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一兆年の夜 第百十九話 日は又、昇る(七)

 午後十一時五十三分三十二秒。
 場所は拠点型周辺。
 新楠木傭兵団本隊は前線部隊の予想を覆すように前線部隊の救出を始めた。此れには理由があった。其れは新楠木傭兵団の行動に対して旧楠木傭兵団の前身だったシャーク傭兵団が突如として参戦。其れに依り、北海周辺を討伐するという本隊の戦略は其の侭にシャーク傭兵団が引き継ぐ形と成った。
 如何してシャーク傭兵団が突如として北海への参戦をしたのか? 其の背景には真古天神武がICイマジナリーセンチュリーにして三年前に水中軍を設立。以来、シャーク傭兵団の活動範囲は徐々に狭まりを見せた。本来は海という海はシャーク傭兵団自身の独壇場だった。他の傭兵団との鬩ぎ合いで時として活動範囲一つ一つを見直したり、効率化する場合は傭兵の数を増やしたり、効率化よりも労働時間の削減の場合は他の傭兵団に任せて自分達が得意な所のみを重点的に良くしたりもした。だが、国が水中軍を結成すると成れば話は別だ。特に活動範囲が広く成る毎に傭兵団の役割は時として少なく成る。特に楽な地域はわざわざ私設武装組織に活動させるよりも活動資金がほぼ潤沢な傭兵団が担う方が効率が良い。結果、シャーク傭兵団は北海に乗り込む口実が出来た。勿論、彼等は北海を奪還する予定はあった。けれども其れを実現するには余りにも他の地域を軽視してしまいかねない程に代償が大きい。特に長年銀河連合が占拠していた事は環境を更に脅威な物とする。そんな北海だが、シャーク傭兵団は真古天神武水中軍の活動範囲の広がりを受けて漸く本腰を入れ始めた。其れは同時に新楠木傭兵団が拠点型周辺の銀河連合を討伐する意味を無くしてゆく。
 其れでもやはりシャーク傭兵団が北海に此処迄本腰を入れる理由にしてはまだ強くない。シャーク傭兵団が北海に本腰を入れた真の理由。其れが元々所属していた楠木ホエール成が築いた旧楠木傭兵団を守れなかった悔いから二度と彼等のような存在を出さない為に国への働き掛けをして実現に至った。要するに真古天神武水中軍はシャーク傭兵団直々の要請と楠木ホエール成の思いが彼等に受け継がれた証明でもあった。
 其れは沈みゆくお日様が登り始める事を意味していた!
「待っていてくれ、ヒラメ来達よ!」
「如何やら旧楠木傭兵団のやって来た事は彼等の意志を飛び越えて俺達の力と成った訳だな!」
「魂とは決して意味が無い物ではないのです、ヒラメ来さん!」
「全く姉さんの魂は如何してお節介焼きなんでしょうね?」

 五十六日午前零時十八分三十三秒。
 場所は拠点型大樹型区域。
 第三中隊は激しくも尚且つ命を燃やして戦い続ける。勝てないとわかっていない程に彼等は強い気持ちでぶつかる。其の圧倒的な攻撃力はとうとう大樹型を叩き折る程。けれども、前線部隊が倒したい脳型は其処にはない。故に第三中隊長であるイカロムは二本も足を切断されつつも戦う足を止めない。墨を吐く事も出来ない状態でも戦う足を止めない。
「笑ってしまう位だ。お前達と共通するのは戦いが大好きで大好きで仕方のない所だ。此れ程迄に銀河連合と分かり合える時があるとすれば俺達生命は戦ってでしかわかり合えない。俺はお前達にわかる迄叩きのめすぞ!」
 大樹型は叩き折られた。けれども、銀河連合は大樹型を喰らい食欲を満たしてでも継戦。同胞の命すらも軽々しく扱う彼等は最早分かり合う事すらもまま成らないのではないか? だが、一般生命はそうは思わない。そう思ってしまえば銀河連合と化してしまう。故に戦いが好きな生命でも銀河連合と分かり合えるとエラ会話で伝えてしまうのだ!

