しいわ。せめてその先まで生きる者達に語り継がないと。
 私達が生きたという証を!)
 それから十二の歳月が過ぎた。
 ここから天同生子の物語も最後を迎えようとしている……

時代はスーパーコンピューターの天下なのか!

 どうもdarkvernuです。
 早速ですが、ショートストーリーを始めます。

 むかーしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんがいました。
 おじいさんは山でサイコキネシスの修行に、おばあさんは川で明鏡止水の修行に出ました。
 ある時、おばあさんは川からどおらえもん、こおろすけと流れる大きなスーパーコンピューター京を拾いました。
 おばあさんは家に帰るとおじいさんに頼んでスプーン曲げを実演するようにスーパーコンピューター京を曲げようとしました。そしたら京の中から大きなスーパーコンピューターのような子供が出てきました。
 おじいさんとおばあさんはワッと驚いて負けを認めましたとさ。愛でたし、愛でたし。


 ふざけすぎて本当にすみません! 桃太郎のお話を改悪したのみならず、何がしたいのかわからないオチで締めました。だいたい言いたい事はつまり、人間様が将棋の団体戦でコンピューター相手に負けたというニュースを聞いてこんなつまらんショートストーリーを作りました。
 いやあまさかチェスやオセロだけじゃなく、将棋までコンピューターの覇権を握ってしまうともはや何の為に人間が存在してるのかを考えさせられてくるよ!
 オマケにブスに仇名を決める部門でも負けてるし! いやそれは嘘だけど(笑)。
 自分はとある本で数学の難問の一つがコンピューターによって証明されたという話を知りましたが、その場合は本当に証明したのかどうかさえ疑るのが数学者です。何せコンピューターが完全だとは言い切れないからと言う事と、人間様がコンピューター相手に負けないんだという意地がそう疑る。すまない、意味不明な事言って(苦)!
 とにかくその本で得た情報を元に自分はここまでコンピューターが進歩してしまうと人間の存在その物が無用の産物になるんじゃないかと心配になってきます。もしかしたら将棋だけじゃなく、料理の部門でもコンピューターが制するのか、あるいはアメリカの次に覇権国家は日本かドイツではなく、コンピューターが覇権国家になるのではないかといったわけわからん事さえ思ってしまいます。ちなみに中国は覇権国家になれません! あそこが中華思想を捨てない限り永遠に(笑)。
 以上でショートストーリー解説を終えたいと思います。

 では十二話の解説に入りますよ! 今回は起承転結の転です。
 ここも承並みに長すぎた! というより第九話と同じくらいパートを出した時点で異常だ! しかも各パートそれぞれがものすげえ長いしよ! しかも前話と同じくあれだけ詰め込んだのにやっぱりまだ物足りない感がする!
 話を進めます。今回は主人公が完全に零ではないかと疑いたくなる展開だったよ! というか主人公である生子がほとんど何もしてないしよ! さすがは激動篇(驚)。というか余りに激動しすぎてここで終わっても良いのではないかと思いたくなったよ! というかオチがそうだし! まあ予定通り天同生子の物語はまだ続きます。
 話を戻しますよ。今回は前話のほぼ三、四年後の話になります。その為なのかマンドロス村がどうなっただとか、国内状況はどうなったのかについては真実味をある程度持たせた形で描いたと思います。まあ三年であの二名の関係が身体を抱き合うところまで発展するなんて誰もが予想出来ますが。
 ところで前話で解説し忘れた事も含めてわからない事を説明していきます。まずアリスト豆とは何かといえばこれはコーヒー豆といえばわかるかな? とにかくアリスト町の頃からその住民はコーヒーを愛用してました。その為、納税の対象となってます。
 国家最高官の選挙について説明します。この選挙はアメリカ大統領選に似てます。まず各地区町村それぞれの代議士達が最高官候補者達の内の誰かを支持します。それから国民が各地区町村それぞれでこの者が最高官になって欲しいと思い、それを支持する代議士に投票します。そしてその選挙の結果なって欲しい者を支持した代議士の数が他より多ければその者は次の最高官になれます。意味が結構わかりにくいかも知れませんが、そうゆう制度になってます。なお最高官の任期は六年となります。ただし、この場合はアリスト町時代からの継続が入りますのでそこら辺が複雑になってます。
 国家防衛官の選出についてはあそこは今のところ軍の中で一番強い者が国防官になります。それだけです。
 それから象徴については前にも説明しましたが、天同家の者しかなれません。それにどの系統なのかについても今のところ言及しないつもりです。これは継承篇が終り次第説明したいと思います。
 「事既に速すぎた」という意味については必死でわかるように説明します。これは一種のタイムパラドックスです! とにかく音よりも速ければ良かったものの光の速度を超えるのみならず更にその先まで越えてゆきました。すると時間は世界を修正する作業に入りました。それが未来に飛んだ者が過去に飛ぶという科学的に認可されそうにない出来事が起こりました! 当然、飛んだ者は自分で作った痕跡を他者が作ったと錯覚します。そして修正作業は更にその者を現在の時間軸に戻します。すると、その者は手遅れの現場に着きます。んん、すまない。正直書いている自分でも何が何なのかがわからなくなったよ(苦)。とにかく漫画やアニメ、それにラノベでは速ければ全てという風潮は時代が遡っても健在ですが、自分の作品では速すぎると逆に今度は助けられる命も助けられなくなるという事を書いてるつもりです。それだけ自分が作る物は別の意味でリアリティに溢れます。以上で言葉の意味を終えたいと思います。
 この世界の果てについても蛇足ながら説明しますね。今のところ水の惑星では武内大陸までしか判明されておりません。ですのでコロンブスが新大陸を発見したみたいにその先の大陸が出てくる可能性があります。それだけです。
 何が何だかよくわからないけど、以上で第十二話の解説を終えたいと思います。

 さあ、やっと十二話まで終わらせました(疲)。ここからは始動篇と同じようなテンポで書いていきます。というかパート数多いと読者が読み疲れるんだよな。だからしばらくは始動篇と同じテンポで書き進める予定です。
 では天同生子のお話の今後に移します。第十三話で完結します。どうゆう終り方なのかは今まで読んでくれた読者のだいたいは予想出来ると思いますのでネタをバラしません。とにかくここで生子達全生命体の敵の名称を決定づける出来事が起こります。それは現代の軍事力をもってしても「さすがにこれは防げんだろ!」というような事です。まあこれでネタがわかったあなたは相当の辛抱強い御方だと自分は思います。
 まあいきなり話を変えるけど、今後の予定を載せますよ。

 四月
 二十二日~二十七日  第十三話 天同生子 継承篇       作成日間
 二十九日~五月四日  第十四話 ????           作成日間
 五月
 六日~十一日     第十五話 物々交換から貨幣へ      作成日間
 十三日~十八日    第十六話 語り継がれる物語       作成日間

 先週の予定を載せる時まで日にちを間違えて申しわけありません! 今後はそうならないように注意します!
 とにかく自分は遅筆なので月~土までの間に各パートを作っていき、金か土の内に話を終わらします。金で終わらしたら土で休む。そうゆうスケジュールでやっていきます。まあ土の内まで終わらず、何かしらトラブルが発生しない日がないとは限りませんのでその時には最下段の所に小文字で知らせます。
 ではスケジュール通りに勧める事を願って今回はこの辺で終わりたいと思います。さいなら~。

改めてHP版宣伝

 どうもコピペが上手いdarkvernuです。
 とりあえず一兆年の夜のHP版に行きたい方は↓
 一兆年の夜 HP版

 HP版はブログで掲載中の一兆年の夜の各話を一括で読める便利な物です。更には少し加筆修正してますのでほんの少しだけ新鮮な気分になれる、かな?
 ただ欠点があるとすればルビが振られてない点と、色分けされていた部分が普通の色になっている点、他にあるとすれば加筆修正したせいで良い部分が改悪されている可能性が出る点。そうゆう意味じゃどちらが良いかはユーザーの皆様で判断して貰うしかないですね。結局丸投げですよ、自分は。
 とにかく自分は自分自身が自己満足で作った作品を少しでも多くの人に見て貰うためにHPやブログを立ち上げました! 本当にそれだけです! しかし、世の中は厳しい! 自分はちっぽけな存在である事を毎日感じていてとても暗黒面が強化し続けております。
 とまあこの話は日曜日に言えばいいわけですので今回は……おっとまだ書き忘れた事があった。
 この記事は追記はしますが、たまに削除して記事として再構成して出す場合がございます。
 なので今後ともこんな自己中心的なdarkvernuにお付き合いする方は気を付けて下さい。
 ちなみに今回は用語辞典も追加しましたので見たい方はどうぞ!
 ではこれにてさいならであーります!

一兆年の夜 第十二話 天同生子 激動篇(終)

 天同生子が寝室を訪れた時、一つの新たな生命がこの世に生を受けた!
「ああ、ま、間に合わなかった……」
 同時に二つの生があの世に旅立ってしまった。
 天同零とリモート・天同。その二名の生が。
「も、申しわけありません生子様! 私めがもっと奥様を無理なく出産出来ていればこんなごんな、ううおおああああ!」
 ユーミは天高く聞こえるかのように泣き叫ぶ! 彼女だけでなく、周りの者も二名の死を悲しむ!
 しかし、生子は己自身が泣く事すら認めなかった!
「おぎゃあああ、おぎゃあああ、おぎゃあああ!」
 生子は二名の愛の結晶に近付き、手刀で臍に付いている物を切り落とす!
「生子さばあああ! どどどうなされでゅどでずが!」
 泣いているのかはっきり話せないユーミの言葉に生子は新生児を抱いた!
「決まってるわ。私はこの子を二名の代わりに育てて、育てて……」
 生子はとうとう我慢の限界に達した--両眼から川のように涙が流れてゆく。
「うう、零。ぜろ。ゼロ、ゼロオオオオオオオ!」
 生子の慟哭は中央地区全体に鳴り響く!
「ゼロ、りもーと……ワタシハ、ワタシハド、ウスレバイイノ!
 ドウすればいいのおおおお!」
 彼女の言葉は片言から流暢に、そしてまた片言に移るように自己そのものを見失ってゆく! 彼女の自己を戻す者はこの部屋のどこにもいない。
 そう思われていたが--
「あ、ああ、ああああ!」
「! この子が? 私はこの子に?」
 生後間もない赤子は自力で泣くのを止んでいた--それを感じてか自らを取り戻す。
「あなたを絶対に守るわ! 何故ならあなたは全生命体の希望……
 あなたは私の弟零とあの子を愛した誇り高き雌リモートが遺した希望!
 そしてあなたは私を自力で救ってくれたわ!
 だから、だから私は!
 私はあなたの母親になるわ!」



 四月百六日未明。
 場所は中央地区神武聖堂。天同零とその妻リモートの国葬が始まった!
 国家神武全土の国民が長い列を作った!
 彼等の肉親である生子や読四、リムーバは勿論の事、零の親友である真島ベロウ都、陸上偵察官ピート・プート、更には天体研究家の板垣ツル夫といった多くの者達が彼等を偲んだ!
 天同零は国家神武の前身であるアリスト町の頃から勝手気ままな振る舞いで誰からも迷惑がられる存在だった。国家神武になった後でも同じだった。
 けれども彼はそれに反して好かれる存在でもあった!
 肉親の生子はともかくとして、よく喧嘩する読四や本来は彼の事を好かなかった愛する妻リモートを見れば明らかであった!
 国葬を執るのは生子。彼女は感情を込めて弔辞を読み上げた--激流となって大地に落ちて行くように涙を流してまでも!






  ICイマジナリーセンチュリー四十一年七月百七日午後零時一分二秒。

 場所は国家神武首都四門零の丘。そこは天同零とリモート・天同が眠る地。
 そこに齢二十七にして一の月と十三日目になる神武人族の女性が齢一と二日目
になる赤子を抱えて花束を供えた。
(もうすぐ一の年になるわ。あなた達の遺したこの子は立派に大きくなってるわ。
 この子を引き取ってから一の月が経過しても名前をどうするかで私達は大いに
議論したわ。産まれた地に肖るべきか、両親の名前を忘れないようにすべきか、
産まれた時の状況に合わせるべきかといった事をね。
 でも結局は私自身で付ける事にしたわ。なんたって私はこの子の母親なのだから)
 生子は赤子をあやしながら空の方を見つめた。
(空が近付いてる? もしかして板垣ツル夫はこうゆう事を報告しているのかしら?
 だとしたら私の勘ではおぞましきモノの正体は……いえそうゆう事は今は無しね。
 この子の名前の事について話を戻さないと。この子の名前は零の名前とリモートの
名前を組み合わせたものになるわ。わかる者にしかわからないけど。そして、そこへ
この子の母になった私の名前を組み合わせれば。
 この子の名前は)
 生子は赤子の方に優しい視線を向けた。
「ねえ、壱生いっせい。今日は何をして遊ぼうか?」



 ICイマジナリーセンチュリー四十一年七月百七日午後零時五分十二秒。

 第十二話 天同生子 激動篇 完

 第十三話 天同生子 継承篇 に続く……

一兆年の夜 第十二話 天同生子 激動篇(八)

 零の口から水一杯分の血が吐き出された!
「零!」
「こだ、国防官んんだ!」
「だ、旦那様あああ!」
 零の意識は朦朧とする。彼の右手の力は徐々に抜けようとしていた!
 しかし--
「ぜ、ろ? ぜろ? 零? ぜ、零おおおお!」
 リモートは苦しむ中で零を叫ぶ--その声を聞いた天同零は命の炎を再燃させる!
「じっとしてろやあああガアア!
 左手で掴んだモノがなんだっていググ!
 右手を使えばいいじゃねえかああガアアア!」
 零は血反吐吐きながらも右手の力を振り絞って壁をよじ登り、二階寝室に入りきった!
「零。も、もうやめて! このままじゃ--」
「ごのばばじゃどうずるって……そんなの知るか!」
 零は神武包丁を抜くとそのまま--
「まさか旦那様はそれを自ら!」
「や、やめろ、国防官殿! 自ら、死を与える、など!」
 皆の制止を振り切り、零は心の部分に突き刺した--血は周囲成人体型一以上飛び散り、中に潜むおぞましきモノは絶命した!
「これは死ではない! ガ、ハア!
 俺はおぞましきモノを倒した、んだぁぁ」
 零は包丁を抜くと、朦朧とした足取りでリモートに近付いた。
「やく、そく、ははたせ、たな、りも、お、と」
「ええ、果たせ、ましたわ、零。ぐううううも、もうううう!」
 リモートはついに生命を誕生させようとしていた。
「ゆ、うみの、ばば、あ。そ、ろそ、ろだ、ぞ、は、やく、しろ、よ」
「わ、わかりましたわ旦那様!
 奥様。例の呼吸をして下さいませ! 慎重に! 慎重に!」
「ひい、ひーい、ひい、ふう、ふーう、ふう……」
 零は仰向けに倒れ込んだ。
「零おお! 死、死ぬな! 今アンジェル会社をつ--」
「おせ、えよ。そ、そ、ぉ、れよ、り、み、えない、だ、ろ?」
「ああ、見せるようにする!」
 読四は零の言う通りに零をリモートが出産するところが見えるように彼を寝転がせた。そうしている内に鳴き声が部屋全体に響き渡る!
「お、ぎいいやあああああ!」
 新たな生命の誕生だった! それは二名の愛の結晶が産まれる最高の瞬間だ!
「お、奥様! そ、それに旦那様に皆様方! 新しい生命が産声を上げられましたわ!」
 ユーミは二名に聞こえるように大きな声で無事出産した事を告げた!
「ああ、ぼんや、いだが、わ、わ、か、るぅ、ぉ、こ、りゃ、お、ぉ、ぇ……」
 こうして天同零は愛する息子をこの目で見ながら二十三の生涯を終えた!

