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一兆年の夜 第五十二話 光不変の先へと 後篇(星)

 午前零時零分零秒。
 海は偶然にもサンショウ六達の無謀を応援する--まるで右翼を狙い撃ちするかのように次々と波はその場にいる傭兵や銀河連合を流しながら襲いかかる!
(僕は小隊長に掴まれている? 更には分隊長持参の雄略包丁『ツクモノカミ』の上に乗っかっている? 折れないかな?)
 そんな安心出来ない事を思う内に船は左右に揺れ、それから最大まで持ち上がった左翼は三名が飛ぶ絶好の状況!
 今だ、飛べエエエエ--ドストリーニの掛け声と共に跳躍!
 落下してゆく鯨型との距離は四百--まだまだ二つがくっつくには遠い。
「どうやら自分はここまでのようだなっち。生きていたら酒を飲もうかっち、サンショウ六っち!」
 イタ平は持参した『ツクモノカミ』を熊族に匹敵する力で振り回す--二名を鯨型に送るべく飛ばした!
(いくら見た目が筋肉質であってもここまで無茶が出来るなんて?
 そ、れでもまだ届かない?)
 鯨型との距離は百--ここまで来て二名の身体は落下体勢に入った!
「だから言っただろうん! 若い命は次を創るん為に生き抜くんと!
 わしは先に行ってるんぞオオオおおおおお!」
 鼓膜を破けんばかりの叫びで限界まで力を出し、サンショウ六をぶん投げたドストリーニ!
「有り難う御座います、小隊長殿オオオオオオ、分隊長殿オオオオオオ?」
 サンショウ六もまた叫び続けながら神々を信じる--風が背を押すのを信じた!
 神々は応えた--突如としてサンショウ六に襲いかかる暴風は背に強く押して、鯨型との距離を……零にした!
「ありがとう、神様? 今度はサンショウ子さんに感謝する番ダアアア?」
 サンショウ子から貰った足斧を右前足で抱え、それを上から下に加速させた--骨と骨の継ぎ目に嵌り込んで、痛がりながら軌道をずらしてゆく!
「落下針路はずらせたのはいいけど、どこに……わあ?
 サンショウ子さんの勘は凄い? 無かったら間違いなく海に投げ出されていた?
 ……なんて言ってる場合じゃない? 銀河連合はこのままにしておくはずがない?」
 サンショウ六の独り言は正しかった--サンショウ六を食らおうと次々と銀河連合が鯨型の上に乗り込んでゆく!
「このまま僕達は海に呑み込まれる? ただし、銀河連合達は確実にする為なら同胞に乗っかってでも僕を食事するのか? 海に沈む前に僕の命を食らう気なのか? 足が離せない僕は絶好の機会だと思ってるのか?
 それでも僕は簡単に食らったりしないからな?」
 三本足でも戦おうと決意を決めたサンショウ六--例え乗り込んだ銀河連合十五体が傾斜を利用してサンショウ六に特攻を仕掛けても!
「さあ、食べられるもんなら食べてみろよ? 僕はとってもお--」
 最後まで喋る間も毛先まで接近する間もなく、鯨型は海に落下--半径成人体型およそ四十はある水飛沫を上げながら周囲と外側より成人体型およそ七にいる傭兵と銀河連合を巻き込んで!
 サンショウ六の肉体は落下の衝撃で左後ろ足のみならず、右肋や左肋骨等々急所よりやや近い場所にある骨を折りながら深海へと沈む。
(グルじいぃ……? 死、ぬの、か? ぉ、ぅ、ぁ……?)
 全身強打は意識さえも深海のそこへと沈ませてゆく……。