 午前一時三十八分五十六秒。
 場所は拠点型拠点型区域。
 其処でも激戦は繰り広げられる。其処では数が攻略前の八百から八に減少する中で其の拠点型にある心臓型を倒す事に成功した第四小隊及び第五小隊。だが、此処も脳型は居なかった。そして包囲される残り八名。第四中隊長サバッツ、第五中隊長ブリ郎は共に死を覚悟して何も持たずに戦おうと決意した。勿論、他の六名も同様である。
「まあわしは此処まで生きただけでも大した物ですな」
「最後は意気込みか、自分には好かない事だ……けれども最後の瞬間位は感情に溺れるのも良いかも知れない」
 老い故に命を惜しまない者と頭脳労働故に慣れない肉体労働を試みようとする者。彼等は経験則と叡智を以って銀河連合の包囲網に抗うのだった!

 午前二時十九分四十三秒。
 場所は拠点型脳型区域。
 第一中隊と第二中隊はとうとう脳型に到達。だが、戦いは此の時刻に成ろうとも終わらない。既に誰もが満身創痍で今にもやられそうな状態で居た。
(脳型は、脳型は見えない攻撃が出来るット。其のせいで何名もの傭兵が外相ない状態で想念の海に旅立ったのかわからないッテ。此れが未知なる力なのか、方法なのかッテ。俺達は結局の所、結局の所は親父達の世代同様に意味もなく死ぬ事は決まっていたというのかット!
 いや、死ぬのは早いッテ。此処迄に死んでいった傭兵達の思いは此の程度ではない筈だッテ。彼等は心から望んでいたット。だから、だから魂は決して死んでは成らないッテ。死んでいないのではないット。俺達が此処で諦めたら、諦めたら今迄の事が全て意味を喪い、失ってしまうだろうがッテ!
 だからさあ、だからさあせめて死ぬ瞬間迄は俺達の肉体に力を分けてくれええット!)
 既に満身創痍且つ決定的な策もない残り十一名。其れでも全生命体の希望として最後まで命を燃やすのだった。
「やりますか、ヒラメ来さん!」
「生きてきた証は、必ず残す!」
 そして、十一名の心の魂は肉体に宿して、再び動き始める。此れを見て脳型を始めとした銀河連合は戦慄を覚える。既に此方の勝ちは決まっている。なのに如何してこうも抗う事が可能なのか? 銀河連合達の心は竦む様に感じられる。奴等はヒラメ来達が決定打を浴びせても倒れない心に逃げ出したい気持ちを表すように全身を振るわす者達が増え始めるのだった。そんな銀河連合達を鼓舞するように脳型は慈悲の必要性もなく、触手攻撃を仕掛ける。
 そんな攻撃が来るとは予想出来ない十一名は最早、対応する力も残されない。普通ならば其の攻撃を一度でも受けただけで終わりは確実だろう……普通ならば!
 其の時、一瞬だけ触手が寸前で止まる--外から新楠木傭兵団本隊がぶち破って駆け付けた!
(あれは……あれは本隊のみんなかッテ!)
 其れは脳型が前線部隊の十一名に気を取られた為に意識するべき外側を軽視した事で起こった出来事。そして、本隊は瞬く間に脳型に無数の銛を指して倒した!
「疲れた、折角の俺達の行動が……そんな御都合主義一つで意味を無くしてしまったか!」
「いや、意味は無くなっていない……ヒラメ来!」
「そうだ、ヒラメ来。お前達の行動が無ければ僕達楠木傭兵団は拠点型を外側から侵入する事も適わなかっただろう!」
「そうです、ヒラメ来さん。貴方の提案があったからこそ僕達は外側に居た銀河連合を焦らずに掃討出来ました」
「全くよ。外でも死んでしまった命もあるの。其れがやがて私達を大いに助けるきっかけを与えたのだからね!」
「其の通りだ。其の証拠に見ろ、俺達を導くお日様を!」
 眩しい、日の出は眩しい物だったのか--其れはヒラメ来にとって忘れ難いモノとして生涯を刻み込む早朝の日の出だった!