一兆年の夜 第十二話 天同生子 激動篇(七)

 午後八時五十分二秒。
 場所は国家神武首都四門中央地区天同零の館二階寝室。
 出産が始まっていた。リモートは激しい叫びを上げながらも助産師であるユーミ
からの助言通りに独特の呼吸法で痛みを抑えてゆく。
 そんな様子を見ていた生子はリモートの心配をしていた。
(腹を切らずに自力で産む。彼女も無茶をするわ。
 零の子だわ。零とリモートの愛情の結晶よ。それを自らの心身を懸けて産むなんて無茶だわ。それでも産もうとするのは彼女もまた天同に成ろうとしているのね。今は亡き私の母、天同子季のように。
 いえ、私が母上の心を勝手に解釈しても母上に叱られるわね)
 リモートは未だに苦しみの中にいた。彼女を心配に思ったのか次々と付添い者が増えてゆく。
 国家最高官天同読四、官房官アンジェル・アルティニムム、生活安全官
エウミョウル・ムルリリウーム、税務官フルシャル・シャウルル、文部官
ライッダ・来栖などそうそうたる者達だった。
「零の奴は何をしている! 妻が苦しむ中で側にいてやらないなんて!」
「最高官殿だ! 国防官殿だは今戦っておられますぞだ! これは我等だ政だをする者だとは都合だが異なる件だでありますぞだ」
「それは理解出来る! それでも普段のあいつなら私心で真っ先に駆けつけるべきだろうが! 心変わりが認められると思っているのか!」
「確かに! 国防官は、散々、勝手を、さられました、からね。
 でも、ここ最近の、あの方は、器が、少し、大きく、なられた気が、しますよ。そろそろ、大人に、なりますね!」
「なれえるかあの? 国防官んんはああ最高官とうお同じいいく子供おうっぽおうい部分があ残りまああすのおうで」
「一緒にするな! 私はあいつと違い仕事はちゃんとする方だ!」
「静かにせんかああ! あなた方には奥様の心配をするという心遣いがお有りならここで口喧嘩しないでさっさと励ましの言葉を一つや二つ仰りなさい!」
「「「「「はい……」」」」」
 ユーミの迫力ある怒声で彼等は黙り込んだ。
 リモートは今も苦しみの中にある。それも目に見えるもの全てが蝋燭の火を消し終えた煙のように歪んでゆく。「ああああ、ははああ! 揺れるよ、揺れるよ。辺りが揺れるよ!」
「しっかりなさい! まだ先は長いですわ! 後少しでも良いのです! あと少しの力でも自らの心を持ち堪えて下さいませ!」
(苦しいわ! 先は一体どのくらいなの?
 一の時? 二の時? 生命の誕生はこれほどまでに苦痛を伴うな--ん!)
 生子は強い気を感じた! それは生命に死を与えるために放たれる気だった!
 その時、三階の方向より階段を慌てて下りる足音が鳴り響く!
「何ですか! 奥様の気が居ても立ってもいら--」
「た、た、大変にゃあああ! 情無きモノが国家神武に侵入して来たにゃ!」
「何! おぞましきモノが!」
 齢二十二にして十一の月と一日目になる神武猫族のニャルタラノニャラレビコからの報告を受け、生子は気配のした方角に向けて大地を蹴った--それは風を切り、音を越えて行くように!
「あれ? 生子様にゃ?」
 周りの誰もが生子の生命の知を超えた速さに目が追いつけなかった。
「姉上はさっきまで居たのに? いやむしろ音が割れるような感じがしたんだが?」

 午後九時零分零秒。
 場所は中央地区未明。
 生子は気配のした方向へ向かう--音より速く、光に近付く!
(あれ? は零? いえいないわ!
 零が館へ向かって走っていたのを見ていたけど、どうやら幻を見ていたようね)
 生子はおぞましきモノを発見するとすかさず鞘を抜き、抜き身の神武包丁で正面から頭上へ正中線に沿うように一刀両断!
 だが、何かを放たれてしまった!
(いけないわ! あそこはリモートがお産をしている部屋!
 急がないと!)
 生子は何かが寝室に届く前に大地を蹴ってそれを打ち落とそうとした!
 その時、彼女の眼に移る光景は一巡してゆく--零を目撃したと思い込んでいた時の光景に誘われた!
(大地を踏んだ時に出来る砕けた石の破片。さっきここで誰かが強く蹴ったわ!
 しかも走るように。何者なの?)
 生子はそんな風に思いながら何かを打ち落とそうと向かった。
 しかし、事既に速すぎた

 同時刻。
 場所は中央地区未明。
 天同零はリモートの元に駆けつけてゆく!
「間に合え! あいつには俺が必要なんだ! リモートは立派な子供を産もうとしてるんだ!
 立派な……えっ! 何で姉貴がこんなと--」
 零は生子を目撃したように感じたが、それは気のせいだと気付く。
「姉貴がこんな所にいねえよな。って急がねえ--えっ?」
 零は自分の住む館の二階に向けて何かを放とうとするおぞましきモノを発見した!
「あの距離じゃ間に合わない! ならばあああ!」
 零は館へ向けて大地を強く叩きつけた--成人体型六十六以上ある距離を八秒台で走り抜ける速さで館に辿り着くと壁によじ登って二階寝室に届く寸前で--何かを左手で掴んだ!
「ぜ、零! お前何してるんだ!」
「兄貴か! 心配だったから駆けつけたんだよ!
 へへ、俺も勝手が--あぁ」
 何かはおぞましきモノだった--物部刃に似た物に擬態して寝室に向かって放たれたが、阻止される事を想定されたのか、それは零の左手を通して心臓を食らってゆく……

一兆年の夜 第十二話 天同生子 激動篇(六)

 四月百十五日午前九時一分二秒。
 場所は国家神武首都四門中央地区天同零の館。四階建てになっており、寝室は二階に設置。助産師がいつでも出動出来るように一階には助産師室を設置。三階には館の主、天同零の個室がある。ここにはリモートと身内以外の立ち入りは認めない。四階は展望室を設置。ここでおぞましきモノがどこに現われるかを四六時中見回る事が出来る。
 一階玄関口で零は愛する妻リモートとお話をしていた。
「もうお喋りは止めだ止めだ! 軍全体の士気に関わるんだよ!」
「よくもまああなたみたいな者が士気の事を気にするんだね。大人のつもり?」
「お前は子供を宿しても言葉遣いは変わらんな!」
「誰のせいでこうなったと思ってるのですか!」
「いや、嬉しく思ってな」
 零の意外な解答にリモートは思わず顔を逸らせる!
「ここはそんな言葉を仰るではないでしょ?
 この子が動揺したらどうするのですか?」
 リモートのお腹は今にも爆発しそうな大きさになっていた。それを改めてみる零は安心出来ない顔になる。
「ど、どうしたの? そんなに深刻な顔になって!」
「だ、大丈夫だろうな、リモート! ちゃんと子供を産めるだろうな?」
「当たり前でしょ! 私はあなたと共に戦場を駆け抜けた雌だわ!
 あなたみたいに大きな子供だって私は無事に産んでみせます!
 なので……どうか零は生きて帰って下さい!」
 リモートは自信に満ちた顔つきで言った--零の安心出来ない心は払拭された!
「全く。行ってくるぞ! 必ず俺は帰る! 約束だ!」
「ええ、行ってらっしゃい!」
 零は館を出て行った……無事を祈って!

 午後一時二分一秒。
 場所は天同零の館一階食事部屋。
 リモートは昼ご飯を食べ終えた。その時--陣痛は始まった!
「ぐぐ、ま、負けないわ! こ、こんなことでイウウウ!」
 リモートは苦しむ! 奥歯を噛み締め、呼吸を整えながら痛みに耐える!
「はあ、はあ、はあ」
「ど、どうなされたのですか、奥様!」
 齢三十八にして七の月になるアリスト人族のユーミ・ライダルはリモートの側へ寄った!
「も、もうすぐかな?」
「まだ、まだです。この痛みは初めてでしょう?」
「? どうゆう意味?」
「初めてならまだ痛み出すまでは時間があります。ですのでその間に私達は付添い者の準備を始めないとなりません」
 付添い者。まず挙げられるのが天同零。だが--
「零を連れ戻すの? それは危険だわ! あの方を連れ戻すと今の戦いで死者を増やすかも知れないわ!」
「それは本音ですか、奥様?」
 ユーミはリモートの言葉が本音でないことを知っていた。それでもリモートは私の心と向き合いながらも公の心で話そうとした!
「それでも私は彼を戦場から連れ戻す事に反対するわ!
 これでも我慢してるのよ! 辛いのよ!
 今のは私の真な叫びよ!」
 リモートの言葉に圧されながらもなおユーミは自分を曲げなかった!
「それでもあなたは私の心を口の話すべきです! でないとお腹の子に良い影響を与えませんわ!
 どうか私の心を全て吐いて下さい! お願いしますわ!」
 ユーミは七等親の身体でなお横幅の広い熟女だ! その体型は却って威圧感を出す! それもあってついに根負けしたリモートは私心を全て吐いた!
 それは一の時が経つほどであった。すでに彼女の両眼から溢れんばかりの涙が流れていた。愛する夫である零への思い、ただ一者の肉親リムーバへの愛情、象徴天同生子への憧憬……あらゆる思いを彼女は全て吐いた!
「だから。だから私は零やリムーバ、それに国家神武に住む愛する神々やみんなが私の側にいて欲しいのよ! 私はこのままでは、ウウ! ううううああああ!」
「いけないわ! また陣痛が始まったのね! 奥様! 私めの両手を強くお握り下さい!」
 言われたとおりリモートはユーミの太く弾力のある手の付け根を強く握りしめた!
「ウガアアア! イウウウウ!」
「少しでもお痛みを私に流して下さいませ!」
「はあ、はあ、はあ。これで二回目。まだなの?」
「ええ、まだですわ」
「呼んで」
「は? どなたをお呼びすれば宜しいでしょうか?」
 リモートは憧れの者をお呼びするようにユーミに告げる。

 午後三時二分一秒。
 天同生子は館に着くと直ぐにリモートの所に駆けつけた!
「お腹を触ってわかるわ。どうやら零の子は胎内から出ようとしてるわ」
「ええ、はあはあ」
「生子様! リモート様は三階名の陣痛で心身共に消耗しております。雑巾がいくらあっても足りませんわ!」
「いや、雑巾だけじゃないわ。彼女の体力がこのまま持つのかが心配ね」
「大丈夫であります、生子様。わ、私はこの子を産むまで耐えます、わ」
「と、ところでリムーバさまをお見えにならないのですが?」
 ユーミはリムーバが居ない事に気付いた。
「あら? あ、あの子は、はあ、朝早くに、はあはあ、零より先に廃マンドロス山に、向かった、わ!」
「奥様! 無理してお喋りなさらないで下さい!」
「いえ、リムーバはずっとここにいたわ。どうやら行く振りをしてあなたの事が心配のようね」
 生子はリムーバが真実でない事をリモートに告げたのを察知した! 本来なら誰よりもよく知るリモートならそれを認めないが--相手が天同生子なら認めざるをえない!
「そ、それじゃああの子は今頃!」

 午後四時三十五分十四十二秒。
 場所は廃マンドロス山標高成人体型千付近。大地は灰色。感触は泥のように柔らかく、匂いは小便と糞の混じり合った鼻につく強烈なものが出ていた。
 その場所で軍とおぞましきモノ達は激戦を繰り広げていた!
 そんな中で国家防衛官天同零はリムーバからの報告を聞いて両眼と口を大きく開けて立ち上がる!
「何だって! じゃ、じゃあ今頃あいつは!」
「ええ、姉上は陣痛で心身共に!」
 零は今すぐにここから離れようと考えるが--
「ここで俺が抜け出せばどれだけの被害が出るか--」
「心配するるなあ! 俺達でえ何とかしてややんよお!」
「おらーが見てー言うだーけの存在ーじゃなーいんだぞ! 戦ーいだっーてするーさ!」
「行かれよ! 自分の先祖シュラッテーならあなたを送られ出されよう!」
「お前ら! そんな勝手を認めるんだな! 俺はどこまでも飛遊実兎の血から逃れられないとはよ!
 じゃあ行ってやるよ! その代わりお前らは必ず生きて帰れ! 約束だ!」
 零はそう言って山を下りてゆく!


 それは彼等が聞いた天同零の遺言になろうとは……

一兆年の夜 第十二話 天同生子 激動篇(五)

 四月八十二日午後零時一分一秒。
 現在の天気は曇り。今にも雨が降りそうな勢いだ。
 場所は復旧マンドロス村西門。近くに並ぶ数十の仮設民家。
 その中央に天同零は泊まっていた。
「姉貴の予報ではここで待機しろだってよ!」
「ご飯粒付いてますが、如何なさいましょう?」
 リモートの双子の妹リムーバは零の下唇の右側付近に着いたご飯粒を取り除こうとした。
「いや、いいよ! 舌でなめれば案外届く距離にあるし!
 ところでリモートのお腹は順調か?」
「ええ、すくすく育っております。ただ、注意しなければいけない点があります」
「何か都合の良くない事でもあるのか?」
 零は心配そうにリムーバに聞いた。
「実は姉上のお腹の子はこのままいけば鶏量コンマ五になる予定です」
「零と五? それはどのくらいだ?」
「通常はコンマ三と六が人族の平均鶏量です。ですが、姉上のお腹にいる乳児は
明らかにコンマ四を越えております。
 姉上の成人体型は一とコンマ二です。人族の平均身長としては高い方です。
 けれども、そんな姉上でもそれだけ大きい乳児を産みますと身体にかかる傷みは相当大きい。良くない場合は--」
「やめろ! これ以上は士気に影響が及ぶ!
 今は俺が無事に帰ることに集中する。でないとあいつに迷惑をかけるからな!」
「迷惑かよお! お前はあ四六う時中う俺達にい迷惑かあけ--」
「五月蠅いんだよ、真島! それで状況はどうなった!」
 零は一名の父親から一名の戦う者の心構えになっていた。
「状況う? おいい、上空偵察大臣をお招集しろお!」
「はっ! 今すぐ! 駆けつけます!」
 齢十八にして二十四日目になるアリスト雉族の少年はカブ朗のいる仮設民家へと飛んでいった!
「零お! 心配するる気持ちはわかりりたいいがよ。
 ただあこんな俺でえも芽生えるる命いってえものにいは滅法う弱あくて仕方ねえよよ!
 だからさあ、そのおへんだけはわかあるぜえ!」
「ありがとな、真島! 俺はいつまでも我が儘言ってられな--」
「何かね。真島国家防衛副官殿ね!」
 少年に呼ばれて、すぐに白石カブ朗は駆けつけた!
「囲いしモノはあ現われれたのおか? それかあら天気いは御子おの予報う通りりになりそううか?」
「囲いしモノね? 何ですかね?」
 ベロウ都が指す囲いしモノがなんなのかをカブ朗は上下嘴を交差するようにわからなかった。
「ええっと、上う空偵い察大い臣殿は普段んなんんて呼びまあすか?」
「ああね! そうかね! 確かね、名称不明だったよね!
 えっとね、確かね成人体型五百まで近づいてるね!」
「そうか。いい加減名称を固定したらどうだ? おぞましきモノはもうおぞましきモノで良いだろ? いちいち他者によって名称が異なるのはややこしくて困る!」
「そうは言われましても私としましては生子様や国防官がお呼びする名称ではいまいち的を射ないような気がしてならないのですが」
 零の問いにリムーバはこんな返答をする以外になかった。そうしている内にカブ朗は最後の報告をする。
「あっとね! 忘れていたね。実は天気はまだ曇り空だったね。以上で報告を終えますね」
 と言ってカブ朗は自分の仮設民家に戻っていった。それとすれ違うように齢十九にして三の月になったばかりのキュプロ豚族の少年が駆けつけた!
「た、た、大変でぶ! 美味しそうなモノが上空よぶ成人体型二百! 陸上よぶ成人体型三百近付いてまぶ!」
 その報告を聞いた零達は早速行動を開始した!
「急げお前ら! このままここへ侵入されたら死者を出す!
 姉貴、いや仙者天同生子の予報に従い、俺達は例の戦法を実施する!」