 未明。
 サンショウ六は気付いた時、そこはあらゆる色が混ざり合う世界に居た。
『光が、眩しい? ここはどこ? 僕は山一サンショウ六? どうして自己紹介?』
 サンショウ六はまるで義務を果たすように自身を披露してゆく--好きな異性や、好きな食べ物、好きな趣味は何なのか、拘る所は何なのか、今やるべき事等々。
『って誰から命令された義務なんだ? 居るのかさえわからない眩しい場所で自己紹介なんて誰に命令された?
 まあ、いいか? どうせここは僕が僕自身の為に切り開いた<竜宮>かも知れない? 幻を自ら見るようになるなんてどうかしてるよ? こんなことしたって生命が変われる訳じゃないのに?』
『果たして変われないとお思いか?』
『え? どうして副……いや他にはベアケット分隊長にメエメンさんやきね由さん、それにサイ頭さんやマルノオビさんも? 遅れてきたのはカモノさん? どうしてここに?』
 サンショウ六は彼等に触れようとしたが、空を切るだけだった。
『止めとけやい、サンショウ六。わしらは光の集合体だい』
『光の集合体なにどしてまんまが出るかって?』
『思いーイ出がわしらを復元させたアアーのじゃ』
『分隊で過ごした日々は確かに短いス』
『短い事なんて関係なく俺達端お前似刻まれる!』
『オオここを幻と呼ぶのオオならさっさと目覚めろ! アア帰りをオオ待つ者がお前を捜しに潜った!』
『帰りを? まさか--』
 気がつくと空を見上げるサンショウ六--そこは光だらけの景色と異なり、海に濁った青い世界……。

 未明。
 サンショウ六は深部五まで沈んでいる事に気付くものの、全身複雑骨折のせいで思い通りいかない。
(イデデ……死にたくないとこれほど思えるのに?
 動け……デデデ? 動いて、くれ?)
 何度思っても身体は沈むばかり--息苦しさもまた増すばかり。
(今まで都合が良すぎた罪をここで払ってしまうのか? 死にたくないよ? まだまだやりたいことはまだ見つからないけど、守りたい生命は居るのに?
 このまま……あ、れは?)
 サンショウ六を助けるべく一名の山椒魚が泳いでくる!
(間違いない……サンショウ子さん? 彼女が助けに来たんだ?)
 サンショウ子は傷ついたサンショウ六を抱えるとそのまま力強く泳ぐ--およそ一の時をかけて引き揚げる!

 未明。
 プハアアア--サンショウ六が息を吸い直すとそこには歪みから晴れてゆく青い空が見えた!
「イデデ……湯が見ない青い空を見るなんて初めてだ?」
「綺麗でしょ? 私も初めて知ったわ? 歪みない青い空がこんなに綺麗なんて?」
 どうやら山一君も無事みたいだね--落下した傷が何事もないような表情で小舟を動かすドストリーニとイタ平。
「分隊長と小隊長……アダアアアア?」
「無理しないでよ、サンショウ六? あなたは二名よりも傷は深刻なのよ?」
「そこまで喋られるのならすぐに元気になるさっち。
 それよりも頂上まで登ったお日様を眺めろよっち、二名ともっち!」
 四名はお日様を見つめる--歪み無き空のお陰でお日様の光は今まで以上に神々しい物となる!
(僕はもう二十歳に成ったのか? これからは少年と呼ばれなくなるのか? 青年山一サンショウ六……今一実感が湧かない?
 はあ、さっきまで威勢が良かったのは多分みんなのお陰だったりして? これから僕の青春は続くのか? お日様の光は僕を祝福してくれてるのかな? もうわからない?
 眠ろうかな? 久々に仲間達に会えたとはいえ、もう一度会いたい? ベアケット隊長、スメラビノ副長、きね由さん、マルノオビさん、メエメンさん、サイ頭さん、カモノさん、そして藤原小隊のみんなや他にも多くの仲間達……会っても良いよね? 会っても良いよね、ラディヴェヴァルデェンさん……?)
 お日様の光は今日の遠い過去でも照らし続ける……それはどんな銀河連合でさえ放つ事のない真っ直ぐな濁りのない黄金の輝きを出しながら




 ICイマジナリーセンチュリー百六十八年一月一日午後零時零分零秒。

 第五十二話 光不変の先へと 後篇 完

 第五十三話 再誕の火 真正神武最後の最高官 に続く……

一兆年の夜 第五十二話 光不変の先へと 後篇(流)