(こうして戦いは終わッタ。俺達は数多の傭兵を死なせてしまッタ。だが、だが三つに分かれた内の二鰭に居た第三、第四、第五の中隊長殿はみんな生き残ってしまッタ。如何やら、世界観補正は俺達に味方するように働き始めたのかも知れないッテ。まあ、まあもう十分だッテ。どんなに都合の良い結果であろうとも、あろうとも俺はこう考えるようにしたッテ!
 あの時見た日の出は正に十五の年より前に死んでいった旧楠木傭兵団の魂が浄化した姿……だッテ。死んでしまっても何れ魂を受け取るように俺達生命に宿って悲願を達成してくれるッテ!
 そうだ、そうなんだッテ。俺達は魂に報いたんだよ、だからこそ北海に日が登るのだット!

 ICイマジナリーセンチュリー二百七十七年五月五十六日午前二時三十分零秒。

 第百十九話 日は又、昇る 完

 第百二十話 天地相為す 地同翔和は旅立つ に続く……

一兆年の夜 第百十九話 日は又、昇る(六)

 午後五時十八分三十二秒。
 場所は拠点型心臓型区域。
 其れは旧楠木傭兵団最後の区域。其処で更に半数の命を糧に前線部隊は心臓型を倒す事に成功。だが、本番は此れからだった。
「ヒラメ来さん、やっぱり拠点型の内部に居た拠点型を倒すべきでしたか?」
「だから目的は此の拠点型を倒す事だ。其れに此の数に成ってしまったんだ。まんまと奴は心臓型無しでも動ける状態か或はもう一体の心臓型が何処かに居る証拠だろう」
「銀河連合め、正々堂々という言葉はそうゆう意味じゃないぞ!」
「叫んだって頷きませんな。叫ぶよりも何か案はありませんか?」
「……脳は如何だ?」
「脳、か」ブリ伝が伝えた何かにヒラメ来は何かを閃きそうな感覚に陥る。「だが、拠点型と俺達が必ずしも同じ個所に脳と心臓を配置しているとは限らないな」
「其れでしたら僕の中隊に所属する第七小隊の生き残りに脳内地図が得意な生命が居ます」
「連れて来てくれないか?」
 わかりました--格上に勝つ為なら頭を捻る……其れが力が及ばない者の戦いである。
 其れから中隊長級の五名は十の分欲しい所を僅か五の分と二の秒で脳内地図を形にして脳型のある地点を三つに絞った。何故か? 其れは動き出した次のヒラメ来が考える事で説明される。
(心臓型を倒した時に僅かだが、銀河連合が匍匐前進する速度で迫って来ているのを見たット。あれ以上は時間は掛けられないット。だからさ、だから俺達は拙く速まって脳内地図を描いたット。彼も同意してくれたが、待たせてくれるほど世の中は上手くいかない物ット。其れに十の分掛けても銀河連合の包囲網を突破出来なければ俺達に生き残る道は薄いッテ。ならば生き残る為には拙く速まるしかないット。
 さて、さてさて三つに絞った理由を少し解説すると第七小隊の小隊長を任される齢二十四にして二十三日目に成るエウク蛸族のサカリサー・チングは脳内で地図を描くだけでなく各地の遊戯大会に於ける勝利予想でも絶妙過ぎる予想を立てるット。其れだけに、其れだけに彼の予想と脳内地図は俺達にとっては有難い物ッテ。ん、ああ三つの地点の事だったよなット。誰に向かって考えているかわからない俺も居るット。
 三つは其々、其々なあット。一つは従来の生命の頭から手足に掛けての配置を指すット。其れだけに心臓型よりも先でちょうど俺達とは、俺達が入って来た入り口とは反対方向に脳型があるという予想だット。単純で簡素な理由からして楽とはいかない迄も三つの中での激戦度は限りなく低めだット。二つは中に居る拠点型に隠れているという予想だッテ。此方は拠点型を相手に七割も死んだ事もあって全滅は避けられないッテ。けれども可能性としては極めて濃厚だット。銀河連合の考えそうな策と考えればなッテ。最後は中に居る大樹型に潜むという所だット。此方はサカリサー曰く外側だけで判断が可能で緊急離脱に向くット。が、だが奴等との戦いは液状型に感染する事と直結するッテ。そうゆう訳だから一つ目に比べて生存率は低いット。液状型の恐ろしさは生き残ったとしても、生き残ったとしても感染者を通じて内部から食われてゆくという所にあるット。
 其れで俺達が向かうべきなのは……三鰭に分かれてだッテ。三つ目は戦い好きで観戦しようがしまいが如何でも良いイカロム率いる第三中隊が単独で向かう……死ぬ気だなット。二つ目は激戦もあってブリ伝とサバッツの極めて頭脳と経験を活かした二中隊が向かうッテ。彼等だって無事では済まないッテ。最後の一つ目だけは俺の率いる第一中隊とタイン六世率いる第二中隊が突入するッテ。然も此方だけは補給小隊一つも付けない状態で突入するから弾が切れたって、弾が切れたって文句を言う資格はないット。
 さあ、てット。俺達は無事でいられるかッテ?)
 突入前から無事ではいられない事を知っていた。だが、拠点型を倒さないと勢いは確実に成らない。倒せない場合は士気は大きく上がる事なく、新楠木傭兵団は北海からの撤退を余儀なくされる。そんな博奕をヒラメ来は打った!
 残り二千一……