 午後零時二十四分五十二秒。
 陸上部隊は正門外より先頭三列は種族問わず望遠刀を装備。物部刃は三本づつ。三列より後方は補給部隊で固める。陸上部隊の総指揮は齢二十三にして四日目になる大陸藤原鹿族の陸上官藤原トガ由紀。藤原トガ務の甥にあたる。
 上空部隊も陸上部隊と同じく平行に先頭三列は種族問わず望遠刀を装備。物部刃は陸上部隊と同じく三本づつ。
 ただし、通常の望遠刀と異なるのは鳥科に所属する種族達のために開発された翼持刀。これは飛距離は飛ばないが、持ち運びが便利で柄の短い物部刃を使用出来る点にある。これにより上空で扱えないという望遠刀の苦手部分を解消したといえる。
 話を戻す。上空部隊も三列より後方は補給部隊で固められているが、陸上部隊ほどいない。上空部隊の総指揮は齢四十三にして十の月と三十日目になるキュプロ烏族のギングル・グルゥリィ上空官。ギャングゥの又従兄弟にあたる。
 二つの部隊の司令官は天同零国家防衛官。参謀に真島ベロウ都国防副官が就く。
「俺は直接指揮したいが、それじゃあ後釜が怠けてしまうのでな。
 ここで黙って戦況を見るだけだ」
「ん? 零お! 来たぞお!」
 ベロウ都の声と共におぞましきモノ達は上空から陸上まで埋め尽くすように攻めてきた!
「そ、れじゃあ作戦開始だああ!」
「「「「「ウオオオオオオ!」」」」」
 零の合図と共に二つの部隊それぞれの総指揮官は独自の命令を下していき、次々とおぞましきモノ達を倒してゆく! 三本切れたら二列目に交代、また切れたら三列目に、更に切れたら補給し終わった一列目と交代……と断続無く物部刃は放たれてゆく!
「今のところろ生子様あの予報うはあってえるな、零お!」
「いやまだだ。陸上部隊は良い!
 しかし、上空部隊は飛距離の短い翼持刀を持参している故、接近戦をする事になるだろう!」
 零の言った通り、上空部隊はおぞましきモノ達との距離が五つ鳥分まで接近された! ここで上空官ギングルは撤退命令を出す!
「撤退いか! だあが、いつまあでも逃いげられれんぞお!」
 撤退した分だけ距離は詰められ、それを好機に一部のおぞましきモノ達は二手に別れて一方は陸上部隊に急襲した! 陸上官トガ由紀も撤退命令を出して後方へ退いてゆく!
「零! このまあまでえは村まあで逃げえ込んでえしまあうぞ!
 ここはあ指令いを出すうべきでえはないいか?」
「いや、まだだ! 俺は予報を信じる!
 まだ予報の全容は明らかになっていない」
 ベロウ都は口を目先まで大きくして零の言葉に呆れた!
「なあ、何いいってえるかあ! 予報はあ巨大なあ色でえあるる囲いいしモノお共に小さあな色ろであある物部え刃で次々いと穴あを開けえることおじゃなあいのかあ?」
「その小さな色だが、それは物部刃のことだけを示しているのか?」
 零の疑問にベロウ都は思考停止している自分に気付く。
「そ、そううだあった。お前えからあは散々ん聞かあされたあな。予報はあただ意志いを聞くうだけえじゃ良くなあい。その中身いを御子おが正確くに理解いするるかによおって当たあり外れれが起こるるのだったあな!」
「そうだ! だから……ん? 冷たいな。雨か」
 戦場一帯に雨が一滴、また一滴と落ちる。やがて勢いが増していき、それは大きな雨と成り、両者の司会を逸らしてゆく。
「視界があ。いや、今ならら俺達にい有利だあ!
 零よお! 前進んの指令をを出すんんだあ!」
 ベロウ都の震源を聞き、零は立ち上がり、右手を広げてやや水平に振る!
「陸上及び上空に司令官命令を下す!
 全軍突撃イイ!」
 指令を聞いた両部隊の総指揮官は前進命令を出す! これにより、両部隊は武器を変えて接近戦を仕掛けようと距離を詰めていく--その時天候は大雨から雷雨に変化!
「ウオ! 雷が次々とお! いいや、雷があ囲いしモノ達を直撃しいてゆゆく!
 まさかあ、これがあ--」
「ああ、姉貴の予報の全容だ!」
 幸いにも雷は生命体側に落ちることなく、次々とおぞましきモノ達に落ちてゆく!
 雷光は生命を与える者を味方するように緑色にして黄色い光を出して、生命を死なせるモノ達を攻撃してゆく! それは偶然なのか必然なのかはわからない。ただ言える事は雷光そのものが神々の怒りだという事実。
 やがて全てのおぞましきモノ達を死なせた雷雨は収まり、雲は光を差す!
「もしやや青色とおいうのおは。このおことなあのかあ?」
 空一面を覆う雲は次々と穴を開け、そこから黄色い光が差してゆく--降り注いだ大地へと続く光はまるで青色を作るように綺麗であった!
「これが象徴天同生子の予報の全てだ! そしてこれは俺達国家神武の勝利の光なのだ!」
 こうしてマンドロス村防衛作戦は生命体側に一名の血を流さずに勝利した!

一兆年の夜 第十二話 天同生子 激動篇(四)

 ICイマジナリーセンチュリー四十一年四月七十五日午後十一時三分十九秒。

 場所は国家神武東アリスト町第二地区二番地。その中で二番目に小さな民家。
 齢二十七にして二の月と十六日目になるアリスト鶴族の青年板垣ツル夫は最新型
の望遠鏡を使い、天体観測をしていた。
「はあ、望遠鏡探しをされるゆえ、生子様の誕生祭に参加出来のうございます。
 もう十二の日より前なのにくよくよされようとは。僕も天体の神様に申しわけありま
すまい」
 彼は十二の日が経った今でも生子の誕生祭に参加できなかったことを悔やんでい
た。
「おっと! 今はオオクニヌシ銀河の形を調べなさらないと!
 この銀河は僕達の住まわれようアマテラス銀河とどう異なりまするかを詳しく見て
おられないと!」
 将来は全世界に名を馳せる天体観測家になろうとしていた。その為なのか、様々
な銀河を発見する。
 代表的なオオクニヌシ銀河に始まり、八十神銀河、ヤマタノオロチ銀河、ブラフマー
銀河、ヴィーシュヌ銀河、シヴァー銀河、ただもの銀河、おかもと銀河など。それらを
合わせると二十八の銀河を発見した。
 その中でオオクニヌシ銀河と正体不明の銀河に興味を抱く。
「オオクニヌシ銀河はまだまだこの望遠鏡でもわかるはずなかろうもの。もっと性能を
高めていただかないと!
 大応神町に住まわれるメデス蠍族の暦研究家キテレグ・キシェールが開発を進め
なさるICのように宇宙の全てに追いつこうものな高い性能の望遠鏡におられないと!
 ん? んん! やっぱりもう一つの銀河も気になろう!」
 ツル夫は正体不明の銀河が気になって仕方がなかった!
「これだけは遠ざかるまい気を致そう。むしろ……




 近づいておられる!」

 四月八十二日午前六時零分八秒。
 場所は国家神武首都四門中央地区神武聖堂儀式の間。
 天同生子は中央で座禅を組み、予報を始めた!
(マンドロス村から東へ征く。その為には今日は吉と成るのか?
 それとも東に進まず、村を守る事に今日は吉と成るのか?
 神々よ! 御子達の相手をしてさぞお疲れでありましょう。ですが、神々にはお聞き
なさる事がございます!
 未来から過去へと誘う? これはどうしてそうなられるのかをお聞かせ下さい!
 過去は現在に至るのはわかります。現在は未来へ進む事はわかります。
 しかし、未来から過去に誘う? どうしてそうなりましょう?)
 生子は心の中で神々に疑問をぶつける! 話を逸らす形ではあるが、彼女は先に
疑問を解かないと前に進めないと思った。その為、神々に疑問を投げる!
(輪廻? 何故輪廻でしょうか? 廻る事の意味は周るや回るとどう異なる?
 宇宙そのもの? ますます疑問が膨らみます。つまり宇宙も私達と同じく寿命を
迎える事? いえ、寿命を迎えた後、また同じ生を廻る? それが廻る事?
 それが輪廻? それで何故それが未来から過去に誘うと言えるのでしょうか?
 輪廻の法則? それに導かれて? それは……)
 彼女は輪廻の法則を神々から説明を受けた! それは言葉のみならず、数字に
よる証明、実例を用いた証明など。それらを聞かされて一の時が経つ。
 ようやく本題に入る。
(水の、大地の、山の、火の、風の、空の、重力の、そして宇宙に生きる一兆年にも
及ぶ神々よ! 何を想い、何を為し、そして何を視ますの?
 私達全生命に神々の意志をお教え下さいませ! 私達はその代わりとしてひとた
びの汗と涙の結晶を神々に捧げます! なのでどうかどうかどうか……)
 生子の瞳に映る映像は黒と灰という色から、赤く青い色、やがては想像の海である
桃を越えた色に変化。そこから映し出されたのは黒く赤い巨大な色が青く緑の
小さな色を大量に浴びる事で次々と穴が開き、やがて消えゆく映像だった!
(これは、つまりおぞましきモノ達が塊場に攻めるという印なのね。ならばもう一つ
が示す事は--)
 生子は両眼を限界まで開けた!
「神々の意志を伝える!」

一兆年の夜 第十二話 天同生子 激動篇(三)

 午後三時零分二秒。
 場所は中央地区国家防衛官邸二階会議室。立方体にして約成人体型千。出入り口は四つ。左右に二つづつで壁際にやや近いところにある。
 机は円卓になり、その真ん中に立つ者は成人体型一とコンマ三に近づく大きさを持つ。早速その者の怒号が建物全体に響く!
「もう二の時が過ぎるぞ! いつまで会議で喋れば気が済む!」
「零お! いええ国防官! 我々え陸、空、補給官んはおよおそ四の年よりり前のお遠征以降次々いと出来上があった官職なんんだ! 意見があそうう簡単に集約出来るるか!」
「オイ真島! てめえは国防副官に昇進したくらいでまだ俺にタメ口かよ!
 んなことはどうでも良いが、俺は急いでるんだよ! またここにおぞましきモノが
アメーバ族に近いサイズで潜んでいたら居ても立ってもいられねえんだぞ!」
「あのーサイズの件ーですか。おらもー正直恐いーです。何せー指揮官ー型みたーいな見たー事もないモノーでも恐いのにー」
「プート陸上偵察大臣の仰る事はわかりまするね。あれをここから果ての武内大陸の方まで情報を送られよう。そしてようやくこの年になろうてほぼ全ての町、村、集落からの情報が集めよう。そしたらどこにも指揮官型と類似する生命は存在しえなかろう!」
 齢二十三にして五の月と三日目になるゼノン燕族のシュルター・ベンデルウム
軍事情報大臣からの報告は皆に新たな脅威を感じさせた!
「お前らはあんまり驚くなよ! このくらい慣れとけよ! それでシュルター!
 他には何か疑問に思う情報はないか?」
「疑問……でありましょう? そうであれば、国防官が四の年より前に指揮官型の首を飛ばされた時に指揮官型の目が銀色に発光されよう件。あれを聞いて興味を持たれようか、海洋藤原鮭族の十一代目を襲名なされた藤原マス太はこんな仮説を出されたね」
「どんな仮説じゃいー?」
 齢三十五にして三日目になるアリスト羊族のモンデ・メエフィン陸上補給官は白い体毛を躍動させながらシュルターの情報に興味を感じる。
「落ち着かれ下さろう。
 いいでしょうか、その仮説とは『指揮官型は我々とは異なる世界からの情報を受け取っている』らしい」
 会議室は一気に静まりかえった。閃きに感じないものには頭の回転は止まるようだ。
「藤原マス太の一族はわけわからんこと言うのが大好きだな! こんなの兄貴でも同じことを言うぞ! ところで兄貴は姉貴の誕生祭に出席してるのか?」
 零は話の線を脱けだして皆の頭の回転を働かせた!
「ええ、とーおらもわーかりまーせん」
「ああね、それについてはさっき来た部下からの報告があったぞね!
 現在も会議で忙しいってね」
 齢三十にして八の月になったばかりのアリスト鴨族の白石カブ朗上空偵察大臣の報告に零は首から上まで伸びた短い黒髪を左手で激しく掻いた。
「あの能なしめ! そんなに会議が大事かよ!」
「話を戻しまする。とにかく自分が報告しうる事は以上で」
「国防官ん! 指揮官型で思いい出したあことあったあけど、マンドロス村はあもうう住民が住めるるくらあい大地は活力をお取りり戻したのかあ?」
「そんなことわかると思うか? それは兄貴である天同読み四国家最高官率いる
中央の連中のすることだ! 現在もあそこは軍事拠点以外の活用の術は見つからないぞ!」
「塩を蒔いてえも回復するるまでのお年月はあ遠いかあ……」
「もう会議を終えようぜ! こんなことで油売りの真似をしては折角の象徴天同生子の祝いが出来なくて後悔する者だって出るぞ! 元々はこんな組織自体穢れているんだし、神々に申しわけつくのか?」
「た、確かだう。自分も生子様を祝いたって! 神様に祈りを込めたうておるよ」
「決まりーだね、じゃあこれーにて会議ーを終えようー!」
「こらら陸上偵察大臣! 勝手にい指揮をするなな! と、とりりあええず強制解散ん!」
 会議はよくわからない理由で終わった。
「さて、と」
「お前の行きい先はわかるるぜ!」
 と言って齢二十二にして二の月と十日目になる真島ベロウ都はそう言って会議室の右上扉から出て行った。
「あいつとは長い付き合いだから感づかれるな。それじゃあ行かないと。大事な妻を一名だけにするわけにもいけないのでな」

一兆年の夜 第十二話 天同生子 激動篇(二)

