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一兆年の夜 第九十七話 恐るべき発明(九)

『良いか、二名共。わしは無碍に命を散らしたりはしないっち。わし自身は電撃望遠弾を使った後に無事に生還してみせるっか。だが、お前達が居たらあの子に火を点ける事は果たせないって。銀河連合はお前達の命を突け狙うっち。幾らキリモンが軍者だからってバレイズはそうはいかんっち。世の中の全ての生命が希望に成るのは早急であるように強いモノ達が必ずしも強くいられる保証は何処にもないっけ。若しかすると強さを証明する前に果てるのが関の山だっか。だからこそ此処はわし一名で行くっき。わし一名であの子に点火するっか。其れが……わしが果たすべき清算じゃった!』

 午後二時零分零秒。
 キリモンとバレイズは裏島を包む恐るべき光の雲を確認する!
「此れが……コケッ区博士が生んだコケッ区式電撃望遠弾第一号の威力!」
「何て衝撃波だー!」余りにも強大な力は三隻の蒸気船を揺らして一部海に落っこちる寸前まで追い詰められる程。「俺達の希望は……時としてあのような忌々しいモノへと変貌するというのかー!」
「コケッ区博士は……いや、コケッ区博士は今でも生き続ける!」
「あ、当たり前だー。先生は日の出の時間帯に言ったじゃないかー。若しも死んでしまったら……あれこそ真実ではない言葉じゃないかー!」
「だろうな。私達は時として……いや」敢えて自らが頭脳労働者である事を強調するバレイズ。「私は時として行き過ぎた頭脳はやがて身に余る物を生み出す事も知らなくてはいけないのだと気が付いた!」
「先生は其れを示す前に全ての生命に自らの能力の証明を始めたー。高過ぎる能力は時として横に並ぶ生命が居ない状態を生み出すー。天同家ならまだしも俺達一般生命にとっては孤独でしかないー」
「ああ、そうだ。私はこうも考える」バレイズは交流について一説を語る。「誰かと誰かが出合い、語り、結ばれる古くからの行いは時として自らの能力を見つめ、他者を理解し合うきっかけを生み出す。自らが他者と比較して井の中の蛙族である事を自覚する為に」
「良くわからない事を口にするなー」
「だが、事実だろう。私だって横に誰かが居ないと孤独を感じる。いや、正確には自分の能力は若しかすると此処より外では下から数えた方が早いのではないかって安心出来ない思いが何時もこびりついて困る!」
「話が長い上に区切らないと何言ってるのかわからないー」
「済まないな。私も如何やら博士同様に他者との会話に慣れていないのかも知れない。いや、違うな!」此処でバレイズは満面の笑みを浮かべてこう感謝の意を表する。「有難う、キリモン君。お陰で自らがまだ井の中に閉じ込められた蛙族だって気付く事が出来た!」
「恐いなあ、いきなり笑顔で迫ったらー!」バレイズの笑顔に圧倒され、キリモンは話を戻す。「兎に角だー。コケッ区先生は横に並んでくれる生命を求めていたってのも事実だし、寧ろ本当は横に並ぶものが居ない事を証明したかったのかも知れないー!」
「だろうな。誰だって己は優秀だったのに突然、上には上が居る或は横に並んでくるモノが出現して恐がるのだな」
「そうゆう意味で俺と先生が互いに仲が上手く行かないように見えて上手く進展していたのはきっと--」
 其れ以上は蛇足に成る為、最後はキリモンの心の中と禾野コケッ区が遺した最後の手帳を紹介して緞帳を下ろそう。
(誰だって上に誰かが居る事を恐れるー。何故ならそいつは自分よりも先を行き、自分に何かを言いつけて迷い惑うからであるー。
 だが、下に誰かが居る事も恐れるー。何故なら下の者達は簡単な事も出来ないのかって己の中でそう見えてしまうからであるー。そうして下の者に無理難題を言って余計に下へと追いやってしまうー。成長を促す筈が成長させまいと妨げるようにー。
 其れから並び称される者も恐れる。並んでいると常に余裕が持てずに先を行こうと上を行こうと自らの能力を弁えずに突っ走るー。競い合う仲間だと思えばそうだけど、逆に少し油を断っていると直ぐに先を越す存在だと思うと此れ程恐れる者は居ないー。ひょっとすると己自身が見えなくなる可能性だって有り得るー。其れ位に並ぶ者達は恐ろしく思えるー。
 此れは良くある世の常ー。俺達は此れを自覚しながら生き続ける。上からも言われ、下には強く圧力を掛け、横には熱が出てしまう程にー。そうして辿り着く先……其処には希望何てないー。
 其れに気付いたある少し優秀な生命は一計を案じるー。だが、その一計を図る中で自らの罪に気付き始める。そして命を懸けて生産を果たしてゆくー。其の生命は其処で初めて自らも又、凡庸である事に気付いたー。そうだ……誰も尖っちゃいないー。尖っているように見えて実は何も知らないー。だからこそ其れに気付く為に他者との交流を欲するー。自ら凡庸である事に気付く為にー!
 其れでも、俺は彼の死を認めないー。彼は俺の中では偉大で越えられない壁として人生の終わりから想念の海に自我を取り込まれようとも刻み込まれてゆくー。誰が何と言おうと俺は主張し続ける……禾野コケッ区は今もまだ生き続ける--あの白き炎の中でずっと!