一兆年の夜 第百十九話 日は又、昇る(五)

 午後二時五十三分十八秒。
 場所は拠点型拠点型区域。
 其れはヒラメ来達にとって初めてと成る拠点型内部に拠点型を設けるという異様な区域。心臓型がまだ見えぬ中でまるで予備の拠点型を作り出すように銀河連合は同型を体内に製造した。大樹型を作り出すだけでも一泳ぎを誤れば己を貫きかねない行為というのに銀河連合は完全に北海を実験場として使用していた。そして--
(ひょっとすると矛盾山の話に出て来るように既に北海は銀河連合其のモノと化してしまったのかッテ!
 そう考えないとこんな膨らませ過ぎた風船が破裂するような行いを、そんな行いを奴等が普通に出来る所から見てアリスティッポス大陸北海は既に海型銀河連合に、海型銀河連合に生まれ変わったと思わなければいけないット。だとするとサケ仁達が無事で、無事でいて欲しいと願うのは俺だけじゃない筈だット。確実に無事という可能性はないッテ。確実じゃないからこそ生涯は、生涯は崖を登るが如しッテ。勿論、勿論此れは地上種族目線で出て来た言葉だッテ。水中種族目線で例えるなら、例え用には如何成るかなッテ? 濁流ット? 津波ッテ? いや、一つだけあッタ!)
 何、やっているのですか……ヒラメ来さん--タイン六世は思考中のヒラメ来を現実に戻してゆく。
「あう、お? いかんな。俺とした事が……あうぶ、動いたのか?」
「いえ、向こうも様子を窺っている所です」
「俺は筆頭とは言えども他の中隊への命令権はない!」
「其れでも初期要員として十分に顔が広いのです」
「各々が勝鰭にやらないというのも如何かと思う。というか、筆頭は、あうぶぼ?」
「如何しましたか、ヒラメ来さん?」
「ほら、険しい道の事を--崖を登るが如く--と呼ぶじゃないか」
「ああ、僕は既に例えを変えておきました。あおぶぼ、確か--滝を登るが如し--と」
「良し、其れだ!」右鰭を強く鱗に叩いたヒラメ来は次のように伝える。「作戦名は滝登り突破戦だ!」
「又、逃げるのですね」
「拠点型の中にある拠点型を相手にするのは理由に成らない。贅沢をしないのも戦いの基本だ。俺達は最初に決めた作戦の最終目的のみに集中する。途中で変更に成る場合は余程の測り知れない自体出なければ認められない。此れも常識だぞ!」
「わかりました。其れで他の三名を呼びましょうか?」
 そうしてくれ--独断で進める訳にはゆかない特別扱いを好まないヒラメ来だった。
 三名はヒラメ来の所に集まり、僅か二の分と十八秒で作戦会議は終了する。
「戦わずして先に進むのは好かん。俺達第三中隊は勝手にやらせて貰う!」
「とすればわしの率いる第四中隊は第三中隊のお守りをせねば、な」
「だが、作戦の目的は先に進む事だ。長期戦に持ち込めば先に進めなく成る事は益々必至。わかっているな、目的を?」
「全く好かない雄だ。さぞ、雌にもてないと見ている!」
「一応、妻子は居るのでもてる必要はない」
「ウボボブブ」悔しそうに気泡を上げるイカロム。「烏賊は水中種族で最も端正揃いだぞ!」
「厳つい顔ばかりの筋の違いでは?」
「五月蠅い、酢に浸かりそうな鯖め!」
「こう見えて怠け者の鯖でさぞ銀河連合に美味しく食べられそうですぞ」
 ウグゲボベ--単細胞な位に単純なイカロムは悔しがる以外に表現のしようがなかった。
「溜息吐けたら吐きたい。兎に角、向こうさんもそろそろ動き出している頃合だ。急ぐぞ、お前達!」
「ヒラメ来さんと僕達の後を付いて来て下さい!」
「少しだけ拠点型に痛みを思い知らせてやる!」
「今度こそ死ぬかな?」
「世界観補正は果たして何時迄傍観者で居られるか?」
 其れから五千名程の死者を出しながら拠点型区域を突破した前線部隊。残り四千八……