 ICイマジナリーセンチュリー四十一年六十三日午後三時二分一秒。

 場所は国家神武首都四門中央地区神武聖堂広場。
 ここには数十万もの国民が炊飯器で出来たご飯粒のように押し合うくらい集まって
いた。
 この日は国家の象徴である天同生子の誕生祭だ。祭壇の中央には祝われるべき
者が立っていた。
(皆の顔は笑顔に満ちてるわ。こうゆう時ほど幸せなことはないわ!)
 聖子は思わず笑みをこぼす。その表情は神秘性に富み、あらゆる生命に安らぎを
感じさせるものだ。
「ああ、幸せだう。生子様の笑う表情はわいを幸せうにしてくれっちゃ」
「ゥゥ生子様万歳! ォォ仙者生子様万歳!」
「ありがたや~、ありがたや~」
 国民一名一名はあらゆる仕草をしながら生子を讃えた!
(この幸せがいつまで続くかしら?
 いえ、続けてみせるわ! 必ずや--ん?)
 生子は気付いた--幸せでない者の存在に。
(国を作るということは必ず幸せを享受出来ない者を生む。
 あの者は私を強い眼差しで見つめるわ。いえ、あの者だけではないわ!
 この者もその者も……でも私の力で出来るのかわからないわ)
 生子は安らげない表情になった。それを見た者達は次々と安らぎをなくしていく。
「生子様が辛そうるのじゃ! これは大変なことが起こるる証拠じゃろう!」
「なっに! そっれは大変だ! れっいの食い過ぎるモノか!」
「生子様が笑顔をなくしたよおお! うえええん!」
 それを見た生子はどうすればいいのか迷う。その時に後ろで十枚程度の書類を
眺めていた齢二十一にして三の月と十日目になる灰色に近い黒色の体毛を持つ
八咫烏族の青年は生子に進言する。
「生子様だ。ここは真実だでなくとも笑顔だにおなり下さいだ!
 国民だを安らげないようでは象徴だとして如何かとだ!」
「相変わらず親譲りの現実主義者だな、アンジェル。
 確かにそれならば民も笑顔を取り戻すでしょう。
 けれどもそれは大多数の者しか満足しない。少数は笑顔を見せない。
 それは国家神武で幸せを享受出来ない者達。その者達にどう接する?」
 生子から質問された神武八咫烏族にして故アルジェミィ・アルティニムムの第一子
アンジェルは答えに一瞬迷った。
「それは読四様だと零様だ、それに我々だがやるべき事でございますだ!」
「それでも享受出来ない者を満足出来なければ意味は成さない。私はそんなのは
可能でない事は一番わかる。
 しかし、それでも私はそんな事をやらなければいけないと考える!」
 生子の無茶苦茶な言い分にアンジェルは苦言をする。
「我儘だを言うべきではありませんだ! 生子様は象徴であられます!
 万が一あなた様だの命だに関わることがあったらどう責任をとれるのでしょうかだ!
 官房官だの私だでも切り抜ける題目だになりませぬだ!」
 苦言を聞いた生子は自信満々の笑顔をアンジェルから見た左側面で魅せた!
 それを見てアンジェルは目を逸らさぬことで必死になる!
「照れるな。私の美しさは自分でも認めている」
「ごだ、ご自分だで言うものではありませんだ! あなた様だは本当だに手間だが
かかって困りますだ!」
「そうね。それでも私はその手間のかかることを今からしてみせる!」
「はいだ?」
 アンジェルの両眼の焦点が合わなくなった--直後に両眼は一点に集中させる
ように強く瞼を開けた!
 それは生子が祭壇を降りて強い眼差しで見つめる者の一名である蝶族の少年に
近づいた!
「な、何、いえなんでるしょうる?」
 齢十二にして五の月と六日目になる紫色でシッダル数字の八の紋様を両羽に持つ
少年は右の触覚を揺らしながら戸惑う。
「少年よ。私はあなたに辛い思いをさせてしまったわ」
 その言葉を聞いた少年は内にある怒りをぶつけてしまう!
「な、何が辛いる思いるをさせてるしまったるだ! 僕は、いや僕達は国さえなけれる
ばこんな思いるしなくるて済んだるのに!
 あなたが国さえ宣言しなけれるば今頃パパと一緒に大アリスト町を幸せるに暮らせ
たるのに!
 そのせいでパパは降りてきたモノに食われてるに!」
 少年は吐き出すように涙を流す! それを見た享受せし者達は更に安らげない心
持ちになる!
「ソ、ソウダ。クニノセイデアイツモ」
「俺ッチーは合ってーないのかーな! そんーな気ーがする」
 それを見た享受しない者達は一斉に生子を責め立てる!
「生子様あ! あなたあはとんんでもないい事をしてくれれたな!」
「あたしなってそのせいで息子と娘を死なっとるのよ!
 卵をかえっせー!」
「私もよ! 息子は戦った! のに死んだ! 返してよ、息子を!」
 当の生子は笑顔を見せる。
「な、何が嬉しいるんだよ!」
「いえ、良かったわ。あなた達の心の内を聞けて。
 私はまだ一つじゃないと自覚出来るのよ」
「い、意味わからないるよ! せ、生子様が意味わからないるのはいつものことだけ
るど」
 皆は生子の言葉の真意に戸惑うのか、中央地区全体は静まりかえる。そして、
追い打ちをかけるように、更に意味を理解出来ないことを生子はする!
「意味を見いだす事、ここに叶わず……
 生命は意味を求めて、迷い道を征く。
 迷い道から道を切り開き、また迷い道へ。
 そして更に道切り開き、またまたと。
 果てなき旅路は続いて征く。
 意味なき道から意味求めて。
 それこそ意味であるのかな……」
 皆の者は歌に全く感じない歌を聞かされて頭の中を更に迷走させる!
「そ、それで歌を歌っているるつもりでしょうるか?」
「ええ、歌っているわ。これは必ず皆の心に響くと思い、年の毎に必ず歌うのよ。
 今日はちょうど私の誕生祭も兼ねて歌ったわ!
 どう? 上手でしょ?」
 皆の答えは心の中でいいえだった。
「生子様はこんなことしなっとばもっと輝かしき御方になれしで。
 でも歌は良くなっともやっぱり生子様はわしら全員を思っとお歌いになられしよ!
 生子様万歳!」
「そ、そうダア! マウグスタさんが生きていタアラ俺達全員をお叱リイになられタア!
 あの方は生子様を何ヨオリ大事になサアった御方ダア! それだけ大事になされ
タア御方をわしらは何て事を思うたカア!」
「そ、そうにょ! うちはどうしてそんな事思ったにょ! 後悔するわ!
 でも後悔する暇あるくらいにゃら生子様に一生懸けて支えることをしにゃいといけな
いにゃ!」
 皆の心に活気が戻っていく--顔に自信が溢れるように。
「クニになった事だけは認めなイヨ。ダケドいつまでも下を向いている場合じゃナイ!
トウサンならこう言ウナ。『セイコサマを困らせる暇があるならまず己自身を何とか
シロ!』ッテ」
「やっぱり、生子様は、偉大、だったわ。でも、私は、町に、戻りたくてよ。
 それだけは、事実。けど、真実は、生子様、だけでなく、愛する夫や、十名以上の、
息子達、今いる、この子も。それ含めて、国のみんなも、守りたい!」
「ウツクシイワ。セイコサマガウツクシイワ」
 享受出来ない者達は次々と心に自信をつけていく。
 それを見た蝶族の少年もついに--
「認めないると! 僕はパパの死を認めないるからこんな辛いる思いるになるるの?
 教えてる生子様!」
 少年の訴えに生子はこう言った。
「自分で決めなさい! 他者に答えを求める事はかえって自分の為にならないわ。
 まずは己自身で悩み、そして己の心に従いなさい!
 それが万物の神々が私達に与えた答えよ!」
 その言葉に少年は静かに両目を瞑る。そして瞑りながらゆっくり涙を流していく。
(ゆっくり泣きなさい。それがあなたの答えなの)
 少年を見つめ終えたのか、生子は空を見つめる。
(私は答えを見つけられないわ。歌の通り私は意味を探しているわ。
 この空が歪む訳……神々は曖昧な答えしか返らないわ。
 やはり自分で見つけていく以外に道はないわ!
 それが例え意味無き道であったとしても!)



 空の歪んだ先は刻一刻と近づく……

一兆年の夜 第十二話 天同生子 激動篇

 ICイマジナリーセンチュリー四十一年二月六十七日午後十一時一分十二秒。

 場所は国家神武首都四門中央地区国家防衛官邸。その入口付近。
 そこへ齢二十五にして四の月と十二日目の黒髪が肩まで伸びて、均整な顔つき、
口は大きく上下唇は小指の横幅の大きさ、両眼は中庸な大きさ。成人体型は人族に
してはコンマ一以上高い。
(零はここにいるわ。リムーバからの報告によるとあの子はここでリモートを入れてる
わ。いつまでも他者に迷惑をかける子になってるわ。亡き母上の仰るとおりだわ)
 風が夜に静寂を与えないように吹く。それを受けて黒髪は綺麗にそして美しくなび
いてゆく。その様はそのものを美しく魅せる。そう、この者は美しい。ただ残念なのは
鼻が兎族のように可愛い以外に可愛さが全くと言っていい程見あたらない事。
(気配? 変だわ。零とリモート以外に誰かいるの?
 直ぐに入らないと!)
 その者は三階にある国防官寝室に向かって、虎よりも早く大地を蹴った!
 名前は天同生子。国家神武の頂点に立つ象徴。
 そしてこの物語の主人公でもある……

 午後十時時四十分三秒。
 場所は国家防衛官邸三階国防官寝室。
 毛布を首まで被る形で二名の人族が仰向けになっていた。一名は齢二十二にして
七の月と十五日目になる青年と齢十九にして二の月と十八日目になる少女が事を
済ませた後だ。
「どうだ? これで俺を好きになれたか?」
「なれないわ。あなたはいつも私を強引に動かそうとする。三の年より前にあなたと
出会わなければ良かったわ!」
 彼女は目を逸らしながら言った。
「別に動かそうとしてるんじゃない。あれは神々が導いて下さったことだよ。リモートと
の出会いもそしてこうやって命を産む儀式も」
「本当の事じゃないわ。あなたは寂しかったからよ。
 だってあなたみたいなのがこんな時に神々に礼を整えるなんて変だわ。私の好き
でない雄、天同零と呼ばれる雄がそんな弱々しいことなんて」
「的を射てない! 望遠刀の名手が俺の心を外すのか?」
「誰が狙い撃ちますの! 私は勘で言ってるのよ。私は思うわ」
「思う? 何を思う?」
 リモートと呼ばれる少女は零と呼ばれる青年の顔を真っ直ぐ見つめて言う。
「あなたは母を求めてるんでしょ?」
「ぐっ!」
 零の顔は弱々しくなった。彼は全体的に剛面な顔つきだ。それだけ母のことは彼に
とって辛い物であった。
「お前にわかるのか! 母上のことなんかよ!」
「わからないわよ! 私なんて産まれて直ぐに両親を覚えしモノ達に食われたわ。
 だから私も親を求めることには反対しないわ!」
「話の線が脱けてるぞ! 俺が言いたいのは俺の母、天同子季がわかるかと聞いて
いる!」
「さっき言ったでしょ! それならあなたの母はどうなったの?」
 リモートの問いかけに零は一瞬だけ答えを躊躇う。
「母上は、俺を庇って食われた……
 俺が母上を死なせたんだよ。俺さえいなければ母上は死なずに済んだのに!」
「零……辛いのね。あなたも」
「俺にいちいち共感するな! 俺は皆から好かれない存在なんだよ!
 俺はいつだって好き勝手にやらせてるんだ! いつも喧嘩する兄読四だって!
 たとえ越えられない姉である生子にだって俺は好き勝手やらしてるんだよ!
 なのに、なのに俺は母の死だけは忘れることが出来ねえんだよ!」
 零はこの後もリモートに自らの悲しみを吐き出していく。半の時が過ぎる程に。
「全く弱いな、俺も」
「弱くて良いわ。あなたは私の時だけ弱さを見せればいいわ。それ以外は--」
「お前って奴はやっぱり母の代わりは務まらないな」
「務まるわけな--」
 突然扉をたたき壊す音がした--扉のあったところに天同生子が左腰に携えて
いる神武包丁の柄を右手で握り、立っていた!
 二名は幽霊を見るくらいに恐がり、そして驚く!
「姉貴! 扉壊して勝手に入るな! これは別に顔を上げきったことを--」
「おぞましきモノの気配……そこか!」
 生子は零達の直ぐ後ろにある成人体型一ほどある物入れの最上段に神武包丁を
飛ばす--平行に刺さり、そこから茶に近い赤色の血が流れる。それを見た二名は
驚く!
「あ、あんな所にあいつらがいたのか!」
「す、直ぐ調べ--」
 リモートは布団から出ようとするが、零は成り合わないトコロを触った--すかさず
肌を強く叩く音が響く! それはリモートの左手を熊の手状態で広げて零の左頬から
遠ざかるように横へ移動した後--零の右頬は赤く染みつく。
「堂々と触らないでくれる!」
「すまない。こうするしか方法がなかった!」
「代わりに私が調べておいたが、もう既におぞましきモノは死んだ。
 二名とも試しに見るの?」
 いつの間にか生子は神武包丁を抜き、刺さった所を開けていた。
「姉貴! すまねえが、しばらく外に出てくれるか?」
「裸は嬉しくないと?」
「そ、そうですわ生子様! さすがの私も零が見てる前で裸を見せるわけには参りま
せぬ。ど、どうか国防官の仰ることを理解して頂けるでしょうか?」
 生子は無言で二名の前で軽く頭を下げて、扉を壊した所から出て行く--互いの
視線が見えなくなるまで。
 それから十五の分が経過。
「いいぞ、姉貴!」
 生子は零の合図に応じて、中に入る。既に彼等は普段着に着替え終えた。
「ええ、生子様。た、確かに死んでます。ど、どうしてこんな所にまで覚えしモノがいる
の? こんなの初めてだわ!」
「いや、初めてじゃないはず、だぞリモート!」
 零の言葉に両眼を開閉した。どうやら言葉の意味が理解出来なかった。
「思い出せ! 三の年より前に俺達が戦った指揮官型のことを!」
 その言葉を聞いてやっと頭の中にある霧に光が差した! リモートは納得すると共
に恐れを抱く!
「こ、恐いわ! こ、こんなの初めてじゃないのに恐い! 覚えしモノは私達の姿形
だけじゃなく、見たこともない姿になれるの! も、もう私は--」
「ああ、無理をするな! これからお前は腹の子供を育てていくんだ!」
 その言葉はたちまちリモートの顔を太陽の色みたいに染め上げた!
「だ、誰が国防官の子供を産むんですか!」
「産むさ! 何故なら俺のモノは百発百中だからな!」
「腰砕けたことは言うべきじゃ--」
「どうやら二名は決まったみたいね」
 さすがの生子も二名の喧嘩に無言を通せなくなった。
「ど、どうゆう意味でしょうか生子様?」
「決まってるわ。それで挙式はいつにするわけ?」
 生子の言葉にリモートは口を開けたまま何も言えなかった。何故なら生子は真実
なき言葉を吐かないから。
「明日にでもやってい--」
「急ぎすぎよ! 明日はあなたも知ってるとおり国務院選挙の日。
 私は象徴である以上、読四の応援に行けないわ。代わりにあなたが行くしかない
わ!」
「誰が兄貴の応援に行くかよ!
 あんなのなんて票が集まらず、下野すりゃいいんだよ!」
「絶対外れて欲しいわ! 私が零と婚約なんて有り得ないわ!」
 リモートの叫びも空しく、一の月より後に二名は婚約。
 彼女はリモート・キングレイからリモート・天同となる。妊娠一の月になろうとして
いる赤子を身籠って……
(ついでに付け加えるけど、読四は見事に再選したわ!
 投票した理由が普通なのが良いというよくわからないものだけど)

一兆年の夜 第十二話 天同生子 激動篇(零)

 ICイマジナリーセンチュリー三十五年七月六十九日午前十時三十分二秒。

 場所は秘境神武狼の御陵。見晴らしの良い舞台があり、そこへ飛び降りれば
高確率で助かると言われる社。その為、ここでは年毎の成者式で通過儀礼として
飛び降りる。
 そこへ齢二八にして二日目になる赤子を抱えた者とその後ろに齢三にして五日目
になる二名が立っていた。
「この子も一五の年になればここから飛び降りるのね。でも万が一に死んでしまうか
も知れないと思って心配だわ」
 赤子を抱えた者は腰まで伸びる黒髪を風に受けながら、心配そうな声で言った。
「けど、ははうえ。それがここのおきてではありませんか?」
「わかってるわ、読四。私はここに嫁いできた雌。 夕焼ゆうやけの姓から天同の姓を受け
入れた雌。生涯骨を埋める覚悟はあるわ。
 でもどこかで夕焼への未練が残っている自分に心を痛めるわ」
「心、を? 母上。みれんは無理なさらずにのこしてもいいのです」
 齢三で黒髪が肩まで伸びる少女は年に見合わない事を言った。
「相変わらずね、生子。あなたはどんどん成長していくのね。
 でもね、ここは未練を必ず断ち切るべきと言うものよ!
 でないと子供でなくなってしまうのよ」
 彼女は生子と呼ばれる少女に子供であるように勧めた。それに対して生子は--
「わからないわ。よくわからないわ、私には」
「あねうえ。べ、べつにむずかしくかんがえなくていいのよ。ぼくだってわからないし」
「わからなくていいわ。それが子供心よ!
 子供はわからないからがむしゃらに立ち向かえるのよ! 多分この子はそうゆう風
に育つわ! これは私の予報よ!」
「よほう? つまり私たちみこがするてんきよほう?」
「ちょっと違うわ。言ってしまえば勘という思いつきの先にある予報。それは天候以外
を正確に当てるために用いられるわ! ってわかりにくかった?」
「うん、ぼくはぜんぜんわからないよ」
「なるほど、私はわかりました! つまり神さまの声をちょくせつ聞くこういね!」
 生子の解答は二名を驚かせた!
「そ、そうなの? で、でもてんきよほうもそれじゃないの?」
「違うわ、読四。天気予報における予報はただ、大気の神々に直接聞くもの。
 でも生子が言おうとしてるのは全ての自然に住む神々の声を聞くのよ!
 でも、外れよ生子。それは大袈裟というものよ!
 しかし、そんな解答はこの頃からしないでね。もっと大きくなったらいくらでもして
良いのよ!」
 赤子をあやしながらも彼女は生子を注意した!
「じゃあほんとうのこたえはなんなの? ぼくにはさっぱりわからないよ」
「そうね、答えの種はここにあるわ!」
 彼女の言った事に読四は頭を抱えた。生子の場合は左眼を瞑りながら考えた。
「あら? 瞑想する時は両眼を瞑るのよ、生子」
「いえ、あえて左だけつむったわ。この方がまぼろしをつかまなくてすみますから」
「はあ、もう少し年相応に育てるべきだったわ」
 生子の振る舞いを見た彼女は赤子を見ながらため息をついた。ため息つく内に
生子の左眼は開いていた。
「答えはこのぶたいから飛びおりることよね?」
「な、なにいってるのよあねうえ! どうしてそうなるの!」
 読四は見当違いだと思った。
 しかし、彼女だけはその答えを聞き、上下唇を揺らした。
「生子。じゃあ聞くけど、何故そんな答えになったの?」
 彼女は生子に問いただす。
「だってここを飛びおりたら死んじゃうことあるわ。だから、ふだんはみんなここを飛ば
ない。
 でも飛んで九の死の内に一つでもえたら生きるじっかんがわくわ。
 それと同じようにただの思いつきで言ったこともかおを上げきったままになるわ。
 でも九のこしくだけに一つでもえたらかおがきいてくる。たとえがよくないかな?」
「う、うーん。あってるのかな、それ?」
 読四はますます頭を抱え、まともに生子の顔を見ることも辛そうだ。
 一方で彼女は生子の答えに自信満々の笑みを浮かべて--
「正解よ! ま、まあちょっと問題が難しかったわね。勘はそうゆう危うい物なのよ!
 だから、私はこの子がこの舞台を飛び降り続けてその度に一生を得る。皆に迷惑を
かける。でも私も生子も読四も四門さんやその他大勢はこの子を心配する。この子
は愛されていくわ! それは私の勘……いえ予報よ!」
「母上のよほう。でもしんぱいしてるのね、零のことを」
 生子の問いに彼女は戸惑う。それを心配したのか、零と呼ばれる赤子は泣き出し
た!
「ふぎゃあああ!」
「ああ、ぜろがないてる! なきやまさないと--」
「その心配は無用じゃ」
「あら、四門さん! でもこの子は、よーちよーちいいこだからねんね、ねんね!
 ってまだ泣くわ!」
 齢三十七にして二の月と五日目になる生子、読四、零の父四門は三名の母である
彼女に髭を奮わせながらこう言う。
「それだけ元気ならきっと大物になるぞ、零は!」
「なるかな? ぜろっていっつもなくからぼくはこもりしたくないよ」
「どうなの、母上?」
 ようやく泣き止んだ零を見て、顔全体の筋肉が弛んだ彼女はこう予言する
「この子はきっと全生命の全てに希まれし望みを託しながら命を燃やすわ!
 この舞台の下が何もない真っ暗闇であろうともね。
 そう、飛んでいくのよ! 遠すぎる過去に向かって……」
「子季! 君が言うのなら本当に叶うぞ!」
 四門は子季と呼ばれる三名の母の言ったことを信じる。
 一方の読四は信じなかったが、生子は子季の言葉に運命を感じた。
(母上はみことをはこぶのね。
 それはみずからがこの目で見れないことをさとるように!
 いやよ! 母上はぜったいに死なないわ!
 そんなかんがえをするじぶんが罪ぶかい!)