『--この石板が見付かったという事は既にわしは想念の海に旅立った後という訳だ。
まあ仕方のない話だ。わしも又、一生命体じゃ。如何やっても永遠には生き続けられ
ない。誰かの記憶に刻み込まれない限り、永遠に生き続けるなんて夢のまた夢という訳
だ。
 さて、あの子が。つまり君達が見たであろうコケッ区式電撃望遠弾第一号の事だ。
あれが当初のわしの計画通りに同胞達に向けられたならば真古天神武も流石に静観は
していられずにより一層軍備への増強に舵を切るだろう。其れがわしの狙いだ。わしは
前にも紹介した通り、全ての生命には希望があると主張しただろう。其れを実現する為に
君達全生命体には希望に成って貰わないといけない。其れが悠久の時を経て目覚めて
からでは遅い。時既に銀河連合は水の惑星中の生命を喰らって悠久を約束された生命
の命脈は断たれたも同然だ。そう成らない為にわしは一計を案じた。
 だが、若しも計画を大きく外して当初とは異なる結末を迎えたとしたならばわしは
わし自身が思っている程に優秀じゃない事を知ってしまった後だろう。其れも又、結末
として受け入れよう。何故ならわしは心の底で恐れているのかも知れない。誰かがわしを
超えてわし以上の事を成し遂げようとするのを。わしは自らの能力を過信する余り、他者
との交流を恐れていたのかも知れない。何故ならわしは自らの能力がもう少し凡庸で
あったならここまで苦悩する事もなかったと今でも思うのだから。才能とは時として孤独
にする。いや、才能に責任を求めるのは極めて身勝手だな。才能とはあくまで跳び箱で
しかない。其れも又、武器という名の概念だ。武器自身が誰かを傷付けるなんて有り
得ない。傷付けるのは何時も振舞う物と決まる。才能も又、武器なのだ。わしはその
用途が成っていない事に此れを記すまで気付かないだけだ。だからこそ計画を大きく
外すという事は即ち、わし自身が自ら凡庸である事に気付けたという訳じゃ。
 石板で何かを記すのは此の歳になって大変である事に気付いたな。抑々一度彫ったら
二度と書き直しがまま成らないからな。ひょっとすると此れが海洋種族が未だに水の惑星
の頂点に立てない原因かも知れない。だとすれば頂点に立つのは優れた種族や生命体
ではないかも知れない。頂点に立つ生命は決まってその惑星の立地条件に合った適性
が必要なのかも知れない。だとすれば人族が未だに水の惑星で頂点に立てるのは訛りが
原因ではない。
 だが、そろそろ限界だ。では全生命体が希望に目覚める其の時迄わしは歴史の舞台
から姿を消そう。何、無理して希望を抱く必要はない。希望とは自然と己に流れ着くモノ
だ。
                              著者 禾野コケッ区』