一兆年の夜 第百十九話 日は又、昇る(四)

 午後二時零分三十秒。
 場所は北海。
 拠点型の外を囲い込むように新楠木傭兵団本隊は展開する。団長である菅原サケ仁、次期団長である楠木ホエール行、第一郡長のゴデンノヅチサンマジロウ、そして第一大隊長アンコナ・アエンコは次のような会話を展開する。
「一万の傭兵を拠点型内部に送ったそうだな、アンコナ」
「其れが何か?」
「一万と言えども貴重な一万だぞ。本来ならば--」
「待てよ、サケ仁。そうゆうのは参謀がとやかく言う話だ」
「そうですよ、其れに提案を促したのは他でもない自分です!」
「拠点型相手に一切鰭を抜かないのはわかる。一切牙を抜かないのはわかる……だが、拠点型を急いで叩き落すだけ余裕が無いと考えるのか?」
「其れは僕の責任だ、サケ仁。元々、こうゆうのは僕の父等旧楠木傭兵団の念が無きを晴らす為に行われた遠征だ。あの戦いを本望としようとも残された僕達は如何しても割り切れる程大人じゃない。結果としてこうゆう道を泳いでしまう」
「其れは俺も同じだ。だから結団の時にアリスティッポス大陸北海を必ず征する事を明記していた。其の為にしか新楠木傭兵団は誕生しなかったと言える」
「でも戦う度に思い知らされます。銀河連合の凄まじい可能性の数々と展開を。僕は此の傭兵数なら必ず北海を征する事が出来ると思っていたのに!」
「世の中に必ずは無くてよ、坊や。常に準備が十分じゃない状態で生命は困難と立ち向かう。準備のまま成らない所で試練と立ち向かう。そして、持てる限りの知恵を駆使して乗り切って行く訳なのよ」
「ああ、向こうが此方よりも十の倍以上の数である事は遠征を決める前から想定していた事。其れに遠征を決めたのは単純に運営面で状況が芳しくない訳ではない」
「そりゃあそうだろう。時間が欲しいのは銀河連合も同じだしな。其れに十五の年より前に鯨型と指揮官型との混合型が出現した。此の年だと一体どんなのが出て来るが想像も付かない」
「北海は銀河連合にとって様々な種類を試す為の絶好の実験場みたい」
「だから平気で僕達を食べる事が出来るのです。食欲の箍とか其れで済ませる話じゃない。彼等に心が無いのですか!」
 あれば千百の年も俺達生命は戦う運命に無い--其れで済むならどれだけ気が楽だったのか……其れが此の世の真理である。
「せめて父上達が前回の拠点型内部について詳細に語った事がわかったら良かった、が」
「十五の年より前に二百名全員が銀河連合に喰われたと聞きます。一体如何やって其の情報を知り得るというのですか!」
「予測しかない……が」サケ仁は次のように断言する。「ヒラメ来ならば十五の年より前の念無きを晴らす事が出来る!」
 ヒラメ来さんを過ぎたる信頼、か……僕も同じだ--ホエール行も平ヒラメ来の力量を其処迄認める模様。
 果たして其の観方は正しいのか、其れとも只の過ぎたる信頼に終わるのか……