 私達三名の母天同子季は予言をして六の年の後、おぞましきモノの襲来に遭い、
命を落とす。
 死の原因。それは齢六になる零を護る為。その事が零に一生ものの後遺症を
残す形になる。
 そう言えばあの子はもうすぐ二十二になるわ。もう傷は癒えたのかしら?
 私は言えていることを願う……そんな傷で命運びを決めないで欲しいから!

世の中は厳しい 再び

 どうもメイド・イン・ヘブン使いの神父並みに自らの内に気付かないdarkvernuです。
 今日はタイトル名にちなんだショートストーリーをお届けしますね。

 2013年4月14日午前10時0分0秒。

 場所は大阪府X市Y元町Z丁目のとある民家。
 その家の二階自室で売れない三流ネット小説家は愚痴をこぼしていた。
「ちくしょう! わいの小説が1番面白いってのにどうして誰もコメントしない!
 しかもどうしてランキングが総合で2000番台なんだよ!」
 この男は何もわかっていない。自分の小説がヒットしないわけを。
「どいつもこいつも作品を理解しようとしないゴミめ! 他のサイトの小説が何故上位なんだって! 見回ってみたが全然おもんねーぞ!」
 面白さは人それぞれ。だが、上位に位置するサイトはどうして面白いのかを客観的に理解出来ないそうだ。それはユーザーの趣向を研究し尽くしており、それを知った上で狙いを絞って作っているからだ。
「こんなの誰だって書けるだろ? こんな陳腐な文章で上位なんてプロに失礼だろ!」
 失礼なのはこの男だ! そもそも誰だって書ける物を作るのは非常に高度な技術を有する。そんなこんなでこの小説家はだんだん哀れに感じてくる。
「ん? あれ? ここ閉鎖したのか! どうして閉鎖したんだよ! 俺は好きだったのに!」
 こんな男でも利己な部分もある。管理者の都合で閉鎖された小説サイトを見て悲しんでいる。
「ええ~! ランキングを見るたんびに心が折れたから閉鎖~! そんなの勝手すぎるよ~!」
 このサイトの閉鎖理由は小説ランキングで100位以内を維持出来ず、サイトを閉鎖した。ランキング競争に疲れたそうである。
「ああ! ここも閉鎖されてるよ! 上位の中じゃ認めてた所なのによ!
 何々? 『コメントがアンチで溢れたから疲れました』だって! 何でそんなの気にすんのさ! 賞賛だってされてるだろうが! わいみたいな奴とかにさ!」
 人気の高かった小説サイトの閉鎖理由。それは誹謗中傷に近いコメントの対応に疲れたのが原因。彼もまた前出の管理者と同じく心が折れたらしい。
「あっ! せけーぞ、ここは! 続けるのがいやで閉鎖とかどんだけ根気無いんだよ!」
 ここの場合は小説をアップし続けるのがだんだん辛くなったのが原因だ。
「あーあ、アホらしいよ! わいは頑張ってるってのに、ここらのサイトの連中には頑張る素晴らしさがわかんね-何てよ!」
 それでもこの男に同情は出来なかった。頑張るというのは誰でも出来る。
 しかし、頑張り続けるというのは一握りの者でないと出来ない事。継続はそれだけ精神力との戦いでもある。そんな簡単な物ではないからこそ三者のサイトは閉鎖されてしまった。
 人気のあるサイトでも人気に比例して誹謗中傷との戦いで精神を削る。逆に人気が無くても続いているサイトでも継続という飽くなき戦いで精神を削る。人気を維持するサイトなら人気の維持に精神を削る。その戦いが嫌になり、数多の小説サイトは閉鎖していった。
 世の中とは真に厳しいものである……


 とりあえず当たり前の事をショートストーリーにしました。この話は小説サイトのみならず各分野にも応用の利く物です。人気サイトには人気サイトなりの事情があります。それを妬んだり、蔑んだりしても負け犬の遠吠えでしかありません。むしろ何が人気なのかを知らなければ自らの人気を獲得出来ないのです。前に書いたと思いますが、人気あるところは皆が従うオリジナリティを掴んだところだと自分は思います。それを掴むのは非常に難しいのです。あらゆる技術やニーズに応えるべく、日夜努力しなければオリジナリティなんて掴めません!
 悪い事言えば、民主主義という制度はそれだけ最悪です。市場経済はそれだけ残酷な物です。ですが、広範囲にわたる人にオリジナリティを掴む機会が与えられている点を考えれば大変に最高な制度という捉え方だって出来るのです。自分はそうゆう意味じゃ、恵まれていると思います。
 話が脱線しましたが、人気サイトにしたければ皆が従うオリジナリティを掴む事に執心して下さい。
 最後に自分がどうしてそんな事を書いてるかと言えば、昨日の時点で掲示板にひっとつもスレが立ってない事に心が折れているからであります。その度に世の中は厳しいと肌で感じます。
 以上でショートストーリーの解説を終えたいと思います。

 では十一話の解説に入ります。今回は起承転結の承の話です。というかすんごく長かった(汗)。
 国を建てる話とか空の歪み関連の話とか、零関連の話とかいろいろ混ぜすぎてかんなり長ったらしいな内容になった。というかあれだけ詰め込んでもまだ詰め込み足りない気がして辛い(苦)。
 話を戻します。とりあえず空白の四年間は序パートで一気に出した。だって面倒だもん。とにかく主人公天同生子のナレーションでだいたいの事は理解出来たかな?
 今回の話では生子はダイジェスト以外では全くと言っていい程戦いに参加しません。代わりに弟である零がひたすら戦う描写が出ます。彼は国防官の癖して前線で動きます。時の防衛大臣だって、元統合空幕長だってしません。それが天同零という男だからです。ただ残念なのはどの辺が勝手で皆が迷惑するキャラだったのかを描けない事にありましたね。どこかの下手くそなラノベ主人公(下手くそなのを見た事無いのでわかりませんが)みたいに勝手に皆から慕われる様な描写がされてるような感じが自分にありました。そこは自分の力量不足が招いた結果ですので申し訳ありません。
 と話は戻します。とにかく今回は登場人物全員が自らの役目に従って動きます。一部を除いて。その一部であるリモート・キングレイはひたすら零と絡みます。何故絡むかについては自分の力量不足がry
 とにかく天同零とリモート・キングレイとの関係はやがて第十二話でどうなるかはお楽しみ。自分は某死に続けるボスみたいに過程を吹っ飛ばすのが大好きなので描かないと思います(笑)。
 またまた話を戻します。国家神武の政治体制について説明します。あれは自分の国日本の政治制度を参考にしてます。ただし、軍事面以外は。とにかく頂点に君臨するのは象徴。これは言わなくてもわかりますよね。この象徴という役職は誰でも成れるものではありません。これだけは血統重視でございます。つまり天同家の誰かしかなれません。しかもどこに系統を置いているかにつきましては今後の話で明らかになります。
 象徴の直ぐ下にある役職は国家最高官。これは日本で言えば内閣総理大臣の事です。この役職は象徴が直接政治が出来ない代わりに最高官自らが政治を執るという形です。しかもこの役職は権限が軍事関係以外で遺憾なく振るいます。ただし、成ってる奴の描写は皆無に等しい。
 そして国家最高官とほぼ同列にあるのが国家防衛官(以下国防官)。この役職は軍事面一本なら権限を行使出来るもの。すなわち、現場の対応をいちいち中央に報告せずに独自行動がとれるのです。
 こんな事書くとアジア各国(笑)にお優しいお花畑は五月蠅いだろうけど、普通の国では当たり前の権限です。
 その為、安全保障上の問題が発生した場合は独自行動を取り、命がけで国民を守ります。それだけ神経のいる役職なのです。なにせ最高官と毎日のように喧嘩しますから(笑)。
 でもどれか一つでも暴走したら大変ではないかとお思いの人に説明します。これについては十一話を読めばわかると思います。互いに均衡し合っており、片方が暴走してももう片方が抑えれば言いというモンテスキュー式のやり方で何とかいきます。それが三権分立という制度の上手いところです。ここの場合は象徴と中央と軍との関係ですけど。
 以上で第十一話の解説を強制的に終えたいと思います。

 はあ、十一話は長かった(辛)。でもまだ長いのを書くんだよな、自分は。
 何せ起承転結は承と転が長い! それだけ物語の段取りは難しいのだよ!
 おっといかんいかん。とにかく天同生子の物語はこれからうまくいくのか? ここでいううまくいくというのは大団円エンドに繋がるかという意味です。それはまだ言えません。何しろ次の話は一兆年の夜の根幹を成す話に繋がる大きな事があります。それは見てのお楽しみだ! 楽しむ読者なんているのかな?
 では例の如くコピペを載せますね。

 四月
 十五日~二十日    第十二話 天同生子 激動篇       作成日間
 二十二日~二十六日  第十三話 天同生子 継承篇      作成日間
 二十九日~五月三日  第十四話 ????           作成日間
 五月
 五日~十日      第十五話 物々交換から貨幣へ      作成日間

 第十五話のタイトル名は迷走期のお話にピッタリです。天同生子の物語が終わると自分も物語も迷走します。いやそうさせて貰います。ペナントレースのように人生は勝ったり負けたりの連続ですので迷走する事もアリだと自分で思います。意味不明な事を書いたら今日はこの辺で、また明日!

一兆年の夜 第十一話 天同生子 建国篇(七)

「マウグスタ副官殿ス! 腰砕けた振る舞いと思いたいス」
 ジンドラウはマウグスタの死を認められなかった。
 その為、彼は動くのをやめた--背後から豚型に食われてもなお。
「ムシャリーニい! 何でこんなあ--いてえ!」
 ベロウ都はマウグスタとジンドラウの死を認めながらも身体を動かすが、途中でおぞましきモノの誰かから投げられた卵を右頬にぶつけられ、気を取られた!
「真島さん、危ない!」
 マウグスタに飛ばされたリモートは素早く枝を弾く事で、間一髪の処でベロウ都を助けた!
「ありりがとうう、お嬢うちゃん!」
「リモート・キングレイよ、真島さん!」
「何いちゃついてるか! おっさんが死んだんだぞ!
 お前はそのことを知ってるのか!」
 零は動きを止めていた--怒りと悲しみで!
 そのせいなのか羊型と猪型も動きを止めた!
「わかってるわ! 私のせいで--」
「誰がお前のせいにすると言ったああ!
 おっさんの死は俺のせいだよ! 俺のせいにすれば良かったんだよ!」
 零は自分の責任にしてでもベルッド・マウグスタの死を認めようとした!
 しかし--
「だからあなたは好きじゃないわ! そうやって自分だけで勝手に決めつける!」
 リモート・キングレイは認めなかった--彼女は歩くように零に近づいていく。物部刃が残り一本しかない筒を背負って。
「誰のせいにするのはあなたではないのよ!
 誰のせいにするかは皆で話し合えばいいのよ!
 それが国家神武の方向性じゃなかったの?
 それがあなた達が託された希望じゃないの?
 答えなさい、国防官天同零!」
 リモートが言い終えると、彼女の右耳めがけて卵が飛来してくる--それを零は潰さないように左手で弾きながら自らの右足近くに転がせた!
「答えてやるよ、こうゆう事だよ!」
 油を断ったと思い込んだであろう猪型と羊型は左右から零とリモートを挟み撃ちしようとした!
 それを零は--リモートの両肩に手を当てて、両足で円を描くように二体を両足の踵で蹴った!
「お、重かったわよ!」
「後は頼んだぞ、リモート!」
 リモートの後ろに着地した零は真っ直ぐ指揮官型へ走った!
「ってちょっと!
 全く私はもう戦えないというのに」
 そう言ってリモートは二体から上手く逃げていく!
「この大地は走るのに適さないわ!」
「俺は克服する! なんたって俺は戦うために産まれてきた雄、天同零だからな!」
 零は射程圏内に入るとすかさず指揮官型に右拳を振るう--だが、それは避けた!
「おっと! 両手を掴んだ! そのまま、ってうわ!」
 零は逆に投げ飛ばされた--右手の平で地面を叩いた反動で体勢を整えた!
「上右手が! 今度は下段中左手! それ今度は投げ飛ばすっと!」
 零は勢いを利用して指揮官型を投げ飛ばす--指揮官型は上右手の平を地面に叩いて、更に下段左手で地面を叩きつけて、零に近付き、最後は左足で大地を蹴った!
「蹴りも出来るか! しかし、今の俺はおっさんが死んでどうにもならない状態だ!」
 零は右手を握り、中指の第二関節を曲げた状態で指揮官型の眉間めがけて振るった!
「何! これを知ってるのか! ってうわっ!」
 零は掴まれた上に指揮官型の頭上まで持ち上げられた!
「これはおっさんがやられた両手か! 万事休すなのか!」
 そう思った瞬間、指揮官型の下段中左手に向かって足斧が飛来--肘の付け根に刃が当たり、切断!
「無理を押し通す! たあ!」
 右足で下段中右手の首部分を蹴り、痛みで弛んだところで掴まれた右手を強引に引き剥がした!
「いでっ! 痛てて、痛いって辛いだろ?」
 零はゆっくりと立ち上がる。気がつくと足斧は零の右足の斜め後ろにあった。
「そらよっと! ありがとな、真島ベロウ都! 足用で蹄口が面倒だが、今はそれで十分だ!」
 零と指揮官型との間に一分の静寂が流れる。そして両者は矛を出す!
「天同家は代々無理を強いる一族である事を知れ!」
 一瞬で決まった--高さ成人体型中まで生首が飛ぶ!
 生首の両眼は怪しく銀色に光った!