 ICイマジナリーセンチュリー二百三十三年五月四十二日午後三時三十分零秒。

 第九十七話 恐るべき発明 完

 第九十八話 蒼穹の紅蓮 過去に思いを馳せて に続く……

一兆年の夜 第九十七話 恐るべき発明(八)

 午前二時四十一分十八秒。
 場所は裏島西側断崖。三名が真古天神武蒸気船と銀河連合が乗る小舟との打ち合いを眺める中でコケッ区はある事に気付く。
「何ですか、その軍事理論はー!」
「軍事には詳しくない私ではあるが、流石に其処までは飛躍し過ぎじゃないですか?」
「いや間違いなく銀河連合は既に其処までの戦術を取る事が可能じゃって。細菌戦術が取れるという事は即ち、奴等は食事戦術で全生命をものの数の月の後に死なせる事だって可能だっち!」
「食糧に銀河連合を混じらせて各家庭に回せば……ねえ」
「だからって細菌戦術から如何して食料戦術が繋がるのかわからないー!」
「だからお前は何時まで経ってもわしの理解者に成れないんだっチ!」
「ふざけるなアー!」キリモンは怒り出し、コケッ区を締め付ける。「如何して何時も何時も自分の頭の段階で物を言うんですかー!」
「うぐぐっか」
「キリモン君……余り力を入れ過ぎるなよ!」
「大丈夫だよー。俺も全生命の一員ですのでコケッ区先生を死なせたりは……しませんー!」返答した後、キリモンは話を進める。「良いですか、先生ー。全生命体は誰だって知らなくて良い事を知るように出来ていないのですー。誰だって今しか見えずに過ちをしてしまうのですー。誰だって……賢くだって成れないのですよー!」
「キリモン、お前はっち」
「だからさあ、先生ー。もうこれ以上他者に過度な期待を抱くのは止めて下さいー!」涙を流して伝えるキリモン。「俺達は先生が思っている程に希望を抱えられる訳でもなければ自らを見つめる事が出来るほどに出来た者じゃないのですー!」
 其の涙は首の一部に落下し、更には締め付けられるコケッ区の嘴に滴る。嘴に僅かながらもキリモンの涙の熱を感じ取ったコケッ区は次のような一言を口にする。
「ウググ、そろそろ離してくれないかっか?」
「あ、申し訳ありませんー」
 解放されたコケッ区は少し咳き込みつつも締め付けられて何処が歪みがないかも確認。歪みが見られない事を確認すると喋り始める。
「成程、まだまだわしは全生命に希望を背負わせる時期ではないと知るべきだったっち。寧ろわしは誰かに希望を押し付けた事を誤って抱かせるべきだと思い込んでしまったって!」
「博士……まさかとは思いますが--」
「まだわしの話が先じゃっち。わしはキリモンに締め付けられて泪の熱を浴びて初めて自らの行った罪に気付いたっか!
 わしは電撃望遠弾第一号で同胞全てを死なせる所だったっか。寧ろ、わしは全生命体の希望を吐き違えていたんだっか!
 本当は自分こそ成りたかったっき。だが、心の甘さがわし自身に言い訳をさせてしまったっけ。わしは……自らの希望を信じる事も出来ずに他者に希望を押し付けてしまったって!
 わしは……わしは--」
「わかったよー。十分にわかったよ、先生ー!」
 二名は抱擁--其れが最後の抱擁に成るとは片方は気付かない!
「泣かせるねえ。此れが信頼という名の希望か。私にだって出来るかな?」一方のバレイズはある事を考える。「いや、止めておこう。まだ其の時ではないからな」
 抱擁を終えた二名。内一名は次のように言った。
「ではキリモン、それにバレイズ……お前達は先に戻ってくれっち!」
「な、何を言うんだー!」
「わしは最後の仕事に取り掛からないといけないっち!」
「何の仕事だよー!」
「其れは--」