 午後二時十五分十八秒。
 場所は拠点型大樹区画。
(拠点型の中に、中に大樹型を生み出すという無茶苦茶が可能なのかッテ。銀河連合は北海を完全に、完全に己の、己のモノとしつつあるット。サケ仁達と同じく遠征を前倒しで良かったかも知れないッテ。こうして俺達は大樹型から生える果物型銀河連合から飛び出す種型を超越した卵型銀河連合に依って翻弄されているット。最も其れは一の分迄で、一の分以降は拠点型との戦いを想定した水中でも発射が可能な望炎砲と呼ばれる引き金を引くと口から炎を出す奴だッチ。本来ならば適性上は、適性の上では水中の中で火を噴く事は出来ない。周りの水分が発火を防ぐ為にッテ。水中内で火を噴く事例もあるがあくまであれは燃える氷という条件があって可能とするット。地上種族に扱う事が難しい燃える氷も俺達水中種族はあらゆる方法で用いられるット。其れが燃える氷を軸線上に散布して、散布してから望炎砲を発射するというやり方ッテ。此れで水中内で火を噴く事が出来るッテ。但し、散布するという時間を要するのが極めて効率性に於ける課題と成るッテ。散布班を襲撃されたら瞬く間に、瞬く間に望炎砲は使えないット。其れに此奴を使う位なら望遠銛を活用した方が遥かに迅速な物だろうッテ。
 とまあこんな感じで、こんな感じで今の状況を説明したット。俺は奇策として望炎砲の使用に踏み切ッタ。然も、中隊長以上と一部の班にしか望炎砲に依る作戦指示は聞かないのだから驚く顔を見るのは楽しみッテ。だが、だがなあ、だが悲しいかなット。戦いは、集団戦は楽しむよりも先に任務を果たす事が優先されるット。だから大樹型区域に入って直ぐに俺達は望炎砲に依る周辺の焼き討ちをたったの一の分だけやってから早々に此の区域を突破するしか道がないット!)
「ヒラメ来さん、あれだけでは大樹型は簡単には倒れません」
「わかっている。あくまで果物型に依る広範囲の散布から逃れる為の方法だ。其れに液状型も気掛かりだ」
「やはりそうですね。ヒラメ来さんも液状型は恐ろしいと考えておりますね」
「だから……感染してそうな者達には壁役として銀河連合の猛攻に耐えて貰う」
「……では他の中隊長の皆さんにもヒラメ来さんの提案を伝えて行きますね」
 ヒラメ来の提案にタイン六世以外の三名も呑んだ。いや、想定内だった。故に三名は生命の本質と葛藤しながらも誰か一名以上は同じ意見を述べる者を求めていた。故に其れを聞いて直ぐに実行に移した!
「では……前に逃げるぞ!」
 こうして第一から第十五迄を壁役に任せ、残り総数は九千二十三名と成った……

一兆年の夜 第百十九話 日は又、昇る(三)