 午前八時五十九分二秒。
 場所は国家神武首都四門中央地区神武聖堂生子の間。
 報告を聞いた生子は安堵の表情をした。
(零は無事だったのね。よかったわ! でもまた多くの血が流れた……
 私は受け止めねばならないわ! 彼等の死の分まで多くの穢れを!
 それが国家神武の象徴の役目だから!)
「ピート! それで廃マンドロス村全土への塩蒔きは完了したの?」
 塩蒔きとはおぞましきモノによって穢れた大地や見ず、森林などに塩を蒔く事で
浄化作用をもたらす行為。これによって以前ほどではないが、万物の神々は目覚めていく。
 ただし、注意しなければならないのは塩は元来大地には良い影響をもたらさない。蒔く事で不毛の大地となる物である。それと塩を撒いたからといってすぐに効果が現われず、一の年から最長で百の年になるまで効力を発揮しない恐れもある。
 もう一つ付け加えるなら効果を発揮する塩は日の当たらないところで短くてにの年まで清めないとならない。それだけ塩蒔きは手間の掛かる作業である。
「いーえ、あまーりの嬉しさーに急いーでここーに駆けつけたーので!」
「まあいいわ! あの子の事だからきっと多めに蒔いてると思うわ!
 仲間を弔うという意味も含めて」

 午前八時五十五分零秒。
 場所は廃マンドロス村。塩は村とその周辺に全て蒔かれた。
「おっさん、ジンドラウ、そして……」
 零は仲間達全ての名前を言った。それを聞いたリモートは零に惹かれ始める。
「国防官……やはり私はあなたの妻に、なれません
なれません? 何だかなりたがってるように聞こえるが」
 リモートは赤面した!
「気のせいですわ! 国防官は勝手な妄想がお好きなようで!
 私はそんなあなたが好きではありませんわ!」
 顔を第四部隊の方に逸らしてでもリモートは零を真っ直ぐ見つめられなかった。
「うう! わしに向んけなうでくれうか、お嬢ちゃん!」
「ブルホルの爺さんはしばらくリモートの顔でも見てくれ! そいつはしばらく熱が下がらないそうだ!」
「風邪を引いてないわよ!」
「黴菌族は住みついいてないのおはわかあった! とにいかく今はあ死んんでいった仲間あ達を無事い神武まで担いいでいかないとお!」
「そうだな。先に兄貴への報告を済ませる。その後は姉貴にいろいろと叱られに行くか」
 零の表情は未だ悲しみに囚われていた。こっそり表情を見つめるリモートは余計に零に共感していく。この二名の関係がこの後どうなっていくのか?
 過程そのものを飛ばして結末だけが見えるのか?
 それとも結末の為に過程そのものが見えるのか?
 ただ一つの事実は彼等の結びつきはやがて一兆年に終止符を打つ切っ掛けを与えるという……

 ICイマジナリーセンチュリー四十年四月八十三日午前九時零分零秒。

 第十一話 天同生子 建国篇 完

 第十二話 天同生子 激動篇 に続く……

一兆年の夜 第十一話 天同生子 建国篇(六)

 四月八十三日午前三時零分二秒。
 場所は廃マンドロス村西付近。遠征部隊はそこに待機していた。
「第十部隊を食らったからわかるが、おぞましきモノ共は弱い連中を先に狙う!
 次に形勢が有利でないと見るや鮮やかに身を引く! 悔しいが学ぶべき事がまだまだあるな!」
「へえ、あなたみたいなものでも学ぶことってあるのね」
「うるせえぞ雌が! お前は偵察でもしてればいいんだよ!」
 防衛官天同零と偵察官リモート・キングレイはお喋りをしていた。
「雌じゃないって言ってるでしょう? ちゃんとリモート・キングレイって名前なんだから」
「声が大きいぞ! 合図はまだ先なんだから音量を下げろ!」
「あなたが一番大きいよ--」
「いえい、二名とも声が大きいですよい! とにかく静かにして下さいい!」
 二名を注意したのは齢二十にして二の月と二十日目になるアリスト蜻蛉族の
正岡シ季だ。第八部隊の隊長を務める雄だ。
「全く二名があ会わなあければこんなあに騒あがしくなかあったとおいうのに。こりゃあ将う来子作りりす--」
「誰がしますの! こんな礼儀知らずな雄と!」
「声ガア大きいゾオ。だが、真島ヨオ! 謹んデエ慎むベエからずな事を言っタア
お前が良くナアイぞ!」
「申し訳ありまあせんベルッドさん」
 第二部隊隊長を務める真島ベロウ都は本隊副官ベルッド・マウグスタに苦言され、落ち込んだ。
「落ち込むのハアこの戦いガア終わったラアいつでもしロオヨ!
 それデエ防衛官殿! いつ合図を送るのダア?」
「望遠鏡で眺めている! 今はまだ産卵中だな。産卵が終り次第おぞましきモノに
俺達が来たことを知らせる!」
「時間かかるるな! しっかあし望遠鏡で眺めえれば眺めるる程に村の状況はあ、悲しすぎるるくらあいの惨状だよお! 大地はあ灰色おに枯れてえ、村に流れるる水は桃色お。これえで生命があ住めるる方が凄いいよ!」
 望遠鏡で眺めた者達は皆、おぞましきモノのよって食われた村の惨状に心を痛める。そうこうするうちに産卵は終了した。
「では第九部隊隊長ジンドラウ・ムシャリーニよ!
 火を付けた物部刃をお月様に向かって放て!」
 齢二十二にして三の月と五日目になるメデス蟷螂族のジンドラウは蟷螂用望遠刀を器用に扱い、月の方角へ放った!
「防衛官殿い! 学びしモノ達が気付きましたい!」
「ではこれより攻撃を開始する!」

 午前五時五十分十八秒。
 場所は国家神武首都四門中央地区神武聖堂生子の間。
 天同生子は表側から騒ぐような駆け足の音で目を開けた!
「ああ、どうした?」
「どーうしたもーこうしーたもありませーん! つ、ついーに戦いーが始まりまーした!」
(戦い? 何のこと? 今日はどんな、ああ。そう言えば何でしょう?)
 ピートの訴える言葉に目覚めたばかりの生子は頭が回らなかった。
「ピート・プートよ! 詳しい報告をお願い」
「いいでーすか! 国ー防官率ーいる大ー部隊が第二東ー門より東ーに成人体ー型五千のところにーある廃マンドロス村ーへ向かーうというものーですよ!」
「ああ、ようやく思い出せたわ。どうやらそれを報告しにここへ駆けつけたのね」
「いえ、それだーけではありまーせん! 得体ーの知れーないモノは何だーか指揮官らーしきのがー現れましーた!」
 それを聞いた生子は予測しない事にすっかり目覚めてしまった!
「何! そんな事があるなんて! 私の予測が外れたなんて!」
 彼女は予報、予測には絶対の自信があった!
 彼女は『予測は必ず当てる』という自信がある。外すことはないと思っていた!
 だが、予測は外れた--容姿が台無しになるくらい取り乱した!
(私は罪深い! 自らの予めを測り外すなんて!
 遠征する者達にも、零にも申し訳のないことをしてしまった……
 私は国家の象徴として格を取り下げないといけないくらいだわ!)
「せ、生子様! おらがーこんなー事をー言うーのは差ーし出がまーしいですがー、外しーたのをー悔やむーなら今はー国防ー官殿達が無ー事に帰還するーことを信ーじましょうー!」
 その言葉を聞いたお陰で生子は徐々に我を取り戻していく。
(そ、そうだわ。また私は四の年より前の事を後悔して自ら取り乱すなんて!
 この場にお父上や母上、それに大叔父上高様からお叱りを受けるわね!
 それにもし零がいたなら怒られていたわ!
 私だけで希望に成るなんて腰を砕けた事を考えるなんて! ふふ、私も熟すのはほど遠いわ。私は誰なのか? そう私は--)
「私は天同生子。秘境神武最後の仙者!
 私は悠久の夜に照らす日の光……
 朝を迎えても、昼を迎えても。
 夜は終わらないわ。
 でもそれが世の命運び、世の宿めし運び。
 光は暗闇と共に、我等は命と共に。
 遠すぎる過去へ誘われるわ……」
「せ、生ー子様ー?」
 歌にもならない歌を聴いてピートは引いている。
「どう? 上手いでしょ?」
「え、えーえお上ー手でございーます……」
「無理しなくて良いのよ! 上手く無い事で自らを隠したって私はお見通せるのよ」
「はーい、申し訳ーございーませんー!」
「じゃあ引き続き偵察をして、ピート・プート」
 命令を聞いたピートは普段通りに身を固めて、いつでも動ける状態で構えた!
「ではーどういっーた件でしょうーか!」
「引き続き安全圏から廃マンドロス村を偵察して!」
「了解!」
 ピートは表側から駆け足で居間から出た!
(指揮官……
 零は勝てるのかしら?
 いえ、あの子は必ず勝てるわ!)

 午前六時一分四十秒。
 場所は廃マンドロス村。双方の死体で村は埋め尽くされていた。
「これで最後だ!」
 天同零は自ら持っている最後の物部刃を羊型に放ち、中心を貫通させた!
「零! 果物包丁うだがあ、使あえ!」
 ベロウ都は背中に乗せた荷物袋を下ろた。中から果物包丁を前右足で取り、零に放り投げた! 零は柄を両足で蹴りながら指揮官型の方へ向かっていく!
「猿型かよ! 遊びじゃねえぞ!」
 包丁を右手で掴んだ零は猿型の襟首を斬った--斬られた部分から茶に近い赤色の血が扇形に噴出。
「国防官! 前に出過ぎよ!」
 リモートは援護するように物部刃を放っていく!
「刃を使いすぎだ!」
「誰のせいですか! あなたは大事な要職に就いてますわ! 動かず指示だけすればいいのです!」
「断る!」
 返答と同時に牛型の眉間の包丁を深く刺す!
 その時、零の左眼に球体のような物が当たった--球体は卵の殻みたいに壊れ、零は左眼が見えなくなる!
「ぐっ! これは卵じゃねえか!」
「国防官! 目はみ--」
 零は見た--リモートの背後に指揮官型が中間の右腕を振り下ろそうとするのを!
「しゃがめ、リモオオオト!」
「しゃがめって!」
 リモートは言われた通りすぐにしゃがむ--それは彼女の赤い髪の天辺を擦るように過ぎた!
「な、何でなの?」
 リモートはいつの間にか背後に指揮官型が居る事に恐れおののく。
「待ってろよ! お前は必ず俺の妻になるべき雌だ! ここで土に還ってたまるか!」
 引き抜いた果物包丁を握り、指揮官型に近づいていく!
 しかし、羊型、猪型、鳥形が立ちはだかる!
「くそ! 刃毀れがなければ一撃で楽に出来るというのに!」
「わかってるなら私に構わないで! それに絶対あなたの妻にならないからね!」
 指揮官型は中間の左腕を振り下ろそうとする--零は二撃で何とか鳥形を倒してでも指揮官型に近づこうとするが!
「くそ! 今度は刃が欠けているぞ! 素手でやるしかねえのかよ!
 こんな時に真島が余裕なら労に苦しまないってのによ!」
「俺は皆のお支援で足をお回せんん! すまあねえ!」
「でい! くそ、倒れねえ! 万事休すか!」
 と零が言った時、一名の中年がリモートを前に弾き飛ばた!
「きゃあああ!」
「どう! おっさん! 助かったぜ、ふん!」
 副官ベルッド・マウグスタは指揮官型の振り下ろした手を挟むように掴んだ!
「おっさんではないと何度言えば--」
「だあ! い、いかん、マウグスタあああ!」
 指揮官型は更に中間の腕を先ほど振るった両腕のやや下から生やして刺すように両腕をマウグスタの脇めがけて振るった--それは彼の両脇を深々と突き刺す!
「グ……ああぁあ」
 それが彼の最後だった。二度と返事を出さない肉体となった。
「おっさああああん!」

一兆年の夜 第十一話 天同生子 建国篇(五)

 四月八十二日午後十時二分一秒。
 場所は首都四門中央地区神武聖堂生子の間。
 天同生子は手紙を読んでいた。宛先は仁徳島学会員ベレッタ・バルケミン。
『拝啓 天同生子様
 
 自分は現在も学会で様々な成果を発表しております。その内容については例の
内臓モノ。生子様のお言葉で仰るならおぞましきモノについてでございます。
 内臓モノおぞましきモノはこの星に落ちてから百六十の年が経過。それまでに内臓モノおぞましきモノはあらゆる者達の人生を食らい続けます。
 最初の死者一場雄吉を始め、自分の先祖オッツールとリーベルダスの弟にあたるユーリディス、テレス族の長である北条ブル璃を含めた多くのテレス村住民、暦学者ヒュット・ヒッスイ、ICの生みの親ストルム・ササーキーと彼の愛弟子三名、初めての戦いを始めたベアール・毛利、そして軍の前身を作り上げた真島ギャラッ都など多くの生命がおぞましきモノに食われた。自分は内臓モノおぞましきモノを心の底から恐い。しかし、それ以上に怒りがこみ上げる。ですが、自分は戦うことが出来ない。それだけが悔いであります。戦うことが出来るなら色葉に顔向けが出来るというものを。
 話を戻します。自分はおぞましきモノを調べております。そしたら不思議なことがわかりました。それはおぞましきモノの周りを覆うモノは物質ではありません。あれはおぞましきモノの精神そのものであります。
 何故なら彼等が死ぬ時、あれは無くなるのです。無くなるということはあれは物質ではありません。物質ならば何かしらの痕跡を残します。ですが、痕跡一つ無いということは物質ではなく我々と同じく精神そのものだという可能性が浮上しました。
 現在はこのことについて名称決定委員会は結論を見出せません。何しろ物質なのか精神なのかで意見の総意が決まらないからです。
 そういえば決まらないことが他にもありました。内臓おぞましきモノの名称です。
 自分はおぞましきモノを【内臓モノ】と呼びます。何故なら内臓を剥き出しているからそう呼びます。けれども他の者は【食らいしモノ】【剥き出すモノ】【落ちてきたモノ】と意見が一致しない。そう呼ぶのには食らうからや、剥き出すからや、空から落ちてきたから、といった理由です。現在も決定的な事実が分からない以上、名称の決定は幾らもの年を重ねる可能性が濃厚です。
 最後に生子様に伝えたいことがあります。もう一度生子様にお会いしたいと思います。
 しかし、学会での活動が多忙を極め、こうして手紙を送ることも日に日に難くなっております。ですが、いつの日か必ずあなたにお会いして伝えねばならないことを自分の言葉で伝えたい所存であります。
 その日が来るとき、自分を助けてくださったこの世で最も美しいお姿でいてくれることを心より願いとうございます。
 桜の散りゆく季節に太陽が真上に照らす場所で心よりお待ちします。
                             仁徳島からベレッタ・バルケミンより』
 その手紙を読んだ生子はベレッタの気持ちを理解することはできなかった。
(あの男も頑張っておられるのね。ただ少し気になるのは手紙の書き方だけは勉強が必要だわ。
 まあ細かいことを気にするのはあの男と次に会う時に考えれば良いことね)
 その日は果たして来るのか……それは遠すぎる過去を知るしか他は無い。