 午前十一時三十分五十二秒。
 銀河連合は総攻撃を開始--隕石並の落下をする一団のみならず、深海から襲撃する一団も含めて!
 一方の真正神武真鍋傭兵団、エリフェイン傭兵団、柊傭兵団、そしてシャーク傭兵団の連合も負けずに反攻を開始--海中はシャーク傭兵団が担当し、海上は柊傭兵団が担当、船内はエリフェイン傭兵団が担当し、そしてサンショウ六が所属する真鍋傭兵団は甲板を担当。
 真正神武軍は仁徳島奪還を開始する!
 舞台はサンショウ六の居る『星季』甲板に戻す。サンショウ六はサンショウ子が所属する山岡分隊と共に降りゆく銀河連合を避けながら反撃を窺う。
(分隊長山岡イタ平は包丁捌きが凄いらしい? それを見たくて山岡さんが率いる分隊に入ったけど、逃げてばっかりだ? 中々攻勢に転じられない?)
 それにしてもあのジャンゲルの部下と一緒に戦うとはなっち--サンショウ六を除く九名を率いるのは齢二十九にして九の月と十日目になる仁徳鼬族の青年山岡イタ平はいつでも刃を鞘から抜けるよう準備していた。
「しかもあのサンショウ六だからね? 頼りになるかしら?」
 なるっこと思いますよ--齢二十一にして十の月と九日目になる藤原子守熊族の青年藤原コア主はサンショウ子の背中に飛び移りながら言う。
「あんまり他者の身体に乗っかるなっち、コア主っち! 自分達の任務は船の死守っち。どのみち自分も含めて死者は出るっち。ならば--」
「死者は出しません? 勝手に死んだりしないで下さい、みんな?」
「お前はっこ口出しするな! 小隊のっこ任務に文章したっあ句を言いたけりゃっら小隊長に進言しろ!」
「コア主の言う通りっち。サンショウ六は部外者でもある以上は小隊長にさえ進言は許されないっち!」
 だってさ--サンショウ子は走りながらサンショウ六の頭を左前足で撫でる。
「そんなことして……ワワッツア?
 危うく押し潰されそうになったじゃないか?」
「御免なさい、サンショウ六?」
 声が大きいっち、二名ともっち--イタ平は分隊全員の足を止める指示を出す!
「分隊長殿っこ。こんな……囲まれたっこ!
 いつの間にっこ奴等は囲むようにっあ落下してきた?」
 間抜けなのは自分達の方かっち--それでも刃を抜かないイタ平。
「どうしますかっこ、分隊長っこ? 足をっこ止めれば生存率はっあ低くなりますが」
「サンショウ六っち?」いきなり振られてサンショウ六は戸惑う。「何でしょう?」
「前と後ろ……お前ならどちらを選ぶっち?」「前?」自信満々に答えるサンショウ六。
「意見は一致したっち。これより分隊は強行突破を図るっち!
 ちゃんとついて行けよっち、自分にっち!」
「「「「「「オオオオオオ!」」」」」」
 鞘から抜き、前方に構えたイタ兵に示されるようにサンショウ六を含む十名は進む!
 前方には分隊の十倍は居る銀河連合--強行突破を食い止めようと一箇所に固まる。
「確かにっこ強行突破を試みる……がっあそれは『真っ直ぐ』というっら意味じゃない!」
 コア主の言葉通り分隊は塊に押されるように二手に別れ、外側から囲むように一団を叩きながら前に進む!
(確かに正面からは数の面でも進めはしない? でも横に流れながらなら……しかも固めたせいで隙間が出来た?
 僕は山岡分隊長組に付いて行くように隙間から抜ける?)
 コア主を含めた五名は左の隙間を通れずに囲まれてゆく--イタ兵、サンショウ六、サンショウ子を含む六名は右に出来た隙間を抜ける。
「また一名っこ死んだ! 藤原鋭棒をっこ振り回してもこれじゃあっあ死ぬしかないのか?」
 そう言いながらも三体倒す事に一秒足らずで刃先を交換し、更に三体を難なく倒すコア主!
「コア主やわ、どうやら俺も……グワアアア!」と名も無き熊猫族の中年が血を吐きながら仰向けに倒れながらも戦意を保つコア主。「残りはっこ俺だけ? 腰砕けもっこ良い所だぞ、これっこ!」
 絶体絶命の状況に追い打ちをかけるように空から数体もの銀河連合がコア主の頭上に落下してくる!
「残り刃は……二つウウっこ! 俺にっこ『死ね』と言いたいのか、神々はっこ!」