 午前十時二分七秒。
 場所は隠れ拠点隔離室。戻って来て早々に蹴られ、踏みつけられるある生命。
「ウググぐ……まだ、まだ眠る時ではないっチ!」
 其の仕打ちは三の時も掛けて行われた。流石のコケッ区も其処まで来ると後数の分しか生きられないと気付き始める。
「ウググ……出て行ったなっか。ハアハア……折れた肋が肺に二本も刺さって、ゲホゲホっか!」出血量及び肺に溜まる血液の量を含めても既に生きられる時間は限られると気付くコケッ区。「せめて……最後にあの子と一緒に、あの子と一緒にって!」
 這いずりながらもコケッ区はコケッ区式電撃望遠弾の起爆口まで近付く。全ては人生最後の大仕事をする為に。
「やっと……着いたっち。わしは、そろそろ、はあはあっか」コケッ区はずっと濃ゆい股間周りの毛に隠してあった火点け棒を取り出す。「まさか、此れが……人生最後に、この子に火を点ける為に……使う、とはっか!」
 コケッ区は燐の部分に擦って点火させると自身と同様の靄みたいに燃える火点け棒の火元を電撃望遠弾の点火口に放り投げる--其処で二度とコケッ区は体を動かす事もなくなった!
「ハアハア……さあ、最後の--」
 やがて電撃望遠弾は弾丸内に溜め込んであった質量を熱に変えて今……隠れ拠点ごと裏島に足を付ける全ての者達を電撃の光で包み--

一兆年の夜 第九十七話 恐るべき発明(七)

 五月四十二日午前零時三十七分二十三秒。
 バレイズは自らの目的について告白する。実はバレイズは真古天神武兵器開発班の一員であり、やや遠い将来に訪れるであろう真古天神武全土を襲う大規模な流れ星を防ぐ為にコケッ区式電撃望遠弾と其れを開発したコケッ区の救出を密かに任された。だが、肝心のバレイズは民間者であって身体能力は高くない。なのに何故彼が派遣されたのか? 理由は次のキリモンの思考から明かされる。
(先生が只では転がらない生命だと知ってるからこそバレイズを派遣したのだなー。全く頭脳労働者には頭脳労働者以外に説得出来る生命は居ないと単純計算するようだけど……其れで心が入れ替わるような生命ではない事を真古天神武の上層部は知らないのかー!)
 キリモンの思う通り、バレイズが告白してもコケッ区は首を横に振る事を辞さない。
「はあ、あんたは希望なんだぞ」
「わしを希望とするなら全生命体は可能性を絶たれたも同然じゃって」
「其処まで極まった話をしているんじゃないぞ、博士!」
「極まろうが極まるまいが理屈にも成らん応酬でわしを打ち崩せると思うな、若造っち!」
「いやいや、希望ではなく……こうしよう。博士は希望を目覚めさせる起爆剤。私達にも希望がある様に博士だって希望を目覚めさせてこんなにも立派な望遠弾をお作り為さった。さぞ、睡眠が足らないと思って苦しんだでしょう?」
「今度は起爆剤かっち。バルケミンの頃からお前達のお喋り好きには困っていた所だぞっか!」