 四月八十三日午前十時零分一秒。
 場所は国家神武首都四門中央地区中央官邸重要会議室。立方体にして約成人体型四千。出入り口は六つ。左右の三つづつ、均等な長さにある。
 机は円卓になっており、上左右出入り口を繋ぐように挟まれたところある椅子に座る者がいた。国家神武の象徴天同生子だ。彼女は国家の最高位にいるのか、背後に赤い丸模様の旗がある。これはお日様を表す物だ。
「ではこれより我々はおぞましきモノが住むといわれる第二東門から東に成人体型五千離れた地へ軍を向かわせる!」
「待って下さい! 軍の意向一つで会議を進めるべきではありません! ここは慎重に話し合うべ--」
「最高官は口を閉じてろ! ここで動かなければ俺達は--」
「いい加減にしないか、零防衛官! 国家神武の理念は互いの意見を尊重し合い、統一した見解を決める事にあるだろう! 和をおろそかにすれば我々は生き残れな--」
「時間稼ぎはいずれ食われることになるんだぞ、兄貴!」
「最高官と呼べと言ってるだろうが、零防衛か--」
「静くかあにせんかああ! ここは自分のお家じゃあなあいいんだあぞ、お二方よおう!」
 国家最高官天同読四と国家防衛官天同零を静まらせたのは齢三十五にして三十日目になるエウク梟族のフルシャル・シャウルル税務官だ。
「会議が始っまるといっつも二名は喧嘩しって意見が纏っらない。この場合生子様の意見を優先しっましょう!」  そう勧めるのは生活安全官エウミョウル・ムルリリウームだ。
「ですがだ、生子様だは国家だの象徴だですぞだ! 任命権以外だの権利だの
行使だはできないお立場だでありますぞだ!」
 官房官アルジェミィ・アルティニムムは反対意見を出す。
「そうだな。私の立場は何もしないという事。これ以外でやれるとしたら御子のように予報するだけだ。国民を活気づける事だけだ。
 だが、緊急の要する場合は別に置く。例えば中央地区までおぞましきモノが攻めて来るようであれば私は動く。それだけだ!」
「生子様だは仰ってるではないかだ! 緊急時以外だは何もしてはなりませぬだ。
 よって生子様だに意見だを求めるのは時期尚早だであるとだ」
「そうかい。それ、じゃあ、僕、じゃなかったよ! 自分らの、意見は、出して、問題ないね!」
「何か言いたそうだねだ、文部官ライッダ・来栖だ」
 齢二十七にして十の月と二十九日になるクレイトス飛蝗族のライッダ・来栖は意外なことを言い出す。
「実は、偵察官、リム-バ・キングレイの、報告を、僕は、聞いた、んだ。それに、よると、明くる日の、夜明け前、まで、例の地、にいる、おぞましきモノは、産卵する、との事。その時、まで、向かうと、こちらが、有利だ!」
 それを聞いた者達は皆、驚くばかりだ! ただ一名を除いて。
「まさか姉上が勝手にやったのではないでしょうね?」
「私は象徴よ。むしろリムーバの働きに感謝を送るのが常道じゃないかしら?」
「ったく俺に教えを説く口じゃねえぞ、こんなの!」
「ですが、私は反対イーですぞ! 声明を産む儀式中に食らいーしモノ達を倒すなんて」
 齢三十二にして九の月と一日目になるプトレ羊族の黒川メエ美要員促進官は反対した。
「おっさんは黙ってろ! 今がその時なんだよ!
 ここで向かうかそうでないかは姉貴の予報にかかる!
 姉貴! どうだ、予報内容は!」
「問題ないわ!」
 零の質問に生子は即答した!
「全ては生子様の予報通りいーの結果になりいーますね! 仕方がありません!
 私は賛成いたしいーましょう! 皆はどうかね?」
「モチ、の、論!」
「結局生子様のやろうる放題か!」
「私は雌だけうど、生子様大好きんなので賛成う!」
「美しいから賛成にゃ!」
「こら、まじめにしろ! でもさんせい!」
 議論は自然と賛成の方向に流れた。そして……
「全会一致したようね。では改めて第三東門より東に成人体型五千離れた住処に軍を向かわせる!」
 こうして国家として初めての遠征が始まった……

一兆年の夜 第十一話 天同生子 建国篇(四)

 午後四時一分六秒。
 場所は東テレス町一番地区五番地第一東門。
「はっ! ここから出ていけ! でないと俺は赦すことを容れず切り伏せるのみ!」
 国防官天同零は第二部隊に加勢する形で戦いに参加していた!
「危ないわ、国防官!」
 零の背後を捕った蟻型を望遠刀で狙撃していく者がいた!
「雌の癖して戦いが出来るのかよ!」
「あなた好きじゃないわ!」
「好き好きじゃないは後にしろ! とにかく雌は俺の援護だけをしてればいいんだよ!」
「雌じゃありませーん! ちゃんとリモートって言う名前ですから」
「名字はないのか?」
 零は蛇型と虎型の挟み撃ちを虎型の背中を蹴りつけることで回避しながら質問
した!
「報告する時言いましたけど!」
 齢十六にして二の月と七日目になるアリスト人族の少女リモートは蛇型を狙撃しながら返事をした!
「おい、避けられてるぞ! 蛇型に読まれてる場合か!」
「誰のせいで狙いが乱れたとお思いですか! ちなみに私の名字は--」
「零! 夫婦喧嘩はあ後にしろろ! こっちはあもう限られれた界まで追いい込まれたあ!」
 真島ベロウ都は右足で足斧を振るいながら、零達に助けを求めた!
「とか言いながらまだ戦えるじゃないか!」
「お前程お余裕じゃあねえぞ!」
「ってまだ私の名字は聞いてないでしょ! さっさと--」
「ああ、この戦いを終わらせないとな!」
 零はリモートと残り第二部隊七名と共に第一東門付近に残ったおぞましきモノ
十三体を倒していく……

 午後五時九分一秒。
 場所は首都四門中央地区神武聖堂生子の間。
 裏側から再びピートが報告しに駆けつけた!
「報告し-ます! 第三東ー門のおぞーましきモノーは全体死ー亡を確認ー!
 繰ーり返しまーす! 第ー三東門のおーぞましきーモノは全ー体死亡をー確認!」
「そうか、ありがとう」
「それから第二部ー隊は十一名のー死亡ーを確認。住ー民の死亡ー者は零でーす!」
「名前を聞かせて……」
 ピートは次々と名前を報告した。報告する者も報告される者も顔つきは悲しみで皺が増えた。
「……以上でござーいますー! ですが、国ー防官は無ー事ですのでー、えっとどうーすれば」
「気にするのは健康に宜しくないぞ、ピート。悲しみを背負うのは私だけで良い。
 それが私の役目なのだから」
 生子は死に往く者への悲しみを受け止めようと必死であった。そんな中でも問題児零の無事を聞いて安心する自分を認識していた。
(あの子が無事ならそれで良い。そう勝手に思えればどれほど楽なのか。
 私にはそんな余裕は与えられないのかしら?
 ところで私の予測はどうなったのかピートに聞かなければいけないわ)
「ところで第二部隊に加勢した者は零一名だけなの?」
「実ーは偵察官ーを務めていーるはずのーリモート・キングレイがー戦っーてました!
 何故ーでしょうーか?」
 生子は自分の予測通りの報告を聞いて右額から一滴の汗を流した。
(絶対あの子に巻き込まれたわ、彼女!)

 午後五時十八分二秒。
 場所は東テレス町三番地区第三東門。
 零達が来た頃には既に戦いは終わっていた。第五部隊は半数が死亡した。
 けれども、住民は幸いにも一名の死者は出なかった。
「マウグスタのおっさん!」
「おっさんではナアい! お兄さんダア! 何度言エバわかる!」
「それよりも報告しろ!」
「あのナア、報告すルウぞ! 第十部隊が全滅しタア地区に俺達本隊の半分を向かわセエたところだ! そこはどうなったカアは後ほど報告致す!
 ここ三番地区では住民の死者は零名ダア! だが、兵士は第五部隊だけでも半数近くの死亡を確認した! 剥き出しアリは皆倒シイタ後だ!」
「ちっ! また俺は生き残ってしまった! 名前を教えろ! 死んだ奴等を心に刻んでやらねえと!」
 ベルッド・マウグスタは全ての名前を零に出し惜しみ無く報告した!
「絶対にお前らの死を忘れない! この国を生きたお前らを絶対に忘れてなるものか!」
「あなたも悲しむんだね」
「今悲しんでも帰らねえんだぞ! それは雌だってよくわかるだろ!」
「ええ、あなたに言われるまでもなく!」
 リモートは零を好きにはなれない。けれども零の悲しみは共感した!
「水を差してすまナアイが、君は偵察官ではアルまいな?」
 ベルッドは前左足で尻を掻きながらリモートに質問した。
「ええ! 雌が戦いに参加して良くないと言いたいの?」
 ベルッドがそう言おうとしたら--
「心配するな! お叱りはすべて俺が受けるからこの事は俺が無理矢理戦わせたということで報告しといてくれないか?」
「は? だがヨオそれじゃあお前さんは--」
「怒られるのは慣れてるからそれでいいだろ? 意見したら尻掻いてることを言い
ふらすぞ!」
 それを流されたら自分自身の雄としての誇りが傷つけられると感じたベルッドは零の方針に反論しなくなった。それを見ていたリモートは腰まで伸びる長く真紅な髪を揺らしながら--
「あなたってどこまでも神様に迷惑をかける雄ね!」
「神様が怖くて動きまわれるかよ!」
 リモートの苦言に零は罪作りな返事をした!

 午後六時一分二十三秒。
 場所は首都四門中央地区神武聖堂生子の間。
 天同生子はすべての報告を聞き、戦いが終わったことを理解した。
(第二東門では第十部隊は全滅し、三十名近くの住民の死亡が確認された!
 本体の半分が駆け付けた頃にはおぞましきモノ達はいなかった!
 その事については生活安全庁が早急なる調査を行っている。でも、私が思うには彼らは外へ逃げたと予測する。もちろん中にだっていないことはあり得ないわ。
 でも、私は自分の予測を信じて手を打ったわ! 後は報告を待つだけだわ。
 それよりもこれからの事を考えないといけないわ! 私ができる範囲は狭いけど、守ってばかりでは国家神武は守れないわ。誕生したばかりの国を守る為には時として……)
 裏側から零がやって来る!
「オイ、姉貴! そろそろ俺たちは奴等を倒す為にも奴等の住処に向かおうぜ!」
「まだ早いわ! 皆の疲れが癒えた頃に話し合いましょう」

一兆年の夜 第十一話 天同生子 建国篇(三)

  ICイマジナリーセンチュリー四十年四月七十五日午後十一時一分二秒。

 場所は国家神武東アリスト町第二地区二番地。その中で二番目に小さな民家。
 齢二十三にして二の月と十五日目になる青年が望遠鏡を使って天体観測をして
いた。
「今日も北極星が輝いてあられますね。当たり前でありましょうか」
 彼の名前は板垣ツル夫。アリスト鶴族で唯一の天体観測家だ。彼は国家神武
いう名称を大いに喜んだ記念として天体観測を楽しそうにしていた。
「北斗七星だ! あの連星はどうしてあんな風に連なられるかが気になりましょうぞ!
 頭の部分から尻尾まで蛇族の様な形をしていられるでしょうが、恐らく七つの星
全てが今の我々神武の者達のようであられます! 勿論僕みたいに満たし足りうる
者達ばかりじゃないのはわかりましょう! でもそれが国家だと僕は勝手に考えて
おりましょう!」
 よくわからない考えをツル夫は独り言に出した。
「いけなかろう、いけなかろう! 僕は官僚であろうはずないからそんな事言ってどう
なさるか! 僕は只楽しくて星を眺めなされば良かろうこと! ん?
 これは……一体?」
 ツル夫はどうやら何かを見つけたようだ。
「えっと、確か空の歪みは百六十を上る年より前であろうか?
 一昨日起こられました空の歪みもそんな昔と同じでありましょうか?」
 彼がそんな独り言をする理由。それはある集合体を発見したからだ。
「この望遠鏡は銀河と呼ばれうる星々の集合だって見られましょうが、これ……は
銀河なのであろうことは?」

 五月三十三日午後三時零分五十秒。
 場所は国家神武首都四門中央地区神武聖堂生子の間。
 天同生子は座禅を組み、頭はややうつむいた状態で両眼を閉じ、両手を開けた
状態で左手を下にしながら掌の上に右手の甲を乗せて瞑想している。
(私が出した名称は反対意見があったものの僅か一の時を経たずして全会一致で
採用されたわ。もっと時を掛けて論を出し合うと思ったけど、皆は皆で忙しいかも
知れないわね。
 そして僅か二の月の間に国家神武の閣僚が決まったわ。
 どうやら私は国家の象徴として君臨するみたいだわ。
 でも余り嬉しい事ではないわ!)
 生子が嬉しくないと考える理由。それは神々の事が関係する。
(神々と同じ扱い……
 私はそんな事で良いのかしら? 何もしないなんて果たして私にできるかしら?
 自ら有り余る力を祀り事のみに集中。御子よりも大変難い役割はできるかしら?)
 そうして生子は象徴となったその日から座禅を組むようになった。食事も一日一食。
 風呂は一週に一回。主に穢れを祓う為の儀式。
 日毎は必ず今後の予報。これは御子達が行う天気予報とは趣が違う。これは国家
の命運を占う為の予報だ。
 後あるとするならば官僚の任命権。決めるのは国家最高官であるが、任命するの
は象徴である彼女だ。それ以外の役は演じる予定はない。
(飾り物だわ。結局私は秘境神武を捨てても仙者としての自分まで捨てられない命
運びのようね。けれども、これで良いわ。象徴として国民の希望になれるのなら私
は飾り物になって構わな--)
「た、た、大ー変だ! 生子ー様!」
 突然裏側よりピートが茶色の体毛を逆立てながらやって来た!
「何事?」
「目をー瞑りながーら聞かなーいで下さい! 第三東ー門より得ー体の知れないー
モノが侵ー入してきたのでーすよ!」
 その報告を聞き、生子は両眼を全開まで広げた!
「と言うことはその報告を聞いた頃には既に--」
「大変でありますだ!」
「何かしら? 今度はアルジェミィから聞くなんて」
 ピートとは反対方向から来たアルジェミィは三本足を踊るように動かしながら報告
する。
「東門全てだから生子様風だに言うならおぞましきモノだが侵入してきましただ!
 現在第二、第五、第十の部隊だが交戦中との事ですだ!」
「ヒエー! そこまでー来るなんて予想出来ないよ-!」
「腰砕けがだ! 朝早くに生子様だは予報していたであろうだ!
 最も良くない想定だをすれば容易に--」
「あなたもそんな想定をしたかしら?」
「うっだ!」
 生子は冷静にアルジェミィに苦言した--アルジェミィは目立ちこそしないが、毛根
の隅々まで汗を出していた。
「とにかく、三部隊だけではおぞましきモノ達は全て倒せないわ! 彼等の知性は
私達とは方向性が一致しない。彼等のような許し難いことは出来ないわ」
「わ、わかーってますけどでーも何だかー得体の知れーないモノのせーいで一ー体
どれほどの生命ーが死なれたーと思うとおらは怒りーで胸が締めー付けられるー
気分でありまーす!」
 ピートは両前足を握り拳ができるくらい曲げていた!
「怒りだは私もわかるぞだ! でも怒りだだけでは彼等だを倒せないだ!
 今は協力だこそ全てだ! そうでしょう生子様だ!」
 生子が返事する間もなく、生子の向いている方向より右から齢十六にして二の月と
七日目になるアリスト人族の少女が駆けつけた!
「報告します! 第十部隊が全滅! 隊長シマット・ベルグン以下全員の死亡を確認
しました!」
 その報告を聞いた二名の雄は落胆の表情を浮かべた。
「報告通りなの、リムーバ」
「ええ、報告通りです! それと私の姉であるリモートが天同国防官が本体を連れて
第五部隊に加勢するとの報告もお伝えします!」
「零が来たのね」
 生子がそう言ってる間にピートは状況を確認するために第二部隊のいる第三東門
に戻っていく!
「ところでリモートは零と一緒なの?」
「はい? えっと国防官率いる--」
「私はこう予測するわ。零は本隊と離れて第二部隊に加勢しに行ったわ!
 勿論リモートは零の支援に回っているわ!」
 生子の予測にリムーバはため息が出た。
「お姉様は国防官の事はお好きではありません。ですのでそれは有り得ない光景
だと私は思います」

一兆年の夜 第十一話 天同生子 建国篇(二)