 午前十一時四十七分二十八秒。
 山岡分隊の数は五名。抜ける際にイタ平を庇って一名の傭兵が討ち死にしたばかり。この状況になってサンショウ六はある事を思い出す。
(あの時と同じ? 副長が死んだあの時と? あそこから僕らベアケット分隊は次から次へと死んだ?
 だからって諦める訳にはいかない? でないと小隊長メデリエーコフに宣言したことが本当でなくなる? 意地でも生き残ってみせる?)
 その通りだっち、サンショウ六っち--心を読まれて一瞬だけ震えるサンショウ六!
「前向きになれないわ、分隊長? 正岡さんが死んだのにどうし--」
「だからこそ僕らは諦めてはいけないんだ? そうでしょ、分隊長?」
「そうだっち。それに自分は死なんっち。その可能性すら存在しないっち」
 イタ平は刃毀れ起こさず空からも横からも急襲する銀河連合を次々と両断--サンショウ子は驚くばかり!
「デエエエッダ……これで三体目?
 何をしている、サンショウ子? 死にたいのか?」
 死なないわよ--無気になったのか、足斧でサンショウ六の背後から迫る牛型目掛けて投げる!
 眉間に命中し、踊るように蹌踉ける牛型銀河連合。牛型からで達を右頬に辺り、背後に気付くサンショウ六の全身に痺れが駆け巡る。「あ、ありがとうサンショウ子?」と返事をするしかなかった。
「いえいえ、どういたしまし……テ?
 あ、わわ--」
「どうした、サンショウ子? 後ろなんて……な、何て都合なんだ?」
 二名は左翼から落ちてくる鯨型銀河連合を目撃--全長成人体型はおよそ二十七と巨大な姿に痺れと冷却の両方を身体に流れる!
(あれが船に当たれば沈没する? 間違いなく沈没する? 戦うと決めたのに逃げるなんて出来るか?
 それでもあれは無理難題過ぎる? 柊傭兵団? いやいやいやいや、あの方達じゃ軽すぎる? ど、どうすればいいんだ?)
 気合いで何とかするんだ--分隊長イタ平に続いて小隊長ドストリーニもサンショウ六の心を読むかのように答えを出す。
「生きてたんですか、小隊長殿?」「礼を失するんぞ、山一! わしはお前達若いもんよりも早くん死ぬんつもりではあっても簡単に死ぬんような軟弱者ではない!」「申し訳ありません、小隊長殿?」傷一つ無いドストリーニを見て驚くばかりのサンショウ六。
「それに所属のない者はわしの所に付けって言っただろうんに!」「も、申し訳ありません?」「話はそこまでにしてあれを倒すんぞ、お前ら!」飽くまで気合いで何とかしようとするドストリーニ。
「で、でもあんなに大きくて空から降る銀河連合なんて迎撃出来るの?」
「雌の糸風君にはわからないだろうんが、雄というん者は何よりも気合いを重視するん性だよ」
「お、雄の僕でもあんなのはどう考えても--」
 成る程っち、その足がありますかっち--まるで何かを理解するかのように左翼甲板物摺りに近付くイタ平。
「まさか揺れを利用して飛ぶんですか、二名は?」
「それ以外に何があるっち、サンショウ六っち?」「一つ訂正しなさい」「まさか僕を?」三名の力で鯨型まで飛ぶ事を本能で理解してしまったサンショウ六!
「な、何て罪なことを? 一歩間違えたら--」
「お喋りはもうそのくらいにしましょう、サンショウ子さん?
 どうせ死ぬはずだった命? 少しくらいは対価を払わないと死んでいった者達に申し訳がない?」
「よう言った! それでこそわしが見込んだ雄じゃ!」「まさか乗り込むのはサンショウ六?」何時の間にか足斧をサンショウ六に渡すサンショウ子!
「僕には徒足空脚があるじゃ--」
「これは雌の勘よ? どうせ大きすぎて絞め技は意味ないからこれで?」
「……わかったよ、サンショウ子? じゃあ行ってくるよ?」

一兆年の夜 第五十二話 光不変の先へと 後篇(気)