「だが、バレイズがどんな企みをしようとも先生が此処から離れる以外に道はないのです-!」
「いけないいけないっち。わしが離れれば奴等はいよいよ電撃望遠弾を使用するっか。其の威力はスクリュースタンダードアイランド何て目じゃないぞっか!」
スクリュースタンダードアイランド……もしや動く島か」
「範囲は半径成人体型たったの十だっか。だが、破壊力は思わずわしらが溶解する所であった位に尋常じゃない熱量って。わしの背に見えるコケッ区式電撃望遠弾第一号はスクリュースタンダードアイランドを沈めた第零号の十倍の半径を誇るっち。破壊力ともなれば島が無事であるかさえも怪しいっつ!」
「十倍だって……一体どんな方法で望遠弾を其処まで危険な領域まで高める事が出来たんだよー!」
「其れは永遠にわしの頭の中に眠るっち!」
「あれだけで島を沈める威力……幾らなんでも質量保存の観点からして無理だ、無理があり過ぎるぞ!」
「其れは従来の物理学に囚われているのだよ、バレイズ・ボルティーニの坊主っち」
「従来の? 従来って言えども……まさか、博士は質量を熱に変えられると本気で信じているのか!」バレイズはやや声を張り上げて立ち上がる。「そんな事が可能だとしたら此の島どころか一歩踏み誤れば水の惑星だって沈める事が出来るぞ!」
「流石に其処までの事はしないっち。爆発力と言えども其処までは無理じゃなっち。だが、あれに気付いたお陰でわしは此れだけの大きさまで縮小する事に成功したって。後は此れが起動するか如何かじゃなって」
「さっきから意味不明に話を進めているけど、俺には何の事やらさっぱりわからんぞー!」
「キリモン君は相変わらずだね。よくそんな脳が足らん状態で博士と長い付き合いが出来たなあ」
「お前と一緒にするなー。俺は元々、前線出身の軍者だぞ。たまたま医療部門に詳しかったから先生の所に派遣されたんだー!」
「まあキリモンが直情的で助かったっち。お陰でわしの研究成果が真古天神武にまで流れる事はなかったなって。そうゆうのは其れに詳しい生命でないと理解が出来んからなっか」
「ハア……えっとー」
 キリモンは何かを忘れていた。其れを考え始める。
「俺は何故命懸けでここまでやって来たー? 話を聞く為にー? バレイズの真実を聞く為にー?
 いやいや、違うだろうー。俺は俺がここに来た本当の理由はつまりなあー!)
 キリモンは長い首でコケッ区の襟首を掴んだ……「な、何をするっけ!」其れから彼を自らの背中に乗せた!
「話している時間がもったいないー。今直ぐに此処を出ましょうー!」
「え、如何ゆう……ああ、そうか!」バレイズは何かを思い出す。「いけないな、私達は時間を掛け過ぎた。侵入者に気付いて奴等が包囲しに来るかも知れんな!」
「急ごう、先生にバレイズー!」
 待て、わしは残るぞオオウっち--と訴えるも誰よりも恩師が大事なキリモンは聞かず!
 其れから三名は隠れ拠点を脱出してゆく……