 午前十時二十九分六秒。
 場所は大アリスト町東地区一番地。
 生命側二十名とおぞましきモノ三十体が戦っていた!
「今まで動きまくるのを我慢してたが、ちょうどお前らが来てくれて良かったぜ!
 穢れに関しちゃ後で姉貴達にたっぷり怒られてやっからお前ら大人しく倒されろ!
 おりゃ!」
 齢十九にして三の月と十五日目になる少年軍司官天同零は右手に持つ神武包丁を遺憾なく振るう!
「す、すげええ! 零のお野郎はどうしいてあんなに強いいんだよ!」
 齢十九にして二の月と二十日目になる少年は成人体型一とコンマ三に満たない
巨体を持つ零がおぞましきモノを反撃する暇も与えずに倒していく姿に驚くばかり
だった!
「おい、真島! てめえは何もしないでいんだよ!
 神武包丁の刃が毀れたぞ! 新しい物を寄こせ!」
「そ、そうだあな! ええっと……ほららよ!」
 真島と呼ばれる少年は背負っていた荷物を右に降ろして前右足を器用に使い、中にあった雄略包丁を、零に放り投げた! 零は蝶型の攻撃を避けながら放り投げられた雄略包丁を右足で柄を蹴りながら右手まで持っていき、それを掴む!
「雄略製か! 切れ味は良くないが、今は四の五の言うとこじゃねえしな!」
 零の背後に牛型が突撃した--が牛型は物部刃を左肋に受け、絶命した! その間に零は蝶型を横薙ぎへと真っ二つに斬った!
「あ、ぶねえぜ! ありがとな、マウグスタのおっさん!」
「おっさんじゃナイ! お兄さんと呼ベエ!」
 齢三十一にして一の月と十六日目になる体毛が灰色な中年マウグスタは返事をした! その後マウグスタは牛族の青年の背後に迫る蟷螂型を狙撃した!
「あ、ありがんとう! ベルッドさん!」
「礼には及ばんヨオ」
「さて、残り十体。お前らああ! 数で有利だからって油を断つんじゃねえぞ!
 最後まで気合いで何とかして見せろおお!」
「「「「「オオオオオオオ!」」」」」
 零の号令に十九名は雄叫びを上げた! そして--

 午前十一時二十分一秒。
 場所は神武聖堂広場。
「……というわけだから全員無事に済むだろう」
 天同生子は零に任せても大丈夫であることを長々と説明した!
「問題児だである零様だは確かにお強いですだ。しかしだ、得体の分からぬモノだ。生子様だのお言葉だで言うならおぞましきモノだについてはどうするのですだ? 
死体だは只埋めるだけでは土壌だを穢しますだ。それは六の年より前に廃エウク町だの状態だを知ればわかるとお思いですだ。あれは全てだを穢してもまだ足りないくらい得体だが知れないのですだ」
 アルジェミィは生気の足りない顔で生子に言った。
「確かにおぞましきモノ達を丁重に葬るのは苦労する。自然環境全てを穢す勢い。零はほったらかしにするからいつも私達は困るわ。彼等の穢れをなくすのは無理ですから。
 でも彼等の穢れを全て払えなくとも、最小限にする方法はあるでしょう」
「そだ、それは--」
「も、申し上ーげます! 東門ーより侵入してーきた得体の知れなーいモノは全て軍ーの手で倒されーた模様! もう一ー度報告しますー! 全てー軍の手でー倒された模ー様! 以上でーありまーす!」
 アルジェミィが答えはピートの報告に遮られる! その報告を聞いた住民達は大いに喜びの声を上げた!
「ンンや、ユゥやったああ!」
「さ、酒はどうするるんや?」
「酒に酔うて! 神様を傷つけたら! どうするか!」
「まあまあ、国誕生と剥き出しモンを倒しにゃ記念に安じ得ないことを全て忘れよう
にぇ!」
「ふふ、民の喜ぶ姿は良いな」
「ええだ、ですがおぞましきモノだはどうなさいますだ?」
「後は読四がやってくれましょう。あの子はこうゆう仕事には有無を言わさず行いますので」
 生子は聖堂に身体を向け、こう言った!
(国の名前はどうしよう……
 そうだ! 国家神武としてみようか。
 深い夜は皆で話し合わないといけないわ。
 国の名称の事も、これから私達の進むべき道の事も。
 全生命体の希望は曖昧で見えない暗闇を照らす光であり続けないといけないものだから!)

一兆年の夜 第十一話 天同生子 建国篇

 ICイマジナリーセンチュリー四十年四月七十三日午前十時八分一秒。

 場所は西物部大陸プラトン地方大アリスト町神武聖堂広場。
 神武聖堂は成人体型十六もある社のような建物。この建物の造営を思いついたの
が聖堂表門より成人体型十離れたところにある応神木で出来た祭壇の上に立つ
仙者。齢二十二にして十日目になる女性。名は天同生子。彼女がこの建物を造営
しようと思ったのは秘境神武にある成人体型六十四の社を見て感動したから。彼女
の弁によるとそれは神々が話し合われたかのような威風堂々とした趣だ、との事。
その為、彼女はこの建物を受け継ぐべきだという考えに至り、神武聖堂を四年掛け
て造り上げた。出来上がったものこそ高さも威風堂々としたものまでは再現こそ出来
なかったが、彼女は満足した。
 そんな思いの詰まった聖堂を背に肩まで伸びる綺麗な黒髪を力強く動かしてこう
宣言した!
「この町は今の日を以て、として始動する!」
 水の惑星で初めてのが誕生した!
「クニ? 何て字だう?」
「えっ? こんな字であろうるか!」
「ンン玉って何? ンォお母さん?」
「ゥゥ玉はまあるい物だよ。クゥこうして描くのよ」
「口で囲まれてぶ。玉を口に入れぶからなの?」
 国という言葉に町中の者達は騒いでいた。そんな中で齢三十八にして八の月と
二十三日目になる八咫烏族の老年が祭壇に登り、後ろから生子に近づいた。
「何の用なの、アルジェミィ」
「生子様だ。御覧の通り町中だは混乱に包まれておりますぞだ。やはり国だを建てる
のは早すぎるのではないでしょうかだ」
 アリスト町の官房官を務める神武八咫烏族のアルジェミィ・アルティニムムは灰色
に近い黒色の体毛を散らしながら苦言をした。
「早すぎるという言葉を使うべきではない、アルジェミィ。新しいことをするは混乱など
付き物だ。でも私は考え無しに国建ての宣言をしたのではない。
 私は仙者として、御子として神々の意志に従ったまでよ」
 天同生子の予報は九割九分当たるとアリスト町では断言される。アルジェミィは
ベレッタ・バルケミン以上に噂を信じない雄だ。九割九分はアルジェミィにとって根拠
は一つもないと今でも思っている。
 しかし、そんなアルジェミィも信じてしまうことがあった。それは--
「生子様だが仰るのなら都合だの良いことも真だでありましょうだ!」
 天同生子が神秘的な存在であることを信じていた。
(とはいえこのまま皆を混乱の渦に飲み込むのは良くないわ。後で読四からどんな事
を言われるかわからないわ。さて、ここはいつも通り神々からのお言葉を聞かないと
いけないわ!)
 生子は突然目を瞑り、頭を少し下げ、両手同士を握り、それを眉間のすぐ側まで
近付ける。
「オ、オイ! 生子様が予報をオ始めルゾ!」
「いくら何んでも遅いんじゃあんねえのおうん?
 もおうんお日様はあ天辺にいん登ろううんとしてるうのにい」
「何言ってるか! 生子様は御子であると! 同時にな! 仙者なのだぞ!」
「へえ鉦くーん、君は生子様は時間を関係無しに神々の意志を読めると言いたい
わーけ?」
「まね、まあこれ以上言うとあの零様から鉄拳をお見舞いされかねないから大人しく
しようね、なね!」
「とにーかく生子様ーの天気予ー報は楽しみだぜー!」
 それを見た住民達は一斉に騒ぎを止めた--生子の方へ視線を向けた!
(水の、大地の、山の、火の、風の、空の、重力の、そして宇宙に生きる一兆年にも
及ぶ神々
よ! 何を想い、何を為し、そして何を視ますの? 私達全生命に神々の
意志をお教え下さいませ! 私達はその代わりとしてひとたびの汗と涙の結晶を
神々に捧げます! なのでどうかどうかどうか……)
 生子に映る映像は黒と灰という色から赤く青い色、やがては想像の海である桃を
越えた色に変化。そこから映し出されたのは未来から過去に誘われた何か!
(? 何かしら? どうして過去の事を映し出すの?)
 その時だった! 生子が神々の意志を読もうとしている間に空一面が螺旋を形成
するように歪んだ!

「あ、あ、あれはどううかしてえるぞ!」
「なななんでそらがゆがむのだい!」
「せ、生子様だ! 生子様ああだ!」
 住民達の混乱につられるかのようにアルジェミィは生子に触れてでも呼び戻した!
「!
 例を欠いた件は後にする。それよりも何を焦る?」
「あだ、焦りなさいますよだ! お空だを見て下さいませだ!」
(空? どれか……どうゆう事なの!)
 生子は空の歪みを見て中庸な眼を一杯まで大きくした!
「空は確か快晴だわ! 私は予報してないけど、御子であるアリスト蛙族の
吉田グガ子の予報通り快晴を示してたわ。なのにどうして歪むの?」
 生子は空の歪みを信じることが出来なかった。自分の目で見たとは言え、未だに
現実として認識出来ないでいた!
(これが神々のお意志なの! でも何か当たっていないわ!
 これがどうして未来から過去に誘うという意味なの?)
「た、た、大変ーだ! 東門ーから得体ーの知れなーいモノ共が来ーたぞ!」
 齢二十三にして一の月になったばかりのアリスト犬族のピート・プートの言葉に
住民達は更に混乱する!
「何々! だ、駄目! 恐いでちゅ!」
「足踏むにゃ! おらの後ろ足は可愛くて細いんだにょ!」
「可愛いは関係なっし! 俺様は尻尾が強そうだっぞ!」
「腰砕け言ってる場合かっと! とにかくあいつらを倒さっないと僕達が死ぬぞや!」
 この間にもう一名祭壇に登る者がいた。
「何かしら生活安全官エウミョウル・ムルリリウーム。何か報告があって登ったの
でしょう?」
 齢三十三にして五の月と十八日目になるアリスト猿族の中年エウミョウルは左手
で白髪を掻きながら報告した。
「じ、実は天同軍司官が交戦中でごっざいまっす!」

一兆年の夜 第十一話 天同生子 建国篇(序)

 私が産まれて十八の年。桜舞い散る季節の始まり。

 私はアリスト町から秘境神武を訪れたプラトー人族の末裔ベレッタ・バルケミンに迎え入れられるように下界へと降りた。初めての下界についての感じ想うことはあるわ。それは空気が少し美味しくないところかな?
 一の月を経て私はアリスト町に着いたわ。町の者達は私を迎えてくれたわ。ただし、零は論より外だけど。それで桜の花びらはといえば全ての木から無くなってしまったわ。あるとすれば桜の死、桜の木は緑の衣を着る。ちょうど私も衣替えする頃だわ。
 三の月が経過。読四がアリスト町に移住したわ。相変わらず零は町で好き放題して困るわ。季節は夏の真っ直中。零のようにアリスト町には二つの台風が訪れ、
暑苦しく、熱によって倒れる者達が現れる毎日。でも町民の暑さはそんな熱でやられる程弱くなかったわ。
 それに耐えてなのか、二の月が経過。木は枯れ葉の色へと変化していく季節。町は私が移住した時よりも拡大。村三つ分を加えた面積になった。暑き日々を耐え抜いた賜物ね。でもこの季節、冷えた空気が町全体を覆う。それに連なるように町も冷えた空気が蔓延していく。
 その空気が覆う中、二の月が経過。雪景色へと変化する季節。雪が町民達を包んでいくようにおぞましきモノ達も町民達を恐怖で包み込もうとした!
 私は一者で戦ったわ! でも町が広くなった事でおぞましきモノ達は各地区で町民達を食らっていくわ! 私はどうすることも出来なかった。そんな危機的な状況でおぞましきモノ達を次々と倒す者がいたわ。それは私の二番目の弟、零。彼は町民達を先導しておぞましきモノ達を次々と倒す。
 私は産まれて初めて自分の浅はかさを知ったわ。そして、父の言葉を忘れた自分自身を後悔したわ。その話はまた今度するとして。
 町からおぞましきモノ全てを倒した私達は喜んだ。けれども同時に自分のやった事、死んだ者達のことを思い出し、後悔したわ。

 私が産まれてちょうど十九の年。十九回目の桜を見た頃かな?

 私と同じ年の弟、読四は町長になったわ。
 何故なれたのかは私の推薦があったからなの。それで私はどうなったか? 私は今まで通り仙者として町を守っていくのよ。
 それから五の月が経ったわ。今度は軍と呼ばれるものが出来たわ。起てたのは零よ。あの子ったら自分の子分を集めてると思ったらこうゆう事を思いつくのね。どこまでも勝手な弟だわ。勿論、読四とは喧嘩になったわ。でも面倒だったから私は二名の仲介に入って事を収めたけど、読四は満足しない様子だわ。まるで今の季節のようだわ。向日葵の季節は終わったというのにまだ暑さが抜けきれないところ。
 暑さが抜けきれないまま二の月が経過。またおぞましきモノ達が来たわ! 今度は零が起てた軍というものが町を守ろうとしたけど、さすがはおぞましきモノ。前回通りにいかないわ。軍は次々とおぞましきモノ達に食われていったわ。
 でも今度は町民達がおぞましきモノ達を次々と倒していったわ。これには訳があって実は読四が零を思ってなのか町民達を戦えるようにしておいたお陰なの。これによりおぞましきモノ達は全て倒されたわ。
 けれども、今回に限ってさすがの零も反省したのか、以降は勝手気ままな振る舞いをしなくなったわ。まるで冬眠生活に入る熊族のようね。でもこの大陸では中々お目にかかれないわ。よくわからないと思うけど、今はそうゆう季節ということを私は言いたいのよ。

 私が産まれて二十歳はたち。桜が咲く季節。

 読四は町民の支持を背景に次々と新たな政策を打ち出すわ。
 租税として原産のアリスト豆を納めること。土地事業改革。配達本部の民営化。
 私は今の読四を心配するわ。支持されるというのは期待されているという証であり、
自分自身が特別な存在になった訳じゃないのに。私はあの子程凡庸じゃないから
わからないわ。とにかく読四は自分を抑えられなくなってるというのがわかるわ。
 でもね、桜が必ず散っていくように自らの精神も儚く散るものなのよ。特にこの季節
は己自身の最も気を付けないとね。
 桜散りゆくは三の月が経過。三度目のおぞましきモノ達が来襲。読四は町民達に
戦うよう促した。読四は町民達の力が集まれば切り抜けられると思っただろうね。
 しかし、町民は町民。どんなに集まっても気迫で勝てる戦いではなかったわ。
おぞましきモノ達は町民とわかった上で彼等を捕まえては盾にするといった怒りたい
気持ちにさせる事をして次々と彼等を死なせていくわ。この時になって私は行動を
始めた。自ら自身で戦うのではなく、誰かの力を借りることも考えて。そうして最初に
行ったのは劣弟、零を奮起させる事よ! 零はあれ以来大人しくなりすぎたわ。確か
にあの子は勝手すぎるわ。でもそれは時として私達の力になる。そう思ったまでよ。
 だから私は必死で零を説き得ようとしたわ! 説得して五の時が経過してもあの子
は動いてくれなかった。けど、その時に町民達があの子を説得しに駆けつけた! 
それでもあの子は動かない。それから三の時が経過して読四が来たわ。今までの
意地を捨てたのか、座禅しておでこを地面に叩きつけてでも説得したわ。それで
とうとうあの子は再び戦うのを決めたわ! それからは正に疾風のようね。台風の
ように通過した地域を巻き込んでいくように私達アリスト町の者達はおぞましきモノ
達を倒していったわ。ようやく父の言ったことを果たせそうね。
 おぞましきもの全てを倒し終えると読四と零は和解したわ……と思ったけど翌の週
の後には零はいつもの問題児に戻った為、あえなく決裂。生命はそう簡単に変わら
ないわね。

 私が産まれて二十一になるわ。桜は何の年を見ても美しい。

 私、読四、零。三名は本格的な町造りを計画したわ。それは全生命体の希望という
父の願いを実現するためには今までではいかないと考えるようになっていた。私達
三名は議論した。でも答えは得られないままだわ。
 それから翌の週が経過。今度は読四の副官、零の副官などを加えて議論した。
 また翌の週より後は各地区の会長を。
 更に一の月より後は選員を各自決めて議論を。
 また翌の週より後、それでも二の月より後……様々に議論をしていく。

 私が産まれてようやく二十二。今の年も桜は綺麗に舞い散るわ。

「この町は今の日を以て、国として始動する!」
プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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