「あ、足に絡みついて?」
「花は植物です。なので茎を使った攻撃なんてのを平気でやれます」
 冷静に説明してる場合じゃないでしょ--絡みついた茎を解こうと必死になるサンショウ六。
「歴史を変えてはヴィスターにも影響します。ひょっとしたらヴィスターさえ存在しなくなります。
 そ、れでも我は誰かを助ける為にヴィスターの思い出に手を出す!」
 ラディヴェは左手を天井に掲げる。すると左手の周囲から立体円を描くように不思議な文字列が広がる!
「あ、れは……ワワッチャ?
 もう少しで食べられそうだった?」
 文字列に触れた者はラディヴェとサンショウ六を除き、文字として解体される。
 不思議な光景を目撃したサンショウ六は最早突っ込む気力さえ無くす。
(きっとラディヴェさんは手が素早いんだよ? 文字が花を文字にするなんてどう考えても飛躍しすぎるもんな?)
「もう少しです。もう少しでヴィスターの思い出は消えます。それまで我に引っ付いて下さいまし、サンショウ六君」
 は、はい--サンショウ六は言われた通りラディヴェの側に引っ付く。
「計算に狂いはありません。数値に少しでも間違いがあれば大変な事になります。様々な公式を用いる事で魔法と同等かそれ以上の奇跡を起こせる『龍道』は我の武器です。これをもってしましても百億年の叫びは--」
 何かを言いかけようとした時、今度は噴火と津波が互いに混ざり合った轟音が二名の鼓膜を破裂させかねんくらいに響き渡る!
「「あがあががあああ--」」
 轟音は一の分経過しても響き渡り、二名の気を失う寸前まで苦しめてゆく!

 未明。
(……止んだ? あの音は一体? それにしてもまた……光景が変わって?)
 サンショウ六は気付く--海に浮かんでいる事に。
 彼を救出すべく『ハヤブス』と同じ大きさの船が近付く。そこから計七名から成る救出班が海から出て、彼を慎重に運んでゆく。
 山一サンショウ六は意識を失うまで天使族と思われる雄がどこにいるのかを探った。
(……あれは夢なんだよ? 大体四十八で二十代の容姿なんて有り得ないし、人族の姿で背中に翼を生やすなんて有り得ない? そうなんだ、夢なんだ?)

 そして、十二月百二十四日午前十一時十五分十二秒。
 場所は珊瑚島直轄船『星季』。大きさはほぼ『ハヤブス』と変わらないが、こちらは戦闘用に使うのか、側面に砲弾と呼ばれる鉄の玉を出す武器が装着される。実験用である為、使用すれば船が沈む恐れが大きい。なのでほぼ飾りと変わらない。
 ちなみに名前の由来は大陸藤原で亡くなった真正神武初代副最高官天同星季にちなんだもの。製作を依頼したのは二代目最高官天同美世。彼女の名をいつまでも遺す為に星季の妹美世が製作を依頼し、完成したのは美世が亡くなってから僅か一の月が経ってからの事。
 『星季』は現在、シャーク傭兵団に譲り渡される。こうしてサンショウ六の救出やそれ以外の使用を任される。
 そんな船に救出されたサンショウ六はお日様を見渡す。
(ここに所属するアリゲラルさんに聞いたけど、『フォウルン』には誰一名として生存者は居なかった? 僕らのやった事は意味を為さないのか? 僕を運んでくれたカモノさんの死は結局報いる事が出来なかった?
 それだけじゃない? 他にはもう一名この船に所属する--)
 ここに居たの、サンショウ六--甲板の階段から上ってきたのは齢二十二なったばかりのラテス山椒魚族の女性糸風サンショウ子。
「サンショウ子さん? 正直恐いんだよ?」