 午前二時二分三十七秒。
 場所は西側断崖。三名が其処で目にしたのは三隻に向かって小舟のような何かを出して進んでゆく銀河連合の姿。
(まずいぞー。あいつらは俺達を黙って逃がさないって気付くべきだったー!)
「拙いな、此れは」
「数は少ないなっち。なら大丈夫--」
「大丈夫じゃないー。さっきみたいに極小の生命で襲い掛かったら如何するんだ、先生ー!」
「何、極小っか?」
「ああ、キリモン君は其れで死に掛けたんだ」
「まさか銀河連合は--」
「ああ、血液だって武器として運用出来るのだよ」
 其れを聞いてコケッ区は気付いた。其れは次のように表現される……

一兆年の夜 第九十七話 恐るべき発明(六)

 午後十一時十八分二十七秒。
 場所は隠れ拠点隔離室。
 コケッ区は電撃望遠弾を見つめる。彼は心の中で何を思うのか? 其れは独り言でしか明かされない。
「なあ、お前は何の為に生まれるっち? 銀河連合を倒す為に生まれたのだとしたら果たして戦い以外で何か活路を見出せるのかって? 如何して戦うのか、生命はっち。何故わしらは此処まで苦しみ続けるのだっか。戦いの為にわしらは自らの生活水準を神に近付けようとするっけ。如何してだと思うか、如何してわしらは生活水準を高め続けるのだっか。いかんな、話が脱線したっち」
 だが、いざ思った事を口にすると誰もが思考と口調の相違に苦しめられる。コケッ区も又、其の内の一名である事を自覚する。
「少し話を逸らすかっか。わしみたいな頭だけが空回りする生命は他者とお喋りする時についつい息遣いが荒く成るっき。慣れた者との会話は比較的落ち着くのだがな。いや、怒りに我を忘れる場合は更に落ち着いた事を口にするって。何故なら相手を気遣う必要もなくなるっけ。だがな、其れはいけない事だっち。真実を恐れる証拠だって。真実を恐れる生命が如何して何かを生み出せるかっか。そうだなあ、そうだろうっと!」
 其れから話を戻してゆく。
「だったらお前が生み出される理由はわし自身の隠された一面をみんなに知って貰いたいからだろって。そうだろう、なあコケッ区式電撃望遠弾第一号って!」
 コケッ区の独り事は此処で終わりではない。だが、銀河連合が其れを許さない。
「また来たかっち。良いか、既にコケッ区式電撃望遠弾は完成したって。其れを今からお前達自身の足で使うべきだって。わしは其れを確認してからお前達に製法を教えるっち。約束は守れよ、お前達にも約束を守るだけの筋を通す意地があるのならって!」
 だが、虎型と蝙蝠型は相も変わらずにその返答に怒り狂う。後一歩でコケッ区は痙攣を起こす前段階に突入する所だった。コケッ区は自らが生きている事を感謝。感謝しつつも己を痛め付けて気分が晴れたと体で表現する二体の銀河連合の背中を睨み付ける!
「はあははあ……あの製法はわし自身の心の中に留めるっち。絶対に漏らしてはならんっち。仮にこの島の世界観補正が奴等に向く事があろうともわしは絶対に製法を漏らしたりは……しないぞっち!」
 其の執念が老い先短いコケッ区を動かす。彼に再び立ち上がる勇気を与えて行く。決して素早い立て直しではない。一の分、いや一の時掛ける程に気長な立て直しを要する。其れは同時にある者達との再会を呼び起こした。
 突然、扉は開かれる。入って来るのはキリン族の青年と人族の青年。
「先生ー!」
「お前はキリモンかっか!」
「随分と痛め付けられたな、禾野コケッ区博士」
「あいつらめ、加減という物を知らんのかー!」
「何故ここへ来たっち?」
「助ける事に理由が居るのかよ、先生ー!」
「そうゆう事だ。あんたの監視役は相当に過保護な性格をしているぞ!」
「全く普段からわしの話を理解しないお前がって」
「理解出来ないのは十分わかるー。だからって俺があんたとの繋がりをそんな理由で肯定しないって勝手に決め付けるなー!」
「ふう、これも又全生命が持つ思いやりの可能性なのかっか。全く困った話だなって。劣友言いながらも結局は縁を切らない奴等との関係性みたいな物じゃなって」
「ならば俺達は--」
 わしはここを出たりはしないぞっこ--決意は揺らがないコケッ区だった。
「何故なんだよー。そんなに傷付いて迄如何して電撃望遠弾の為に奴等を利用しようと企むんだー!」
「利用するからこそ全生命には必要なのだよ、此の電撃望遠弾はっち!」
 此れは深刻だな、聞かせてくれよ……コケッ区博士--バレイズはコケッ区に尋ね始める。
「バレイズ・ボルティーニじゃなって。話は聞いておるっち。お前が何を目的にわしの所に来たのかは自ずと見え隠れするって」
「私の事よりも先に……いや、先ずは私が何の為に裏島に足を運んで迄博士の所に尋ねに来たのかを告白するのが筋だな」
 其れからバレイズはゆっくりと真意を告白してゆく……

一兆年の夜 第九十七話 恐るべき発明(五)