 午後一時五十三分十八秒。
 場所は拠点型内部。
 其処はまるで壁に彫られた彫刻のように肌壁中に様々な顔をした銀河連合が浮かばせて侵入者達を見つめる。ヒラメ来が率いる第一中隊を中心とした前線の中隊五つが内部へと深く潜り込む。ヒラメ来のとった提案とは拠点型を叩いて後は各個撃破をするという後先も考えない代物だった。然も実践として自らの中隊が責任以て拠点型内部へと潜り込んで其れ以外は全て補給線を守りつつも周辺の銀河連合の部隊を各個撃破しながら打ち勝つという物だった。勿論、此れには反対の声が上がった。何が反対だったのかは侵入して間もないヒラメ来の思考から読み取れる。
(俺達第一中隊のみで、のみで拠点型を叩くつもりでいたのになッテ。なのに第二、第三、第四、そして第五中隊が続々と突入を志願して来たット。単独での突入に奴等は反対の異を唱えたんだッテ。俺は妥協したのだぞッテ。本当だったら俺一名だけで拠点型内部に侵入して心臓型一体のみを倒しに行って後は拠点型を構成する全ての要素を一つ一つたたく予定だッタ。だが、俺は中隊長のみだット。其処は流石に遊撃員がやるべき事を俺みたいな奴がやってはいけないット。軍隊だろうと傭兵だろうと単独行動を取って良いのは圧倒的な力を初めから要する孤独者だけだット。其処で俺は大隊長であるアンコナに此の提案をした。すると彼女は其れを極秘にしなかッタ。結果、切り込みの第一中隊だけじゃなく第二、第三、第四、第五中隊が続々と志願して来たッテ。全く其のせいで凡そ千名もの傭兵の命を俺達が担う事に成ッタ。任務は果たす、死んでは成らない……出来たら苦労はしないけど、苦労はしないんだけどット。
 其れでも俺は中隊長として肌壁にて俺達を見つめる銀河連合共の顔が気味が良い物だと感じないット。其処で各中隊長との僅か一の分にも満たないエラ会話で、エラ会話で各小隊で壁役が担いそうな小隊を一隊ずつ周りで固めることを決定したット。最も壁と言えども側面だけを固めただけだ、側面だけだット。前方と後方は適度な空間を持たせて陣形を保つ訳だッタ。最も、どんな隊列にも完璧と言える形はないッテ。銀河連合は恐らく、恐らくは其処を付くだろうッテ!)
 ヒラメ来の想定通りに壁肌にある核銀河連合の顔はやがて首を出し、肩を曝け出すと続々と降りて来るように突入部隊に強襲。
「出たな、最初は全て迎え撃て!」
 ヒラメ来がそう指示を出した理由は一つ。壁肌に浮かぶ銀河連合の顔は本体が出ても再び補充するように別の顔が浮かび上がるか如何か……其れを確かめる為にあった。其の為、敢えて移動速度を緩めて此れを迎え撃ちながら確認する。
「ヒラメ来さん、奴等を迎え撃つのは余りにも体力の消耗を齎します!」第二中隊を務めるのは齢二十七にして八の月と九日目に成る雄略鯛族の青年タイン六世。「ほら、見て下さい!」
「やはり思った通りだ。次から次へと顔が浮かんでは体を出して……良し、其れがわかれば俺達は早速ではあるが真っ直ぐ逃げるぞ!」
「真っ直ぐ……要するに何でしょう?」
「そんな事もわからんのか、日焼け鯛め」第三中隊長を務めるのは齢三十にして三十日目に成るルケラオス烏賊族の中年イカロム・イカン。「先に進むように逃げるんだよ、撤退とは違う!」
「笑えますね、困った第一中隊長さんだ事」第四中隊長を務めるのは齢四十三にして八の月と十四日目に成るルケラオス鯖族の老年にして最年長且初期要員であるサバッツ・サバラン。「まあ逃げる事は別に前進する事と変わらないのかも知れませんね」
「……先を急ぐのだ」淡々と広報員に伝えるのは第五中隊長を務める齢三十一にして十の月と十七日目に成る海洋藤原鰤族の中年藤原ブリ伝。「此れ以上の戦闘は浪費と変わらない」
 こうして前線部隊は三十五名の命を以って先へと進むのだった……残り九千九百八十一名。
プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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