「まさか『ハヤブス』が銀河連合に食われたことを聞いて安心出来ずにいるの?」
「そう、それが安心出来ない? 僕は結局みんなの命を意味あるものに出来てない? どうすればいい、サンショウ子さん?」
「そうだね、難しく考えないことね? そうそう、サンショウ六はもうすぐ二十歳?」
 そ、そうだけど--何故そんなことを聞くのかというような表情になる。
「どのくらい先になるの?」
「明日になれば?」
「明日かあ、じゃあ盛大に祝わないとね?」
 祝う--困り顔になるサンショウ六。
「そうだよ? 『二十歳になったら祝う』って古式神武では古くからやってるわ?」
「真正神武に国籍を置いてるから知らなかった?」
「『成者式』なら出たわよね? あれとは異なり、『二十歳式』というものがあるんだ?」
「大人になる『成者式』なのに『二十歳式』は只単に二十歳になるだけじゃない?」
「そうかしら? 二十歳になったらもう少女から女性になるの? あなた達雄なら少年から青年に?」
 へえ、そう--興味が全くなさそうな表情をするサンショウ六。
「はあ、これだから雄というのは飾り気がないんだわ? もう少し飾りを好まないと異性の心がわからないわ?」
「御免、サンショウ子さん? 僕はその……そのの?」
「どうし……たのよよ?」
 二名はさっきまで快晴だった空が突然辺り一面を覆うように銀河連合が埋め尽くされている事に気付く!
「あわわわ、こ、これは絶対に--」
 報告しないといけないわ--サンショウ子は思わず階段の方に走ってゆく!
「どうし……ワワ!
 痛いじゃないか……じゃなくんてさっさと戦闘準備に入るんぞ!」
 齢三十五にして一の月と一日目になるキュプロ栗鼠族の中年ドストリーニ・メデリエーコフに集まるように六つの分隊員が次から次へと甲板に集結する。
「「了解、メデリエーコフ小隊長?」」
「言っておくんが、山一よ!」「何でしょうか、小隊長殿?」「お前は戦わなくんてもいいんだぞ」ドストリーニは救出された一の週も経たないサンショウ六を気遣う。
「お言葉ですが、それはいけません? 僕は戦います?
 死んでいった仲間の命が僕にあります? なのに戦わずして逃げるなんてどうかしてます?」
「ここに居てもまた生命の死を見てしまうんぞ、いいのか?」
「死なせはしません? それに僕はもういつだって死にに行く覚悟です?」
「『死にに行く』ん? それはつまり『誰かの命を守る為なら自分の命をなげうってでも銀河連合を出来るだけ多く倒す』……でいいんだな?」
 はい--サンショウ六の眼には最早一片の迷いはなかった!
「その眼だ! その眼をわしは待っていた! じゃあ許可するん!
 ただし、死ぬ事は許可しない! 若い命は次を創るん為に残さねば隊長の資格なしだ、わしとしては!
 なのでこれからも生き抜け、山一サンショウ六!」
 了解しました--船内全てに聞かせる勢いで返事をするサンショウ六!
「いいの、サンショウ六?」
「雄の心は少しでもわかって欲しい、サンショウ子さん?」
「雌は一方的なのよ、サンショウ六?」
「お喋りするんな、二名! さっさと自分の所属するん分隊に付け! ただし、所属分隊のない者はわしの所に来い!
 いいな?」
「「「「「「了解しました!」」」」」」
 メデリエーコフ小隊は全部で六十名。そして、メデリエーコフ小隊以外の小隊九つの内、二つが甲板に集まる。それらを合わせると合計百五十。サンショウ六は百五十名と共に空から降る銀河連合と対峙する!
(僕は……もう迷わない? そうだろ、ラディヴェさん?)