 午後四時十八分十六秒。
 場所は裏島。崖を上る生命が一名。
(同じ軍者としてあいつらを恥じているー。先生を助けようとせずに電撃望遠弾を恐れるなんてー。だったら俺自らが先生を助けてやるー!)
 キリン族でありながらも崖上りが上手なキリモン。彼は真古天神武で度々開催される攀じ登り大会で三大会連続の三位以上を受賞するなど、軍に所属するキリン族の軍者の中で最も突出した攀じ登りの名者である。そんな彼にとって裏島にある崖は御足の者である。
(まだ攀じ登りの技術はさび付いていないー。お陰でやって来て凡そ三の分くらいで登り切る事に成功したー。だが、本番は此処からだなー。早速、出迎えが来たようだー)
 迎え入れる銀河連合は三体。内容はサーバル型、バンディクート型、そして袋鼠型。どれも迎え撃つには地形適応の面で宜しくない上に巨体で何よりも間合いが長くて小回りの利く首を持つキリン族の生命であるキリモン相手に太刀打ち出来るとは思えない奴等である。
 当然、キリモンも苦戦する事なく一の分も掛けずに三体に大量出血させる事に成功した。
(全く、攀じ登りには大量の筋力を要する事くらい知ってるだろうー。更には俺自身がそんな三体を相手に苦戦する道理がない。地中ならいざ知らず、バンディクートも袋鼠も地上に出て戦うような種類じゃないだろうがー。全く何を考えて奴等を俺の前に迎えさせたのかー!)
 確かに太刀打ち出来る存在ではない。唯一機動力の面でも勝るサーバル型でもキリン族の生命を打ち倒すには向かない。だが、キリモンにそれらを差し出したのは即ち……「うわあああ、返り血が突然動き出したああー!」何と三体の中に隠れ潜んでいた赤血球型、白血球型、そして色素蛋白質型が一斉にキリモンの毛穴に向かって進行し始めた--流石のキリモンも足も首も届かない極小の相手には御足上げだ!
 だと思ったよおおおう……それい--其処へ反対側からやって来たバレイズが桶に入った水をキリモンに振りかけた!
「な、何をする……ってあれー?」其の水を浴びた事で全身に付着する返り血は自然に足元へと転がり落ちた。「って此れ……油じゃないかー!」
「フウ、流石の水分種類も油を浴びれば剥がれ落ちるか」
「いや、待てよー。水と油の件は俺も知ってる。なのに何故返り血はみるみる剥がれ落ちるのだー?」
「其れは返り血を動かすのが銀河連合なら話は別だ。あれも一応生き物と仮定すれば必ず脂肪分を燃やした際に油を発生させる。ならば油を掛ければ自然と油よりも軽い奴等は剥がれ落ちて行く……すると如何だ。成功したぞ!」
「何が成功だ……俺が油まみれじゃねえか、畜生ー」
 キリモンは暫くの間、掛かった油に苦戦する。一方のバレイズは尋ねられても居ないのに語り始めた。彼に依るとキリモンが独断で島に向かう事を既に承知していた。少し遅かった為に見張りの軍者に見つかり、暫く遅れる事と成った。そんな時に連行される中で油を使って作業する船員を見付ける。其れを見てバレイズは閃く。若しも奴等が細かい種類を使って相手にわざと倒させる事があるならキリモンは間違いなく死んでしまう。其れを防ぐ為に油を持参して行くしかない。其れからバレイズは二回目の密航を成功させ、間一髪でキリモンを救った。
「其れは有難うー、だが……少し言いたいー」
「何か?」
「俺が尋ねるまで勝手に喋るなー。お陰で涙流して感謝出来なくなっただろうがー!」
 全く此れだから軍者ってのは見える範囲でしか物が言えないんだよ--と理屈にも成らない言葉を口にするバレイズ。
(まあ、無理して涙流す必要はないけどー。感謝するのは正しいが、其れが行き過ぎると却って相手の為に成らないー。感謝を当たり前のように行うのは大事だが、感謝は一回だけで十分な時は其れ以上の使用を心掛けないー。謝罪も同様にー。
 と関係ない話をしている場合じゃないー。今は先生の救出に向かわねば成らないー!)
 キリモンが密航した理由はコケッ区を救出する為。一方のバレイズは別の理由がある。だが、お喋りなバレイズは尋ねられる前に喋り始める。
「私の目的は--」
「だから其の時に聞くから今は静かにしてろー。銀河連合に察知されるだろうがー!」
 二名は徐々にではあるが、コケッ区が閉じ込められる隠れ拠点に近付きつつある。

 午後十時四十三分七十七秒。
 場所は隠れ拠点南口前。キリモンとバレイズは其処で誰も居なくなる時期を待つ。
(幾ら長い首が様子を見るのに適していても結局は隠密行動に向かないキリン族の図体だー。何時気付かれるかわからないなー)
「ああ、其れと私が密航した目的は--」
「だから静かにしろー。気が向いたら俺が尋ねるからさー」
 其れは一の週より後か--少々ひねくれ者のバレイズはそう尋ねる。
「大袈裟な奴だー。何で乗船させたんだー」
 そのやり取りから十五の分より後に南口の警備は完全に足薄と成る。此処しかないと考える二名は素早く中へと踏み込んでゆく……
プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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