一兆年の夜 第五十二話 光不変の先へと 後篇(乱)

「まだ我の知ってるリーダータイプじゃなくて良かったです」
「知ってる……ってことはやっぱりラディヴェさんは--」
 そんなことよりも先を進まなければいけない--神のみぞ知るのか、それ以上話すのを遮るラディヴェ。
(僕が質問しようとしたのはラディヴェさんは『竜宮』から来たのかについてなんだけどな? やっぱりあの反応ではそうかも知れない?)
 サンショウ六はラディヴェこそ古代から通じる『竜宮』の在処を知る者ではないかと睨む。

 未明。百獣型及び指揮官型を倒してから四の時経過。
「はあはあはあ、さっきの百獣型との戦いと今までの疲労で僕の足は思うように動けない?」
「とは言っても都合良く食べ物が落ちたりはしないのです。どこかに穴でもあればいいですのに」
 ないなあ--二名の表情は空腹で生気が落ち始める。
(腹減った、腹減った? 何か食べたい? そ、そうだ? この際は--)
「止めるんです、サンショウ六君。それは銀河連合の壺思いです。そうやって地面や壁を食べさせる事で君を銀河連合に変異させようとしてます!」
 そ、そうだった--サンショウ六はもはや冷静でいられない程にまで疲れ切る。
「にしても腹が減ります。『ヴィスター』が居れば少しは落ち着けますのに」
「『ヴィスター』って誰? 雄の名前みたいだけど?」
 実は雌なんです--改めて価値観が異なりすぎる事を再認識した二名。
「雌って? じゃ、じゃあその『ヴィスター』さんは天使族でラディヴェさんの恋者なんですか?」
 さ、さあ--頬を赤くしながら目を逸らすラディヴェ。
「ま、まあ空腹を紛らわすついでだから『ヴィスター』さんについてお話ししましょう? ど、どうせまだまだ先は長い訳ですし?」
「……そうですね。ではお話ししましょう。『ヴィスター』、いえ偉大なる血統の末裔『ヴィスティス・テッタリア』について」
 二名はどこまで続くかわからない道を少しずつ歩きながらラディヴェが言う偉大なる血統の末裔『ヴィスティス・テッタリア』についての話が始まる。
 彼女はラディヴェの居た空の惑星では『導者』と呼ばれし存在で、実質百五十年以上も長生き出来る存在。彼女は『龍道』のみならず『魔法』と呼ばれる『エーテル』と『マナ』の融合が織りなす奇跡も使える。それだけでなく『導者』は代々、身体能力と特殊な呼吸法を用いた尋常成らざる身体能力も併せ持つ。その中でヴィスターは双子の妹でありながらも同時代の導者の中では抜きんでており、『テッタリアの末裔』と呼ばれるに相応しい存在である。
 そもそも『テッタリア』は過去の惑星から来た一族で彼等は過去には『テンタウ』と呼ばれし一族。やがて空の惑星のとある現地で『テンタウ』は『テッタリア』と名字が変化してゆく。そんな『テッタリア』の一族は代々男系による万世一系。中継ぎで導者の雌が長に成る場合もある。ヴィスターは中継ぎという役割を揺るがす存在であった。
「あれ? どこかで聞いたような一族だね、『テッタリア』は?」
「これ以上は話せばそちらの歴史を変えかねんのでここまでです……我が居ること自体が歴史を変えていますかな?」
「ま、まあいいじゃないです? この際、僕も水の惑星に於いて自慢となる一族を紹介するよ?」
「一方通行だが、聞いても歴史に変化は起きないはずですが」
「代々続く万世一系の『天同家』のお話を?」
 サンショウ六は自分が知りうる『天同家』についてラディヴェに聞かせた。それによると現在三つの内、二つの国を支配する一族は皆『天同家』であり、支配体型は大きく異なる。
 まずサンショウ六が国籍を持つ真正神武は仙者と呼ばれる天同が最高官を務め、政が出来ない場合は副最高官と摂政が代わりをやる。その内の副最高官は必ず天同の者が務める。
 次に古式神武では真正神武と同じように最高官はある。だが最高官こそ一般生命でも可能。ただし、ここ古式神武には象徴制度がある。象徴には天同の者しか成れず、なおかつ万世一系の流れを汲む者でなければ象徴になれない仕組み。故に中継ぎとして雌が成る場合もあるが、女系は成れない。
「不思議な国々ですな。どちらも天同が実質の支配者なんですね」
「元々は同じ天同が三つの国に別れる時に彼等も三つに分かれたって聞きます?」
「それにしても天同とテッタリアはこうも類似しすぎます。まさか元々は同じ一族なんて事はないですよね?」
 それはさすがにやりすぎでしょう--二名はその説を完全に間違いだと断定した。
「テッタリアにテンタウ、それに天同……ん?
 そう言えば君は『仙者』なんて言葉を口にするけどあれはどうゆう意味ですか?」
「あ、話に入れるのは忘れた? それは--」
 突然、雷の鳴る音が二名の耳に響く!
「わわ? どうなってるんですか?」
「どうもこうも……う?」「どうしたの……ってここどこ?」二名は瞬きする内に花の大地に立つ。
「花? どうして花が……ここはまさか--」
 二名が花の大地を眺める暇なく花は二名に襲いかかる!
「この花も銀河連合だったのか?」
「奴等が花になるなんて朝飯前です! 本当に恐ろしいのは--」
「話は一旦中断するね? 花が相手じゃあ僕は自慢の徒足空脚も意味がない?」
「『龍道』で一掃したいがヴィスターとの思い出に似すぎたこの花園を払うなんて我には出来ません!」
 じゃあ一緒に逃げましょう--二名は花型銀河連合から逃れるべく蹌踉けた足を無理矢理動かしてゆく!

一兆年の夜 第五十二話 光不変の先へと 後篇(混)

「し、しっきかんがたあああああ?」
「ハンドレットタイプとリーダータイプ……まだジャネラルタイプが居ないだけましなのですね」
 百獣型と指揮官型が揃うのを見て二名の反応は様々--ある者は徒足空脚最強の銀河連合と近接戦最強の銀河連合を見て身体を打ち震わせ、ある者は淡々とする。
「サンショウ六君?」「何でしょう、ラディヴェさん?」「我はリーダータイプを相手します」「リーダータイプ……え?」サンショウ六は気がおかしくなったのではないかというような表情でラディヴェを凝視する!
「大丈夫です、サンショウ六君。我の住む世界ではあれの対処法は確立してます。信じて下さいませ!」
「で、でもあれは最強の銀河連合なんだよ? 僕らの住む世界の仙者でも勝てるか勝てないかわからないくらい--」
「いえ、我はあれよりも強い銀河連合を知ってます。
 ですが、今はそんな話をする場合ではありません」
「ありませんって……うわ?
 いきなり……わああああ--」
 二体同時に仕掛けないで下さいまし--ラディヴェは右手の平から文字のような物を出して、サンショウ六から突き放す!
「凄い? その手から出る文字は何なの?」
「今はお喋りの時間はありません。とにかく我は一名でリーダータイプを倒して見せます。サンショウ六君は申し訳ありませんが、ハンドレットタイプを一名で倒して下さいまし!」
 百獣型なんて無理だよ--指揮官型よりは相手出来るとはいえ、それでも強い銀河連合を押しつけられたサンショウ六。
(弱音は吐けないよね? こんな姿を隊長達が見ていたらきっと怒っていただろう? いっそのこと強音を吐かなくちゃ?)
 さあ来い、百獣型--覚悟の据わったサンショウ六を見て百獣型は少し怯む!
(どうやって戦うか? 僕は学問が好きじゃない? なので数学者の名前とか詳しく知らない? でもコウモ……危なかった?
 コウモ・リックマンの名前は知ってる? けれども今はやるしかない?)
 先足を許してしまったサンショウ六だが、すぐに調子を取り戻す--逃げ決めを受けるよりも速く右前足による引っ掻きで百獣型を後ろに下がらせる!
「避けてくれた? 僕は一族代々から強いと思う銀河連合には油を断たないようにしている? 僕はお前ではないにしろ銀河連合全体に怒りを抱えてるんだ?
 その怒りを少しでも発散してやる?」
 本当ではない事を敢えて言うサンショウ六--それは自分自身への怒りをぶつける事で油断ちを防ぐ為。
 二つは気の面では互角となり、次の出方を窺うように睨み合う--少しでも呼吸の波長を乱さないよう慎重に!
(技術面は僕に利はない? 力の面も速さの面も……だけど心なら勝てる?
 たぶんじゃなく確実に心の面では? だけど頼っても勝てないことはリックマンが証明してるんだ? 一本化してはいけない?
 僕がとる戦いは--)
 その先を考える暇なく二つは勝負の一撃を懸けるべく同時に踏み込む!
 百獣型は両前足で頭を潰しにかける--サンショウ六がとった一撃は頭突き!
 両者の攻撃が交差する時……決めたのはサンショウ六であった!
(イデデ……最初から命を捨てる頭突きであいつの動きを弱めるのが狙いだ? 僕の頭突きを只の頭突きと思ったのがあの銀河連合の油断ちだ? あの頭突きは駱駝族の動きを研究することで誕生した山一家秘伝の頭突き……わあ?
 自慢話に酔ったら良くなかった?)
 予想以上の突進力を発揮した頭突きを首に受けても百獣型は攻撃を止めない。だが、神経をやられたのか両後ろ足が立てなくなった!
(文字通り動きを止めたんだな? ここは一気に倒して……いや待て?
 『必ず倒せる』と思わないようにしなくちゃ? ここは慎重に近付いて本当に動ける状態でないか確かめないと?)
 用意なしの接近をせず、構えながら足を進めてゆく。
(ど、うやら本当に後ろ足は動けないみたいだね? 良かったな、ここはゆっくり息の根を止めないと--)
 緊張を弛んだ瞬間を狙うように百獣型は口から液体を吹き付ける! ところが都合良くサンショウ六の両眼に一滴も当たらない!
「唾……そんなことよりも先にやらないと?
 えっと、死なせたことに怒りを感じていいです?」
 サンショウ六は百獣型の首に両前足を引っかけると力一杯締め付ける--骨の折れる音が数回するまで!
「はあはあ、勝てたんだね?」
「どうやら一名で出来ましたね、サンショウ六君」
「ラディヴェさん? 怪我はないの?」
 心配無用です--サンショウ六と異なり、冷や汗一つかかないラディヴェ。
「で、でも相手は最強の……え?」
 サンショウ六は指揮官型の死体を見て驚きを隠せない--あちこちに文字のようなものを刻まれて息絶える様はどのような方法で死なせたのかをいくら頭で探っても混乱する程に!
「これが我の使う『龍道』です」
プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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